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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125765
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】高温流体の配管移送装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/14 20060101AFI20240911BHJP
   F16L 9/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F16L59/14
F16L9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033814
(22)【出願日】2023-03-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト/高炉を用いた水素還元技術の開発/外部水素や高炉排ガスに含まれるCO2を活用した低炭素化技術等の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 将人
(72)【発明者】
【氏名】末松 芳章
(72)【発明者】
【氏名】松田 まどか
【テーマコード(参考)】
3H036
3H111
【Fターム(参考)】
3H036AA01
3H036AA04
3H036AB15
3H036AB24
3H036AB32
3H036AB42
3H036AC06
3H036AD09
3H036AE05
3H036AE09
3H111AA01
3H111BA02
3H111BA03
3H111CA13
3H111CA17
3H111CB14
3H111CB24
3H111CB29
3H111DA11
3H111DA15
3H111DA23
3H111DA24
3H111DB11
3H111DB22
3H111EA14
(57)【要約】
【課題】高い安全性を確保しながら、特殊な部材を用いることなく小型化可能な、二重管構造の高温流体の配管移送装置を提供する。
【解決手段】本発明は、内部を高温流体が流れる内管と、該内管を外側から囲繞して環状空間を形成する外管と、前記環状空間で内管の外周面を覆う断熱層とを設けてなる、高温流体の配管移送装置であって、(a1)前記内管に、前記高温流体を供給し排出する、高温流体給排手段と、(a2)前記環状空間に、前記高温流体とは独立して流れる不活性ガスを、供給し排気する、不活性ガス給排手段と、(a3)前記内管の内部圧力および前記環状空間の内部圧力をそれぞれ測定する圧力測定手段と、(a4)前記内管の内部圧力と前記環状空間の内部圧力とを略等圧に制御する圧力制御手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を高温流体が流れる内管と、該内管を外側から囲繞して環状空間を形成する外管と、前記環状空間で前記内管の外周面を覆う断熱層とを設けてなる、高温流体の配管移送装置であって、
(a1)前記内管に、前記高温流体を供給し排出する、高温流体給排手段と、
(a2)前記環状空間に、前記高温流体とは独立して流れる不活性ガスを、供給し排気する、不活性ガス給排手段と、
(a3)前記内管の内部圧力および前記環状空間の内部圧力をそれぞれ測定する圧力測定手段と、
(a4)前記内管の内部圧力と前記環状空間の内部圧力とを略等圧に制御する圧力制御手段と、
を備える、高温流体の配管移送装置。
【請求項2】
前記環状空間内の前記高温流体に由来するガス成分濃度を測定するガス濃度測定手段を備え、さらに、
(b1)該ガス濃度測定手段による前記環状空間のガス濃度変化に基づいて前記内管の損傷を検知する安全装置、および、
(b2)前記圧力測定手段による前記内管の内部または前記環状空間の圧力変化に基づいて前記内管または前記外管の損傷を検知する安全装置、
のいずれか一方または双方を備える、請求項1に記載の高温流体の配管移送装置。
【請求項3】
前記圧力制御手段による圧力制御範囲が、前記内管の内部圧力に対する前記環状空間の内部圧力の比で、0.25~1.5の範囲である、請求項1または請求項2に記載の高温流体の配管移送装置。
【請求項4】
前記高温流体の配管移送装置の流体移送方向の一部区間は、
(c1)前記内管が導電性を有し通電加熱される加熱管とされることで、または、
(c2)前記内管内の高温流体流路内に加熱手段が配設されることで、
前記高温流体の加熱区間とされる、請求項1または請求項2に記載の高温流体の配管移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温流体の配管移送装置に関し、詳しくは高い安全性を確保しながら高温流体を移送可能な二重管構造の高温流体の配管移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のために、エネルギー効率の高効率化や二酸化炭素排出量の少ない燃料への転換が進められている。このような背景から、流体の移送の分野でも、エネルギー効率の高効率化のために、より高温の流体の移送が求められている。
【0003】
通常、工業的に扱われる高温流体には、環境や人体に有害な化学物質(有毒物、環境破壊物質、等の液体または気体)や、可燃性の危険物(燃料油、燃料ガス、等の可燃物)が含まれる場合も多い。一方、高温流体の配管移送では、配管壁の高温腐食による孔あき、および高圧流体と外部環境との内外圧力差による配管壁の高温クリープ破断等の設備トラブルの可能性がある。しかし、このような設備トラブルにより、有害で危険な内部流体が直ちに外部に開放されるのは好ましくない。
【0004】
このような問題に対し、例えば特許文献1では、高温高圧流体が流れる配管において、配管の温度上昇を抑制して配管内壁面の高温腐食を防止し、熱伸び量を低減または該熱伸び量に対する拘束を緩和して熱応力を低減する高温流体用配管構造が提案されている。具体的には、図6に示すように、内部を高温流体が通流する耐熱管30と、該耐熱管30の外周を覆って設けられた断熱層32と、該断熱層32の外側に設けられて該断熱層32を外側から囲繞し、前記流体を密閉する耐圧管34とを三層に設ける。これにより、耐熱管30内を流れる高温流体からの熱は、耐熱管30の外周と耐圧管34の内周との間に充填された断熱層32によって遮熱され、外殻を構成する耐圧管34の温度は大幅に低くなり、配管の熱伸びが減少する。なお、外殻を構成する耐圧管34は、フランジ37部でボルト等により長手方向に接続される。さらに、前記耐熱管30の一端を前記耐圧管34の一端の内周に第1の支持部材35を介して固定し、該耐熱管30の他端を該耐圧管34の内周に第2の支持部材36を介して半径方向に相対移動不能に、かつ長手方向には相対移動可能に取付ける。これにより、耐熱管30が熱によって、自由端部で拘束されることなく伸長でき、かかる熱伸びの拘束による熱応力が大幅に減少し、かかる熱応力による配管の破損の発生が防止される。また、断熱層32、33の内部と耐熱管30の内部とは該耐熱管30に穿設された多数の小孔31によって連通されているので、両空間の圧力バランスがなされ、断熱層32、33内の圧力が過大となることはない。
【0005】
また、特許文献2では、高温ガスタービン排気ダクトに関し、ダクトを二重構造とし、クラックが発生しても、燃焼ガスの外部への漏れを防止することができる発明が開示されている。具体的には、図7に示すように、ガスタービン40は、圧縮機41、タービン部42からなり、高温の燃焼ガスは排気ダクト系50から排熱回収ボイラへ流出し、一部はバイパススタック54より流出する。排気ダクト系50は、内側ダクト51と外側ダクト52の二重構造であり、両ダクトの隙間53には、空気配管43より圧縮機41から、または空気配管45よりファン44から、冷却空気供給ポート46を経て冷却空気を流し、冷却する。排気ダクト系50では、二重構造の内側ダクト51は耐熱の役割を、外側ダクト52は耐圧の役割をそれぞれ受け持つ。例えば、内側ダクト51が熱変形しても外側ダクト52との支持部材で吸収し、また、内側ダクト51にクラックが生じ、ガスが多少漏れても冷却空気と外側ダクト52により保護され、外には漏れない。
【0006】
特許文献3では、流体の加熱効率を向上させるとともに、高圧流体の加熱も可能な小型の電磁誘導加熱装置に関する発明が開示されている。具体的には、図8に示すような構成を有する電磁誘導加熱装置である。まず、筒状絶縁部材62が、筒状絶縁部材62の流体の出口となる出口側開口62eを除き、円筒壁部60aと底壁部60bとからなる外殻部材の有底筒状容器60、および同じく外殻部材である基盤61により囲繞されている。また、外殻部材60、61には、筒状絶縁部材62の流体の入口となる入口側開口62iよりも出口側開口62eの近くに、外殻部材60、61の内側に流体を流入する流入口61aが設けられる。さらに、筒状絶縁部材62の外周に電磁誘導コイル64が巻回され、筒状絶縁部材62の内側に発熱磁性体63が流路を形成して配設される。このような構成を有する同文献に記載の発明では、主に次のような効果を奏するとする。すなわち、(1)被加熱流体が環状空間と筒内空間で2段階に亘って加熱されるため、加熱効率が高い。(2)環状空間と筒内空間とは共通の空間を構成するため、両空間の間に圧力差がなく、筒状絶縁部材に応力が発生せず割れ等の破損も生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-304085号公報
【特許文献2】特開平11-013483号公報
【特許文献3】特開2018-085226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、断熱層32、33の内部と耐熱管30の内部とを圧力バランスさせるために耐熱管30に多数の小孔31を穿設させるため、耐圧管34が損傷した場合の、環境に有害または危険な内部流体の漏洩等に対処できない。また、特許文献2に記載の発明は、二重構造の内側ダクト51で耐熱の役割を、外側ダクト52で耐圧の役割をそれぞれ分担するものの、内側ダクト51の両側の圧力バランスは図れないため、ダクト壁の破断および内部流体の漏洩の回避には改善の余地がある。特許文献3に記載の発明は、二重管構造の加熱装置であり、環状空間と筒内空間とを共通の空間として圧力差をなくして内管に応力を発生させないとの特許文献1に記載の発明と同様の特徴を有するものの、二重管構造の流体の配管移送装置に関するものではない。
【0009】
以上のとおり、特許文献1~3では、高温流体の配管移送での、配管壁の高温腐食による孔あき、および、内外圧力差による配管壁の高温クリープ破断、等の設備トラブル、これに伴う環境に有害または危険な内部流体の漏洩に対して十分な解決策が得られない。また、上記のような設備トラブルや内部流体の漏洩問題は、設備停止や人的被害発生等に至る前に、またはトラブル発生の初期段階に検知できることが望ましいが、特許文献1~3には、そのような検知の方策については何ら記載されていない。
また一般的に、耐熱性および耐圧性等を含む厳重な内部流体の漏洩対策が施された高温流体の配管移送装置は、大型化しやすく、また、往々にして特殊な部材を用いるため高価であるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記のような問題に鑑み、高い安全性を確保しながら、特殊な部材を用いることなく小型化可能な、二重管構造の高温流体の配管移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]内部を高温流体が流れる内管と、該内管を外側から囲繞して環状空間を形成する外管と、前記環状空間で前記内管の外周面を覆う断熱層とを設けてなる、高温流体の配管移送装置であって、
(a1)前記内管に、前記高温流体を供給し排出する、高温流体給排手段と、
(a2)前記環状空間に、前記高温流体とは独立して流れる不活性ガスを、供給し排気する、不活性ガス給排手段と、
(a3)前記内管の内部圧力および前記環状空間の内部圧力をそれぞれ測定する圧力測定手段と、
(a4)前記内管の内部圧力と前記環状空間の内部圧力とを略等圧に制御する圧力制御手段と、
を備える、高温流体の配管移送装置。
【0012】
[2]前記環状空間内の前記高温流体に由来するガス成分濃度を測定するガス濃度測定手段を備え、さらに、
(b1)該ガス濃度測定手段による前記環状空間のガス濃度変化に基づいて前記内管の損傷を検知する安全装置、および、
(b2)前記圧力測定手段による前記内管の内部または前記環状空間の圧力変化に基づいて前記内管または前記外管の損傷を検知する安全装置、
のいずれか一方または双方を備える、[1]に記載の高温流体の配管移送装置。
【0013】
[3]前記圧力制御手段による圧力制御範囲が、前記内管の内部圧力に対する前記環状空間の内部圧力の比で、0.25~1.5の範囲である、[1]または[2]に記載の高温流体の配管移送装置。
【0014】
[4]前記高温流体の配管移送装置の流体移送方向の一部区間は、
(c1)前記内管が導電性を有し通電加熱される加熱管とされることで、または、
(c2)前記内管内の高温流体流路内に加熱手段が配設されることで、
前記高温流体の加熱区間とされる、[1]~[3]のいずれかに記載の高温流体の配管移送装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配管部を二重構造とするとともに、環状空間を流体圧力と略等圧に加圧して内管の内外圧力差を低減することで、内管のフープ応力を抑制し、内管の変形、それに伴う破損、およびその結果発生する高温流体の環状空間への漏洩を防止できる。その際、本発明の外管は、内部を高温流体が流れる内管が高温になっても、環状空間の断熱層により比較的低温に保たれ材料強度を保持できるため、高温流体と略等圧の環状空間内の高圧にも十分耐え、破損およびその結果発生する高温流体の外部漏洩を防止できる。
また、本発明によれば、環状空間内に不活性ガスを流すことで、内管内の高温流体が環状空間へ漏れたとしても、その濃度を希釈し、かつ、外部環境への直接的な漏洩を防ぐことができる。さらに、このような環状空間への高温流体の漏洩が生じたとしても、本発明では環状空間が内管内と略等圧に加圧されていることで、その漏洩程度を抑制できる。
加えて、本発明によれば、外管が腐食や外力などによって破損した場合でも、外部環境へ漏洩するのは環状空間内の流体であり、内管内の高温流体が直接漏洩する場合に比べて被害を最小限に抑えることができる。
さらに、環状空間内の内部圧力測定手段およびガス濃度測定手段を備えた本発明よれば、設備停止や人的被害発生等に至る前の設備トラブル初期段階で、その兆候を検知できる。
以上のとおり、本発明によれば、高い安全性を確保しながら、特殊な部材を用いることなく小型化可能な、二重管構造の高温流体の配管移送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る高温流体の配管移送装置を、流路方向の配管一区間の縦断面図で模式的に示す図である。
図2図1のA-A断面を模式的に示す図である。
図3】第2の実施形態に係る高温流体の配管移送装置を、流路方向の配管複数区間の縦断面図で模式的に示す図である。
図4】第2の実施形態の変形例に係る高温流体の配管移送装置を、加熱手段が配設された配管一区間の長手方向中央部の横断面図で模式的に示す図である。
図5】第2の実施形態の他の変形例に係る高温流体の配管移送装置を、加熱手段が配設された配管一区間のみで高温流体の加熱装置とする場合について、縦断面図で模式的に示す図である。
図6】従来技術に係る高温流体用配管構造を、流路方向の縦断面図で模式的に示す図である。
図7】従来技術に係るガスタービン排気ダクトを、一部縦断面図を含む全体構成図で模式的に示す図である。
図8】従来技術に係る電磁誘導加熱装置を縦断面図で模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る高温流体の配管移送装置1を、流路方向の配管一区間の縦断面図で模式的に示す図である。また、図2は、図1のA-A断面を模式的に示す図である。
以下、図1および図2を参照して、第1の実施形態に係る高温流体の配管移送装置(単に、配管移送装置ともいう。)について説明する。
【0019】
図1および図2に示すように、第1の実施形態に係る高温流体の配管移送装置1は、内部を高温流体が流れる内管10と、これを外側から囲繞して環状空間22を形成する外管24と、環状空間22の一部または全部に充填される断熱層20とを基本の構成とする。
【0020】
本実施形態では、図1に示す配管移送装置1の流路方向の1区間の配管を1単位として流路長さに応じて複数単位を連結して流体流路の全長が形成される(連結状態は図3参照)。内管10同士を連結する継手12は、公知の継手でよいが、その一部または全部が、内管10と外管24との流路方向の熱伸縮量差を吸収するために、公知の伸縮継手であるのが好ましい。一方、外管24同士の連結は、内管10内の高温流体の熱が断熱層20である程度遮断されるため、熱伸縮の問題は殆どなく、フランジ26部での公知のフランジ接続としてよい。
【0021】
内管10と外管24との間の環状空間22には、半径方向の間隔をいずれの周方向位置でも略均等に維持する内管支持部材14が周方向複数箇所に配設される。この内管支持部材14は、配管移送装置1の1区間の上流側および下流側にそれぞれ配設されると環状空間22の半径方向の間隔を流路方向でも略均等に維持できるので好ましい。また、内管支持部材14は、内管10または外管24のいずれか一方には溶接等で固定し、他方には溶接等で固定せず接触するのみとして、流路方向に摺動可能にするのが好ましい。これによって、内管10と外管24との流路方向の熱伸縮量差による相対移動を許容して内管支持部材14の破損を防止することができる。但し、流路方向の前後で設けられる伸縮継手の間で少なくとも1箇所の内管支持部材14は、内管10および外管24のいずれにも溶接等で固定されるのが好ましい。これにより、流路方向の全長に亘って複数設けられる伸縮継手の効果をいずれの伸縮継手においても略均等に得ることが可能だからである。
【0022】
さらに、本実施形態に係る高温流体の配管移送装置1は、(a1)内管10に、高温流体を供給し排出する、高温流体給排手段(図示せず。)を有する。ここでの高温流体給排手段としては、流体タンク、流体加熱装置、圧送ポンプ、圧力調整弁、配管、および給排ヘッダー等からなる公知の高温流体給排手段でよく、その詳細な説明は省略する。また、本実施形態に係る高温流体の配管移送装置1は、(a2)環状空間22に、高温流体とは独立して流れる不活性ガスを、供給し排気する、不活性ガス給排手段(図示せず。)を有する。ここでの不活性ガス給排手段としては、ガスタンク、圧送ポンプ、圧力調整弁、配管、および給排ヘッダー等からなる公知のガス給排手段でよく、その詳細な説明は省略する。また、本実施形態に係る高温流体の配管移送装置1は、(a3)内管10の内部圧力および環状空間の内部圧力をそれぞれ測定する圧力測定手段(図示せず。)を有する。ここでの圧力測定手段としては、公知のブルドン管圧力計、ダイアフラム圧力計等の圧力計と、公知の圧力測定値の演算処理装置でよく、その詳細な説明は省略する。また、本実施形態に係る高温流体の配管移送装置1は、(a4)内管10の内部圧力と環状空間22の内部圧力とを略等圧に制御する圧力制御手段(図示せず。)を有する。ここでの圧力制御手段としては、所定の圧力設定値および(a3)の圧力測定結果、等に基づいて、高温流体および不活性ガスに対する圧送ポンプ、圧力調整弁および制御弁等を制御する制御装置、等からなる公知の手段でよく、その詳細な説明は省略する。
【0023】
本実施形態では、環状空間22に、高温流体と独立かつ略等圧で、不活性ガスを流す。これにより、例え内管10内の高温流体が環状空間22へ漏れたとしても、その濃度を不活性ガスで希釈でき、かつ、二重管構造であるため外部環境への直接的な漏洩を防ぐことができる。さらに、本実施形態では、このような高温流体の環状空間22への漏洩が生じたとしても、環状空間22が内管10内と略等圧に加圧されており圧力差が小さいため、漏洩の程度を抑制できる。また、外管24が腐食や外力などによって破損し、かつ内管10も破損した場合でも、外部環境へ漏洩するのは環状空間22内の不活性ガスが主体の流体であり、内管10内の高温流体が直接漏洩する場合に比べて被害を最小限に抑えることができる。
【0024】
なお、環状空間22には、その一部または全部に断熱層20が配設されるようにする。断熱層20をなす断熱材としては、例えば低熱伝導のセラミックスファイバー等の通気性を有する公知の断熱材が用いられる。この場合、例え環状空間22の全部に断熱層20が満たされるように配設されていても不活性ガスを環状空間に流すことができる。
また、環状空間22に供給する不活性ガスとしては特に限定されないが、安価であることから窒素ガスが好ましい。
【0025】
本実施形態では、環状空間22を高温流体の流体圧力と略等圧に加圧して内管10の内外圧力差を低減することで、内管10のフープ応力を抑制して内管10の変形および破損を防止することができ、高温流体の環状空間22への漏洩を防ぐことができる。なお、ここでの高温流体および不活性ガスの圧力としては、共にゲージ圧で0.5MPa程度までの加圧を想定している。
内管10の材質としては、このような高圧環境でも、内外圧力差を低く抑えて使用されフープ応力も抑制されることから、高い強度を持たせる必要がない。そのため、本実施形態では、内管10の板厚を薄くして軽量化を図ることもでき、延いては配管移送装置1を小型化することもできる。ただし、内管10は、高温流体に対し耐熱耐食性を有する必要があることから、その材料としては、例えばCr-Ni系ステンレス鋼等の耐熱耐食性材料とするのが好ましい。
【0026】
本実施形態の外管24としては、内管10が高温流体により高温になっても、環状空間22の断熱層20により比較的低温に保たれ材料強度を保持できるため、強度部材として高温流体と略等圧の環状空間22内の高圧に耐え得るものであればよい。このような耐圧強度を有する外管24であれば、外管24そのものの破損およびそれによる高温流体の外部漏洩を防止できる。具体的な外管24としては、高温流体と直接触れることはなく、耐熱性および耐食性について特別な要件はないことから、350℃程度以下で使用される高圧配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3455)等を採用すればよい。
【0027】
本実施形態に係る配管の横断面形状は、図2および図3に示すような略円形の他、略矩形の形状を例示できるが、これらに限定されない。配管の横断面が図2および図3のように略円形の場合は、製造が比較的容易であること、外周面の面積を最小化できる形状であり外周部からの熱放散を低く抑えることができること、等から好ましい形状といえる。一方、配管の横断面が略四角形の場合は、限られた加熱装置設置スペースの中で、周囲との干渉を避けつつデッドスペースをなくすように配管移送装置を配設することができる点で、好ましい形状といえる。配管の断面形状をいずれの形状とするかは、配管移送装置の設置場所の条件等に応じて適宜決定すればよい。
【0028】
本実施形態の変形例として、さらに、環状空間22内を流れる流通ガスの濃度を測定する公知のガス濃度測定手段を備え、(b1)該ガス濃度測定手段による環状空間22のガス濃度変化に基づいて内管10の損傷を検知する安全装置を備えるのが好ましい。また、安全装置としては、(b2)上記(a3)の圧力測定手段による内管10内または環状空間22の圧力変化に基づいて内管10または外管24の損傷を検知する安全装置と代替するようにしても、または併用するようにしてもよい。これにより、内管10の高温腐食での孔あきおよび高温クリープ破断等による内管10からの内部流体の漏洩で、外管24の損傷も伴う場合に設備停止や人的被害発生等に至るのを、トラブル初期段階で防止できる。
【0029】
上記(a4)の圧力制御手段による圧力制御範囲は、内管10の内部圧力に対する環状空間22の内部圧力の比で、0.25~1.5の範囲としてもよい。この圧力比が略等圧より低くても0.25までであれば、内管10の高温クリープ破断の危険性を緩和する内管10の高温強度設計を行いつつ、上記(b1)による安全監視を併用することで、内管10からの内部流体の漏洩を初期段階から管理できる。一方、この圧力比が略等圧より高い場合は、内管10からの内部流体の漏洩は発生しないが、高温流体に不活性ガスが混入する品質問題が発生する。但し、この圧力比が略等圧より高くても1.5までであれば、内管10の高温クリープ破断の危険性を緩和する内管10の高温強度設計を行いつつ、上記(b2)による安全監視を併用することで、高温流体に不活性ガスが混入する品質問題を管理できる。
【0030】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、図1および図2に記載された高温流体の配管移送装置において、内管10を加熱管兼用内管10a、継手12を絶縁性継手12a、内管支持部材14を絶縁性内管支持部材14aとする。また、図3は、第2の実施形態に係る高温流体の配管移送装置2を、流路方向の配管複数区間の縦断面図で模式的に示す図である。また、図4は、第2の実施形態の変形例に係る高温流体の配管移送装置3を、加熱手段が配設された配管一区間の長手方向中央部の横断面図で模式的に示す図である。また、図5は、第2の実施形態の他の変形例に係る高温流体の配管移送装置を、加熱手段が配設された配管一区間のみで高温流体の加熱装置とする場合について、縦断面図で模式的に示す図である。
以下、図1図5を参照して、第2の実施形態に係る高温流体の配管移送装置について説明する。
【0031】
図1図3に示すように、第2の実施形態に係る高温流体の配管移送装置2では、その流体移送方向の一部区間を、(c1)内管10に代えて、導電性を有し通電加熱される加熱管兼用内管10aとすることで、高温流体の加熱区間とする。なお、この場合の加熱管兼用内管10aは、周囲と電気絶縁性を確保するために、電気絶縁性部材を内在させた絶縁性継手(絶縁性伸縮継手)12aおよび絶縁性内管支持部材14aとするのが好ましい。また、単体では電気絶縁性を備えていない内管支持部材14および継手(伸縮継手)12との間に、または、その先の周囲との間に、電気絶縁性部材を介して接続されるようにしてもよい。
【0032】
また、図4に示すように、第2の実施形態の変形例に係る高温流体の配管移送装置3では、その流体移送方向の一部区間を、(c2)内管10内の高温流体流路内に内管内発熱体18等の加熱手段を配設することで、高温流体の加熱区間とする。なお、(c2)の加熱手段としては、図4のような通電加熱の他、公知の誘導加熱(特許文献3参照)、ラジアントチューブヒーターによる加熱、および熱交換器による加熱、等を例示できるが、いずれも公知の加熱手段であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0033】
図2図4での通電加熱は、加熱管兼用内管10aでは、流体移送方向の両端部に、また、内管内発熱体18では、渦巻状発熱体の内巻端および外巻端に、直流または交流の外部電源16を接続して通電することにより行う。
【0034】
加熱管兼用内管10aおよび内管内発熱体18は、導電性を有し、高温流体の加熱温度に耐える耐熱性および耐食性を有し、加熱管または発熱体の形状に成形できるものである等の要件を満たすものであれば特にその材質は限定されない。このような要件を満たす好ましい材質として、例えば、公知のCr合金鋼(低炭のCr合金鋼の他、高合金のCr系ステンレス鋼も含む。)がある。また他の合金鋼として、Cr-Ni合金鋼(低炭のCr-Ni合金鋼の他、高合金のCr-Ni系ステンレス鋼も含む。)が例示できる。さらに、特に1000℃超での使用に耐える、カーボン素材、または導電性セラミックスが例示できる。これらの材質は、比較的固有抵抗が大きいので、発熱体として好ましい材質である。導電性セラミックスとしては、公知のSiC等の導電性セラミックスを採用すればよい。
【0035】
本実施形態の高温流体の加熱区間における加熱制御について、加熱手段が電気加熱の場合を例にして説明する。
加熱手段が電気加熱の場合は、電流、電圧、および電力等を制御する公知技術に基づいて、加熱制御することができる。また、加熱手段の加熱能力については、発熱体の抵抗、発熱量、および被加熱流体である高温流体(単に被加熱流体ともいう。)の昇温量等を勘案して設計すればよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、被加熱流体の少なくとも温度および流量を含む物理量、ならびに発熱体の少なくとも単位面積当たりの単位発熱量を含む設備能力に基づいて、発熱体への投入電力を制御する制御装置(図示せず。)を有する。この制御装置により、外部電源から発熱体へ投入する電力を制御しながら、発熱体を通電加熱または誘導加熱して被加熱流体を加熱する。被加熱流体の昇温制御は、加熱された被加熱流体の温度実測値をもとに投入電力へのフィードバック制御をしてもよい。また、この制御装置では、発熱体の監視箇所での測温データに基づいて発熱体の過加熱等の異常時ないし緊急時に、警報の発信および/または電力遮断等を行う機能を有するようにするのが好ましい。なお、ここでの制御装置は、演算装置、記憶装置、入出力装置等を含む公知の制御装置でよく、その詳細な説明は省略する。
【0037】
加熱制御に用いる、被加熱流体の温度および流量を含む所定の物理量は、加熱区間での被加熱流体の入口および/または出口の近傍で測定するのが好ましい。入口近傍および/または出口近傍での被加熱流体の物理量の測定結果は、投入電力、電流、および電圧等の電源へのフィードフォワード制御および/またはフィードバック制御による被加熱流体温度制御の高精度化に寄与できるからである。加熱区間の少なくとも発熱体の単位面積当たり単位発熱量を含む設備能力は、上記のフィードバック制御およびフィードフォワード制御のいずれにおいても、加熱区間への投入電力、電流、および電圧等の電源制御の基礎データとして用いられる。ここでの被加熱流体の温度測定手段としては、公知の熱電対による温度測定等が例示できる。また、被加熱流体の流量測定手段としては、公知の電磁流量計、超音波流量計、および差圧式流量計(オリフィス流量計)等が例示できる。
【0038】
以上のように構成される場合であっても、第2の実施形態に係る高温流体の配管移送装置2、3は、第1の実施形態に係る高温流体の配管移送装置1とほぼ同様の効果が得られる。
【0039】
加えて、本実施形態では、配管移送装置に受け入れる前に所定温度に達していない高温流体であっても、配管移送中の加熱区間で所定温度まで昇温させることができる。さらに、本実施形態では、配管移送の途中で高温流体の温度低下等の温度変動が生じても、加熱区間で所定温度まで回復させ、または所定温度に維持させるよう制御することができる。
【0040】
なお、第2の実施形態またはその変型例に係る高温流体の配管移送装置の「高温流体の加熱区間」は、図5に示すように、単独で「高温流体の加熱装置」として用いることもできる。図3に示す高温流体の配管移送装置2と比較して、図5に示す高温流体の配管移送装置4(5)は、1本の加熱管兼用内管10aに、絶縁性蓋体11、高温流体Fの高温流体導入管15a、および高温流体導出管15bが配設される。また、外管24相当の外殻24aは、単純管構造ではなく、1本の加熱管兼用内管10aの全体を覆う外殻構造となり、断熱層20aも加熱管兼用内管10aおよび絶縁性蓋体11を外側から全体的に覆う断熱層20aとなる。また、環状空間22aも、同様に1本の内管の全体を囲む、外殻24aとの間の空間となる。また、この環状空間22aには、不活性ガスGの不活性ガス導入管25aおよび不活性ガス導出管25bが配設される。
【0041】
このような高温流体の加熱装置5であっても、加熱装置内で、第2の実施形態またはその変型例に係る高温流体の配管移送装置の場合とほぼ同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0042】
1、2、3、4 高温流体の配管移送装置
5 高温流体の電気加熱装置
10 内管
10a 加熱管兼用内管
11 絶縁性蓋体
12 継手(伸縮継手)
12a 絶縁性継手(絶縁性伸縮継手)
14 内管支持部材
14a 絶縁性内管支持部材
15a 高温流体導入管
15b 高温流体導出管
16 外部電源
18 内管内発熱体
20、20a 断熱層(断熱材)
22、22a 環状空間
24 外管(外殻)
24a 外殻
25a 不活性ガス導入管
25b 不活性ガス導出管
26 フランジ
30 耐熱管
31 小孔
32、33 断熱層
34 耐圧管
35 第1の支持部材
36 第2の支持部材
37 フランジ
40 ガスタービン
41 圧縮機
42 タービン部
43 空気配管
44 ファン
45 空気配管
46 冷却空気供給ポート
50 排気ダクト系
51 内側ダクト
52 外側ダクト
53 隙間
54 バイパススタック
60 外殻部材(有底筒状容器)
60a 円筒壁部
60b 底壁部
61 外殻部材(基盤)
61a 流入口
62 筒状絶縁部材
62e 出口側開口
62i 入口側開口
63 発熱磁性体
64 電磁誘導コイル
F 高温流体
G 不活性ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8