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特開2024-125782接合構造体の製造方法、並びに接合構造体製造用金型および接合構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125782
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】接合構造体の製造方法、並びに接合構造体製造用金型および接合構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20240911BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240911BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20240911BHJP
   B29C 45/64 20060101ALI20240911BHJP
   B29C 33/20 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
B29C33/14
B29C45/64
B29C33/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033843
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直哉
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 孝邦
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AH17
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB20
4F202CK06
4F202CQ01
4F202CQ05
4F206AD03B
4F206AD12B
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB20
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】金属体と樹脂体とを相互に対向する接合面で接合した接合構造体を射出成形で製造する際、金属体と樹脂体相互の接合面での溶融樹脂の漏出を抑制し得る接合構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】この接合構造体1の製造方法は、中空部11を有する金属体10の接合面14に射出成形によって樹脂体20を接合する方法であって、金属体10を固定する第一の金型71と、第一の金型71に型挿抜方向Dで対向配置されて樹脂射出空間72aを自身内部に有する第二の金型72と、を用い、樹脂射出空間72aの開口端72eに対して型挿抜方向Dとは直交方向に離隔した位置で型締め時に対向する囲繞壁15hを金属体10の接合面14に設け、囲繞壁15hと第二の金型72の樹脂射出空間72aの開口端72eを画成する部分の外壁73hとを摺接させた状態で、溶融樹脂Mを樹脂射出空間72aに射出して金属体10に樹脂体20を接合する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有する金属体の接合面に射出成形によって樹脂体を接合して接合構造体を製造する方法であって、
前記金属体を固定する第一の金型と、該第一の金型に型挿抜方向で対向配置されて樹脂射出空間を自身内部に有する第二の金型と、を用い、
前記金属体の前記接合面に形成されて前記樹脂射出空間を型締め時に囲む囲繞壁と、前記第二の金型の前記樹脂射出空間の開口端を画成する部分の外壁と、を型締め時に摺接させた状態で、溶融樹脂を前記樹脂射出空間に射出して前記金属体に前記樹脂体を接合することを特徴とする接合構造体の製造方法。
【請求項2】
前記金属体の前記接合面に、型締め時に前記樹脂射出空間の開口端を収容する凹形状部が形成されたものを用い、該凹形状部の内壁を前記囲繞壁として、該凹形状部内での前記接合面に対して前記樹脂射出空間に溶融樹脂を射出して接合する請求項1に記載の接合構造体の製造方法。
【請求項3】
前記金属体の前記接合面に、型締め時に前記第二の金型側に張り出す凸形状部が前記樹脂射出空間を囲むように形成されたものを用い、該凸形状部の内壁を前記囲繞壁として、該凸形状部の内壁側で前記樹脂射出空間に溶融樹脂を射出して接合する請求項1に記載の接合構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第二の金型の開口端を画成する部分の外壁と前記金属体に形成された前記囲繞壁との間にシール材を介装した状態で、前記第二の金型の前記樹脂射出空間に溶融樹脂を射出して接合する請求項1~3のいずれか一項に記載の接合構造体の製造方法。
【請求項5】
前記金属体の前記囲繞壁と前記第二の金型の開口端を画成する部分の前記外壁とが相互に摺接する面のうち相互の先端部分を斜めのテーパ面とし、
さらに、前記金属体の前記囲繞壁と前記第二の金型の前記外壁とが相互に摺接する面のうち前記テーパ面ではない相互の面の間にシール材を介装した状態で、前記第二の金型の前記樹脂射出空間に溶融樹脂を射出して接合する請求項1~3のいずれか一項に記載の接合構造体の製造方法。
【請求項6】
中空構造を有する金属体の接合面に射出成形によって樹脂体を接合して接合構造体を製造するための金型であって、
前記金属体を固定する第一の金型と、該第一の金型に型挿抜方向で対向配置されて樹脂射出空間を自身内部に有する第二の金型と、を備え、
前記第二の金型は、前記樹脂射出空間の開口端を画成する凸形状部を有し、
型締め時において、前記第二の金型の前記凸形状部の外壁が、前記金属体の前記接合面に前記樹脂射出空間の開口端を囲むように形成された囲繞壁に摺接され、その型締め状態で、前記樹脂射出空間に溶融樹脂を射出して前記金属体の接合面に前記樹脂体を接合可能に構成されていることを特徴とする接合構造体製造用金型。
【請求項7】
中空構造を有する金属体と、該金属体の接合面に直交する方向を型挿抜方向とする射出成形で該接合面に沿ったパーティングラインで接合部が接合された樹脂体と、を備える接合構造体であって、
前記金属体は、前記樹脂体の前記接合部を囲むように形成された囲繞壁を自身の接合面に有することを特徴とする接合構造体。
【請求項8】
当該接合構造体は、車体の前若しくは後のバンパ内に車幅方向に沿って取り付けられるバンパレインフォースメントであり、
前記金属体が、自身の背面両端に車体側に取り付けるための二つの取付部をそれぞれ有する金属製のバンパビームであり、
前記樹脂体が、バンパビームの背面に沿って接合される樹脂製の補強部である請求項7に記載の接合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体と樹脂体とを相互に対向する接合面で接合した接合構造体およびその製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化且つ低コスト化等を目的に、金属体と樹脂体とを相互に対向する接合面で接合した接合構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、金属体と接合される樹脂体の固定部に対してその押圧治具側に、印加される加圧力を分散し且つ均一化する平面部を設けている。これにより、同文献記載の技術では、金属体と樹脂体とを直接接合する際に印加される加圧力を分散させると共に均一化し、金属体に対する樹脂体の接合強度の低下を抑制可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-113219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この種の接合構造体を、金型を用いて射出成形で製造する際、金属体が接合面の裏側に中空構造を有する場合に、金属体の接合面に向けて溶融樹脂を単に射出接合させると、金属体の接合面が射出圧によって裏側に向けて弾性変形する場合がある。その場合、その変形により金属体の接合面と金型側の樹脂射出空間との接合面間に隙間が生じ、その隙間から溶融樹脂が漏出してしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、金属体と樹脂体とを相互に対向する接合面で接合した接合構造体を射出成形で製造する際、金属体と樹脂体相互の接合面での樹脂の漏出を抑制し得る接合構造体の製造技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る接合構造体の製造方法は、中空構造を有する金属体の接合面に射出成形によって樹脂体を接合して接合構造体を製造する方法であって、前記金属体を固定する第一の金型と、該第一の金型に型挿抜方向で対向配置されて樹脂射出空間を自身内部に有する第二の金型と、を用い、前記金属体の前記接合面に形成されて前記樹脂射出空間を型締め時に囲む囲繞壁と、前記第二の金型の前記樹脂射出空間の開口端を画成する部分の外壁と、を型締め時に摺接させた状態で、溶融樹脂を前記樹脂射出空間に射出して前記金属体に前記樹脂体を接合する。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る接合構造体製造用金型は、中空構造を有する金属体の接合面に射出成形によって樹脂体を接合して接合構造体を製造するための金型であって、前記金属体を固定する第一の金型と、該第一の金型に型挿抜方向で対向配置されて樹脂射出空間を自身内部に有する第二の金型と、を備え、前記第二の金型は、前記樹脂射出空間の開口端を画成する凸形状部を有し、型締め時において、前記第二の金型の前記凸形状部の外壁が、前記金属体の前記接合面に前記樹脂射出空間の開口端を囲むように形成された囲繞壁に摺接され、その型締め状態で、前記樹脂射出空間に溶融樹脂を射出して前記金属体の接合面に前記樹脂体を接合可能に構成されている。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る接合構造体は、中空構造を有する金属体と、該金属体の接合面に直交する方向を型挿抜方向とする射出成形で該接合面に沿ったパーティングラインで接合部が接合された樹脂体と、を備える接合構造体であって、前記金属体は、前記樹脂体の前記接合部を囲むように形成された囲繞壁を自身の接合面に有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属体の接合面に囲繞壁を設けたので、溶融樹脂の射出圧により金属体の接合面に弾性変形が生じても、接合面での樹脂射出空間の開口端からの樹脂漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る接合構造体の第一実施形態であるバンパレインフォースメントの模式的説明図であり、同図(a)は平面図、(b)は(a)をバンパビームの背面側から見た図である。
図2】本発明に係る接合構造体の第一実施形態であるバンパレインフォースメントおよびこれを製造する金型並びにバンパビームの説明図であり、同図は、図1(b)でのZ-Z断面の位置での模式的横断面を金型と共に示している。
図3】本発明に係る接合構造体の第一実施形態であるバンパレインフォースメントの製造方法を説明する図であって、各図(a)~(d)はバンパビームの横断面視方向の模式図を示している。
図4図2での要部(接合面近傍)拡大図であって、同図(a)は溶融樹脂射出前の状態を示し、(b)は溶融樹脂射出時の状態を示している。
図5】本発明に係る接合構造体の第二実施形態であるバンパレインフォースメントおよびこれを製造する金型並びにバンパビームの説明図であり、同図は、図1(b)でのZ-Z断面の位置での模式的横断面を金型と共に示している。
図6】第一実施形態の第一変形例を説明する図であり、同図(a)はZ-Z断面の位置での模式的横断面を金型と共に示し、(b)は同図(a)の要部を拡大して示している。
図7】第一実施形態の第一変形例における作用効果を説明する図であり、同図(a)は溶融樹脂射出時の状態を示し、(b)は同図(a)の要部を拡大して示している。
図8】第一実施形態の第二変形例を説明する図であり、同図(a)はZ-Z断面での接合面近傍位置での内外壁相互の摺接部分(溶融樹脂射出前の状態)を模式的に示し、(b)は同図(a)での溶融樹脂射出時の状態を示している。
図9】比較例としての接合構造体の一例であるバンパレインフォースメントの模式的横断面図である。
図10】比較例としての接合構造体の一例であるバンパレインフォースメントの製造方法を説明する図であって、各図(a)~(d)はバンパビームの横断面視方向の模式図を示している。
図11図10での要部(接合面近傍)拡大図であって、同図(a)は溶融樹脂射出前の状態を示し、(b)は溶融樹脂射出時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0012】
[バンパレインフォースメント]
図1に示すように、第一実施形態のバンパレインフォースメント1は、車幅方向Wに延びる金属体であるバンパビーム10と、バンパビーム10の周壁背面13に接合される樹脂体である補強部20と、を備える。
【0013】
バンパビーム10は、自身の両端近傍に車体側に取り付けるための取付部19、19をそれぞれ有する。二つの取付部19、19よりも車幅方向内側には、二つの屈曲部18、18が形成されている。本実施形態では、各取付部19、19に不図示のクラッシュボックスが装着され、クラッシュボックスを介して車体側にバンパビーム10が取り付けられる態様を例示している。
【0014】
バンパビーム10は、アルミニウム合金製の長尺な部材であり、図2に横断面を拡大図示するように、押し出し成形により横断面が略矩形状をなし、自身の延在方向に沿った2つの中空部11を有する中空構造に形成されている。中空部11の周囲は周壁部12によって矩形状に囲まれている。2つの中空部11相互は分割壁11mで上下中央の位置にて分割されている。
【0015】
補強部20は、バンパビーム10の周壁背面13に延在方向に沿って付設される樹脂製の補強部材である。補強部20は、バンパビーム10の周壁背面13に設けられた接合面14に対して、バンパビーム10の延在方向に沿って射出成形によって所定の範囲に接合される。
本実施形態では、補強部20は、2つの中空部11に対応し、周壁背面13の上下に離隔した二箇所に設けられている。本実施形態の補強部20は、繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)製とされている。特に、本実施形態の繊維強化樹脂の繊維は不連続短繊維であり、また、繊維強化樹脂の繊維は炭素繊維である。
【0016】
第一実施形態のバンパレインフォースメント1では、図2に示すように、樹脂製の補強部20は、2つの中空部11に対し、各中空部11での周壁背面13での上下中央に設定された接合面14に接合面21mが接合される接合部21と、接合部21の背面側中央から後方に向けて張り出す張出部22とを有する。
補強部20は、後述するように、接合面21mがバンパビーム10の接合面14に射出成形で接合される。これにより、補強部20には、バンパビーム10との接合面21mに沿ったパーティングラインが形成される。
【0017】
ここで、第一実施形態のバンパビーム10は、補強部20の接合部21を囲むように形成された囲繞壁15hを自身の接合面14に有する。特に、第一実施形態のバンパビーム10では、接合面14に、型締め時に樹脂射出空間72aの開口端72eを収容する凹形状部15が中空部11の側に凹とされる段差によって形成され、この凹形状部15を形成する周壁背面13側の内壁が囲繞壁15hになっている。
なお、囲繞壁15hの長手方向での両端末部分の形状は、図1(b)に示すように、押出成形されたアルミ材には端部にも囲繞壁15hに連続する凹形状部が存在するので、樹脂漏れが端部へ向かうのを防止するために、その凹形状部(15h)との境を埋めるようにシール材19sを配置することが好ましい。
【0018】
[金型の構造]
次に、第一実施形態のバンパレインフォースメント1を製造するための金型構造と、その金型構造と協働して作用効果を奏するバンパビーム10の要部形状についてより詳しく説明する。
第一実施形態のバンパレインフォースメント1は、図2に示すように、接合構造体製造用金型として、金型組70を用いて製造される。金型組70は、第一の金型71と、第一の金型71に対して型挿抜方向Dで型締め及び型開き可能に設けられた第二の金型72とを有する。
【0019】
第一の金型71には、上記バンパビーム10が収容される凹の収容部71sが第二の金型72の側に開口しており、この収容部71s内に、中空構造のバンパビーム10が収容された状態で固定されるようになっている。第二の金型72は、キャビティ内に補強部(樹脂体)20とすべき形状が画成された樹脂射出空間72aを有する。
第一実施形態のバンパレインフォースメント1は、この金型組70を用い、第一の金型71と第二の金型72とが相互の型挿抜方向Dで押圧されて型締めされ、その型締め後に、溶融樹脂を樹脂射出空間内に射出して、補強部20をバンパビーム10に射出成形によって接合可能に構成されている。
【0020】
ここで、上述したように、第一実施形態のバンパビーム10の周壁背面13には、凹形状部15が形成され、その凹形状部15による凹溝底面が接合面14となっている。そして、凹形状部15による凹溝の両側壁面が、樹脂射出空間72aの周囲を囲む囲繞壁15hとされている。特に、第一実施形態においては、囲繞壁15hの上下両側面は、バンパビーム10の長手方向に沿って樹脂射出空間72aを上下から挟むように並行に形成されている。
【0021】
これに対し、第二の金型72は、樹脂射出空間72aの開口端72eを画成する部分が凸形状部73とされ、凸形状部73の外壁73hは、型締め時に、バンパビーム10に対して、接合面14周囲の囲繞壁15hに摺接するように構成されている。
これにより、第一実施形態においては、金型組70の型締め時に、第二の金型72の外壁73hとバンパビーム10の囲繞壁15hとが接合面14にて樹脂射出空間72aの周囲を囲む位置で型挿抜方向Dに沿って相互が摺接するようになっている。
【0022】
[バンパレインフォースメントの製造方法]
次に、第一実施形態のバンパレインフォースメント1の製造方法について説明する。
図1のバンパレインフォースメント1の製造工程は、まず、アルミニウム合金材の押し出し成形により、延在方向に沿った上記中空構造のビーム素材を作成し、このビーム素材の両端近傍に、上記クラッシュボックスの取付部19、19をそれぞれ機械加工する。
【0023】
次いで、上記二つの屈曲部18、18を成形するために、ビーム素材の所定の位置に対して曲げ加工を施す。なお、二つの補強部20の各接合部21と接合面14との接合強度を向上させるために、ビーム素材の周壁背面13の接合面14となる部分に、微細な溝形状をレーザ加工によって形成する下地表面処理を施すことが望ましい。
【0024】
次いで、図3(a)から(b)に示すように、バンパビーム10の接合面14となる部分に、二つの補強部20の各接合部21のみを接合させるように、金型組70のうち、一方の第一の金型71の収容部71sに、バンパビーム10の周壁背面13を第二の金型72側に向けた姿勢で挿入して固定する。
【0025】
その後、第一の金型71に対向する第二の金型72をバンパビーム10の周壁背面13の側から相対的に型締めする。これにより、金型組70は成形品となる接合構造体であるバンパレインフォースメント1を囲むように組み合わされる。
次いで、図3(c)に示すように、不図示の射出成形機によって加熱した溶融樹脂(例えば不連続繊維のCFRTP)を金型組70の樹脂射出空間72a内に溶融樹脂供給通路Lから射出圧力を加えて押し込み、射出成形により補強部20を接合する。なお、溶融樹脂供給通路L(スプール、ランナー、ゲート等)およびガスベント部は適所に配置できる。
【0026】
樹脂射出空間72a内に樹脂を充填して一定時間の冷却後、図3(d)に示すように、脱型してバンパビーム(金属体)10と補強部(樹脂体)20とが一体化されたバンパレインフォースメント(接合構造体)1を金型組70から取り出す。これにより、バンパビーム10に対して補強部20による所期の補強がなされる。その後、バンパビーム10の周壁背面13両端の取付部19、19にクラッシュボックスをそれぞれ組み付けてバンパレインフォースメント1が完成する。
【0027】
上記接合工程で補強部(樹脂体)20として接合(被覆)する樹脂材としては、例えばPA6+カーボン長繊維40wt%を例示できる。その他、各種ポリアミド(PA66やMXD6等)、PPS、ABS,PP,PC,PBT等の熱可塑性樹脂、カーボン短繊維やガラス繊維、セルロース系天然繊維入りとしてもよい。また、上記接合工程で補強部(樹脂体)20の射出成形による接合(被覆)条件としては、射出圧:117MPa、金型温度:140℃、射出スクリュー温度(樹脂温度):280℃を例示できる。
【0028】
[作用効果]
次に、上記第一実施形態に係るバンパレインフォースメント1並びに金型組70を用いたその製造方法の作用効果について説明する。
ここで、図9に示すように、比較例のバンパレインフォースメント101では、中空構造を有する金属体110の周壁背面113は全体的には一の平面とされ、この平面上に面一にパーティング面が設けられた金型を用いて射出成形により補強部120が接合されている。
【0029】
つまり、図10に示すように、比較例の射出成形による接合構造体の製造工程では、金属体110を第一の金型171に挿入後(同図(a))、⇒固定・型締め(同図(b))⇒樹脂射出(同図(c))⇒脱型(同図(d))の各工程を経て接合構造体110を取り出す。
その際、金属体110が接合面113の裏側に中空構造を有する場合に、金属体110の接合面113に向けて溶融樹脂Mを射出接合させると、同図(c)にイメージを示すように、金属体110の接合面113が射出圧Pによって裏側に向けて弾性変形する。そのため、その変形により金属体110の接合面113と第二の金型172側の樹脂射出空間172aとの間に隙間が生じ、その隙間から、符号Eに示すように溶融樹脂が漏出してしまうという問題が生じる。
【0030】
ここで、比較例において、第二の金型172側の樹脂射出空間172aは、図11に要部を拡大図示するように、金属体110の接合面113との間がシール材Sでシールされる構造となっている。
このような構造であると、樹脂射出前は、同図(a)に示すように、第二の金型172と金属体110の接合面113との間がシール材Sでシールされる。しかし、樹脂射出後には、同図(b)に示すように、射出圧Pによる加圧力により金属体110の接合面113が変形してシール材Sが伸びきってしまう。
これにより、溶融樹脂Mの圧力で接合面113が変形する方向でのシール機能が発揮されなくなる。そのため、シール材Sと接合面113との間に隙間が生じ、その隙間から溶融樹脂が漏れる(符号E)という問題が生じる。このような樹脂漏れの対策として、樹脂漏れした成形品に対して後工程で漏出樹脂を除去する場合は工程が増えることになり、また、金属体側の接合面の板厚を変形しない程度まで厚くすれば成形品の重量が増加することになる。
【0031】
これに対し、本実施形態の接合構造体1の製造方法は、図2に示したように、金属体10を固定する第一の金型71と、第一の金型71に型挿抜方向Dで対向配置されて樹脂射出空間72aを自身内部に有する第二の金型72と、を用い、図2および図3に示したように、金属体10の接合面14に形成されて樹脂射出空間72aを型締め時に囲む囲繞壁15hと、第二の金型72の樹脂射出空間72aの開口端72eを画成する凸形状部73の外壁73hと、を型締め時に摺接させた状態で、溶融樹脂Mを樹脂射出空間72aに射出して金属体10に樹脂体20を接合する。
【0032】
第一実施形態の接合構造体の製造方法によれば、金属体10の囲繞壁15hと第二の金型72の外壁73hとが型締め時に摺接していることにより、摺接させた外壁73hと囲繞壁15hとが樹脂射出空間72aの開口端72eからの溶融樹脂の漏出を防止または抑制する漏出防止壁として機能する。そのため、樹脂の射出圧により金属体10の接合面14に変形が生じても樹脂漏れを抑制できる[発明1]。
【0033】
また、本実施形態の接合構造体1の製造方法では、図2および図3に示したように、金属体10の接合面14に、型締め時に樹脂射出空間72aの開口端72eを収容する凹形状部15が形成されたものを用い、凹形状部15の内壁を囲繞壁15hとして、凹形状部15内での接合面14に対して樹脂射出空間72aに溶融樹脂Mを射出して接合する。
これにより、本実施形態の接合構造体1の製造方法によれば、金属体10の凹形状部15内の囲繞壁15hと第二の金型72の樹脂射出空間72aの開口端72eを画成する部分の外壁73hとが型締め時に接することにより、溶融樹脂Mの射出圧Pにより金属体10の接合面14に変形が生じても樹脂漏れを防止または抑制する上で好適である[発明2]。
【0034】
特に、第一実施形態の接合構造体の製造方法では、囲繞壁15hで囲まれた金属体10の接合面14は、樹脂射出空間72aに規制される正規の接合面21mの幅よりも広い凹形状部15内に形成され、その凹形状部15内の接合面14に樹脂射出空間72aの開口端72eを当接させている。そのため、金属体10の囲繞壁15hと第二の金型72の外壁73hとが型締め時に摺接して漏出防止機能を奏することにより、溶融樹脂の射出圧Pにより金属体10の接合面14に変形が生じても樹脂漏れを防止または抑制できるのである。
【0035】
また、本実施形態に係る接合構造体製造用金型は、図2および図3に示したように、バンパビーム(金属体)10を固定する第一の金型71と、第一の金型71に型挿抜方向Dで対向配置されて樹脂射出空間72aを自身内部に有する第二の金型72と、を含む金型組70を備える。
第二の金型72は、樹脂射出空間72aの開口端72eを画成する凸形状部73を有し、型締め時において、第二の金型72の凸形状部73の外壁73hが、バンパビーム10の接合面14に樹脂射出空間72aの開口端72eを囲むように形成された囲繞壁15hに摺接される。
そして、その型締め状態で、樹脂射出空間72aに溶融樹脂を射出してバンパビーム10の接合面14に補強部(樹脂体)20を接合可能に構成されているため、この金型組70を用いて接合構造体1を製造すれば、上述したように、バンパビーム(金属体)10と補強部(樹脂体)20相互の接合面14,21mでの溶融樹脂Mの漏出を抑制できる[発明6]。
【0036】
また、本実施形態に係る接合構造体1は、図2および図3に示したように、中空構造を有する金属体10と、金属体10の接合面14に直交する方向を型挿抜方向Dとする射出成形で接合面14に接合された樹脂体20と、を備える。そして、金属体10は、樹脂体20の接合部21を囲むように形成された囲繞壁15hを自身の接合面14に有し、樹脂体20は、金属体10との接合面21mに沿ったパーティングラインが形成される。
本実施形態の接合構造体1によれば、金属体10と樹脂体20とを相互に対向する接合面14、21mで接合した接合構造体1を射出成形で製造する際、金属体10は、樹脂体20の接合部21を囲むように形成された囲繞壁15hを自身の接合面14に有するので、金属体10と樹脂体20相互の接合面14、21mでの溶融樹脂Mの漏出が防止または抑制された接合構造体となる。よって、中空構造を有する金属体10の採用によって可及的に軽量化をしつつ、外観品質に優れた接合構造体を、修正工程等を不要に製造できる[発明7]。
【0037】
また、本実施形態に係る接合構造体1によれば、図1に示したように、接合構造体1が、車体の前若しくは後のバンパ内に車幅方向に沿って取り付けられるバンパレインフォースメントであり、金属体10が、自身の背面両端に車体側に取り付けるための二つの取付部19、19をそれぞれ有する金属製のバンパビームであり、樹脂体20が、バンパビームの背面に沿って接合される樹脂製の補強部である。
つまり、本実施形態によれば、バンパレインフォースメントに本実施形態に係る接合構造体1を採用している。そのため、例えば自動車部品の構造体として、目標とする垂直方向への密着力を満たすのに十分な構造となり、軽量且つ修正工程等を不要に低コストで必要な強度を発揮する上で、自動車部品の構造体として外観品質に優れて必要な強度を発揮できる接合構造体として好適である[発明8]。
【0038】
ここで、本発明においては、樹脂射出成形によって製造される接合構造体である点が作用効果の機序上極めて重要であることから、当該接合構造体をその構造のみから特定することはおよそ実際的でないという非実際的事情があるといえる。
また、本発明の実施形態において、バンパレインフォースメント1を金型組70から取り出す際に、一対の金型71、72は、型挿抜方向Dにて第一の金型71のパーティング面PL1と、第二の金型72のパーティング面PL2の位置で分割される。
よって、バンパレインフォースメント1には、この分割位置に応じたパーティングラインが明確に残ることから、当該接合構造体をその分割構造に基づく射出成形によって製造された結果から特定しても、上記と同様の接合工程の有無について、囲繞壁15hと接合面14,21mとの相対位置関係から、製造後の製品外観からの明確な看取および特定が可能である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る接合構造体の製造方法、並びに接合構造体製造用の金型組70およびバンパレインフォースメント(接合構造体)1によれば、金属体10と樹脂体20とを相互に対向する接合面14,21mで接合した接合構造体1を射出成形で製造する際、金属体10と樹脂体20相互の接合面14,21mでの溶融樹脂Mの漏出を防止または抑制できる。
なお、本発明に係る接合構造体の製造方法、並びに接合構造体製造用金型および接合構造体は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【0040】
例えば、図5に第二実施形態を示す。なお、上記第一実施形態と同一若しくは対応する構成には同一の符号を付すとともにその説明は適宜省略する(以下同様)。
同図に示す第二実施形態のように、囲繞壁15hは、接合面14に設けた凸形状部15によって構成してもよい。
つまり、第二実施形態での接合構造体1の製造方法では、金属体10の接合面14に、型締め時に第二の金型72側に張り出す凸形状部15が樹脂射出空間72aを囲むように形成されたものを用い、その凸形状部15の内壁を囲繞壁15hとして、凸形状部15の囲繞壁15h側で樹脂射出空間72aに溶融樹脂Mを射出して接合する。
これにより、第二実施形態の金型組70を用いた接合構造体1の製造方法によれば、金属体10の凸形状部15間の囲繞壁15hと第二の金型72の樹脂射出空間72aの開口端72eを画成する部分の外壁73hとが型締め時に摺接するため、上記第一実施形態同様に、溶融樹脂Mの射出圧Pにより金属体10の接合面14に変形が生じても樹脂漏れを防止または抑制できる[発明3]。
【0041】
また、例えば、図6に第一実施形態の第一変形例を示すように、外壁73hの開口端72eの周囲に、更にシール材80を設けてもよい。
同図に示すように、第一変形例の接合構造体1の製造方法では、第二の金型72の開口端72eを画成する部分の外壁73hの先端に凹の段部73dを形成し、この凹の段部73dにシール材80を嵌め込むことで、金属体10に形成された囲繞壁15hとの間にシール材80を介装している。第一変形例では、その状態で、図7に示すように、第二の金型72の樹脂射出空間72aに溶融樹脂Mを射出して金属体10と樹脂体20相互の接合面14,21mを接合する。
これにより、第一変形例の接合構造体1の製造方法によれば、上記発明1~3の作用効果に加えて、同図(b)に溶融樹脂Mを射出時のイメージを拡大図示するように、介装されたシール材80によって樹脂漏れをより防止または抑制できる[発明4]。
なお、同図(b)に付記する矢印は、溶融樹脂Mの流れのイメージを符号Eで示す部分に付記し、介装されたシール材80が弾性変形してシール機能を奏するイメージをシール材80の部分に付記している。
【0042】
また、例えば、図8に第一実施形態の第二変形例を示す。同図に示すように、第二変形例では、開口端72eの周囲に、更にテーパ構造を形成するとともに、シール材80を介装している点が相違する。
第二変形例では、金属体10の囲繞壁15hの摺接する面のうち、基端側部分に、開口側に向かうにつれて幅を広げるように斜めのテーパ面15tとしている。そして、第二変形例では、第二の金型72の開口端72eを画成する部分の外壁73hが摺接する面のうち先端部分を、先端側に向かうにつれて幅を狭めるように斜めのテーパ面73tとしている。
さらに、第二変形例では、金属体10の囲繞壁15hと第二の金型72の外壁73hとが相互に摺接する面のうちテーパ面15t、73tではない相互の対向面間にシール材80を介装している。同図の例では、外壁73hの基端側の位置に凹溝73mを形成し、この凹溝73mににシール材80を嵌め込むことで、金属体10に形成された囲繞壁15hとの間にシール材80を介装している。そして、第二変形例の接合構造体1の製造方法では、その状態で、第二の金型72の樹脂射出空間72aに溶融樹脂Mを射出して金属体10と樹脂体20相互の接合面14,21mを接合する。
【0043】
第二変形例の接合構造体1の製造方法によれば、囲繞壁15hと外壁73h相互の摺接面のうち相互の先端部分をテーパ面15t、73tにすることにより、金型組70の型締め若しくは脱型の際に、第二の金型72と金属体10の囲繞壁15hとの引っ掛かりを抑えられるので、成形後の接合構造体1の取り出しが容易になる。さらに、図8(b)に示すように、相互に摺接する側壁面と介装されたシール材80との協働効果によって樹脂漏れを抑制する上で好適である[発明5]。
【符号の説明】
【0044】
1 バンパレインフォースメント(接合構造体)
10 バンパビーム(金属体)
11 中空部(中空構造)
11m 分割壁
12 周壁部
13 周壁背面
14 接合面
15 凹形状部(凸形状部)
15h 囲繞壁
18、18 屈曲部
19、19 取付部
20 補強部(樹脂体)
21 (樹脂体の)接合部
21m (樹脂体の)接合面
22 張出部
70 金型組(接合構造体製造用金型)
71 第一の金型
71s 収容部
72 第二の金型
72a 樹脂射出空間
72e 開口端
73 凸形状部
73h (凸形状部の)外壁
80 シール部材
E 樹脂漏出
L 溶融樹脂通路
M 溶融樹脂
W 車幅方向
D 型挿抜方向
P 射出圧
S シール
PL1 パーティング面
PL2 パーティング面
L 溶融樹脂供給通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11