(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125814
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】目玉焼き白身様食品および目玉焼き様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20240911BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20240911BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20240911BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20240911BHJP
【FI】
A23J3/00 508
A23J3/16 501
A23L15/00 Z
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033894
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 公祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 紀章
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 由里菜
【テーマコード(参考)】
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LD01
4B041LE10
4B041LH02
4B041LH16
4B041LK14
4B041LK18
4B041LK23
4B041LK25
4B041LP02
4B042AC04
4B042AD37
4B042AE03
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AP10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、目玉焼きの白身部分の代替物を、植物性の原料を用いて提供することである。
【解決手段】粉末状豆類たん白素材、ジェランガム、油脂、不溶性食物繊維、澱粉および水を含む水中油型乳化物生地を調製し、該生地の厚さを25mm以下に成型した後に、マイクロウェーブで加熱することで、目玉焼き白身様の食品素材および、これを用いた目玉焼き様食品が提供できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状豆類たん白素材、ジェランガム、油脂、不溶性食物繊維、澱粉および水を含む水中油型乳化物の生地をマイクロウェーブ加熱する、目玉焼きの白身様食品の製造方法。
【請求項2】
該生地の厚さが25mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
該粉末状豆類たん白素材が粉末状大豆たん白素材である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
該粉末状豆類たん白素材が粉末状大豆たん白素材である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
卵を使用しない、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
粉末状豆類たん白素材、ジェランガム、油脂、不溶性食物繊維、澱粉および水を含む水中油型乳化物であって、25mm以下の厚を有した生地について、生地に卵黄様素材を載せたものを、または生地で卵黄様素材を包埋したものをマイクロウェーブ加熱する、目玉焼き様食品の製造方法。
【請求項7】
該粉末状豆類たん白素材が粉末状大豆たん白素材である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
卵を使用しない、請求項6または請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目玉焼き白身様の食品および目玉焼き様食品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
卵は、世界で広く消費されている食品で、さまざまな料理の用途に欠かせない材料でもある。中でも目玉焼きは割卵した卵を加熱しただけの単純な調理方法であるが、卵の代表的な料理のひとつでもある。
一方、近年は持続的な原料供給や健康等の問題から、動物性原料を忌避する需要がある。乳や畜肉などは大豆等の植物を使用した代替技術が進んでいるが、卵に関する代替技術は多くはない。
特許文献1は、カードランに油脂を添加することで卵白様の食品を得るものである。また特許文献2は大豆蛋白、不溶性繊維及び多糖類から成るスクランブルエッグ様食品を開示している。特許文献3は、大豆の加工品を用いた卵黄の代替技術が開示されている。
マイクロ波は加熱方法として知られており、食品にも広く使用されている。特許文献4にはゲル化剤を含むスラリーをマイクロ波加熱することで、キューブ状の乾燥食品を調製する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-136247号公報
【特許文献2】国際公開2022/163534号パンフレット
【特許文献3】特開平11-308968号公報
【特許文献4】特開2018-102166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
卵白は資源として持続的ではない上に、その物性も未変性卵白蛋白質の液体が加熱により短時間で硬質なゲルへと変化する為、種々の加工を施すに際しては、扱い易い素材ではない。本発明では特に目玉焼きの白身を対象としたが、これを代替する技術はあまり知られていない。特許文献1で示された卵白代替物は、卵白のゲル、例えば茹で卵の白身部分である均一な組織を代替するものである。目玉焼きの白身は、表面が比較的乾燥した不均一な組織であり、均一な組織からなるゲルとは異なる。特許文献2は卵白でなく卵白と卵黄を含んだスクランブルエッグを代替するものであるし、特許文献3は卵黄の代替技術である。そこで本発明の目的は、目玉焼きの白身部分の代替物を、植物性の原料を用いて提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、大豆蛋白とジェランガムを含んだ生地について、その厚みを25mm以下の形態としたものにマイクロウェーブ加熱を行うことで、一度膨張した生地が収縮する際に独特の構造となり、この物性が目玉焼きの白身に極めて類似していることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は
(1)粉末状豆類たん白素材、ジェランガム、油脂、不溶性食物繊維、澱粉および水を含む水中油型乳化物の生地をマイクロウェーブ加熱する、目玉焼きの白身様食品の製造方法。
(2)該生地の厚さが25mm以下である、(1)に記載の製造方法。
(3)該粉末状豆類たん白素材が粉末状大豆たん白素材である、(1)に記載の製造方法。
(4)該粉末状豆類たん白素材が粉末状大豆たん白素材である、(2)に記載の製造方法。
(5)卵を使用しない、(1)乃至(4)の何れかに記載の製造方法。
(6)粉末状豆類たん白素材、ジェランガム、油脂、不溶性食物繊維、澱粉および水を含む水中油型乳化物であって、25mm以下の厚を有した生地について、生地に卵黄様素材を載せたものを、または生地で卵黄様素材を包埋したものをマイクロウェーブ加熱する、目玉焼き様食品の製造方法。
(7)該粉末状豆類たん白素材が粉末状大豆たん白素材である、(6)に記載の製造方法。
(8)卵を使用しない、(6)または(7)に記載の製造方法。
に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱前の生地を任意に成型可能な、目玉焼きの白身を代替する食品を、植物性の原料で調製することができる。これにより、例えば植物性の卵黄代替物と組み合わせることで、植物性の目玉焼き様食品を得ることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(粉末状豆類たん白素材)
本発明の粉末状豆類たん白素材とは、豆類を原料とした蛋白質を主体とする食品素材であって粉末状のものである。豆類とは、小豆,緑豆,ササゲ,金時豆,花豆,インゲンマメ,バタービーン,ソラマメ,エンドウ,ヒヨコマメ,イナゴマメ,ナタマメ,ルパン豆,レンズマメ,大豆,落花生等が例示できる。好ましくは大豆またはエンドウであり、最も好ましくは大豆である。
典型的な例として大豆の場合の、粉末状大豆たん白素材を説明する。大豆原料として脱脂大豆フレークを用い、これを適量の水中に分散させて水抽出を行い、繊維質を主体とする不溶性画分いわゆるオカラを除去して、抽出大豆たん白(脱脂豆乳)を得る。
該抽出大豆たん白を塩酸等の酸によりpH4.5前後に調整し、蛋白質を等電点沈澱させて酸不溶性画分(カード)を回収し、これを再度適量の水に分散させてカードスラリーを得、水酸化ナトリウム等のアルカリにより中和することで中和スラリーである分離大豆たん白を得る。これらの抽出大豆たん白や分離大豆たん白の溶液を高温加熱処理装置によって加熱殺菌した後、該殺菌液をスプレードライヤー等により噴霧乾燥することによって、粉末状大豆たん白素材を得ることができる。
ただし、上記の製造法に限定されるものではなく、大豆蛋白質の純度が大豆原料から高められる方法であればよい。また脱脂大豆からエタノールや酸によりホエーを除去して得られる濃縮大豆たん白も粉末状大豆たん白素材に含まれる。これらのうち、分離大豆たん白は、蛋白質含量が通常固形分中90質量%程度と高い点において、抽出大豆たん白よりもよく利用されており、本発明への使用にも好ましい。
粉末状豆類たん白素材の使用量は、後述する生地中2~10質量%が好ましく、3~7質量%が更に好ましい。
【0009】
(固形分中の蛋白質含量)
本粉末状豆類たん白素材は、固形分中の粗蛋白質含量が80質量%以上が好ましい。85質量%以上又は90質量%以上が更に好ましい。該粗蛋白質含量が高いほど、白身様食品としての物性が、白身に近いものとなる。
粗蛋白質含量はケルダール法により測定する。具体的には、蛋白素材重量に対して、ケルダール法により測定した窒素の質量を、乾燥物中の粗蛋白質含量として「質量%」で表す。なお、窒素換算係数は6.25とする。基本的に、小数点以下第2桁の数値を四捨五入して求められる。
【0010】
(TCA可溶化率)
本粉末状豆類たん白素材、特に分離大豆たん素材は、TCA可溶化率が20%以下であるものが好ましい。15%以下が更に好ましく、12%以下が最も好ましい。また3%以上であるものが好ましく、5%以上が更に好ましい。尚、TCA可溶率とは、粉末状豆類たん白素材を蛋白質含量として1.0質量%となるように水に分散させ十分撹拌した分散液について、全蛋白質に対する0.22Mトリクロロ酢酸に溶解する蛋白質の割合をケルダール法により測定し、質量%として算出したものである。本発明で使用する分離大豆たん白素材のTCAは20%以下が好ましく、5%以上が更に好ましい。
【0011】
(ジェランガム)
本発明のジェランガムとは、グルコースなどを栄養源に、微生物Sphingomonas elodeaが菌体外に産出する多糖類の1種であって、脱アシル工程を経ていないネイティブ型ジェランガムと、脱アシル工程を経た脱アシル型ジェランガムがある。ネイティブ型ジェランガムは、HAジェランガムとも呼ばれ、市販品ではケルコゲルLT-100、ケルコゲルHM(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)などが挙げられる。また、脱アシル型ジェランガムは、LAジェランガムとも呼ばれ、市販品ではケルコゲル(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)などが挙げられる。本発明では、ゲル性の強い脱アシル型ジェランガムに比べ、ネイティブ型ジェランガムが好ましい。
ジェランガムの添加量は、後述する生地中に0.5~5質量%添加することが好ましく、1~3質量%が更に好ましい。
【0012】
(澱粉)
本発明には、物性の維持のために種々の澱粉類を用いる。タピオカ,馬鈴薯,甘藷等の芋類、コーン,小麦,大麦等の穀類、エンドウ,緑豆等の豆類等の種々の原料の澱粉を、そのまま、あるいは物理処理または化学処理により加工した澱粉として用いることができる。中でもエンドウ澱粉やタピオカ澱粉が有効であり好ましい。
澱粉の添加量は、後述する生地中に1~15質量%添加することが好ましく、3~8質量%添加が更に好ましい。
【0013】
(不溶性食物繊維)
本発明には、物性の維持のために種々の食物繊維を用いる。ここに用いる食物繊維とは、水に不溶性の食物繊維であり、竹繊維,オート麦ファイバー,小麦ファイバー,シトラスファイバー等をあげることができる。中でも竹繊維およびオーツ麦ファイバーが有効であり好ましい。
食物繊維の添加量は、後述する生地中に0.1~6質量%添加することが好ましく、0.2~3質量%添加が更に好ましい。
【0014】
(油脂)
本発明に用いる油脂には、各種の油脂を使用することができる。具体的には、大豆油,菜種油,米油,コーン油,パーム油及びこれらの分別油,硬化油,エステル交換油をあげることができ、これらを適宜選択し、使用できる。好ましくは常温で液体の油脂である。油脂の添加量は、後述する生地中に2~20質量%添加することが好ましく、5~15質量%添加が更に好ましく、8~12質量%添加が最も好ましい。
【0015】
(他の素材)
各種の調味料,ゲル化剤,色素,香料等の素材も、本発明に影響を与えない範囲で、適宜使用することもできる。また、鶏卵等の卵を使用しないものが好ましく、動物性原料を使用しないものが更に好ましい。
【0016】
(マイクロウェーブ加熱)
本発明は、マイクロウェーブ加熱を行うことが特徴である。マイクロウェーブ加熱とは、電磁波により水分子等の振動を増大させることで加熱を行う装置であり、マイクロ波、電子レンジとも呼ばれる。本発明で用いるマイクロウェーブ加熱は、種々の装置を用いることができるが、例えば家庭用の電子レンジで作製することも可能である。従って、出力も適宜選択でき、家庭用であれば例えば150W~1,000Wのものが、業務用であれば例えば1,000~3,000Wのものが挙げられ、工業生産の場合は更に強力なものが選択できるが、本発明が実施できれば、これらに限定はされない。
【0017】
(目玉焼き白身様食品の生地調製)
生地は、以下の様に調製することができる。粉末状豆類たん白素材、例えば粉末分離大豆たん白素材に、ジェランガム,油脂,不溶性食物繊維,澱粉および水を、前述の混合比にて混合し攪拌することで、水中油型乳化物を調製する。
混合にはミキサー,フードプロセッサー,ステファンミキサーまたはサイレントカッター等を用いることができる。強いシェアをかけることで油脂の乳化粒子が細かくなり、好ましい。また、添加する順序は上記の順に拘らず、最終的に調製する生地に、必要なものが含まれていれば良い。
【0018】
(成型)
成型は二つの態様がある。一つ目は、目玉焼きの黄身に相当する卵黄様素材を包埋しない、白身様食品のみを得る態様である。
耐熱性を有した板や皿等の上に、前述した生地を成型する。この際、生地厚を25mm以下にすることが好ましい。生地厚が厚いと目玉焼き白身様の物性を得ることが難しい場合がある。また、生地厚は20mm以下が好ましく、15mm以下が更に好ましい。生地厚が6mm未満の場合は、単体では目玉焼きの白身様の食感は失われることがある。この場合、複数の生地加熱物を積層することで、白身様の食感を得ることができる。
生地の厚み以外の大きさ、すなわち底面の形状については、加熱の特性から縦横比が近いものが好ましく、円形が最も好ましい。縦横比が1:3以上、更には1:5以上等、1:1から大きく離れると、マイクロウェーブで全体を加熱する際にムラができることがある。
大きさ形状は、用いるマイクロウェーブの発生装置によっても異なるが、例えば1kw程度の家庭用の電子レンジを使用する場合は、直径65mm,厚み10mmの円柱形が例示できる。60×100mm,厚み10mmおよび30×30mm,厚み20mmの直方体等でも調製は可能である。
【0019】
(目玉焼き様食品)
本発明は目玉焼きの白身様食品であるが、後述する黄身に相当する素材を併せることで、目玉焼き様食品とすることができる。黄身に相当する素材は、加熱後の白身様食品に載せても良いし、加熱前の生地の上に置いて、同時に加熱することもできる。これらの方法で調製した目玉焼き様食品は、片面焼き(sunny-side up)の目玉焼きに近い外観を持つものである。
【0020】
(卵黄様素材)
ここで卵黄様素材についても説明する。卵黄様素材とは、本発明の目玉焼き白身様食品に組み合わせることで、目玉焼き様食品とするものである。黄色味を有した種々のゲル等を使用することができる。
例えば、通常のゲル化剤で均一な組織を調製することが可能である。この際、熱凝固性を持つカードランやメチルセルロース等のゲル、または、熱可塑性を持つ寒天やカラギーナン等のゲルなど、目的に応じて使い分けることが可能である。
目玉焼きや茹で卵の卵黄は、ホクホクとした独自の食感を有することが多いが、本発明で調製する目玉焼き様の食品も、この食感を模倣することが可能であり、好ましい。例えば、粉末状豆類たん白素材100質量部、水70~120質量部、油脂および必要により色素等を含んだ水中油型乳化物に、水溶性大豆多糖類を添加して加熱することで、ホクホクした食感を有した卵黄様素材を得ることが可能となる。また、前述した特許文献3の素材または、白餡やマッシュポテトを用いて、同様の食感を付与することもできる。
【0021】
これらの卵黄様素材を本発明に用いる際は、予め調製したものを成型する。通常の卵黄の大きさでもある、20ml前後のものを選択することができる。形状は、通常の目玉焼きを想定するのであれば、直径:厚み=2:1~5:1程度の、扁平の球状または円柱状であることが好ましい。用途目的により、卵黄様素材の大きさや形状は任意に設定できる。卵黄が熱可塑性のゲル等であれば、直径:厚み=1:1~2:1のものも可能である。黄身様食品素材と白身様食品素材は質量比として、好ましくは5:95~30:70、更に好ましくは10:90~20:80が例示できる。鶏卵では再現できない様な物を想定して、敢えて異なる大きさや形状の卵黄様素材や白身様食品素材を用いることもできる。
【0022】
(卵黄様素材を包埋する成型)
他の態様は、卵黄様素材を生地で包埋し、包埋した生地に対してマイクロウェーブ加熱を行うケースである。この方法で調製した目玉焼き様食品は、両面焼き(turn over)の目玉焼きに近い外観を持つものであるが、全面を包埋しないことで、片面焼き的な形状を持たせることも可能である。
前態様と同様の組成、大きさ、形状の卵黄様素材について、これを包餡機等を用いて生地で包埋する。包餡機には、チビロボCN001,火星人(レオン自動機社製)、スモールロボセブン(コバード社製)等が例示できる。生地の厚みは25mm以下が好ましく、5mm以上が好ましい。20mm以下が更に好ましい。卵黄様素材を包埋した生地全体にマイクロウェーブ加熱を行うことで、目玉焼き様の食品を得ることができる。
【0023】
(マイクロウェーブ加熱処理)
成型した生地をマイクロウェーブ加熱する。装置の出力や時間は試料に応じて適宜選択できるが、加熱により前述の生地が垂直方向に膨張し、加熱終了後に再び収縮することが必要となる。この工程によりゲル化した生地は、やや乾燥し硬化した表面組織と、ゲル的な物性を保った中心~下部組織から成る、不均一な組織が形成される。この不均一な組織が白身様の食感を与える。加熱が弱過ぎると膨張しないことがあり、加熱が強すぎると、焦げが生じたり、過度に乾燥し物性が変化することがある。
膨張する大きさは、生地の組成、初期の生地厚、マイクロウェーブ加熱の強度にもよるが、例えば、最大の膨張時に厚さが30mm~200mm程度となり、加熱後に収縮した生地の厚さが3mm~30mm程度、好ましくは4~20mmが例示できる。
【0024】
(用途)
本発明の目玉焼きの白身様食品は、単体で白身の代替として、サラダ等の具材や各種の料理のトッピング等に利用できる。また、別途調製した卵黄加熱物や卵黄代替物と組み合わせることで、目玉焼き様食品として利用することができる。
目玉焼き様食品の具体的な使用例としては、そのまま目玉焼きの代替物として食べることもできるし、トースト,サンドイッチ,ハンバーガー,パスタ,カレーライス,ハヤシライス,炒飯等の、各種の料理に包みまたは添えて使用することもできる。
【実施例0025】
以下に実施例を記載することで本発明を説明する。文中の数値は特に断りのない限りは、全て質量部または質量%を表す。
【0026】
○他たん白素材との比較(実施例1~5,比較例1~4)
ネイティブジェランガム,粉末状豆類たん白素材,澱粉,オート麦ファイバー,水,菜種油,を表1の配合で加え、フードプロセッサー(ロボクープ社製)で3分間攪拌し、続けて食塩を加えてさらに撹拌し、生地とした。
これら生地をφ65mm,10mm厚の円柱形に成型し、電子レンジ(形式名NE-BS605、パナソニック社製)で500Wで80秒間加熱した。加熱後のゲルを官能評価に供した。
尚、試料には以下のものを用いた。分離大豆たん白A(フジプロ748,TCA可溶化率10%,不二製油社製),分離大豆たん白B(フジプロFR,TCA可溶化率3%,不二製油社製),えんどうたん白(NUTRALYS F85M,ロケットジャパン社製),グルテン(Aグル-G,グリコ栄養食品社製),エンドウ澱粉(スターチEH,日澱化学社製),アセチル化リン酸架橋でん粉(タピオカ加工澱粉・PB-108,日澱化学社製),ネイティブジェランガム(ケルコゲルLT100,CPケルコ社製),オート麦ファイバー(ビタセルHF-200F,レッテンマイヤージャパン社製),竹繊維(VITACEL BAF90,レッテンマイヤージャパン社製)菜種油(不二製油製)。
【0027】
(官能評価)
熟練したパネラー5名にて官能評価を行った。目玉焼き白身様の、独特なゲル感の有無を基に食感を総合的に評価し、合議により判定した。以下の様に評価を行い、○~△評価を合格とした。
○:白身様で積極的に代替可能
△:白身様として代替は可能
×:白身様ではなく代替不可
【0028】
結果を表1下段に示した。大豆たん白を使用した実施例1,2、エンドウたん白を使用した実施例3は白身様の食品が得られたが、他のたん白素材を使用した場合や、繊維と澱粉を同時に使用しない場合は、白身様素材を得ることができなかった。TCA可溶化率の高い分離大豆たん白素材Aが最良だった。また澱粉種による差は見られなかった(実施例4,5)
【0029】
【0030】
○他のゲル化剤との比較(実施例6,比較例5~8)
ネイティブジェランガムを他のゲル化剤と置換し、表2の配合にて実施例1と同様に生地を調製し、電子レンジにて加熱することで白身様食品を調製し評価した。尚、試料には以下のものを用いた。脱アシルジェランガム(ケルコゲルHM,CPケルコ社製),カラギーナン(カラギニンCSK-1,三栄源エフ・エフ・アイ社製),カードラン(カードランNS,三菱商事ライスサイエンス社製),キサンタンガム+ローカストビーンガム(アイスターM,DSP五協フード&ケミカル社製),メチルセルロース(メトローズ,信越化学工業社製)。
【0031】
結果を表2下段に示した。脱アシルジェランガムはネイティブジェランガムよりやや劣るものだった。他のゲル化剤では、生地の調製ができなかった。
【0032】
【0033】
○生地厚の検討(実施例7~11)
実施例1で使用した生地について、表3の形状に成型した後、実施例1と同様に、電子レンジにて加熱することで白身様食品を調製し評価した。尚、実施例9は、実施例8で調製した白身様素材を加熱後に3枚積層し、官能評価を行った。
結果を表3下段に示した。生地が厚いと均一なゲル様の素材となり、目玉焼き白身様の不均一な組織とはやや異なる食感が得られることが確認できた(実施例11)。生地が薄いと歯ごたえに欠け食感は減少するが、複数を積層することで、白身様の食感が得られることが判った(実施例9)。
【0034】
【0035】
○目玉焼き様食品の調製(試作例1)
(黄身様食品生地の調製)
表4の配合に従って、分離大豆たん白B,竹繊維(VITACEL BAF90,レッテンマイヤージャパン社製),アミノ酸調味料(スーパー04,富士食品工業社製),塩,水をフードプロセッサーで攪拌し、ここに菜種油およびカロテン(リケロカロテンNDC-50,理研ビタミン社製)を加え乳化物とした。水溶性大豆多糖類(ソヤファイブS-DN,不二製油社製)を添加し攪拌した後、20gの団子状に成型することで、黄身様食品生地を調製した。
【0036】
(白身様食品生地と包埋物の調製)
実施例1と同様に白身様食品生地を調製した。但し配合は表5に従い、食塩は最後に投入した。前段落で調製した20g団子状の黄身様食品生地を、白身様食品生地80gに包埋した。包埋には自動包餡機(チビロボCN001,レオン自動機社製)を用いた。
包埋した生地はコンベクションオーブン(SCC-WE101,ラショナル社製)で蒸し加熱(85~90℃,芯温80℃達温)を行い、放冷後に冷凍した。常温で自然解凍後、電子レンジ加熱(500W,80秒)を行い、目玉焼き様食品を調製した。片面焼き(sunny-side up)の目玉焼きに近い外観を有した食品を得ることができた。
【0037】
【0038】
【0039】
○目玉焼き様食品の調製(試作例2)
(黄身様食品素材の調製)
表6の配合に従って、白餡(凍結品),食塩,カロテン(リケロカロテンNDC-50,理研ビタミン社製),アミノ酸調味料(スーパー04,富士食品工業社製),酵母エキス(ハイマックスSA,富士食品工業社製)をフードプロセッサーで攪拌し、黄身様食品生地を調製した。これをφ5cm×1cmの円柱状に成型し、コンベクションオーブン(SCC-WE101,ラショナル社製)で蒸し加熱(85~90℃,芯温80℃達温)を行い、黄身様食品素材を調製した。
【0040】
【0041】
(目玉焼き様食品の調製)
試作例1と同様の白身様食品生地を調製した。この生地をφ10cm×1cmの円柱状に成型し、ここに前段落で調製した黄身様食品素材を載せた。電子レンジ加熱(500W,80秒)を行い、目玉焼き様食品を調製した。両面焼き(turn over)の目玉焼きに近い外観を有した食品を得ることができた。