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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125750
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20240911BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20240911BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20240911BHJP
   B60L 50/71 20190101ALI20240911BHJP
【FI】
B60K1/00 ZHV
B60K8/00
B60K15/063 B
B60L50/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033792
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大古 壮了
(72)【発明者】
【氏名】木幡 真緒
(72)【発明者】
【氏名】井手 慎之助
(72)【発明者】
【氏名】深石 泰史
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038CA17
3D038CA19
3D038CB01
3D038CB02
3D038CD01
3D235AA05
3D235AA06
3D235AA07
3D235BB43
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC24
3D235EE13
3D235FF02
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125CD06
5H125FF09
5H125FF21
(57)【要約】
【課題】ブレーキレジスタの発熱による電装機器への悪影響を抑制する。
【解決手段】
一態様に係る車体下部構造は、車両の前後方向に延在するサイドレールを含むフレームと、回生電力を生成するモータと、回生電力を熱エネルギーに変換するブレーキレジスタと、を備え、ブレーキレジスタは、車両の走行中に走行風を受けるようにサイドレールの直下に配置されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延在するサイドレールを含むフレームと、
回生電力を生成するモータと、
前記回生電力を熱エネルギーに変換するブレーキレジスタと、
を備え、
前記ブレーキレジスタは、前記車両の走行中に走行風を受けるように前記サイドレールの直下に配置されている、車体下部構造。
【請求項2】
前記サイドレールに接続され、前記ブレーキレジスタを前記サイドレールの下方に吊り下げた状態で保持するブラケットを更に備え、
前記ブレーキレジスタは、前記サイドレールに隙間を介して離間した位置に保持されている、請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記車両の上方から見て、前記ブレーキレジスタの車幅方向の外側に配置されたラジエータと、
前記ラジエータと前記ブレーキレジスタとの間で冷媒を循環させる冷媒流路と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記フレームは、前記サイドレールを含む一対のサイドレールを含み、
前記車体下部構造は、車幅方向において前記一対のサイドレールの外側に配置された一対の水素タンクと、外部の衝撃から前記一対の水素タンクをそれぞれ保護する一対の保護部材と、を更に備え、
前記ブレーキレジスタは、前記一対の保護部材の間に配置されている、請求項1又は2に記載の車体下部構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車等の電動自動車では、減速時に運動エネルギーを利用して発電する回生制動が行われる。この種の電動自動車には、回生制動によって発電された電力を消費するブレーキレジスタが搭載されることがある。特許文献1には、フレームと、フレームに搭載された内燃機関と、内燃機関の駆動によって電気エネルギーを生成するクランクシャフトオルタネータと、電気的構成部品を保護するトルク管とを備える農業用又は工業用作業車両が記載されている。トルク管の内部には、電気的構成部品として、パワーエレクトロニクスユニット及びブレーキレジスタが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-510397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の機能向上に伴って種々の電装機器が車両に搭載されるようになっている。これらの電装機器は、予め定められた動作温度範囲内で動作するように温度管理を行うことが求められる。しかしながら、特許文献1に記載の車両では、閉鎖されたトルク管の内部にパワーエレクトロニクスユニット及びブレーキレジスタが設けられているので、ブレーキレジスタの発熱によってトルク管の内部に熱がこもり、トルク管内の温度がパワーエレクトロニクスユニットの動作温度範囲を超えることがある。この場合には、パワーエレクトロニクスユニットに不具合が生じる恐れがある。特に、トラック等の大型車に搭載されるブレーキレジスタは発熱量が大きいため、当該ブレーキレジスタの周辺に配置された電装機器に悪影響を与えないようにすることが重要である。
【0005】
そこで本開示は、ブレーキレジスタの発熱による電装機器への悪影響を抑制すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る車体下部構造は、車両の前後方向に延在するサイドレールを含むフレームと、回生電力を生成するモータと、回生電力を熱エネルギーに変換するブレーキレジスタと、を備え、ブレーキレジスタは、車両の走行中に走行風を受けるようにサイドレールの直下に配置されている。
【0007】
上記態様に係る車両構造では、ブレーキレジスタが車両の走行時に走行風を受けるようにサイドレールの直下に配置されている。ブレーキレジスタで発生した熱は、走行風によって車外に放出されるので、ブレーキレジスタの周辺に配置された電装機器の動作温度の上昇を抑制することができる。したがって、ブレーキレジスタの発熱による電装機器への悪影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の種々の態様によれば、ブレーキレジスタの発熱による電装機器への悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る車体下部構造を概略的に示す平面図である。
図2】水素タンクの周辺を拡大して示す車体下部構造の平面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4】一対のブレーキレジスタを示す斜視図である。
図5】ブレーキレジスタの電気的接続構成の一例を示す図である。
図6】冷媒の循環経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の概要]
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0011】
(条項1) 車両の前後方向に延在するサイドレールを含むフレームと、回生電力を生成するモータと、回生電力を熱エネルギーに変換するブレーキレジスタと、を備え、ブレーキレジスタは、車両の走行中に走行風を受けるようにサイドレールの直下に配置されている。この車体下部構造では、ブレーキレジスタが車両の走行時に走行風を受けるようにサイドレールの直下に配置されている。ブレーキレジスタで発生した熱は、走行風によって車外に放出されるので、ブレーキレジスタの周辺に配置された電装機器の動作温度の上昇を抑制することができる。したがって、ブレーキレジスタの発熱による電装機器への悪影響を抑制することができる。
【0012】
(条項2) 条項1に記載の車体下部構造は、前記サイドレールに接続され、前記ブレーキレジスタを前記サイドレールの下方に吊り下げた状態で保持するブラケットを更に備え、前記ブレーキレジスタは、前記サイドレールと隙間を介して離間した位置で保持されていてもよい。ブレーキレジスタとサイドレールとの間に隙間が形成されることにより、車両の走行中に当該隙間を走行風が通り、ブレーキレジスタで発生した熱が車外に排出される。したがって、ブレーキレジスタの周辺の温度が上昇しにくくなり、ブレーキレジスタの発熱による電装機器への悪影響を抑制することができる。
【0013】
(条項3) 条項1又は2に記載の車体下部構造は、車両の上方から見て、ブレーキレジスタの車幅方向の外側に配置されたラジエータと、ラジエータとブレーキレジスタとの間で冷媒を循環させる冷媒流路と、を更に備えていてもよい。ラジエータがブレーキレジスタの車幅方向の外側に配置されることにより、ラジエータとブレーキレジスタとの間の冷媒流路の距離を短くすることができる。その結果、ブレーキレジスタの冷却効率を向上させることができる。
【0014】
(条項4) 条項1~3の何れか一項に記載の車体下部構造において、フレームは、サイドレールを含む一対のサイドレールを含み、車体下部構造は、車幅方向において一対のサイドレールの外側に配置された一対の水素タンクと、外部の衝撃から一対の水素タンクをそれぞれ保護する一対の保護部材と、を更に備え、ブレーキレジスタは、一対の保護部材の間に配置されていてもよい。ブレーキレジスタを一対の保護部材の間に配置することにより、ブレーキレジスタを外部の衝撃から保護することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の例示]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0016】
図1は、一実施形態に係る車両1の車体下部構造10を概略的に示す平面図である。車両1は、トラック、貨物車両又はバス車両等の大型車であり、水素と酸素とを化学反応させて発電し、発電された電力でモータを駆動して走行する燃料電池自動車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)である。以下では、車両1がキャブ及び荷台を有するトラックである例について説明する。以下の説明では、車両1の前進方向及び後退方向を車両1の前後方向D1といい、車両1を後方から見たときの左右方向を車幅方向D2という。
【0017】
車両1は、キャブ及び荷台を支持する車体下部構造10を備えている。図1に示すように、車体下部構造10は、フレーム2、モータ3及び一対のブレーキレジスタ4を備えている。フレーム2は、車両1の車幅方向D2に互いに離間して配置され、車両1の前後方向D1に延在する一対のサイドレール5と、一対のサイドレール5の間で車両1の車幅方向D2に延在し、一対のサイドレール5に連結する複数のクロスメンバ6とを備えている。フレーム2は、例えばラダーフレームである。
【0018】
フレーム2は、フロントアクスル11、リアアクスル12及びリアアクスル13を支持している。フロントアクスル11は、左右一対の前輪FWに接続されている。リアアクスル12は、左右一対の後輪RWに接続されている。リアアクスル13は、リアアクスル12の後方に配置され、左右一対の後輪RWに接続されている。リアアクスル12及びリアアクスル13の一方又は双方は、モータ3によって駆動される駆動軸である。フレーム2の前部の上には、車両1の運転席が配置されるキャブが支持される。フレーム2の後部の上には、積載物が搭載される荷台が支持される。
【0019】
一実施形態では、車体下部構造10は、燃料電池スタック21、高電圧機器22、インバータ23及びバッテリ24を更に備えている。燃料電池スタック21、高電圧機器22、インバータ23及びバッテリ24は、車両1を駆動するための電装機器であり、フレーム2の一対のサイドレール5の間に支持されている。
【0020】
燃料電池スタック21は、フレーム2の前部に搭載され、車両1のキャブの床下に配置されている。燃料電池スタック21は、後述する水素タンク25に貯蔵された水素と空気中の酸素とを化学反応させて発電することにより、駆動用の電力を生成する。高電圧機器22、インバータ23及びバッテリ24は、フレーム2の後部に搭載され、車両1の荷台の床下に配置されている。
【0021】
高電圧機器22は、バッテリ24からの電力によって動作する高電圧補機である。一実施形態では、高電圧機器22は、ブレーキレジスタコントローラ26を含んでいる(図5参照)。ブレーキレジスタコントローラ26は、ブレーキレジスタ4に供給される電力を制御する。高電圧機器22は、DCDCコンバータを更に含んでいてもよい。DCDCコンバータは、例えば車両1に搭載された各種補機にバッテリ24の電力を供給する。
【0022】
モータ3は、フレーム2の後部に搭載され、電動機及び発電機として機能する。具体的には、力行制御時には、モータ3は、バッテリ24から電力の供給を受けて車両1を駆動させるための動力を発生させる。一方、回生制御時には、モータ3は、回生発電用の負荷トルクを発生させて発電する。モータ3によって発電された回生電力は、インバータ23を介してバッテリ24に供給される。
【0023】
インバータ23は、モータ3及びバッテリ24に電気的に接続されており、モータ3及びバッテリ24に供給される電力を制御する。例えば、力行制御時には、インバータ23は、バッテリ24の直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。一方、回生制御時には、インバータ23は、モータ3によって発電された回生電力を直流電力に変換してバッテリ24を充電する。バッテリ24は、リチウムイオン電池等の二次電池である。
【0024】
一実施形態では、フレーム2には、複数の水素タンク25及び複数の保護部材30が搭載されていてもよい。図2は、水素タンク25の周辺を拡大して示す車体下部構造10の平面図である。なお、図2では、フレーム2に搭載される電装機器を省略して図示している。複数の水素タンク25の各々は、発電用の水素ガスを貯蔵している。水素タンク25は、軸線方向に延在する略円筒形状を有し、その軸線方向が車両1の前後方向D1を向けられた状態で車両1の荷台の床下に配置されている。
【0025】
図1に示すように、複数の水素タンク25は、一対の水素タンク25a及び一対の水素タンク25bを含んでいる。一対の水素タンク25aは、互いに対向するように一対のサイドレール5の車幅方向D2の外側にそれぞれ配置されている。一対の水素タンク25bは、一対の水素タンク25aの後方において、互いに対向するように一対のサイドレール5の車幅方向D2の外側にそれぞれ配置されている。以下の説明では、特に区別する必要がない場合には、水素タンク25a,25bをまとめて水素タンク25と称するものとする。複数の水素タンク25には、貯蔵された水素を燃料電池スタック21に供給する配管が接続されている。
【0026】
複数の保護部材30は、一対のサイドレール5の車幅方向D2の外側に配置され、外部の衝撃から複数の水素タンク25をそれぞれ保護する。複数の保護部材30は、一対の水素タンク25aをそれぞれ保護する一対の保護部材30aと、一対の水素タンク25bをそれぞれ保護する一対の保護部材30bとを含む。すなわち、一対の保護部材30bは、一対の保護部材30aの後方に配置されている。以下の説明では、特に区別する必要がない場合には、保護部材30a,30bをまとめて保護部材30と称するものとする。
【0027】
図3を参照して、複数の保護部材30について詳細に説明する。複数の保護部材30は、外部の衝撃から複数の水素タンク25を保護すると共に、複数の水素タンク25を一対のサイドレール5に固定するブラケットとして機能する。図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。図3に示すように、複数の保護部材30は、支持部31、内側起立部32、外側起立部33及び連結部34を含んでいる。支持部31は、水素タンク25を支持する。内側起立部32は、支持部31から立設され、車幅方向D2において水素タンク25の内側に配置されている。内側起立部32は、ボルト等の締結具によって一対のサイドレール5の外面に締結されている。
【0028】
外側起立部33は、支持部31から立設され、車幅方向D2において水素タンク25の外側に配置されている。すなわち、水素タンク25は、内側起立部32と外側起立部33との間に配置されている。外側部63は、車両1の前後方向D1から見て略L字型形状を有しており、外側起立部33の下端には車幅方向D2の外側に突出する突出部33aが形成されている。外側起立部33の下端(突出部33a)は、一対のサイドレール5の下端よりも下方に配置されている。外側起立部33の上端は、一対のサイドレール5の上端よりも上方に配置されている。
【0029】
連結部34は、水素タンク25の軸線方向の外側で車幅方向D2に延在し、内側起立部32の上部と外側起立部33の上部とを連結している。連結部34は、前後方向D1から見て、水素タンク25に重なる位置に配置され、保護部材30からの水素タンク25の脱落を防止する。連結部34は、車両1に他車両が側面から衝突したときに座屈変形しない程度の強度を有する。
【0030】
上記のように、外側起立部33の下端は車幅方向D2の外側に突出しているので、他車両が車両1の側方から衝突した場合には、図3に示すように、外部からの衝撃Fは外側起立部33の突出部33aに印加される。突出部33aに印加された衝撃Fは、支持部31及び連結部34を通ってサイドレール5に伝達される。すなわち、外部からの衝撃Fは保護部材30で受け止められ、水素タンク25に直接的に衝撃Fが加えられることが防止される。その結果、水素タンク25の損傷が防止される。
【0031】
一対の保護部材30が一対のサイドレール5の外側に配置されることにより、図3に示すように、一対の保護部材30の間には、側方からの衝撃Fから保護された保護領域PAが形成される。図3に示すように、前後方向D1から見たときの保護領域PAの面積は、一対のサイドレール5の間の搭載領域MAの面積よりも広い。一対の保護部材30を備えていない場合には、外部の衝撃Fから保護されるべき電装機器は、搭載領域MAに搭載される必要がある。これに対し、一対の保護部材30を備えることにより、衝撃Fから保護されるべき電装部品を保護領域PAに配置することが可能となる。したがって、フレーム2周辺のスペースを有効活用することができる。
【0032】
図3に示すように、一対のブレーキレジスタ4は、一対のサイドレール5の直下にそれぞれ配置されている。なお、一対のサイドレール5の直下に配置されるとは、下方から見たときに、ブレーキレジスタ4の一部又は全体がサイドレール5に重なる位置に配置されることをいう。ブレーキレジスタ4は、モータ3で発電された回生電力を熱エネルギーに変換して消費する。車両1が大型車両である場合には、車重が大きいために大きな回生制動力が必要となる。その結果、回生ブレーキで生成される回生電力も大きくなるので、生成された電力をバッテリ24に貯蔵しきれないことがある。ブレーキレジスタ4は、バッテリ24に貯蔵できない回生電力を消費する。
【0033】
一対のブレーキレジスタ4は、一対のブラケット7によってフレーム2に固定される。図4は、一対のブレーキレジスタ4の一例を示す斜視図である。図4に示すようにブレーキレジスタ4は、車両1の前後方向D1に延在する筒状の本体部15と、電子部品を収容する回路部16とを有している。本体部15には、抵抗器及び冷媒流路が収容されている。本体部15内の抵抗器に電力が供給されることにより、抵抗器は発熱する。
【0034】
図4に示すように、一対のブラケット7は、上下方向に延在し、一対のブレーキレジスタ4をサイドレール5の下方に吊り下げた状態で保持する。具体的には、一対のブラケット7の上部は、一対のサイドレール5の外面にボルト等の締結部材で締結されている。一対のブラケット7の下端は、U字ボルトを介して一対のブレーキレジスタ4に連結されている。
【0035】
図3に示すように、一対のブレーキレジスタ4は、一対のブラケット7によって、一対のサイドレール5の直下に位置し、一対の保護部材30の間に形成された空間Sにそれぞれ保持されている。空間Sは、保護領域PAの一部である。したがって、一対のブレーキレジスタ4は、一対の保護部材30によって外部の衝撃Fから保護される。また、一対のブレーキレジスタ4は、一対のサイドレール5と隙間を介して離間している。なお、一対のブレーキレジスタ4は、一対の水素タンク25にも離間している。
【0036】
上述したように、一対のブレーキレジスタ4は、一対のサイドレール5の直下に吊り下げられた状態で配置されている。一対のサイドレール5の下方の空間Sは、車両1の走行時に走行風が流れる空間である。したがって、一対のブレーキレジスタ4は車両1の走行中に走行風を受ける。この走行風によって、一対のブレーキレジスタ4で発生した熱は、空間Sにこもることなく、車両1の後方に排出される。したがって、一対のブレーキレジスタ4の周辺の温度が上昇しにくくなり、一対のブレーキレジスタ4の周辺に配置された電装機器の加熱が抑制される。
【0037】
一対のブレーキレジスタ4の動作は、ブレーキレジスタコントローラ26によって制御される。ブレーキレジスタコントローラ26は、ブレーキレジスタ4の作動又は作動停止を切り替える。図5は、ブレーキレジスタ4の電気的接続構成の一例を示している。なお、図5では、モータ3は、減速機35及びデファレンシャルギヤ36を介してリアアクスル12又はリアアクスル13に接続されている。
【0038】
図5に示すように、ブレーキレジスタ4は、ブレーキレジスタコントローラ26を介して、燃料電池スタック21、インバータ23及びバッテリ24に電気的に接続されている。バッテリ24に十分な空き容量が存在する場合には、ブレーキレジスタコントローラ26は、回生制動時にブレーキレジスタ4の作動を停止させる。これにより、回生制動によってモータ3で生成された回生電力は、インバータ23を介してバッテリ24に充電される。一方、バッテリに十分な空き容量が存在しない場合には、ブレーキレジスタコントローラ26は、回生制動時にブレーキレジスタ4を作動させる。これにより、回生制動によってモータ3で生成された余分な回生電力は、熱に変換され消費される。
【0039】
一実施形態では、図3に示すように、複数の水素タンク25の車幅方向D2の外側には、複数のラジエータ40が設けられている。複数のラジエータ40は、保護部材30の外側起立部33に支持されている。一実施形態では、図1に示すように、複数のラジエータ40は、一対のブレーキレジスタ4を冷却するラジエータ40a、高電圧機器22を冷却するラジエータ40b、インバータ23及びモータ3を冷却するラジエータ40cを含んでいる。複数のラジエータ40は、フレーム2の前部に支持されたラジエータ40dを更に含んでもよい。図1に示すように、複数のラジエータ40のうち、ラジエータ40a,40bは、上方から見たときに、一対のブレーキレジスタ4の車幅方向D2の外側に配置されている。
【0040】
複数のラジエータ40の各々は、当該ラジエータ40を外気が通過する際に、その内部を流れる冷媒の熱を外気に放熱して当該冷媒を冷却する。車体下部構造10は、冷媒の冷却を促進する複数のラジエータファン41を備えていてもよい(図6参照)。複数のラジエータファン41は、例えば複数のラジエータ40と水素タンク25との間に設けられ、水素タンク25に送風する。複数のラジエータファン41の送風によって、複数のラジエータ40から水素タンク25へ向かう気流が生成され、複数のラジエータ40への外気の導入が促進される。
【0041】
ラジエータ40aとブレーキレジスタ4との間には、冷媒を循環させる冷媒流路42が設けられている。冷媒流路42は、ブレーキレジスタ4とラジエータ40aとの間で冷媒を循環させることでブレーキレジスタ4を冷却する。冷媒は、例えば冷却水である。
【0042】
図6は、冷媒の循環経路の一例を示している。図6に示す実施形態では、冷媒流路42には、ラジエータ40a,40d、ブレーキレジスタ4、燃料電池スタック21及びポンプP1,P2が接続されている。ブレーキレジスタ4は、燃料電池スタック21と並列に接続されている。
【0043】
上記のように、ラジエータ40a,40dは、車両1の外部から導入された外気と冷媒との間の熱交換によって冷媒を冷却する。ラジエータ40a,40dによって冷却された冷媒は、冷媒流路42を通ってブレーキレジスタ4及び燃料電池スタック21に供給され、ブレーキレジスタ4及び燃料電池スタック21を冷却する。ブレーキレジスタ4及び燃料電池スタック21の熱を吸熱した冷媒は、ラジエータ40a,40dに戻され、再び冷却される。すなわち、冷媒流路42は、ラジエータ40aとブレーキレジスタ4との間で冷媒を循環させる。これにより、ブレーキレジスタ4が冷却される。ここで、ラジエータ40aは、上方から見て、一対のブレーキレジスタ4の車幅方向D2の外側に配置されているので、ラジエータ40aと一対のブレーキレジスタ4との間の冷媒流路42の長さを短くすることができる。したがって、一対のブレーキレジスタ4を効率的に冷却することができる。
【0044】
以上説明したように、一実施形態に係る車体下部構造10では、一対のブレーキレジスタ4が車両1の走行時に走行風を受ける一対のサイドレール5の直下に配置されているので、一対のブレーキレジスタ4で発生した熱は、走行風によって車外に放出される。したがって、一対のブレーキレジスタの周辺の温度の上昇を抑制することができ、その結果、一対のブレーキレジスタ4の発熱による電装機器への悪影響を抑制することができる。特に、一対のブレーキレジスタ4は、一対のサイドレール5と隙間を介して離間しているので、一対のサイドレール5に搭載された電装機器に対する悪影響をより確実に抑制することができる。
【0045】
以上、種々の実施形態に係る車体下部構造について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した実施形態では、車体下部構造10は、一対のブレーキレジスタ4を備えているが、一実施形態に係る車体下部構造は、ブレーキレジスタ4を1つのみ備えていてもよい。この場合には、ブレーキレジスタ4は、一対のサイドレール5のうち一方のサイドレールの直下に配置される。
【0046】
なお、車両1は燃料電池自動車であるものとして説明したが、車両1はハイブリッド車又は電気自動車等、燃料電池自動車以外の車両であってもよい。上述した種々の実施形態は、矛盾が生じない範囲で組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…車両、2…フレーム、3…モータ、4…ブレーキレジスタ、5…サイドレール、7…ブラケット、10…車体下部構造、25,25a,25b…水素タンク、30,30a,30b…保護部材、40,40a,40b,40c,40d…ラジエータ、42…冷媒流路、D1…前後方向、D2…車幅方向、F…衝撃。

図1
図2
図3
図4
図5
図6