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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125831
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20240911BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240911BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240911BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20240911BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20240911BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B32B5/28
H05K1/03 610T
H05K3/18 A
B32B27/02
B32B27/04
H01L23/14 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033921
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 文美
(72)【発明者】
【氏名】田中 永吉
【テーマコード(参考)】
4F100
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DH01
4F100DH01B
4F100EH71
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ67
4F100EJ67B
4F100EJ82
4F100EJ86
4F100GB43
4F100JG01
4F100JG01C
4F100JG04
4F100JG04B
5E343AA02
5E343AA16
5E343AA17
5E343AA18
5E343BB22
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB28
5E343BB38
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5E343BB45
5E343BB48
5E343BB49
5E343BB52
5E343BB71
5E343DD43
5E343ER18
5E343ER32
5E343FF16
5E343GG06
5E343GG08
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】ニードルボイドの数が少なく、めっき潜り込みが抑制された硬化物を得ることができるプリプレグを用いた回路基板の製造方法の提供。
【解決手段】(I)シート状繊維基材、及び該シート状繊維基材に含浸された樹脂組成物を含むプリプレグを、基材上に積層する工程、(II)プリプレグを硬化し、絶縁層を形成する工程、及び(V)導体層を形成する工程を含む、半導体チップパッケージの製造方法であって、シート状繊維基材が、表面処理剤で表面処理されており、表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が、0.1質量%以上0.3質量%以下である、回路基板の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)シート状繊維基材、及び該シート状繊維基材に含浸された樹脂組成物を含むプリプレグを、基材上に積層する工程、
(II)プリプレグを硬化し、絶縁層を形成する工程、及び
(V)導体層を形成する工程を含む、半導体チップパッケージの製造方法であって、
シート状繊維基材が、表面処理剤で表面処理されており、表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が、0.1質量%以上0.3質量%以下である、回路基板の製造方法。
【請求項2】
さらに、工程(II)終了後に、(III)絶縁層に穴あけする工程を含む、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
さらに、工程(II)終了後に、(IV)絶縁層をデスミア処理する工程を含む、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
シート状繊維基材のフィラメント収束本数が、120本以下である、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
シート状繊維基材の厚みが、20μm以下である、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項6】
表面処理剤が、シランカップリング剤を含む、請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
シランカップリング剤が、アミノシラン系シランカップリング剤を含む、請求項6に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板の絶縁層として用いられ得る絶縁材料は、例えば、樹脂組成物をガラスクロス等のシート状繊維基材に含浸させたプリプレグが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-185221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年より半導体チップパッケージの高機能化に伴い、半導体チップパッケージの大型化、薄型化が求められている。このため、半導体チップパッケージに含まれる絶縁層も薄型化、微細配線化、高密度化が求められている。
【0005】
回路基板が大型化、薄型化がなされると、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層に係る応力が増大するので半導体チップパッケージに反りが発生することがある。このため、絶縁層の形成において、樹脂組成物をシート状繊維基材に含浸させたプリプレグを用いることがある。
【0006】
しかしながら、プリプレグで絶縁層を形成した後に該絶縁層上に導体層を形成するにあたって、本発明者らは、シート状繊維基材の繊維(フィラメント)に沿って存在する針状の空隙にめっき液等が染み込むことで、絶縁信頼性が低下する傾向にあることを見出した。シート状繊維基材の繊維に沿って存在する針状の空隙にめっき液等が染み込む現象をめっき潜り込みということがある。また、針状の空隙をニードルボイドということがある。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、ニードルボイドの数が少なく、めっき潜り込みが抑制された硬化物を得ることができるプリプレグを用いた回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、表面処理剤で表面処理され、所定のカーボン量となるシート状繊維基材を用いることで本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
[1] (I)シート状繊維基材、及び該シート状繊維基材に含浸された樹脂組成物を含むプリプレグを、基材上に積層する工程、
(II)プリプレグを硬化し、絶縁層を形成する工程、及び
(V)導体層を形成する工程を含む、半導体チップパッケージの製造方法であって、
シート状繊維基材が、表面処理剤で表面処理されており、表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が、0.1質量%以上0.3質量%以下である、回路基板の製造方法。
[2] さらに、工程(II)終了後に、(III)絶縁層に穴あけする工程を含む、[1]に記載の回路基板の製造方法。
[3] さらに、工程(II)終了後に、(IV)絶縁層をデスミア処理する工程を含む、[1]又は[2]に記載の回路基板の製造方法。
[4] シート状繊維基材のフィラメント収束本数が、120本以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[5] シート状繊維基材の厚みが、100μm以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[6] 表面処理剤が、シランカップリング剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
[7] シランカップリング剤が、アミノシラン系シランカップリング剤を含む、[6]に記載の回路基板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニードルボイドの数が少なく、めっき潜り込みが抑制された硬化物を得ることができるプリプレグを用いた回路基板の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0012】
本発明の回路基板の製造方法について詳細に説明する前に、本発明の回路基板の製造方法において使用されるプリプレグについて説明する。
【0013】
[プリプレグ]
プリプレグは、シート状繊維基材、及び該シート状繊維基材に含浸された樹脂組成物を含み、シート状繊維基材が、表面処理剤で表面処理されており、表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が、0.1質量%以上0.3質量%以下である。
【0014】
本発明の製造方法で製造される回路基板が備える絶縁層は、プリプレグを硬化させることで形成することができる。
【0015】
(シート状繊維基材)
プリプレグに用いるシート状繊維基材は、ニードルボイドの数が少なく、めっき潜り込みを抑制する観点から、表面処理剤で表面処理されており、表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が、0.1質量%以上0.3質量%以下である。
【0016】
本発明者らは、表面処理剤のカーボン含有量が多すぎると、シート状繊維基材の繊維同士が密着して樹脂組成物が含浸しにくい部分が生じてニードルボイドが発生し、表面処理剤のカーボン含有量が少ないと、シート状繊維基材における繊維と樹脂組成物との親和性(密着性)が低下して繊維表面近傍にニードルボイドが生じることを知見した。本発明は、シート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が、0.1質量%以上0.3質量%以下となるように、表面処理剤でシート状繊維基材を表面処理することで、ニードルボイドの発生が抑制される。また、ニードルボイドにめっき液等が染み込むが抑制され、その結果めっき潜り込みを抑制することが可能になる。
【0017】
表面処理剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、、チタネート系カップリング剤等のシランカップリング剤;アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物等のシラン化合物等が挙げられる。表面処理剤は、本発明の効果を顕著に得る観点から、シランカップリング剤が好ましく、アミノシラン系カップリング剤がより好ましい。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0018】
表面処理剤は市販品を用いてもよい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0019】
表面処理剤による表面処理の程度は、表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量によって評価することができる。表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量は、ニードルボイドの数が少なく、めっき潜り込み性を抑制する観点から、0.1質量%以上であり、好ましくは0.1質量%を超え、より好ましくは0.13質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、0.18質量%以上である。上限は0.3質量%以下であり、好ましくは0.28質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下、さらに好ましくは0.23質量%以下である。
【0020】
表面処理されたシート状繊維基材の単位表面積当たりのカーボン含有量は、カーボンアナライザーを用いて表面処理されたシート状繊維基材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボンアナライザーとしては、堀場製作所社製「EMA-321V2」等を使用することができる。カーボンアナライザーによる測定において、シート状繊維基材は燃焼しないので、カーボンアナライザーを用いて表面処理剤に由来するカーボン量を算出することができる。表面処理されたシート状繊維基材の単位表面積当たりのカーボン含有量は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0021】
シート状繊維基材は、例えば、特許第7183344号の段落0057に記載の方法により表面処理剤で表面処理をすることができる。
【0022】
以下、本明細書では、特に断りがない限り、シート状繊維基材は表面処理剤で表面処理されているものとする。
【0023】
プリプレグに用いるシート状繊維基材の材料は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。
【0024】
シート状繊維基材のフィラメント収束本数は、ニードルボイドを抑制する観点および樹脂組成物を含浸させやすくする観点から、好ましくは120本以下、より好ましくは110以下、さらに好ましくは100以下である。下限は特に制限はないが、好ましくは20本以上、より好ましくは30本以上、さらに好ましくは40本以上である。
【0025】
シート状繊維基材の径糸密度及び緯糸密度は、樹脂組成物を含浸させやすくする観点から、それぞれ独立に、好ましくは50本/25mm以上、より好ましくは55本/25mm以上、更に好ましくは60本/25mm以上、特に好ましくは70本/25mm以上であり、好ましくは150本/25mm以下、より好ましくは130本/25mm以下、更に好ましくは120本/25mm以下である。
【0026】
シート状繊維基材として用いられ得るガラスクロスの具体例としては、日東紡績社製の「スタイルWEA1027」(経糸密度74本/25mm、緯糸密度74本/25mm、布質量19g/m、厚さ20μm)、日東紡績社製「スタイルWEA1017」(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布質量13g/m、厚さ17μm)、日東紡績社製「スタイルWEA1010(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布質量10g/m、厚さ13μm)、日東紡績社製「スタイルWEA1006」(経糸密度105本/25mm、緯糸密度110本/25mm、布質量8.5g/m、厚さ12μm)、旭シュエーベル社製の「スタイル1027MS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量20g/m、厚さ19μm)、旭シュエーベル社製の「スタイル1037MS」(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布重量24g/m、厚さ28μm)、有沢製作所社製の「1078」(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布重量48g/m、厚さ43μm)、有沢製作所社製の「1037NS」(経糸密度72本/25mm、緯糸密度69本/25mm、布重量23g/m、厚さ21μm)、有沢製作所社製の「1027NS」(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量19.5g/m、厚さ16μm)、有沢製作所社製の「1015NS」(経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布重量17.5g/m、厚さ15μm)、有沢製作所社製の「1000NS」(経糸密度85本/25mm、緯糸密度85本/25mm、布重量11g/m、厚さ10μm)等が挙げられる。また液晶ポリマー不織布の具体例としては、クラレ社製の、芳香族ポリエステル不織布のメルトブロー法による「ベクルス」(目付け量6g/m~15g/m)や「ベクトラン」等が挙げられる。
【0027】
シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下である。なお、半導体チップパッケージ基板等の回路基板に含まれる絶縁層も薄型化、微細配線化、高密度化が要求されているが、回路基板の薄型化の観点から、好ましくは20μm以下であり、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上である。シート状繊維基材が20μm以下となる薄型化が要求される回路基板においては配線ピッチが狭くなりニードルボイドの課題も顕在化し易くなるため、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0028】
(樹脂組成物)
シート状繊維基材に含浸される樹脂組成物は、その硬化物が十分な硬度と絶縁性を有するものを用いることができる。このような樹脂組成物としては、(a)硬化性樹脂を含む組成物が挙げられる。また、樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(b)無機充填材、(c)熱可塑性樹脂、(d)硬化促進剤、(e)ラジカル重合性化合物、(f)有機充填材、(g)その他の添加剤、及び(h)溶剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0029】
-(a)硬化性樹脂-
(a)硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用され得る硬化性樹脂を用いることができる。(a)硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、及び光硬化性樹脂のいずれを用いてもよく、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0030】
(a)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂等が挙げられる。(a)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。以下、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂のように、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる樹脂を、まとめて「硬化剤」ということがある。樹脂組成物としては、その硬化物が十分な硬度と絶縁性を有するものとする観点から、(a)成分として、エポキシ樹脂及び硬化剤を含むことが好ましい。
【0031】
(a)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
樹脂組成物は、(a)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、熱硬化性樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0033】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0034】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0035】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0036】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0038】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0039】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR-991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
熱硬化性樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:20、より好ましくは1:0.3~1:10、特に好ましくは1:0.5~1:5である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、支持体付き樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、支持体付き樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0041】
熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分な硬化体をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0042】
熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0043】
熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化体を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0044】
本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、樹脂組成物中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。
【0045】
熱硬化性樹脂としての活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
【0046】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0047】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0048】
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0049】
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」、「HPB-8151-62T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0050】
熱硬化性樹脂としてのフェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
【0051】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0052】
熱硬化性樹脂としてのベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0053】
熱硬化性樹脂としてのシアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」、「PT30S」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)、「BADCy」(ビスフェノールAジシアネート)等が挙げられる。
【0054】
熱硬化性樹脂としてのカルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216、V-05(カルボジイミド基当量:216)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0055】
熱硬化性樹脂としてのアミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0056】
熱硬化性樹脂としての酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0057】
熱硬化性樹脂としての硬化剤としては、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、及び酸無水物系樹脂のいずれかが好ましく、活性エステル系樹脂、フェノール系樹脂、及びナフトール系樹脂のいずれかが好ましく、活性エステル系樹脂、及びフェノール系樹脂から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0058】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.05~1:3がより好ましく、1:0.1~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂と硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、柔軟性に優れる硬化体を得ることができる。
【0059】
熱硬化性樹脂としての硬化剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0060】
-(b)無機充填材-
樹脂組成物は、(b)無機充填材を含有していてもよい。無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウム、シリカが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(b)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(b)成分の市販品としては、例えば、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」、「BA-1」などが挙げられる。
【0062】
(b)成分の比表面積としては、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0063】
(b)成分の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0064】
(b)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(b)成分の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0065】
(b)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤が好ましく、アミノシラン系カップリング剤がより好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0066】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0067】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%に対して、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることが好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることが好ましい。
【0068】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0069】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0070】
(b)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0071】
-(c)熱可塑性樹脂-
樹脂組成物は、(c)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。この(c)成分としての(c)熱可塑性樹脂には、上述した(a)~(b)成分に該当するものは含めない。(c)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
(c)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上、さらに好ましくは18000以上である。上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下である。(c)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、(c)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0073】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX7800BH40」(フルオレン骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0074】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0075】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0076】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0077】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0078】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0079】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0080】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0081】
中でも、(c)熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が好ましい。中でも、熱可塑性樹脂としては、重量平均分子量が40,000以上のフェノキシ樹脂が好ましい。
【0082】
(c)熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0083】
-(d)硬化促進剤-
樹脂組成物は、(d)硬化促進剤を含有していてもよい。この(d)成分としての(d)硬化促進剤には、上述した(a)~(c)成分に該当するものは含めない。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0085】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0086】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0087】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0088】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0089】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0090】
(d)硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下である。
【0091】
-(e)ラジカル重合性化合物-
樹脂組成物は、任意成分として、(e)ラジカル重合性化合物を含有していてもよい。この(e)成分としての(e)ラジカル重合性化合物には、上述した(a)~(d)成分に該当するものは含めない。(e)成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
(e)ラジカル重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物であり得る。ラジカル重合性不飽和基としては、ラジカル重合可能である限り特に限定されるものではないが、末端又は内部に炭素-炭素二重結合を有するエチレン性不飽和基が好ましく、具体的に、アリル基、3-シクロヘキセニル基等の不飽和脂肪族基;p-ビニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、スチリル基等の不飽和脂肪族基含有芳香族基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレオイル基(イミド化した場合マレイミド基)、フマロイル基等のα,β-不飽和カルボニル基等であり得る。(e)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性不飽和基を1個以上有することが好ましく、2個以上有することがより好ましい。
【0093】
(e)その他のラジカル重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物を広く使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、2個以上のマレイミド基を有するマレイミド系ラジカル重合性化合物、2個以上のビニルフェニル基を有するビニルフェニル系ラジカル重合性化合物、2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物等が挙げられる。
【0094】
マレイミド系ラジカル重合性化合物は、特に限定されるものではなく、脂肪族アミン骨格を含む脂肪族マレイミド化合物であっても、芳香族アミン骨格を含む芳香族マレイミド化合物であってもよく、市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」、「BMI-689」、「BMI-2500」(ダイマージアミン構造含有マレイミド化合物)、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-6100」(芳香族マレイミド化合物)、日本化薬社製の「MIR-5000-60T」、「MIR-3000-70MT」(ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物)、ケイ・アイ化成社製の「BMI-70」、「BMI-80」、大和化成工業社製「BMI-2300」、「BMI-TMH」、信越化学工業社製の「SLK-2600」等が挙げられる。また、マレイミド系ラジカル重合性化合物として、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に開示されているマレイミド樹脂(インダン環骨格含有マレイミド化合物)を用いてもよい。
【0095】
ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物は、特に限定されるものではないが、一実施形態において、ビニルフェニル基を有する熱可塑性樹脂であることが好ましく、ビニルフェニル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、並びにビニルフェニル基を有する変性ポリスチレン樹脂から選ばれる樹脂がより好ましく、市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ODV-XET-X03」、「ODV-XET-X04」、「ODV-XET-X05」(ジビニルベンゼン/スチレン共重合体);新中村化学工業社製の「A-DOG」、共栄社化学社製の「DCP-A」等が挙げられる。
【0096】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、特に限定されるものではないが、一実施形態において、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する熱可塑性樹脂であることが好ましく、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、並びにアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する変性ポリスチレン樹脂から選ばれる樹脂がより好ましく、市販品としては、例えば、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)等が挙げられる。
【0097】
(e)成分の官能基当量は、好ましくは100g/eq.~20000g/eq.、より好ましくは200g/eq.~15000g/eq.、さらに好ましくは300g/eq.~10000g/eq.である。(D)成分の官能基当量は、ラジカル重合性不飽和基(すなわちマレイミド基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基など)1当量あたりの(e)その他のラジカル重合性化合物の質量である。
【0098】
(e)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500~50000、より好ましくは700~20000である。(e)その他のラジカル重合性化合物の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~50000、より好ましくは700~20000である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0099】
(e)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0100】
-(f)有機充填材-
樹脂組成物は、(f)有機充填材を含有していてもよい。この(f)成分としての(f)有機充填材には、上述した(a)~(e)成分に該当するものは含めない。(f)有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0101】
ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
【0102】
(f)有機充填材の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
【0103】
-(g)その他の添加剤-
樹脂組成物は、上述した成分以外に、不揮発成分として、さらに(g)その他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(g)その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(g)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0104】
<(h)溶剤>
樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の溶剤を含有していてもよい。(h)溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではなく、有機溶剤であることが好ましい。(h)溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(h)溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0105】
樹脂組成物は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物の全成分100質量%に対して、0.5質量%以上3質量%以下の(h)溶剤を含むことが好ましい。具体的には、(h)溶剤は、樹脂組成物の全成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上含むことが好ましい。
【0106】
樹脂組成物は、例えば、上述した成分を、任意の順で混合することによって、製造することができる。また、各成分を混合する過程で、温度を適切に調整することにより、加熱及び/又は冷却を行ってもよい。また、各成分の混合中又は混合後に、ミキサー等の撹拌装置を用いて撹拌を行って、各成分を均一に分散させてもよい。さらに、必要に応じて、樹脂組成物に脱泡処理を行ってもよい。
【0107】
樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等とともに、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0108】
<その他の層>
プリプレグは、シート状繊維基材の表面に、必要に応じて保護フィルムが積層されていてもよい。
【0109】
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。また、保護フィルムとして、離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製「ルミラーT6AM」等が挙げられる。
【0110】
保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを有することにより、プリプレグの表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0111】
プリプレグは、シート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が、0.1質量%以上0.3質量%以下となるように、表面処理剤で処理されたシート状繊維基材を有するので、ニードルボイドの発生が抑制されるという特性を示す。ニードルボイドは、例えば、プリプレグを顕微鏡(倍率100倍、一視野の縦の長さ2.3mm、一視野の面積7mm)を用いて任意の5視野を確認し、それぞれニードルボイドの数を計測する。これを10回繰り返し、その平均値を求める。そのとき、ニードルボイドの数は5個未満であり、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下、さらに好ましくは1個以下、0個である。ニードルボイドは、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0112】
プリプレグは、ニードルボイドの発生が抑制されてるので、めっき潜り込みが抑制された硬化物が得られるという特性を示す。例えば、硬化させたプリプレグ上に湿式めっきにより導体層を形成し、サンプルを得る。サンプルを1cmサイズに切り出し、導体層表面をシート状繊維基材が露出するまで研削し、顕微鏡を用いて5カ所のブラインドビアにて最も深く潜り込んでいる箇所を測長する。この測長を5回繰り返し、その平均値を求める。そのとき、銅めっき潜り込みの最大長さが70μm未満であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは50μm未満である。下限値は特に制限はないが、0μm以上、0.1μm以上等とし得る。めっき潜り込みは、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0113】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。ホットメルト法では、樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、樹脂組成物と剥離性の良い離型紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートするか、あるいはダイコーターによりシート状繊維基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造する。またソルベント法では、樹脂組成物を有機溶剤に溶解したワニスにシート状繊維基材を浸漬することにより、樹脂組成物をシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させて、プリプレグを製造する。さらにプリプレグは、樹脂組成物からなる2枚の樹脂シートでシート状繊維基材をその両面側から挟み込んで加熱、加圧条件下、連続的に熱ラミネートすることで製造することもできる。なお、有機溶剤については上記したとおりである。
【0114】
プリプレグの製造方法としては、長尺のシート状繊維基材を用いて、ロールツーロール方式で行ってもよいし、バッチ方式で行ってもよい。
【0115】
プリプレグの厚さは、回路基板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは70μm以下、さらにより好ましくは60μm以下であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは12μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。
【0116】
[回路基板の製造方法]
本発明の回路基板の製造方法は、
(I)シート状繊維基材、及び該シート状繊維基材に含浸された樹脂組成物を含むプリプレグを、基材上に積層する工程、
(II)プリプレグを硬化し、絶縁層を形成する工程、及び
(V)導体層を形成する工程、含む。
【0117】
本発明の回路基板の製造方法は、工程(II)終了後に、
(III)絶縁層に穴あけする工程、
(IV)絶縁層をデスミア処理する工程、を含んでいてもよい。
【0118】
本発明の回路基板の製造方法は、上述したプリプレグを用いて絶縁層を形成するので、ニードルボイドの数が少なく、めっき潜り込み性が低い回路基板を得ることが可能になる。また、本発明の回路基板の製造方法は、プリプレグを用いて絶縁層を形成するので、回路基板が大型化、薄型化がなされても反りの発生を抑制することが可能になる。
【0119】
本発明の回路基板の製造方法は、工程(I)から工程(V)の順で行うことが好ましい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)を繰り返して実施し、多層回路基板を形成してもよい。
【0120】
<工程(I)>
工程(I)では、基材を用意する。基材はプリント配線板等に用いる内層基板であってもよい。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。金属層の材料としては、銅箔、キャリア付き銅箔、後述する導体層の材料等が挙げられ、銅箔が好ましい。また、このような金属層を有する基材としては市販品を用いることができ、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」等が挙げられる。
【0121】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0122】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以下である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0123】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0124】
導体層は、例えば、基材上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって導体層を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。基材とドライフィルムとの積層条件は、後述する基材とプリプレグとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。
【0125】
基材とプリプレグとの積層は、例えば、プリプレグを基材に加熱圧着することにより行うことができる。プリプレグについては上記したとおりである。
【0126】
プリプレグを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材をプリプレグに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸にプリプレグが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0127】
基材とプリプレグとの積層は、真空ラミネート法により実施することが好ましい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0128】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0129】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材をプリプレグ側からプレスすることにより、積層されたプリプレグの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0130】
<工程(II)>
工程(II)において、プリプレグを熱硬化して絶縁層を形成する。プリプレグの熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。プリプレグは、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって硬化させてもよいが、通常は、加熱により熱硬化させる。
【0131】
例えば、プリプレグの熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)とすることができる。
【0132】
プリプレグを熱硬化させる前に、プリプレグを硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、プリプレグを熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、プリプレグを5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)予備加熱してもよい。
【0133】
<工程(III)>
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0134】
工程(III)を行うことにより形成されるビアホール等の形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。また、工程(III)を行うことで形成可能となるビアホールのトップ径(開口径)は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下、70μm以下である。ここで、ビアホールのトップ径(開口径)とは、絶縁層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。通常は、第2絶縁層の表面でのビアホールの開口の直径が、トップ径でありうる。
【0135】
ビアホールの形成に用いられ得るレーザー光源としては、例えば、COレーザー(炭酸ガスレーザー)、UV-YAGレーザー、UVレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。中でも、加工速度、コストの観点から、COレーザー、又はUV-YAGレーザーが好ましく、COレーザーがより好ましい。
【0136】
COレーザーを照射する場合、ショット数としては、ビア加工性を向上させる観点から、好ましくは2以下、より好ましくは1である。ショット数を上記範囲内とするために、COレーザーのエネルギー及びパルス幅を一定値以上にすることが好ましい。COレーザーのエネルギーは、好ましくは0.3W以上、より好ましくは0.5W以上、さらに好ましくは1.0W以上であり、好ましくは30W以下、より好ましくは20W以下、さらに好ましくは15W以下である。また、COレーザーのパルス幅は、好ましくは3μsec以上、より好ましくは5μsec以上、さらに好ましくは8μsec以上であり、好ましくは40μsec以下、より好ましくは30μsec以下、さらに好ましくは20μsec以下である。
【0137】
UV-YAGレーザーを照射する場合、ショット数としては、ビア加工性を向上させる観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15である。ショット数を上記範囲内とするために、UV-YAGレーザーのエネルギー及びパルス幅を一定値以上にすることが好ましい。UV-YAGレーザーのエネルギーは、好ましくは0.05W以上、より好ましくは0.10W以上、さらに好ましくは0.15W以上であり、好ましくは20W以下、より好ましくは10W以下、さらに好ましくは5W以下である。
【0138】
ビアホールの形成は、市販されているレーザー装置を用いて実施することができる。市販されている炭酸ガスレーザー装置としては、例えば、ビアメカニクス社製「LC-2K212」、日立ビアメカニクス社製「LC-2E21B/1C」、三菱電機社製「ML605GTWII」、三菱電機社製「605GTWIII(-P)」、松下溶接システム社製の基板穴あけレーザー加工機が挙げられる。また、UV-YAGレーザー装置としては、例えば、ビアメカニクス社製「LU-2L212/M50L」等が挙げられる。
【0139】
<工程(IV)>
工程(IV)は、絶縁層をデスミア処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去とともに絶縁層表面の粗化処理も行われる。デスミア処理の手順、条件は特に限定されない。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層をデスミア処理することができる。
【0140】
デスミア処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0141】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0142】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0143】
一実施形態において、デスミア処理後の絶縁層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらにより好ましくは100nm未満であり得る。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等でありうる。また、デスミア処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0144】
<工程(V)>
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0145】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0146】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0147】
本発明では、上記したプリプレグを用いて絶縁層を形成するので、めっき潜り込み性に優れるという特性を示す。よって、工程(V)は、湿式めっきにより導体層を形成することが好ましい。工程(V)は、例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の方法により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0148】
絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0149】
[半導体チップパッケージ及びその製造方法]
本発明の半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0150】
回路基板とシリコンチップ等の半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0151】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間)である。
【0152】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0153】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよく、また、上述したプリプレグを用いてもよい。
【0154】
[半導体装置]
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、上述した回路基板又は半導体チップパッケージを含む。この半導体装置は、上述した回路基板又は半導体チップパッケージを用いて製造することができる。
【0155】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0156】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0157】
<シート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン量測定>
表面処理後のガラスクロスについて、カーボン量をカーボンアナライザー(HORIBA製EMA-321V2型)を使って測定した。測定サンプル量は0.05g、酸素ガス圧は0.2Mpa以下で測定した。未処理のガラスクロスの炭素量を同様に測定し補正することで表面処理に基づく炭素量を算出した。
【0158】
<合成例1:マレイミド化合物Aの合成>
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1にしたがって、下記式(1)で表されるマレイミド化合物AのMEK溶液(不揮発成分61.5質量%)を用意した。このマレイミド化合物BのMw/Mnは1.81、式(1)中のt’’は1.47であった。
【化1】
【0159】
[実施例1]
1)樹脂組成物の調製
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032SS」、エポキシ当量約145g/eq.)15部、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000」エポキシ当量194g/eq.)15部、活性エステル系樹脂(DIC社製「HPC-8151-62T」、活性基当量約259g/eq.、固形分61.5質量%のトルエン溶液)62部、トリアジン骨格及びノボラック構造を有するフェノール系樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)12部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)3部、イミダゾール系反応促進剤(四国化成社製「1B2PZ-10M」、固形分10質量%のMEK溶液)3部、メチルエチルケトン(MEK)30部、及びアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理された無機充填材(表面処理量:無機充填材100質量%に対しアミノ系シランカップリング剤0.6質量%)150部、有機充填材(アイカ工業社製「AC3816N」)3部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物のワニスを調製した。
【0160】
2)プリプレグの作製
得られた樹脂ワニスを、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製ガラスクロス(スタイルWEA1027:IPC-EG-140規格の1027、フィラメント収束本数100本、経糸密度74本/25mm、緯糸密度74本/25mm、布質量19g/m、厚さ20μm)(カーボン量0.2質量%)に含浸させ、縦型乾燥炉にて135℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグ中の樹脂組成物の含有量は75質量%、プリプレグの厚みは50μmであった。また、プリプレグの縦方向の長さが30cm、横方向の長さが20cmであった。
【0161】
3)内層基板の準備
両表面に銅層を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅層の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック電工社製「R1515A」)を内層基板として用意した。内層基板の両面を、メック社製「CZ8100」に浸漬することにより銅層の表面の粗化処理を行った。
【0162】
4)プリプレグの積層
プリプレグを、上記1-1で用意した内層基板の両面に、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層した。積層は、真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用い、130℃にて30秒間真空吸引後、130℃、圧力0.7MPaの条件で、支持体上から、耐熱ゴムを介して60秒間圧着することにより実施した。次いで、大気圧下で、SUS鏡板を用いて、130℃、圧力0.54MPaの条件で90秒間熱プレスを行った。
【0163】
5)プリプレグの熱硬化とレーザー加工
その後、プリプレグが積層された内層基板を、130℃で30分間、次いで180℃で30分間加熱して、プリプレグを熱硬化させて絶縁層を形成し、ビアメカニクス社製COレーザー加工機LC-2K212で径60μmのビアを500μmピッチで形成し、硬化基板Aを得た。
【0164】
6)絶縁層の粗化処理
硬化基板Aに、粗化処理としてのデスミア処理を行った。デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
(湿式デスミア処理)
硬化基板Aを、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。得られた基板を「粗化基板」と称する。
【0165】
7)導体層の形成
(1.無電解めっき工程)
粗化基板の表面に導体層を形成するため、下記(1)~(6)の処理を含む無電解めっき工程(アトテックジャパン社製の薬液を使用した銅めっき工程)を行って導体層(めっきシード層)を形成した。
(1)アルカリクリーニング(絶縁層の表面の洗浄と電荷調整)
粗化基板の表面を、Cleaning Cleaner Securiganth 902(商品名)を用いて60℃で5分間洗浄した。
(2)ソフトエッチング
粗化基板の表面を、硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で1分間処理した。
(3)プレディップ(Pd付与のための絶縁層表面の電荷の調整)
粗化基板の表面を、Pre. Dip Neoganth B(商品名)を用い、室温で1分間処理した。
(4)アクティヴェーター付与(絶縁層表面へのPdの付与)
粗化基板の表面を、Activator Neoganth 834(商品名)を用い、35℃で5分間処理した。
(5)還元(絶縁層に付与されたPdの還元)
粗化基板の表面を、Reducer Neoganth WA(商品名)とReducer Acceralator 810 mod.(商品名)との混合液を用い、30℃で5分間処理した。
(6)無電解銅めっき工程(絶縁層の表面(Pd表面)にけるCuの析出)
Basic Solution Printganth MSK-DK(商品名)と、Copper solution Printganth MSK(商品名)と、Stabilizer Printganth MSK-DK(商品名)と、Reducer Cu(商品名)との混合液を用いて、粗化基板の表面を、35℃で15分間処理して、無電解銅めっき層を形成した。形成された無電解銅めっき層の厚さは1.0μmであった。
【0166】
(2.電解めっき工程)
無電解銅めっき層の形成後、150℃にて30分間加熱処理を行った。次いで、硫酸銅電解めっきを行い、厚さ25μmの電解銅めっき層を形成した。無電解銅めっき層と電界めっき層との合計厚さ(導体層の厚さ)は約26.0μmであった。その後、190℃にて90分間加熱処理を行い、サンプルを作製した。
【0167】
[実施例2]
実施例1において、シランカップリング剤の処理量を調整して、カーボン量を0.2質量%から0.1質量%に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0168】
[実施例3]
実施例1において、シランカップリング剤の処理量を調整して、カーボン量を0.2質量%から0.3質量%に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0169】
[実施例4]
実施例1において、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製ガラスクロス(スタイルWEA1027:IPC-EG-140規格の1027、フィラメント収束本数100本、経糸密度74本/25mm、緯糸密度74本/25mm、布質量19g/m、厚さ20μm)(カーボン量0.2質量%)を、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製スタイルWEA1017(IPC-EG-140規格の1017、フィラメント収束本数50本、経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布質量13g/m、厚さ17μm)(カーボン量0.2質量%)に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0170】
[実施例5]
実施例1において、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製ガラスクロス(スタイルWEA1027:IPC-EG-140規格の1027、フィラメント収束本数100本、経糸密度74本/25mm、緯糸密度74本/25mm、布質量19g/m、厚さ20μm)(カーボン量0.2質量%)を、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製ガラスクロス(スタイルWEA1010:IPC-EG-140規格の1010、フィラメント収束本数40本、経糸密度95本/25mm、緯糸密度95本/25mm、布質量10g/m、厚さ13μm)(カーボン量0.2質量%)に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0171】
[実施例6]
実施例1において、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製ガラスクロス(スタイルWEA1027:IPC-EG-140規格の1027、フィラメント収束本数100本、経糸密度74本/25mm、緯糸密度74本/25mm、布質量19g/m、厚さ20μm)(カーボン量0.2質量%)を、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製ガラスクロス(スタイルWEA1006:IPC-EG-140規格の1006、フィラメント収束本数38本、経糸密度105本/25mm、緯糸密度110本/25mm、布質量8.5g/m、厚さ12μm)(カーボン量0.2質量%)に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0172】
[実施例7]
実施例1において、
1)トリアジン骨格及びノボラック構造を有するフェノール系樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)12部を、トリアジン骨格及びノボラック構造を有するフェノール系樹脂(DIC社製「LA-7054」、活性基当量約125g/eq.、固形分60%のMEK)15部に変え、
2)活性エステル系樹脂(DIC社製「HPC-8151-62T」、活性基当量約259g/eq.、固形分61.5質量%のトルエン溶液)62部を、ナフトール系樹脂(日鉄ケミカル社製「SN485-60M」、活性基当量約215g/eq.、固形分60質量%のMEK溶液)33部に変え、
3)アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理された無機充填材(表面処理量:無機充填材100質量%に対しアミノ系シランカップリング剤0.6質量%)の量を150部から120部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0173】
[実施例8]
実施例1において、合成例1で合成したマレイミド樹脂Aをさらに用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
た。
【0174】
[実施例9]
実施例1において、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製ガラスクロス(スタイルWEA1027:IPC-EG-140規格の1027、フィラメント収束本数100本、経糸密度74本/25mm、緯糸密度74本/25mm、布質量19g/m、厚さ20μm)(カーボン量0.2質量%)を、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM903」(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理した日東紡績社製ガラスクロス(スタイルWEA1027:IPC-EG-140規格の1027、フィラメント収束本数100本、経糸密度74本/25mm、緯糸密度74本/25mm、布質量19g/m、厚さ20μm)(カーボン量0.1質量%)に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0175】
[実施例10]
実施例9において、シランカップリング剤の処理量を調整して、カーボン量を0.1質量%から0.3質量%に変えた。
以上の事項以外は実施例9と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0176】
[比較例1]
実施例1において、シランカップリング剤の処理量を調整して、カーボン量を0.2質量%から0.05質量%に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0177】
[比較例2]
実施例1において、シランカップリング剤の処理量を調整して、カーボン量を0.2質量%から0.35質量%に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリプレグ、サンプルを得た。
【0178】
<ニードルボイドの評価>
実施例及び比較例で作製したプリプレグについて、ニードルボイドを以下の手順に従って測定・評価した。
【0179】
実施例及び比較例で作製したプリプレグの支持体を剥離し、KEYENCE社製顕微鏡(VHX-7000)を用いて倍率100倍(2.3mm長)で5視野を確認することで行った。そして下記評価基準に基づき、ニードルボイドの有無を評価した(10回評価の平均、小数点四捨五入)。
〇:5視野中のニードルボイドの数が5個未満
×:5視野中のニードルボイドの数が5個未満
【0180】
<銅めっき潜り込みとスミア除去性の評価>
1)銅めっき潜り込みの測定・評価
実施例及び比較例で作製したサンプルを1cmサイズに切り出し、導体層表面をガラスクロスが露出するまで研削し、KEYENCE社製顕微鏡(VHX-7000)を用いて5カ所のブラインドビアを確認することで行った。最も深く潜り込んでいる箇所を測長し、これを5回行い、平均値を銅めっきの潜り込み長さとして求めた。また、下記評価基準に基づき、銅めっき潜り込みを評価した。
〇:銅めっき潜り込みの最大長さが50μm未満。
△:銅めっき潜り込みの最大長さが50μm以上、70μm未満。
×:銅めっき潜り込みの最大長さが70μm以上。
【0181】
【表1】
【0182】
表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が、0.1質量%以上0.3質量%以下であるシート状繊維基材を用いた実施例1~10は、ニードルボイドの発生が抑制されており、銅めっき潜り込みも抑制されていることがわかる。その結果、絶縁信頼性が向上させることができる。
【0183】
これに対し、表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が0.1質量%未満であるシート状繊維基材を用いた比較例1は、実施例1~10と比較して銅めっき潜り込みが劣ることが示されている。これは、表面処理剤による処理量が少ないため、シート状繊維基材における繊維同士の親和性が低下し、繊維同士の接合力・密着力が低下する。これにより、銅めっき潜り込みが劣るものと考えられる。また、表面処理されたシート状繊維基材の単位重量当たりのカーボン含有量が0.3質量%を超えるシート状繊維基材を用いた比較例2は、実施例1~10と比較してニードルボイドの発生が抑制されていないことが示されている。これは、表面処理剤による処理量が多いため、樹脂組成物(樹脂ワニス)の含浸性が悪化することで含浸しにくい部分にボイドが発生し、その結果ニードルボイドが発生してしまったと考えられる。