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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125760
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】マニホールド
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20240911BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240911BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240911BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240911BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20240911BHJP
【FI】
B60K11/02 ZHV
B60L1/00 L
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033806
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】江森 直樹
【テーマコード(参考)】
3D038
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D038BC16
3D038CD19
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC05
5H125BC19
5H125BC25
5H125CD06
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】補機バッテリの廃熱を利用可能なマニホールドを提供する。
【解決手段】マニホールド10は、冷却流体が流通する冷却流路が内部に形成された流路ハウジング100と、流路ハウジング100に固定され、複数の補機を駆動させる補機バッテリ1Gと、を備え、補機バッテリ1Gは、冷却流体と熱交換可能に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却流体が流通する冷却流路が内部に形成された流路ハウジングと、
前記流路ハウジングに固定され、複数の補機を駆動させる補機バッテリと、を備え、
前記補機バッテリは、前記冷却流体と熱交換可能に配置されているマニホールド。
【請求項2】
複数の前記補機は、前記流路ハウジングに固定されており、
それぞれの前記補機は、被駆動部材と当該被駆動部材を駆動するモータとを有しており、
前記補機バッテリは、前記モータに電力を供給する請求項1に記載のマニホールド。
【請求項3】
前記補機バッテリは、前記補機と近接配置されている請求項1又は2に記載のマニホールド。
【請求項4】
前記冷却流路と連通する流路が、前記補機バッテリを取り囲んでいる請求項1又は2に記載のマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車(以下、「電動車」と総称する)はモータを駆動させるための電池を備えている。電動車では、モータ(エンジン等の内燃機関を含む)、バッテリ、エアコン、ECU等、冷却が必要なデバイスが多いので、冷却水や冷媒を循環させる冷却回路を構成してこれらを冷却している。しかし、これらのデバイスは個々に適正な動作温度が異なる場合がある。そのような場合には、循環させる冷却水や冷媒の温度を動作温度の異なるデバイス毎に変えるため、チラーや水冷コンデンサ等の熱交換器を通して熱の授受を行い、冷却水や冷媒の温度制御を行っている。
【0003】
特許文献1に開示された車両の冷却モジュールにおいては、ヒートポンプサイクル、高温水回路、中温水回路、及び低温水回路を備えている。そして、ヒートポンプサイクルと、高温水回路、中温水回路、及び低温水回路との間では、熱交換器やチラー等により熱交換が行われている。
【0004】
特許文献2には、補機バッテリを備えた車両用電池制御装置が開示されている。特許文献2に記載されるように、電動車では、モータを駆動するバッテリの他に、オルタネーター、ウォータポンプ、オイルポンプ等の補機を駆動するための補機バッテリが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/048095号
【特許文献2】特開2020-109731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
補機バッテリは、特許文献1に記載の冷却モジュールに備えられたウォータポンプやバルブ等を駆動する際にも使用され、車両のトランクルーム等に配置される。ここで、補機バッテリの使用時に発生する廃熱は特に使用されていない。したがって、このような補機バッテリの廃熱を利用するうえで改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、補機バッテリの廃熱を利用可能なマニホールドを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るマニホールドの特徴構成は、冷却流体が流通する冷却流路が内部に形成された流路ハウジングと、前記流路ハウジングに固定され、複数の補機を駆動させる補機バッテリと、を備え、前記補機バッテリは、前記冷却流体と熱交換可能に配置されている点にある。
【0009】
本構成によれば、補機バッテリが流路ハウジングに形成された冷却流路を流れる冷却流体と熱交換可能に配置されている。これにより、補機バッテリの廃熱を冷却流体によって回収でき、補機バッテリの廃熱を冷却流体の熱エネルギーとして蓄えることができる。また、補機バッテリが低温である場合には、冷却流路を流れる冷却流体から補機バッテリに熱を与えて補機バッテリを暖機することもできる。このように、本構成によれば、補機バッテリの廃熱を利用でき、さらに補機バッテリの温度調整が可能となる。
【0010】
他の特徴構成は、複数の前記補機は、前記流路ハウジングに固定されており、それぞれの前記補機は、被駆動部材と当該被駆動部材を駆動するモータとを有しており、前記補機バッテリは、前記モータに電力を供給する点にある。
【0011】
本構成によれば、補機バッテリから補機のモータに電力が供給されるため、補機バッテリによって流路ハウジングに固定された複数の補機を適正に駆動させることができる。しかも、流路ハウジングに補機バッテリが固定されているため、配線長を短くすることが可能となる。
【0012】
他の特徴構成は、前記補機バッテリは、前記補機と近接配置されている点にある。
【0013】
本構成によれば、補機バッテリが補機と近接配置されているため、補機バッテリと補機との間の配線長をさらに短くできる。
【0014】
他の特徴構成は、前記冷却流路と連通する流路が、前記補機バッテリを取り囲んでいる点にある。
【0015】
本構成によれば、補機バッテリが冷却流路との接触面積を多く確保できるため、補機バッテリは冷却流路を流れる冷却流体との間で効率よく熱交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るマニホールドを有する冷却システムの回路構成図である。
図2】マニホールドの斜視図である。
図3】別形態のマニホールドにおける補機バッテリ近くの流路を示す図である。
図4】別形態のマニホールドにおける補機バッテリ近くの流路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るマニホールドの実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0018】
〔冷却システムの構成〕
図1に示されるように、本実施形態に係るマニホールド10を含む冷却システムAは、冷却水(冷却流体の一例)が循環する冷却流路として、第一循環路1、第二循環路2、及び第三循環路3を有する。第一循環路1には、第一ウォータポンプ1A(補機の一例)、ラジエータ1B、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、リザーブタンク1F、及び補機バッテリ1Gが備えられている。第二循環路2には、第二ウォータポンプ2A(補機の一例)、ヒータコア2B、電気ヒータ2D、及び水冷コンデンサ2Cが備えられている。第三循環路3には、第三ウォータポンプ3A(補機の一例)、バッテリ3B、チラー3C、電気ヒータ3D、第一ロータリバルブ4(補機の一例)、及び、第二ロータリバルブ5(補機の一例)が備えられている。
【0019】
これらのうち、第一ウォータポンプ1A、第二ウォータポンプ2A、第三ウォータポンプ3A、第一ロータリバルブ4、第二ロータリバルブ5及び補機バッテリ1Gは、流路ハウジング100に取り付けられている。一方、ラジエータ1B、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、リザーブタンク1F、ヒータコア2B、電気ヒータ2D、水冷コンデンサ2C、バッテリ3B、チラー3C、及び電気ヒータ3Dは、流路ハウジング100から離間して配置されており、流路ハウジング100との間で複数の冷却流路を介して冷却流体が流通するように構成されている。すなわち、流路ハウジング100は、冷却流体が流通する冷却流路が内部に形成されている。本実施形態では、冷却流体として冷却水が用いられている。冷却流体としては、例えばエチレングリコール等を主成分とした不凍液、ロングライフクーラント等の冷却水や絶縁油等が挙げられる。
【0020】
冷却システムAは、走行駆動源としてモータを備えた自動車、例えばハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等(以下、「電動車」と総称する)に用いられ、冷却水を循環させてインバータ/モータ1C、バッテリ3B等を冷却する。
【0021】
ラジエータ1Bは、高温の冷却水を冷却する。インバータ/モータ1Cは、バッテリ3Bから供給された電力で作動する走行駆動源である。DC-DCコンバータ1Dと充電器1Eは、バッテリ3Bを充電する。ヒータコア2Bは、高温の冷却水により空気を加熱して車内を暖房する。電気ヒータ2D,3Dは冷却水の温度が低いときに加熱する。水冷コンデンサ2Cとチラー3Cは冷却水の温度が高いときに冷却する。バッテリ3Bは、インバータ/モータ1Cに電力を供給する。バッテリ3Bは、例えばリチウムイオン電池等の充放電可能に構成された高圧バッテリが用いられる。
【0022】
補機バッテリ1Gは、例えばリチウムイオン電池等の充放電可能に構成され、第一ウォータポンプ1A等の補機に電力を供給するバッテリであり、バッテリ3Bから降圧回路(不図示)を介して充電される。この降圧回路は、DC-DCコンバータ1Dの変圧回路の一部で構成されている。補機バッテリ1Gの電圧は、例えば12Vである。本実施形態では、第一ウォータポンプ1A等及び第一ロータリバルブ4等と、補機バッテリ1Gとが流路ハウジング100に固定されている。第一ウォータポンプ1A、第二ウォータポンプ2A、第三ウォータポンプ3A等の夫々の補機は、インペラ(被駆動部材の一例、不図示)と当該インペラ(被駆動部材)を駆動するモータ(不図示)とを有している。また、第一ロータリバルブ4、第二ロータリバルブ5の夫々の補機は、弁体(被駆動部材の一例、不図示)と当該弁体(被駆動部材)を駆動するモータ(不図示、図2のアクチュエータ4A,5A)とを有している。補機バッテリ1Gは、これらの補機が有するモータにインバータを介して交流電力を供給する。このように、補機バッテリ1Gから補機のモータに電力が供給されるため、補機バッテリ1Gによって流路ハウジング100に固定された複数の補機を適正に駆動させることができる。
【0023】
第一ウォータポンプ1Aは、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、及び補機バッテリ1Gに供給する冷却水を圧送する。第二ウォータポンプ2Aは、ヒータコア2B、電気ヒータ2D、及び水冷コンデンサ2Cに供給する冷却水を圧送する。第三ウォータポンプ3Aは、バッテリ3B、チラー3C、及び電気ヒータ3Dに供給する冷却水を圧送する。第一ウォータポンプ1A、第二ウォータポンプ2A、及び第三ウォータポンプ3Aは、冷却水を圧送することで複数の流路を流通する冷却水の流れを制御する。
【0024】
第一循環路1は、ラジエータ1Bから第一ウォータポンプ1A、補機バッテリ1G、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、及びリザーブタンク16Fを通ってラジエータ1Bに戻るように冷却水が循環する。第一循環路1は、流路ハウジング100内に形成された第一内部流路11と、流路ハウジング100外に形成された第一外部流路12とを有する。第二循環路2は、ヒータコア2Bから第二ウォータポンプ2A、水冷コンデンサ2C、及び電気ヒータ2Dを通ってヒータコア2Bに戻るように冷却水が循環する。第二循環路2は、流路ハウジング100内に形成された第二内部流路21と、流路ハウジング100外に形成された第二外部流路22とを有する。第三循環路3は、バッテリ3Bから第三ウォータポンプ3A、チラー3C、及び電気ヒータ3Dを通ってバッテリ3Bに戻るように冷却水が循環する。第三循環路3は、流路ハウジング100内に形成された第三内部流路31と、流路ハウジング100外に形成された第三外部流路32とを有する。また、流路ハウジング100内には、第一内部流路11(冷却流路の一例)と第二内部流路21(冷却流路の一例)と第三内部流路31(冷却流路の一例)とを連通させる連通流路51(冷却流路の一例)が形成されている。
【0025】
〔マニホールドの構成〕
図2に示されるように、マニホールド10は、冷却システムAのうち第一ウォータポンプ1Aと、第二ウォータポンプ2Aと、第三ウォータポンプ3Aと、第一ロータリバルブ4と、第二ロータリバルブ5と、これらに冷却水を流通させる流路が形成された流路ハウジング100と、補機バッテリ1Gと、を備えて構成されている。流路ハウジング100は、複数のハウジングを接合して一体化することにより形成されており、これにより、少なくとも2つのハウジング(本実施形態では、後述する第一ハウジング110と第二ハウジング120)に跨って冷却水を流通させる複数の流路を形成したものである。
【0026】
流路ハウジング100は、共に樹脂からなる第一ハウジング110と第二ハウジング120とを振動溶着等の方法により接合、一体化して形成されている。流路ハウジング100は、全体として略直方体形状を有している。
【0027】
図2に示されるように、第一ハウジング110には、第一流入ポート111、第二流入ポート112、第三流入ポート113、第一流出ポート114、第二流出ポート115、及び第五流出ポート116が形成されている。また、第二ハウジング120には、第三流出ポート121、第四流出ポート122、及び第六流出ポート123が形成されている。第一流入ポート111、第二流入ポート112、第三流入ポート113、第一流出ポート114、第二流出ポート115、第三流出ポート121、第四流出ポート122、第五流出ポート116、及び第六流出ポート123は、いずれも円筒形状である。第一流入ポート111、第二流入ポート112、及び第三流入ポート113は、それぞれの軸芯がZ方向に沿い且つ同一平面上にあるように並設されており、いずれのポートもZ1方向に向けて開口を有している。第一流出ポート114と第三流出ポート121は、それぞれの軸芯がX方向に沿い且つ同一平面上にあるように並設されており、いずれのポートもX2方向に向けて開口を有している。第二流出ポート115と第五流出ポート116は、それぞれの軸芯がY方向に沿い且つ同一平面上にあるように並設されており、いずれのポートもY2方向に向けて開口を有している。第四流出ポート122と第六流出ポート123も、それぞれの軸芯がY方向に沿い且つ同一平面上にあるように並設されており、いずれのポートもY2方向に向けて開口を有している。
【0028】
第一流入ポート111、第一流出ポート114、及び第二流出ポート115は、第一循環路1に含まれており、いずれも第一内部流路11に連通している。第二流入ポート112、及び第四流出ポート122は、第二循環路2に含まれており、いずれも第二内部流路21に連通している。第三流入ポート113、第五流出ポート116、及び第六流出ポート123は、第三循環路3に含まれており、いずれも第三内部流路31に連通している。
【0029】
図2に示されるように、マニホールド10において、第一ロータリバルブ4と第二ロータリバルブ5は、第一ハウジング110をZ2方向に沿って見たときに、第一ハウジング110における第一流入ポート111、第二流入ポート112、及び第三流入ポート113と、第二流出ポート115、及び第五流出ポート116との間に取り付けられている。第一ロータリバルブ4と第二ロータリバルブ5とにおいて、第一ハウジング110の上部に露出しているのは、第一ロータリバルブ4の弁体(不図示)を回転駆動させるアクチュエータ4A(モータの一例)と、第二ロータリバルブ5の弁体(不図示)を回転駆動させるアクチュエータ5A(モータの一例)である。第一ロータリバルブ4及び第二ロータリバルブ5の夫々の弁体は、第二ハウジング120内に位置している。これにより、第二ハウジング120内に形成された流路を切り替えて、複数の流路を流通する冷却水の流れを制御することができる。第一ロータリバルブ4及び第二ロータリバルブ5は、いずれもアクチュエータにより流路が切り替えられる電磁弁であり、夫々の弁体をZ方向に沿う軸芯を中心に回転させて流路を切り替えることにより、複数の流路を流通する冷却水の流れを制御する。
【0030】
マニホールド10においては、流路ハウジング100が第一ハウジング110と第二ハウジング120とに跨って形成された複数の流路を有しているので、配管の数を減らすことができる。また、流路ハウジング100が第一ハウジング110と第二ハウジング120とを接合して構成されているので、配管を接続するポートの位置と方向を考慮することにより流路ハウジング100内の流路形状や流路構成が複雑になったとしても、第一ハウジング110と第二ハウジング120のそれぞれの形状を簡単にすることができる。これにより、ポートに接続される配管を集約して冗長な引き回しを回避できるので、ポートに接続される配管長を短くすることができると共に単純化することができる。
【0031】
〔冷却システムの使用態様〕
次に、電動車の走行中における冷却システムAの使用態様について説明する。まず、冷却システムAの温度が極低温(例えば0度以下)で電動車が走行しているときの冷却システムAの使用態様(以下、第一態様という)について、以下説明する。これは、例えば、周囲の温度が極低温で、暖機をせずに電動車を走行させた直後の状態が該当する。このとき、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、及び補機バッテリ1Gは冷却された冷却水を供給する必要がある。特に、補機バッテリ1Gはバッテリ3Bに比べて電池容量が小さいため、複数の補機に電力を供給することで内部抵抗が大きくなって発熱し易く、冷却された冷却水を供給する必要がある。一方、ヒータコア2Bとバッテリ3Bとは加熱された冷却水を供給する必要がある。そこで、第一態様では、第一循環路1と第二循環路2と第三循環路3とは、それぞれ独立して作動する。
【0032】
第一循環路1においては第一ウォータポンプ1Aが作動しており、ラジエータ1Bから第一流入ポート111に流入した冷却水は、第一ウォータポンプ1Aで圧送されて第一内部流路11を流通し、第一流出ポート114と第二流出ポート115とから流出し、リザーブタンク1Fを経由してラジエータ1Bに還流する。ラジエータ1Bにより冷却水は冷却されるので、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、及び補機バッテリ1Gは冷却される。
【0033】
第二循環路2においては、第二ウォータポンプ2Aが作動すると共に第一ロータリバルブ4が第二サブ流路21cと繋ぐように切り替えられており、ヒータコア2Bから第二流入ポート112に流入した冷却水は、第二ウォータポンプ2Aで圧送されて第二内部流路21を流通し、第四流出ポート122から流出する。流路ハウジング100から流出した冷却水は、電気ヒータ2Dで加熱されてヒータコア2Bに還流する。このとき、水冷コンデンサ2Cは作動していない。
【0034】
第三循環路3においては、第三ウォータポンプ3Aが作動すると共に第二ロータリバルブ5が切り替えられており、バッテリ3Bから第三流入ポート113に流入した冷却水は、第三サブ流路31aから第三ウォータポンプ3Aで圧送されて第三サブ流路31b、第二ロータリバルブ5、第三サブ流路31cを流通し、第五流出ポート116から流出する。流路ハウジング100から流出した冷却水は、電気ヒータ3Dで加熱されてバッテリ3Bに還流する。これにより、バッテリ3Bが冷却水により暖められる。
【0035】
次に、冷却システムAの温度が極低温よりは高いが低温(例えば0度~10度)で電動車が走行しているときの冷却システムAの使用態様(以下、第二態様という)について、以下説明する。これは、例えば、周囲の温度が極低温で、電動車を走行させて少し暖機が行われた状態が該当する。このときも、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、及び補機バッテリ1Gは冷却された冷却水を供給する必要がある一方、ヒータコア2Bとバッテリ3Bとは加熱された冷却水を供給する必要がある。第二態様では、第一循環路1と第二循環路2とは、第一態様と同じ態様で冷却水を循環させるため、詳細な説明は省略する。
【0036】
第三循環路3においては、第三ウォータポンプ3Aが作動すると共に第二ロータリバルブ5が切り替えられており、バッテリ3Bから第三流入ポート113に流入した冷却水は、第三ウォータポンプ3Aで圧送されて第二ロータリバルブ5に流入した後、連通流路51を流通し、第二流出ポート115から流出する。このとき、連通流路51を流通する冷却水は、第二サブ流路21cには流入しない。流路ハウジング100から流出した冷却水は、補機バッテリ1G、インバータ/モータ1C、リザーブタンク1F、ラジエータ1Bを流通し、チラー3Cを通ってバッテリ3Bに還流する。ただし、チラー3Cは作動しておらず、チラー3Cで冷却水が冷却されることはない。第二態様では、第一循環路1と第三循環路3とが一体となって冷却水を循環させており、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、補機バッテリ1Gにより加熱された冷却水を利用してバッテリ3Bを暖める。なお、ラジエータ1Bとチラー3Cとを繋ぐ流路は途中で分岐しており、冷却水の一部は第一流入ポート111に流通する。これにより、第一態様の第一循環路1が構成されている。
【0037】
次に、冷却システムAの温度が低温よりは高く、通常の温度(例えば10度~30度)で電動車が走行しているときの冷却システムAの使用態様(以下、第三態様という)について説明する。これは、例えば、電動車を走行させて暖機が完了した状態(通常の走行状態)が該当する。第三態様では、第一循環路1は、第一態様と同じ態様で冷却水を循環させるので、詳細な説明は省略する。一方、第二ウォータポンプ2Aと第三ウォータポンプ3Aとは作動を停止しているため、第二循環路2と第三循環路3には冷却水が流通(還流)しない。
【0038】
次に、冷却システムAの温度が通常のよりも高い高温(例えば30度以上)で電動車が走行しているときの冷却システムAの使用態様(以下、第四態様という)について説明する。これは、例えば、インバータ/モータ1Cが高トルクを必要とする環境下で長時間電動車を走行させた状態が該当する。このときは、インバータ/モータ1C、DC-DCコンバータ1D、充電器1E、補機バッテリ1G、及びバッテリ3Bは高温状態にあるため、冷却水を供給して冷却する必要がある。第四態様では、第一循環路1は、第一態様と同じ態様で冷却水を循環させるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
第二循環路2においては、第二ウォータポンプ2Aが作動すると共に第一ロータリバルブ4が切り替えられている。したがって、ヒータコア2Bから第二流入ポート112に流入した冷却水は、第二サブ流路21aから第二ウォータポンプ2Aで圧送されて第二サブ流路21b、第一ロータリバルブ4、第四内部流路41を流通し、第三流出ポート121から流出する。上述したように、第三流出ポート121から流路ハウジング100の外部に流出した冷却水は、リザーブタンク1Fを経由してラジエータ1Bに流入する。ラジエータ1Bに流入して冷却された冷却水は、第一循環路1を構成する第一流入ポート111に流入する。そして第一サブ流路11aから第一ウォータポンプ1Aで圧送された後、第一サブ流路11b、第一サブ流路11c、連通流路51、及び第二サブ流路21cを流通し、第四流出ポート122から流路ハウジング100の外部に流出される。その後、冷却水は水冷コンデンサ2Cにより加熱され、ヒータコア2Bに還流される。このとき、電気ヒータ2Dは作動していない。第四態様では、第二循環路2は第一循環路1と一体となって冷却水を循環させて冷却するため、補機バッテリ1Gの廃熱を冷却水に熱エネルギーとして蓄えることが可能となる。その結果、水冷コンデンサ2Cやヒータコア2Bを介して、補機バッテリ1Gの廃熱を有効に回収できる。このとき、ラジエータ1Bから流出した冷却水の一部はチラー3Cに流入する。
【0040】
第三循環路3においては、第三ウォータポンプ3Aが作動すると共に第二ロータリバルブ5が第三サブ流路31dとを繋ぐように切り替えられている。したがって、バッテリ3Bから第三流入ポート113に流入した冷却水は、第三サブ流路31aから第三ウォータポンプ3Aで圧送されて第三サブ流路31b、第二ロータリバルブ5を流通し、第三サブ流路31dに流入する。
【0041】
第三サブ流路31dに流入した冷却水は、第六流出ポート123から流出する。流路ハウジング100から流出した冷却水は、チラー3Cを通ってバッテリ3Bに還流する。このとき、冷却水は、チラー3Cで冷却される。
【0042】
本実施形態によれば、補機バッテリ1Gが流路ハウジング100に形成された第一内部流路11を流れる冷却水と熱交換可能に配置されている。これにより、補機バッテリ1Gの廃熱を冷却水によって回収でき、補機バッテリ1Gの廃熱を冷却水の熱エネルギーとして蓄えることができる。また、補機バッテリ1Gから第1ウォータポンプ1A等(補機)のモータに電力が供給されるため、補機バッテリ1Gによって流路ハウジング100に固定された複数の補機を適正に駆動させることができる。しかも、流路ハウジング100に補機バッテリ1Gが固定されているため、配線長を短くすることが可能となる。また、本実施形態では、補機バッテリ1Gが第一ウォータポンプ1A等(補機)と近接配置されているため、補機バッテリ1Gと第一ウォータポンプ1A等(補機)との間の配線長をさらに短くできる。
【0043】
〔別実施形態〕
(1)図3に示されるように、第一内部流路11と連通する第一外部流路12が、補機バッテリ1Gを取り囲んでいてもよい。本構成によれば、補機バッテリ1Gが第一外部流路12との接触面積を多く確保できるため、補機バッテリ1Gは第一外部流路12を流れる冷却水との間で効率よく熱交換を行うことができる。
【0044】
(2)図4に示されるように、補機バッテリ1Gは、第一内部流路11と連通する第一外部流路12と、第三内部流路31と連通する第三外部流路32とに対し、熱交換可能に配置されていてもよい。例えば、補機バッテリ1Gへの流路を切替え可能に構成してもよく、必要に応じて、補機バッテリ1Gは、第一外部流路12を流れる冷却水によって冷却される状態、第三外部流路32を流れる冷却水によって暖機される状態、及び、流路12,32を流れる冷却水との間で熱交換が行われない状態の何れかに適宜変更できる。なお、補機バッテリ1Gと熱交換する流路12,32の形状は、直線状に限定されず、例えば蛇行していてもよい。
【0045】
本形態によれば、補機バッテリ1Gの廃熱は第一内部流路11の冷却水によって回収でき、補機バッテリ1Gが低温である場合には、第三外部流路32を流れる冷却水から補機バッテリ1Gに熱が与えられることで補機バッテリ1Gを暖機することもできる。すなわち、本形態によれば、補機バッテリ1Gの廃熱を利用でき、さらに補機バッテリ1Gの温度調整が可能となる。
【0046】
(3)本実施形態において、流路ハウジング100、第一サブ流路11c、及び連通流路51は第一ハウジング110と第二ハウジング120の2つの部材を接合して形成されていたが、これに限られるものではない。流路ハウジング100、第一サブ流路11c、及び連通流路51の少なくとも1つが、3つ以上の部材を接合して形成されたものであってもよい。
【0047】
(4)本実施形態においては、流路ハウジング100に取り付けられる補機として、第一ウォータポンプ1A、第二ウォータポンプ2A、第三ウォータポンプ3A、第一ロータリバルブ4、及び第二ロータリバルブ5を用いたが、これに限られるものではなく、他の補機を取り付けるように構成されてもよい。補機の他の例としては、バッテリポンプ、パワートレインポンプ等のポンプ類、チラー3C、電気ヒータ2D,3D、フィルタ、エアレータ、バルブ、コネクタ、ファン、ラジエータ1B、ヘッドライト等が挙げられる。
【0048】
(5)本実施形態においては、マニホールド10に第一内部流路11、第二内部流路21、第三内部流路31、第四内部流路41、連通流路51等の流路を設けたが、これに限られるものではない。マニホールド10における連通路を含む流路の数や配置、及び、流入出ポートの位置や開口の方向、数は、補機の種類や数、冷却回路の構成により、適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、マニホールドに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1A :第一ウォータポンプ(補機)
1G :補機バッテリ
2A :第二ウォータポンプ(補機)
3A :第三ウォータポンプ(補機)
4 :第一ロータリバルブ(補機)
4A :アクチュエータ(モータ)
5 :第二ロータリバルブ(補機)
5A :アクチュエータ(モータ)
10 :マニホールド
11 :第一内部流路(冷却流路)
21 :第二内部流路(冷却流路)
31 :第三内部流路(冷却流路)
51 :連通流路(冷却流路)
100 :流路ハウジング
図1
図2
図3
図4