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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125809
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20240911BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240911BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20240911BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B60C11/03 100B
B60C11/00 Z
B60C11/13 B
B60C11/13 C
B60C11/12 C
B60C11/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033888
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】三浦 明子
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC17
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB22X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB28X
3D131EB31X
3D131EB44X
3D131EB46V
3D131EB81W
3D131EB81X
3D131EC02V
3D131EC11W
3D131EC11X
3D131EC21V
3D131EC21X
(57)【要約】
【課題】 転がり抵抗性能の悪化を抑制しながら、マッド性能を向上する。
【解決手段】 トレッド部に、第1トレッド端T1とショルダー周方向溝3と、ショルダー陸部5とを含むタイヤ1である。ショルダー陸部5は、ショルダー陸部5のタイヤ軸方向の中間位置5cからタイヤ軸方向内側に位置する内側領域5Aと、ショルダー陸部5の中間位置5cからタイヤ軸方向外側に位置する外側領域5Bと、少なくとも外側領域5Bをタイヤ軸方向に延びる複数のショルダー横溝8とを含んでいる。正規荷重負荷状態において、外側領域5Bの平均接地圧Pbは、内側領域5Aの平均接地圧Paよりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、前記第1トレッド端に隣接するショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝と前記第1トレッド端との間に位置するショルダー陸部とを含み、
前記ショルダー陸部は、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の中間位置からタイヤ軸方向内側に位置する内側領域と、前記ショルダー陸部の前記中間位置からタイヤ軸方向外側に位置する外側領域と、前記第1トレッド端に連通し、かつ、少なくとも前記外側領域をタイヤ軸方向に延びる複数のショルダー横溝とを含み、
前記タイヤを正規リムに正規内圧でリム組みし、かつ、正規荷重を負荷してキャンバー角を0°として平面に接地させた正規荷重負荷状態において、前記外側領域の平均接地圧は、前記内側領域の平均接地圧よりも大きい、
タイヤ。
【請求項2】
前記外側領域の平均接地圧は、前記内側領域の平均接地圧の1.1~1.4倍である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記複数のショルダー横溝は、前記第1トレッド端と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐ、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部は、タイヤ赤道に隣接する一対のクラウン周方向溝と、前記一対のクラウン周方向溝間に位置するクラウン陸部とを含み、
前記ショルダー陸部の平均接地圧は、前記クラウン陸部の平均接地圧よりも大きい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー陸部の平均接地圧は、前記クラウン陸部の平均接地圧の1.15~1.35倍である、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記複数のショルダー横溝のそれぞれの溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さ及び前記一対のクラウン周方向溝のそれぞれの溝深さよりも小さい、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記複数のショルダー横溝のそれぞれの溝深さと、前記ショルダー周方向溝の溝深さ及び前記一対のクラウン周方向溝のそれぞれの溝深さとの差は、1.7mm以下である、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ショルダー陸部は、前記複数のショルダー横溝よりも小さい溝幅の複数のショルダー副横溝を含み、
前記複数のショルダー副横溝は、前記第1トレッド端と前記ショルダー周方向溝とを繋いでいる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記複数のショルダー副横溝の溝幅は、1~2.5mmである、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ショルダー周方向溝は、タイヤ周方向と平行に延びる複数の第1部分と、前記複数の第1部分よりもタイヤ軸方向の内側でタイヤ周方向と平行に延びる複数の第2部分と、前記複数の第1部分のいずれかと前記複数の第2部分のいずれかとを繋いでタイヤ周方向に対して傾斜する複数の第3部分とを含み、
前記複数のショルダー横溝のそれぞれは、前記複数の第3部分のいずれかと繋がる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記トレッド部は、前記ショルダー周方向溝に隣接する前記クラウン周方向溝と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝との間に位置するミドル陸部とを含み、
前記ミドル陸部は、前記複数の第3部分から前記クラウン周方向溝まで延びる複数のミドル横溝を含む、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記トレッド部は、前記クラウン周方向溝から前記ミドル陸部とは逆側に位置するクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部は、前記クラウン周方向溝からタイヤ赤道側へ延びて前記クラウン陸部内で途切れる端部を有する複数のクラウン横溝を含み、
前記複数のクラウン横溝のそれぞれは、前記クラウン周方向溝を介して前記複数のミドル横溝のいずれかと繋がる、請求項11に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、一対のショルダー縦溝、及び、前記ショルダー縦溝とトレッド接地端との間を延びるショルダー横溝が設けられた空気入りタイヤが記載されている。この空気入りタイヤでは、前記ショルダー縦溝と前記トレッド接地端との間のショルダー領域の平均接地圧が、前記一対のショルダー縦溝間のクラウン領域の平均接地圧の1.2~1.4倍とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-1120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ショルダー横溝によって泥を掻く力(せん断力)を大きくしてマッド性能を向上することが求められている。前記せん断力を大きくする方法として、例えば、ショルダー横溝の溝容積を大きくすることが考えられる。しかしながら、溝容積を大きくするためには、トレッド部のトレッドゴムボリュームを大きくする必要がある。そのようなタイヤは、転がり抵抗性能が悪化する。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、転がり抵抗性能の悪化を抑制しながら、マッド性能を向上させることが可能なタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、第1トレッド端と、前記第1トレッド端に隣接するショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝と前記第1トレッド端との間に位置するショルダー陸部とを含み、前記ショルダー陸部は、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の中間位置からタイヤ軸方向内側に位置する内側領域と、前記ショルダー陸部の前記中間位置からタイヤ軸方向外側に位置する外側領域と、前記第1トレッド端に連通し、かつ、少なくとも前記外側領域をタイヤ軸方向に延びる複数のショルダー横溝とを含み、前記タイヤを正規リムに正規内圧でリム組みし、かつ、正規荷重を負荷してキャンバー角を0°として平面に接地させた正規荷重負荷状態において、前記外側領域の平均接地圧は、前記内側領域の平均接地圧よりも大きい、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用することで、転がり抵抗性能の悪化を抑制しながら、マッド性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示すトレッド部の部分平面図である。
図2】トレッド部の平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】ミドル陸部の平面図である。
図5】クラウン陸部の平面図である。
図6】クラウン陸部及びミドル陸部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図面は、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれている。また、複数の実施形態がある場合、明細書を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。
【0010】
本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤ1を正規リム(図示省略)に装着して正規内圧を充填し、かつ、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。
【0011】
前記「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
前記「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の部分平面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用空気入りタイヤ、具体的には、泥濘地での走行が可能なSUV用として好適に使用される。但し、本発明は、例えば、重荷重用の空気入りタイヤ、さらに、内部に圧縮空気が充填されない非空気式タイヤに用いられてもよい。
【0014】
図1に示されるように、トレッド部2は、第1トレッド端T1と、第1トレッド端T1に隣接するショルダー周方向溝3と、ショルダー周方向溝3と第1トレッド端T1との間に位置するショルダー陸部5とを含んでいる。
【0015】
ショルダー陸部5は、ショルダー陸部5のタイヤ軸方向の中間位置5cからタイヤ軸方向内側に位置する内側領域5Aと、ショルダー陸部5の中間位置5cからタイヤ軸方向外側に位置する外側領域5Bとを含んでいる。中間位置5cは、ショルダー陸部5のタイヤ軸方向の最大幅Wsとなる位置での中点である。
【0016】
また、ショルダー陸部5は、第1トレッド端T1に連通し、かつ、少なくとも外側領域5Bをタイヤ軸方向に延びる複数のショルダー横溝8を含んでいる。第1トレッド端T1に連通するショルダー横溝8は、その溝内の泥を第1トレッド端T1の外側にスムーズに排出することができる。これにより、ショルダー横溝8は、新たに接地したときに、多くの泥を掴んで押し固めることができるので、大きなせん断力を発揮し得る。
【0017】
トレッド部2のタイヤ軸方向の外側のせん断力を高めることで泥濘地での走行を安定させることができると推察される。このため、本発明では、正規荷重負荷状態において、外側領域5Bの平均接地圧Pbが、内側領域5Aの平均接地圧Paよりも大とされている。これにより、外側領域5Bに配されたショルダー横溝8は、泥に対してより大きなせん断力を発揮し、かつ、第1トレッド端T1の外側によりスムーズに排出することができるので、マッド性能が向上される。また、相対的に小さな平均接地圧となる内側領域5Aにおいては、内側領域5Aを形成するゴムの発熱量や路面との摩擦力を低減することができるので、転がり抵抗の増加を抑えることができる。さらに、このタイヤ1では、ショルダー横溝8の溝容積に依拠することなくせん断力を高めることができ、ひいては、転がり抵抗性能の悪化を抑制することができる。したがって、本発明のタイヤ1は、転がり抵抗性能を維持しつつ、マッド性能を向上することができる。
【0018】
前記「正規荷重負荷状態」とは、前記正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角を0°として平面に接地させた状態である。前記「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0019】
前記「平均接地圧」は、本明細書では、トレッド部2の踏面2a(図2に示す)に作用する圧力の平均(kPa)であり、例えば、踏面2aを観察することにより計測しうる。より具体的には、平均接地圧は、例えば、Tekscan社製の圧力分布測定装置を用いて測定しうる。この装置は、例えば、正規荷重負荷状態のタイヤ1において、踏面2aの接地圧を、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に1.0mm間隔で測定しうる。平均接地圧は、前記測定装置によって、1.0mm間隔で測定された測定値の各領域又は各陸部の合計を、その測定数で除した値である。
【0020】
このような平均接地圧となるタイヤ1は、例えば、トレッド部2のトレッドゴム(図示省略)のゴムボリュームを操作する、又は、トレッド部2の内部に配されるカーカス(図示省略)などのタイヤ構成部材の強度を操作することによって形成される。前記「トレッドゴム」及び「タイヤ鋼製部材」は、周知の材料で形成されるので、その説明が省略される。
【0021】
このような作用を効果的に発揮するために、外側領域5Bの平均接地圧Pbは、内側領域5Aの平均接地圧Paの1.1倍以上が望ましく、1.2倍以上がさらに望ましく、1.4倍以下が望ましく、1.3倍以下がさらに望ましい。外側領域5Bの平均接地圧Pbが内側領域5Aの平均接地圧Paの1.1倍以上であるので、外側領域5Bでのせん断力が高められ泥濘地での安定した走行が可能となる。外側領域5Bの平均接地圧Pbが内側領域5Aの平均接地圧Paの1.4倍以下であるので、外側領域5Bでの摩擦力が過度に大きくなって転がり抵抗性能が悪化することを抑えることができる。
【0022】
図2は、トレッド部2の平面図である。図2に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、さらに、第2トレッド端T2と、タイヤ赤道Cに隣接する一対のクラウン周方向溝4、4と、一対のクラウン周方向溝4、4間に位置するクラウン陸部6とを含んでいる。また、トレッド部2は、ショルダー周方向溝3と、ショルダー周方向溝3に隣接する一方のクラウン周方向溝4との間に位置するミドル陸部7を含んでいる。なお、本実施形態のトレッド部2は、タイヤ赤道Cでの線対称パターン、又は、タイヤ赤道C上の任意の点での点対称パターンで形成される。このため、本実施形態のトレッド部2は、タイヤ赤道Cよりも第2トレッド端T2側に、ショルダー陸部5及びミドル陸部7が設けられる。そして、第2トレッド端T2側に位置するショルダー陸部5及びミドル陸部7の説明が省略される。本実施形態のトレッド部2は、前記点対称パターンである。なお、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0023】
第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、前記正規荷重負荷状態のタイヤ1において、最もタイヤ軸方向外側の接地位置とされる。また、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWとされる。
【0024】
ショルダー陸部5の平均接地圧P1は、クラウン陸部6の平均接地圧P2よりも大きく形成されている。このように平均接地圧P1を相対的に大きくすることにより、泥濘地での走行の安定性が一層向上する。このような作用をより効果的に発揮させるために、本実施形態では、内側領域5Aの平均接地圧Paは、クラウン陸部6の平均接地圧P2よりも大きく形成されている。
【0025】
泥濘地での走行時の安定性を高めるために、ショルダー陸部5の平均接地圧P1は、クラウン陸部6の平均接地圧P2の1.15倍以上が望ましく、1.2倍以上がさらに望ましい。ショルダー陸部5の摩擦力等の増加を抑えて転がり抵抗性能の悪化を抑えるために、ショルダー陸部5の平均接地圧P1は、クラウン陸部6の平均接地圧P2の1.35倍以下が望ましく、1.3倍以下がさらに望ましい。
【0026】
相対的にタイヤ軸方向外側に位置する陸部や領域でのせん断力を高めて、泥濘地での走行時の安定性を高めるとともに、摩擦力等が過度に大きくなることで転がり抵抗性能が悪化することを抑えることが求められる。このために、ミドル陸部7の平均接地圧P3は、ショルダー陸部5の平均接地圧P1よりも小さく、かつ、クラウン陸部6の平均接地圧P2よりも大きく形成されている。また、ミドル陸部7の中間位置7c(図4に示す)からタイヤ軸方向外側に位置するミドル外側領域7Bの平均接地圧Pdは、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の中間位置7cからタイヤ軸方向内側に位置するミドル内側領域7Aの平均接地圧Pcよりも小とされている。
【0027】
ショルダー周方向溝3及びクラウン周方向溝4は、例えば、タイヤ周方向に連続してジグザグ状に延びている。このようにショルダー周方向溝3及びクラウン周方向溝4は、本実施形態では、タイヤ軸方向成分を有するので、泥に対するせん断力を発揮することができる。ショルダー周方向溝3及びクラウン周方向溝4は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、直線状に延びてもよいし、波状に延びてもよい。
【0028】
ショルダー周方向溝3は、本実施形態では、複数の第1部分21と複数の第2部分22と複数の第3部分23とを含んでいる。第1部分21は、タイヤ周方向と平行に延びている。第2部分22は、複数の第1部分21よりもタイヤ軸方向の内側でタイヤ周方向と平行に延びている。第3部分23は、複数の第1部分21のいずれかと複数の第2部分22のいずれかとを繋いでタイヤ周方向に対して傾斜している。
【0029】
クラウン周方向溝4は、複数のクラウン第1部分25と複数のクラウン第2部分26と複数のクラウン第3部分27とを含んでいる。クラウン第1部分25は、タイヤ周方向と平行に延びている。クラウン第2部分26は、クラウン第1部分25よりもタイヤ軸方向の内側でタイヤ周方向と平行に延びている。クラウン第3部分27は、複数のクラウン第1部分25のいずれかと複数のクラウン第2部分26のいずれかとを繋いでタイヤ周方向に対して傾斜している。
【0030】
特に限定されるものではないが、ショルダー周方向溝3の溝幅W1、及び、クラウン周方向溝4の溝幅W2は、例えば、5mm以上が望ましく、6mm以上がさらに望ましく、9mm以下が望ましく、8mm以下がさらに望ましい。また、ショルダー周方向溝3の溝深さD1、及び、クラウン周方向溝4の溝深さD2(図3に示す)は、例えば、6mm以上が望ましく、7mmさらに望ましく、10mm以下が望ましく、9mm以下がさらに望ましい。本実施形態では、ショルダー周方向溝3の溝深さD1は、クラウン周方向溝4の溝深さD2よりも小である。本明細書では、「溝幅」は、溝の踏面2a上での開口面積を溝中心線の長さで除した平均値である。
【0031】
図1に示されるように、ショルダー横溝8は、本実施形態では、第1トレッド端T1とショルダー周方向溝3とを繋いでいる。このようなショルダー横溝8は、タイヤ軸方向の長さが大きく確保されるので、泥に対するせん断力を高めることができる。
【0032】
複数のショルダー横溝8のそれぞれは、本実施形態では、複数の第3部分23のいずれかと繋がっている。詳しく説明すると、ショルダー横溝8は、タイヤ軸方向の成分を有する第3部分23と繋がっている。これにより、ショルダー横溝8と第3部分23とが実質的に同時に接地することで、高いせん断力が得られる。
【0033】
ショルダー横溝8は、例えば、第3部分23と合わせてタイヤ軸方向に延びる1本の溝状体を形成している。これにより、より一層マッド性能が向上される。「1本の溝状体」とは、本明細書では、ショルダー横溝8のいずれか一方の溝縁8eと、第3部分23のいずれか一方の溝縁23eとが、直線又は円弧で滑らかに接続されることであり、溝縁8eと溝縁23eとが屈曲して接続される態様は除かれる。
【0034】
図3は、図2のA-A線断面図である。図3に示されるように、複数のショルダー横溝8のそれぞれの溝深さD3は、ショルダー周方向溝3の溝深さD1及び一対のクラウン周方向溝4のそれぞれの溝深さD2よりも小さい。これにより、ショルダー陸部5の剛性が高く維持される。ショルダー横溝8のせん断力を高める効果を維持するために、複数のショルダー横溝8のそれぞれの溝深さD2と、ショルダー周方向溝3の溝深さD1、及び、一対のクラウン周方向溝4のそれぞれの溝深さD2との差は、1.7mm以下であるのが望ましい。
【0035】
図1に示されるように、ショルダー陸部5は、ショルダー横溝8よりも小さい溝幅W4の複数のショルダー副横溝9を含んでいる。このようなショルダー副横溝9は、泥に対するせん断力を高めて、マッド性能を向上するのに役立つ。とりわけ、複数のショルダー副横溝9の溝幅W4が1~2.5mmとされるので、上述の作用が効果的に発揮される。
【0036】
複数のショルダー副横溝9は、第1トレッド端T1とショルダー周方向溝3とを繋いでいる。本実施形態のショルダー副横溝9は、第3部分23と第2部分22とが交差する交差位置K1に接続されている。交差位置K1は、ショルダー陸部5の剛性が相対的に小さくなる位置である。このような交差位置K1に繋がれたショルダー副横溝9は、接地時の変形が大きいので、その溝内の泥をスムーズに排出することができる。
【0037】
ショルダー陸部5の最大幅Wsが過度に小さいと、相対的に大きな平均接地圧となるショルダー陸部5の踏面5aの面積が小さくなりマッド性能が悪化するおそれがある。ショルダー陸部5の最大幅Wsが過度に大きいと、平均接地圧の相対的に小さいミドル陸部7の踏面7aの面積、及び、クラウン陸部6の踏面6a(図2に示す)の面積が少なくなり、転がり抵抗性能が悪化するおそれがある。このため、ショルダー陸部5の最大幅Wsは、トレッド幅TWの20%以上が望ましく、22%以上がさらに望ましく、32%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。
【0038】
図4は、ミドル陸部7の平面図である。図4に示されるように、ミドル陸部7は、複数の第3部分23からクラウン周方向溝4まで延びる複数のミドル横溝11を含んでいる。このようなミドル横溝11も、第3部分23と実質的に同時に接地するので、泥に対して大きなせん断力を発揮することができる。ミドル横溝11は、例えば、第3部分23と合わせて、タイヤ軸方向に延びる1本の溝状体を形成するように配されている。本実施形態では、ミドル横溝11のいずれか一方の溝縁11eと第3部分23のいずれか一方の溝縁23eとが円弧で滑らかに接続されている。また、ミドル横溝11は、本実施形態では、クラウン第2部分26とクラウン第3部分27との交差位置K2に繋がっている。
【0039】
ミドル陸部7は、第1サイプ13と第2サイプ14とを含んでいる。第1サイプ13は、ミドル陸部7を横断している。第2サイプ14は、ミドル陸部7内で途切れる端部14eを有している。第2サイプ14は、ショルダー周方向溝3に繋がる外側第2サイプ15と、クラウン周方向溝4に繋がる内側第2サイプ16とからなる。
【0040】
第1サイプ13は、本実施形態では、第1部分21と第3部分23との交差位置、及び、クラウン第1部分25とクラウン第3部分27との交差位置を繋いでいる。外側第2サイプ15は、本実施形態では、第2部分22と第3部分23との交差位置から延びて、ミドル陸部7の中間位置7cよりもタイヤ軸方向の外側で途切れる端部15eを有している。内側第2サイプ16は、本実施形態では、クラウン第1部分25とクラウン第3部分27との交差位置から延びて、ミドル陸部7の中間位置7cよりもタイヤ軸方向の内側で途切れる端部16eを有している。本明細書では、サイプは、踏面2a上での幅が1.0mm未満の切れ込み状体をいい、溝幅が1mm以上の溝とは明瞭に区別される。
【0041】
図5は、クラウン陸部6の平面図である。図5に示されるように、クラウン陸部6は、クラウン周方向溝4からタイヤ赤道C側へ延びてクラウン陸部6内で途切れる端部18eを有する複数のクラウン横溝18を含んでいる。クラウン横溝18は、例えば、クラウン第2部分26とクラウン第3部分27との交差位置から延びている。
【0042】
図6は、クラウン陸部6及びミドル陸部7の拡大図である。図6に示されるように、複数のクラウン横溝18のそれぞれは、クラウン周方向溝4を介して複数のミドル横溝11のいずれかと繋がっている。これにより、クラウン横溝18、クラウン周方向溝4及びミドル横溝11でタイヤ軸方向に延びる1本の溝状体が形成されるので、大きなせん断力が発揮される。前記「繋がる」とは、仮想線v1がクラウン横溝18内に位置するとともに、仮想線v2がミドル横溝11内に位置することをいう。仮想線v1は、ミドル横溝11の溝中心線11cのタイヤ軸方向の内端11aと外端11bとを繋ぐ直線n1を、その直線n1の傾斜角度を維持しつつタイヤ軸方向内側に延長させた線分をいう。仮想線v2は、クラウン横溝18の溝中心線18cのタイヤ軸方向の内端18aと外端18bとを繋ぐ直線n2を、その直線n2の傾斜角度を維持しつつタイヤ軸方向内側に延長させた線分をいう。
【0043】
図5に示されるように、クラウン横溝18は、第1トレッド端T1側に位置するクラウン周方向溝4から延びる第1クラウン横溝18Aと、第2トレッド端T2側に位置するクラウン周方向溝4から延びる第2クラウン横溝18Bとを含んでいる。第1クラウン横溝18Aと第2クラウン横溝18Bとの間のタイヤ周方向の長さLaは、クラウン陸部6の最大幅Wcの15%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、35%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。長さLaは、第1クラウン横溝18Aの溝中心線18cの内端18aと、第2クラウン横溝18Bの溝中心線18cの内端18aとの間のタイヤ周方向の距離である。クラウン陸部6の最大幅Wcは、クラウン陸部6の最も第1トレッド端T1側の位置6eと、クラウン陸部6の最も第2トレッド端T2側の位置6iとの間のタイヤ軸方向の距離である。
【0044】
以上、本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0045】
図2の基本パターンを有するタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。そして、各テストタイヤのマッド性能及び転がり抵抗性能についてテストがされた。各テストタイヤの共通仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
タイヤサイズ:265/65R18
内圧(kPa):230(全輪)
リム:18×8.0J
【0046】
<マッド性能>
各テストタイヤが、下記の車両の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、泥濘地のテストコースでこの車両を走行させた。テストドライバーは、このときのハンドル応答性、トラクション及びグリップ等に関する走行特性を官能により評価した。結果は、比較例1を100とする評点で表示している。数値が大きいほど良好である。
車両:排気量2500ccの4輪駆動の乗用車(SUV)
【0047】
<転がり抵抗性能>
転がり抵抗試験機を用いISO28580に基づいて、各テストタイヤの転がり抵抗が測定された。結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数で表され、数値が大きいほど転がり抵抗が小さく良好である。95以上は合格である。
荷重:9.26kN
速度:80km/h
テストの結果が表1に示される。表の各例は、D1とD2とが同じである。また、内側領域の平均接地圧(Pa)は、各例ともに同じである。
【0048】
【表1】
【0049】
テストの結果、実施例のタイヤは、転がり抵抗性能の悪化が抑制されながら、マッド性能が向上していることが確認できた。
【0050】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0051】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、第1トレッド端と、前記第1トレッド端に隣接するショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝と前記第1トレッド端との間に位置するショルダー陸部とを含み、
前記ショルダー陸部は、前記ショルダー陸部のタイヤ軸方向の中間位置からタイヤ軸方向内側に位置する内側領域と、前記ショルダー陸部の前記中間位置からタイヤ軸方向外側に位置する外側領域と、前記第1トレッド端に連通し、かつ、少なくとも前記外側領域をタイヤ軸方向に延びる複数のショルダー横溝とを含み、
前記タイヤを正規リムに正規内圧でリム組みし、かつ、正規荷重を負荷してキャンバー角を0°として平面に接地させた正規荷重負荷状態において、前記外側領域の平均接地圧は、前記内側領域の平均接地圧よりも大きい、
タイヤ。
[本発明2]
前記外側領域の平均接地圧は、前記内側領域の平均接地圧の1.1~1.4倍である、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記複数のショルダー横溝は、前記第1トレッド端と前記ショルダー周方向溝とを繋ぐ、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記トレッド部は、タイヤ赤道に隣接する一対のクラウン周方向溝と、前記一対のクラウン周方向溝間に位置するクラウン陸部とを含み、
前記ショルダー陸部の平均接地圧は、前記クラウン陸部の平均接地圧よりも大きい、本発明1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明5]
前記ショルダー陸部の平均接地圧は、前記クラウン陸部の平均接地圧の1.15~1.35倍である、本発明4に記載のタイヤ。
[本発明6]
前記複数のショルダー横溝のそれぞれの溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さ及び前記一対のクラウン周方向溝のそれぞれの溝深さよりも小さい、本発明4又は5に記載のタイヤ。
[本発明7]
前記複数のショルダー横溝のそれぞれの溝深さと、前記ショルダー周方向溝の溝深さ及び前記一対のクラウン周方向溝のそれぞれの溝深さとの差は、1.7mm以下である、本発明6に記載のタイヤ。
[本発明8]
前記ショルダー陸部は、前記複数のショルダー横溝よりも小さい溝幅の複数のショルダー副横溝を含み、
前記複数のショルダー副横溝は、前記第1トレッド端と前記ショルダー周方向溝とを繋いでいる、本発明1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明9]
前記複数のショルダー副横溝の溝幅は、1~2.5mmである、本発明8に記載のタイヤ。
[本発明10]
前記ショルダー周方向溝は、タイヤ周方向と平行に延びる複数の第1部分と、前記複数の第1部分よりもタイヤ軸方向の内側でタイヤ周方向と平行に延びる複数の第2部分と、前記複数の第1部分のいずれかと前記複数の第2部分のいずれかとを繋いでタイヤ周方向に対して傾斜する複数の第3部分とを含み、
前記複数のショルダー横溝のそれぞれは、前記複数の第3部分のいずれかと繋がる、本発明1ないし9のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明11]
前記トレッド部は、前記ショルダー周方向溝に隣接する前記クラウン周方向溝と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝との間に位置するミドル陸部とを含み、
前記ミドル陸部は、前記複数の第3部分から前記クラウン周方向溝まで延びる複数のミドル横溝を含む、本発明10に記載のタイヤ。
[本発明12]
前記トレッド部は、前記クラウン周方向溝から前記ミドル陸部とは逆側に位置するクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部は、前記クラウン周方向溝からタイヤ赤道側へ延びて前記クラウン陸部内で途切れる端部を有する複数のクラウン横溝を含み、
前記複数のクラウン横溝のそれぞれは、前記クラウン周方向溝を介して前記複数のミドル横溝のいずれかと繋がる、本発明11に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0052】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 ショルダー周方向溝
5 ショルダー陸部
5A 内側領域
5B 外側領域
5c 中間位置
8 ショルダー横溝
T1 第1トレッド端
Pa、Pb 平均接地圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6