(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125805
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】設計支援方法、設計支援装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/392 20200101AFI20240911BHJP
G06F 30/30 20200101ALI20240911BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20240911BHJP
G06F 115/12 20200101ALN20240911BHJP
【FI】
G06F30/392
G06F30/30
G06F30/10
G06F115:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033882
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】390015587
【氏名又は名称】株式会社図研
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】副島 直樹
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA21
5B146FA00
5B146FA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プリント配線基板に付加すべき部品記号の配置の品質を向上するために有利な設計支援方法、設計支援装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】コンピュータによって実行される設計支援方法は、メモリ又は他の装置から部品配置データを読み込む工程と、プリント配線基板における複数の部品の各々について、付加すべき部品記号の配置形態に関する複数の候補を生成し、該複数の候補のそれぞれの評価値に基づいて該複数の候補の中から決定される候補を、付加すべき部品記号の配置形態として決定する配置決定工程と、複数の部品の各々について配置決定工程で決定された配置形態に基づいて、該複数の部品にそれぞれ付加すべき複数の部品記号の配置を示す部品記号データの生成を含むデータ生成工程と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行される設計支援方法であって、
プリント配線基板における複数の部品の各々について、付加すべき部品記号の配置形態に関する複数の候補を生成し、該複数の候補のそれぞれの評価値に基づいて該複数の候補の中から決定される候補を、付加すべき部品記号の配置形態として決定する配置決定工程を含むことを特徴とする設計支援方法。
【請求項2】
前記配置決定工程は、
前記複数の部品の処理順序を決定する順序決定工程と、
前記処理順序に従って前記複数の部品に順次に注目し、注目した部品について、付加すべき部品記号の配置形態を決定する処理工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の設計支援方法。
【請求項3】
前記順序決定工程では、前記複数の部品の各々の周囲の余白の大きさに基づいて前記処理順序を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の設計支援方法。
【請求項4】
前記順序決定工程では、前記余白が大きい順序を前記処理順序として決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の設計支援方法。
【請求項5】
前記順序決定工程では、前記余白が小さい順序を前記処理順序として決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の設計支援方法。
【請求項6】
前記順序決定工程では、各部品が、同一形状を有しかつ所定距離内に位置する2以上の部品からなる部品群を構成しているかどうかに基づいて前記処理順序を決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の設計支援方法。
【請求項7】
前記順序決定工程では、前記部品群を構成する部品を前記処理順序において優先する、
ことを特徴とする請求項6に記載の設計支援方法。
【請求項8】
前記順序決定工程では、各部品が、同一形状を有しかつ所定距離内に位置する2以上の部品からなる部品群を構成しているかどうかに基づいて前記処理順序を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の設計支援方法。
【請求項9】
前記順序決定工程では、前記部品群を構成する部品を前記処理順序において優先する、
ことを特徴とする請求項8に記載の設計支援方法。
【請求項10】
前記処理工程では、複数の項目のそれぞれについての評価点に基づいて前記評価値を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の設計支援方法。
【請求項11】
前記処理工程では、前記複数の項目のそれぞれについての評価点に重み付けをし、重み付けがされた評価点に基づいて前記評価値を決定する、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項12】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号が付加される部品から見た該評価対象の部品記号の方向に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項13】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号の配置角度に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項14】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号が付加される部品と該評価対象の部品記号との距離に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項15】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号が付加される部品の中心軸に対する該評価対象の部品記号のずれに関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項16】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号が付加される部品が同一形状を有する部品群に属する場合において、該部品群に属する全部品にそれぞれ付加される部品記号の相対位置の整合性に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項17】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号が付加される部品と同一軸上の他の部品に既に付加された部品記号の相対位置との整合性に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項18】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号が付加される部品から見た該評価対象の部品記号が配置される方向における余白の大きさに関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項19】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号と該評価対象の部品記号が付加される部品とは異なる部品に付加された部品記号との相対位置に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項20】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号と該評価対象の部品記号が付加される部品とは異なる部品との相対位置に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項21】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号が付加される部品と該評価対象の部品記号との間における他の部品の有無に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項22】
前記複数の項目は、評価対象の部品記号が付加される部品と該評価対象の部品記号とを結ぶ線と、他の部品記号が付加される他の部品と該他の部品記号と、を結ぶ線との交差に関する項目を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計支援方法。
【請求項23】
前記配置決定工程では、前記複数の候補のそれぞれの評価値のうち最も評価値が高い候補を、付加すべき部品記号の配置形態として決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の設計支援方法。
【請求項24】
前記複数の部品の各々について前記配置決定工程で決定された配置形態に基づいて、前記複数の部品にそれぞれ付加すべき複数の部品記号の配置を示す部品記号データを生成するデータ生成工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の設計支援方法。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれか1項に記載の設計支援方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項26】
コンピュータによって構成される設計支援装置であって、
プリント配線基板における複数の部品の各々について、付加すべき部品記号の配置形態に関する複数の候補を生成し、該複数の候補のそれぞれの評価値に基づいて該複数の候補の中から決定される候補を、付加すべき部品記号の配置形態として決定する配置決定手段を備えることを特徴とする設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援方法、設計支援装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子計算機によってプリント基板のシルクマスクパターンを自動作成する方法が記載されている。該方法は、シルク文字を配置する工程を含み、該工程は、(d)部品近傍に上下左右斜め方向に8個の配置可能領域を設定し、(e)次に、該領域を所定の順番で障害物を考慮しながら文字配置を試み、配置できない場合は所定回数繰り返し、文字サイズの縮小を行って文字配置を試み、(f)縮小しても文字配置ができないときは、配置可能領域を拡大して文字配置を行い、かつ、当該部品のシルクシンボル形状とシルク文字間に引き出し線を作成し、(g)配置可能領域を拡大しても文字配置ができない場合は、部品中央に仮配置することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、部品近傍に上下左右斜め方向に8個の配置可能領域を所定の順番で障害物を考慮しながら文字配置を試み、配置できない場合は、配置の条件を変更してゆく。よって、該方法では、シルク文字を配置できた時点でその配置が確定するが、その確定した配置が、他の配置より良いとは限らないし、最善であるとも限らない。
【0005】
本発明は、プリント配線基板に付加すべき部品記号の配置の品質を向上するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面は、コンピュータによって実行される設計支援方法に係り、前記設計支援方法は、プリント配線基板における複数の部品の各々について、付加すべき部品記号の配置形態に関する複数の候補を生成し、該複数の候補のそれぞれの評価値に基づいて該複数の候補の中から決定される候補を、付加すべき部品記号の配置形態として決定する配置決定工程を含む。
【0007】
本発明の第2側面は、プログラムに係り、前記プログラムは、本発明の第1側面に係る設計支援方法をコンピュータに実行させる。
【0008】
本発明の第3側面は、コンピュータによって構成される設計支援装置に係り、前記設計支援装置は、プリント配線基板における複数の部品の各々について、付加すべき部品記号の配置形態に関する複数の候補を生成し、該複数の候補のそれぞれの評価値に基づいて該複数の候補の中から決定される候補を、付加すべき部品記号の配置形態として決定する配置決定手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリント配線基板に付加すべき部品記号の配置の品質を向上するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】設計支援装置において実行されうる設計支援方法の流れを例示する図。
【
図3】部品記号の配置形態の各候補の評価値を計算するために使用されうる複数の項目を例示する図。
【
図4】各部品の周囲の余白の大きさを評価する方法を例示する図。
【
図14】項目10における評価例が模式的に示す図。
【
図15】項目11における評価例が模式的に示す図。
【
図16】部品に対して付加される部品記号の配置形態の複数の候補を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1には、一実施形態の設計支援装置100の構成が示されている。設計支援装置100は、例えば、CPU(プロセッサ)110、入力部120、出力部125およびメモリ130を備える汎用又は専用のコンピュータ101で構成されうる。メモリ130は、プログラム(コンピュータプログラム)132を格納しうる。プログラム132は、例えば、コンピュータによって読み取り可能なメモリ媒体に格納された状態で、あるいは、通信回線を介して、コンピュータ101に提供されうる。プログラム132が組み込まれたコンピュータ101あるいは設計支援装置100は、プリント配線基板の設計データに対して部品記号のデータを付加することによって設計を支援する装置として動作しうる。メモリ130には、他のプログラム(例えば、プリント配線基板における部品および導電経路等の配置を設計するための設計支援ツール)が格納されてもよい。あるいは、プログラム132は、他のプログラム、例えば、設計支援ツールに組み込まれてもよい。
【0013】
CPU110は、メモリ130に格納されたプログラム132に従って動作しうる。入力部120は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、受信装置(通信装置)、メディアドライブ等の入力機器を含みうる。出力部125は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、送信装置(通信装置)、メディアドライブ等の出力機器を含みうる。入力部120の一部と出力部125の一部とは一体化される場合もありうる。
【0014】
図2には、設計支援装置100においてプログラム132に従ってCPU110によって実行されうる設計支援方法の流れが例示されている。
図2に示された設計支援方法を実行するモジュールは、設計支援ツールから呼び出されて実行されてもよい。
【0015】
工程S201では、CPU110は、メモリ130又は他の装置から部品配置データを読み込みうる。部品配置データは、プリント配線基板に対する複数の部品(例えば、半導体チップ、抵抗器、キャパシタ、コイル、アンテナ)およびそれらの間の導電経路等の配置に関するデータを含みうる。続いて、配置決定工程が実行されうる。配置決定工程は、工程S202~S207を含うる。配置決定工程では、CPU110は、プリント配線基板における複数の部品の各々について、付加すべき部品記号の配置形態に関する複数の候補を生成し、該複数の候補のそれぞれの評価値に基づいて該複数の候補の中から決定される候補を、付加すべき部品記号の配置形態として決定しうる。このような方法は、プリント配線基板に付加すべき部品記号の配置の品質を向上するために有利である。
【0016】
以下、配置決定工程におけるより具体的な処理を例示する。工程S202では、CPU110は、部品配置データに基づいて、プリント配線基板における複数の部品の処理順序を決定する順序決定工程を実行しうる。複数の部品の処理順序は、複数の部品のそれぞれに対して部品記号を付加する処理を実行する順序である。順序決定工程では、CPU110は、例えば、複数の部品の各々の周囲の余白の大きさに基づいて処理順序を決定しうる。
【0017】
図4には、各部品ECの周囲の余白の大きさを評価する方法が例示されている。この例では、部品ECの上側の領域の余白、部品ECの下側の領域の余白、部品ECの左側の領域の余白、部品ECの右側の領域の余白が評価される。部品ECの上側の領域の余白については、
図4(a)に例示されるように、部品ECの上側に部品記号を発生可能(配置可能)な領域の面積AR(ここでは、70mm
2)を部品ECの上側の探索範囲の面積SR(ここでは、100mm
2)で除した値Ptop=0.7として評価されうる。探索範囲は、各部品ECについて、部品ECからの距離等をパラメータとして、予め決定されうる。
【0018】
部品ECの下側の領域の余白については、
図4(b)に例示されるように、部品ECの下側に部品記号を発生可能な領域の面積AR(ここでは、40mm
2)を部品ECの下側の探索範囲の面積SR(ここでは、100mm
2)で除した値Pbottom=0.4として評価されうる。部品ECの左側の領域の余白については、
図4(c)に例示されるように、部品ECの左側に部品記号を発生可能な領域の面積AR(ここでは、60mm
2)を部品ECの左側の探索範囲の面積SR(ここでは、100mm
2)で除した値Pleft=0.6として評価されうる。部品ECの右側の領域の余白については、
図4(d)に例示されるように、部品ECの右側に部品記号を発生可能な領域の面積AR(ここでは、80mm
2)を部品ECの左側の探索範囲の面積SR(ここでは、100mm
2)で除した値Pright=0.8として評価されうる。CPU110は、例えば、Ptop、Pbottom、PleftおよびPrightの平均Paverageを余白の評価値として計算しうる。
【0019】
一例において、CPU110は、余白が大きい順序を複数の部品ECの処理順序として決定しうる。これは、視覚的に分かりやすい位置に部品記号を配置するために有利である。ここで説明した複数の部品の処理順序の決定方法は、例示に過ぎず、他の基準および方法が採用されてもよい。また、余白の評価方法についても、他の評価方法が採用されてもよい。他の例において、順序決定工程では、余白が小さい順序が複数の部品の処理順序として決定されてもよい。
【0020】
順序決定工程では、各部品が、同一形状を有しかつ所定距離内に位置する2以上の部品からなる部品群を構成しているかどうかに基づいて処理順序が決定されてもよい。例えば、部品群を構成する2以上の部品は、処理順序において優先されうる。これは、部品群を構成する2以上の部品に対する部品記号の付加を先に実行し、その後に、残りの部品に対する部品記号の付加を実行することを意味する。このような方法は、部品群を構成する2以上の部品に付加される部品記号を視覚的に分かりやすい位置に配置あるいは整列させるために有利である。部品群は、例えば、同一軸(例えば、X軸、Y軸)上に所定距離内で配置された同一形状を有する部品で構成されうる。所定距離とは、例えば、互いに隣り合う部品間の距離である。
【0021】
工程S203~S207は、工程S202で決定された処理順序に従って複数の部品に順次に注目し、注目した部品について、付加すべき部品記号の配置形態を決定する処理工程の一例である。工程S203では、CPU110は、工程S202で決定された処理順序に従って、部品配置データにおいてプリント配線基板に配置された複数の部品の中から注目すべき部品(処理すべき部品)を選択する。工程S204では、CPU110は、注目した部品に付加すべき部品記号の配置形態に関する複数の候補を所定のアルゴリズムに従って生成しうる。
図16には、部品ECに対して付加される部品記号(「C102」)の配置形態の複数の候補A~Eが例示されている。工程S205では、CPU110は、工程S204で生成した複数の候補のそれぞれの評価値を計算する。各候補の評価値は、複数の項目のそれぞれについての評価点に基づいて決定されうる。ここで、複数の項目のそれぞれについての評価点に重み付けをし、重み付けがされた評価点に基づいて評価値が決定されうる。具体例については後述する。
【0022】
工程S206では、CPU110は、工程S205で計算した評価値に基づいて、工程S204で生成された複数の候補(部品記号の配置形態についての候補)の中から1つの候補を選択し、それを、注目する部品に対して付加すべき部品記号の配置形態として決定する。CPU110は、例えば、複数の候補のそれぞれの評価値のうち最も評価値が高い候補を、付加すべき部品記号の配置形態として決定しうる。工程S207では、CPU110は、複数の部品の全てについて工程S203~S206を実行したかどうかは判断し、未処理の部品が残っている場合には、工程S203に戻って、その未処理の部品から選択される部品について、工程S203~S206を実行する。一方、複数の部品の全てについて工程S203~S206の実行が完了した場合には、CPU110は、工程S208に進む。工程S208では、CPU110は、データ生成工程を実行しうる。データ生成工程では、複数の部品の各々について工程S202~S207の配置決定工程で決定された配置形態に基づいて、該複数の部品にそれぞれ付加すべき複数の部品記号の配置を示す部品記号データが生成されうる。
【0023】
以下では、工程S204で生成した複数の候補のそれぞれの評価値を計算する具体例を説明する。以下の具体例において、各候補の評価値は、複数の項目のそれぞれについての評価点に基づいて決定される。以下では、複数の項目として11項目を例示するが、これらの項目のうちの少なくとも1つの項目が評価値を計算するための複数の項目のうちの1つとして採用されうる。本開示は、以下で例示される11項目のうちの2以上の任意の項目の組み合わせを開示事項として含むものとする。
【0024】
図3には、部品記号の配置形態の各候補の評価値を計算するために使用されうる複数の項目として11項目が例示的に示されている。各項目は、項目IDによって識別される。各候補の評価値Eは、例えば、以下の式(1)で与えられうる。
【0025】
E=(S1×R1+S2×R2+S3×R3+・・・S11×R11)/(R1+R2+R3+・・・R11)
・・・(1)
項目1(項目ID=1)は、評価対象の部品記号が付加される部品から見た該部品記号の方向に関する項目である。項目1の評価点はS1、重みはR1として定義される。
図5には、項目1における評価例が模式的に示されている。評価対象の部品記号が付される部品(即ち、処理対象の部品)は、部品ECである。この例では、部品ECから見た部品記号の方向の候補として、「上」、「下」、「左」、「右」が定義され、「上」には評価点=100が与えられ、「下」には評価点=99が与えられ、「左」には評価点=98が与えられ、「右」には評価点=97が与えられる。式(1)において、S1は、S2~S11によって定まる評価値(S1=0であると仮定した場合に定まる評価値)によって複数の候補から2以上の候補が選出される場合において、当該2以上の候補から1つの候補(即ち、最良の候補)を付加すべき部品記号の配置形態として選出するように作用する。
【0026】
式(1)は、以下の式(2)のように変更されてもよく、そのような変形例では、複数の候補から式(2)の値によって選出される候補が2以上である場合において、当該2以上の候補のうちS1の値が大きい候補が、付加すべき部品記号の配置形態として決定されうる。
【0027】
E=(S2×R2+S3×R3+・・・S11×R11)/(R2+R3+・・・R11)
・・・(2)
項目2(項目ID=2)は、評価対象の部品記号の配置角度に関する項目である。項目2の評価点はS2、重みはR2として定義される。
図6には、項目2における評価例が模式的に示されている。この例では、デフォルト角度が定義されている。部品記号の配置角度の候補がデフォルト角度と一致していて、かつ、評価対象の部品記号が付加される部品ECの長手方向と部品記号の配置角度の候補とが一致していれば、評価点として50~100が与えられる。一例において、デフォルト方向は、水平方向(左右方向)であり、部品ECの長手方向の寸法をD1とし、部品ECの短手方向の寸法をD2とすると、評価点として、50×D1/D2が与えられうる。また、一例において、部品記号の配置角度の候補がデフォルト角度と一致していて、かつ、評価対象の部品記号が付加される部品ECの長手方向と部品記号の配置角度の候補とが一致していなければ、評価点として50が与えられる。また、一例において、部品記号の配置角度の候補がデフォルト角度と一致していなければ、評価点として0が与えられる。
【0028】
項目3(項目ID=3)は、評価対象の部品記号が付加される部品と該評価対象の部品記号との距離に関する項目である。項目3の評価点はS3、重みはR3として定義される。
図7には、項目3における評価例が模式的に示されている。ここで、部品ECから見た部品記号の方向ごとに、理想点および探索最遠端が定義されうる。理想点は、部品記号を配置可能な位置のうち部品ECから最も近い位置である。探索最遠端は、部品記号を配置すべき位置として探索する位置のうち部品ECから最も遠い位置である。Diは、配置される部品記号の位置と理想点との距離である。Deは、理想点と探索最遠端との距離である。一例において、Di≦Deであれば、評価点として100-(Di/De×100)で計算される値が与えられ、Di>Deであれば、評価点として0が与えられる。
【0029】
項目4(項目ID=4)は、評価対象の部品記号が付加される部品の中心軸に対する該評価対象の部品記号のずれに関する項目である。項目4の評価点はS4、重みはR4として定義される。
図8には、項目4における評価例が模式的に示されている。ここで、探索最遠端が定義されうる。探索最遠端は、部品記号を配置すべき位置として探索する位置のうち部品ECから最も遠い位置である。Diは、配置される部品記号の位置と部品ECの中心軸との距離である。Deは、部品ECの中心軸と探索最遠端との距離である。一例において、Di≦Deであれば、評価点として100-(Di/De×100)で計算される値が与えられ、Di>Deであれば、評価点として0が与えられる。
【0030】
項目5(項目ID=5)は、評価対象の部品記号が付加される部品が同一形状を有する部品群に属する場合において、該部品群に属する全部品にそれぞれ付加される部品記号の相対位置の相互の整合性に関する項目である。項目5の評価点はS5、重みはR5として定義される。
図9には、項目5における評価例が模式的に示されている。
図9において、部品EC1~EC5は、同一形状を有する部品群を構成する2以上の部品の例である。部品群は、同一軸(例えば、X軸、Y軸)に平行な線上に所定距離内で配置された同一形状を有する2以上の部品で構成されうる。所定距離とは、例えば、互いに隣り合う部品間の距離である。
図9の例では、部品EC1~EC4は、1つの軸(X軸)上に定距離内で配置された同一形状を有する部品である。なお、ここでのX軸、Y軸は、2以上の部品がその上に配置されている軸である。また、部品EC1、EC5は、1つの軸(Y軸)上に定距離内で配置された同一形状を有する部品である。
図9の例において、部品記号を配置する際の推奨方向が所定のルールに従って決定されうる。該ルールは、部品群を構成する全部品のそれぞれから見て余白が最も広い方向でありうる。
【0031】
図9の例では、評価対処の部品記号を配置する配置態様の候補が、該部品評価対処の部品記号が付加される物品の上方向である状態が示されている。この候補では、推奨方向が満たされる。また、
図9の例では、部品EC1はX軸上に位置するとともにY軸上にも位置し、部品EC2~EC4はX軸上にのみ位置し、EC5はY軸上に位置する。処理対象の部品が部品EC1である場合、処理対象の部品は、複数の軸の各々の上に位置する。一例において、複数の軸の全てについて推奨方向(つまり、X軸上の部品についての推奨方向、および、Y軸上の部品についての推奨方向)が満たされる場合、評価点として100が与えられ、1つの軸について推奨方向が満たされる場合、評価点として50が与えられる。また、処理対象の部品が1つのみの軸上に位置し、それに付加される評価対象の部品記号の方向が推奨方向を満たす場合には、評価点として100が与えられる。また、処理対象の部品に付加される評価対象の部品記号の方向が推奨方向を満たさない場合には、評価点として0が与えられる。
【0032】
項目6(項目ID=6)は、評価対象の部品記号が付加される部品と同一軸上の他の部品に既に付加された部品記号の相対位置との整合性に関する項目である。項目6の評価点はS6、重みはR6として定義される。
図10には、項目6における評価例が模式的に示されている。なお、相対位置は、部品から見たその部品に付加された部品記号の相対位置、あるいは、部品から見たその部品に付加される部品記号の相対位置である。
図10において、部品ECに対して既に付加された部品記号は、「付加済(配置済)」と記載され、評価対象の部品記号は、「評価対象の部品記号」と記載されている。
【0033】
図10の例では、評価対象の部品記号が付加される部品と同一軸上の他の部品に既に付加された部品記号の相対位置が同じであり、他の部品に既に付加された部品記号の相対位置と評価対象の部品記号の相対位置とが同じであれば、評価点として100が与えられる。一方、評価対象の部品記号が付加される部品と同一軸上の他の部品に既に付加された部品記号の相対位置が同じであっても、他の部品に既に付加された部品記号の相対位置と評価対象の部品記号の相対位置とが異なれば、評価点として0が与えられる。
【0034】
項目7(項目ID=7)は、評価対象の部品記号が付加される部品から見た該評価対象の部品記号が配置される方向における余白の大きさに関する項目である。項目7の評価点はS7、重みはR7として定義される。
図11には、項目7における評価例が模式的に示されている。
図11の例では、評価対象の部品記号が付加される部品ECから見て上方向における余白の大きさが評価される。例えば、部品ECの上側に部品記号を発生可能な領域の面積AR(ここでは、70mm
2)を部品ECの上側の探索範囲の面積SR(ここでは、100mm
2)で除した値に100を乗じた値が評価点として計算される。
【0035】
項目8(項目ID=8)は、評価対象の部品記号と該評価対象の部品記号が付加される部品とは異なる部品に付加された部品記号との相対位置に関する項目である。換言すると、項目8は、評価対象の部品記号と既に存在する部品記号との相対位置に関する項目であり、隣接する2以上の部品記号の可読性を評価する項目であると言える。項目8の評価点はS8、重みはR8として定義される。
図12には、項目8における評価例が模式的に示されている。
【0036】
項目9(項目ID=9)は、評価対象の部品記号と該評価対象の部品記号が付加される部品とは異なる部品との相対位置に関する項目である。項目9の評価点はS9、重みはR9として定義される。
図13には、項目9における評価例が模式的に示されている。
【0037】
項目10(項目ID=10)は、評価対象の部品記号が付加される部品と該評価対象の部品記号との間における他の部品の有無に関する項目である。項目10の評価点はS10、重みはR10として定義される。
図14には、項目10における評価例が模式的に示されている。
【0038】
項目11(項目ID=11)は、評価対象の部品記号が付加される部品と該評価対象の部品記号とを結ぶ線と、他の部品記号が付加される他の部品と該他の部品記号とを結ぶ線との交差に関する項目である。項目11の評価点はS11、重みはR11として定義される。
図15には、項目11における評価例が模式的に示されている。
【0039】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
EC:部品、AR:部品記号を発生可能な領域の面積、SR:探索範囲の面積