(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125812
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】基板装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20240911BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20240911BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H05K1/14 E
H05K3/36 Z
H05K13/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033892
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻村 次郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄久
【テーマコード(参考)】
5E344
5E353
【Fターム(参考)】
5E344AA26
5E344BB06
5E344CD18
5E344DD07
5E344EE07
5E353EE81
5E353EE83
5E353GG21
5E353GG29
(57)【要約】
【課題】電子部品の電磁波による放射ノイズを低減する。
【解決手段】基板装置12は、電子部品が搭載されている基板44と、基板44をスライド可能に保持するガイド部材(ガイドレール46)と、基板22を、電子部品からの電磁波の周波数をドップラー効果により分散させる振動数で振動させる振動装置48と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載されている基板と、
前記基板をスライド可能に保持するガイド部材と、
前記基板を、前記電子部品からの電磁波の周波数をドップラー効果により分散させる振動数で、前記ガイド部材によるスライドの方向に振動させる振動装置と、
を有する基板装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記基板の面内方向で前記基板をスライド可能に保持している、請求項1に記載の基板装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記基板の対向する2辺に沿って対で備えられている、請求項1に記載の基板装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記基板を厚み方向で保持している、請求項1に記載の基板装置。
【請求項5】
電子部品が搭載されている基板と、
前記基板をスライド可能に保持するガイド部材と、
前記基板を、前記電子部品からの電磁波の周波数をドップラー効果により分散させる振動数で、前記ガイド部材によるスライドの方向に振動させる振動装置と、
前記基板を下方から支持可能な支持部材と、
前記基板を前記支持部材に支持された支持位置と、前記支持部材から上方へ離隔した離隔位置と、の間を移動させる移動部材と、
を有する電子機器。
【請求項6】
前記支持部材は、
前記基板と平行に配置される底板と、
前記底板から前記基板に向けて立設される柱部材と、
を有する請求項5に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は基板装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
発振器に加えられる機械的振動を信号検出手段で検出して電気信号に変換し、振動印加手段により、電気信号を機械振動に変換して発振器に加え、発振器に加えられる機械振動を相殺するマイクロフォニックノイズ低減装置がある。また、磁気抵抗素子を並列または直列に接続して磁気抵抗素子群とし、磁気抵抗素子群を並列に接続したセルを検知部として備える磁気センサがある。(例えば特許文献1、特許文献2等参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-136030号公報
【特許文献2】特開2011-102730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロセッサ等の電子部品は、電磁波の発振源となることがある。そして、電磁波は、たとえば電子機器の他の電子部品に対して放射ノイズとなることがある。
【0005】
本願の開示技術は、1つの側面として、電子部品の電磁波による放射ノイズを低減することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する技術では、電子部品が搭載されている基板と、基板をスライド可能に保持するガイド部材と、基板を、電子部品からの電磁波の周波数をドップラー効果により分散させる振動数で振動させる振動装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する技術では、電子部品の電磁波による放射ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は第一実施形態の基板装置を備えた電子機器を示す平面図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の基板装置を備えた電子機器を基板が支持部材から離隔した状態で示す側面図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の基板装置を備えた電子機器を基板が支持部材に支持された状態で示す側面図である。
【
図4】
図4は第二実施形態の基板装置を備えた電子機器を示す平面図である。
【
図5】
図5は電磁波の周波数とノイズ強度との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第一実施形態の基板装置42と、この基板装置42を備えた電子機器12について、図面に基づいて詳細に説明する。図面において、電子機器12の幅方向、奥行方向及び高さ方向を、それぞれ矢印W、矢印D及び矢印Hで示す。電子機器12の幅方向、奥行方向及び高さ方向は、基板装置42の幅方向、奥行方向及び高さ方向とそれぞれ同方向である。ただし、これらの各方向は説明の便宜上の方向であり、電子機器12及び基板装置42の使用方向はこれに制限されない。
【0010】
図1に示すように、電子機器12は、筐体14及び基板装置42を有している。筐体14は直方体の箱状であり、底板16、前板18、後板20、左右一対の側板22、及び図示しない天板を有している。
【0011】
基板装置42は、基板44、ガイドレール46及び振動装置48を有している。基板44には、剛性及び絶縁性を有する板材上に、プロセッサ50、メモリモジュール52及びコネクタ54を含む複数種の電子部品が搭載されている。
図1に示す例では、基板44の中央に1つのプロセッサ50が搭載され、プロセッサ50の左右両側に、複数のメモリモジュール52が搭載されている。また、プロセッサ50の奥側(前方)及び手前側(後方)に、複数のコネクタ54が搭載されている。筐体14内には、基板44の奥側及び手前側に、インターフェイスボード26A、ストレージ26B、電源ユニット26C等の周辺装置26が搭載されている。基板44と、これらの周辺装置26とは、コネクタ54を介してケーブル28により接続されている。
【0012】
筐体14内の所定位置、
図1に示す例では基板44の奥側(基板44とインターフェイスボード26A及びストレージ26Bの間)にはファン30が配置されている。ファン30の駆動により、筐体14内に矢印F1で示す冷却風を生じさせることができる。筐体14の前板18及び後板20には通気孔32が形成されている。通気孔32を通じて、筐体14の内部と外部とで冷却風を流すことが可能である。
【0013】
ガイドレール46は、筐体14内において、基板44の幅方向の両側で、基板44の側辺44Sに沿って左右一対で配置されている。ガイドレール46のそれぞれは奥行方向に延在されており、基板44を幅方向外側から上下に挟み込むように保持している。ガイドレール46は、上下方向には移動可能に、図示しない保持部材によって保持されている。ガイドレール46の上下方向の移動範囲は、後述するように、基板44が支持位置と離隔位置との間を移動できる範囲である。そして、基板44は、ガイドレール46によって、矢印M1で示すように(奥行方向と同方向に)スライド可能に保持されている。ガイドレール46はガイド部材の一例である。基板44の側辺44Sは、基板44の対向する2辺である。
【0014】
振動装置48は、モータ56及びリンク機構58を有している。モータ56は、筐体14内において基板44の手前側に配置されている。リンク機構58はモータ56の回転軸60と基板44とに接続されており、回転軸60の回転運動を、奥行方向と同方向(矢印M1方向)の併進運動に変換する。モータ56の駆動により、基板44は、ガイドレール46に沿って矢印M1方向に振動する。
【0015】
ガイドレール46には、傾斜部材62Aが取り付けられている。また、モータ56にも傾斜部材62Bが取り付けられている。
【0016】
傾斜部材62Aは、本実施形態では2つ備えられている。2つの傾斜部材62Aは、基板44の下方で、奥側及び手前側に離隔してそれぞれ配置されている。傾斜部材62Aはそれぞれ、幅方向に延在されている。傾斜部材62Aは、
図2に示すように、奥側に向かうに従って上向に傾斜する傾斜面64を備えている。
【0017】
傾斜部材62Bは、モータ56の下方に1つ配置されている。傾斜部材62Bも傾斜部材62Aと同様に、奥側に向かうに従って上向に傾斜する傾斜面64を備えている。
【0018】
筐体14において、基板44の下方には支持部材34及び移動部材36が設けられている。支持部材34は、底板16と柱部材24を含む。移動部材36は、傾斜部材62A、62B及び押圧部材66を含む。
【0019】
柱部材24は、底板16の所定位置からは、上方に向けて複数立設されている。
図1に示す例では9本であり、幅方向及び奥行方向に所定の間隔をあけて、3本×3本で配置されている。
【0020】
押圧部材66は、筐体14の底板16に配置されている。押圧部材66は、傾斜部材62A、62Bのそれぞれの下方に位置する押圧片68A、68Bと、これらの押圧片68A、68Bを連結する連結片70を有している。押圧部材66は、底板16上で、操作により、奥行方向にスライド可能である。この操作は、手動により行うことが可能である。また、押圧部材66が手前側にスライドした状態、及び奥側にスライドした状態で、それぞれ押圧部材66をロックするロック部材を設けてもよい。
【0021】
押圧片68A、68Bのそれぞれには、傾斜面64と平行な第二傾斜面72が形成されている。
図2に示すように、押圧部材66が手前側に位置している状態では、第二傾斜面72がそれぞれ傾斜面64と接触し、傾斜部材62A、68Bを上方に押圧している。基板44及びモータ56がそれぞれ傾斜部材62A、62Bによって上方に押し上げられる。基板44は離隔位置となり、柱部材24の上方で柱部材24から離隔した状態となる。
【0022】
これに対し、
図3に示すように、押圧部材66が奥側に位置している状態では、第二傾斜面72がそれぞれ、傾斜面64から離れる。傾斜部材62A、62Bは基板44及びモータ56をそれぞれ上方に押し上げられないので、下方に移動する。基板44は支持位置となり、柱部材24に支持された状態となる。
【0023】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0024】
図2に示すように、押圧部材66が手前側に位置している状態では、第二傾斜面72が傾斜面64に接触し、押圧部材66が傾斜部材62A、62Bを上方に押圧している。これにより、基板44及びモータ56が押し上げられている。基板44は離隔位置にあり、柱部材24から離隔している。この状態で、モータ56を駆動することにより、基板44を振動させることができる。
【0025】
基板44に搭載されているプロセッサ50は電磁波を放射する。この電磁波が筐体14の外側に漏れると、たとえば、筐体14の外側に配置されて他の電子装置等に対する放射ノイズとなるおそれがある。筐体14の前板18、後板20及び側板22は金属板であり、筐体14の外側への電磁波の漏出は、これらの金属板によって遮蔽される。しかしながら、前板18及び後板20には通気孔32が形成されているので、この通気孔32を通じて電磁波が漏出することがある。特に、プロセッサ50から放射される電磁波が高周波である場合は波長が短いので、通気孔32を通じた電磁波の漏出を確実に抑制するには、通気孔32の開口を小さくすることが求められる。たとえば、電磁波の周波数が30GHzであれば波長は10mmである。したがって、円形の通気孔32であれば、内径を10mmよりも小さくすることが望まれる。しかし、通気孔32の開口断面積を小さくすると、冷却風の通過に対する抵抗が大きくなる。すなわち、筐体14の金属板(前板18及び後板20)によって電磁波の漏出を確実に抑制することと、通気孔32の開口断面積を大きくして冷却風の風量を維持すること、の両立は難しい。
【0026】
本実施形態の基板装置42では、振動装置48の駆動によって、基板44を振動させる。具体的には、モータ56の回転軸60の回転運動を、リンク機構58によって併進運動に変換し、この併進運動を基板44に作用させる。基板44はガイドレール46によって、奥行方向(矢印D方向)にスライド可能に保持されているので、矢印M1で示すように、基板44は奥行方向に振動される。
【0027】
電子機器12では、たとえば
図1に示すように、筐体14の周囲に設置した測定器98により、電磁波の放射ノイズが測定される。そして、測定器98によって測定されたノイズ強度が低下していることが望まれる。
【0028】
本実施形態において、基板44に作用させる振動の振動数は、プロセッサ50からの電磁波の周波数を、ドップラー効果により上下に、すなわち高い周波数と低い周波数に分散させる振動数である。このように電磁波の周波数が上下に分散されることで、電磁波のピーク周波数における強度が低下し、測定器98によって測定される放射ノイズのノイズ強度が低くなる。
【0029】
本開示の技術では、モータ56の回転運動を基板44の併進運動に変換しているので、基板44の振動は単振動として近似できる。この単振動について、振動数f=1.5kHz、振幅D=0.01mの場合、振動する基板44の移動速度の最大値Vは、V=2*π*f*Dより、94.2m/sとなる。
【0030】
プロセッサ50から放射される電磁波の周波数をνとすると、測定器98によって測定される電磁波の周波数ν’は、
【数1】
【0031】
となる。ここで、cは電磁波の速さであり、近似値はc=3.0×10
8m/sである。θは測定器98から見たプロセッサ50の振動する方向の角度である。
図1に示す例では、θ=0(rad)である。
【0032】
以上より、周波数ズレ量Δμ=(μ’-μ)/μを計算すると、Δμ=0.0031‰となる。
【0033】
図5には、電磁波の周波数と、この電磁波による放射ノイズのノイズ強度との関係が、周波数が30GHzの付近で定性的に示されている。
図5における実線は、本実施形態のように基板44を振動させた場合、
図5における二点鎖線は、基板44を振動させない場合である。
【0034】
このグラフから、本実施形態では比較例よりも、周波数30GHzの前後へとノイズ強度が分散しており、ノイズ強度の極大値が小さくなっていることが分かる。
【0035】
本実施形態ではこのように、プロセッサ50からの電磁波の周波数をドップラー効果により分散させる振動数で基板44を振動させることで、電磁波による放射ノイズを低減している。筐体14の外側に配置されて他の電子装置等に対する放射ノイズの影響を抑制できる。
【0036】
なお、基板44に作用させる振動の振動数は、上記したように、プロセッサ50からの電磁波の周波数をドップラー効果により分散させることが可能な範囲である。プロセッサ50から放射される電磁波の周波数が30GHzである場合、基板44の振動の振動数としては、たとえば1.0kHz以上で、3.0kHz以下に設定できる。すなわち、基板44の振動の振動数を1.0kHz以上とすることで、プロセッサ50からの電磁波の周波数をドップラー効果により確実に分散させることができる。また、基板44の振動の振動数を3.0kHz以下とすることで、基板44を過度に高い振動数で振動させずに済むので、振動に伴う基板44の劣化を抑制できる。
【0037】
しかも、本実施形態では、電磁波を前板18及び後板20によって遮蔽するために、前板18及び後板20の通気孔32を小さくする必要がない。すなわち、通気孔32の開口断面積としては、十分な風量が得られるように大きくすることが可能であり、冷却性能を高く維持できる。
【0038】
本実施形態では、押圧部材66を移動させることで、基板44を、離隔位置(
図2参照)と、支持位置(
図3参照)との間で移動させることができる。
【0039】
図2に示すように、押圧部材66が手前側に位置している状態では、基板44が柱部材24から離隔している。したがって、基板44が振動する場合に柱部材24と擦れ合ったり引っ掛かったりせず、スムーズに振動できる。
【0040】
また、
図3に示すように、押圧部材66が奥側に位置している状態では、基板44が支持位置にあり、柱部材24に支持されている。したがって、基板44に力を作用させて行う各種の作業が容易である。たとえば、電子機器12に対する保守作業において、基板44に対し、プロセッサ50及びメモリモジュール52等の各種の電子部品を交換する場合に、基板44が柱部材24に支持されているので不用意に移動せず、交換作業が容易である。また、たとえば、コネクタ54にケーブル28を挿抜する場合に、基板44が柱部材24に支持されているので不用意に移動せず、挿抜作業が容易である。特に、一例としてケーブル28が下方向に挿入されて装着されるタイプのコネクタ54である場合、ケーブル28からコネクタ54及び基板44に作用する下向きの力に対し柱部材24が基板44を支持するので、ケーブル28の挿入作業が容易である。
【0041】
そして、基板44に力を作用させて行う各種の作業が終了した後は、
図2に示すように、押圧部材66を手前側へ移動させることで、基板44を離隔位置とすることができる。基板44はガイドレール46によって奥行方向(矢印D方向)にスライド可能に保持されている状態に戻るので、基板44は振動時に柱部材24と擦れたり引っ掛かったりしない。
【0042】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等については第一実施形態と同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0043】
図4に示すように、第二実施形態の電子機器82では、第一実施形態の押圧部材66に代えて、2つの押圧部材84A、84Bを有している。2つの押圧部材84A、84Bは、奥行方向に離隔して配置されている。奥側の押圧部材84Aは、奥側の傾斜部材62Aに対応している。手間側の押圧部材84Bは、手前側の傾斜部材62Aに対応している。そして、押圧部材84Aと押圧部材84Bとは、筐体14内において幅方向の両側に配置されたワイヤ86で繋がれている。
【0044】
筐体14内には、付勢部材88が設けられている。押圧部材84Bは、付勢部材88によって、手前側に付勢されている。
【0045】
底板16には、幅方向の両側に案内部材90が固定されている。案内部材90には奥行方向に沿って案内溝92が形成されている。案内溝92には、それぞれのワイヤ86の一部が収容される。これにより、ワイヤ86の弛みが抑制される。
【0046】
第二実施形態の電子機器82では、付勢部材88の付勢力を受けて、押圧部材84A、84Bが手前側の位置にある。この状態では、基板44は離隔位置にあり、柱部材24から離隔している。このため、モータ56の駆動によって基板44が振動する場合に、スムーズに振動できる。
【0047】
そして、付勢部材88の付勢力に抗して押圧部材84Aを奥側へ移動させると、ワイヤ86で繋がれた押圧部材84Bも奥側へ移動する。基板44が支持位置へ移動し、柱部材24に支持されるので、基板44に力を作用させて行う各種の作業が容易である。
【0048】
本開示の技術において、基板44を振動させる方向は限定されない。上記各実施形態では、ガイドレール46は、基板44の面内方向で、すなわち基板44の上面又は下面に沿った方向で基板44をスライド可能に保持している。したがって、基板44の振動方向は、基板44の面内方向である。これに代えて、たとえば、基板44の厚み方向(電子機器12の高さ方向)に基板44を振動させるようにしてもよい。特に、プロセッサ50からの電磁波として放射の方向性(指向性)がない場合には、基板44が厚み方向に振動しても、電磁波のピーク強度を分散させることができる。
【0049】
また、電磁波の発生源としては、プロセッサ50に限定されず、他の電子部品の場合もある。さらに、基板44には施された配線パターンが電磁波の発生源となる場合もあり、配線パターンは、基板44において幅方向、奥行方向及び上下方向に形成される。すなわち、配線パターンを発生源とする電磁波の場合は、振動方向が特定されないことがある。
【0050】
上記各実施形態のように、基板44の面内方向で基板44を振動させると、振動に要するスペース(振動時の基板44の移動範囲)が少なくて済み、筐体14内のスペースに無駄を生じさせない。特に、筐体14としての高さに制限がある場合であっても、基板44の振動の振幅を確保できる。
【0051】
また、ファン30によって生成される冷却風は、所定の高さの範囲で流れる。基板44が面内方向で振動すると、冷却風の通過領域からプロセッサ50が上下方向に外れることがないため、冷却風による冷却効果を高く発揮させることができる。
【0052】
上記実施形態では、ガイドレール46は、基板44の側辺44S、すなわち対向する2辺に沿って対で配置されている。ガイドレール46が基板44の幅方向の両側に位置するので、たとえばガイドレール46が基板44の幅方向の片側のみに配置されている構造と比較して、基板44を安定的に保持できる。
【0053】
しかも、ガイドレール46は、基板44を上下に挟み込むように保持している。すなわち、ガイドレール46は基板44を厚み方向に保持しているので、振動時の基板44のがたつきやズレを抑制できる。
【0054】
基板44を振動させる振動装置48として、上記各実施形態では、モータ56及びリンク機構58を有する構造を例示したが、振動装置の具体的構造はこれに限定されない。たとえば、直動型のソレノイドアクチュエータを用いて基板44を振動させてもよい。モータ56を用いると、モータ56の回転数を調整することで、基板44の振動数を容易に変更できる。また、リンク機構58を用いると、モータ56の回転軸60と基板44とをリンク機構58で連結する簡単な構造で、モータ56の回転運動を基板44の併進運動に変換できる。
【0055】
本開示の技術において、電磁波の発生源としての電子部品は、プロセッサ50に限定されない。たとえば、メモリモジュール52等であっても電磁波の発生源になり得る。特にプロセッサ50により発生される電磁波は、波長が10mm以下の場合も多いが、金属板に形成した通気孔32(
図1参照)を小さくすることなく、放射ノイズを抑制できる。金属板の通気孔32を小さくしないので、電子機器12の冷却性能を維持できる。
【0056】
本開示の技術の電子機器12、82では、支持部材34を有している。上記では、支持部材34が底板16と柱部材24と、を有する例を挙げているが、支持部材34の構造はこれに限定されない。たとえば、柱部材24に代えて、ブロック状又は板状の部材で基板44を支持するようにしてもよい。柱部材24を用いると、基板44の部品配置や配線パターンを適切に避けて基板44を支持できる。また、複数の柱部材24を有することで、複数個所で基板44を支持できるので、基板44の撓みを抑制できる。
【0057】
また、柱部材24を底板16から立設しているので、柱部材24の位置が安定する。複数の柱部材24を有する構造であっても、1枚の底板16に複数の柱部材24を固定することで、柱部材24の相対位置を一定に維持できる。また、底板16としては、筐体14の一部を成す底板を用いることで、部品点数の増加を抑制できる。
【0058】
本開示の技術の電子機器12、82では、押圧部材66を有している。上記では、押圧部材66として、傾斜部材62A及び押圧部材66を有している。押圧部材66のスライドにより、傾斜部材62Aを介して基板44を押し上げることができる。
【0059】
傾斜部材62Aの傾斜面64と、押圧部材66の第二傾斜面72とは平行に対面しているので、第二傾斜面72が傾斜面64を押圧することで、スムーズに基板44を押し上げることができる。
【0060】
以上、本願の開示する技術の実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0061】
本明細書は、以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
電子部品が搭載されている基板と、
前記基板をスライド可能に保持するガイド部材と、
前記基板を、前記電子部品からの電磁波の周波数をドップラー効果により分散させる振動数で、前記ガイド部材によるスライドの方向に振動させる振動装置と、
を有する基板装置。
(付記2)
前記ガイド部材は、前記基板の面内方向で前記基板をスライド可能に保持している、付記1に記載の基板装置。
(付記3)
前記ガイド部材は、前記基板の対向する2辺に沿って対で備えられている、付記1又は付記2に記載の基板装置。
(付記4)
前記ガイド部材は、前記基板を厚み方向で保持している、付記1~付記3の何れか一項に記載の基板装置。
(付記5)
前記振動装置は、
モータと、
前記モータの回転運動を併進運動に変換するリンク機構と、
を含む付記1~付記4の何れか一項に記載の基板装置。
(付記6)
前記電子部品はプロセッサを含む、付記1~付記5の何れか一項に記載の基板装置。
(付記7)
電子部品が搭載されている基板と、
前記基板をスライド可能に保持するガイド部材と、
前記基板を、前記電子部品からの電磁波の周波数をドップラー効果により分散させる振動数で、前記ガイド部材によるスライドの方向に振動させる振動装置と、
前記基板を下方から支持可能な支持部材と、
前記基板を前記支持部材に支持された支持位置と、前記支持部材から上方へ離隔した離隔位置と、の間を移動させる移動部材と、
を有する電子機器。
(付記8)
前記支持部材は、
前記基板と平行に配置される底板と、
前記底板から前記基板に向けて立設される柱部材と、
を有する付記7に記載の電子機器。
(付記9)
前記移動部材は、
前記基板及び前記振動装置に設けられ前記底板に対し傾斜する傾斜面を備える傾斜部材と、
前記底板にスライド可能に取り付けられスライドにより前記傾斜面を押圧することで前記傾斜部材を前記底板から離隔する方向に移動させる押圧部材と、
を有する付記8に記載の電子機器。
(付記10)
前記押圧部材は、前記傾斜面と平行に対向する第二傾斜面を有する付記9に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0062】
12 電子機器
14 筐体
16 底板
18 前板
20 後板
22 側板
24 柱部材
26 周辺装置
26A インターフェイスボード
26B ストレージ
26C 電源ユニット
28 ケーブル
30 ファン
32 通気孔
34 支持部材
36 移動部材
42 基板装置
44 基板
44S 側辺
46 ガイドレール(ガイド部材の一例)
48 振動装置
50 プロセッサ(電子部品の一例)
52 メモリモジュール
54 コネクタ
56 モータ
58 リンク機構
60 回転軸
62A 傾斜部材
62B 傾斜部材
64 傾斜面
66 押圧部材
68A 押圧片
70 連結片
72 第二傾斜面
82 電子機器
84A 押圧部材
84B 押圧部材
86 ワイヤ
88 付勢部材
90 案内部材
92 案内溝
98 測定器