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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125744
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】X線検出器及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/42 20240101AFI20240911BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A61B6/03 320R
A61B6/03 373
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033784
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 輝
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA35
4C093EA07
4C093EB13
4C093FA32
(57)【要約】
【課題】光子計数型のX線検出器を用いたCTスキャンにおいて、電荷の収集に用いる電圧の降下に起因するX線検出器の故障を回避すること。
【解決手段】実施形態に係るX線検出器は、複数の検出素子と、X線の照射を受けて前記検出素子内に蓄積された電荷を読み出すための電圧を前記検出素子に対して供給する電圧供給部とを備える光子計数型のX線検出器であって、当該X線検出器を用いたCTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の前記検出素子のうち、前記電圧供給部との間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定する特定部と、前記対象素子の少なくとも一部に対する前記電圧供給部からの電圧の供給を停止させる制御部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出素子と、X線の照射を受けて前記検出素子内に蓄積された電荷を読み出すための電圧を前記検出素子に対して供給する電圧供給部とを備える光子計数型のX線検出器であって、
当該X線検出器を用いたCTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の前記検出素子のうち、前記電圧供給部との間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定する特定部と、
前記対象素子の少なくとも一部に対する前記電圧供給部からの電圧の供給を停止させる制御部と
を備える、X線検出器。
【請求項2】
前記制御部は、前記対象素子のうち定められた素子に対する前記電圧供給部からの電圧の供給を停止させる、請求項1に記載のX線検出器。
【請求項3】
前記定められた素子は、検出面上に配列された複数の前記検出素子に対して、一定の間隔で設定される、請求項2に記載のX線検出器。
【請求項4】
前記特定部は、前記検出素子への入射線量に基づいて前記対象素子を特定する、請求項1に記載のX線検出器。
【請求項5】
前記特定部は、前記電圧供給部から前記検出素子に対して供給された電圧の計測値に基づいて前記対象素子を特定する、請求項1に記載のX線検出器。
【請求項6】
複数の検出素子と、X線の照射を受けて前記検出素子内に蓄積された電荷を読み出すための電圧を前記検出素子に対して供給する電圧供給部とを備える光子計数型のX線検出器の制御方法であって、
当該X線検出器を用いたCTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の前記検出素子のうち、前記電圧供給部との間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定し、
前記対象素子の少なくとも一部に対する前記電圧供給部からの電圧の供給を停止させる
ことを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線検出器及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光子計数型(フォトンカウンティング型)のX線検出器を用いたX線CT装置が知られている。光子計数型のX線検出器を用いたCTスキャンでは、任意の数のエネルギー帯(ビン)ごとに、入射したX線光子を計数する。これにより、X線CT画像を再構成するとともに、任意の数の物質ごとに物質弁別処理を行なうことも可能となる。更に、原理的に回路ノイズを抑制できるため、低線量でのCTスキャンを行なう場合でも画質を保つことが可能である。
【0003】
光子計数型のX線検出器は、例えば、半導体検出器により実現される。具体的には、X線の入射によって半導体検出器内に発生した電荷を、電圧を印加して出力させることにより、X線の検出信号を収集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-230408号公報
【特許文献2】特開2018-192237号公報
【特許文献3】特開2011-87781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、光子計数型のX線検出器を用いたCTスキャンにおいて、電荷の収集に用いる電圧の降下に起因するX線検出器の故障を回避することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線検出器は、複数の検出素子と、X線の照射を受けて前記検出素子内に蓄積された電荷を読み出すための電圧を前記検出素子に対して供給する電圧供給部とを備える光子計数型のX線検出器であって、当該X線検出器を用いたCTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の前記検出素子のうち、前記電圧供給部との間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定する特定部と、前記対象素子の少なくとも一部に対する前記電圧供給部からの電圧の供給を停止させる制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1B図1Bは、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るX線検出器の構成の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るCTスキャンの最中に取得された情報の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る対象素子に対する電圧供給の制御について説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る定められた素子の一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るCTスキャンの最中に取得された情報の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る電圧計の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、X線検出器及び制御方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、光子計数型のX線検出器12を含んだX線CT装置1を例として説明する。図1Aは、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示すブロック図である。例えば、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを備える。
【0010】
図1Aにおいては、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、図1Aは、説明のために架台装置10を複数方向から描画したものであり、X線CT装置1が架台装置10を1つ有する場合を示す。
【0011】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18とを備える。
【0012】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。
【0013】
X線検出器12は、複数の検出素子(画素)からなり、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号をDAS18へと出力する。ここで、X線検出器12は、光子計数型(フォトンカウンティング型)X線検出器の一例である。例えば、X線検出器12は、入射したX線フォトンを直接的に電気信号に変換する直接変換型の検出器である。直接検出型の検出器としては、例えば、半導体検出器の両端に電極が取り付けられた半導体ダイオードが適用可能である。
【0014】
半導体検出器に入射したX線光子は、電子・正孔対に変換される。なお、1つのX線光子の入射により生成される電子・正孔対の数は、入射したX線光子のエネルギーに依存する。電子と正孔とは、半導体検出器の両端に形成された一対の電極に各々引き寄せられ、一対の電極は、電子・正孔対の電荷に応じた波高値を有する電気信号を発生する。一個の電気信号は、入射したX線光子のエネルギーに応じた波高値を有する。
【0015】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17、DAS18等を更に支持することもできる。以下では、架台装置10において、回転フレーム13、及び、回転フレーム13と共に回転移動する部分を、回転部(ロータ)とも記載する。また、架台装置10において回転しない部分を、固定部(ステータ)とも記載する。固定部は、回転部を支持する。
【0016】
制御装置15は、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行なう。ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのX線フィルタである。コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むX線絞りである。コリメータ17の絞り込み範囲は、機械的に駆動可能であってよい。
【0017】
DAS18は、X線検出器12が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS18は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行なう増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。
【0018】
DAS18が生成したデータは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば、固定フレーム等。図1Aでの図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム13を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。また、X線検出器12とDAS18とは、一体型の検出器ユニットDUとして形成されてもよい。
【0019】
寝台装置30は、CTスキャンの対象となる被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0020】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インタフェース43と、処理回路44とを備える。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0021】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ41は、CTスキャンにより収集された投影データや、投影データに基づいて再構成されたX線CT画像を記憶する。また、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。メモリ41は、X線CT装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0022】
ディスプレイ42は、処理回路44による制御のもと、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、入力インタフェース43を介してユーザから各種の指示や設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。また、ディスプレイ42は、X線CT画像に基づいて生成された表示用画像を表示させる。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、処理回路44と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0023】
入力インタフェース43は、ユーザから各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インタフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース43は、処理回路44と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース43は、モーションキャプチャによりユーザからの入力操作を受け付ける回路であっても構わない。一例を挙げると、入力インタフェース43は、トラッカーを介して取得した信号やユーザについて収集された画像を処理することにより、ユーザの体動や視線等を入力操作として受け付けることができる。また、入力インタフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線CT装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も、入力インタフェース43の例に含まれる。
【0024】
処理回路44は、制御機能44a及び出力機能44bを実行することで、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、制御機能44aに対応するプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより、制御機能44aとして機能する。同様にして、処理回路44は、出力機能44bとして機能する。
【0025】
例えば、制御機能44aは、入力インタフェース43を介して受け付けたユーザからの指示に従い、架台装置10及び寝台装置30の動作を制御して、被検体Pに対するCTスキャンを実行する。
【0026】
例えば、制御機能44aは、X線高電圧装置14を制御することにより、X線管11に高電圧を供給する。これにより、X線管11は、被検体Pに対し照射するX線を発生する。また、制御機能44aは、寝台駆動装置32を制御することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内へ移動させる。また、制御機能44aは、ウェッジ16の位置、及び、コリメータ17の開口度及び位置を調整することで、被検体Pに照射されるX線の分布を制御する。
【0027】
また、制御機能44aは、X線検出器12及びDAS18を制御することにより、X線管11から照射されたX線を検出し、検出データを収集する。具体的には、X線検出器12は、図1Bに示すように、複数の検出素子12Aと電圧供給装置12Bとを備える。複数の検出素子12Aは、半導体検出器と電極とから構成される。当該構成においてX線が半導体検出器に入射した時、半導体検出器の内部には電荷が発生する。そして、電極を介して電圧供給装置12Bから半導体検出器に対して電圧を印加することにより、半導体検出器の内部に発生した電荷を収集することができる。
【0028】
即ち、半導体検出器と電極との組み合わせにより検出素子12Aが構成され、半導体検出器に対して複数の電極を取り付けることにより、複数の検出素子12Aが構成される。そして、制御機能44aは、電圧供給装置12Bの動作を制御し、複数の検出素子12Aに対して電圧を供給することにより、検出素子12Aの各々から電荷を出力させる。また、制御機能44aは、DAS18の動作を制御し、検出素子12Aから出力された電荷に基づく検出データを収集する。
【0029】
制御機能44aは、CTスキャンにより収集された検出データに基づく各種の処理を行なうこともできる。例えば、制御機能44aは、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正、散乱線補正、ダークカウント補正等の前処理を施す。なお、前処理を施した後の検出データについては、生データとも記載する。また、前処理を施す前の検出データと前処理を施した後の生データとを総称して、投影データとも記載する。更に、制御機能44aは、投影データに対してフィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行なうことにより、X線CT画像を生成する。投影データやX線CT画像といった各種のデータは、適宜、メモリ41に記憶される。
【0030】
出力機能44bは、各種のデータの出力を制御する。例えば、出力機能44bは、ディスプレイ42における表示の制御を行なう。例えば、出力機能44bは、入力インタフェース43を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、X線CT画像を任意の断面画像や任意視点方向のレンダリング画像といった表示用画像に変換し、ディスプレイ42に表示させる。また、例えば、出力機能44bは、投影データやX線CT画像といった各種のデータを、外部の画像保管装置に対し送信して保存させる。
【0031】
図1Aに示すX線CT装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路44は、メモリ41からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路44は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0032】
なお、図1Aにおいては単一の処理回路44にて、制御機能44a及び出力機能44bが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路44を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0033】
また、処理回路44は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路44は、メモリ41から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線CT装置1とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1Aに示す各機能を実現する。
【0034】
また、図1Bに示した通り、X線検出器12は、処理回路12Cを備える。例えば、処理回路12Cは、特定機能12Caに対応するプログラムをメモリDから読み出して実行することにより、特定機能12Caとして機能する。同様にして、処理回路12Cは、制御機能12Cbとして機能する。
【0035】
特定機能12Caは、X線検出器12を用いたCTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の検出素子12Aのうち、電圧供給装置12Bとの間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定する。制御機能12Cbは、対象素子の少なくとも一部に対する電圧供給装置12Bからの電圧の供給を停止させる。特定機能12Caは、特定部の一例である。制御機能12Cbは、制御部の一例である。なお、特定機能12Ca及び制御機能12Cbによる処理の詳細については後述する。
【0036】
図1Bに示すX線検出器12においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ12Dへ記憶されている。処理回路12Cは、メモリ12Dからプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路12Cは、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0037】
なお、図1Bにおいては単一の処理回路12Cにて、特定機能12Ca及び制御機能12Cbが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路12Cを構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路12Cが有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0038】
また、これまで、単一のメモリが処理回路の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリを分散して配置し、処理回路は、個別のメモリから対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。例えば、処理回路12Cは、X線検出器12が備える回路内に論理回路として直接組み込まれてもよい。なお、この場合、X線検出器12はメモリ12Dを備えなくてもよい。
【0039】
以上、X線CT装置1の構成例について説明した。かかる構成の下、X線CT装置1は、光子計数型のX線検出器12を用いたCTスキャンにおいて、光子計数型のX線検出器を用いたCTスキャンにおいて、電荷の収集に用いる電圧の降下に起因するX線検出器の故障を回避することを可能とする。
【0040】
まず、図2及び図3を用いて、X線検出器12の具体的な構成例について説明する。図2及び図3は、第1の実施形態に係るX線検出器12の構成の一例を示す図である。なお、本実施形態では、X線検出器12とDAS18とが一体型の検出器ユニットDUとして形成される例について説明する。
【0041】
図2は、検出器ユニットDU(X線検出器12)をX線入射方向から見た図である。図2に示す検出器ユニットDUは、N個の検出器モジュールM(検出器モジュールM_1~M_N)をチャネル方向(チャンネル方向)に並べて配置することにより構成される。
【0042】
1つの検出器モジュールMには、複数の検出素子A(検出素子群)が含まれる。例えば、図3に示す通り、N個の検出器モジュールMのうちn番目の検出器モジュールMである検出器モジュールM_nには、複数の検出素子12A_nが含まれる。同様に、検出器モジュールM_n+1には、複数の検出素子12A_n+1が含まれる。同様に、検出器モジュールM_n+2には、複数の検出素子12A_n+2が含まれる。
【0043】
図3では、各検出素子群に対して電圧供給装置12Bが1つずつ接続される例を示している。例えば、検出器モジュールM_nに含まれる複数の検出素子12A_nに対しては、電圧供給装置12B_nが接続されている。また、検出器モジュールM_n+1に含まれる複数の検出素子12A_n+1に対しては、電圧供給装置12B_n+1が接続されている。また、検出器モジュールM_n+2に含まれる複数の検出素子12A_n+2に対しては、電圧供給装置12B_n+2が接続されている。
【0044】
電圧供給装置12Bは、複数の検出素子Aに対して電圧(バイアス電圧)を印加する。電圧供給装置12Bは、例えば、図示しない電圧電源装置から供給される低電圧(LV)を高電圧(HV)に昇圧するトランス(変圧器)であり、昇圧した高電圧(HV)を検出素子Aに供給する。
【0045】
なお、電圧供給装置12Bから検出素子Aに供給される電圧の具体的な値について特に限定されるものではないが、X線検出器12の構成によっては高い電圧が印加される場合がある。例えば、X線検出器12に含まれる半導体検出器がCdTeやCdTeZn(CZT)で実現される場合、検出素子Aに対してはkVオーダー程度の高電圧が供給される。また、例えば、X線検出器12に含まれる半導体検出器がSiで実現される場合、検出素子Aに対しては、CdTeやCdTeZnと同等またはそれよりも高い数kVの高電圧が供給される。
【0046】
CTスキャンが実行されている間、制御機能44aは、検出器モジュールMごとに、電圧供給装置12Bから検出素子12Aに対して電圧を供給させることにより、検出素子12Aに蓄積された電荷を出力させる。これにより、制御機能44aは、検出素子12Aに蓄積された電荷を検出信号として収集することができる。
【0047】
ここで、検出素子12Aに対して照射されるX線の線量に応じて、電荷の収集に用いる電圧が降下してしまう場合がある。具体的には、照射されるX線の線量が多い場合、検出素子12A内に多くの電荷が発生し、電荷の収集を行なう際に大きな電流が回路に流れることによって、検出素子12Aに印加される電圧が降下してしまう場合がある。
【0048】
このような電圧の降下は、X線の線量の偏りにより、一部の検出素子12Aにおいてのみ発生する場合がある。この時、CTスキャンにより収集される投影データのうち、電圧の降下が発生した検出素子12Aに対応した画素にアーチファクトが発生するとともに、X線検出器12の故障を引き起こす場合もある。例えば、複数の検出器モジュールMのうちの一部においてのみ電圧の降下が発生した場合、隣接する検出器モジュールMとの間に電位差が生じ、放電が発生することで、X線検出器12が故障してしまう場合がある。特に、隣接する検出器モジュールMとの間隔が短い場合は放電が発生しやすく、また、電荷の収集に高電圧を用いている場合にはX線検出器12の故障に至るケースが多い。
【0049】
X線検出器12の故障を回避する手段の1つとして、電圧供給装置12Bを大電流に対応した設計とし、電圧の降下を防ぐことが考えられる。例えば、回路に流れる電流の上限値は、X線管11から照射可能な最大線量のX線が、被検体P等による減衰を受けない状態で検出素子12Aに入射した時に流れる電流値であり、推定が可能である。そして、推定した電流の上限値にも対応できるように、電圧供給装置12Bを設計することが考えられる。しかしながら、電圧供給装置12Bを大電流に対応した設計とすることは、サイズやコストの制限により実装上は難しい。
【0050】
そこで、第1の実施形態のX線CT装置1は、以下で詳細に説明する処理回路44の処理によって、光子計数型のX線検出器12を用いたCTスキャンにおいて、X線検出器12の故障を回避する。具体的には、特定機能12Caは、X線検出器12を用いたCTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の検出素子12Aのうち、電圧供給装置12Bとの間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定する。そして、制御機能12Cbは、対象素子の少なくとも一部に対する電圧供給装置12Bからの電圧の供給を停止させる。
【0051】
まず、特定機能12Caによる対象素子の特定について図4を用いて説明する。図4では、CTスキャンの最中に取得された情報の一例として、ある検出素子12A(以下、検出素子12Aaとする)への入射線量を示している。具体的には、図4では、CTスキャン開始後の経過時間に対して、検出素子12Aaへの入射線量を対応付けたグラフを示している。
【0052】
特定機能12Caは、CTスキャンの最中、検出素子12Aaへの入射線量を経時的に取得する。なお、特定機能12Caは、図4のグラフを生成してもよいし、グラフを生成することなく単に入射線量を経時的に取得してもよい。また、図4の横軸は、ビュー数に置換してもよい。
【0053】
例えば、特定機能12Caは、検出素子12Aaへの入射線量を、検出素子12Aaから出力された検出信号に基づいて取得する。例えば、検出素子12Aaから出力された検出信号は、入射線量が大きいほど波高値の大きい電気パルスとなる。従って、特定機能12Caは、検出信号に基づく波高値を、入射線量に換算することができる。また、投影データにおいては、入射線量が大きいほど、検出素子12Aaに対応した位置の画素値が大きくなる。従って、特定機能12Caは、検出信号に基づく画素値を、入射線量に換算することができる。なお、特定機能12Caは、検出素子12Aaに対応した位置の画素値について、DAS18又はコンソール装置40から通知を受けることができる。
【0054】
なお、特定機能12Caは、検出素子12Aaへの入射線量を、検出素子12Aaの周辺の検出素子12A(以下、周辺素子とする)から出力された検出信号に基づいて取得してもよい。例えば、特定機能12Caは、検出素子12Aaへの入射線量を、周辺素子から出力された検出信号の平均値に基づいて取得する。或いは、特定機能12Caは、周辺素子のそれぞれについて、当該周辺素子への入射線量を当該周辺素子から出力された検出信号に基づいて取得する。そして、特定機能12Caは、周辺素子への入射線量の平均値を、検出素子12Aaへの入射線量として取得する。
【0055】
図4に示す例では、CTスキャンの開始後、検出素子12Aaへの入射線量が次第に増加している。このような経時的な入射線量の変化は、X線管11からの出力線量の増加に起因する場合もあるが、出力線量が一定でも発生する場合がある。例えば、CTスキャンではX線の照射角度が順次変化するため、検出素子12AaへのX線パス上に存在する被検体Pの経路長や物質が変化することで、検出素子12Aaへの入射線量が変化する場合がある。
【0056】
そして、図4に示す例では、時間T1において、検出素子12Aaへの入射線量が閾値を超えている。このような閾値は、例えば、検出素子12Aへの印加電圧の降下が発生する入射線量として、経験的に設定される。即ち、閾値より線量の大きいX線が検出素子12Aaに入射した場合、検出素子12Aaと電圧供給装置12Bとの間の回路上に大電流が流れ、検出素子12Aaに対して電圧供給装置12Bから供給される電圧が降下するとともに、X線検出器12の故障の原因となる可能性がある。
【0057】
そこで、特定機能12Caは、検出素子12Aaへの入射線量が閾値を超えた場合、検出素子12Aaを、電圧供給装置12Bとの間の回路上に大電流が流れる対象素子として特定し、制御機能12Cbは、対象素子に対する電圧供給装置12Bからの電圧の供給を停止させる。なお、通常、X線検出器12は微小な検出素子12Aを多数備えるものであるから、1つの検出素子12Aにおいてのみ入射線量が閾値を超えるということはなく、入射線量が閾値を超えた検出素子12Aが略同時に複数発生する。この場合、制御機能12Cbは、対象素子の少なくとも一部に対する電圧供給装置12Bからの電圧の供給を停止させる。
【0058】
以下、対象素子に対する電圧供給の制御について、図5を用いて説明する。図5は、複数の検出素子12Aと電圧供給装置12Bとを含む回路の概略図である。
【0059】
具体的には、図5に示す電極e1~e8及び半導体検出器により、複数の検出素子12Aが構成される。例えば、負極側の電極e1と半導体検出器と正極側の電極e8とにより、第1の検出素子12Aが構成される。即ち、入射X線に起因して半導体検出器内に電荷が発生し、電極e1と電極e8とを介して電圧供給装置12Bから電圧が印加されることで、発生した電荷が電極e1から出力される。電極e1から出力された電荷は、第1の検出素子12Aによる検出信号として、DAS18により収集される。
【0060】
同様にして、負極側の電極e2と半導体検出器と正極側の電極e8とにより、第2の検出素子12Aが構成される。また、負極側の電極e3と半導体検出器と正極側の電極e8とにより、第3の検出素子12Aが構成される。また、負極側の電極e4と半導体検出器と正極側の電極e8とにより、第4の検出素子12Aが構成される。また、負極側の電極e5と半導体検出器と正極側の電極e8とにより、第5の検出素子12Aが構成される。また、負極側の電極e6と半導体検出器と正極側の電極e8とにより、第6の検出素子12Aが構成される。また、負極側の電極e7と半導体検出器と正極側の電極e8とにより、第7の検出素子12Aが構成される。
【0061】
図5に示すスイッチSW1~SW7は、通常はオンの状態とされる。これにより、DAS18は、図5に示す電極e1~e7を介して、対応する各検出素子12Aの検出信号を収集することができる。
【0062】
ここで、例えば、電極e1を含む第1の検出素子12Aが対象素子として特定された場合、制御機能12Cbは、スイッチSW1をオフにする。これにより、電極e1を含む第1の検出素子12Aにおいて、閾値を超える入射線量による多くの電荷が発生したとしても、当該電荷は回路には流れないこととなる。即ち、図5の回路上に流れる電流量を抑制し、電圧供給装置12Bからの印加電圧の降下を防ぐことができる。
【0063】
また、例えば、電極e1を含む第1の検出素子12Aと、電極e2を含む第2の検出素子12Aとが対象素子として特定された場合、制御機能12Cbは、スイッチSW1及びスイッチSW2をオフにする。或いは、制御機能12Cbは、スイッチSW1及びスイッチSW2の一方のみをオフにしてもよい。多くの場合、対象素子の全てに対する電圧の供給を停止せずとも、その一部に対する電圧の供給のみを停止することによって、電圧供給装置12Bからの印加電圧の降下を防ぐことができる程度まで、回路上に流れる電流量を抑制することができる。
【0064】
対象素子の一部に対する電圧の供給のみを停止させる制御を行なうに当たり、制御機能12Cbは、対象素子として特定された場合に電圧の供給を停止させる検出素子12A(以下、定められた素子とも記載する)を設定しておいてもよい。
【0065】
定められた素子の一例を図6に示す。図6では、検出面上に配列された16個の検出素子12Aを図示している。なお、図6の各検出素子12Aに対しては座標を割り振っている。具体的には、左下の検出素子12Aの座標を(x,y)=(1,1)とし、右方向に行くにつれてx座標が「1」加算され、上方向に行くにつれてy座標が「1」加算されるように、各検出素子12Aに対して座標を割り振っている。
【0066】
また、図6では、定められた素子に対してパターンを付している。具体的には、図6に示す16個の検出素子12Aのうち、座標(2,1)の検出素子12A、座標(4,1)の検出素子12A、座標(2,3)の検出素子12A、及び、座標(4,3)の検出素子12Aが、定められた素子として設定されている。即ち、図6において、定められた素子は、検出面上に配列された16個の検出素子12Aに対して1個おきに設定されている。
【0067】
図6に示したように一定の間隔で定められた素子を設定しておくことにより、定められた素子に対する電圧の供給を停止した場合に得られる画質を改善することができる。例えば、座標(2,3)の検出素子12Aが対象素子として特定されて電圧供給装置12Bからの電圧の供給が停止された場合、座標(2,3)の検出素子12Aから電荷の読み出しも停止する。これにより、座標(2,3)の検出素子12Aに対する電圧の供給が停止されたビューの投影データのうち、座標(2,3)の検出素子12Aに対応する画素はデータが欠損した状態となる。
【0068】
しかしながら、図6に示す場合、座標(2,3)の検出素子12Aの周辺素子においては電荷の読み出しが継続されており、対応する画素のデータが得られている。例えば、座標(2,3)の検出素子12Aに隣接する8つの検出素子12A(座標(1,2)の検出素子12A、座標(1,3)の検出素子12A、座標(1,4)の検出素子12A、座標(2,2)の検出素子12A、座標(2,4)の検出素子12A、座標(3,2)の検出素子12A、座標(3,3)の検出素子12A、及び、座標(3,4)の検出素子12A)は、定められた素子ではないため、入射線量に係らず電荷の読み出しが継続されている。このように、周辺素子のデータが得られている場合、座標(2,3)の検出素子12Aに対応する画素のデータが欠損した状態になっているとしても、補正は比較的容易である。例えば、コンソール装置40における制御機能44aは、周辺素子のデータに基づく線形補完により、座標(2,3)の検出素子12Aに対応する画素のデータを補完することができる。
【0069】
なお、図5では、図中の複数の検出素子12Aの全てに対してスイッチを設ける例を示したが、複数の検出素子12Aの一部に対してのみスイッチを設けてもよい。例えば、定められた素子に対してのみ、スイッチを設けることとしてもよい。
【0070】
図4に戻って説明を続ける。図4に示す例では、時間T1において検出素子12Aaに対する入射線量が閾値を超え、検出素子12Aaに対する電圧の供給が停止された後、時間T2において入射線量が閾値を下回っている。ここで、制御機能12Cbは、検出素子12Aaに対する電圧の供給を再開してもよい。
【0071】
なお、検出素子12Aaに対する電圧の供給が停止している間、検出素子12Aaからは検出信号が出力されないため、検出素子12Aaへの入射線量を検出素子12Aaから出力された検出信号に基づいて取得することはできない。しかしながら、かかる状況においても、特定機能12Caは、検出素子12Aaへの入射線量を、検出素子12Aaの周辺素子から出力された検出信号に基づいて取得することが可能である。
【0072】
或いは、図4の時間T2において入射線量が閾値を下回った際、制御機能12Cbは、検出素子12Aaに対する電圧の供給を再開しなくてもよい。一般に、半導体検出器において発生した電荷は、印加電圧によって半導体検出器から排出されるまで、半導体検出器内に残存する。従って、検出素子12Aaからの電荷の読み出しを停止し、後に電荷の読み出しを再開した場合、再開後しばらくは残存していた電荷が検出信号として出力されてしまうため、アーチファクトとなって補正処理が必要となる。また、残存していた電荷が出力されることにより、回路に大電流が流れ、電圧降下の原因となる可能性もある。以上より、制御機能12Cbは、一度電圧の供給を停止した検出素子12Aについては、CTスキャンが終了するまで電圧の供給を再開しないこととしてもよい。
【0073】
上述したように、実施形態のX線検出器12は、光子計数型のX線検出器であって、複数の検出素子12Aと、電圧供給装置12Bと、特定機能12Caと、制御機能12Cbとを備える。電圧供給装置12Bは、X線の照射を受けて検出素子Aに蓄積された電荷を読み出すための電圧を検出素子Aに対して供給する。特定機能12Caは、X線検出器12を用いたCTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の検出素子12Aのうち、電圧供給装置12Bとの間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定する。制御機能12Cbは、対象素子の少なくとも一部に対する電圧の供給を停止させる。これにより、実施形態のX線検出器12は、光子計数型のX線検出器を用いたCTスキャンにおいて、電荷の収集に用いる電圧の降下に起因する故障を回避することができる。
【0074】
また、上述したように、特定機能12Caにより対象素子が特定された際、制御機能12Cbは、対象素子のうち定められた素子に対する電圧供給装置12Bからの電圧の供給を停止させる。これにより、制御機能12Cbは、再構成されるX線CT画像について、画質を改善することができる。即ち、一部の検出素子12Aに対する電圧の供給を停止する場合、投影データにおいて当該検出素子12Aに対応する画素はデータが欠損した状態となるが、電圧の供給を停止する検出素子12Aを「定められた素子」として予め設定しておくことにより、例えば周辺素子のデータは欠損しないようにして、補完処理を容易且つ高精度に実行することができる。ひいては、適切な補完処理が施された投影データに基づいて、高品質のX線CT画像を再構成することが可能となる。
【0075】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、CTスキャンの最中に取得された情報の例として、検出素子12Aaへの入射線量について説明した。これに対し、第2の実施形態では、CTスキャンの最中に取得された情報の例として、電圧供給装置12Bから検出素子12Aに対して供給された電圧の計測値について説明する。即ち、第2の実施形態では、電圧の計測値に基づいて対象素子の特定を行なう場合について説明する。以下、第1の実施形態の説明と同様の点については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0076】
以下、図7及び図8を用いて、電圧の計測値に基づく対象素子の特定について説明する。図7は、CTスキャン開始後の経過時間に対して、電圧の計測値を対応付けたグラフを示している。特定機能12Caは、CTスキャンの最中、電圧を経時的に計測する。なお、図4の場合と同様、特定機能12Caは、図7のグラフを生成してもよいし、グラフを生成することなく単に電圧を経時的に計測してもよい。また、図4の横軸は、ビュー数に置換してもよい。
【0077】
図7に示す電圧は、例えば図8に示す電圧計により計測される。なお、図8では、図3と同様、電圧供給装置12Bの一例として電圧供給装置12B_nを示している。電圧供給装置12B_nは、複数の検出素子12A_nに対して、各検出素子内に蓄積された電荷を読み出すための電圧を供給する。
【0078】
図7に示す例では、時間T3において電圧の降下が発生し、図中に点線で示す閾値を下回っている。即ち、時間T3においては、線量の大きいX線が複数の検出素子12A_nに入射し、複数の検出素子12A_nと電圧供給装置12B_nとの間の回路上に大電流が流れ、電圧供給装置12B_nから複数の検出素子12A_nに対して供給していた電圧が降下してしまっている。この時、特定機能12Caは、複数の検出素子12A_nを対象素子として特定する。
【0079】
ここで、制御機能12Cbは、対象素子として特定された複数の検出素子12A_nの少なくとも一部に対する電圧の供給を停止させる。即ち、第1の実施形態でも説明した通り、複数の検出素子12A_nの全部に対する電圧の供給を停止させることで、X線検出器12の故障を回避することが可能である。また、例えば定められた素子に対する電圧の供給のみ停止させるなど、複数の検出素子12A_nの一部に対する電圧の供給を停止させることで、X線検出器12の故障を回避しつつ、欠損したデータの補完処理を容易且つ高精度に実行可能として、再構成されるX線CT画像の画質を向上させることができる。
【0080】
なお、図7においては、時間T3において電圧の降下が発生し、対象素子として特定された複数の検出素子12A_nの少なくとも一部に対する電圧の供給を停止させたことにより、回路に流れる電流が低減され、時間T3以降においても電圧が維持されている。ここで、時間T3以降において、電圧の供給を停止させた検出素子12Aに対する電圧の供給を再開した際、回路に流れる電流は再度増加するところ、これによって時間T3と同様の電圧の降下が発生するか否かは、図7の情報からは不明である。従って、制御機能12Cbは、一度電圧の供給を停止した検出素子12Aについては、CTスキャンが終了するまで電圧の供給を再開しないこととしてもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、X線検出器12とDAS18とが一体型の検出器ユニットDUとして形成される例について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、単体としてX線検出器12についても同様に適用が可能である。
【0082】
また、上述した実施形態では、CTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の検出素子12Aのうち、電圧供給装置12Bとの間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定する例について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、事前に取得された情報に基づいて対象素子を特定してもよい。
【0083】
例えば、CTスキャンにおいては、事前に位置決めスキャンが実行される場合がある。具体的には、天板33に被検体Pが載置された後、まずは位置決めスキャンが実行され、位置決めスキャンにより収集された位置決め画像に基づいて撮影範囲が設定され、設定された撮影範囲に対して、診断用画像を収集するCTスキャン(本スキャン)が実行される。なお、位置決め画像については、スキャノグラム(スキャノ画像)、スカウト画像等とも呼ばれる。特定機能12Caは、位置決めスキャンにより収集された位置決め画像に基づいて、電圧供給装置12Bとの間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定することができる。
【0084】
具体的には、特定機能12Caは、位置決め画像に基づいて、X線の照射角度(ビュー)ごとに、大線量のX線が入射する検出素子12Aを推定することができる。例えば、位置決め画像によれば、特定機能12Caは、撮影空間において被検体Pが存在する範囲を推定し、被検体Pを透過することなくX線が入射する検出素子12Aを推定することができる。また、特定機能12Caは、被検体Pを透過してはいるものの、X線パス上に存在する被検体Pの経路長や物質等により、ほとんど減衰しないままX線が入射する検出素子12Aを推定することができる。そして、大線量のX線が入射した検出素子12Aと電圧供給装置12Bとの間の回路上には大電流が流れることから、特定機能12Caは、大線量のX線が入射する検出素子12Aを対象素子として特定することができる。
【0085】
また、上述した特定機能12Ca及び制御機能12Cbによる処理は、コンソール装置40の処理回路44により行われてもよい。即ち、処理回路44により、上述した特定機能12Ca及び制御機能12Cbに相当する機能が実現されてもよい。例えば、処理回路44は、CTスキャンの最中に取得された情報に基づいて、複数の検出素子12Aのうち、電圧供給装置12Bとの間の回路上に大電流が流れる対象素子を特定し、対象素子の少なくとも一部に対する電圧供給装置12Bからの電圧の供給を停止させる
【0086】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics PROCESSING Unit)、ASIC、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0087】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0088】
また、上述した実施形態で説明した光子計数型のX線検出器の制御方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0089】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、光子計数型のX線検出器を用いたCTスキャンにおいて、電荷の収集に用いる電圧の降下に起因するX線検出器の故障を回避することができる。
【0090】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1:X線CT装置
10:架台装置
11:X線管
12:X線検出器
12A:検出素子
12B:電圧供給装置
12C:処理回路
12Ca:特定機能
12Cb:制御機能
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8