(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125811
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】ホーニング加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 3/26 20060101AFI20240911BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20240911BHJP
B23P 15/32 20060101ALI20240911BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B24B3/26
B23Q17/20 A
B23P15/32
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033891
(22)【出願日】2023-03-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:別紙(証明書1)添付に記載の通り 掲載日:別紙(証明書1)添付に記載の通り [刊行物等] ウェブサイトのアドレス https://kotolabosti.co.jp/example/technical_information/2824/ 掲載日:令和4年10月24日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:別紙(証明書3)添付に記載の通り 掲載日:別紙(証明書3)添付に記載の通り [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:別紙(証明書4)添付に記載の通り 掲載日:別紙(証明書4)添付に記載の通り [刊行物等] ウェブサイトのアドレス https://www.jimtof.org/search/jp/ESdetails?e=aokH1qewRBc 掲載日:令和4年9月1日 [刊行物等] 第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022) 展示日:令和4年11月8日 [刊行物等] 刊行物:別紙(証明書7)添付に記載の通り 頒布日:別紙(証明書7)添付に記載の通り [刊行物等] 刊行物:機械技術、2022年11月号、Vol.70、No.12、株式会社日刊工業新聞社 頒布日:令和4年10月25日 [刊行物等] 刊行物:別紙(証明書9)添付に記載の通り 頒布日:別紙(証明書9)添付に記載の通り [刊行物等] 刊行物:別紙(証明書10)添付に記載の通り 頒布日:別紙(証明書10)添付に記載の通り
(71)【出願人】
【識別番号】000242792
【氏名又は名称】牧野フライス精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕二
(72)【発明者】
【氏名】大谷 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 義博
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 鯨
(72)【発明者】
【氏名】糸川 七海
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C158
【Fターム(参考)】
3C029BB01
3C029BB10
3C034AA13
3C034BB93
3C034CA13
3C034CA22
3C034DD20
3C158AA03
3C158AA14
3C158AA16
3C158AC02
3C158BA01
3C158BA07
3C158CA01
3C158CB01
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことのできるホーニング加工装置を提供する。
【解決手段】ドリルDRを取り付けるための工作主軸16と、ドリルDRの刃先DR1、DR2にホーニング面HP1、HP2を形成するための砥石14とを有するホーニング加工装置10であって、ドリルDRの軸方向に沿った方向を撮影方向として刃先DR1、DR2を撮影するカメラ部40と、カメラ部40によって撮影した刃先DR1、DR2の画像に基づいて、刃先DR1、DR2の3次元座標データを生成する制御部50と、を備え、生成した3次元座標データに基づいてNC加工を行うことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルを取り付けるための工作主軸と、前記ドリルの刃先にホーニング面を形成するための砥石とを有するホーニング加工装置であって、
前記ドリルの軸方向に沿った方向を撮影方向として前記刃先を撮影するカメラと、
前記カメラによって撮影した前記刃先の画像に基づいて、前記刃先の3次元座標データを生成するデータ生成部と、を備え、
生成した前記3次元座標データに基づいてNC加工を行うことを特徴とする、ホーニング加工装置。
【請求項2】
前記カメラは、撮影位置を変更して前記刃先を複数回撮影することを特徴とする、請求項1に記載のホーニング加工装置。
【請求項3】
前記刃先の前記3次元座標データは、前記ドリルの軸方向に沿って等間隔に生成されることを特徴とする、請求項2に記載のホーニング加工装置。
【請求項4】
前記データ生成部は、撮影した前記刃先の画像が保管されたデータベースを有し、前記3次元座標データは前記データベースに保管された画像に基づいて生成できることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のホーニング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーニング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルのホーニング加工は、人がヤスリを用いた手作業によって加工を行う場合がある。しかしながら、ホーニングの形状はドリルの用途に応じて多様な寸法を有し、寸法を均一に保ちながら手作業でホーニング加工を行うのには熟練の技術を要する。そこで、特許文献1には、加工を効率化するために、ドリルのホーニング加工部を撮影するためのカメラと、カメラで撮影した画像を表示するためのモニタとを有するカメラユニットを備えたホーニング加工装置が開示されている。これによって、ある程度加工した後に顕微鏡等による確認作業をするのではなく、加工途中のドリルを見ながら作業を行うことができるため、効率よく加工を行うことができる。また、タッチプローブを用いてホーニング形状をトレースし、このデータに基づいてNC加工するホーニング加工装置が実用に供されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のホーニング加工装置では、モニタを見ながらであっても人が加工を行うため大幅に作業時間を短縮することは困難である。また、タッチプローブを用いてホーニング形状をトレースすることも、ドリルの表面上の多数の点に測定子を接触させるため、測定子の移動及び接触の繰り返しに一定の時間を要する。さらに、タッチプローブを用いる場合には、ドリルの表面に接触させる測定子は所定の形状及び大きさを有するため、計測の分解能に制約が生じると共に測定子の触圧によってドリルが撓む可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を鑑み、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことのできるホーニング加工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様によれば、ドリルを取り付けるための工作主軸と、ドリルの刃先にホーニング面を形成するための砥石とを有するホーニング加工装置であって、ドリルの軸方向に沿った方向を撮影方向として刃先を撮影するカメラと、カメラによって撮影した刃先の画像に基づいて、刃先の3次元座標データを生成するデータ生成部と、を備え、生成した3次元座標データに基づいてNC加工を行うことを特徴とする、ホーニング加工装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一の態様によれば、カメラは、撮影位置を変更して刃先を複数回撮影してもよい。
【0008】
さらに、本発明の一の態様によれば、刃先の3次元座標データは、ドリルの軸方向に沿って等間隔に生成されてもよい。
【0009】
また、本発明の一の態様によれば、データ生成部は、撮影した刃先の画像が保管されたデータベースを有し、3次元座標データはデータベースに保管された画像に基づいて生成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一の態様に係るホーニング加工装置によると、ホーニング加工装置は、ドリルの軸方向に沿った方向を撮影方向として刃先を撮影するカメラと、カメラによって撮影した刃先の画像に基づいて、刃先の3次元座標データを生成するデータ生成部とを備える。このため、カメラによって撮影した画像から短時間で刃先の3次元座標データを生成してNC加工を行うことができる。さらに、カメラを用いてドリルを撮影することによって刃先に接触することがないため、刃先の撓みや変形を防止することができ、NC加工の加工精度も確保することができる。これによって、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことができる。
【0011】
本発明の一の態様に係るホーニング加工装置によると、カメラは、撮影位置を変更して刃先を複数回撮影することができる。ドリルの刃先は、先端部が尖鋭に形成され、軸方向に沿って溝部が螺旋状に形成された3次元形状を有する。このため、撮影した1つの刃先の画像においては、ピントが合っている部分とピントがぼやける部分が併存する。本態様に係るホーニング加工装置によれば、撮影位置を変更して刃先を複数回撮影し、撮影した複数の画像を重ね合わせることによって、ホーニング加工を行う刃先全体に亘ってピントの合った画像を生成することができる。これによって、NC加工用の形状データの精度及びNC加工の加工精度を確保することができ、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことができる。
【0012】
本発明の一の態様に係るホーニング加工装置によると、刃先の3次元座標データは、ドリルの軸方向に沿って等間隔に生成することができる。このため、NC加工用の形状データを均質に生成することができ、NC加工の加工精度を確保することができる。この場合、刃先の画像は、例えば、撮影位置を均等に変えて複数回撮影した画像を用いることができ、カメラによる刃先の撮影を効率よく行うことができる。これによって、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことができる。
【0013】
本発明の一の態様に係るホーニング加工装置によると、データ生成部は、撮影した刃先の画像が保管されたデータベースを有する。このため、例えば、同じ態様のドリルについて過去にホーニング加工を行ったことがある場合は、刃先を撮影することに替えて、データベースに保管された画像に基づいて3次元座標データを生成することができる。これによって、NC加工用の形状データの作成時間をさらに短縮することができ、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るホーニング加工装置の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、エアブロー時のホーニング加工装置の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、ドリル撮影時のホーニング加工装置の斜視図を示す。
【
図6】
図6は、ドリルの刃先を撮影した画像の一例を示す。
【
図7】
図7は、画像から刃先形状の点群データを特定する方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るホーニング加工装置を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺を変更して説明する場合がある。
【0016】
図1から
図3には、ホーニング加工装置10の斜視図を示す。ホーニング加工装置10は、砥石軸12の先端に回転可能に取り付けられた円盤形状の砥石14によって、工作主軸16に取り付けられたドリルDRの刃先DR1、DR2(
図4参照)をホーニング加工するために用いられる。図中には、ホーニング加工装置10を工場等の床面のような水平面上に配置したときの装置左右方向、装置前後方向及び装置上下方向を矢印で示す。図中のXは、装置左右方向(X軸方向)を示しており、Yは、装置前後方向(Y軸方向)を示しており、Zは、装置上下方向(Z軸方向)を示す。
【0017】
ホーニング加工装置10は、基台として工場等の床面に固定されるベッド18を備える。ベッド18の上面における、Y軸方向の一方の端部側には、コラム20がZ軸方向に沿って立設され、Y軸方向の他方の端部側には、工作主軸16を取り付けるためのベース部22がX軸方向に沿って配置されている。
【0018】
コラム20の工作主軸16と対向する側には、工作主軸16の側へ向けて延在する砥石軸12が配置されている。砥石軸12は、Z軸方向に沿ってスライド可能なZ軸スライダ24を介してコラム20に取り付けられている。このため、砥石軸12は、Z軸スライダ24と共にZ軸方向に沿ってスライド可能に構成されている。また、砥石軸12は、その先端に取り付けられた砥石14を回転可能に構成されている。これによって、工作主軸16に取り付けられたドリルDRに対する砥石14のZ軸方向の位置、すなわち高さ位置を調整した上でホーニング加工することができる。
【0019】
ベース部22の装置上方側には、ベース部22上をX軸方向に沿ってスライド可能に構成されたX軸スライダ26が配置され、X軸スライダ26の上方側には、円盤状に形成された回転座部28が配置されている。このため、X軸スライダ26上の回転座部28をX軸方向に沿ってスライドさせることができる。
【0020】
回転座部28は、Z軸方向に沿って延在する回転軸(図示省略)回り(図中のW方向)に回動可能に構成されている。また、回転座部28の上方側には、XY平面に沿った方向、すなわち水平方向に延在する主軸取付台30が配置されている。主軸取付台30の上方側には、工作主軸16が主軸取付台30に沿ってスライド可能に配置されている。このため、工作主軸16を主軸取付台30の長手方向(図中のU軸方向)に沿ってスライドさせることができると共に、回転座部28の回転軸回りに、すなわちW方向に回動させることができる。
【0021】
工作主軸16は、ドリルDRを取り付けるためのコレット32を備える。コレット32に取り付けられたドリルDRは、工作主軸16をU軸方向に沿ってスライドさせ、かつ/又は、W方向に回動させることによって、砥石14に対するドリルDRの長手方向の位置、及び/又は、角度を調整することができる。
【0022】
図2に示すように、Z軸スライダ24の砥石軸12のX軸方向(
図1参照)の側部には、エアブロー機構34が取り付けられている。エアブロー機構34は、その内部に格納されたエアブローノズル36を工作主軸16及びドリルDR側へ露出できるように、X軸方向に沿った軸線回りに回動可能に構成されている。このため、ドリルDR側へ露出させたエアブローノズル36からドリルDRへ向けてエアブローすること、すなわちエアを吹き出すことができる。これによって、加工を終え、次の加工を行う前に、ドリルDRを工作主軸16によって回転させながら、これにエアブローノズル36からのエアを吹き付け、ドリルDRに付着した油やスラッジ等の付着物を吹き飛ばすことができる。
【0023】
図3に示すように、エアブロー機構34とは反対側となる砥石軸12のX軸方向(
図1参照)の側部には、撮影機構38が取り付けられている。撮影機構38は、カメラ及びライトを有するカメラ部40と、カメラ部40と連結され、これを工作主軸16及びドリルDR側へ向けて出し入れ可能に構成された可動部42とを有する。可動部42は、カメラ部40をY軸方向に沿ってスライド可能に構成されており、カメラ部40とドリルDRとの距離を調整することができる。
【0024】
カメラ部40のカメラは、撮影しないときはカメラカバー(図示省略)に覆われており、カメラでドリルDRを撮影するときだけカメラカバーを開くように構成されている。これによって、ドリルDRの加工時にカメラ部40のカメラレンズに油やスラッジ等の付着物が衝突又は付着することを防止することができる。また、ホーニング加工装置10は、カメラ部40のカメラでドリルDRを撮影するときに、カメラ部40のライトだけを点灯し、ホーニング加工装置10内の他の照明を消すように構成されている。これによって、カメラで撮影するときにドリルDRを集中的に照らし、ドリルDR以外の部分とのコントラストを際立たせることができる。
【0025】
図1に示すように、ホーニング加工装置10は、データ生成部及びデータベースを有する制御部50と接続されている。なお、ここでは、制御部50は、ホーニング加工装置10とは別個に構成されているが、これに限らず、ホーニング加工装置と制御部とは一体で構成されてもよい。制御部50は、ホーニング加工装置10によるホーニング加工の制御、具体的には、砥石軸12及び工作主軸16の位置や作動を制御する。さらに、制御部50は、ドリルDRにエアを吹き付けるためにエアブロー機構34を作動させると共に、ドリルDRを撮影するためにカメラ部40のカメラを作動させる。
【0026】
図4には、ドリルDRとカメラ部40のカメラとの位置関係を模式的に示すドリルDRの側面図を示す。カメラ部40のカメラは、ドリルDRの刃先DR1、DR2をY軸方向に沿って見た方向から撮影するように構成されている。また、カメラ部40のカメラは、ドリルDRの刃先DR1、DR2までの撮影位置としての焦点距離FLをY軸方向に沿って変更可能に構成されている。このため、カメラ部40のカメラは、刃先DR1、DR2までの焦点距離FLだけを変更してドリルDRを複数回撮影することができる。ここでは、カメラ部40のカメラによってドリルDRを撮影する回数は、ドリルDRの種類及び形状に応じて設定可能に構成されている。
【0027】
制御部50は、データ生成部を有しており、カメラ部40のカメラによって複数回撮影したドリルDRの刃先DR1、DR2の画像から刃先DR1、DR2の3次元座標データを生成するように構成されている。さらに、制御部50のデータ生成部は、生成した3次元座標データをNC加工のためのデータへ変換するように構成されている。
【0028】
図5には、一例として、ホーニング加工後のドリルDRの刃先DR1、DR2の拡大図を示す。ドリルDRの刃先DR1、DR2は、先端角を有して尖鋭に形成され、頂部TPを含むシンニング部DR1と、シンニング部DR1と連続して形成され、ドリルDRの径方向外側へ向けて延在するフルート部DR2とを有する。ドリルDRは、このような刃先DR1、DR2からドリルDRの軸方向に沿って螺旋状に形成された溝部も有する。このため、このような3次元形状の刃先DR1、DR2の1つの撮影画像においては、ピントが合っている部分とピントがぼやける部分が併存し得る。
【0029】
図6には、ホーニング加工前のドリルDRの刃先DR1、DR2を撮影した画像の一例を示す。画像上では、X軸方向及びZ軸方向に沿った平面画像として映し出されるため、頂部TPから延在するシンニング部DR1とこれに連続するフルート部DR2とは、それぞれ傾きの異なる直線状に映し出されている。また、ドリルDRを取り付けるためのコレット32が同一画像上に映し出されている。このため、刃先DR1、DR2の3次元座標データを生成するためには、コレット32部分及びドリルDRの刃先DR1、DR2以外の部分とのコントラストを際立たせる必要がある。
【0030】
そこで、制御部50は、カメラ部40のカメラを作動して、刃先DR1、DR2の各位置においてピントが合うように焦点距離FLだけを変更し、それぞれの焦点距離FLで刃先DR1、DR2を撮影するように構成されている。また、制御部50のデータ生成部は、複数の刃先DR1、DR2の画像を重ね合わせることによって、頂部TPのある中心側からシンニング部DR1及びフルート部DR2の外径側へと刃先全体に亘ってピントの合った画像を生成するように構成されている。これによって、NC加工用の形状データの精度を確保し、かつ、NC加工の加工精度を確保することができ、
図5に示すようにシンニング部DR1におけるホーニング面HP1及びフルート部DR2におけるホーニング面HP2を所定の幅で均質に形成することができる。
【0031】
図7には、刃先DR1、DR2形状の点計測、すなわち、3次元座標データの特定を模式的に示す。図中には、ピントを合わせてコントラストを際立たせることによって注出された刃先DR1、DR2の外周形状が表示されている。ここで、横軸はX軸方向の座標(X座標)、縦軸はZ軸方向の座標(Z座標)を示す。図に示すように、刃先DR1、DR2の外周形状から点群データを抽出、すなわち特定する。具体的には、Z軸に平行な直線SPをX軸方向に等間隔で複数本引いて、これらと刃先DR1、DR2の外周形状との交点を点群のX座標及びZ座標として特定する。これによって、シンニング部DR1及びフルート部DR2毎にドリルDRの軸方向に沿って等間隔に座標データを特定することができる。さらに、このようにして特定したX座標及びZ座標並びに予め制御部50に入力されたドリルDRの先端角及び先端2番逃げ角度からシンニング部DR1及びフルート部DR2の各位置におけるY軸方向の位置(Y座標)を一義的に算出することができる。これによって、刃先DR1、DR2の平面画像から刃先DR1、DR2の3次元座標データを生成することができる。
【0032】
図8には、特定された点群データのX座標及びZ座標の一例を示す。画像に基づいて刃先DR1、DR2の外周形状を特定した場合、実際の形状とは異なる微細なチッピング等を外周形状の一部として特定する場合がある。このため、制御部50のデータ生成部は、特定した3次元座標データデータからNC加工のためのデータを作成する前に、例えば、ガウシアンフィルタによって平滑化するように構成されている。
【0033】
制御部50は、さらに、撮影した刃先の画像が保管されたデータベースを有する。このため、例えば、同じ態様のドリルについて過去にホーニング加工を行ったことがある場合は、刃先を撮影することに替えて、制御部50のデータベースに保管された画像に基づいて3次元座標データを生成することができる。
【0034】
ホーニング加工の手順の説明を通じて、本実施形態に係るホーニング加工装置10の作用効果を以下に説明する。
【0035】
ホーニング加工では、はじめに、
図2に示すように、ホーニング加工の直前の加工を終えたドリルDRを工作主軸16で回転させると共に、回転するドリルDRにエアブローノズル36からのエアを吹き付ける。これによって、カメラ部40のカメラによるドリルDRの画像撮影に影響を及ぼし得る油やスラッジ等の付着物を吹き飛ばすことができる。
【0036】
つぎに、
図3に示すように、カメラ部40をY軸方向に沿ってドリルDRの側へ移動し、カメラカバーを開いてドリルDRを撮影する。このとき、カメラ部40のライトだけを点灯し、ホーニング加工装置10内の他の照明を消して撮影を行う。これによって、カメラで撮影するドリルDRを集中的に照らし、ドリルDR以外の部分とのコントラストを際立たせることができる。
【0037】
さらに、
図7及び
図8に示すように、撮影した刃先DR1、DR2形状の画像から、点群を特定し、これらの3次元座標データを特定する。また、点群の3次元座標データをNC加工用にデータに変換し、NC加工によってホーニング加工を行う。
【0038】
本実施形態に係るホーニング加工装置10によると、ホーニング加工装置は、ドリルDRの軸方向に沿った方向を撮影方向として刃先DR1、DR2を撮影するカメラ部40と、カメラ部40によって撮影した刃先DR1、DR2の画像に基づいて、刃先DR1、DR2の3次元座標データを生成する制御部50とを備える。このため、カメラ部40によって撮影した画像から短時間で刃先DR1、DR2の3次元座標データを生成してNC加工を行うことができる。さらに、カメラ部40を用いてドリルDRを撮影することによって刃先DR1、DR2に接触することがないため、刃先DR1、DR2の撓みや変形を防止することができ、NC加工の加工精度も確保することができる。これによって、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態に係るホーニング加工装置10によると、カメラ部40は、焦点距離FLだけを変更して刃先DR1、DR2を複数回撮影することができる。ドリルDRの刃先DR1、DR2は、先端部が尖鋭に形成され、軸方向に沿って溝部が螺旋状に形成された3次元形状を有する。このため、撮影した1つの刃先DR1、DR2の画像においては、ピントが合っている部分とピントがぼやける部分が併存する。本実施形態に係るホーニング加工装置10によれば、焦点距離FLだけを変更して刃先DR1、DR2を複数回撮影し、撮影した複数の画像を重ね合わせることによって、ホーニング加工を行う刃先DR1、DR2全体に亘ってピントの合った画像を生成することができる。これによって、NC加工用の形状データの精度及びNC加工の加工精度を確保することができ、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係るホーニング加工装置10によると、刃先DR1、DR2の3次元座標データは、シンニング部DR1及びフルート部DR2毎にドリルDRの軸方向に沿って等間隔に生成することができる。また、例えば、焦点距離を均等に変えて複数回撮影した刃先DR1、DR2の画像を用いることで、カメラ部40による刃先DR1、DR2の撮影及び3次元座標データの生成を効率的に行うことができる。これによって、NC加工用のデータを均質に生成することができ、NC加工の加工精度を確保することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るホーニング加工装置10によると、制御部50は、撮影した刃先DR1、DR2の画像のデータベースを有する。このため、例えば、同じ態様のドリルDRについて過去にホーニング加工を行ったことがある場合は、刃先DR1、DR2を撮影することに替えて、制御部50のデータベースに保管された画像に基づいて3次元座標データを生成することができる。これによって、NC加工用の形状データの作成時間をさらに短縮することができ、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことができる。
【0042】
以上により、本実施形態に係るホーニング加工装置10は、ホーニング加工を自動かつ効率的に行うことができる。
【0043】
以上、ホーニング加工装置10の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解できると考えられる。
【0044】
なお、ここでは、撮影位置は焦点距離FLを変更するものとして説明したが、これに限らず、例えば、カメラをドリルの軸方向に沿って移動させること等によって、撮影位置が変更されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 ホーニング加工装置
14 砥石
16 工作主軸
40 カメラ部(カメラ)
50 制御部(データ生成部、データベース)
DR ドリル
FL 焦点距離(撮影位置)
HP ホーニング面
HP1 ホーニング面
HP2 ホーニング面