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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125751
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/48 20180101AFI20240911BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240911BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240911BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20240911BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20240911BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240911BHJP
   F24F 11/59 20180101ALI20240911BHJP
   F24F 140/50 20180101ALN20240911BHJP
   F24F 140/60 20180101ALN20240911BHJP
【FI】
F24F11/48
H02J3/38 130
H02J3/14 160
F24F11/47
F24F11/80
F24F11/64
F24F11/59
F24F140:50
F24F140:60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033793
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】堀井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕幸
【テーマコード(参考)】
3L260
5G066
【Fターム(参考)】
3L260AA05
3L260AB01
3L260BA41
3L260CA32
3L260CB78
3L260CB86
3L260DA12
3L260EA07
3L260EA13
3L260FA03
3L260FA13
3L260FB01
3L260JA14
5G066AA02
5G066AA03
5G066AA05
5G066AE01
5G066AE05
5G066AE09
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066KA01
5G066KA12
5G066KB01
5G066KC01
(57)【要約】
【課題】電力のピークシフト制御によるコストの低減をはかる空調システムを提供すること。
【解決手段】空調システム1は、空調手段11と、電力負荷の経時変化を予測する電力負荷予測手段12と、電力負荷予測手段12により予測された電力負荷において、第1の時間帯における電力負荷が所定の基準の負荷以上である場合には、第1の時間帯より前の時間帯である第2の時間帯において、空調手段11により予め冷暖房を実行する際の予冷暖運転時間と設定温度とを設定する空調最適化手段13と、第2の時間帯において、空調最適化手段13により設定された予冷暖運転時間と設定温度とに応じて空調手段11を動作させるとともに、第1の時間帯では、第2の時間帯において予冷暖運転を行わない場合の負荷に比べて、空調手段11を軽負荷で動作させる空調調節手段14と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調手段と、
電力負荷の経時変化を予測する電力負荷予測手段と、
前記電力負荷予測手段により予測された電力負荷において、第1の時間帯における電力負荷が所定の基準の負荷以上である場合には、前記第1の時間帯より前の時間帯である第2の時間帯において、前記空調手段により予め冷暖房を実行する際の予冷暖運転時間と設定温度とを設定する空調最適化手段と、
前記第2の時間帯において、前記空調最適化手段により設定された予冷暖運転時間と設定温度とに応じて前記空調手段を動作させるとともに、前記第1の時間帯では、前記第2の時間帯において予冷暖運転を行わない場合の負荷に比べて、前記空調手段を軽負荷で動作させる空調調節手段と、を備える、
空調システム。
【請求項2】
前記空調最適化手段は、前記第1の時間帯において環境内が所定の温度となるように設定された際に、前記第1の時間帯において前記空調手段を軽負荷で動作させた状態で環境内が所定の温度となるように、前記第2の時間帯における前記空調手段の前記予冷暖運転時間と前記設定温度とを設定する、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記空調最適化手段は、
前記空調手段を冷房として利用する場合には、前記第2の時間帯における前記設定温度を前記第1の時間帯における目標とする設定温度に比べて低くするとともに、前記第1の時間帯では前記設定温度を目標とする設定温度に戻し、
前記空調手段を暖房として利用する場合には、前記第2の時間帯における前記設定温度を前記第1の時間帯における目標とする設定温度に比べて高くするとともに、前記第1の時間帯では前記設定温度を目標とする設定温度に戻す、
請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記空調最適化手段は、
供給される電力の単価情報に基づいて、前記第1の時間帯における前記所定の基準の負荷の値を決定する、
請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項5】
前記空調最適化手段は、電力の供給手段が複数である場合には、夫々の電力の供給手段から供給される電力に応じて、前記第1の時間帯において使用できる前記所定の電力負荷の値を変更して、前記第2の時間帯において前記空調手段により予め冷暖房を実行する際の予冷暖運転時間と設定温度とを設定する、
請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工場などにおいて、設備を稼働するために電力が利用されている。工場などの電気費用は、基本料金と従量課金からなり、基本料金については年間の最大需要(ピーク)により決定される。
【0003】
特許文献1には、空調熱源設備の熱負荷予測装置および方法について開示されている。この熱負荷予測装置は、予冷予熱時間を予測するものであって、予測した熱負荷のピークが閾値を超えていれば、より大きな予冷予熱時間候補で再度熱負荷予測を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-029607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工場などでは、夏や冬などの空調を利用する期間において、所定の時間にピークとなることが多い。具体的には、工場では、夏であれば午後の気温が高い時間帯にピークとなる場合が多いが、空調を止めるなどのピークカットを行うと、工場内が不快な環境となりやすいため、対応が難しいという問題がある。そのため、工場では、電力を多く使用する日中の時間帯から、電力の使用量が少ない夜間などの時間帯にシフトさせて使用電力を平準化させるピークシフトを効率よく行い、ピークを押し下げることによって電力コストを低減させたいという要望がある。
【0006】
本開示は、ピークシフトにより電力コストの低減をはかる空調システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる空調システムは、空調手段と、空調の電力負荷を含む工場全体の電力負荷の経時変化を予測する電力負荷予測手段と、前記電力負荷予測手段により予測された電力負荷において、第1の時間帯における電力負荷が所定の基準の負荷以上である場合には、前記第1の時間帯より前の時間帯である第2の時間帯において、前記空調手段により予め冷暖房を実行する際の予冷暖運転時間と設定温度とを設定する空調最適化手段と、前記第2の時間帯において、前記空調最適化手段により設定された予冷暖運転時間と設定温度とに応じて前記空調手段を動作させるとともに、前記第1の時間帯では、前記第2の時間帯において予冷暖運転を行わない場合の負荷に比べて、前記空調手段を軽負荷で動作させる空調調節手段と、を備える。
これにより、電力消費がピークとなる時間の前に予暖、予冷を行っておき、ピークの時間帯における空調による負荷を下げることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示よれば、電力のピークシフト制御によるコストの低減をはかる空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる空調システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる空調システムを構成する要素がネットワークを介して接続された状態を示した図である。
図3】実施の形態1にかかる空調システムにおいて各構成物の間で送受信される情報の例を示した図である。
図4】実施の形態1にかかる電力負荷予測手段により電力負荷を予測し、空調最適化手段により設定値を設定する場合の一例を示す図である。
図5】実施の形態1にかかる冷房の場合において、第2の時間帯に予冷暖運転を行うことにより温度スイングを行う場合の空調ピークシフトの一例を示す図である。
図6】実施の形態1にかかる2回の空調ピークシフトが発生する状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本実施の形態に係る空調システムについて説明する。図1は、空調システム1の構成を示したブロック図である。図1に示すように、空調システム1は、空調手段11と、電力負荷予測手段12と、空調最適化手段13と、空調調節手段14と、を有する。なお以下では、空調システム1は、工場等の施設において利用されるものとして説明する。また、以下では工場等の施設において、電力負荷がピークとなるピーク時間帯を第1の時間帯とし、第1の時間帯より前の時間帯であってピーク時間帯ではない時間帯を第2の時間帯として説明する。
【0011】
空調手段11は、工場内の気温の制御を行う装置である。空調手段11は、エアコンやヒーター、送風機等を利用できるが、これらに限られない。空調手段11は、空調調節手段14により、少なくとも通常の動作(以下、負荷動作)と、負荷動作より低電力で動作する低負荷動作と負荷動作より高電力で動作する高負荷動作を切り替えて動作することができるものとする。
【0012】
電力負荷予測手段12は、工場における電力負荷の経時変化を予測する。例えば、電力負荷予測手段12では、工場内で利用される電力量や、設定温度、外気温等の情報に基づいて、電力負荷を予測することができる。
【0013】
空調最適化手段13は、空調手段11の動作の最適化を行う。具体的には、空調最適化手段13は、電力負荷予測手段12により予測された電力負荷において、第1の時間帯における電力負荷が所定の基準の負荷以上である場合には、第2の時間帯において、空調手段11により予め冷暖房を実行する際の予冷暖運転時間と設定温度とを設定する。
【0014】
言い換えると、空調最適化手段13は、第1の時間帯に空調手段11を低負荷動作させた場合であっても、空調手段11を通常の負荷で動作させる場合と同等に工場内が適温となるように、第2の時間帯に空調手段11に予冷暖運転を行うための予冷暖運転時間及び設定温度を設定する。なお、後に詳述するように、空調最適化手段13では、最適化モデルにより、設定温度と予冷暖運転時間の設定値を決定する。
【0015】
空調調節手段14は、空調最適化手段13により設定された設定値に応じて、空調手段11の動作の調節を行う。特に、空調最適化手段13により空調手段11を予冷暖運転させるように設定値が設定された場合には、空調調節手段14は、第2の時間帯において、空調手段11が空調最適化手段13により設定された設定値に応じて、予冷暖運転時間と設定温度とに応じて動作するように制御する。さらに、空調調節手段14は、第2の時間帯において予冷暖を行う場合には、第1の時間帯において、空調手段11が、第2の時間帯において予冷暖運転を行わない場合の負荷に比べて、軽負荷で動作するように制御する。
【0016】
一例として、空調手段11を冷房として利用する場合には、空調システム1では、本来の第1の時間帯において設定する空調手段11の設定温度に対して、第2の時間帯における設定温度を低く設定し、第1の時間帯になったら本来の設定温度に戻すように動作させることができる。より具体的な例として、空調システム1では、第1の時間帯における設定温度を25℃として予め設定した場合に、第2の時間帯における予冷暖運転における設定温度を24℃として空調手段11を動作させるとともに、その後の第1の時間帯になったときには設定温度を25℃として空調手段11を動作させることができる。
【0017】
ここで図2は、ネットワークを利用して空調システム1の各構成を接続した状態を模式的に示した例である。
【0018】
図2に示すように、空調システム1は、最適計画システム21と、監視システム22と、中継機23と、工場などの施設24と、空調制御システム25と、空調機群26と、を有する構成とすることができる。
【0019】
最適計画システム21は、電力負荷予測手段12及び空調最適化手段13の機能を有している。最適計画システム21は、FEMS(Factory Energy Management System)や、BEMS(Building and Energy Management System)とすることができる。
【0020】
監視システム22は、例えば、最適計画システム21の動作を監視する。なお例えば、監視システム22は、ネットワークを介して送受信される情報の監視等、空調システム1の全体の監視を行っても良い。
【0021】
中継機23は、ネットワーク間で各構成物品間の相互のデータのやりとりを可能にするHUBである。なお、ここで利用される設備通信ネットワークには、インテリジェントビル用ネットワークのための通信プロトコル規格であり、主に、空調・照明・電力・防犯・防災・エレベータなどの機器の統一ネットワークとして使用されるBACnet(Building Automation and Control Networking Protocol)を利用することができる。
【0022】
施設24は、工場などである。施設24には、構内配電を介して空調機群26と接続されている。
【0023】
空調制御システム25は、空調調節手段14として動作する。空調制御システム25は、空調機群26に対して、空調機器ネットワークを介して接続されている。
【0024】
空調機群26は、パッケージ空調機(PAC)や、マルチ空調機(MAC)等を含めた空調手段11である。
【0025】
なお図2に示すように、最適計画システム21と、監視システム22は第1のネットワーク内に配され、施設24と、空調制御システム25と、空調機群26は第2のネットワーク内に配され、第1のネットワークと第2のネットワークを中継機23により接続する構成とすることができるが、これに限られない。
【0026】
図3は、空調システム1において各構成物の間で送受信される情報の例を示した図である。なお、この空調システムでは、空調手段11やその他の施設24内において消費される電力を測定する電力測定システム31と、測定された消費電力や、実際の施設24の温度、空調手段11の運転状態などの実績データを収集する実績データ収集部32と、を用いるものとして説明する。
【0027】
電力負荷予測手段12は、実績データ収集部32において実績データとして収集されている電力量や設定温度、気温等を利用して電力負荷の予測を行い、空調最適化手段13に予測した電力負荷の情報を出力する。
【0028】
空調最適化手段13は、電力負荷予測手段12から入力された電力負荷の情報や、施設において契約している電力の容量、単価情報等に基づいて、設定値を算出する。典型的には、この設定値とは、第1の時間帯における電力負荷が所定の基準の負荷以上である場合に、第2の時間帯において、空調手段11により予め冷暖房を実行する際の予冷暖運転時間と設定温度の設定と、第1の時間帯において低負荷で動作させた状態で目標とする設定温度の設定を含む。空調最適化手段13は、算出した設定値を、空調制御システム25に出力する。
【0029】
空調調節手段14は、空調最適化手段13から入力された設定値に基づいて、空調手段11に対して設定温度の設定を行うとともに、所定の時刻に空調手段11を動作するように制御を行う。また、空調調節手段14は、実際の施設24の温度や、空調手段11の運転状態等の情報を、実績データ収集部32に出力する。
【0030】
空調手段11は、空調調節手段14の制御に応じて空調を動作させる。ここで図4は、電力負荷予測手段12により電力負荷を予測し、空調最適化手段13により設定値を設定する場合の一例を示している。
【0031】
すなわち、空調最適化手段13は、電力負荷予測手段12により契約電力を超過することが予測される場合には、以下のように空調調節手段14を動作させるように設定値を設定する。空調調節手段14は、設定値に応じて、ピーク時である第1の時間帯に、空調手段11に軽負荷運転を実行させるように制御する。そして、空調調節手段14は、第1の時間帯において空調手段11を軽負荷運転させた場合であっても、予冷暖運転を行わずに第1の時間帯に空調手段11に通常の負荷動作させた場合と同様の環境となるように、第2の時間帯に予冷暖運転を行うように制御する。
【0032】
これにより、第1の時間帯の電力負荷の一部を第2の時間帯にシフトさせることができる。したがって、第1の時間帯を含めた全ての時間帯に対して、消費電力のピーク量を低減することができることから、契約電力を引き下げることができ、コストを低下させることができる。
【0033】
図3に戻り、電力測定システム31では、空調手段11により消費された電力量を測定する。さらに、電力測定システム31では、他の受電点などからの電力量の情報が入力される。電力測定システム31は、これらの電力量の情報を実績データ収集部32に出力する。
【0034】
実績データ収集部32は、空調制御システム25から、施設24の温度や空調手段11の運転状態等の情報を収集し、電力測定システム31から入力される電力量の情報を収集する。
【0035】
ここで、空調最適化手段13による設定値計算アルゴリズムの一例について説明する。図5は、冷房の場合において、第2の時間帯に予冷暖運転を行うことにより温度スイングを行う場合の空調ピークシフトの一例を示したものである。なお、図5において、破線はベースラインの消費電力を示し、実線は最適化するシフトラインの消費電力を示している。
【0036】
空調最適化手段13は、コストの最小化を目的関数としたエネルギーシステムの運用計画実行において、空調の消費電力と設定温度を決定変数として計算を行う。具体的には、空調最適化手段13は、以下の(1)~(4)式にかかる最適化モデルにより、設定値の計算を行う。
【数1】
ここで、式(1)のxは最適化するシフトラインの消費電力、Bはベースラインの消費電力、α及びβはベースラインに対するシフトラインの電力消費係数、すなわち温度スイング時の消費電力変化の割合であり、添字はスイング温度に対応する。uは温度スイングが1℃の場合に1、vは温度スイングが2℃の場合に1をとるバイナリ変数である。式(1)では、2.5時間のピークシフトを想定している。
【0037】
なお、ここでは0.5時間を1コマとして扱うこととする。すなわち式(1)では、5コマ分のピークシフトを想定している。
【0038】
式(1)は、空調最適化手段13による最適化計算における、空調消費電力を制約している式である。ここで式(1)は、u=v=0であれば、ピークシフトはなされず、空調消費電力はベースラインと等しくなるように定式化されている。
【0039】
式(2)は、温度スイングをしないか、温度スイングが1℃か、温度スイングが2℃か、のいずれかの状態しかとれないことを表現している。
【0040】
ここで、全てのコマtに対して、式(1)の制約を与えると、異なるtの制約式同士が干渉して計算が実行できない場合がある。そのため、式(1)の制約式は、式(3)に示すようにコマt=3のときにのみ用いることとした。このような定式化であっても、直近の設定温度をいくつにすべきか、という機器運用に必要な情報を得ることができる。
【0041】
また、図6に示すように、同日に2回以上のピークシフトが必要な場合がある。このような場合には、1回の運用計画において1回のピークシフトを含む結果となるが、この1回目のピークシフトが完了した時点以降で2回目のピークシフトを行うことが可能となるので、運用上の問題はない。なお、式(4)は、直前に行われたピークシフトが完了するまでは、次のピークシフトを実行できないことを表現している。
【0042】
なお、空調最適化手段13により設定される、最適化モデルを利用して決定される設定値は、空調手段11にかかる消費電力と設定温度のみを決定変数として算出することに限られない。
【0043】
具体的には、空調最適化手段13は、施設24に備えられている太陽光発電機や風力発電機、蓄電池などの電力供給源からの電力供給を考慮して、空調手段11を制御するための設定値の設定を行っても良い。この場合には、空調最適化手段13は、太陽光発電や風力発電については供給される電力の変動を予測して、設定値を設定することができる。一例として、空調最適化手段13では、太陽光発電による給電を考慮する場合に、気象庁で発表されている日射強度予報等の情報を利用することができる。
【0044】
また、空調最適化手段13は、供給される電力の単価情報に基づいて第1の時間帯における所定の基準の負荷の値を決定して、基準の負荷の値を超えないように第1の時間帯において空調手段11を低負荷で動作させるとともに、第2の時間帯において予冷暖運転を行うように、設定値を設定することができる。
【0045】
なお、空調最適化手段13は、利用者から入力される所定の要求や、CO2の排出量の情報を決定変数として利用して、設定値を算出することも可能である。なお、決定変数として利用できるものは、これらに限られない。
【0046】
このようにして、空調最適化手段13は、第1の時間帯において環境内が所定の温度となるように設定された場合において、実際には第1の時間帯において軽負荷で空調手段11を動作させたときに環境内がこの所定の温度となるように、第2の時間帯において空調手段11が実行する予冷暖運転時間と設定温度の設定値を設定することが可能である。
【0047】
なお、上記では空調手段11を冷房であるものとして説明したが、暖房であっても同様の動作が可能である。そのため、空調最適化手段13は、空調手段11を冷房として利用する場合には、第2の時間帯における設定温度を第1の時間帯における目標とする設定温度に比べて低くするとともに、第1の時間帯では設定温度を目標とする設定温度に戻し、空調手段11を暖房として利用する場合には、第2の時間帯における設定温度を前記第1の時間帯における目標とする設定温度に比べて高くするとともに、第1の時間帯では設定温度を目標とする設定温度に戻す、といった設定値の設定を行うことができる。そして、空調システム1では、この設定値に応じて空調手段11を動作させることが可能である。
【0048】
これにより、空調システム1では、施設24において電力消費がピークとなる時間の前に予暖、予冷を行っておき、ピークの時間帯では空調による負荷を下げることができる。したがって、電力のピークシフト制御によるコストの低減をはかる空調システムを提供することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。すなわち上記の記載は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされており、当業者であれば、実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 空調システム
11 空調手段
12 電力負荷予測手段
13 空調最適化手段
14 空調調節手段
21 最適計画システム
22 監視システム
23 中継機
24 施設
25 空調制御システム
26 空調機群
31 電力測定システム
32 実績データ収集部
図1
図2
図3
図4
図5
図6