(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125786
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】車載レーダー装置用融雪レドーム及び車載レーダー構造
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240911BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240911BHJP
B60S 1/62 20060101ALI20240911BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S13/931
B60S1/62 110C
H05B3/20 345
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033849
(22)【出願日】2023-03-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-21
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】古林 宏之
(72)【発明者】
【氏名】杵鞭 孝広
(72)【発明者】
【氏名】澤田 裕基
(72)【発明者】
【氏名】徳山 浩二
【テーマコード(参考)】
3D225
3K034
5J070
【Fターム(参考)】
3D225AA11
3D225AC10
3D225AD22
3K034AA02
3K034AA05
3K034AA10
3K034AA12
3K034BB08
3K034HA09
3K034JA06
3K034JA10
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】レドーム基体の正面視における電磁波照射領域の外側領域を小さくし、レドームを目立たなくして車体のデザイン性を向上することができる。
【解決手段】電磁波透過性の基体2と、基体2に蛇行配線され、基体2の電磁波照射領域Rを加熱するヒーター線5とを備え、基体2の正面視における上下の対向する端辺付近に、車体の内方に屈曲する第1屈曲部22と、車体の内方に屈曲する第2屈曲部24とが屈曲部としてそれぞれ設けられ、ヒーター線5の折返し部52の折返し点TPが基体2の屈曲部より基体2の先端寄りに配置されている車載レーダー装置用融雪レドーム1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波透過性の基体と、
前記基体に蛇行配線され、前記基体の電磁波照射領域を加熱するヒーター線とを備え、
前記基体の正面視における上下左右の少なくとも一つの端辺付近に、車体の内方若しくは外方に屈曲する屈曲部が設けられ、
前記ヒーター線の折返し部の折返し点が前記基体の前記屈曲部より前記基体の先端寄りに配置されていることを特徴とする車載レーダー装置用融雪レドーム。
【請求項2】
電磁波透過性の基体と、
前記基体に蛇行配線され、前記基体の電磁波照射領域を加熱するヒーター線とを備え、
前記基体の正面視における上下若しくは左右の対向する端辺付近に、車体の内方に若しくは外方に屈曲する第1屈曲部と、前記車体の内方に屈曲する第2屈曲部とが屈曲部としてそれぞれ設けられ、
前記ヒーター線の折返し部の折返し点が前記基体の前記屈曲部より前記基体の先端寄りに配置されていることを特徴とする車載レーダー装置用融雪レドーム。
【請求項3】
前記ヒーター線が前記基体の前記屈曲部の周辺を加熱することを特徴とする請求項1又は2記載の車載レーダー装置用融雪レドーム。
【請求項4】
前記車体の内方に屈曲する前記屈曲部より前記基体の先端寄りに配置されている前記車体の内方に延びる先端部に、電力供給路が車体内方に延びるように前記ヒーター線の接続部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の車載レーダー装置用融雪レドーム。
【請求項5】
請求項1又は2記載の車載レーダー装置用融雪レドームと、
照射する電磁波の直線偏波の偏波面が、前記屈曲部が設けられる端辺と略平行で且つ前記ヒーター線の直線部と略垂直となるように設置される車載レーダー装置とを備えることを特徴とする車載レーダー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載レーダー装置の電磁波照射側に設けられる車載レーダー装置用融雪レドーム及びこれを備える車載レーダー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、融雪機能を有する車載レーダー装置用融雪レドームとして特許文献1の融雪レドームがある。この融雪レドームは、全体が平板状で形成された電磁波透過性の基体を備え、基体が拡がる面方向にヒーター線が蛇行して折り返すように配線されている。そして、ヒーター線の直線部が、基体の電磁波照射領域とその外側において基体の面方向に沿って間隔を開けて並設され、隣り合うヒーター線の直線部に流れる電流の方向が互いに略反平行となるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の融雪レドームは、電磁波透過性の基体の全体が平板状に形成され、電磁波照射領域の外側領域に設けられるヒーター線の折返し部が平板状の基体に配置されるため、レドームの正面視における大きさが大きくなる。そのため、レドームが目立ってしまい、車体デザインの自由度を低下させる要因となっている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、レドーム基体の正面視における電磁波照射領域の外側領域を小さくし、レドームを目立たなくして車体のデザイン性を向上することができる車載レーダー装置用融雪レドーム及び車載レーダー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車載レーダー装置用融雪レドームは、電磁波透過性の基体と、前記基体に蛇行配線され、前記基体の電磁波照射領域を加熱するヒーター線とを備え、前記基体の正面視における上下左右の少なくとも一つの端辺付近に、車体の内方若しくは外方に屈曲する屈曲部が設けられ、前記ヒーター線の折返し部の折返し点が前記基体の前記屈曲部より前記基体の先端寄りに配置されていることを特徴とする。
これによれば、基体の正面視における端辺付近に車体の内方若しくは外方に屈曲する屈曲部を設け、ヒーター線の折返し部の折返し点を基体の屈曲部より先端寄りに配置することにより、基体の正面視における電磁波照射領域の外側領域を端辺付近で小さくし、レドームを目立たなくして車体のデザイン性を向上することができる。また、基体に屈曲部を設けることでレドームの剛性を高め、レドームの外力に対する耐性を向上することができる。
【0007】
本発明の車載レーダー装置用融雪レドームは、電磁波透過性の基体と、前記基体に蛇行配線され、前記基体の電磁波照射領域を加熱するヒーター線とを備え、前記基体の正面視における上下若しくは左右の対向する端辺付近に、車体の内方に若しくは外方に屈曲する第1屈曲部と、前記車体の内方に屈曲する第2屈曲部とが屈曲部としてそれぞれ設けられ、前記ヒーター線の折返し部の折返し点が前記基体の前記屈曲部より前記基体の先端寄りに配置されていることを特徴とする。
これによれば、基体の正面視における対向する端辺付近に車体の内方若しくは外方に屈曲する屈曲部をそれぞれ設け、ヒーター線の折返し部の折返し点を基体の屈曲部より先端寄りに配置することにより、基体の正面視における電磁波照射領域の外側領域を対向する両端辺付近で小さくし、レドームをより目立たなくして車体のデザイン性を向上することができる。また、基体に第1屈曲部と第2屈曲部を設けることでレドームの剛性をより高め、レドームの外力に対する耐性を一層向上することができる。
【0008】
本発明の車載レーダー装置用融雪レドームは、前記ヒーター線が前記基体の前記屈曲部の周辺を加熱することを特徴とする。
これによれば、ヒーター線で基体の屈曲部の周辺を加熱することにより、雪が着雪、堆積し易いレドームの別車両部品との見切り部分に雪が着雪、堆積することを防止することができる。
【0009】
本発明の車載レーダー装置用融雪レドームは、前記車体の内方に屈曲する前記屈曲部より前記基体の先端寄りに配置されている前記車体の内方に延びる先端部に、電力供給路が車体内方に延びるように前記ヒーター線の接続部が設けられていることを特徴とする。
これによれば、レドームより車体の内寄りに配置されるヒーター線への電力供給線とレドームのヒーター線の接続作業等の工場で行われるレドームの組付け作業を容易化することができる。
【0010】
本発明の車載レーダー構造は、本発明の車載レーダー装置用融雪レドームと、照射する電磁波の直線偏波の偏波面が、前記屈曲部が設けられる端辺と略平行で且つ前記ヒーター線の直線部と略垂直となるように設置される車載レーダー装置とを備えることを特徴とする。
これによれば、車載レーダー装置が照射する電磁波の直線偏波の偏波面をヒーター線の直線部と略垂直にすることで、レドームの電磁波透過性をより高めることができると共に、所要の電磁波透過性を確保しつつ基体の正面視におけるヒーター線の面積を増加させることが可能となり、融雪機能をより高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レドーム基体の正面視における電磁波照射領域の外側領域を小さくし、レドームを目立たなくして車体のデザイン性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドームの正面図。
【
図2】(a)は
図1のA-A拡大断面図、(b)は
図1のB-B拡大断面図。
【
図3】(a)は
図2(a)のヒーター線の接続部分周辺の拡大図、(b)は
図2(b)のヒーター線の接続部分周辺の拡大図。
【
図4】第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドームと車載レーダー装置とから構成される車載レーダー構造の模式図。
【
図5】(a)~(c)は第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドームの前半製造工程を説明する説明図。
【
図6】第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドームの後半製造工程を説明する説明図。
【
図7】本発明による第2実施形態の車載レーダー装置用融雪レドームの正面図。
【
図8】(a)は
図7のC-C拡大断面図、(b)は
図7のD-D拡大断面図。
【
図9】本発明による第1変形例の車載レーダー装置用融雪レドームの正面図。
【
図10】本発明による第2変形例の車載レーダー装置用融雪レドームの縦断面図。
【
図11】本発明による第3変形例の車載レーダー装置用融雪レドームの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム〕
本発明による第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1は、
図1~
図4に示すように、電磁波透過性の基体2を備える。図示例の基体2は、正面視略矩形で縦断面視略C字形であり、絶縁性で電磁波透過性の合成樹脂で形成されている。基体2は、車体の外側寄りの視認側に配置される第1樹脂基材3と、車体の内寄りである視認側と逆側に配置される第2樹脂基材4とから構成され、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4は積層配置されて固着されている。第1樹脂基材3と第2樹脂基材4はそれぞれ絶縁性で電磁波透過性の合成樹脂で形成されている。
【0014】
第1樹脂基材3と、第2樹脂基材4には、異種の合成樹脂又は同種の合成樹脂を用いることができ、複素誘電率に基づき定義される屈折率nが相互に整合する、又は、屈折率nが略同一或いは近接する材料で第1樹脂基材3と第2樹脂基材4を形成すると、電磁波の透過性能向上の観点から好適である。第1樹脂基材3と第2樹脂基材4の近接する屈折率の数値範囲としては、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4の屈折率の相違が0~10%の範囲内とすると良好である。
【0015】
ここでの屈折率nは比誘電率実数部εr'と比誘電率虚数部εr"から数式1として定義される量である。 透過性の観点から適用周波数における虚数部と実数部の比から数式2として定義される誘電正接(ロスタンジェント)tanδの大きさは0.1以下とすると好適である。また比誘電率実部の大きさは3以下とすると好適である。誘電正接と非誘電率実部の大きさをこれらの数値以下とすることにより、レドーム1に必要とされる反射率と内部損失の低減を確実にすることが可能となる。
【0016】
【0017】
【0018】
第1樹脂基材3の合成樹脂と、第2樹脂基材4の合成樹脂には、本発明の趣旨の範囲内で適宜の合成樹脂を用いることが可能であり、例えばポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合(ASA)、アクリロニトリル-エチレンプロピルラバー-スチレン共重合体(AES)等の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いると良好であり、又、添加剤を含有させてもよい。また、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4の電磁波透過方向における厚さに関し、第1樹脂基材3の厚さと第2樹脂基材4の厚さの比や、第1樹脂基材3の厚さや、第2の樹脂基材4の厚さや、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4で構成される基体2の総厚は、車載レーダー装置用融雪レドーム1として所要の電磁波透過性を確保できる範囲で適宜である。
【0019】
基体2の正面視において正面板21の上下に位置する対向する端辺付近には、車体の内方に屈曲する第1屈曲部22と、車体の内方に屈曲する第2屈曲部24とが屈曲部としてそれぞれ設けられている。図示例では、基体2の正面板21における上側端辺付近に第1屈曲部22が設けられ、第1屈曲部22の先端側に車体内方に向かって略水平に延びる先端部23が形成されており、第1屈曲部22と先端部23は正面板21の上側端辺に沿って延設されている。正面板21、第1屈曲部22、先端部23は、それぞれ積層配置で固着された第1樹脂基材3と第2樹脂基材4によって構成されている。
【0020】
また、基体2の正面板21における下側端辺付近に第2屈曲部24が設けられ、第2屈曲部24の先端側に車体内方に向かって略水平に延びる先端部25が形成されており、第2屈曲部24と先端部25は正面板21の下側端辺に沿って延設されている。第2屈曲部24、先端部25も、それぞれ積層配置で固着された第1樹脂基材3と第2樹脂基材4によって構成されている。尚、第1屈曲部22及び先端部23と、第2屈曲部24及び先端部25とを、基体2の正面視における正面板21の左右に位置する対向する端辺付近に設け、後述するヒーター線5の各々の折返し部52及びその折返し点TPを、この第1屈曲部22より基体2の先端寄りに設けられる先端部23に配置し、この第2屈曲部24より基体2の先端寄りに設けられる先端部25に配置しても好適である。
【0021】
車載レーダー装置用融雪レドーム1には、基体2の電磁波照射領域Rを加熱するヒーター線5が基体2の面方向に配線され、基体2に蛇行配線されている。ヒーター線5を構成する導電性材料には、本発明の趣旨の範囲内で適宜の導電性材料を用いることが可能であり、例えば銅、銀、銀メッキ銅、銅銀合金、銅ニッケル合金、ニッケルクロム合金、鉄クロム合金、ITO膜のような透明導電膜、又はカーボン繊維等とすると良好である。又、ヒーター線の形態は問わず、線材、導電インク、導電フィラー等を利用することができる。
【0022】
ヒーター線5は、基体2が拡がる方向に沿って蛇行し、折り返すように配線されて一連で延びて形成されており、直線部51と折返し部52が設けられている。ヒーター線5の直線部51は、車載レーダー装置10から電磁波EWが照射される基体2の電磁波照射領域Rとその外側領域において、基体2の面方向に沿って間隔を開けて並設されており、隣り合うヒーター線5の直線部51に流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行となるように設定、配線されている。
【0023】
ヒーター線5の折返し部52は基体2の電磁波照射領域Rの外側領域に設けられ、折返し部52の折返し点TPは基体2の屈曲部22、24より基体2の先端寄りに配置されている。本実施形態では、ヒーター線5の各々の折返し部52及びその折返し点TPは、第1屈曲部22より基体2の先端寄りに設けられている先端部23に配置されるか、第2屈曲部24より基体2の先端寄りに設けられている先端部25に配置されている。本実施形態におけるヒーター線5の折返し部52は、基体2の第1屈曲部22の周辺と第2屈曲部24の周辺を加熱するように、直線部51と同一構成になっているが、例えば折返し部52の太さを直線部51より太くする等、折返し部52に加熱機能を発揮させいない或いは直線部51よりも低い加熱機能を発揮させる構成とすることも可能である。
【0024】
また、本実施形態におけるヒーター線5は、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4との間に埋設されており、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4とで挟持されるようにして、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4とで構成される基体2に内設されて封止されている。図示例では、本実施形態では、第1樹脂基材3の第2樹脂基材4との固着面側に溝31が形成され、第2樹脂基材4の第1樹脂基材3との固着面側に溝31と対向するように別の溝41が形成されており、ヒーター線5は、第1樹脂基材3の溝31と第2樹脂基材4の別の溝41とに嵌められて溝31及び溝41に沿って配線されている。尚、ヒーター線5は、第1樹脂基材3の溝31又は第2樹脂基材4の溝41だけに沿うように配線し、第2樹脂基材4又は第1樹脂基材3にはヒーター線5を配線する溝を形成しない構成としてもよい。
【0025】
基体2の電磁波透過領域Rの外側領域に配置されている車体内方に延びる先端部25には、電力供給路が車体内方に延びるようにヒーター線5の接続部6が設けられている。ヒーター線5の接続部6では、第1樹脂基材3の固着面側に相互に隔絶して形成された凹部に、それぞれ導電性を有する第1金属板61と第2金属板62が嵌合して配置され、第1金属板61と第2金属板62とが互いに絶縁状態で設けられている。
【0026】
先端部25に設けられた第1金属板61には、ヒーター線5の一方の端部53と、ヒーター線5への電力供給線の一部を担うワイヤーハーネスの一のワイヤーハーネス接続端子71とが載置され、ヒーター線5の一方の端部53と一のワイヤーハーネス接続端子71とが接触するように配置されている。そして、ヒーター線5の一方の端部53と一のワイヤーハーネス接続端子71と第1金属板61とが一体化するように、はんだ、ろう材等の導電性接合材で構成される導電性接合部63によって接合され、ヒーター線5の一方の端部53と一のワイヤーハーネス接続端子71とが導通されている。
【0027】
先端部25に設けられた第2金属板62には、ヒーター線5の他方の端部54と、ヒーター線5への電力供給線の一部を担うワイヤーハーネスの他のワイヤーハーネス接続端子72とが載置され、ヒーター線5の他方の端部54と他のワイヤーハーネス接続端子72とが接触するように配置されている。そして、ヒーター線5の他方の端部54と他のワイヤーハーネス接続端子72と第2金属板62とが一体化するように、はんだ、ろう材等の導電性接合材で構成される導電性接合部63によって接合され、ヒーター線5の他方の端部54と他のワイヤーハーネス接続端子72とが導通されている。
【0028】
車載レーダー装置用融雪レドーム1は、
図4に示すように、車載レーダー装置10の電磁波EWの照射側に配置され、自動四輪車、自動二輪車等の車両における車載レーダー構造を構成する。この車載レーダー構造では、車載レーダー装置10を直線偏波の電磁波EWを照射するものとし、照射する電磁波EWの直線偏波の偏波面が、基体2の屈曲部が設けられる端辺と略平行となるように、本実施形態では、第1屈曲部22が設けられる正面板21の上端辺と第2屈曲部24が設けられる下端辺と略平行となるように、車載レーダー装置用融雪レドーム1を設置し、又、照射する電磁波EWの直線偏波の偏波面が、ヒーター線5の直線部51と略垂直となるように車載レーダー装置用融雪レドーム1を設置すると好適である。
【0029】
次に、第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1の好適な製造工程例について説明する。先ず、絶縁性で電磁波透過性の合成樹脂材を用いて射出成形し、正面視略矩形で縦断面視略C字形の第1樹脂基材3を形成する。第1樹脂基材3には、ヒーター線5が配線される蛇行状の溝31と、第1金属板61と第2金属板62とが嵌合配置される凹部が射出成形時に形成され、これらの凹部には第1金属板61と第2金属板62をそれぞれ嵌合して配置する(
図5(a)、
図3参照)。
【0030】
そして、第1樹脂基材3に形成された溝31に沿うように蛇行状の所定パターンでヒーター線5を配線する。本例では、ヒーター線5を溝31の外側に一部が突出するようにして溝31に嵌めた状態にし、溶着或いは接着等で第1樹脂基材3に固着する。尚、ヒーター線5の形成方法は適宜であり、例えば溝31に嵌めるように線材を固着する方法、導電性ペーストを印刷する方法、或いは無電解めっきで形成する方法等を用いることができる。ヒーター線5は、一方の端部53を第1金属板61に載置し、他方の端部54を第2金属板62に載置するように配線する(
図5(b)、
図3参照)。
【0031】
更に、ヒーター線5の一方の端部53が載置された第1金属板61に、一のワイヤーハーネス接続端子71を一方の端部53と接触するように載置し、ヒーター線5の一方の端部53と一のワイヤーハーネス接続端子71と第1金属板61とをはんだ、ろう材等の導電性接合部63で接合して、導通接続すると共に固着する。また、ヒーター線5の他方の端部54が載置された第2金属板62に、他のワイヤーハーネス接続端子72を他方の端部54と接触するように載置し、ヒーター線5の他方の端部54と他のワイヤーハーネス接続端子72と第2金属板62とをはんだ、ろう材等の導電性接合部63で接合して、導通接続すると共に固着する(
図5(c)、
図3参照)。
【0032】
その後、
図6に示すように、ヒーター線5、第1金属板61と第2金属板62、及びワイヤーハーネス接続端子71、72が取り付けられた第1樹脂基材3を割型で構成される金型100の内部に配置する。この際、ワイヤーハーネス接続端子71、72は、金型100の一部に形成された導出口102から金型100の外部に導出される。
【0033】
そして、金型100の注入口101から金型100の内部に溶融樹脂MRを流し込んで射出成形を行い、第1樹脂基材3のヒーター線5の配線側に正面視略矩形で縦断面視略C字形の第2樹脂基材4を形成し、第2樹脂基材4を第1樹脂基材3に固着する。第2樹脂基材4の射出成形によって積層される界面は、第1の樹脂基材3、ヒーター線5、第1金属板61、一のワイヤーハーネス接続端子71、第2金属板62、他のワイヤーハーネス接続端子72に固着され、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4との間に、ヒーター線5、第1金属板61、一のワイヤーハーネス接続端子71、第2金属板62、他のワイヤーハーネス接続端子72が埋設される。
【0034】
また、第2樹脂基材4は、ヒーター線5の溝31の外側に突出する部分を覆うように形成されることから、ヒーター線5の溝31の外側に突出する部分が第2樹脂基材4にインサート成形されるようにして成形固着され、第2樹脂基材4の別の溝41にヒーター線5が嵌まった状態となる。尚、第2樹脂基材4は、射出成形で形成される構成に限定されず、必要に応じて第1樹脂基材3に接着等で固着しても良好である。第2樹脂基材4の形成後には、金型100を脱型して第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1が得られる。
【0035】
第1実施形態によれば、基体2の正面視における対向する端辺付近に車体の内方に屈曲する第1屈曲部22、第2屈曲部24をそれぞれ設け、ヒーター線5の折返し部52の折返し点TPを基体2の第1屈曲部22、第2屈曲部24より先端寄りに配置することにより、基体2の正面視における電磁波照射領域Rの外側領域を対向する両端辺付近で小さくし、レドーム1をより目立たなくして車体のデザイン性を向上することができる。また、基体2に第1屈曲部22と第2屈曲部24を設けることでレドーム1の剛性をより高め、レドーム1の外力に対する耐性を一層向上することができる。
【0036】
また、ヒーター線5が基体2の第1屈曲部22、第2屈曲部24の周辺を加熱する構成とすることにより、雪が着雪、堆積し易いレドームの別車両部品との見切り部分に雪が着雪、堆積することを防止することができる。
【0037】
また、車体の内方に屈曲する第1屈曲部22、第2屈曲部24より基体2の先端寄りに配置されている車体の内方に延びる先端部23、25に、電力供給路が車体内方に延びるようにヒーター線5の接続部6を設けることにより、レドーム1より車体の内寄りに配置されるヒーター線5への電力供給線とレドーム1のヒーター線5の接続作業等の工場で行われるレドーム1の組付け作業を容易化することができる。
【0038】
また、車載レーダー構造を、車載レーダー装置用融雪レドーム1と、照射する電磁波EWの直線偏波の偏波面が、屈曲部22、24が設けられる端辺と略平行で且つヒーター線5の直線部51と略垂直となるように設置される車載レーダー装置10とで構成することにより、レドーム1の電磁波透過性をより高めることができると共に、所要の電磁波透過性を確保しつつ基体2の正面視におけるヒーター線5の面積或いは面占有率を増加させることが可能となり、融雪機能をより高めることができる。
【0039】
〔第2実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム〕
本発明による第2実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1aは、
図7及び
図8に示すように、電磁波透過性の基体2aを備え、基体2aが正面視略矩形で縦断面視略S字形で形成されている。本例の基体2aは、絶縁性で電磁波透過性の合成樹脂で形成され、車体の外側寄りの視認側に配置される第1樹脂基材3と、車体の内寄りである視認側と逆側に配置される第2樹脂基材4とから構成され、第1樹脂基材3と第2樹脂基材4とが積層配置されて固着されている。第1樹脂基材3と第2樹脂基材4の材料には第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0040】
基体2aの正面視において正面板21の上下に位置する対向する端辺付近には、車体の外方に屈曲する第1屈曲部22aと、車体の内方に屈曲する第2屈曲部24とが屈曲部としてそれぞれ設けられている。図示例では、基体2の正面板21における上側端辺付近に第1屈曲部22aが設けられ、第1屈曲部22の先端側に車体外方に向かって略水平に延びる先端部23aが形成されており、第1屈曲部22aと先端部23aは正面板21の上側端辺に沿って延設されている。正面板21、第1屈曲部22a、先端部23aは、それぞれ積層配置で固着された第1樹脂基材3と第2樹脂基材4によって構成されている。
【0041】
また、基体2の正面板21における下側端辺付近には第1実施形態と同様の第2屈曲部24が設けられ、第2屈曲部24の先端側に車体内方に向かって略水平に延びる先端部25が形成され、第2屈曲部24と先端部25は正面板21の下側端辺に沿って延設されている。第2屈曲部24、先端部25も、それぞれ積層配置で固着された第1樹脂基材3と第2樹脂基材4によって構成されている。尚、第1屈曲部22a及び先端部23aと、第2屈曲部24及び先端部25とを、基体2の正面視における正面板21の左右に位置する対向する端辺付近に設け、後述するヒーター線5の各々の折返し部52及びその折返し点TPを、この第1屈曲部22aより基体2の先端寄りに設けられる先端部23aに配置し、この第2屈曲部24より基体2の先端寄りに設けられる先端部25に配置しても好適である。
【0042】
車載レーダー装置用融雪レドーム1aには、基体2aの電磁波照射領域Rを加熱するヒーター線5が基体2の面方向に配線され、基体2aに蛇行配線されている。ヒーター線5を構成する導電性材料には第1実施形態と同様の材料を用いることができる。ヒーター線5は、基体2aが拡がる方向に沿って蛇行し、折り返すように配線されて一連で延びて形成され、第1実施形態と同様に直線部51と折返し部52が設けられている。ヒーター線5の直線部51は、車載レーダー装置10から電磁波EWが照射される基体2aの電磁波照射領域Rとその外側領域において、基体2aの面方向に沿って間隔を開けて並設され、隣り合うヒーター線5の直線部51に流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行となるように設定、配線される。
【0043】
ヒーター線5の折返し部52は基体2aの電磁波照射領域Rの外側領域に設けられ、折返し部52の折返し点TPは基体2aの屈曲部22a、24より基体2の先端寄りに配置されている。本実施形態では、ヒーター線5の各々の折返し部52及びその折返し点TPは、第1屈曲部22aより基体2aの先端寄りに設けられている先端部23aに配置されるか、第2屈曲部24より基体2の先端寄りに設けられている先端部25に配置される。本実施形態におけるヒーター線5の折返し部52は、基体2aの第1屈曲部22aの周辺と第2屈曲部24の周辺を加熱するように、直線部51と同一構成になっているが、例えば折返し部52の太さを直線部51より太くする等、折返し部52に加熱機能を発揮させいない或いは直線部51よりも低い加熱機能を発揮させる構成とすることも可能である。
【0044】
第2実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1aのその他の構成は第1実施形態と同様であり、又、ヒーター線5の接続部6等の接続構造も第1実施形態と同様である。また、車載レーダー装置用融雪レドーム1aも、第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1と同様に製造することができる。
【0045】
また、車載レーダー装置用融雪レドーム1aも、車載レーダー装置10の電磁波EWの照射側に配置され、自動四輪車、自動二輪車等の車両における車載レーダー構造を構成する(
図4参照)。この車載レーダー構造でも、車載レーダー装置10を直線偏波の電磁波EWを照射するものとし、照射する電磁波EWの直線偏波の偏波面が、基体2aの屈曲部が設けられる端辺と略平行となるように、本実施形態では、第1屈曲部22aが設けられる正面板21の上端辺と第2屈曲部24が設けられる下端辺と略平行となるように、車載レーダー装置用融雪レドーム1aを設置し、又、照射する電磁波EWの直線偏波の偏波面が、ヒーター線5の直線部51と略垂直となるように車載レーダー装置用融雪レドーム1aを設置すると好適である。
【0046】
第2実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1a及びこれを備える車載レーダー構造は、第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1及びこれを備える車載レーダー構造に対応する構成から対応する効果を発揮することができる。
【0047】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0048】
例えば第1、第2実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1、1aでは、電力供給路が車体内方に延びるようにヒーター線5の接続部6を設けたが、これ以外の適宜の方向に電力供給路が延びるようにヒーター線5の接続部6を設けることが可能である。例えば
図9に示すように、電力供給路が基体2の側方に延びるようにヒーター線5の接続部6の双方又は一方を設ける構成、換言すれば電力供給路が車体外表面に沿う方向に延びるようにヒーター線5の接続部6の双方又は一方を設ける構成としてもよい。
【0049】
また、第1、第2実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1、1aにおける電磁波透過性の基体2、2aは、電磁波透過性の第1樹脂基材3と電磁波透過性の第2樹脂基材4は積層固着して構成したが、本発明の車載レーダー装置用融雪レドームにおける電磁波透過性の基体の構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜である。
【0050】
例えば
図10に示す車載レーダー装置用融雪レドーム1bのように、第1樹脂基材3とその内面側に固着される電磁波透過性の合成樹脂フィルム81とで基体2bを構成し、第1樹脂基材3に蛇行状に配線されたヒーター線5を覆うように合成樹脂フィルム81を固着するようにしてもよい。また、例えば
図11に示す車載レーダー装置用融雪レドーム1cのように、第2樹脂基材4とその外面側に固着される電磁波透過性の合成樹脂フィルム82とで基体2cを構成し、第2樹脂基材4に蛇行状に配線されたヒーター線5を覆うように合成樹脂フィルム82を固着するようにしてもよい。
【0051】
また、本発明の車載レーダー装置用融雪レドームにおける電磁波透過性の基体の材料には絶縁性の合成樹脂を用いると好適であるが、ガラス、セラミックス等の本発明の趣旨の範囲内で適宜の材料を用いることが可能である。また、本発明の車載レーダー装置用レドームは、適宜種別の車両実装部品とすることが可能であり、例えばエンブレム形状のレドーム、バンパーカバー等とすると好適であり、又、その設置位置も車体の前面側、背面側或いは側面側等、車体に対する適宜の向きに設置することができる。
【0052】
また、本発明の車載レーダー装置用融雪レドームには、電磁波透過性の基体の正面視における上下左右の少なくとも一つの端辺付近に、車体の内方若しくは外方に屈曲する屈曲部が設けられ、ヒーター線の折返し部の折返し点がこの屈曲部より基体の先端寄りに配置される適宜の構成が包含され、例えば第1実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1における第1屈曲部22のみ、或いは第2屈曲部24のみを設ける構成も含まれる。
【0053】
また、本発明の車載レーダー装置用融雪レドームにおいて、電磁波透過性の基体にヒーター線を蛇行配線する構成は、第1、第2実施形態の車載レーダー装置用融雪レドーム1、1aのように第1樹脂基材3の溝31、第2樹脂基材4の溝41に沿ってヒーター線5を配線する構成に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えばヒーター線が蛇行状に配線された合成樹脂フィルムで構成される発熱シートを用い、この発熱シートを基体に貼り付ける構成としてもよい。
【0054】
また、本発明の車載レーダー装置用融雪レドームにおける屈曲部の曲率半径は適宜であるが、基体やレドームの強度向上の観点からは、例えば屈曲部の内側の内周面の曲率半径を好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上とするとよい。また、本発明の車載レーダー装置用融雪レドームにおいて、基体の平面状の正面板の端辺外方への延長線に対する先端部の傾斜角度θは、電磁波照射領域の外側領域を小さくする観点から、好ましくは10°~90°、より好ましくは30°~90°とするとよい(
図2、
図7参照)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、車載レーダー装置用融雪レドームに利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1、1a、1b、1c…車載レーダー装置用融雪レドーム 2、2a、2b、2c…基体 21…正面板 22、22a…第1屈曲部 23、23a…先端部 24…第2屈曲部 25…先端部 3…第1樹脂基材 31…溝 4…第2樹脂基材 41…溝 5…ヒーター線 51…直線部 52…折返し部 53…一方の端部 54…他方の端部 6…接続部 61…第1金属板 62…第2金属板 63…導電性接合部 71…一のワイヤーハーネス接続端子 72…他のワイヤーハーネス接続端子 81、82…合成樹脂フィルム 10…車載レーダー装置 100…金型 101…注入口 102…導出口 TP…ヒーター線の折返し点 R…電磁波照射領域 EW…電磁波 MR…溶融樹脂 θ…先端部の傾斜角度