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特開2024-125736シールド構造を有する電子機器、及び電子機器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125736
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】シールド構造を有する電子機器、及び電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240911BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20240911BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H05K9/00 G
H05K7/14 C
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033758
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】田中 太一
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 章弘
【テーマコード(参考)】
5E321
5E338
5E348
【Fターム(参考)】
5E321AA03
5E321AA05
5E321AA17
5E321AA41
5E321CC22
5E321GG01
5E321GG05
5E338AA03
5E338BB71
5E338CC05
5E338CD23
5E338EE13
5E348AA03
5E348AA05
5E348AA07
5E348AA16
5E348AA32
5E348AA40
(57)【要約】
【課題】プリント基板のめっき処理が不要で製造コストを低減可能なシールド構造を含む電子機器及び当該電子機器の製造方法を提供する。
【解決手段】電子機器は、導電性を有する部材で構成された筐体11と、第1面201と、第1面と対向する第2面202とを有し、第1面及び第2面の少なくともいずれか一方又は両方に電子部品を実装する配線領域Aを有するプリント基板20と、導電性を有する部材で構成され、第1面と向かい合うプリント基板側面301と、プリント基板側面と対向し筐体と接触する筐体側面302と、を有するシール部材30と、第1面上に配線領域を取り囲むように設けられてシール部材と接触するはんだ部材を含んで構成された導通部40、50と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する部材で構成された筐体(11)と、
第1面(201)と、前記第1面と対向する第2面(202)とを有し、前記第1面及び前記第2面の少なくともいずれか一方又は両方に電子部品を実装する配線領域(A)を有するプリント基板(20)と、
導電性を有する部材で構成され、前記第1面と向かい合う基板側面(301)と、前記基板側面と対向し前記筐体と接触する筐体側面(302)と、を有するシール部材(30)と、
前記第1面上に前記配線領域を取り囲むように設けられて前記シール部材と接触するはんだ部材を含んで構成された導通部(40、50)と、
を備える、電子機器(10)。
【請求項2】
前記導通部は、分散して配置された複数のはんだ部材(51)と、前記複数のはんだ部材間に存在する空隙部(52)と、を含んで構成される、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記空隙部の幅寸法は、シールドの対象である電磁波の波長の1/4以下とする、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
プリント基板(20)の配線の上にはんだを載せる工程と、
前記配線を含む配線領域(A)の外側に前記配線領域を囲むようにはんだを載せて導通部を形成する工程と、
前記配線領域上の所定の位置の前記はんだの上に電子部品を載せる工程と、
前記プリント基板を加熱して前記電子部品を前記プリント基板にろう接する工程と、
導電性を有する部材で構成されたシール部材(30)を介して前記プリント基板を筐体(11)に固定する工程と、
を含む、電子機器(10)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態はシールド構造を有する電子機器、及び電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器においては、電子機器外部から電子機器内部の電子部品への電磁的ノイズを抑制したり、反対に、電子機器内部の電子部品から電子機器外部への電磁的ノイズを抑制したりする必要がある。このような目的のために、EMC(Electromagnetic Compatibility)シールド構造が知られている。
【0003】
従来、EMCシールド構造として、金属筐体とプリント基板との接続に導電性シール材が使用されている。また、例えばプリント基板の銅箔に金や錫等を含むめっきを施すことで銅箔上に錆が生じることを防止し、導電性シール材とプリント基板との間の導通を確保することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1は、表面に電子部品が実装されるとともに導電層が形成されたプリント配線板と、一面が開放され、該開放面をプリント配線板の表面に接合されることにより、プリント配線板の表面に実装された電子部品を覆うシールドケースとを備え、プリント配線板に形成された導電層は、少なくともプリント配線板の表面に実装された電子部品の実装面側に対する領域一面に設けられているモジュール基板を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-150101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
めっき処理を行うためには別工程が必要となるため、製造コスト上の問題となる。
【0007】
そこで、プリント基板のめっき処理が不要で製造コストを低減可能なシールド構造を有する電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の電子機器は、導電性を有する部材で構成された筐体と、第1面と、前記第1面と対向する第2面とを有し、前記第1面及び前記第2面の少なくともいずれか一方又は両方に電子部品を実装する配線領域を有するプリント基板と、導電性を有する部材で構成され、前記第1面と向かい合うプリント基板側面と、前記プリント基板側面と対向し前記筐体と接触する筐体側面と、を有するシール部材と、前記第1面上に前記配線領域を取り囲むように設けられて前記シール部材と接触するはんだ部材を含んで構成された導通部と、を備える。
【0009】
本開示の電子機器の製造方法は、プリント基板の配線の上にはんだを載せる工程と、前記配線を含む配線領域の外側に前記配線領域を囲むようにはんだを載せて導通部を形成する工程と、前記配線領域上の所定の位置の前記はんだの上に電子部品を載せる工程と、前記プリント基板を加熱して前記電子部品を前記プリント基板にろう接する工程と、導電性を有する部材で構成されたシール部材を介して前記プリント基板を筐体に固定する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の電子機器の一例の概略構成を示す斜視図
図2】第1実施形態の電子機器の一例を図1のI-I線に沿って示す断面図
図3】第1実施形態の電子機器の一例を図1のII-II線に沿って示す断面図
図4】第1実施形態の電子機器の一例を下方から(図1のIII方向に)見て示す概略構成図
図5】第1実施形態の電子機器の製造方法の一例を示すフローチャート
図6】第2実施形態の電子機器の一例を下方から見て示す概略構成図(図4相当図)
図7】第2実施形態の電子機器の一例を示す断面図(図2相当図)
図8】プリント基板と筐体とを固定する箇所間の距離が所定以上に長い場合にプリント基板が撓んだ仮想的状態を示す電子機器の断面図(図2相当図)
図9】その他の実施形態の電子機器の一例を示す断面図(図2相当図)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して複数の実施形態による電子機器を説明する。複数の実施形態で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。なお、明細書において、図1で示す上下方向を電子機器10の上下方向と、左右方向を電子機器10の左右方向とし、上下方向及び左右方向に垂直な方向を電子機器10の前後方向とする。
【0012】
実施形態の電子機器10は、例えば車両に搭載するいわゆる車載用の電子機器である。図1及び2に示すように、電子機器10は、筐体11と、プリント基板20と、シール部材30と、を備える。筐体11は、導体の部材で構成されており、概ね矩形の箱状に形成されている。プリント基板20は、概ね矩形の板状に形成されて、図示しない電子部品が実装されている。プリント基板20は、筐体11内部に収容されて外部に露出しないように覆われている。シール部材30は、概ね矩形の板状に形成されて、プリント基板20と筐体11との間に配置されている。シール部材30は導電性の部材で構成されており、プリント基板20と筐体11とを導通させる機能を有する。
【0013】
筐体11は、筐体本体12と、カバー部材13とを有して構成される。筐体本体12は上面が開口した容器状に形成されている。筐体本体12は、側壁121と、底面122とを有する。側壁121は筐体本体12の外周面を形成する。底面122は、側壁121に囲まれて容器形状の底部を形成する。本実施形態では、筐体本体12は金属部材で構成されている。カバー部材13は、概ね矩形の板状に形成されて筐体本体12の上部の開口を閉塞する。本実施形態では、カバー部材13は金属部材で構成されている。筐体本体12とカバー部材13とは、螺子などの締結部材14によって例えば四隅を固定されている。なお、本実施形態では、カバー部材13は筐体本体12の側壁121の上端面121aに固定されている。これにより、カバー部材13によって閉塞された状態で、筐体11内部に側壁121と、底面122と、カバー部材13とで囲まれた空間が確保される。
【0014】
プリント基板20は、例えばガラス繊維を含有したエポキシ樹脂などの絶縁基材上に配線パターンが印刷されている。なお、プリント基板20は、絶縁基板が多層に積層されている積層プリント基板であっても良い。
【0015】
プリント基板20は、電子部品に加えてコネクタ15が実装されている。筐体本体12の一の面この場合前側の側壁121には、開口部121bが形成されている。開口部121bは、筐体11の内部と外部とを連通し、外部からのコネクタ15への接続を可能とする。この場合、コネクタ15は雌型コネクタであり、図示しない外部のコネクタは雄型コネクタである。
【0016】
プリント基板20は、第1面201と第2面202とを有する。第1面201は、筐体本体12の底面122に向かう面である。第2面202は、第1面201と対向する面で、上方つまり筐体本体12の開口側に向かっている。本実施形態においてコネクタ15は第1面201の長手方向の一端部この場合前端部に実装されている。
【0017】
図2、3に示すように、プリント基板20は螺子などの締結部材16によって例えば四隅を筐体本体12に固定されている。図4に示すように、プリント基板20は、例えば四隅に貫通孔21が形成されている。貫通孔21は、締結部材16を通過させてプリント基板20と筐体本体12との固定を可能にする。
【0018】
シール部材30は弾性を有する部材で構成されており、プリント基板20と筐体本体12との間の距離よりもやや大きな厚み寸方に設計されて、プリント基板20と筐体本体12とによって圧縮されることにより、両者とのひいては両者間の電気的接続を確実にしている。シール部材30は、例えばシリコンゴムなどの中実の合成樹脂に金属フィラーを配合して構成することによって、導電性及び弾性を有している。なお、他の実施形態では、シール部材30はスポンジ状又はジェル状であっても良い。
【0019】
図2、3に示すように、シール部材30は、筐体本体12の底面122の上に載置されている。シール部材30は、基板側面301と、筐体側面302とを有する。基板側面301はプリント基板20の第1面201と向かい合う。筐体側面302は、筐体11この場合筐体本体12の底面122と向かい合う。
【0020】
図4に示すように、プリント基板20は配線領域Aを有する。配線領域Aは、配線が印刷されている領域である。また、配線領域Aは、少なくとも一のEMCシールドが必要な電子部品が実装される領域である。配線領域Aはプリント基板20の第1面201又は第2面202の少なくともいずれか一方又は両方の中央部に配置されている。本実施形態では、配線領域Aは、少なくとも第1面201に設けられている。なおこの場合中央部とは、必ずしもプリント基板20の前後方向及び又は左右方向の中心に限らず、前後及び又は左右の縁部よりもプリント基板20に関して内側であることを示す。なおコネクタ15は配線領域Aの外側この場合配線領域Aよりも前寄りに実装されている。また、必要に応じて配線領域Aの外側に配線したり配線領域Aの外側に電子部品を実装したりしても良い。
【0021】
プリント基板20は、導通部40を有する。導通部40は、導電性を有しておりろう接に用いられる部材を含んで構成されており、プリント基板20とシール部材30との間の導通を可能にする。本実施形態では、導通部40ははんだを含んだ部材で構成される。導通部40は配線領域Aを取り囲むように一繋がりの帯状に配置されている。すなわち、導通部40は連続的に形成されている。本実施形態では、導通部40の外形は概ね矩形であって、四隅において貫通孔21を避けるように内側に向けて窪んでいる。また、導通部40の外形は長手方向の一辺この場合前側の一辺の中央部においてコネクタ15を避けるように内側に向けて窪んでいる。
【0022】
図5のフローチャートも参照してプリント基板20の製造方法について説明する。まず、ステップS11において絶縁基材の配線領域に配線パターンを形成して二次基板を作製する。この際、配線領域外であっても例えばコネクタ15を実装する箇所など必要に応じて配線パターンを施してよい。配線パターンの形成方法は、例えば、絶縁基材に銅箔を貼り合わせて、一次基板を作製し、一次基板の銅箔面にスクリーン印刷やフォトレジストを利用して所望の配線パターンを耐食性部材によって形成する。その後、腐食液で銅箔を溶解して除去し、次いで耐食性部材をアルカリ水用液などで除去して配線パターンを形成することができる。また、銅箔に替えて一次基板に銅ペーストをスクリーン印刷しても良い。
【0023】
ステップS12において、二次基板に錆止め処理を施して三次基板を作製する。これにより、表面に露出した銅を保護して銅の酸化や錆の発生を防止する。本実施形態では、鉛フリーの水溶性プリフラックスによって銅表面を処理する。
【0024】
続いて、ステップS13においてはんだ印刷を実施する。この場合、配線領域内の電子部品を実装する箇所と、コネクタ15を実装する箇所に加えて、導通部40を形成する箇所にはんだ印刷を施す。はんだ印刷は、例えば、所望のパターンに開口した版を介して鉛フリーのクリーム状のはんだを三次基板に施す。
【0025】
ステップS14において電子部品が所望の位置に配置される。そしてステップS15において、リフローが実施される。リフローは、基板全体をはんだの融点以上まで加熱する工程である。これにより、電子部品が基板にろう接され、また、導通部40が形成される。
【0026】
続いてステップS16においてプリント基板20がシール部材30を介して筐体11この場合筐体本体12に固定される。更にステップS17においてカバー部材13が筐体本体12に固定される。本実施形態ではカバー部材13又はプリント基板20と筐体本体12とは、それぞれ締結部材14、16により固定されるが、固定方法は既知の任意の固定方法を採用してかまわない。
【0027】
このようにして、EMCシールド構造を含む電子機器10が製造される。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、電子機器10は、筐体11と、プリント基板20と、シール部材30と、導通部40と、を備える。プリント基板20は、第1面201と、第1面201と対向する第2面202とを有し、第1面201及び第2面202の少なくともいずれか一方又は両方に電子部品を実装する配線領域Aを有する。シール部材30は、導電性を有する部材で構成され、第1面201と向かい合う基板側面301と、基板側面301と対向し筐体11と接触する筐体側面302と、を有する。導通部40は、第1面201上に配線領域Aを取り囲むように設けられてシール部材30と接触するはんだ部材を含んで構成されている。
【0029】
これにより、めっき処理することなくプリント基板20と筐体11との間の導通を確保することができる。導通部40は、電子部品をはんだによってろう接する際に同時に形成することができるため、導通確保のための追加の工程が不要となる。更にまた、例えば金などを含む高価なめっきに対して、はんだは安価であるため、材料コストを削減することができる。したがって、プリント基板20のめっき処理が不要で製造コストを低減可能なシールド構造を有する電子機器10が提供される。
【0030】
電子機器10の製造方法は、プリント基板20の配線の上にはんだを載せる工程と、配線を含む配線領域Aの外側に配線領域Aを囲むようにはんだを載せて導通部40を形成する工程と、配線領域A上の所定の位置のはんだの上に電子部品を載せる工程と、プリント基板20を加熱して電子部品をプリント基板20にろう接する工程と、導電性を有する部材で構成されたシール部材30を介してプリント基板20を筐体11に固定する工程と、を含む。
【0031】
これによれば、導通部40は、電子部品をはんだによってろう接してプリント基板20に実装する際に同時に形成することができるため、導通確保のための追加の工程が不要となる。したがって、めっき処理が不要で製造コストを低減可能なシールド構造を含む電子機器の製造方法が提供される。
【0032】
(第2実施形態)
図6図8を参照して第2実施形態について説明する。図6及び図7に示すように、本実施形態の電子機器10は、プリント基板20上に導通部50を備える。本実施形態の導通部50は、上記第1実施形態の導通部40のように一繋がりの帯状ではなく、断続的又は非連続的に形成されて全体として帯状に形成されている。
【0033】
導通部50は、上記実施形態の導通部40と同様に、配線領域Aを取り囲むように形成されている。また、導通部50の外形は概ね矩形であって、四隅において貫通孔21を避けるように内側に向けて窪んでいる。また、導通部50の外形は長手方向の一辺この場合前側の一辺の中央部においてコネクタ15を避けるように内側に向けて窪んでいる。
【0034】
導通部50は、複数のはんだ部材51と、複数の空隙部52とを含んで構成される。複数のはんだ部材51は、導電性を有しておりろう接に用いられる部材で構成され、プリント基板20とシール部材30との間の導通を可能にする。はんだ部材51は、導通部50において概ね均等に分散して配置されている。複数の空隙部52は、隣接するはんだ部材51間に設けられる。なお、図6及び図7において、はんだ部材51と空隙部52の符号は一部の構成のみに付されて残りは適宜省略されている。
【0035】
空隙部52の幅寸法wつまり隣接するはんだ部材51間の距離は、EMCシールドの対象とする電磁波の波長の1/4以下に設定されている。これにより、空隙部52から進入した対象波長以上の電磁波は回折現象が抑制される。したがって、はんだ部材51が非連続的に配置されていてもEMCシールド効果が発揮される。空隙部52の幅寸法wは、例えば10mm以下に設定することができるがこれに限定されない。
【0036】
ここで、はんだ部材を印刷した場合、はんだ部材の厚みが不均一になる可能性がある。すなわち印刷開始点である一端から他端に向けて厚みが増したり逆に減ったりする可能性がある。これははんだ印刷の実施距離が長くなれば長くなるほど顕著になる。
【0037】
更に、シール部材30の導電率は、シール部材30が受ける圧力に比例することが知られている。シール部材30は、プリント基板20と筐体11との間に固定された状態で、筐体11側に押し付けられている。プリント基板20は、シール部材30から反作用力を受ける。この場合、例えばプリント基板20の締結部材16による固定間隔が一定以上である場合、図8に示すように弾性を有するシール部材30に押し返されることでプリント基板20の中央部がシール部材30から離れる方向この場合上向きに撓む可能性がある。そして、プリント基板20が撓んだ結果、特に長辺に関する中央部においてシール部材30が受ける圧力が低下する虞がある。この場合、シール部材30の全体に亘って均一な導電率が得られないこととなる。
【0038】
これに対して、本実施形態の電子機器10は、分散して配置された複数のはんだ部材51と、複数のはんだ部材51間に存在する空隙部52と、を含んで構成される導通部50を備える。
【0039】
これによれば、はんだ部材51を不連続的つまり個々のはんだ部材51を細切れに短い寸法に印刷することで、一つのはんだ部材51内の厚みの偏りを小さくし、また、統計的に全体として厚みのばらつきが均等化されることが期待される。したがって、より確実な電子機器10のシールド効果が期待できる。
【0040】
さらに、はんだ部材51は連続的ではなくて不連続に分散して配置されているため、シール部材30ははんだ部材51の間つまり空隙部52に向かい合う部分で力を逃がすことができ、その結果、プリント基板20に対するシール部材30からの反作用力が中央部において偏って大きくなることを抑制することができる。したがって、プリント基板20が中央部において過度に撓むことを抑制でき、圧力がシール部材30の全体に対して比較的均等にかかるため、よりシール部材30は均一な導電率を確保することができる。したがって、全体的により確実な電子機器10のシールド効果が期待できる。
【0041】
空隙部の幅寸法52は、シールドの対象である電磁波の波長の1/4以下とする。
【0042】
これによれば、空隙部52から進入した対象波長以上の波長を有する電磁波は、導通部50で囲まれた領域内での回折現象が抑制される。したがって、はんだ部材51が非連続的に配置されていてもEMCシールド効果を発揮することができる。
【0043】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、電子機器10は、プリント基板20の一方の面この場合第1面201に導通部40を備えているがこれに限らない。例えば図9に示すようにプリント基板20はプリント基板20の一方の面この場合第1面201に加えて又は替えて第2面202に導通部を有していても良い。また、電子機器10は、シール部材30に加えて又は替えてプリント基板20の第2面202に向かい合うように配置されたシール部材31を備えていても良い。
【0044】
図9に示す実施形態では、プリント基板20は導通部40に加えて導通部60を有している。導通部60は、第2面202に配置されている。この場合、プリント基板20は第2面202にも図示しない配線領域を有しており、導通部60は、当該配線領域を取り囲むように帯状に形成されている。
【0045】
電子機器10は、プリント基板20の第1面201と向かい合うように配置されたシール部材30と、第2面202と向かい合うように配置されたシール部材31とを備える。更に、電子機器10は、カバー部材13に替えて、カバー部材17を備える。カバー部材17は、筐体本体12の開口部を閉塞するように配置されて、筐体本体12と共に箱状の筐体11を構成する。カバー部材17は、導電性の部材例えば金属で構成される。
【0046】
カバー部材17は、平面視で筐体本体12よりも一回り小さい概ね矩形の板状に形成されている。具体的には、カバー部材17の外形は、筐体本体12の側壁121よりも内側となるように設定されている。つまり、カバー部材17は、筐体本体12の側壁121ではなく底面122に固定されている。この場合、カバー部材17と、プリント基板20と、筐体本体12とは、例えば四隅をねじ等の締結部材18によって互いに固定されている。
【0047】
シール部材31は、基板側面311と、筐体側面312とを有する。基板側面311はプリント基板20の第2面202に向かい合うように配置され、導通部60を介してプリント基板20と導通する。筐体側面312は筐体11この場合カバー部材17と向かい合うように配置され、カバー部材17と導通する。
【0048】
本実施形態のプリント基板20は、上記第1実施形態で説明した製造方法と同様に製造することができる。この場合、一方の面例えば第1面201にはんだ印刷を施して、リフローにより電子部品をろう接及び導通部40を形成した後に、他方の面例えば第2面202にはんだ印刷を施してリフローにより電子部品をろう接及び導通部60を形成することができる。
【0049】
なお、図9に示す実施形態では、各導通部40、60は連続的に一繋がりの帯状に形成されているが、これに限らず、上記第2実施形態のように、各導通部40、60は非連続的に分散して全体として帯状に形成されていても良い。
【0050】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0051】
10…電子機器、11…筐体、12…筐体本体、12…カバー部材、17…カバー部材(その他の実施形態)、20…プリント基板、201…第1面、202…第2面、30…シール部材、301…基板側面、302…筐体側面、40…導通部、50…導通部(第2実施形態)、51…はんだ部材(第2実施形態)、52…空隙部(第2実施形態)、60…導通部(その他の実施形態)、A…配線領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9