(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125820
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】軟磁性金属粒子、圧粉磁心および磁性部品
(51)【国際特許分類】
H01F 1/24 20060101AFI20240911BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20240911BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240911BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20240911BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20240911BHJP
B22F 1/08 20220101ALN20240911BHJP
【FI】
H01F1/24
H01F27/255
B22F1/00 Y
B22F1/16 100
B22F1/102 100
B22F1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033902
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中澤 遼馬
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友祐
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕之
【テーマコード(参考)】
4K018
5E041
【Fターム(参考)】
4K018AA26
4K018BB07
4K018BC28
4K018BC29
4K018BD01
4K018KA43
5E041AA11
5E041BC01
5E041BC08
5E041CA02
5E041NN05
5E041NN06
(57)【要約】
【課題】絶縁膜の耐荷重性が高い圧粉磁心を提供できる軟磁性金属粒子を提供する。
【解決手段】コア粒子と、コア粒子の表面に形成される絶縁膜と、を有する軟磁性金属粒子である。絶縁膜が第1膜および第2膜を有する。第2膜が第1膜に接し、かつ、第1膜の外側に位置する。第1膜がSiおよびOを含み、第2膜がSi、TiおよびOを含む。第2膜におけるSiとTiとの合計含有量に対するTiの含有割合が1.0mol%以上30mol%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子と、前記コア粒子の表面に形成される絶縁膜と、を有し、
前記絶縁膜が第1膜および第2膜を有し、
前記第2膜が前記第1膜に接し、かつ、前記第1膜の外側に位置し、
前記第1膜がSiおよびOを含み、前記第2膜がSi、TiおよびOを含み、
前記第2膜におけるSiとTiとの合計含有量に対するTiの含有割合が1.0mol%以上30mol%以下である軟磁性金属粒子。
【請求項2】
前記第1膜の膜厚をd1、前記第2膜の膜厚をd2として、d2/d1が0.30以上9.00以下である請求項1に記載の軟磁性金属粒子。
【請求項3】
前記第1膜の膜厚をd1、前記第2膜の膜厚をd2として、d1+d2が30nm以上200nm以下である請求項1または2に記載の軟磁性金属粒子。
【請求項4】
前記コア粒子が、ビッカース硬度が700以上である金属を含む請求項1または2に記載の軟磁性金属粒子。
【請求項5】
請求項1または2に記載の軟磁性金属粒子を含む圧粉磁心。
【請求項6】
請求項1または2に記載の軟磁性金属粒子を含む磁性部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軟磁性金属粒子、圧粉磁心および磁性部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、偏平粉末のアスペクト比を制御し、かつ、偏平粉末を被覆する絶縁被覆がチタンアルコキシド類を含む重合物からなることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、複数の種類の酸化膜により被覆された軟磁性合金粒子を含む磁性材料に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/033825号
【特許文献2】特開2018-11043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一実施形態は、絶縁膜の耐荷重性が高い圧粉磁心を提供できる軟磁性金属粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る軟磁性金属粒子は、
コア粒子と、前記コア粒子の表面に形成される絶縁膜と、を有し、
前記絶縁膜が第1膜および第2膜を有し、
前記第2膜が前記第1膜に接し、かつ、前記第1膜の外側に位置し、
前記第1膜がSiおよびOを含み、前記第2膜がSi、TiおよびOを含み、
前記第2膜におけるSiとTiとの合計含有量に対するTiの含有割合が1.0mol%以上30mol%以下である。
【0007】
上記軟磁性金属粒子において、前記第1膜の膜厚をd1、前記第2膜の膜厚をd2として、d2/d1が0.30以上9.00以下であってもよい。
【0008】
上記いずれかの軟磁性金属粒子において、前記第1膜の膜厚をd1、前記第2膜の膜厚をd2として、d1+d2が30nm以上200nm以下であってもよい。
【0009】
上記いずれかの軟磁性金属粒子において、前記コア粒子が、ビッカース硬度が700以上である金属を含んでもよい。
【0010】
本開示の一実施形態に係る圧粉磁心は上記いずれかの軟磁性金属粒子を含む。
【0011】
本開示の一実施形態に係る磁性部品は上記いずれかの軟磁性金属粒子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る圧粉磁心の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下に説明する本開示の実施形態は、本開示を説明するための例示である。本開示の実施形態に係る各種構成要素、例えば数値、形状、材料、製造工程などは、技術的に問題が生じない範囲内で改変したり変更したりすることができる。
【0014】
また、本開示の図面に表された形状等は、実際の形状等とは必ずしも一致しない。説明のために形状等を改変している場合があるためである。
【0015】
<軟磁性金属粒子>
本開示の一実施形態に係る軟磁性金属粒子は
図1に示すように、コア粒子11と、コア粒子11の表面11aに形成される絶縁膜13と、を有する。絶縁膜13が第1膜13aおよび第2膜13bを有する。第2膜13bが第1膜13aに接し、かつ、第1膜13aの外側に位置する。
【0016】
第1膜13aがSiおよびOを含み、第2膜13bがSi、TiおよびOを含む。そして、第2膜13bにおけるSiとTiとの合計含有量に対するTiの含有割合(以下、Ti/(Si+Ti)と表記する場合がある)が1.0mol%以上30mol%以下である。
【0017】
第1膜13aがどのようにSiおよびOを含むかについては特に制限はない。例えば第1膜13aがSiの酸化物を含んでもよい。具体的には、第1膜13aはSi-O系酸化物(シリコン酸化物)を含んでもよい。また、Si-O系酸化物の種類には特に制限はない。例えば、SiO2などのSiの酸化物の他、Siおよびその他の元素を含む複合酸化物などであってもよい。その他の元素としては、Ba、Ca、Mg、Al、Nb、Ta、 Zr、Ni、Mn、Zn等が挙げられる。
【0018】
第2膜13bがSiの酸化物およびTiを含んでもよい。具体的には、第1膜13bがSi-O系酸化物(シリコン酸化物)およびTiを含んでもよい。
【0019】
Si-O系酸化物の種類には特に制限はない。例えば、SiO2などのSiの酸化物の他、Siおよびその他の元素を含む複合酸化物などであってもよい。
【0020】
第2膜13bにおいてTiはどのようにして含まれてもよい。例えば、第2膜13bにTiの単体が点在していてもよい。また、第2膜13bにTiを含む化合物が含まれていてもよい。Tiを含む化合物の種類には特に制限はない。例えばチタンアルコキシドやチタネート(Tiを中心金属とする金属錯体)などのTiを含む有機金属化合物が挙げられる。また、Tiを含む化合物がTiの単純酸化物であってもよく、Tiと他の元素との複合酸化物であってもよい。第2膜13bにSiおよびTiの複合酸化物が含まれていてもよい。
【0021】
絶縁膜はコア粒子11の表面11aの全体を被覆していなくてもよく、コア粒子11の表面11a全体の90%以上を被覆していればよい。また、第2膜13bは第1膜13aの表面の全体を被覆していなくてもよく、第1膜13aの表面全体の90%以上を被覆していればよい。
【0022】
第1膜13aがSiおよびO以外の元素を含んでいてもよい。SiおよびO以外の元素の含有量には特に制限はない。例えば、SiおよびO以外の元素の含有量が合計で0.1mol%以下であってもよい。
【0023】
第2膜13bがTiに加えて、Ti以外の金属元素を含んでいてもよい。例えば、酸化物が絶縁性のあるBa、Ca、Mg、Al、Nb、Ta、Zr、Ni、Mn、Zn、Cr等が挙げられる。その中でもCa、Mg、Zr、Ni、Mn、Znは比較的、絶縁膜に導入しやすい。Ti以外の金属元素の含有量には特に制限はない。例えば、Tiの含有量に対する含有割合が合計で1mol%以下であってもよい。さらに、SiおよびO以外の非金属元素を含んでいてもよい。例えば、SiおよびO以外の非金属元素の含有量が合計で1mol%以下であってもよい。
【0024】
軟磁性金属粒子における第1膜13aの膜厚をd1、第2膜13bの膜厚をd2とする。d1、d2の厚さは特に制限はない。d1は5nm以上150nm以下であってもよく、10nm以上110nm以下であってもよく、10nm以上75nm以下であってもよい。d2は5nm以上150nm以下であってもよく、10nm以上110nm以下であってもよく、25nm以上90nm以下であってもよい。
【0025】
d2/d1が0.11以上9.00以下であってもよく、0.30以上9.00以下であってもよく、0.33以上9.00以下であってもよく、0.67以上1.22以下であってもよく、0.82以上1.22以下であってもよい。d2/d1が上記の範囲内であることにより、初透磁率μiを維持しながら絶縁膜13の耐荷重性を向上しやすくなる。
【0026】
d1+d2が10nm以上300nm以下であってもよく、30nm以上200nm以下であってもよく、30nm以上150nm以下であってもよい。d1+d2が上記の範囲内であることにより、初透磁率μiを維持しながら絶縁膜13の耐荷重性を向上しやすくなる。d1+d2が大きいほど絶縁膜13の耐荷重性は向上するが初透磁率μiは低下する傾向にある。
【0027】
第1膜13aおよび第2膜13bが結晶性を示してもよい。各膜が結晶性を示すか否かを確認する方法には特に制限はない。たとえば、高分解能電子顕微鏡を用いて第1膜13aおよび第2膜13bを観察し、第1膜13aおよび第2膜13bに周期配列に起因する格子縞が確認される場合には第1膜13aおよび第2膜13bが結晶性を示すと判断できる。
【0028】
第1膜13aと第2膜13bとを区別する方法には特に制限はない。例えば、軟磁性金属粒子の断面をSEM-EDS、STEM-EDS、TEM-EDS等で観察する場合には、明るさやコントラストの違いにより区別してもよく、組成分析の結果を用いて組成の違いにより区別してもよい。
【0029】
また、上記の周期配列に起因する格子縞から算出される格子定数により区別してもよい。さらに、第1膜13aの格子定数が第2膜13bの格子定数よりも小さくてもよい。
【0030】
本開示の一実施形態に係る軟磁性金属粒子の耐荷重性が向上するメカニズムは明確ではない。しかし、第1膜13aと第2膜13bとの間で組成、特にTiの含有割合が異なることにより第1膜13aと第2膜13bとの間に圧縮応力が発生し、当該圧縮応力の発生により耐荷重性が向上するとも考えられる。
【0031】
絶縁膜13はコア粒子11の表面に直接的または間接的に形成される。すなわち、コア粒子11の表面11aと絶縁膜13とが接していてもよく、コア粒子11の表面11aと絶縁膜13との間に絶縁膜13以外の膜が介在していてもよい。
【0032】
上記の絶縁膜13以外の膜の材質には特に制限はない。上記の絶縁膜13以外の膜の材質は、例えば、コア粒子11中の元素およびSiを含む酸化物でもよく、あらかじめ形成しておいたリン酸化合物であってもよい。コア粒子11の表面11aと絶縁膜13との間に絶縁膜13以外の膜が介在する場合における絶縁膜13以外の膜の膜厚は20nm以下であってもよい。
【0033】
絶縁膜13が第2膜13bの外側に第1膜13aおよび第2膜13b以外の膜を有していてもよい。
【0034】
上記の第1膜13aおよび第2膜13b以外の膜の材質には特に制限はない。上記の第1膜13aおよび第2膜13b以外の膜の膜厚は20nm以下であってもよい。
【0035】
コア粒子11は磁性を示す材料を含んでいれば特に制限はない。コア粒子11がFeを含んでもよい。コア粒子11がFeを主成分として含む場合には、飽和磁化が高くなりやすい。コア粒子11がFeおよびSiを主成分として含む場合には、初透磁率μiが高くなりやすい。コア粒子11がFeおよびNiを主成分として含む場合には、初透磁率μiが高くなりやすい。コア粒子11がFeおよびCoを主成分として含む場合には、初透磁率μiが高くなりやすい。
【0036】
なお、「主成分として含む」とは、主成分として含まれる元素のそれぞれの含有比率が1重量%以上であり、主成分として含まれる元素の合計含有比率が40重量%以上であり、かつ、主成分として含まれる元素以外の元素のそれぞれの含有比率が主成分として含まれる元素のうち含有比率が最も低い元素の含有比率よりも低いことを指す。
【0037】
コア粒子11がFeを主成分として含む場合には、Feの含有比率が40重量%以上であり、かつ、Fe以外の各元素の含有比率がFeの含有比率よりも低い。なお、コア粒子11における主成分以外の成分の種類には特に制限はない。主成分(Fe)以外の成分の種類としては、例えば、Cr、Mn、Ni、Co、Al、Si、Zr、V、B、C、Nb、Ta、Cuが挙げられる。
【0038】
コア粒子11がFeおよびSiを主成分として含む場合には、Feの含有比率が1重量%以上であり、Siの含有比率が1重量%以上であり、FeおよびSiの合計含有比率が40重量%以上であり、かつ、FeおよびSi以外の各元素の含有比率がFeとSiのうち含有比率が低い元素の含有比率よりも低い。なお、コア粒子11における主成分以外の成分の種類には特に制限はない。主成分(FeおよびSi)以外の成分の種類としては、例えば、Cr、Mn、Ni、Co、Al、Zr、V、B、C、Nb、Ta、Cuが挙げられる。
【0039】
コア粒子11がFe、または、FeおよびSiを主成分として含む場合には、コア粒子11におけるFeとSiとの含有比率には特に制限はない。重量比でSi/Fe=0/100~20/80であってもよい。重量比でSi/Fe=0/100~10/90である場合に、飽和磁化が高くなりやすい。
【0040】
コア粒子11がFeおよびNiを主成分として含む場合には、Feの含有比率が1重量%以上であり、Niの含有比率が1重量%以上であり、FeおよびNiの合計含有比率が40重量%以上であり、かつ、FeおよびNi以外の各元素の含有比率がFeとNiのうち含有比率が低い元素の含有比率よりも低い。主成分(FeおよびNi)以外の成分の種類としては、例えば、Cr、Mn、Co、Al、Si、Zr、V、B、C、Nb、Ta、Cuが挙げられる。
【0041】
コア粒子11がFe、または、FeおよびNiを主成分として含む場合には、コア粒子11におけるFeとNiとの含有比率には特に制限はない。重量比でNi/Fe=0/100~75/25であってもよい。
【0042】
コア粒子11がFeおよびCoを主成分として含む場合には、Feの含有比率が1重量%以上であり、Coの含有比率が1重量%以上であり、FeおよびCoの合計含有比率が40重量%以上であり、かつ、FeおよびCo以外の各元素の含有比率がFeとCoのうち含有比率が低い元素の含有比率よりも低い。なお、コア粒子11における主成分以外の成分の種類には特に制限はない。主成分(FeおよびCo)以外の成分の種類としては、例えば、Cr、Mn、Ni、Al、Si、Zr、V、B、C、Nb、Ta、Cuが挙げられる。
【0043】
コア粒子11がFe、または、FeおよびNiを主成分として含む場合には、コア粒子11におけるFeとNiとの含有比率には特に制限はない。重量比でNi/Fe=0/100~75/25であってもよい。
【0044】
また、コア粒子11が、ビッカース硬度が700以上である金属を含んでいてもよい。コア粒子11が硬い金属を含む場合には、絶縁膜13が加圧により破損しやすくなる。そのため、コア粒子11が硬い金属を含む場合には、コア粒子11が軟らかい金属を含む場合と比較して、上記の第1膜13aおよび第2膜13bを有することによる耐荷重性向上の効果が明確に表れやすい。
【0045】
ビッカース硬度の確認方法については特に制限はない。例えば、コア粒子11に含まれる金属と同組成の金属試料を準備して当該金属試料のビッカース硬度を測定することにより、コア粒子11に含まれる金属のビッカース硬度を確認することができる。
【0046】
本開示の軟磁性合金粒子の用途には特に制限はない。例えば、磁性部品が挙げられる。磁性部品としては、例えば圧粉磁心が挙げられる。
【0047】
<圧粉磁心>
本開示の一実施形態に係る圧粉磁心は上記の軟磁性金属粒子を含む。本開示の一実施形態に係る圧粉磁心1は
図1に示すように、軟磁性金属粒子同士の間に粒界相12を有する。粒界相12に含まれる化合物の種類には特に制限はない。例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、および/または、Si-O系酸化物であってもよい。また、粒界相12が空隙を含んでいてもよい。粒界相12に含まれていてもよいシリコーン樹脂としては、例えばメチル系のシリコーン樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばクレゾールノボラックなどが挙げられる。イミド樹脂としては、例えばビスマレイミドなどが挙げられる。
【0048】
なお、後述する熱処理により、粒界相12に含まれるシリコーン樹脂の一部または全部がSiO2等のSi-O系酸化物に変性する場合がある。
【0049】
圧粉磁心1におけるコア粒子11の含有量、および、粒界相12に含まれる化合物の含有量には特に制限はない。圧粉磁心1全体に占めるコア粒子11の含有量は90重量%~99.9重量%であってもよい。圧粉磁心1全体に占める粒界相12に含まれる化合物の含有量は0.1重量%~10重量%であってもよい。
【0050】
第2膜13bと同様に、粒界相12にもTiが含まれていてもよい。
【0051】
圧粉磁心1の断面を観察する方法には特に制限はない。例えば、SEMまたはTEMを用いて適切な倍率で圧粉磁心1を観察してもよい。さらに、EDS分析を行うことで、圧粉磁心1の各箇所における組成、特にTiの含有量およびSiの含有量を測定することができる。そして、第2膜13bにおけるTi/(Si+Ti)を測定することができる。
【0052】
<製造方法>
本開示の一実施形態に係る軟磁性金属粒子および圧粉磁心1の製造方法を以下に示すが、軟磁性金属粒子および圧粉磁心1の製造方法は下記の方法に限定されない。
【0053】
まず、コア粒子11を準備する。コア粒子11として市販の合金粒子を準備してもよく、コア粒子11を作製してもよい。コア粒子11の作製方法には特に制限はないが、例えばガスアトマイズ法、水アトマイズ法などが挙げられる。コア粒子11の粒子径および円形度には特に制限はない。粒子径の中央値(D50)は1μm~100μmである場合には初透磁率μiが高くなりやすい。コア粒子11の円形度は、例えば、0.5以上1以下であってもよく、0.7以上1以下であってもよく、0.8以上1以下であってもよい。
【0054】
次に、コア粒子11の表面11aに第1膜13aを形成するためのコーティングを行う。コーティング方法には特に制限はないが、例えばアルコキシシランを含むコーティング溶液(以下、Siコーティング溶液と記載する場合がある)をコア粒子11へ塗布する方法が挙げられる。Siコーティング溶液をコア粒子11へ塗布する方法には特に制限はなく、例えば噴霧拡散による方法が挙げられる。
【0055】
Siコーティング溶液におけるアルコキシシランの濃度および溶媒の種類にも特に制限はない。アルコキシシランの濃度は目的とする第1膜13aの膜厚d1等により決定すればよい。
【0056】
アルコキシシランとしては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランが例示される。モノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチル(フェノキシ)シラン等が例示される。ジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン等が例示される。トリアルコキシシランとしては、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が例示される。テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が例示される。アルコキシシランとしては、1種類のアルコキシシランを用いてもよく、2種類以上のアルコキシシランを併用してもよい。
【0057】
溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコールなどが例示される。
【0058】
また、噴霧拡散時において、コア粒子11全量に対するアルコキシシランの割合は0.1重量%~5重量%であってもよい。また、アルコキシシランが多いほど第1膜13aの膜厚d1が大きくなる傾向にある。
【0059】
噴霧拡散の条件には特に制限はないが、50℃~90℃で熱処理を行いながら噴霧拡散を行うことにより、第1膜13aを形成するゾルゲル反応が促進される
【0060】
Siコーティング溶液を噴霧拡散した後のコア粒子11を乾燥させて溶媒を除去した後に、200℃~400℃で1時間~10時間加熱することにより、ゾルゲル反応が進行してSiおよびOを含む第1膜13aが形成される。このときの加熱温度が高く加熱時間が長いほど第1膜13aの密度が高くなる傾向にある。また、コア粒子11を加熱する前に、コア粒子11をメッシュの篩に通して整粒してもよい。
【0061】
次に、コア粒子11の第1膜13aの表面に第2膜13aを形成するためのコーティングを行う。コーティング方法には特に制限はないが、例えば、アルコキシシランおよびTiを含むコーティング溶液(以下、Si-Tiコーティング溶液と記載する場合がある)をコア粒子11へ塗布する方法が例示される。Si-Tiコーティング溶液をコア粒子11へ塗布する方法には特に制限はなく、例えば噴霧拡散による方法が挙げられる。Si-Tiコーティング溶液にどのような状態でTiが含まれるかについては特に制限はない。例えば、チタンアルコキシドとしてTiが含まれていてもよく、チタネートとしてTiが含まれていてもよい。チタネートまたはチタンアルコキシドとしてTiが含まれ、かつ、後述する圧粉体の熱処理を行う場合には、熱処理によりチタネートまたはチタンアルコキシドが分解する。以下、Si-Tiコーティング溶液にチタンアルコキシドを添加する場合について説明する。
【0062】
Si-Tiコーティング溶液におけるアルコキシシランの濃度、チタンアルコキシドの濃度、および溶媒の種類にも特に制限はない。アルコキシシランの濃度およびチタンアルコキシドの濃度は目的とするTi/(Si+Ti)の大きさ、目的とする第2膜13bの膜厚d2等により決定すればよい。
【0063】
ただし、Ti/(Si+Ti)が30%を上回る第2膜13bを形成するためのSi-Tiコーティング溶液を作製する場合には、Si-Tiコーティング溶液が白濁しやすい。すなわち、Si-Tiコーティング溶液が不均一になりやすい。このようなSi-Tiコーティング溶液を用いて第1膜13aの表面に第2膜13bを形成する場合には第2膜13bが塊状の不連続膜となりやすい。その結果、第2膜13bが耐荷重性の向上に寄与しなくなり軟磁性金属粒子の耐荷重性が低下する。
【0064】
アルコキシシランとしては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランが例示される。モノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチル(フェノキシ)シラン等が例示される。ジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン等が例示される。トリアルコキシシランとしては、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が例示される。テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が例示される。アルコキシシランとしては、1種類のアルコキシシランを用いてもよく、2種類以上のアルコキシシランを併用してもよい。
【0065】
チタンアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ-n-プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド等が例示される。チタンアルコキシドとしては、1種類のチタンアルコキシドを用いてもよく、2種類以上のチタンアルコキシドを併用してもよい。入手容易性の点から、チタンアルコキシドがチタンテトラエトキシドまたはチタンテトラ-n-ブトキシドであってもよい。
【0066】
溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコールなどが例示される。
【0067】
また、噴霧拡散時において、コア粒子11全量に対するアルコキシシランの割合は0.1重量%~5重量%であってもよい。また、アルコキシシランが多いほど第2膜13bの膜厚d2が厚くなる傾向にある。
【0068】
噴霧拡散の条件には特に制限はないが、50℃~90℃で熱処理を行いながら噴霧拡散を行うことにより、第2膜13bを形成するゾルゲル反応が促進される。
【0069】
Si-Tiコーティング溶液を噴霧拡散した後のコア粒子11を乾燥させて溶媒を除去した後に、200℃~400℃で1時間~10時間加熱することにより、ゾルゲル反応が進行してSi、TiおよびOを含む第2膜13bが形成される。このときの加熱温度が高く加熱時間が長いほど第2膜13bの密度が高くなる傾向にある。
【0070】
コーティング溶液にチタネートを添加する場合は、上記のチタンアルコキシドをチタネートに置き換える点以外は、コーティング溶液にチタンアルコキシドを添加する場合に説明した条件や方法が適用可能である。チタネートとしては、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンジエタノールアミネート等が例示される。チタネートとしては、1種類のチタネートを用いてもよく、2種類以上のチタネートを併用してもよい。
【0071】
次に、後述する熱処理前の圧粉体における粒界相12が樹脂を含む場合には、樹脂溶液を作製する。樹脂溶液には、上記したシリコーン樹脂、エポキシ樹脂および/またはイミド樹脂の他、硬化剤を添加してもよい。硬化剤の種類には特に制限はなく、例えばエピクロルヒドリンなどが挙げられる。また、樹脂溶液の溶媒についても特に制限はないが、揮発性の溶媒であってもよい。例えば、アセトン、エタノール等を用いることができる。また、樹脂溶液全体を100重量%とした場合における樹脂および硬化剤の合計濃度は10~80重量%としてもよい。
【0072】
さらに、粒界相12がTiを含む場合には、この時点で樹脂溶液にTiを添加する。樹脂溶液にどのような状態でTiが含まれるかについては特に制限はない。例えば、チタンアルコキシドとしてTiが含まれていてもよく、チタネートとしてTiが含まれていてもよい。チタンアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ-n-プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド等が例示される。チタンアルコキシドとしては、1種類のチタンアルコキシドを用いてもよく、2種類以上のチタンアルコキシドを併用してもよい。入手容易性の点から、チタンアルコキシドがチタンテトラエトキシドまたはチタンテトラ-n-ブトキシドであってもよい。
【0073】
チタネートとしては、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンジエタノールアミネート等が例示される。チタネートとしては、1種類のチタネートを用いてもよく、2種類以上のチタネートを併用してもよい。
【0074】
次に、絶縁膜13を形成したコア粒子11、すなわち軟磁性金属粒子と、樹脂溶液とを混合する。そして、樹脂溶液の溶媒を揮発させて顆粒を得る。得られた顆粒はそのまま金型に充填してもよいが、整粒してから金型に充填してもよい。整粒する場合の整粒方法には特に制限はなく、例えば、目開き45~500μmのメッシュを用いてもよい。
【0075】
次に得られた顆粒を所定の形状の金型に充填し、加圧して圧粉体を得る。加圧時の圧力(成形圧力)には特に制限はなく、例えば500~1500MPaとすることができる。成形圧力が高いほど最終的に得られる圧粉磁心1の初透磁率μiが高くなる。
【0076】
作製した圧粉体を圧粉磁心としてもよい。また、作製した圧粉体に対して熱処理を行い、当該熱処理により作製した焼結体を圧粉磁心としてもよい。熱処理の条件に特に制限はない。樹脂としてシリコーン樹脂を用いる場合にはシリコーン樹脂が焼結する条件で熱処理を行ってもよい。例えば400℃~1000℃で0.1時間~10時間、熱処理を行ってもよい。また、熱処理時の雰囲気にも特に制限はなく、大気中で熱処理をしてもよく、窒素雰囲気中で熱処理してもよい。
【0077】
圧粉体にチタネートまたはチタンアルコキシドが含まれる場合には、上記の熱処理によりチタネートまたはチタンアルコキシドの一部または全部が分解してもよい。特にチタネートに関しては700℃以上1000℃以下での熱処理により、その全部を分解させることができる。すなわち、700℃以上1000℃以下での熱処理により、焼結体にチタネートが含まれないようにすることができる。
【0078】
以上、本実施形態に係る圧粉磁心およびその製造方法について説明したが、本開示の圧粉磁心およびその製造方法は上記の実施形態に限定されない。
【0079】
また、本開示の圧粉磁心の用途にも特に制限はない。例えば、インダクタ、リアクトル、チョークコイル、トランス等の磁性部品が挙げられる。本開示の一実施形態に係る磁性部品は上記の圧粉磁心を含む。
【0080】
また、本開示の軟磁性合金粒子は、例えば薄膜インダクタ、磁気ヘッドなどの磁性部品にも好適に用いることができる。さらに、当該軟磁性合金粒子を用いた磁性部品は電子機器に好適に用いることができる。
【実施例0081】
以下、本開示を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本開示は、これら実施例に限定されない。
【0082】
<実験1>
<軟磁性合金粉末の作製>
金属磁性粒子(コア粒子)として、Fe-Si-Cr-B-C系の合金粒子(エプソンアトミックス社製KUAMET 6B2)を準備した。当該合金粒子は粒子径の中央値(D50)が23μmであり、非晶質からなる構造を有していた。円形度は約0.90であった。また、当該Fe-Si-Cr-B-C系の合金のビッカース硬度は700以上であった。
【0083】
次に、第1膜の形成に用いられるSiコーティング溶液、および、第2膜の形成に用いられるSi-Tiコーティング溶液を作製した。
【0084】
Siコーティング溶液は、前記金属磁性粒子の全量を100重量部として15重量部のエタノールと、トリメトキシシランと、2.0重量部の純水と、を混合して作製した。トリメトキシシランの量は、最終的に得られる第1膜の膜厚d1が表1~表3に示す値となるようにした。
【0085】
Si-Tiコーティング溶液は、前記金属磁性粒子の全量を100重量部として15重量部のエタノールと、トリメトキシシランおよびチタンテトラ-n-ブトキシドと、2.0重量部の純水と、を混合して作製した。トリメトキシシランとチタンテトラ-n-ブトキシドとの割合は、最終的に得られる第2膜におけるTi/(Si+Ti)が表1~表3に示す値となるようにした。また、トリメトキシシランとチタンテトラ-n-ブトキシドとの合計量は、最終的に得られる第2膜の膜厚d2が表1~表3に示す値となるようにした。
【0086】
この時点で、比較例3、4のSi-Tiコーティング溶液は白濁し、不均一であった。その他のSi-Tiコーティング溶液は透明であり、均一であった。
【0087】
前記金属磁性粒子および前記Siコーティング溶液を混合し、噴霧撹拌しながら熱処理を行った。熱処理温度は80℃、熱処理時間は1時間とした。さらに、熱処理後に乾燥することで第1膜を有する金属磁性粒子を得た。具体的には、得られた金属磁性粒子を140メッシュの篩に通した後に熱処理を行った。乾燥時の熱処理温度は300℃、熱処理時間は5時間とした。
【0088】
次に、第1膜を有する金属磁性粒子および前記Si-Tiコーティング溶液を混合し、噴霧撹拌しながら熱処理を行った。熱処理温度は80℃、熱処理時間は1時間とした。さらに、熱処理後に乾燥することで第1膜および第2膜を有する金属磁性粒子を得た。具体的には、得られた金属磁性粒子を140メッシュの篩に通した後に熱処理を行った。乾燥時の熱処理温度は300℃、熱処理時間は5時間とした。
【0089】
比較例1では第2膜を形成しなかった。比較例5では第1膜を形成せず、金属磁性粒子に直接、第2膜を形成した。
【0090】
<最大耐荷重の測定>
得られた各実施例および比較例の軟磁性金属粒子をそれぞれ5g秤量し、三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ-UX MCP-HT800の測定冶具に投入した。その後、直径20mmの測定電極に1Vの電圧を印加し、かつ、軟磁性金属粒子へ加える荷重を増加させながら体積抵抗率を測定した。体積抵抗率が測定下限値である1.0×103Ωとなる時点での荷重を算出し、その荷重から1MPを減じた荷重を最大耐荷重とした。例えば、荷重31MPaで体積抵抗率が1.0×103Ωとなったサンプルについては、30MPaが最大耐荷重であると判断した。最大耐荷重が30.0MPa以上である場合に絶縁膜の耐荷重性が良好であるとし、35.0MPa以上、40.0MPa以上、45.0MPa以上となる場合に絶縁膜の耐荷重性がさらに良好であるとし、50.0MPa以上となる場合に絶縁膜の耐荷重性が特に良好であるとした。結果を表1~表3に示す。
【0091】
<トロイダルコアの作製>
初透磁率μiの測定および軟磁性金属粒子の微細構造の観察に必要な数のトロイダルコアを作製した。
【0092】
次に、エポキシ樹脂、硬化剤およびアセトンを混合して樹脂溶液を作製した。エポキシ樹脂としてはクレゾールノボラックを用いた。硬化剤としてはエピクロルヒドリンを用いた。エポキシ樹脂、硬化剤およびアセトンの重量比が10:10:80となるように混合した。
【0093】
得られた各実施例および比較例の軟磁性金属粒子を100重量部として、上記の樹脂溶液を10重量部添加し、混合した。次に乾燥させてアセトンを揮発させて顆粒を得た。次に、顆粒を42メッシュの篩に通して整粒した。得られた顆粒を50℃のホットプレート上で0.5時間、乾燥させて造粒粉を作製した。
【0094】
造粒粉100重量部に対してステアリン酸亜鉛を0.1重量部添加し、金型成形を行った。造粒粉の充填量を5gとした。成形圧は、最終的に得られるトロイダル圧粉磁心の密度が6.4g/cm3程度となるように適宜、調整した。金型の形状は外径Φ17.5mm、内径Φ10.0mm、厚さ4.8mmのトロイダル形状とした。
【0095】
得られたトロイダルコアに対して200℃で1時間、熱処理を行い、トロイダル圧粉磁心を得た。最終的に得られる圧粉磁心全体を100重量%として、軟磁性金属粒子が98重量%程度となるようにした。
【0096】
<絶縁膜の構造等の確認>
各実施例および比較例のトロイダルコアをTEM-EDS観察することによって、軟磁性金属粒子を被覆している絶縁膜が存在していることを確認した。
【0097】
各実施例および比較例2~4の軟磁性金属粒子では絶縁膜が第1膜および第2膜を有し、第2膜が第1膜に接し、かつ、第2膜が第1膜の外側に位置することを確認した。さらに、第1膜が実質的にSiおよびOのみを含み、第2膜が実質的にSi、TiおよびOのみを含むことを確認した。
【0098】
各実施例および比較例2~4の軟磁性金属粒子では第1膜および第2膜がいずれも結晶性を示すことを確認した。具体的には、高分解能電子顕微鏡を用いて軟磁性金属粒子を観察し、周期配列に起因する格子縞が第1膜および第2膜のいずれにも存在することを確認した。
【0099】
比較例1の軟磁性金属粒子では絶縁膜が実質的にSiおよびOのみを含む単層膜であることを確認した。比較例5の軟磁性金属粒子では絶縁膜が実質的にSi、TiおよびOのみを含む単層膜であることを確認した。
【0100】
第2膜におけるTi/(Si+Ti)をEDSで定量した。第2膜において測定箇所を10箇所設定し、各測定箇所におけるTi/(Si+Ti)を平均した結果を表1~表3に示す。
【0101】
第1膜の膜厚および第2膜の膜厚はTEM観察によって計測した。軟磁性金属粒子の表面に測定点を設定した。そして、当該測定点から絶縁膜の方向に垂線を引き、当該垂線のうち第1膜にある部分の長さを当該測定点における第1膜の厚みとした。当該垂線のうち第2膜にある部分の長さを当該測定点における第2膜の厚みとした。測定点を10点設定して各測定点について第1膜の厚みを測定し平均した値をd1とした。各測定点について第2膜の厚みを測定し平均した値をd2とした。さらに、d1+d2およびd2/d1を算出した。結果を表1~表3に示す。
【0102】
また、各実施例および比較例において、圧粉磁心に含まれる各軟磁性金属粒子のd1、d2が概ね同一であることを確認した。
【0103】
<初透磁率μiの測定>
トロイダルコアの初透磁率μiは、トロイダル圧粉磁心にワイヤを巻数50ターンで巻きつけ、LCRメーター(HP社LCR428A)により測定した。初透磁率μiは30.0以上を良好とし、35.0以上をさらに良好とし、40.0以上を特に良好とした。
【0104】
トロイダルコアの密度は得られたトロイダルコアの寸法および重量から算出した。全ての実施例および比較例において5.5g/cm3程度であることを確認した。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表1は第2膜のTi/(Si+Ti)を変化させた実施例および比較例を示す。第2膜のTi/(Si+Ti)が1.0以上30以下である各実施例は最大耐荷重および初透磁率μiが良好であった。すなわち、絶縁膜の耐荷重性および初透磁率μiが良好であった。
【0109】
絶縁膜の膜厚は実施例と同一であるがTiを含む第2膜が存在しない比較例1、および、Tiを含む第2膜が存在するが第2膜のTi/(Si+Ti)が小さすぎる比較例2は各実施例と比較して最大耐荷重が低下した。すなわち、絶縁膜の耐荷重性が低下した。
【0110】
第2膜のTi/(Si+Ti)が大きすぎる比較例3、4は各実施例および比較例1、2と比較して最大耐荷重が低下した。すなわち、絶縁膜の耐荷重性が低下した。これは、Si-Tiコーティング溶液が白濁し、不均一であったために第2膜が不連続となり、第2膜の存在が絶縁膜の耐荷重性に実質的に寄与しなかったためであると考えられる。
【0111】
表2は、表1の実施例3について、絶縁膜の膜厚を変化させずにd2/d1を変化させた実施例および比較例を示す。d2/d1が0.30以上9.00以下である各実施例は絶縁膜の耐荷重性がさらに良好であった。
【0112】
絶縁膜が実質的にSi、TiおよびOのみを含む単層膜である比較例5は絶縁膜の耐荷重性が劣る結果となった。
【0113】
表3は、表2の実施例12についてd2/d1を変化させずに絶縁膜の膜厚を変化させた実施例を示す。d1+d2が30nm以上200nm以下である各実施例は、d1+d2が200nmを上回る実施例24と比較して初透磁率μiが良好であった。
【0114】
<実験2>
実験1におけるチタンテトラ-n-ブトキシドをチタンアセチルアセトネートに置き換えた点以外は同等の実験を行った。結果を表4~6に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
表4~表6より、チタンアセチルアセトネートを用いた場合でもチタンテトラ-n-ブトキシドを用いた場合と同様の結果が得られた。