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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125754
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240911BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240911BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/04 H
B60K15/063 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033800
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大古 壮了
(72)【発明者】
【氏名】木幡 真緒
(72)【発明者】
【氏名】井手 慎之助
(72)【発明者】
【氏名】深石 泰史
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB02
3D038AB03
3D038AC03
3D038AC06
3D038CA12
3D038CA17
3D038CA18
3D038CB02
3D038CB03
3D038CD01
3D235AA05
3D235AA06
3D235AA07
3D235BB06
3D235BB07
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC14
3D235CC22
3D235EE64
3D235FF02
3D235FF06
3D235FF35
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】個別の保護部材を用いることなく、バッテリを外部の衝撃から保護することができる車体下部構造を提供する。
【解決手段】
一態様の車体下部構造は、車両の幅方向に互いに離間して配置され、車両の前後方向に延在する一対のサイドレールと、幅方向において一対のサイドレールの外側にそれぞれ配置された一対の水素タンクと、外部の衝撃から一対の水素タンクをそれぞれ保護する一対の保護部材と、一対の保護部材の間で一対のサイドレールに支持されたバッテリと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向に互いに離間して配置され、前記車両の前後方向に延在する一対のサイドレールと、
前記車幅方向において前記一対のサイドレールの外側にそれぞれ配置された一対の水素タンクと、
外部の衝撃から前記一対の水素タンクをそれぞれ保護する一対の保護部材と、
前記一対の保護部材の間で前記一対のサイドレールに支持されたバッテリと、
を備える車体下部構造。
【請求項2】
前記車両の前輪に取り付けられたフロントアクスルと、
前記車両の後輪に取り付けられたリアアクスルと、
前記バッテリとは別のバッテリと、を更に備え、
前記バッテリは、前記フロントアクスルと前記リアアクスルとの間に配置され、
前記別のバッテリは、前記リアアクスルよりも後方に配置されている、請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記バッテリの少なくとも一部は、前記一対のサイドレールの下端よりも下方に配置されている、請求項1又は2に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記車幅方向において前記一対の保護部材のうち一方の保護部材の外側に配置されたラジエータを更に備える、請求項1又は2に記載の車体下部構造。
【請求項5】
前記バッテリは、リチウムイオン電池である、請求項1又は2に記載の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対のサイドレールの間にバッテリを支持するための支持装置について記載されている。この支持装置は、サイドレールに連結されたフレーム側接続部と、フレーム側接続部の下方で車幅方向の外側に突出する突出部と、突出部とバッテリとを連結する弾性連結部とを備えている。側突によって車両に衝撃力が付与された場合には、当該衝撃力は車幅方向の外側に位置する突出部に入力され、フレーム側接続部を介してサイドレールに伝達される。この支持装置では、外部からの衝撃力をサイドレールで吸収することにより、バッテリを衝撃から保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-25814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の機能向上に伴って多数の電装機器が車両に搭載されるようになっているため、サイドレール周辺のスペースを有効活用することが求められている。しかしながら、上記特許文献1では、バッテリパックを外部の衝撃から保護するためにバッテリパック専用の保護部材(支持装置)が搭載されているため、当該保護部材が、サイドレール周辺のスペースを圧迫する恐れがある。
【0005】
したがって、本開示は、個別の保護部材を用いることなく、バッテリを外部の衝撃から保護することができる車体下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る車体下部構造は、車両の車幅方向に互いに離間して配置され、車両の前後方向に延在する一対のサイドレールと、車幅方向において一対のサイドレールの外側にそれぞれ配置された一対の水素タンクと、外部の衝撃から一対の水素タンクをそれぞれ保護する一対の保護部材と、一対の保護部材の間で一対のサイドレールに支持されたバッテリと、を備える。
【0007】
上記態様に係る車体下部構造では、一対の水素タンクを保護するための一対の保護部材の間にバッテリが支持されているので、バッテリ専用の保護部材を用いることなく、バッテリを外部の衝撃から保護することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の種々の実施形態によれば、個別の保護部材を用いることなく、バッテリを外部の衝撃から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る車両の車体下部構造を概略的に示す平面図である。
図2】水素タンクの周辺を拡大して示す車体下部構造の平面図である。
図3図1のIII-III線に沿った概略的な断面図である。
図4】第1バッテリの周辺を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の概要]
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0011】
(条項1) 車両の車幅方向に互いに離間して配置され、車両の前後方向に延在する一対のサイドレールと、車幅方向において一対のサイドレールの外側にそれぞれ配置された一対の水素タンクと、外部の衝撃から一対の水素タンクをそれぞれ保護する一対の保護部材と、一対の保護部材の間で一対のサイドレールに支持されたバッテリと、を備える。この車体下部構造では、一対の水素タンクを保護するための一対の保護部材の間にバッテリが支持されているので、バッテリ専用の保護部材を用いることなく、バッテリを外部の衝撃から保護することができる。
【0012】
(条項2) 条項1に記載の車体下部構造は、車両の前輪に取り付けられたフロントアクスルと、車両の後輪に取り付けられたリアアクスルと、バッテリとは別のバッテリと、を更に備え、バッテリは、フロントアクスルとリアアクスルとの間に配置され、別のバッテリは、リアアクスルよりも後方に配置されていてもよい。バッテリがリアアクスルの前方に配置される場合、リアアクスルへの荷重と比較してフロントアクスルへの荷重が過大となり、その結果、ブレーキ性能の低下等、走行性能の低下を招来することがある。これに対し、別のバッテリがリアアクスルよりも後方に配置されることにより、フロントアクスルへの荷重とリアアクスルへの荷重のバランスを改善することができる。
【0013】
(条項3) 条項1又は2に記載の車体下部構造において、バッテリの少なくとも一部は、一対のサイドレールの下端よりも下方に配置されていてもよい。この車体下部構造では、一対の保護部材の間にバッテリが支持されているので、当該バッテリの少なくとも一部が一対のサイドレールの下端よりも下方に配置されている場合であっても、バッテリを衝撃から保護することができる。
【0014】
(条項4) 条項1~3の何れか一項に記載の車体下部構造は、車幅方向において一対の保護部材のうち一方の保護部材の外側に配置されたラジエータを更に備えていてもよい。この場合には、車両の側方からの衝撃がラジエータによって吸収されるので、バッテリをより確実に衝撃から保護することができる。
【0015】
(条項5) 条項1~4の何れか一項に記載の車体下部構造において、バッテリは、リチウムイオン電池であってもよい。この車体下部構造では、衝撃に弱いリチウムイオン電池を保護することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の例示]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
図1は、一実施形態に係る車両1の車体下部構造10を概略的に示す平面図である。車両1は、トラック、貨物車両又はバス車両等の大型車であり、水素と酸素とを化学反応させて発電し、発電された電力でモータを駆動して走行する燃料電池自動車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)である。以下では、車両1がキャブ及び荷台を有するトラックである例について説明する。以下の説明では、車両1の前進方向及び後退方向を車両1の前後方向D1といい、車両1を後方から見たときの左右方向を車幅方向D2という。
【0018】
車両1は、キャブ及び荷台を支持する車体下部構造10を備えている。図1に示すように、車体下部構造10は、フレーム2、複数の水素タンク3、複数の保護部材4及び第1バッテリ5を備えている。フレーム2は、車両1の車幅方向D2に互いに離間して配置され、車両1の前後方向D1に延在する一対のサイドレール6と、一対のサイドレール6の間で車両1の車幅方向D2に延在し、一対のサイドレール6に連結する複数のクロスメンバ7とを備えている。フレーム2は、例えばラダーフレームである。フレーム2の前部の上には、車両1の運転席が配置されるキャブが支持される。フレーム2の後部の上には、積載物が搭載される荷台が支持される。
【0019】
一実施形態では、車体下部構造10は、フロントアクスル11、リアアクスル12及びリアアクスル13を更に備えている。フロントアクスル11は、車両1の左右一対の前輪FWに取り付けられている。リアアクスル12は、車両1の左右一対の後輪RWに取り付けられている。リアアクスル13は、リアアクスル12の後方に配置され、車両1の左右一対の後輪RWに取り付けられている。リアアクスル12及びリアアクスル13は、後述するモータ23a及びモータ23bによってそれぞれ駆動される駆動軸である。
【0020】
複数の水素タンク3は、フレーム2に搭載されている。図2は、水素タンク3の周辺を拡大して示す車体下部構造10の平面図である。なお、図2では、フレーム2に搭載される電装機器を省略して図示している。複数の水素タンク3の各々は、発電用の水素ガスを貯蔵している。水素タンク3は、軸線方向に延在する略円筒形状を有し、その軸線方向が車両1の前後方向D1に向けられた状態で車両1の荷台の床下に配置されている。
【0021】
図2に示すように、複数の水素タンク3は、一対の水素タンク3a及び一対の水素タンク3bを含んでいる。一対の水素タンク3aは、車幅方向D2において互いに対向するように一対のサイドレール6の外側にそれぞれ配置されている。一対の水素タンク3bは、一対の水素タンク3aの後方において、車幅方向D2において互いに対向するように一対のサイドレール6の外側にそれぞれ配置されている。一対の水素タンク3a,3bは、フロントアクスル11とリアアクスル12との間でフレーム2に搭載されている。以下の説明では、特に区別する必要がない場合には、水素タンク3a,3bをまとめて水素タンク3と称するものとする。複数の水素タンク3には、後述する燃料電池スタック21に貯蔵された水素を供給する配管が接続されている。
【0022】
図1に示すように、複数の保護部材4は、一対のサイドレール6の車幅方向D2の外側に配置され、外部の衝撃から複数の水素タンク3をそれぞれ保護する。複数の保護部材4は、一対の水素タンク3aをそれぞれ保護する一対の保護部材4aと、一対の水素タンク3bをそれぞれ保護する一対の保護部材4bとを含む。一対の保護部材4bは、一対の保護部材4の後方に配置されている。以下の説明では、特に区別する必要がない場合には、保護部材4a,4bをまとめて保護部材4と称するものとする。
【0023】
複数の保護部材4は、外部の衝撃から複数の水素タンク3を保護すると共に、複数の水素タンク3を一対のサイドレール6に固定するブラケットとして機能する。図2及び図3を参照して、複数の保護部材4について詳細に説明する。図3は、図1のIII-III線に沿った概略的な断面図である。図3に示すように、複数の保護部材4は、支持部41、内側起立部42、外側起立部43及び連結部44を含んでいる。支持部41は、水素タンク3を支持する。内側起立部42は、支持部41から立設され、車幅方向D2において水素タンク3の内側に配置されている。内側起立部42は、ボルト等の締結具によって一対のサイドレール6の外面に締結されている。
【0024】
外側起立部43は、支持部41から立設され、車幅方向D2において水素タンク3の外側に配置されている。すなわち、水素タンク3は、内側起立部42と外側起立部43との間に配置されている。外側起立部43は、車両1の前後方向D1から見て略L字型形状を有しており、外側起立部43の下端には車幅方向D2の外側に突出する突出部43aが形成されている。外側起立部43の下端(突出部43a)は、一対のサイドレール6の下端よりも下方に配置されている。外側起立部43の上端は、一対のサイドレール6の上端よりも上方に配置されている。
【0025】
連結部44は、水素タンク3の軸線方向の外側で車幅方向D2に延在し、内側起立部42の上部と外側起立部43の上部とを連結している。連結部44は、前後方向D1から見て、水素タンク3に重なる位置に配置され、保護部材4からの水素タンク3の脱落を防止する。連結部44は、車両1に他車両が側面から衝突したときに座屈変形しない程度の強度を有する。
【0026】
上記のように、外側起立部43の下端は車幅方向D2の外側に突出しているので、他車両が車両1の側方から衝突した場合には、図3に示すように、外部からの衝撃Fは外側起立部43の突出部43aに印加される。突出部43aに印加された衝撃Fは、支持部41及び連結部44を通ってサイドレール6に伝達される。すなわち、外部からの衝撃Fは保護部材4で受け止められ、水素タンク3に直接的に衝撃Fが加えられることが防止される。その結果、水素タンク3の損傷が防止される。
【0027】
一対の保護部材4が一対のサイドレール6の外側に配置されることにより、図3に示すように、一対の保護部材4の間には、側方からの衝撃Fから保護された保護領域PAが形成される。図3に示すように、前後方向D1から見たときの保護領域PAの面積は、一対のサイドレール6の間の搭載領域MAの面積よりも広い。後述するように、第1バッテリ5は、衝撃Fから保護するために保護領域PAに配置される。
【0028】
一実施形態では、車体下部構造10は、複数の保護部材4の車幅方向D2の外側にそれぞれ配置された複数のラジエータ40を更に備えている。図3に示すように、複数のラジエータ40は、保護部材4の外側起立部43に支持されている。複数のラジエータ40は、車幅方向D2において一対の保護部材4aの外側に配置された一対のラジエータ40aと、車幅方向D2において一対の保護部材4bの外側に配置された一対のラジエータ40bとを含んでいる。複数のラジエータ40は、フレーム2の前部に支持されたラジエータ40dを更に含んでもよい。複数のラジエータ40を外気が通過する際に、その内部を流れる冷媒の熱が外気に放熱され、当該冷媒が冷却される。複数のラジエータ40は、冷媒流路を介して冷却された冷媒を電装機器に供給して、当該電装機器を冷却する。
【0029】
第1バッテリ5は、リチウムイオン電池等の二次電池である。第1バッテリ5は、フロントアクスル11とリアアクスル12との間でフレーム2に搭載され、一対の保護部材4bの間で一対のサイドレール6に支持されている。第1バッテリ5の詳細については後述する。
【0030】
図1に示すように、一実施形態では、車体下部構造10は、燃料電池スタック21、高電圧機器22a,22b、モータ23a,23b、インバータ24a,24b及び第2バッテリ(別のバッテリ)25を更に備えている。燃料電池スタック21、高電圧機器22a,22b、モータ23a,23b、インバータ24a,24b及び第2バッテリ25は、車両1を駆動するための電装機器であり、一対のサイドレール6の間に支持されている。
【0031】
燃料電池スタック21は、フレーム2の前部に搭載され、車両1のキャブの床下に配置されている。燃料電池スタック21は、水素タンク3に貯蔵された水素と空気中の酸素とを化学反応させて発電することにより、駆動用の電力を生成する。高電圧機器22a,22b、モータ23a,23b、インバータ24a,24b及び第2バッテリ25は、フレーム2の後部に配置され、車両1の荷台の床下に配置されている。
【0032】
高電圧機器22a,22bは、第1バッテリ5又は第2バッテリ25からの電力によって動作する高電圧補機である。高電圧機器22aは、例えばDCDCコンバータを含んでいる。DCDCコンバータは、例えば車両1に搭載された各種補機に第1バッテリ5又は第2バッテリ25の電力を供給する。高電圧機器22aは、複数の保護部材4のうち一対の保護部材4aの間に配置されている。
【0033】
高電圧機器22bは、例えばブレーキレジスタコントローラを含んでいる。ブレーキレジスタコントローラは、モータ23a,23bによって生成された回生電力を熱エネルギーに変換して消費するブレーキレジスタ(不図示)に供給される電力を制御する。高電圧機器22bは、高電圧機器22aの後方において、一対の保護部材4のうち一対の保護部材4bの間に配置されている。より詳細には、図3に示すように、高電圧機器22bは、一対の保護部材4bの間で第1バッテリ5の上方に配置されている。以下では、特に区別する必要がない場合には、高電圧機器22a,22bをまとめて高電圧機器22と称するものとする。
【0034】
モータ23a,23bは、フレーム2の後部に搭載され、電動機及び発電機として機能する。力行制御時には、モータ23a,23bは、第1バッテリ5及び第2バッテリ25からそれぞれ電力の供給を受けて車両1を駆動させるための動力を発生させる。一方、回生制御時には、モータ23a,23bは、回生発電用の負荷トルクを発生させて発電する。モータ23a及びモータ23bによって発電された回生電力は、第1バッテリ5及び第2バッテリ25にそれぞれ供給される。以下では、特に区別する必要がない場合には、モータ23a,23bをまとめてモータ23と称するものとする。
【0035】
インバータ24aは、モータ23a及び第1バッテリ5に電気的に接続されている。インバータ24aは、モータ23a及び第1バッテリ5に供給される電力を制御する。例えば、力行制御時には、インバータ24aは、第1バッテリ5の直流電力を交流電力に変換してモータ23aに供給する。一方、回生制御時には、インバータ24aは、モータ23aによって発電された回生電力を直流電力に変換して第1バッテリ5を充電する。
【0036】
同様に、インバータ24bは、モータ23b及び第2バッテリ25に電気的に接続されている。インバータ24bは、モータ23b及び第2バッテリ25に供給される電力を制御する。例えば、力行制御時には、インバータ24bは、第2バッテリ25の直流電力を交流電力に変換してモータ23bに供給する。一方、回生制御時には、インバータ24bは、モータ23bによって発電された回生電力を直流電力に変換して第2バッテリ25を充電する。以下では、特に区別する必要がない場合には、インバータ24a,24bをまとめてインバータ24と称するものとする。
【0037】
第2バッテリ25は、二次電池である。一実施形態では、第2バッテリ25は、リチウムイオン電池である。上記のように、第1バッテリ5は、複数の保護部材4の間で一対のサイドレール6に支持されている。第1バッテリ5は、モータ23aに電力を供給してモータ23aを駆動し、リアアクスル12に取り付けられた後輪RWを回転させる。
【0038】
これに対し、第2バッテリ25は、リアアクスル12,13の後方に配置され、一対のサイドレール6の間に支持されている。第2バッテリ25は、モータ23bに電力を供給してモータ23bを駆動し、リアアクスル13に取り付けられた後輪RWを回転させる。
【0039】
図4は、第1バッテリ5の周辺を拡大して示す斜視図である。なお、図4では、説明の便宜上、高電圧機器22bを省略して図示している。図4に示すように、第1バッテリ5は、複数のバッテリブラケット26によってフレーム2に固定されている。複数のバッテリブラケット26は、第1バッテリ5を一対のサイドレール6に連結して、第1バッテリ5を吊り下げた状態でサイドレール6の下方に保持する。これにより、図3に示すように、第1バッテリ5の一部又は全体は、一対のサイドレール6の間に形成された搭載領域MAの下方に配置される。すなわち、第1バッテリ5の少なくとも一部は、一対のサイドレール6の下端よりも下方に配置される。
【0040】
なお、図3に示す実施形態では、保護領域PA内において、一対のサイドレール6の間の搭載領域MAに高電圧機器22bが搭載され、当該高電圧機器22bの下方に第1バッテリ5が搭載されているが、一実施形態では、搭載領域MA及び搭載領域MAの下方の領域の双方にバッテリが配置されてもよい。この場合には、バッテリの搭載スペースが増加するため、より大容量のバッテリを車両1に搭載することが可能となる。
【0041】
以上説明したように、一実施形態に係る車体下部構造10では、一対の水素タンク3bを保護するための一対の保護部材4bの間に第1バッテリ5が支持されている。したがって、他車両が車両1の側方から衝突した場合には、第1バッテリ5が一対の保護部材4bによって衝撃から保護される。よって、第1バッテリ5専用の保護部材を用いることなく、第1バッテリ5を外部の衝撃Fから保護することができる。図3に示すように、第1バッテリ5は、一対のサイドレール6の下端よりも下方に配置されているが、第1バッテリ5は、一対の保護部材4bの間の保護領域PAに配置されているので、第1バッテリ5を外部の衝撃Fから保護することができる。したがって、一対のサイドレール6の周辺のスペースを有効活用することができる。
【0042】
また、上記実施形態では、複数の水素タンク3、第1バッテリ5、燃料電池スタック21等の重量物がリアアクスル12の前方に配置されているので、リアアクスル12への荷重と比較してフロントアクスル11への荷重が大きくなる。フロントアクスル11への荷重が過大となると、積載量の低下やブレーキ性能の低下等の走行性能の低下を招来することがある。これに対し、上記実施形態では、第2バッテリ25がリアアクスル12,13の後方に配置されているので、フロントアクスル11への荷重とリアアクスル12への荷重とのバランスを改善することができる。
【0043】
以上、種々の実施形態に係る車体下部構造について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。上記実施形態では、一対のサイドレール6にそれぞれ配置された複数の水素タンク3が一対の水素タンク3a及び一対の水素タンク3bを含んでいるが、車体下部構造10は、少なくとも1つの一対の水素タンク3を備えていればよい。
【0044】
上記実施形態では、一対のラジエータ40bが、車幅方向D2において一対の保護部材4bの外側にそれぞれ配置されているが、車幅方向D2において、少なくとも一対の保護部材4bのうち一方の保護部材4bの外側に1つのラジエータが設けられていればよい。
【0045】
また、上記実施形態では、第1バッテリ5の全体がサイドレール6の下端よりも下方に配置されているが、第1バッテリ5の少なくとも一部がサイドレール6の下端よりも下方に配置されていればよい。例えば、第1バッテリ5の上端がサイドレール6の間に位置し、第1バッテリ5の下端がサイドレール6の下端よりも下方に位置していてもよい。この場合、搭載領域MA内に収まるように第1バッテリ5を配置する場合と比較して、第1バッテリ5を大型化することができる。
【0046】
上記実施形態では、第1バッテリ5及び第2バッテリ25がリチウムイオン電池であるが、第1バッテリ5及び第2バッテリ25の種類は特に限定されない。上述した種々の実施形態は、矛盾が生じない範囲で組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…車両、3…水素タンク、4…保護部材、5…第1バッテリ(バッテリ)、6…サイドレール、10…車体下部構造、11…フロントアクスル、12,13…リアアクスル、25…第2バッテリ(別のバッテリ)、40…ラジエータ、D1…前後方向、D2…車幅方向(幅方向)、F…衝撃。
図1
図2
図3
図4