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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125731
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】二成分現像剤及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20240911BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G03G9/113 361
G03G9/087
G03G9/113 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033749
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 匡則
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AB05
2H500CA04
2H500CA06
2H500CA18
2H500CB04
2H500CB05
2H500CB07
2H500CB12
2H500EA01B
2H500EA01E
2H500EA52E
2H500EA60E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】低温で定着し且つ小粒子径であるトナー粒子を使用した場合であっても、キャリア現像及び現像メモリの発生を抑制できる二成分現像剤を提供する。
【解決手段】二成分現像剤はトナー及びキャリアを含有し、前記トナーはトナー粒子の表面に外添剤が付着している。前記外添剤は平均一次粒子径が10nm~25nmの微粉体を含み、前記微粉体はアルミニウムを含む。トナー濃度を4質量%としたときの前記二成分現像剤の見掛密度は1.7g/cm~2.0g/cmである。0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に、トナー濃度が4質量%の前記二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される磁気穂に対し電圧を印加したときの前記電極1cmあたりの抵抗値が、電圧1000Vで1GΩ以上であり、電圧600Vで22GΩ以下である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー及びキャリアを含有する二成分現像剤であって、
前記トナーは、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであり、
前記外添剤は、平均一次粒子径が10nm以上25nm以下の微粉体を含み、
前記微粉体はアルミニウムを含み、
二成分現像剤中のトナー濃度を4質量%としたときの、前記二成分現像剤の見掛密度は1.7g/cm以上2.0g/cm以下であり、
0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に、トナー濃度を4質量%とした前記二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される長さ0.1cmの磁気穂に対し、1000Vの電圧を印加したときの抵抗値は前記電極1cmあたり1GΩ以上であり、且つ600Vの電圧を印加したときの抵抗値は前記電極1cmあたり22GΩ以下であることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項2】
請求項1に記載の二成分現像剤であって、
二成分現像剤中のトナー濃度を4質量%から12質量%まで変化させたときの1質量%変化あたりにおける、前記磁気穂に600Vの電圧を印加したときの抵抗値の変化量は、前記電極1cmあたり1.0GΩ以下であることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の二成分現像剤であって、
前記トナーは、密度0.9g/cm以上1.1g/cm以下に圧縮したときの体積抵抗率が2.0×1014Ω・cm以上3.7×1014Ω・cm以下であることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の二成分現像剤であって、
前記微粉体による前記トナー粒子表面の被覆率は、25%以上55%以下であることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の二成分現像剤であって、
前記トナー粒子の平均一次粒子径は4μm以上7μm以下であり、
90℃における前記トナー粒子の見掛粘度は、100000Pa・s以上200000Pa・s以下であることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の二成分現像剤であって、
前記トナー粒子の平均一次粒子径をDとすると、粒子径が0.6×D以下である前記トナー粒子の粒子数は、前記トナー粒子の粒度分布全体の20%以下であることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の二成分現像剤であって、
0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に、トナー濃度を12質量%とした前記二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される長さ0.1cmの磁気穂に対し、600Vの電圧を印加したときの抵抗値は、前記電極1cmあたり30GΩ以下であることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の二成分現像剤を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トナーとキャリアとを含有する二成分現像剤、及びその二成分現像剤を用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成に用いる現像剤は、トナーのみで構成される一成分現像剤と、トナーとキャリアとを含有する二成分現像剤とに区分される。二成分現像剤(以下において、単に現像剤ともいう)は、トナーの帯電量が安定し、高画質な画像を得やすいことから広く使用されている。トナーは、トナー粒子(トナーコア)の表面に外添剤を付着させたものが広く使用されている。
【0003】
二成分現像剤においては、キャリア現像や現像メモリという現象が発生する問題がある。ここで、キャリア現像とは、トナーだけでなくキャリアも像担持体である感光体表面へと移動してしまう現象をいう。現像メモリとは、マグネットローラ(現像ローラ)上にトナーが残ることによって、トナーが残った部分とそうでない部分とで画像の濃度差が生ずる現象をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-127536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小粒子径で且つ低温で定着するトナー粒子を使用した二成分現像剤においては、キャリア現像の発生と、現像メモリの発生とを同時に解決することが難しい。その理由は、以下のとおりである。
【0006】
トナー粒子の低温定着化及び小粒子径化が進むと、キャリアのトナースペントが起こりやすくなり、現像メモリが発生しやすくなる。この現像メモリの発生を抑制するために、マグネットローラのスリーブへの引力を弱めようとキャリアを低磁化すると、キャリア現像が発生しやすくなる。図1はこのキャリア現像の発生を説明する模式図であり、現像剤の抵抗が低いとマグネットローラのスリーブから感光体へと負電荷リークが発生しやすくなり、キャリア現像が誘発される。そこで、マグネットローラのスリーブから感光体ドラムへの負電荷リークを抑えるためにキャリアを高抵抗化すると、現像剤中のトナー及び補給されたトナーの帯電分布が均一になるまでに時間が必要となり現像メモリが発生しやすくなる。図2及び図3は現像剤中のトナー及び補給されたトナーの帯電分布の変化を説明するグラフであり、図2は現像剤の抵抗が低い場合の帯電分布の変化、図3は現像剤の抵抗が高い場合の帯電分布の変化を示している。図2に示すように現像剤の抵抗が低い場合には帯電分布が短時間で均一になる一方、図3に示すように現像剤の抵抗が高い場合には帯電分布がなかなか均一にはならず、均一になるまでに時間を要する。図3の破線部に示す高帯電のトナーはキャリアに纏わり付き、マグネットローラ上に残りやすいため、現像メモリが発生する原因となる。
【0007】
このような挙動により、キャリア現像の問題と現像メモリの問題とを同時に解決するには至らないという課題があった。
【0008】
本開示の二成分現像剤は斯かる事情に鑑みて見出されたものであり、小粒子径で且つ低温で定着するトナー粒子を使用した場合にあっても、キャリア現像及び現像メモリの発生を抑制できる二成分現像剤及びその二成分現像剤を用いる画像形成装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本開示の二成分現像剤は、トナー及びキャリアを含有する二成分現像剤であって、前記トナーはトナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであり、前記外添剤は平均一次粒子径が10nm以上25nm以下の微粉体を含み、前記微粉体はアルミニウムを含み、二成分現像剤中のトナー濃度を4質量%としたときの前記二成分現像剤の見掛密度は1.7g/cm以上2.0g/cm以下であり、0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に、トナー濃度を4質量%とした前記二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される長さ0.1cmの磁気穂に対し、1000Vの電圧を印加したときの抵抗値は前記電極1cmあたり1GΩ以上であり、且つ600Vの電圧を印加したときの抵抗値は前記電極1cmあたり22GΩ以下であることを特徴とする。
【0010】
上記の二成分現像剤にあっては、二成分現像剤中のトナー濃度を4質量%から12質量%まで変化させたときの1質量%変化あたりにおける、前記磁気穂に600Vの電圧を印加したときの抵抗値の変化量は、前記電極1cmあたり1.0GΩ以下であることが好ましい。
【0011】
上記の二成分現像剤にあっては、前記トナーは、密度0.9g/cm以上1.1g/cm以下に圧縮したときの体積抵抗率が2.0×1014Ω・cm以上3.7×1014Ω・cm以下であることが好ましい。
【0012】
上記の二成分現像剤にあっては、前記微粉体による前記トナー粒子表面の被覆率は、25%以上55%以下であることが好ましい。
【0013】
上記の二成分現像剤にあっては、前記トナー粒子の平均一次粒子径は4μm以上7μm以下であり、90℃における前記トナー粒子の見掛粘度は100000Pa・s以上200000Pa・s以下であることが好ましい。
【0014】
上記の二成分現像剤にあっては、前記トナー粒子の平均一次粒子径をDとすると、粒子径が0.6×D以下である前記トナー粒子の粒子数は、前記トナー粒子の粒度分布全体の20%以下であることが好ましい。
【0015】
上記の二成分現像剤にあっては、0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に、トナー濃度を12質量%とした前記二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される長さ0.1cmの磁気穂に対し、600Vの電圧を印加したときの抵抗値は、前記電極1cmあたり30GΩ以下であることが好ましい。
【0016】
また、上記課題を解決するためになされた本開示の画像形成装置は、上記二成分現像剤を用いることを特徴とする。
【0017】
なお、特許文献1には、印加電圧1000V、電極間隔2mm、サンプル量0.2gの条件でブリッジ法を用いて測定した抵抗値が1.0×10Ω~1.0×1015Ωである高抵抗の二成分現像剤と、同抵抗値が1.0×10Ω~1.0×1013Ωである低抵抗の二成分現像剤とを特定の条件で用いる現像方法が開示されているが、本開示の二成分現像剤が備える抵抗値の範囲については何ら開示されておらず、また、本開示の二成分現像剤が解決する上記課題についても何ら開示されていない。
【発明の効果】
【0018】
本開示の二成分現像剤及びその二成分現像剤を用いる画像形成装置によれば、小粒子径で且つ低温で定着するトナー粒子を使用した場合にあっても、キャリア現像及び現像メモリの発生を抑制できる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】キャリア現像の発生を説明する模式図である。
図2】現像剤の抵抗が低い場合における、現像剤中のトナー及び補給されたトナーの帯電分布の変化を説明するグラフである。
図3】現像剤の抵抗が高い場合における、現像剤中のトナー及び補給されたトナーの帯電分布の変化を説明するグラフである。
図4】比較例1における現像剤磁気穂の抵抗値の測定結果を示すグラフである。
図5】比較例2における現像剤磁気穂の抵抗値の測定結果を示すグラフである。
図6】比較例3における現像剤磁気穂の抵抗値の測定結果を示すグラフである。
図7】実施例1における現像剤磁気穂の抵抗値の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の二成分現像剤の一実施形態について詳述する。まず、二成分現像剤全体が持つ特徴について説明し、次いで、二成分現像剤が含有するトナー及びキャリアについて説明する。
【0021】
1.二成分現像剤
【0022】
本実施形態に係る二成分現像剤は、トナー濃度を4質量%としたときの見掛密度が1.7g/cm以上2.0g/cm以下であり、0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に、トナー濃度を4質量%とした当該二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される長さ0.1cmの磁気穂に対し、1000Vの電圧を印加したときの抵抗値は当該電極1cmあたり1GΩ以上であり、且つ600Vの電圧を印加したときの抵抗値は当該電極1cmあたり22GΩ以下である。1000Vの電圧を印加したときの当該抵抗値は1.4GΩ以上であることがより好ましく、600Vの電圧を印加したときの当該抵抗値は21GΩ以下であることがより好ましく、20GΩ以下であることがさらに好ましい。
【0023】
後掲する実施例で用いた治具にて形成した現像剤磁気穂の抵抗値の測定結果には、600Vの電圧を印加したときよりも1000Vの電圧を印加したときの方が、現像剤に含まれるキャリア内部(キャリアの深層部分)の抵抗が反映されていると経験上考えられる。換言すると、600Vの電圧を印加したときの抵抗値はキャリア表面の抵抗と相関があり、1000Vの電圧を印加したときの抵抗値はキャリア内部の抵抗と相関があると考えられる。つまり、本実施形態に係る二成分現像剤は磁気穂の抵抗値が上記範囲内であることで、キャリアの内部及び表面の抵抗が制御されており、小粒子径で且つ低温で定着するトナー粒子を使用した場合にあっても、キャリア現像及び現像メモリの発生を抑制することができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る二成分現像剤が、小粒子径で且つ低温で定着するトナー粒子を使用した場合にあっても、キャリア現像及び現像メモリの発生を抑制できるメカニズムについて説明する。
【0025】
キャリア現像の発生を抑えるには、現像剤中のトナー濃度が下がり、現像剤に高い電圧がかかったときの抵抗は高い方がよい。現像メモリの発生を抑えるには、現像剤へ補給されたトナーの帯電分布が均一になりやすいように、現像剤中のトナー濃度に関わらず現像剤の抵抗は小さい方がよい。現像剤にかかる電界が高いときはキャリア内部の抵抗が現れている事が経験的に分かっている。よって、本実施形態に係る二成分現像剤が備えるキャリアは、後述するように、その内部の抵抗が表面の抵抗よりも大きくなるように設計されている。さらに、トナーの外添剤として、抵抗の小さな帯電調整剤(後述する微粉体)を含むことで、トナーの抵抗を下げるように設計されている。このような設計を以て、現像剤磁気穂に上記したような抵抗値を持たせることにより、小粒子径で且つ低温で定着するトナー粒子を使用した場合にあっても、キャリア現像及び現像メモリの発生を抑制することができる。
【0026】
低湿環境下ではトナーの帯電が高くなり、濃度の高い画像の印刷を行う際に現像装置は高い電圧を印加する。これまでの印刷環境履歴によるが、このような条件では、トナーの補給なく現像剤のトナー濃度が低いまま、濃度の高い画像が印刷されることがある。このときに抵抗の低い現像剤であるとマグネットローラのスリーブから感光体に向かって電荷リークが発生し、過剰に負帯電した感光体表面にキャリアが吸着し、像が抜けてしまう。これをキャリア現像と呼ぶ(図1)。キャリア現像の発生は、現像剤の抵抗を上げることで抑制できることが経験的に分かっている。
【0027】
これに対し、高湿環境下にて劣化した現像剤で印刷を行うときは、補給されたトナーが現像剤に混ざり込みににくくなる現象が起こる。現像槽から出て行かないトナーの外添剤が埋没し、過剰帯電してキャリアを包み込むことで、補給されたトナーがキャリアと接触するのが阻害される。特に、低温で定着し且つ7μm以下の小粒子径であるトナー粒子を使用した場合に顕著である。この場合、現像剤の帯電分布が広がり、均一となるまでに時間を要する。この状態で印刷を行うと、過剰帯電したトナーに包まれた現像剤はマグネットローラ表面を覆い、像残りを引き起こす。これを現像メモリと呼ぶ。トナー及びキャリアの抵抗を下げれば過剰帯電が抑えられ、補給トナーとの混ざり込みが早くなるため、現像メモリの発生を抑制できるが、トナー及びキャリアの抵抗を下げると上述したようにキャリア現像が発生するので単純に下げることはできない。
【0028】
そこで、本実施形態に係る二成分現像剤では、内部の抵抗が高く表面の抵抗が低いようにキャリアが設計されており、小粒子径で抵抗が低い帯電調整剤を外添剤として含むようにトナーが設計されている。そのため、キャリア現像及び現像メモリの発生を抑制できていると考えられる。
【0029】
本実施形態に係る二成分現像剤にあっては、二成分現像剤中のトナー濃度を4質量%から12質量%まで変化させたときの1質量%変化あたりにおける、上記磁気穂に600Vの電圧を印加したときの抵抗値の変化量は、上記電極1cmあたり1GΩ以下であることが好ましく、0.7GΩ以下であることがより好ましく、0.5GΩ以下であることがさらに好ましい。抵抗値の変化量が上記上限を超える場合、現像槽内のトナーと補給されたトナーとの帯電差が均一になりにくく、現像メモリが発生しやすくなるおそれがある。なお、当該抵抗値の変化量の測定では、トナー濃度の変化に伴って二成分現像剤の見掛密度が変化するが、2枚の電極間の容量に対する二成分現像剤の充填率は20%に固定して測定する。
【0030】
また、本実施形態に係る二成分現像剤にあっては、0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に、トナー濃度を12質量%とした二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される長さ0.1cmの磁気穂に対し、600Vの電圧を印加したときの抵抗値は、当該電極1cmあたり30GΩ以下であることが好ましく、27GΩ以下であることがより好ましく、24GΩ以下であることがさらに好ましい。トナー濃度が12質量%と高いときの抵抗値が上記上限を超える場合には、現像メモリが発生しやすくなるおそれがある。
【0031】
2.トナー
本実施形態に係る二成分現像剤が含有するトナーは、トナー粒子(トナーコア)の表面に外添剤が付着したものである。本実施形態に係るトナー粒子は、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の内添剤と結着樹脂とで構成されており、内添剤は結着樹脂中に分散している。さらに必要に応じて、本開示に係る効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。トナー粒子の平均一次粒子径は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば4μm以上10μm以下が挙げられるが、上述したように、本開示の二成分現像剤は小粒子径のトナー粒子を用いた場合の課題を解決するのに好適であることから、4μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係るトナーは、密度0.9g/cm以上1.1g/cm以下に圧縮したときの体積抵抗率が2.0×1014Ω・cm以上3.7×1014Ω・cm以下であることが好ましく、3.0×1014Ω・cm以上3.7×1014Ω・cm以下であることがより好ましい。体積抵抗率が上記範囲内であることで、キャリア現像及び現像メモリの発生をより抑制できるトナー構成となる。また、本実施形態に係るトナーは、外添剤として含む微粉体によるトナー粒子表面の被覆率、トナー粒子の見掛粘度及び粒度分布が後掲する条件を満たすことで、体積抵抗率が上記範囲内となりやすい。
【0033】
また、本実施形態に係るトナー粒子は、90℃における見掛粘度が100000Pa・s以上200000Pa・s以下であることが好ましく、150000Pa・s以上190000Pa・s以下であることがより好ましい。見掛粘度が上記範囲内であることで、本実施形態に係るトナーが外添剤として含む微粉体がトナー粒子に埋まり込むことを抑制でき、本実施形態に係るトナーが備える抵抗を維持しやすくなる。見掛粘度が上記下限未満の場合、トナー粒子に微粉体が埋まり込んで、印刷枚数が増加するとともにトナーの表面抵抗が上昇し、現像メモリが発生しやすくなるおそれがある。
【0034】
また、本実施形態に係るトナー粒子は、その平均一次粒子径をDとすると、粒子径が0.6×D以下であるトナー粒子の粒子数が、トナー粒子の粒度分布全体の20%以下であることが好ましく、17%以下であることがより好ましい。粒子径が0.6×D以下であるトナー粒子の粒子数が上記上限を超える場合、トナー粒子の比表面積が大きくなり、外添剤である微粉体によるトナー粒子表面の被覆率が下がり、トナーの表面抵抗が大きくなる傾向がある。また、マグネットローラのスリーブへのトナーの付着力が増加し、現像メモリが発生しやすくなるおそれがある。粒子径が0.6×D以下であるトナー粒子の粒子数が上記範囲内であることで、マグネットローラのスリーブへのトナーの付着力が抑えられ、現像メモリの発生を抑制することができる。
【0035】
以下、本実施形態に係るトナーを構成する材料毎に説明する。
【0036】
<結着樹脂>
本実施形態に係るトナー粒子に含まれる結着樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。本開示に係る効果を損なわない範囲において、結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂以外の成分を含有していてもよい。
【0037】
なお、ポリエステル樹脂は結晶性指数によって非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とに区別でき、本開示においては結晶性指数が0.6以上1.5以下の範囲にある樹脂を結晶性ポリエステル樹脂とし、結晶性指数が0.6未満であるか又は1.5を超える樹脂を非晶性ポリエステル樹脂とする。結晶性指数が1.5を超える樹脂は非晶性であり、結晶性指数が0.6未満である樹脂は結晶性が低く非晶性部分が多い。
【0038】
結晶性指数とは、樹脂の結晶化の度合いの指標となる物性であり、軟化温度と吸熱の最高ピーク温度の比(軟化温度/吸熱の最高ピーク温度)により定義されるものである。ここで、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性ポリエステル樹脂においては、最高ピーク温度を融点とし、非晶性ポリエステル樹脂においては、最も高温側にあるピークをガラス転移点とする。
【0039】
樹脂の結晶化の度合いは、材料とするモノマーの種類及び比率、並びに製造条件(例えば反応温度、反応時間、冷却速度)等を調整することで制御できる。
【0040】
本実施形態に係るトナーに用いる非晶性ポリエステル樹脂は、例えば、テレフタル酸又はイソフタル酸を主成分として含むジカルボン酸モノマーと、エチレングリコールを主成分として含むジオールモノマーとを重縮合させることにより得られる。
【0041】
非晶性ポリエステル樹脂の合成に使用されるジカルボン酸モノマーは、テレフタル酸又はイソフタル酸を主成分として含む。ここで、ジカルボン酸モノマーに占めるテレフタル酸又はイソフタル酸のモル含有率は、70%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがより好ましい。
【0042】
また、上記ジカルボン酸モノマーは、テレフタル酸及びイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸を含んでいてもよい。テレフタル酸及びイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸等が挙げられる。上記ジカルボン酸モノマーは、テレフタル酸又はイソフタル酸のエステル形成性誘導体、テレフタル酸及びイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体等を含んでいてもよい。本開示において、エステル形成性誘導体には、カルボン酸の酸無水物、アルキルエステル等が含まれる。なお、これらのジカルボン酸モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
非晶性ポリエステル樹脂の合成においては、上記ジカルボン酸モノマーと共に、3価以上のポリカルボン酸モノマーを用いてもよい。3価以上のポリカルボン酸モノマーとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のポリカルボン酸、及びそのエステル形成性誘導体を使用できる。これらの3価以上のポリカルボン酸モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
非晶性ポリエステル樹脂の合成に使用されるジオールモノマーは、エチレングリコールを主成分として含む。ここで、ジオールモノマーに占めるエチレングリコールのモル含有率は、70%以上100%以下であることが好ましく、80%以上100%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
上記ジオールモノマーは、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等を含んでいてもよい。これらのジオールモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本実施形態に係るトナーに用いる非晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造できる。例えば、ジカルボン酸モノマーと、ジオールモノマーと、場合により3価以上のポリカルボン酸モノマーとを用いて、窒素ガス雰囲気中、190℃~240℃の温度にて重縮合反応を行うことにより、非晶性ポリエステル樹脂を合成することができる。
【0047】
上記重縮合反応において、ジオールモノマーと、カルボン酸モノマー(ジカルボン酸モノマーと、場合により3価以上のポリカルボン酸モノマーとを含む)との反応比率は、水酸基とカルボキシル基との当量比[OH]:[COOH]として、1.3:1~1:1.2が好ましい。また、上記重縮合反応において、カルボン酸モノマーに占めるジカルボン酸モノマーのモル含有率は、80~100%であることが好ましい。さらに、上記重縮合反応においては、必要に応じてジブチルスズオキシド、チタンアルコキシド(例えばテトラブトキシチタネート)等のエステル化触媒を使用してもよい。
【0048】
本実施形態に係るトナー粒子中の非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
<結晶性ポリエステル樹脂>
本実施形態に係るトナーにおいては、トナー粒子が結晶性ポリエステル樹脂を含有していてもよい。トナー粒子中の結晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂中に分散している。結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数9~22の脂肪族ジカルボン酸を主成分として含むジカルボン酸モノマーと、炭素数2~10の脂肪族ジオールを主成分として含むジオールモノマーとを重縮合させて得られる直鎖状飽和脂肪族ポリエステルユニットで構成される結晶性ポリエステル樹脂である。直鎖状飽和脂肪族ポリエステルユニットで構成されることで、この結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂が相溶しにくくなる。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂の合成に使用されるジカルボン酸モノマーは、炭素数9~22の脂肪族ジカルボン酸を主成分として含む。ここで、ジカルボン酸モノマーに占める炭素数9~22の脂肪族ジカルボン酸のモル含有率は、80%以上100%以下であることが好ましい。
【0051】
上記炭素数9~22の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。また、ジカルボン酸モノマーは、これらの脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体も含んでいてもよい。これらのジカルボン酸モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
結晶性ポリエステル樹脂の合成においては、上記ジカルボン酸モノマーと共に、3価以上のポリカルボン酸モノマーを用いてもよい。3価以上のポリカルボン酸モノマーとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のポリカルボン酸、及びそのエステル形成性誘導体を使用できる。これらの3価以上のポリカルボン酸モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
結晶性ポリエステル樹脂の合成に使用されるジオールモノマーは、炭素数2~10の脂肪族ジオールを主成分として含む。ここで、ジオールモノマーに占める炭素数2~10の脂肪族ジオールのモル含有率は、80%以上100%以下であることが好ましい。
【0054】
上記炭素数2~10の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。なお、これらのジオールモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
結晶性ポリエステル樹脂の合成においては、上記ジオールモノマーと共に、3価以上のポリオールモノマーを用いてもよい。3価以上のポリオールモノマーとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン等が使用できる。これらの3価以上のポリオールモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
本実施形態に係るトナーに用いる結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル製造法と同様にして製造できる。例えば、ジカルボン酸モノマーと、ジオールモノマーと、場合により3価以上のポリカルボン酸モノマー又は3価以上のポリオールモノマーとを用いて、窒素ガス雰囲気中、190℃~240℃の温度にて重縮合反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂を合成することができる。
【0057】
上記重縮合反応において、ポリオールモノマー(ジオールモノマーと、場合により3価以上のポリオールモノマーとを含む)の水酸基と、カルボン酸モノマー(ジカルボン酸モノマーと、場合により3価以上のポリカルボン酸モノマーとを含む)のカルボキシル基との当量比(OH基/COOH基)は、保存性の観点等から、0.83~1.3が好ましい。また、上記重縮合反応において、カルボン酸モノマーに占めるジカルボン酸モノマーのモル含有率は、90%~100%であることが好ましい。ジカルボン酸モノマーのモル含有率が小さい程、結晶化の割合や速度が低くなり、耐トナー凝集性が不十分になる。更に、上記重縮合反応において、ポリオールモノマーに占めるジオールモノマーのモル含有率は、80~100%であることが好ましい。なお、上記重縮合反応においては、必要に応じてジブチルスズオキシドやチタンアルコキシド(例えばテトラブトキシチタネート)等のエステル化触媒を使用してもよい。
【0058】
本実施形態に係るトナー粒子中の結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
<離型剤>
本実施形態に係るトナー粒子は、離型剤としてワックスを含有し得る。当該ワックスとしてはエステルワックスが好ましく、示差走査熱量計を用いて測定される、エステルワックス由来の昇温時の吸熱ピーク温度をT1、エステルワックス由来の冷却時の発熱ピーク温度をT2とすると、T1-T2は15℃以上30℃以下であることが好ましい。より好ましい範囲としては17℃以上23℃以下である。T1-T2が当該条件を満たすエステルワックスは、内滑効果(溶融混練時に材料相溶性を高める効果)が高い。
【0060】
ワックスをトナー粒子中に配合することで、低湿環境下においても局所的なチャージアップを抑制でき、また、ライフを通じて外添剤の埋まりこみを抑制できる。つまり、環境帯電安定性と、ライフを通じた帯電安定性とに優れたトナーを実現できる。
【0061】
エステルワックスとしては、例えば、日油株式会社製の商品名WE-14、WE-15、WEP-5等が挙げられる。
【0062】
本実施形態に係るトナー粒子中のワックスの含有量は、0.5質量%以上8質量%以下であることが好ましく、2質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
<着色剤>
本実施形態に係るトナー粒子は着色剤を含み得る。着色剤としては、特に限定されず、電子写真分野で用いられる有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料等を使用できる。
【0064】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト及びマグネタイトが挙げられる。
【0065】
イエローの着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185が挙げられる。
【0066】
マゼンタの着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222が挙げられる。
【0067】
シアンの着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60が挙げられる。
【0068】
本実施形態に係るトナーにおいて、着色剤の含有量は特に限定されないが、トナー粒子中4質量%以上10質量%以下であることが好ましい。着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。着色剤は、結着樹脂中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。
【0069】
<帯電制御剤>
本実施形態に係るトナー粒子は帯電制御剤を含み得る。帯電制御剤は、トナーに好ましい帯電性を付与するために添加される。帯電制御剤としては、特に限定されず、電子写真分野で用いられる正電荷制御用及び負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。
【0070】
正電荷制御用の帯電制御剤としては、例えば、四級アンモニウム塩、ピリミジン化合物、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩が挙げられる。
【0071】
負電荷制御用の帯電制御剤としては、例えば、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、サリチル酸及びその誘導体の金属錯体及び金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウム等)、有機ベントナイト化合物、ホウ素化合物が挙げられる。
【0072】
本実施形態に係るトナー粒子中の帯電制御剤の含有量は特に限定されないが、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。帯電制御剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
<外添剤>
本実施形態に係るトナーは、外添剤として、平均一次粒子径が10nm以上25nm以下の微粉体を含み、この微粉体はアルミニウムを含む。
【0074】
本実施形態に係るトナーが外添剤として含む上記微粉体は、トナー粒子を構成する結着樹脂よりも抵抗が低く、帯電調整剤として機能する。帯電制御剤は現像メモリの発生を抑制するためにトナーの表面抵抗を下げる処方設計であることが好ましい。上記微粉体の粒子径及び添加量を調整することでトナーの表面抵抗を下げられるが、添加量が適正な範囲から外れると、環境帯電性能が低下したり、高電界下で現像剤の抵抗が下がりすぎ、キャリア現像を誘発したりする。本発明者が鋭意検討した結果、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムとシリカとの組成物、ステアリン酸アルミニウム等といったアルミニウムを含んだ微粉体が、本開示に係る二成分現像剤中のトナーが外添剤として含む帯電調整剤として好ましい。
【0075】
上記微粉体が酸化アルミニウムの場合、結晶形にはα-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、θ-アルミナ等が挙げられるが、環境帯電性能を高める観点から、α-アルミナが好ましい。
【0076】
上記微粉体は、疎水化するために、酸化アルミニウム等のアルミニウムを含む基体の表面を、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジメチルポリシロキサン等の表面処理剤で表面処理されたものであることが好ましい。
【0077】
トナーの表面抵抗の観点から、上記微粉体の平均一次粒子径は10nm以上25nm以下であり、12nm以上20nm以下であることがより好ましい。
【0078】
また、上記微粉体によるトナー粒子表面の被覆率は、25%以上55%以下であることが好ましく、30%以上50%以下であることがより好ましい。これにより、トナーの表面抵抗が低下し、現像メモリ及びキャリア現像の発生を抑制できる。被覆率が上記上限を超える場合、トナーの表面抵抗が低すぎて、キャリア現像が発生するおそれがあり、また高湿環境下でかぶりが発生するおそれがある。被覆率が上記下限未満の場合、トナーの表面抵抗が高すぎて、現像メモリが発生するおそれがあり、また低湿環境下で白斑が発生するおそれがある。
【0079】
上記微粉体の体積抵抗率は、2.0×1011Ω・cm以上2.0×1014Ω・cmであることが好ましく、3.0×1011Ω・cm以上8.0×1011Ω・cm以下であることがより好ましい。微粉体の体積抵抗率が上記範囲内であることにより、現像剤磁気穂の抵抗値を本開示で規定する範囲内に合わせやすくなるが、微粉体の体積抵抗率は上記範囲に必ずしも限定されるものではない。
【0080】
3.キャリア
キャリアは、現像槽内でトナーと撹拌及び混合され、トナーに所望の電荷を与える。またキャリアは、現像装置と感光体との間で電極として働き、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電潜像に運び、トナー像を形成させる役割を果たす。キャリアは、磁気力により現像装置のマグネットローラ(現像ローラ)上に保持され、現像に作用した後、再び現像槽に戻り、新たなトナーと再び撹拌及び混合されて寿命まで繰り返し使用される。
【0081】
キャリアは、キャリア芯材と、その表面を被覆する樹脂被覆層とで構成される。キャリア用樹脂で形成される樹脂被覆層は、カップリング剤で処理されていてもよい。
【0082】
本実施形態に係るキャリアは、現像メモリの発生を抑制するためにキャリアの表面抵抗を下げる設計であることがより好ましく、また、キャリア現像の発生を抑制するために高電界がかかったときのキャリアの抵抗が下がらないように設計することが好ましい。このような設計とするために本実施形態に係るキャリアは、キャリア内部の抵抗がキャリア表面の抵抗よりも大きい構成であることが好ましい。後掲する実施例のキャリアBは、キャリア芯材を2層の樹脂被覆層で被覆しており、この2層をキャリア芯材側から順に下層、上層とすると、下層には導電性微粒子を添加せず、上層に導電性微粒子を添加することで製造しており、キャリアの内部は抵抗が高く、キャリアの表面抵抗は低い構成としている。このような構成の他にも、キャリア芯材の抵抗を高くしたうえで、導電性微粒子を多く添加したコート樹脂液でキャリア芯材を被覆することでも、本開示に係る二成分現像剤に適したキャリアを製造できる。
【0083】
本実施形態に係るキャリアにあっては、樹脂被覆層で被覆されたキャリアの見掛密度が2.0g/cm以上2.5g/cm以下であることがより好ましく、またキャリアの移動度が25g/秒以上35g/秒以下であることが好ましい。キャリアの見掛密度又は移動度が上記範囲内にあることで、現像剤磁気穂の抵抗値を本開示で規定する範囲内に合わせやすくなるが、キャリアの見掛密度又は移動度は上記範囲に必ずしも限定されるものではない。
【0084】
<キャリア芯材>
キャリア芯材としては、当該技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、鉄、銅、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性金属酸化物が挙げられる。これらのキャリア芯材であれば、磁気ブラシ現像法に用いる現像剤に好適なキャリアが得られる。
【0085】
これらのなかでも、フェライト成分を含む粒子がキャリア芯材として好ましい。フェライトは、飽和磁化が高く、密度の小さいコートキャリアを得ることができるので、現像剤におけるその使用において感光体へのコートキャリア付着が起こり難く、ソフトな磁気ブラシが形成されてドット再現の高い画像が得られる。
【0086】
フェライトとしては、例えば、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、ニッケル-亜鉛系フェライト、マンガン-マグネシウム系フェライト、銅-マグネシウム系フェライト、マンガン-亜鉛系フェライト、マンガン-銅-亜鉛系フェライト、マンガン-マグネシウム-ストロンチウム系フェライトが挙げられる。
【0087】
フェライトは、公知の方法で作製できる。例えば、Fe、Mg(OH)等のフェライト原料を混合し、この混合粉を加熱炉で加熱して仮焼する。得られた仮焼品を冷却後、振動ミルで1μm程度の粒子となるように粉砕し、粉砕粉に分散剤と水を加えてスラリーを作製する。このスラリーを湿式ボールミルで湿式粉砕し、得られる懸濁液をスプレードライヤーで造粒乾燥することによって、フェライトの粒子が得られる。
【0088】
キャリア芯材の平均一次粒子径は、25μm以上50μm以下であるのが好ましく、30μm以上50μm以下であるのがより好ましい。キャリア芯材の平均一次粒子径が上記の範囲であれば、感光体に形成された静電潜像にトナーを安定して搬送することができるとともに、長期間にわたって高精細な画像を形成することができる。キャリア芯材の平均一次粒子径が上記下限未満では、キャリア付着のコントロールが困難になるおそれがある。一方、キャリア芯材の平均一次粒子径が上記上限を超えると、高精細な画像を形成できないおそれがある。
【0089】
<キャリア用樹脂>
樹脂被覆層を形成する樹脂としては特に限定されず、当該技術分野で常用されるものを使用でき、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ-n-ブチルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレート、含フッ素ポリアクリレート、スチレン-メタクリレート共重合体、スチレン-ブチルメタクリレート共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体が挙げられる。
【0091】
市販のアクリル樹脂としては、例えば、三菱レイヨン株式会社製の商品名:ダイヤナールSE-5437、積水化学工業株式会社製の製品名:エスレックPSE-0020、三洋化成工業株式会社製の商品名:ハイマーST95、三井化学株式会社製の商品名:FM601が挙げられる。
【0092】
シリコーン樹脂は、トナースペントを抑制するとともに、キャリア芯材と樹脂被覆層との密着性を良好にすることができ、なかでも架橋型シリコーン樹脂が好ましい。
【0093】
市販の架橋型シリコーン樹脂としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名:SR2400、SR2410、SR2411、SR2510、SR2405、840RESIN、804RESIN、信越化学工業株式会社製の商品名:KR350、KR271、KR272、KR274、KR216、KR280、KR282、KR261、KR260、KR255、KR266、KR251、KR155、KR152、KR214、KR220、X-4040-171、KR201、KR5202、KR3093が挙げられる。
【0094】
樹脂被覆層を形成する樹脂としては、シリコーン樹脂、特に架橋型シリコーン樹脂が好ましく、その好ましい特性を損なわない範囲で他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アセタール樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン、フッ素樹脂、これらの共重合体樹脂・配合樹脂等が挙げられ、これらのなかでも帯電能が高い点でアクリル樹脂が好ましい。例えば、シリコーン樹脂(特に架橋型シリコーン樹脂)で形成される樹脂被覆層の耐湿性、離型性等をより高めるために、二官能性シリコーンオイルを含んでいてもよい。
【0095】
<導電性微粒子>
樹脂被覆層は、導電性微粒子を含有することが好ましい。これによりキャリアのトナーへの帯電付与能力を安定して高めることができる。すなわち、キャリアのチャージアップを抑制できる。
【0096】
導電性微粒子としては特に限定されず、当該技術分野で常用される導電性微粒子を使用でき、例えば、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタン・酸化スズ等の酸化物が挙げられる。
【0097】
カーボンブラックは、少ない添加量で導電性を発現させることができ、ブラックトナーには好適である。一方、樹脂被覆層からのカーボンブラックの脱離が懸念されることから、カラートナーにはアンチモンをドープさせた導電性酸化チタンが好適である。
【0098】
導電性微粒子の配合量は特に限定されないが、樹脂被覆層を形成する樹脂100質量部に対して1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、1質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。導電性微粒子の配合量が上記下限未満では、導電性微粒子の配合による効果が得られないおそれがある。一方、導電性微粒子の配合量が上記上限を超えると、樹脂被覆層を均一に形成できないおそれがある。
【0099】
<カップリング剤>
樹脂被覆層は、トナー帯電量を調整する目的で、シランカップリング剤のようなカップリング剤をさらに含んでいてもよい。シランカップリング剤のなかでも、電子供与性の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、例えば、下記式で示されるアミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
(Y)Si(R)
(式中、Rは同一又は異なってC~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基又は塩素原子を示し、Yは同一又は異なってアミノ基を含有するC~C10飽和炭化水素及び/又は芳香族炭化水素基を示し、m及びnはそれぞれ1~3の整数を示し、m+n=4である)
【0100】
上記式において、Rで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、これらのなかでも、メチル基が好ましい。
【0101】
上記式において、Rで示されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基等の炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられ、これらのなかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0102】
上記式において、Yで示されるアミノ基を含有する飽和炭化水素及び/又は芳香族炭化水素基としては、例えば、-(CH-X(式中、Xはアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、フェニルアミノ基又はジアルキルアミノ基を示し、aは1~4の整数である)、-Ph-X(式中、Xは前記に同じであり、-Ph-はフェニレン基を示す)等が挙げられる。
【0103】
アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
N(HC)Si(OCH
N(HC)Si(OC
N(HC)Si(CH)(OCH
N(HC)HN(HC)Si(CH)(OCH
NOCHN(HC)Si(OC
N(HC)HN(HC)Si(OCH
N-Ph-Si(OCH(式中、-Ph-はp-フェニレン基を示す)
Ph-HN(HC)Si(OCH(式中、Ph-はフェニル基を示す)
(HN(HC)Si(OCH
【0104】
上記のカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。カップリング剤の配合量は特に限定されないが、キャリア用樹脂100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、5質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。カップリング剤の配合量が上記範囲内であれば、トナーに十分な電荷を付与でき、また樹脂被覆層の機械的強度が著しく低下することもない。
【実施例0105】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本開示のトナーを具体的に説明する。まず、各種測定方法及び評価方法について説明する。なお、以下において、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーのことを「外添トナー」ともいう。
【0106】
<測定方法>
-現像剤の見掛密度の測定方法-
現像剤50gを50mlのポリ瓶(アイボーイ、アズワン株式会社製)に入れ、ポリ瓶の外周をボールミルにて200rpmの速度で120秒間回転させて撹拌し、現像剤を取り出した。取り出した現像剤の見掛密度を、JIS Z 2504(金属粉-見掛密度測定方法)に準じた治具及び測定方法を用いて測定した。
【0107】
-トナーの体積抵抗率の測定方法-
トナー1gを粉末成形ダイスに入れ、卓上プレス機を用いて20kNで30秒間プレスすることで成形試料を作製した。この成形試料に対し、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準じて体積抵抗率の測定を行った。
【0108】
-現像剤磁気穂の抵抗値の測定方法-
ガラスエポキシ樹脂の土台に電極として、厚さ1mmのステンレス板2枚を1mmの間隔を空け平行に設置した治具を用いた。抵抗値を測定する現像剤を、電極間容積の20%の充填率となるように計量し、電極間に挿入した。電極であるステンレス板の外側から100mT(ミリテスラ)の異方性フェライト磁石2個をN極とS極を向かい合わせにして挟み込み、電極間に現像剤の磁気穂を形成した。各電極に配線し、エレクトロメータ(型式:R8340、株式会社アドバンテスト製)を接続し、1000V又は600Vの電圧を印加した。印加開始後1秒後の電流値を測定することで、現像剤磁気穂の抵抗値を算出した。この抵抗値の算出は、電極の単位面積1cmあたりとした。
【0109】
-外添剤によるトナー粒子表面の被覆率の測定方法-
トナーを走査型電子顕微鏡(SEM)(型式:S-4800、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で撮影した。トナー粒子(トナーコア)の平均粒子径と比重、各外添剤の平均粒子径と比重を用いて投影面積でのモデル計算を行い、下記式(1)を用いて各外添剤による被覆率Fを求めた。式中、Dはトナー粒子の平均粒子径[μm]、ρはトナー粒子の真比重、dは外添剤の平均粒子径[μm]、ρは外添剤の真比重、Cは(外添剤の質量)/(トナーの質量)である。
【0110】
【数1】
【0111】
-トナー粒子の見掛粘度の測定方法-
フローテスター(商品名:CFT-100C、株式会社島津製作所製)において、荷重10kgf/cm(0.98MPa)を与えてトナー1gがダイ(ノズル口径1.0mm、長さ1.0mm)から押出されるように設定し、昇温速度6℃/分で80℃から120℃まで加熱し、溶融粘度(見掛粘度[Pa・s])を求めた。
【0112】
<評価方法>
評価機としてカラー複合機(商品名:BP-20C25、シャープ株式会社製)を用いた。環境試験室にて、温度及び湿度が25℃5%RH、25℃50%RH、25℃80%RHである3環境を用意した。それぞれの環境毎に評価機を稼働させ、A4用紙計1万枚の印刷を行うことで劣化した現像剤を、各種評価に使用した。
【0113】
-キャリア現像の評価方法-
キャリア現像の評価は、25℃5%RHの環境下で評価機を稼働することで劣化した現像剤を用いて行った。現像剤中のトナー濃度(以下、T/Dともいう)が4質量%に下がるまでベタ画像をA4用紙に印刷し、T/Dが4質量%になった時点からベタ画像を更に5枚印刷して、この5枚の用紙上に存在するキャリア現像に起因する白斑の総数に基づいて評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
【0114】
○(良好):白斑が0個である。
△(可) :白斑が1個である。
×(不可):白斑が2個以上である。
【0115】
-現像メモリの評価方法-
現像メモリの評価は、25℃80%RHの環境下で評価機を稼働することで劣化した現像剤を用いて行った。T/Dが4質量%に下がるまでベタ画像をA4用紙に印刷した後、評価機にトナー補給の命令をかけ、T/Dを12質量%まで上昇させた。次いで、A4用紙5枚に対し、現像メモリを評価する評価チャートを印刷した。この評価チャートは、マグローラー1周分の走行距離と同サイズの画像が印字され、当該画像以外の部分にはハーフトーンが印字されるものである。現像メモリが発生すれば、マグローラー1周分の走行距離と同サイズの画像の残像がハーフトーン部分に印字される。A4用紙1枚に現れ得る残像の最大数は5個であるため、A4用紙5枚に現れ得る残像の最大数25個である。この5枚の評価チャート中の現像メモリに起因する残像の総数に基づいて評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
【0116】
◎(優秀):残像が0個である。
○(良好):残像が1個である。
△(可) :残像が2個以上5個以下である。
×(不可):残像が6個以上である。
【0117】
<トナー粒子(トナーコア)の作製例>
-トナー粒子(I)の作製-
(材料混合・混練・粉砕・分級工程)
トナー粒子(I)の作製には、以下の材料を使用した。
・結着樹脂
非晶性ポリエステル樹脂 62質量%
結晶性ポリエステル樹脂 25質量%
・着色剤
C.I.Pigmant Blue 15:3(DIC株式会社製) 7質量%
・離型剤
エステルワックス(商品名:WEP-5、日油株式会社製) 5質量%
・帯電制御剤
サリチル酸系化合物(商品名:ボントロンE-84、オリエント化学工業株式会社製) 1質量%
【0118】
気流混合機(ヘンシェルミキサー、型式:FM20C、日本コークス工業株式会社製)を用いて、上記の材料を5分間、前混合した後、オープンロール型連続混練機(型式:MOS320-1800、日本コークス工業株式会社製)を用いて、溶融混練して溶融混練物を得た[混合・混練工程]。オープンロールの設定条件を、加熱ロールの供給側温度130℃、排出側温度100℃、冷却ロールの供給側温度40℃、排出側温度25℃とした。加熱ロール及び冷却ロールとして、直径320mm、有効長1550mmのロールを用い、供給側及び排出側におけるロール間ギャップをいずれも0.3mmとした。また、加熱ロールの回転数を75rpm、冷却ロールの回転数を65rpmとし、トナー材料の供給量を5.0kg/hとした。得られた溶融混練物を、冷却ベルトで冷却させた後、φ2mmのスクリーンを有するスピードミルを用いて粗粉砕して粗粉砕品を得た[粗粉砕工程]。
【0119】
得られた粗粉砕品を、ジェット式粉砕機(型式:IDS-2、日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕して微粉砕物を得た[微粉砕工程]。
【0120】
次いで、得られた微粉砕物を、エルボージェット分級機(型式:EJ-LABO、日鉄鉱業株式会社製)を用いて分級して、平均一次粒子径6.0μmのトナー粒子(I)を得た[分級工程]。
【0121】
-トナー粒子(II)の作製-
結着樹脂の配合比率を以下のように変更した以外は上記トナー粒子(I)の作製方法と同様にして、トナー粒子(II)を得た。
・結着樹脂
非晶性ポリエステル樹脂 47質量%
結晶性ポリエステル樹脂 40質量%
【0122】
-トナー粒子(III)の作製-
微粉砕工程の粉砕圧力を10%上げた以外は上記トナー粒子(I)の作製方法と同様にして、トナー粒子(III)を得た。
【0123】
-トナー粒子(IV)の作製-
微粉砕工程の粉砕圧力を10%下げた以外は上記トナー粒子(I)の作製方法と同様にして、トナー粒子(IV)を得た。
【0124】
<外添トナーの作製例(外添工程)>
-外添トナー(ア)の作製-
トナー粒子表面に外添剤を付着させる外添工程は、第1外添工程と第2外添工程とに分けて行った。第1外添工程では、トナー粒子(I)を100質量部と、シリカ(商品名:H2000T、WACKER社製)0.9質量部と、シリカ(商品名:X-24-9163A、信越化学工業株式会社製)1.2質量部とを容器に投入し、容器の内容物をFMミキサー(型式:FM-20、日本コークス工業株式会社製)を用いて回転速度3500rpmで120秒間混合した。次いで、第2外添工程として、帯電制御剤としての微粉体0.8質量部(平均一次粒子径15nm)を容器に投入し、回転速度3500rpmで180秒間混合した。得られた混合物を270メッシュの篩を用いて篩別し、外添トナー(イ)を得た。なお、第2外添工程で添加した微粉体は、結晶形がα-アルミナである酸化アルミニウムを基体とし、その基体表面をジメチルポリシロキサンで表面処理したものである。
【0125】
-外添トナー(イ)の作製-
使用するトナー粒子をトナー粒子(II)に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(イ)を得た。
【0126】
-外添トナー(ウ)の作製-
使用するトナー粒子をトナー粒子(III)に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(ウ)を得た。
【0127】
-外添トナー(エ)の作製-
使用するトナー粒子をトナー粒子(IV)に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(エ)を得た。
【0128】
-外添トナー(オ)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を1.1質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、微粉体による被覆率が55%である外添トナー(オ)を得た。
【0129】
-外添トナー(カ)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を0.5質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、微粉体による被覆率が25%である外添トナー(カ)を得た。
【0130】
-外添トナー(キ)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を1.2質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、微粉体による被覆率が60%である外添トナー(キ)を得た。
【0131】
-外添トナー(ク)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を0.4質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、微粉体による被覆率が20%である外添トナー(ク)を得た。
【0132】
-外添トナー(ケ)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を平均一次粒子径10nmのものに変更し、第2外添工程で投入する微粉体を0.53質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(ケ)を得た。
【0133】
-外添トナー(コ)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を平均一次粒子径25nmのものに変更し、第2外添工程で投入する微粉体を1.35質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(コ)を得た。
【0134】
-外添トナー(サ)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を平均一次粒子径25nmのものに変更し、第2外添工程で投入する微粉体を0.66質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(サ)を得た。
【0135】
-外添トナー(シ)の作製-
第2外添工程で投入する帯電制御剤を、チタン酸ストロンチウム(商品名:SW-100、チタン工業株式会社製)0.8質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(シ)を得た。
【0136】
-外添トナー(ス)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を平均一次粒子径8nmのものに変更し、第2外添工程で投入する微粉体を0.43質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(ス)を得た。
【0137】
-外添トナー(セ)の作製-
第2外添工程で投入する微粉体を平均一次粒子径30nmのものに変更し、第2外添工程で投入する微粉体を1.6質量部に変更した以外は、上記外添トナー(ア)の作製方法と同様にして、外添トナー(セ)を得た。
【0138】
<キャリアの作製例>
-キャリアAの作製-
シリコーン樹脂1(商品名:KR240、信越化学工業株式会社製)0.375質量部、及びシリコーン樹脂2(商品名:KR251、信越化学工業株式会社製)0.375部をトルエン12質量部に溶解し、そこに導電性微粒子(商品名:VULCAN XC-72、キャボット社製)0.0375質量部、及びカップリング剤(製品名:AY43-059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.0225質量部を分散させることでコート樹脂液Aを調製した。
【0139】
キャリア芯材100質量部に対しコート樹脂液A12.8質量部を使用した。浸漬法により、キャリア芯材の表面をコート樹脂液Aで被覆した。キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmの篩にかけることでキャリアAを作製した。
【0140】
-キャリアBの作製-
シリコーン樹脂1(製品名:KR240、信越化学工業株式会社製)0.375質量部、及びシリコーン樹脂2(製品名:KR251、信越化学工業株式会社製)0.375質量部をトルエン12質量部に溶解し、そこにカップリング剤(製品名:AY43-059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.0225質量部を分散させることでコート樹脂液Bを調製した。
【0141】
シリコーン樹脂1(製品名:KR240、信越化学工業株式会社製)0.375質量部、及びシリコーン樹脂2(製品名:KR251、信越化学工業株式会社製)0.375質量部をトルエン12質量部に溶解し、そこに導電性微粒子(製品名:VULCAN XC-72、キャボット社製)0.0375質量部、及びカップリング剤(製品名:AY43-059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.0225質量部を分散させることでコート樹脂液Cを調製した。
【0142】
キャリア芯材100質量部に対し、コート樹脂液B6.4質量部及びコート樹脂液C6.4質量部を使用した。浸漬法により、まずキャリア芯材の表面をコート樹脂液Bで被覆した。キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を行った。その後、さらにコート樹脂液Cで被覆した。キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmの篩にかけることでキャリアBを作製した。
【0143】
-キャリアCの作製-
シリコーン樹脂1(製品名:KR240、信越化学工業株式会社製)0.375質量部、及びシリコーン樹脂2(製品名:KR251、信越化学工業株式会社製)0.375質量部をトルエン12質量部に溶解し、そこにカップリング剤(製品名:AY43-059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.0225質量部を分散させることでコート樹脂液Bを調製した。
【0144】
シリコーン樹脂1(製品名:KR240、信越化学工業株式会社製)0.375質量部、及びシリコーン樹脂2(製品名:KR251、信越化学工業株式会社製)0.375質量部をトルエン12質量部に溶解し、そこに導電性微粒子(製品名:VULCAN XC-72、キャボット社製)0.0714質量部、及びカップリング剤(製品名:AY43-059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.0225質量部を分散させることでコート樹脂液Dを調製した。
【0145】
キャリア芯材100質量部に対し、コート樹脂液B6.4質量部及びコート樹脂液D6.4質量部を使用した。浸漬法により、まずキャリア芯材の表面をコート樹脂液Bで被覆した。キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を行った。その後、さらにコート樹脂液Dで被覆した。キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmの篩にかけることでキャリアCを作製した。
【0146】
<二成分現像剤の作製例>
外添トナー(ア)~(セ)と、キャリアA~Cとを以下の表1に示すように組み合わせて、二成分現像剤である現像剤1~17を作製した。これらの二成分現像剤は、トナー濃度が7質量%になるように、V型混合機(商品名:V-5、株式会社徳寿工作所製)にて20分間混合することで作製した。
【0147】
【表1】
【0148】
表1は、各実施例・比較例における材料の種類、現像剤の物性及び評価結果を示したものである。なお、表1中の「トナー粒子の粒度分布における微粉割合」における「微粉」とは、トナー粒子の平均一次粒子径をDとしたときに、粒子径が0.6×D以下であるトナー粒子のことを表す。また、図4図7は、比較例1~3及び実施例1における、上記現像剤磁気穂の抵抗値の測定結果を示すグラフである。
【0149】
表1及び図4図7によれば、トナー及びキャリアを含有する二成分現像剤であって、前記トナーはトナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであり、前記外添剤は平均一次粒子径が10nm以上25nm以下の微粉体を含み、前記微粉体はアルミニウムを含み、前記二成分現像剤中の前記トナー濃度を4質量%としたときの、前記二成分現像剤の見掛密度は1.7g/cm以上2.0g/cm以下であり、0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に前記二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される長さ0.1cmの磁気穂に対し、1000Vの電圧を印加したときの抵抗値は前記電極1cmあたり1GΩ以上であり、且つ600Vの電圧を印加したときの抵抗値は前記電極1cmあたり22GΩ以下である実施例1~11の二成分現像剤は、キャリア現像及び現像メモリの発生を抑制できるものであった。
【0150】
これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~6は、キャリア現像及び現像メモリの評価結果のうち、少なくとも1項目の評価が実施例に対して劣っていた。
【0151】
90℃におけるトナー粒子の見掛粘度が100000Pa・s以上200000Pa・s以下である実施例1は、見掛粘度が100000Pa・s未満である実施例2よりも、現像メモリの発生を抑制できることがわかる。
【0152】
実施例3,4は、トナー粒子の粒度分布における微粉の割合を変化させた例である。ここでの微粉とは、トナー粒子の平均一次粒子径をDとしたときに、粒子径が0.6×D以下であるトナー粒子のことである。微粉の割合が20%以下である実施例1は、20%を超える実施例3よりも現像メモリの発生を抑制できることがわかる。また、微粉の割合が15%である実施例4では、実施例1よりも現像メモリの発生をさらに抑制できることがわかる。
【0153】
実施例5~8は、外添剤中の上記微粉体によるトナー粒子表面の被覆率を変化させた例である。この被覆率が25%以上55%以下である実施例5,6は、被覆率が55%を超える実施例7よりもキャリア現像の発生を抑制できることがわかる。また、被覆率が25%未満である実施例8よりも現像メモリの発生を抑制できることがわかる。
【0154】
実施例9,10及び比較例4,5は、外添剤中の上記微粉体の平均一次粒子径を変化させた例である。この平均一次粒子径が10nm以上25nm以下である実施例9,10は、平均一次粒子径が10nm未満である比較例4よりもキャリア現像の発生を抑制できることがわかる。また、平均一次粒子径が25nmを超える比較例5よりも現像メモリの発生を抑制できることがわかる。
【0155】
これらの実施例5~10のうち、現像メモリ及びキャリア現像の発生をより抑制できる実施例5,6,9,10は、密度0.9g/cm以上1.1g/cm以下に圧縮したときのトナーの体積抵抗率が2.0×1014Ω・cm以上3.7×1014Ω・cm以下である。換言すると、トナーの体積抵抗率を上記範囲とすることで、現像メモリ及びキャリア現像の発生をより抑制できることがわかる。
【0156】
二成分現像剤中のトナー濃度を1質量%変化した際の、上記磁気穂に600Vの電圧を印加したときの抵抗値の変化量が、上記電極1cmあたり1.0GΩ以下である実施例1は、当該抵抗値の変化量が上記上限を超える実施例11よりも、現像メモリの発生を抑制できることがわかる。なお、表1における当該抵抗値の変化量は、トナー濃度が4質量%から12質量%へと変化した際の値である。
【0157】
0.1cm互いに離隔して平行に配置され200mTの磁場がある2枚の電極間に、トナー濃度を12質量%とした二成分現像剤を充填率20%で充填して形成される長さ0.1cmの磁気穂に対し、600Vの電圧を印加したときの抵抗値は、上記電極1cmあたり30GΩ以下である実施例1~10は、当該抵抗値が30GΩを超える比較例1~3よりも、現像メモリの発生を抑制できることがわかる。また、当該抵抗値が24GΩ以下である実施例1と24GΩを超える比較例5とを比較すると、当該抵抗値が24GΩ以下である実施例1は現像メモリの発生をより抑制できることがわかる。
【0158】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0159】
1 感光体ドラム(感光体表面)
2 マグネットローラ(スリーブ表面)
C キャリア
T トナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7