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特開2024-125746電極用カーボンナノチューブ含有粉末、電極合剤ペースト、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
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  • 特開-電極用カーボンナノチューブ含有粉末、電極合剤ペースト、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125746
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】電極用カーボンナノチューブ含有粉末、電極合剤ペースト、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240911BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240911BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240911BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240911BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20240911BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20240911BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20240911BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M4/139
H01M4/13
H01B1/24 Z
H01B1/00 E
H01G11/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033786
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 由
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐樹
【テーマコード(参考)】
5E078
5G301
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB02
5E078AB06
5E078BA15
5E078BA18
5E078BA27
5E078BA44
5G301DA20
5G301DA42
5G301DD10
5G301DE01
5H050AA02
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA10
5H050EA08
5H050HA01
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスの電極に導電助剤とした場合に、優れた導電性の向上作用を有する電極用CNT含有粉末、前記電極用CNT含有粉末を用いることで、導電性に優れた電極を得ることができる電極用複合体及び電極合剤ペースト、並びに、前記電極合剤ペーストを用いた蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】カーボンナノチューブ(CNT)、分散剤及び水を含有する電極用CNT含有粉末であって、CNT100重量部に対して、分散剤が100~200重量部含有され、含水率が10~20重量%であり、かつ、体積抵抗率の指標値が61%以下であることを特徴とする、電極用CNT含有粉末。(体積抵抗率の指標値=100×(電極用CNT含有粉末を用いて作製した電極Xの体積抵抗率)/(電極用CNT含有粉末を含水率1重量%未満まで乾燥した粉末を用いて作製した電極Yの体積抵抗率))
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(CNT)、分散剤及び水を含有する電極用CNT含有粉末であって、
CNT100重量部に対して、分散剤が100~200重量部含有され、
含水率が10~20重量%であり、かつ、
下記の数式(1)で算出される体積抵抗率の指標値が61%以下であることを特徴とする、電極用CNT含有粉末。
体積抵抗率の指標値=100×(電極用CNT含有粉末を用いて作製した電極Xの体積抵抗率)/(電極用CNT含有粉末を含水率1重量%未満まで乾燥した粉末を用いて作製した電極Yの体積抵抗率) ・・・数式(1)
【請求項2】
前記CNTの表面に前記分散剤が付着されている、請求項1に記載の電極用CNT含有粉末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極用CNT含有粉末及び無機化合物を含有する電極用複合体であって、無機化合物が電極活物質及び/又は固体電解質であることを特徴とする電極用複合体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電極用CNT含有粉末と、溶媒と、電極活物質及び/又はバインダーとを含有する、電極合剤ペースト。
【請求項5】
請求項4に記載の電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含む、蓄電デバイス用電極。
【請求項6】
請求項4に記載の電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含む、蓄電デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用カーボンナノチューブ(CNT)含有粉末、その製造方法、当該電極用CNT含有粉末を含む電極合剤ペースト、当該電極合剤ペーストを用いて製造された電極合剤層を含む、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性、熱伝導性及び機械的特性等の諸特性に優れる物質として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)等が知られている。そして、近年では、リチウムイオン二次電池の正極は、電極活物質、バインダー、導電助剤の3つが主材料として使用されており、このうち、正極合剤の90%以上を占める活物質は導電性に乏しいことから、この問題を解消する導電助剤として、カーボンブラック(アセチレンブラック)が用いられてきたが、近年ではカーボンブラックよりも導電性に優れるCNTが着目されている。
【0003】
導電助剤としてCNTが効果的に作用するには、電極活物質中においてCNTが十分に分散されている必要があるが、CNTは凝集し易く、分散させ難い性質を有していることから、その分散性を向上させるために、予めCNTと分散剤とを含有したCNT分散液を作製し、これを電極活物質等と混合する試みがされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、水系分散媒体中に炭素繊維および少なくとも常温下(20±10℃)にて固体である分散剤を添加し、分散媒体中で炭素繊維を孤立分散化させた分散系から分散媒体を除去して得られる、炭素繊維が独立分散性を維持した状態で集合固化していることを特徴とする、再分散用微細炭素繊維集合塊であって、微細炭素繊維の含有量が0.01~99.5質量%、分散剤の含有量が0.1~99.5質量%、水分含有量が10質量%未満であり、前記分散剤が、(1)水溶液中で直径が5~2000nmの球状、棒状又は板状ミセルを形成しうる界面活性剤、(2)重量平均分子量が1万~5千万である水溶性高分子、および(3)サイクロデキストリンとフラーレンとの組合わせ、から選択されてなるいずれか1つのものであることを特徴とする再分散用炭素繊維集合塊が記載されている。
ただし、前記特許文献1に記載の再分散用炭素繊維集合塊は、良好なハンドリング性を発揮するために、固形状の性状を維持するものであり、その水分含有量について、実質的にゼロであることが最も望ましいとされている。また、この際分散用炭素繊維集合塊を水で分散させた分散体が作製されているが、CNTに対する界面活性剤の含有量が低く抑えられたものである(合成例2)。
【0005】
特許文献2には、(a)マスターバッチの総重量に対して15重量%~40重量%、好ましくは20重量%~35重量%の含有量のカーボンナノファイバーおよび/またはナノチューブおよび/またはカーボンブラック、(b)少なくとも一種の溶剤、(c)マスターバッチの総重量に対して1重量%~40重量、好ましくは2重量%~30重量%の少なくとも一種のポリマー・バインダを含む凝集した固体の形をしたマスターバッチが記載されている。
ただし、特許文献2に記載のマスターバッチでは、最終的に水は除去されている(実施例6、7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-274502号公報
【特許文献2】特表2013-522439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らが、導電性に優れた電極用CNT含有粉末について検討したところ、含水率により作製した電極の体積抵抗率が変化する技術的関係があり、かつ作製した電極の体積抵抗率を評価できる指標値から、導電性に優れた電極用CNT含有粉末を判別することできることを見出した。
【0008】
したがって、本発明の課題は、蓄電デバイスの電極に導電助剤とした場合に、優れた導電性の向上作用を有する電極用CNT含有粉末を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、前記電極用CNT含有粉末を用いることで、導電性に優れた電極を得ることができる電極用複合体及び電極合剤ペースト、並びに、前記電極合剤ペーストを用いた蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態では、
カーボンナノチューブ(CNT)、分散剤及び水を含有する電極用CNT含有粉末であって、
CNT100重量部に対して、分散剤が100~200重量部含有され、
含水率が10~20重量%であり、かつ、
下記の数式(1)で算出される体積抵抗率の指標値が61%以下であることを特徴とする、電極用CNT含有粉末に関する。
体積抵抗率の指標値=100×(電極用CNT含有粉末を用いて作製した電極Xの体積抵抗率)/(電極用CNT含有粉末を含水率1重量%未満まで乾燥した粉末を用いて作製した電極Yの体積抵抗率) ・・・数式(1)
【0010】
本発明の実施形態では、前記CNTの表面に前記分散剤が付着されていてもよい。
【0011】
本発明の他の実施形態では、前記電極用CNT含有粉末及び無機化合物を含有する電極用複合体であって、無機化合物が電極活物質及び/又は固体電解質であることを特徴とする電極用複合体に関する。
【0012】
本発明の他の実施形態では、前記の電極用CNT含有粉末と、溶媒と、電極活物質及び/又はバインダーとを含有する、電極合剤ペーストに関する。
【0013】
本発明の他の実施形態では、前記電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含む、蓄電デバイス用電極に関する。
【0014】
本発明の他の実施形態では、前記電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含む、蓄電デバイスに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電極用CNT含有粉末は、電極において優れた導電性を得ることができることから、前記電極用CNT含有粉末を含む電極用複合体や電極合剤ペーストを用いて得られる蓄電デバイス用電極は、表面抵抗率及び体積抵抗率が低くなり、導電性が優れたものとなる。したがって、本発明の電極用CNT含有粉末を用いて得られる蓄電デバイスは、放電容量を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1、3で作製した電極用CNT含有粉末の含水率と、実施例2、4で測定した評価用電極における前記数式(1)の体積抵抗率の指標値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
<電極用CNT含有粉末>
本発明の実施形態に係る電極用CNT含有粉末(以下、本発明のCNT粉末、電極用CNT粉末ともいう)は、カーボンナノチューブ(CNT)と、分散剤と水とを含有する。
【0019】
本発明で用いるCNTとしては、単層カーボンチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)等が挙げられる。
前記SWCNT、MWCNTは、蓄電デバイスの電極用に使用できるものであればよく、例えば、SWCNT又はMWCNTの直径、長さ及びアスペクト比については、特に限定はない。
本発明では、SWCNT及びMWCNTは、それぞれ単独で又は両者を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明で分散剤としては、電極に使用できる分散剤であればよく特に限定はないが、良好な分散性を発揮できる観点から、水溶性又は水親和性のある分散剤が好ましい。
水溶性又は水親和性のある分散剤としては、多糖類、ポリスチレンスルホン酸及びその塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ニトリルゴム及びその水素化物等が使用できる。
【0021】
例えば、多糖類としては、セルロース系誘導体又はキトサン等が挙げられる。セルロース系誘導体としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等、及びこれらの塩等が挙げられる。
また、前記セルロース系誘導体としては、CNTの分散性の観点から、重量平均分子量が50,000~300,000のものが好ましい。
【0022】
本発明のCNT粉末では、前記CNT100重量部に対して、前記分散剤100~200重量部の範囲内になるように、含有量が調整される。
前記分散剤の含有量が、前記範囲よりも少ない場合、CNTの分散が不十分になる場合がある。逆に、前記範囲よりも多い場合、電極の導電性を著しく悪化させる場合がある。
【0023】
また、本発明のCNT粉末は、前記CNTの表面に前記分散剤が付着されている構造を有する。このような構造を有することで、本発明のCNT粉末は、電極材料内で優れた分散性を有し、また、電極活物質、固体電解質等の電極材料の表面に幅広く付着して、優れた導電性を発揮することができる。
なお、前記構造を有することは、例えば、本発明のCNT粉末を溶媒である水に分散させ、遊離する分散剤の重量を調べることによって確認することができる。遊離した分散剤の重量がCNT粉末に含まれる分散剤の重量の10%未満であれば、前記構造を有していると判断できる。
【0024】
本発明のCNT粉末は、含水率が10~20重量%に調整されたものである。本発明のCNT粉末は、前記のような範囲の含水率に調整されていることで、例えば、含水率1%等のより低い含水率に調整されたCNT粉末に比べて、CNTの凝集が弱いため、電極合剤ペーストを作製する際にCNTが解れやすく、作製した電極の導電性が向上するという点で優れている。
前記含水率は、公知の方法に基づいて調べることができ、その測定方法については特に限定はない。具体的には、JIS K0067:1992に準ずる処方により求められる乾燥減量を含水率とすることができる。
【0025】
本発明のCNT粉末は、下記の数式(1)で算出される体積抵抗率の指標値が61%以下であることを特徴とする。
体積抵抗率の指標値=100×(電極用CNT含有粉末を用いて作製した電極Xの体積抵抗率)/(電極用CNT含有粉末を含水率1重量%未満まで乾燥した粉末を用いて作製した電極Yの体積抵抗率) ・・・数式(1)
【0026】
前記体積抵抗率の指標値とは、電極用CNT含有粉末を含水率1重量%未満まで乾燥した粉末を用いて作製した電極Yの体積抵抗率に対する、電極用CNT含有粉末を用いて作製した電極Xの体積抵抗率の割合を示す。
前記指標値が低いほど、電極用CNT含有粉末の体積抵抗率が効率的に低く調整されており、得られる電極の導電性がより優れたものとなることを示す。
【0027】
前記電極用CNT含有粉末を含水率1重量%未満まで乾燥した粉末について、前記含水率は、0重量%以上1重量%未満の範囲であればよく、特に限定はない。
【0028】
本発明では、前記指標値は、61%以下に調整されていることが好ましく、50%以下であることが好ましい。
一方、前記指標値が61%を超えると、体積抵抗率の低減効果が優れたものとはいえない。
【0029】
前記指標値を測定する場合、電極X及び電極Yでは、CNT含有粉末以外の組成は同一に調整する。
電極X、電極Yは、後述する蓄電デバイス用電極と同様にして作製することができる。
【0030】
前記電極X及び電極Yの体積抵抗率(Ω・cm)の測定条件は、同一に調整する。例えば、同一の測定装置で、同一の条件で測定すればよい。
前記測定装置については、電極用の装置であればよく、特に限定はない。
【0031】
本発明のCNT粉末において、前記指標値を61%以下に調整する方法としては、CNT粉末の含水率を測定し、含水率を10~20重量%に調整する方法が挙げられる。
【0032】
市販品・従来品(分散体)には、以下のようなデメリットがある。
1.一般的に分散体は、本発明のCNT粉末と比べて、CNTの凝集や沈殿によるレオロジー変化や、溶媒揮発による濃度変化等が生じやすいため、安定性が悪く製品寿命が短いことが知られている。
2.製品寿命が短いため、また、電池工場で回収再生した溶媒を分散体工場で再利用するためには、電池工場の近くに分散体工場を作る必要がある。
3.市販品でのCNT含有率は一般的に6重量%以下のものが多いが、このようにCNT含有率が低いと電極合剤の処方面で制限が出てくる。
4.CNT含有率が低く、体積や重量(CNT単位重量あたり)が大きくなることから、輸送や保管のコストが高くなる。
【0033】
これに対して、本発明のCNT粉末は、以下のようなメリットがある。
1.CNTの凝集や沈殿によるレオロジー変化や、溶媒揮発による濃度変化等が起こらない等、安定性が良好である。
2.製品寿命が長く、また、電池工場で回収再生した溶媒を、分散体工場で再利用しないために、電池工場の近くに分散体工場を作る必要がない。
3.CNT含有率が高いため、電極合剤を作製する際に、処方面での制限はほぼ無いと考えられる。
4.CNT含有率が高く、体積や重量(CNT単位重量あたり)が小さいため、輸送や保管のコストが低い。
【0034】
本発明のCNT粉末は、前記CNT、前記分散剤及び水を混練してペースト状の混練物を作製し、次いで前記混練物を乾燥して、含水率が10~20重量%の範囲になるように調整することで作製することができる。
【0035】
前記CNT及び前記分散剤に配合する水の量については、ペースト状の混練物が得られるのであれば特に限定はないが、例えば、混練物中のCNTの濃度が10~25重量%になるように水を使用することができる。
【0036】
前記混練に用いる混合機としては、遊星型撹拌機、ニーダー、押し出し式混練機、薄膜旋回式高速攪撹拌機等が挙げられる。
前記遊星型撹拌機とは、自転と公転(遊星運動)をさせることで発生した遠心力による材料滞留と剪断応力で混合する機械であり、自転公転式ミキサーともいわれる。
前記遊星型撹拌機は、市販されている製造装置を用いればよく、特に限定はない。
【0037】
前記混練物を作製する際の条件については、特に限定はない。
【0038】
前記のようにして得られた混練物を乾燥する手段としては、特に限定はなく、前記溶媒が揮発する温度以上に調整できる装置、減圧により前記溶媒を除去できる装置、凍結乾燥装置等で行えばよい。例えば、効率よく乾燥を行う観点から、前記遊星型撹拌機での処理温度を上げて前記混練物を混練しながら水を揮発させることが好ましい。
【0039】
なお、前記混練物を乾燥させる装置から取り出したときに乾燥が不十分である場合は、追加で乾燥を実施してもよい。本発明のCNT粉末は、このような乾燥工程においても凝集しにくい性質を有する。また、含水率を10~20重量%とするために、含水率の低いCNT粉末に水を添加してもよいが、前記混練物(含水率が高い状態)を乾燥して含水率を前記の範囲に調整することが望ましい。
【0040】
<電極用複合体>
本発明の電極用複合体は、前記電極用CNT粉末及び無機化合物を含有し、前記無機化合物が電極活物質及び/又は固体電解質であることを特徴とするものである。
【0041】
前記電極用複合体とは、電極を作製する材料として利用できるものである。
例えば、電極活物質を含む前記電極用複合体を、カーボンブラック、バインダー及び溶媒と混合して混練することで、電極合剤ペーストを作製することができる。
【0042】
前記無機化合物としては、電極活物質及び固体電解質が挙げられる。
【0043】
前記電極活物質としては、正極又は負極のいずれかの電極に使用する活物質が含まれる。
正極活物質としては、例えば、リチウムイオン電池の正極に使用される、層状酸化物(LiCoO、LiNiO、LiNi1/3Mn1/3Co1/3等)、スピネル型酸化物(LiMnO、LiMn1.6Ni0.4等)、オリビン型酸化物(LiFePO、Fe(SO、LiCoPO等)、逆スピネル型酸化物(LiCoVO、LiNiVO等)等が挙げられる。
負極活物質としては、例えば、リチウムイオン電池の負極に使用される、炭素系(黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維等)、酸化物系(LiTiO、TiNbO等)、シリコン系(Si、SiO)等が挙げられる。
前記正極活物質又は前記負極活物質は、それぞれ一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
前記固体電解質とは、イオンのみが伝導できる固体であり、後述する蓄電デバイスの種類に応じて、その蓄電デバイスに使用可能なものであればよい。
例えば、リチウムイオン伝導性の固体電解質として、以下のものが挙げられる。
・酸化物系固体電解質:結晶質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、La0.51Li0.34TiO2.94、LiLaZr12等)、非晶質(Li2.9PO3.30.46等)
・その他(Li1212、LiOCl0.5Br0.5等)
【0045】
前記電極用複合体中における本発明のCNT含有粉末の含有量は、特に限定は無く、無機化合物の種類、CNTの種類、適用する電極の種類及び適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。例えば、リチウムイオン二次電池の負極に用いる複合体の場合、CNT含有粉末の含有量は0.01~10重量%であればよい。
【0046】
前記電極用CNT含有粉末と、前記無機化合物を混合させることで前記電極用複合体を製造することができる。
【0047】
前記混合については、特に限定は無く、湿式、乾式のいずれの方法で行ってもよい。また、前記混合に用いる混合機としては、遊星型撹拌機、ニーダー、押し出し式混練機、薄膜旋回式高速撹拌機等が挙げられる。
【0048】
例えば、無機化合物として電極活物質を含む電極用複合体は、以下のような工程で作製することができる。
均一化工程:電極活物質、電極用CNT粉末及び溶媒を混合した混合物を調製する。
解繊工程:前記混合機を用いて、前記混合物を混練する。
仕上げ工程:必要に応じて、乾燥等により溶媒を除去する。
【0049】
前記溶媒としては、特に限定はなく、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、クレゾール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル(ETB)、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコールエーテル系溶媒、
N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系溶媒、
メチルフェニルエーテル(アニソール)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート等のグリコールエステル系溶媒、
アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、
ベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、
ペンタン、ノルマルヘキサン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、
フルフラル等のアルデヒド系溶媒、
酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ブチルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、
グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール系溶媒、
及び水等が挙げられる。
中でも、NMP又は水を用いた場合には、CNTの良好な解繊性を発揮することができる。
【0050】
前記解繊工程では、必要に応じて溶媒を添加しながら、電極活物質の濃度を、前記電極活物質のタップ密度(DTap)(単位:g/cm)から下記数式(2)に基づいて算出される電極活物質の濃度(C、単位:重量%)に調整することで、溶媒と混練した際のCNTの解繊性を良好にして、CNTの均一分散性を向上させることができる。
【0051】
C=7.0×DTap+α ・・・数式(2)
(式中、60≦α≦70を示す。)
【0052】
前記電極活物質のタップ密度は、JIS K 5101-12-2に準ずる処方により測定が可能である。また、市販の電極活物質については、カタログに記載されている数値を用いればよい。
【0053】
<電極合剤ペースト>
本発明の電極合剤ペーストは、前記電極用CNT粉末と、溶媒と、電極活物質及び/又はバインダーとを含有するものである。
【0054】
本発明の電極合剤ペーストにおける前記電極用CNT粉末の含有量は、導電性向上及び蓄電デバイスの容量の観点から、適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。
【0055】
本発明の電極合剤ペーストに含有される溶媒は、使用する活物質やバインダーの種類に応じて適宜選択すればよい。前記溶媒としては、特に限定はなく、NMP、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒、
ペンタン、ノルマルヘキサン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、
ベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、
フルフラル等のアルデヒド系溶媒、
アセトン、MEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、
PMA、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート等のグリコールエステル系溶媒、
酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ブチルプロピオネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルフェニルエーテル(アニソール)等のエーテル系溶媒、
メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、IPA、ブチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、クレゾール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、
グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール系溶媒、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、PM、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールエーテル系溶媒、及び水等が挙げられる。
また、それらの溶媒を2種類以上併用することもできる。
【0056】
前記電極活物質としては、前記電極用複合体に用いることができるものであればよく、特に限定はない。
【0057】
本発明の電極合剤ペーストにおける前記電極活物質の含有量は、導電性向上及び蓄電デバイスの容量の観点から、適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。
【0058】
前記バインダーとしては、蓄電デバイス用の電極に使用できるバインダーであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン(PVP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは各種官能基で変性していてもよく、該官能基としては酸性基や塩基性基等の極性官能基を好適に用いることができる。前記バインダーは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0059】
前記バインダーの重量平均分子量は、特に限定はないが、例えば、110,000~5,000,000の範囲内のものであれば好適に使用できる。
【0060】
本発明の電極合剤ペーストにおけるバインダーの含有量は、導電性向上及び蓄電デバイスの容量の観点から、適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。
【0061】
本発明の電極合剤ペーストは、前記電極用CNT粉末と、溶媒と、電極活物質及び/又はバインダーとを混練することで得られる。混練方法は特に限定されないが、混練に用いられる混合機としては、例えば、遊星型撹拌機、ニーダー、押し出し式混練機、薄膜旋回式高速撹拌機等を挙げることができる。
【0062】
混合順序においては、各成分を同時に混合してもよいし、溶媒に、前記電極用CNT粉末と、電極活物質及び/又はバインダーとを順番に混合してもよい。この順番は特に限定されないし、前記電極用CNT粉末及び電極活物質の混合物(電極用複合体)を、徐々に加える等してもよい。また、溶媒にはバインダーをあらかじめ混合、溶解させておいてもよい。
【0063】
前記電極合剤ペーストにおける電極成分の割合、すなわち、電極合剤ペースト中の電極用CNT粉末、電極活物質及びバインダーの割合は、得られる電極の厚み、塗布性の観点から、適用する蓄電デバイスの種類に応じて適宜調整すればよい。
例えば、空気電池用の電極の場合は、活物質を含まないように電極合剤ペーストを製造してもよいし、クレイ型リチウムイオン電池用の電極の場合は、バインダーを含まないように電極合剤ペーストを製造してもよい。
【0064】
電極合剤ペーストは、例えば、以下のような工程で作製することができる。
均一化工程:電極活物質、電極用CNT粉末、溶媒を混合した混合物を調製する。
解繊工程:前記混合機を用いて、前記混合物を混練する。
仕上げ工程:バインダー、及び、必要に応じて溶媒を添加する。
【0065】
前記解繊工程では、必要に応じて溶媒を添加しながら、電極活物質の濃度を、前記電極活物質のタップ密度(DTap)(単位:g/cm)から前記数式(2)に基づいて算出される電極活物質の濃度(C、単位:重量%)に調整することで、溶媒と混練した際のCNTの解繊性を良好にして、CNTの均一分散性を向上させることができる。
【0066】
前記溶媒としては、特に限定はなく、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、IPA、ブチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、クレゾール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、
PM、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ETB、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコールエーテル系溶媒、
N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系溶媒、
メチルフェニルエーテル(アニソール)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、
PMA、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート等のグリコールエステル系溶媒、
アセトン、MEK、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、
ベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、
NMP、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、
ペンタン、ノルマルヘキサン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、
フルフラル等のアルデヒド系溶媒、
酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、ブチルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、
グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール系溶媒、
及び水等が挙げられる。
中でも、NMP又は水を用いた場合には、CNTの良好な解繊性を発揮することができる。
【0067】
前記電極活物質のタップ密度は、JIS K 5101-12-2に準ずる処方により測定が可能である。また、市販の電極活物質については、カタログに記載されている数値を用いればよい。
【0068】
<蓄電デバイス用電極>
本発明の蓄電デバイス用電極(以下、本発明の電極ともいう)は、本発明の電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含むものであり、具体的には、本発明の電極合剤ペーストを集電体に塗布し、得られたものを乾燥したものである。前記乾燥により、本発明の電極合剤ペーストにおける溶媒は除去され、集電体には、電極合剤層が形成され、電極が得られる。
【0069】
本発明の電極において、前記集電体としては、Al、Ni、Cu、ステンレス等を挙げることができる。
前記集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチングメタル状及びエンボス状であるもの、ならびに、これらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板等)等が挙げられる。また、前記集電体の表面にエッチング処理による凹凸を形成させてもよい。
【0070】
本発明の電極合剤ペーストを、前記集電体へ塗布する方法としては特に限定はない。
例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等の方法が挙げられる。また、塗布後に行う乾燥としては、熱処理によって行ってもよいし、送風乾燥、真空乾燥等により行ってもよい。熱処理により乾燥を行う場合には、その温度は、通常50~150℃程度である。また、乾燥後にプレスを行ってもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレス等の方法を挙げることができる。以上に挙げた方法により、本発明の電極を製造することができる。
また、電極の厚みは、通常5~500μm程度である。
【0071】
<蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、本発明の電極合剤ペーストを用いて形成された電極合剤層を含むものである。具体的には、本発明の電極合剤ペーストからなる電極合剤層が形成された本発明の電極を含む、液体型又は固体型の蓄電デバイスが挙げられる。
例えば、カチオンレドックス二次電池(リチウムイオン電池、クレイ型リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、多価金属イオン電池、リチウム硫黄電池、硫化物電池、コンバージョン電池、レドックスフロー電池等)、アニオンレドックス電池(フッ化物電池、塩素化物電池、亜鉛負極電池等)、各種全固体電池(硫化物系、酸化物系、窒化物系、ポリマー系等)、各種空気電池(リチウム空気電池、亜鉛空気電池、ナトリウム空気電池等)、各種キャパシタ(リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等)、各種燃料電池(固体高分子形、アルカリ形等)等の各種の蓄電デバイスが挙げられる。
【0072】
本発明の蓄電デバイスは、本発明の電極を用いること以外は公知の蓄電デバイスの製造方法により製造できる。また、前記蓄電デバイスに含まれる本発明の電極の構造は、前記のように、蓄電デバイスの種類に応じて、適当な構造とすればよい。
【実施例0073】
実施例で使用した材料は以下のとおり。
<CNT>
・「CNT」OCSiAl製SWCNT(TUBALL)

<分散剤>
・「CMC1110」株式会社ダイセルミライズ製CMC(CMCダイセル(登録商標)1110、重量平均分子量:約25万)
・「CEKOL30」Nouryon製CMC(CEKOL30、重量平均分子量:約8万)

<無機化合物:電極活物質>
・「LTO」LiTiO タップ密度:1.18g/cm

<バインダー>
・「SBR」JSR株式会社製SBR(TRD2001)
・「CMC2260」株式会社ダイセルミライズ製CMC(CMCダイセル(登録商標)2260)

<溶媒>
・水
【0074】
(実施例1:CNT含有粉末の製造)
CNT40重量部と分散剤(CMC1110)60重量部と水150重量部とを、遊星型撹拌機に供して、混練を行い、次いで、得られた混練物(CNT濃度16重量%)を乾燥して、表1に記載の所定の含水率を有するCNT含有粉末を作製した。
【0075】
(実施例2:電極における体積抵抗率測定)
表1に記載の所定の含水率を有するCNT含有粉末を用いて、評価用電極を作製した。
具体的には、LTO56.84重量%、CNT0.12重量%(CNT含有粉末由来)、CMC1110(CNT含有粉末由来)0.18重量%、バインダー(CMC2260)0.41重量%、バインダー(SBR)1.17重量%、水41.28重量%(CNT含有粉末由来の水を含む)を混合して、電極合剤ペーストを作製した。
次いで、得られた電極合剤ペーストをPET製シート材に厚みが0.05mmとなるように塗布して、評価用電極を作製した。
【0076】
得られた評価用電極について、表面抵抗率をロレスタ-GX MCP-T700(日東精工アナリテック株式会社製)を用いて測定し、膜厚を高精度デジマチックマイクロメータMDH-25MB(株式会社ミツトヨ製)にて測定した。表面抵抗率と膜厚を乗じて体積抵抗率を求めた。
次いで、下記数式(1)に基づいて、体積抵抗率の指標値を求めた。
体積抵抗率の指標値=100×(電極用CNT含有粉末を用いて作製した電極Xの体積抵抗率)/(電極用CNT含有粉末を含水率1重量%未満まで乾燥した粉末を用いて作製した電極Yの体積抵抗率) ・・・数式(1)
なお、含水率0重量%のCNT含有粉末から作製された評価用電極を電極Yとした。
得られた結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
(実施例3:CNT含有粉末の製造)
CNT40重量部と分散剤(CEKOL30)60重量部と水150重量部とを、遊星型撹拌機に供して、混練を行い、次いで、得られた混練物(CNT濃度16重量%)を乾燥して、表2に記載の所定の含水率を有するCNT含有粉末を作製した。
【0079】
(実施例4:電極における体積抵抗率測定)
表2に記載の所定の含水率を有するCNT含有粉末を用いた以外は、実施例2と同様にして評価用電極を作製した。
【0080】
得られた評価用電極の表面抵抗率及び膜厚を実施例2と同様にして測定して、体積抵抗率を求めた。次いで、前記数式(1)に基づいて、体積抵抗率の指標値を求めた。
なお、含水率0.5重量%のCNT含有粉末から作製された評価用電極を電極Yとした。
得られた結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
実施例1~4の結果から、CNT含有粉末の含水率と、体積抵抗率の指標値との関係を図1のグラフに示す。図中、丸は実施例2の結果、三角は実施例4の結果を示す。
【0083】
表1、2及び図1に示す結果より、実施例1、3で得られたCNT含有粉末は、含水率が10~20重量%の場合に、体積抵抗率の指標値が61%以下に調整されていることがわかる。
前記体積抵抗率の指標値が61%以下に調整されたCNT含有粉末から得られる電極は、いずれも含水率が1重量%未満のCNT含有粉末に比べて、体積抵抗が低く抑えられたものであり、導電性に優れたものであることがわかる。
【0084】
なお、含水率が10~20重量%の範囲内にあるCNT含有粉末を用いた評価用電極を走査型電子顕微鏡で確認したところ、いずれもCNTが解繊しているのが確認できた。
一方、含水率が10重量%未満のCNT含有粉末を用いた評価用電極を走査型顕微鏡で観察したところ、CNT同士の凝集が生じていた。この原因としては、CNTの表面に存在する分散剤と水分との水素結合が減り、他のCNTの表面に存在する分散剤と水素結合してしまうことが考えられた。
また、含水率が20重量%を超えるCNT含有粉末を用いた評価用電極でも、CNT同士の凝集が生じていた。これは、粉末内部の水分が多い(親水性が高い)ことで、CNT同士が疎水性相互作用で凝集していることが考えられた。
前記のようなCNT同士が凝集している場合、電極合剤ペーストの作製時にCNTが解れ難くなり、CNT含有粉末の導電助剤としての性能が低くなる傾向がある。
図1