(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012584
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】指導情報表示装置、指導情報表示プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20240123BHJP
【FI】
G16H80/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193417
(22)【出願日】2023-11-14
(62)【分割の表示】P 2019228805の分割
【原出願日】2019-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】309005238
【氏名又は名称】アクシスルートホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 一馬
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薬を処方された患者に適切な指導を行う指導情報表示装置、指導情報表示プログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】薬の処方時において行う服薬指導の内容を画像表示により薬剤師に伝える服薬情報提供装置100であって、患者毎に患者処方情報を記憶した第1記憶部121aと、薬の情報に応じた服薬指導内容の情報を記憶した第2記憶部121bと、患者に対して新たに薬を処方する場合、第1記憶部121aの記憶内容からその患者の過去の患者処方情報を抽出する第3抽出部124cと、新たに処方された薬の情報及び薬の服用タイミングの情報と、過去の患者処方情報の処方された薬の情報及び処方された薬の服用タイミングの情報との差分を抽出する第4抽出部124dと、第4抽出部124dにより抽出された差分を表示する表示部130と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬の処方時において行う服薬指導の内容を画像表示により薬剤師に伝える指導情報表示装置であって、
患者毎に、薬の処方日の情報と、処方された薬の情報と、薬の服用タイミングの情報とを含む患者処方情報を記憶した第1記憶手段と、
少なくとも薬の情報に応じた服薬指導内容の情報を記憶した第2記憶手段と、
患者に対して新たに薬を処方する場合、前記第1記憶手段の記憶内容からその患者の過去の患者処方情報を抽出する処方抽出手段と、
新たに処方された薬の情報及び薬の服用タイミングの情報と、過去の患者処方情報の処方された薬の情報及び当該処方された薬の服用タイミングの情報との差分を抽出する差分抽出手段と、
前記差分抽出手段により抽出された差分を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする指導情報表示装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記第2記憶手段の記憶内容に基づき服薬指導内容を画像表示させ、前記差分抽出手段により抽出された差分に応じた服薬指導の差分を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の指導情報表示装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記差分抽出手段により抽出された差分を示す記号を含んで表示する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の指導情報表示装置。
【請求項4】
コンピュータを、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の指導情報表示装置として機能させるための指導情報表示プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の指導情報表示プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指導情報表示装置、指導情報表示プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤師は患者などに薬を処方する際に服薬指導を行っている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、薬を処方された患者側が指導内容に沿って正しく服用しているかについては不明である。そこで、薬剤師により電話連絡などをして再度の服薬指導をすることが考えられるが、薬剤師が1件1件電話連絡をすることは決して効率が良いものではなく、調剤作業に追われるような状況においては電話作業を行うことは困難である。
【0005】
このような問題に対して、メールなどのデータの一斉送信などを行うことが考えられる。しかし、処方後比較的すぐなど、適切でないタイミングでメールなどのデータを受け取ったり、全員共通の定型文的な内容のものを受け取ったりしたとしても、受け取った側は内容を適当に読み流してしまうことがあり、適切な指導を行ったとはいえなくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、指導情報表示装置、指導情報表示プログラム、及び記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る指導情報表示装置は、薬の処方時において行う服薬指導の内容を画像表示により薬剤師に伝える指導情報表示装置であって、患者毎に、薬の処方日の情報、処方された薬の情報、及び、薬の服用タイミングの情報を有した患者処方情報を記憶した第1記憶手段と、少なくとも薬の情報に応じた服薬指導内容の情報を記憶した第2記憶手段と、患者に対して新たに薬を処方する場合、前記第1記憶手段の記憶内容からその患者の過去の患者処方情報を抽出する処方抽出手段と、新たに処方された薬の情報及び薬の服用タイミングの情報と、過去の患者処方情報の処方された薬の情報及び当該処方された薬の服用タイミングの情報との差分を抽出する差分抽出手段と、前記差分抽出手段により抽出された差分を表示する表示手段と、を備える。
【0008】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記に記載の指導情報表示装置として機能させるための指導情報表示プログラムであり、本発明に係る記録媒体は、上記に記載の指導情報表示プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0009】
なお、服用とは薬を飲むことの意味であるが、これに限らず、以下においては、湿布薬や塗り薬などの飲み薬ではないものを使用することについても含む概念として説明する。また、服薬とは薬を正しく飲むことの意味であるが、これに限らず、以下においては、飲み薬ではないものを正しく使用することについても含む概念として説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、患者に対して新たに薬が処方された場合、新たに処方された薬の情報と薬の服用タイミングの情報とについて、過去との差分を抽出するため、処方の際には薬剤師が過去との差分を確認し易くなり、処方の際の服薬指導について誤りが発生してしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る服薬情報提供システムの概念図である。
【
図2】本実施形態に係る服薬情報提供装置を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示した記憶部の記憶内容を示す第1の概念図である。
【
図4】
図2に示した記憶部の記憶内容を示す第2の概念図である。
【
図5】第4抽出部により抽出された差分の画像表示例を示す図である。
【
図6】SMSによる伝達内容の一例を示す概念図である。
【
図7】服薬情報提供装置の処理内容を示すフローチャートであって、第1及び第2機能について示している。
【
図8】服薬情報提供装置の処理内容を示すフローチャートであって、第3機能について示している。
【
図9】服薬情報提供装置の処理内容を示すフローチャートであって、第3機能について示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る服薬情報提供システムの概念図である。服薬情報提供システム1は、薬局Aに備えられる服薬情報提供装置(指導情報表示装置)100と、病院Dに備えられる病院側端末200と、患者側に備えられるスマートフォン、パーソナルコンピュータ、及び固定電話などの患者側端末300とを備えている。
【0014】
病院側端末200は、例えば電子カルテシステムが搭載されたパーソナルコンピュータなどである。この病院側端末200は、診察記録のほか、処方する薬の情報などを含む処方箋情報(例えば患者個人を示す情報(氏名やID)、処方された薬(種類及び数量)の情報、及び、処方された薬の服用タイミングの情報)を記録可能となっている。さらに、病院側端末200は、記録された処方箋情報に基づいて紙による処方箋を発行可能であると共に、服薬情報提供装置100に対して処方箋情報を送信する構成となっている。
【0015】
服薬情報提供装置100は、医者に対する疑義照会を行う第1機能、処方時における服薬指導の支援を行う第2機能、及び、処方後における服薬指導を行う第3機能を有した装置である。
【0016】
この服薬情報提供装置100の第1機能は、病院側端末200から送信される処方箋情報や患者によって持ち込まれた紙媒体による処方箋に記載の処方箋情報を入力し(更には患者の申告による情報を入力し)、所定の条件を満たす場合に疑義照会を行う機能である。所定の条件とは、「処方数が多い(所定値以上)」「副作用リスクが高いものとして予め定められた特定の薬の組合せがある」「他の診療科で発行されている薬との重複がある」及び「患者からの申し出がある」の少なくとも1つである。このような条件を満たす場合に患者側に対して薬を処方してしまうと健康を害する可能性がある。このため、第1機能は、入力した情報に基づいて医師に疑義照会(問合せ)を行うこととなる。疑義照会先は、病院Dの代表となるe-mailアドレスであってもよいし、医師個人のe-mailアドレスであってもよい。さらに、疑義照会は、SMS(Short Message Service)や、SNS(Social Networking Service)、自動音声などによる電話、及び、FAXにより行われてもよい。
【0017】
服薬情報提供装置100の第2機能は、薬の処方時において行う服薬指導の内容を画像表示などにより薬剤師に伝える機能である。この第2機能によって、処方された薬に、いわゆるハイリスク薬が含まれている場合には、例えば副作用の詳細な説明や禁忌となるべき飲み合わせなどが画面表示されて、薬剤師の服薬指導が支援されることとなる。
【0018】
服薬情報提供装置100の第3機能は、指導内容に沿って正しく服用させるために処方後において患者側に服薬指導を行う機能である。この第3機能は、患者毎に、処方後における服薬指導を行うべく適切なタイミングを判断し、そのタイミングで患者に応じた服薬指導内容に基づく指導情報を伝達するように構成されている。これにより、例えば副作用が出そうなタイミングで副作用が出た場合に服用を中止させたり、必ず1週間などの特定の期間中に飲み続けなければならない薬を飲み忘れそうになるタイミングで飲み続けることを促したりすることができる。処方後における服薬指導内容は、患者個人の患者側端末300に設定されるe-mailアドレスに送信されてもよいし、SMSやSNSを利用して伝達されてもよい。さらに、患者側端末300が固定電話などである場合には、自動音声などによる電話や、FAXにより伝達されてもよい。
【0019】
次に、本実施形態に係る服薬情報提供装置100について詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る服薬情報提供装置100を示すブロック図である。
図2に示すように、服薬情報提供装置100は、操作部110と、制御部120と、表示部(表示手段)130とを備えている。操作部110は、マウスやキーボード又はタッチパネルなどであり、表示部130はパーソナルコンピュータや電子端末のディスプレイが該当する。
【0020】
制御部120は、服薬情報提供装置100の全体を制御するものであって、記憶部121と、決定部(決定手段)122と、判断部(判断手段)123と、抽出部124と、伝達部(伝達手段)125とを備えている。この制御部120は、記憶部121内に記憶されるプログラム(指導情報表示プログラム)が実行されることで、決定部122、判断部123、抽出部124、及び伝達部125の各部が機能するようになっている。
【0021】
記憶部121は、第1~第5記憶部121a~121eを備えている。
図3及び
図4は、
図2に示した記憶部121の記憶内容を示す概念図である。
【0022】
第1記憶部(第1記憶手段)121aは、
図3に示すように、処方箋情報(患者個人を示す情報(氏名やID)PD1、処方された薬(種類及び数量)の情報PD2、及び、処方された薬の服用タイミングの情報PD3)PDと、薬の処方日の情報DDと、薬を処方された患者側の連絡先の情報CDとを含む患者処方情報PPDを、患者毎に区別して記憶したものである。患者側の連絡先の情報は、上記した処方後における服薬指導先の情報であって、SMSを利用する際の電話番号やe-mailなどの情報である。
【0023】
第2記憶部(第2記憶手段)121bは、
図4に示すように、薬の情報に応じた服薬指導内容の情報MD1を記憶したものである。例えば薬の種類によっては副作用があり、副作用が出た場合には服用を中止すべきケースがある。このような薬については「副作用が出た場合に服用を中止」などの情報が服薬指導内容として記憶されている。また、副作用が無い薬であっても「全て飲み切る」などの情報が服薬指導内容として記憶されている。さらには、海外出張などに応じて数か月分の薬が処方された場合には「服用を忘れない」などの情報が服薬指導内容として記憶されている。
【0024】
さらに、第2記憶部121bは、服薬指導内容の情報MD1として、正しく服用が行われなかったときに発生し得る身体上の問題の情報を記憶している。例えば、副作用が出た場合、正しい服用方法としては、副作用を及ぼした薬の服用を中止することであるが、そのまま薬を飲み続けた場合には、より重大な身体上の問題が発生し得る。第2記憶部121bは、このような内容を記憶している。また、第2記憶部121bは、正しく服用が行われなかったときに発生し得る身体上の問題として、例えば耐性菌の発生や、症状の悪化などの情報についても記憶している。
【0025】
加えて、第2記憶部121bは、薬の情報(種類及び数量)に対応付けて服薬指導時期の情報TTSを記憶している。後述するように、本実施形態に係る服薬情報提供装置100は、服薬指導時期の情報TTSに基づいて、処方後における服薬指導を行う。なお、服薬指導時期の情報TTSは、例えば薬の情報(種類及び数量)に基づいて予め決定されている。
【0026】
第3記憶部(第3記憶手段)121cは、
図3に示すように、伝達した服薬指導内容の情報に基づく指導情報MD2(指導内容の情報)を記憶するものである。また、第3記憶部121cは、指導済みであるか否かの情報MD3についても併せて記憶している。なお、1回の薬の処方に対して指導回数が複数回に亘る場合には、「複数回のうち1回が指導済みであり、残りが未指導である」などの情報が記憶されていてもよい。
【0027】
第4記憶部(第4記憶手段)121dは、
図3に示すように、服薬指導内容の伝達に対する患者側からのレスポンス有無RD1及びレンスポンス内容RD2を記憶するものである。レスポンス有無RD1については、第1記憶部121aに記憶される患者側の連絡先の情報CDに基づいて判断される。すなわち、レスポンス有無RD1については、例えば患者の電話やSMSの返信があったか否かなどに基づいて判断される。第4記憶部121dは、レスポンスが電話である場合には、電話内容を録音したり、文字化したうえで記録したりする。また、第4記憶部121dは、レスポンスがSMSやe-mailである場合には、そのままレスポンスの文字データを記憶する。
【0028】
第5記憶部(第5記憶手段)121eは、疑義照会を行うときの照会先となる医師の連絡先の情報を記憶したものである。ここでいう医師の連絡先とは、医師本人の連絡先に限らず、病院Dや部門(所属の科)などの所属先の連絡先も含む概念である。
【0029】
再度
図2を参照する。決定部122は、第3機能に関する機能部であって、患者毎に処方後の服用指導を行うか否かを決定するものである。例えば
図3に示すように、記憶部121は、処方後における服薬指導の対象者であるか否かを示す対象者情報TMを記憶している。決定部122は、対象者情報TMが「対象」となっている患者に対して処方後の服用指導を行うと判断し、対象者情報TMが「対象外」となっている患者に対して処方後の服用指導を行わないと判断する。
【0030】
ここで、対象者情報TMは、例えば制御部120による自動判断によって記憶部121に格納されてもよいし、患者側からの申告に応じて薬剤師が操作部110を操作することで入力・格納されてもよい。自動判断によって格納される場合は例えば以下のようにして行われる。
【0031】
まず、湿布薬のみが処方されている場合において、かぶれ時に湿布の使用を中止することは一般的に知られている。このため、制御部120は、湿布薬のみが処方された患者について処方後における服薬指導の対象者でないと判断し、「対象外」となる対象者情報TMを記憶部121に格納する。一方、ハイリスク薬が処方されている場合には安全性の観点からより注意の必要があるため、制御部120は、ハイリスク薬が処方された患者について処方後における服薬指導の対象者であると判断し、「対象」となる対象者情報TMを記憶部121に格納する。
【0032】
判断部123は、第1機能に関する機能部であって、患者に対して新たに薬を処方する場合に処方箋を発行した医師に対して疑義照会を行うか否かを所定の条件に基づいて判断するものである。判断部123により疑義照会を行うと判断された場合、伝達部125は、満たされた所定の条件に応じた内容の疑義照会を第5記憶部121eに記憶される医師の連絡先に対して行う。すなわち、伝達部125は、処方数が多い場合、処方数が多い旨の疑義照会を行う。副作用リスクが高いものとして予め定められた特定の薬の組合せがある場合、他の診療科で発行されている薬との重複がある場合、及び、患者からの申し出がある場合も同様に、その旨の疑義照会が行われる。
【0033】
抽出部124は、記憶部121に記憶される情報から対象となるものを抽出するものである。この抽出部124は、第1~第4抽出部124a~124dを備えている。
【0034】
第1抽出部(第1抽出手段)124aは、第3機能に関する機能部であって、第1記憶部121aにより記憶される患者処方情報PPDのうち、薬の処方日の情報DD、処方された薬の情報PD2、及び、薬の服用タイミングの情報PD3に基づく服薬指導タイミングに達した患者を抽出するものである。
【0035】
図4に示すように、本実施形態において第2記憶部121bは、薬の情報(種類及び数量)に対応付けて、服薬指導時期の情報TTSを記憶している。制御部120は、服薬指導時期の情報TTSと、薬の処方日の情報DDと、薬の服用タイミングの情報PD3とからすると、いつ(何日)が服薬指導タイミングかを演算することができる。第1抽出部124aは、このような服用指導タイミングに達した患者を抽出することとなる。
【0036】
第2抽出部(第2抽出手段)124bは、第3機能に関する機能部であって、第1抽出部124aにより抽出された患者に関し、処方された薬に応じた服薬指導内容の情報MD1を第2記憶部121bから抽出するものである。例えば、
図3に示す患者「××××」には「▽△薬」が処方されている。このため、第2抽出部124bは、患者「××××」に関し、
図4に示す服薬指導内容の情報MD1として「必ず食直前に服用」及び「食後に飲むと低血糖を招く」を抽出する。また、
図3に示す患者「××××」は「▽△薬」のほか「●●薬」及び「◆◆薬」についても処方されていることから、「全ての薬」に該当するため、第2抽出部124bは、患者「××××」に関し、服薬指導内容の情報MD1として「服用を忘れない」及び「症状の悪化」を更に抽出する。
【0037】
なお、
図3に示す患者「××××」には、3日分の薬しか処方されていないが、1月分以上処方された場合や他の種類の薬が処方されている場合、第2抽出部124bは、他の服薬指導内容の情報MD1についても抽出することとなる。
【0038】
第3抽出部(処方抽出手段)124cは、第2機能に関する機能部であって、患者に対して新たに薬を処方する場合、第1記憶部121aの記憶内容からその患者の過去の患者処方情報PPDを抽出するものである。第4抽出部(差分抽出手段)124dについても第2機能に関する機能部であって、新たに処方された薬の情報PD2及び薬の服用タイミングの情報PD3と、過去の患者処方情報PPDに含まれる処方された薬の情報PD2及び処方された薬の服用タイミングの情報PD3との差分を抽出するものである。
【0039】
図3を参照して説明する。例えば「19/1/12」に患者「〇〇〇〇」に対して新たに薬を処方するものとする。この場合、第3抽出部124cは、第1記憶部121aから「19/1/5」の患者処方情報PPDを抽出する。次いで、第4抽出部124dは、新たに処方された「19/1/12」の薬の情報PD2及び薬の服用タイミングの情報PD3と、「19/1/5」の薬の情報PD2及び薬の服用タイミングの情報PD3との差分を抽出する。この場合、第4抽出部124dは、「△△薬」の代わりに「■■薬」が追加された旨の情報と、数量が7日分から3日分に変更された旨の情報とを差分として抽出する。
【0040】
伝達部125は、疑義照会の伝達(第1機能)、服薬指導の支援情報の伝達(第2機能であって、第4抽出部124dにより抽出された差分の伝達を含む)、及び、服薬指導内容の情報MD1に基づく指導情報MD2の伝達(第3機能)を行うものである。
【0041】
伝達部125は、上記したように、満たされた所定の条件に応じた内容の疑義照会を第5記憶部121eに記憶される医師の連絡先に対して行う(第1機能)。
【0042】
また、伝達部125は、薬の処方時において行う服薬指導の内容について表示部130に情報送信して画像表示させる(第2機能)。
図5は、第4抽出部124dにより抽出された差分の画像表示例を示す図である。
図5に示すように、例えば表示部130には、「医薬品差分」が表示されており、「○○薬」及び「××薬」については、7日分処方されていたのが3日分に変更されたことが明らかとなっている。また、「△△薬」については「-」表示によって処方されなかったことが示され、「■■薬」については「+」表示によって処方されたことが示されている。なお、この表示画面において、「指導支援」が選択された場合には、表示画面が切り替わり服薬指導内容が画像表示される。この際、服薬指導内容は、医薬品の差分に応じた服薬指導の差分が強調表示されたものとなる。
【0043】
さらに、伝達部125は、第1抽出部124aにより抽出された患者の連絡先に対して、第2抽出部124bにより抽出された服薬指導内容の情報MD1に基づく指導情報MD2を伝達する(第3機能)。
図6は、SMSによる伝達内容の一例を示す概念図である。
図6に示すように、伝達部125は、例えば「○○薬」が処方された患者の患者側端末300に対して、処方から3日後に「服用後に尿量が減少した場合には○○薬の服用を中止してください。○○薬を飲み続けた場合には腎炎・腎不全を招くこともあります。」とショートメールを送信する。さらに、伝達部125は、「電話による問合せ」「SMSによる問合せ」「メールによる問合せ」などのように、患者側に対してレスポンスし易くなるよう、クリック部(患者側の指定操作によって電話・ショートメール・メールなどの連絡を可能とする操作箇所)を伝達してもよい。特に、患者側からクリック部を利用されたレスポンスがあった場合、第4記憶部121dは、患者側のレスポンス内容として電話音声や文字データを記憶することとなる。
【0044】
加えて、伝達部125は、第4抽出部124dにより抽出された差分の内容を服薬指導に反映させたうえで伝達することが好ましい。
図5に示す差分があった場合、伝達部125は、例えば「腎炎・腎不全を招くこともあります。」と「電話による問合せ」との間に「服用日数が変更されています。また、△△薬に代えて■■薬が処方されています。ご注意ください。」などの情報を追加して伝達する。このように、差分に基づいて服薬指導を充実させるようにしてもよい。
【0045】
なお、伝達部125は、自動音声による電話の発信を利用して服薬指導内容の情報MD1に基づく指導情報MD2を伝達してもよい。この場合において、自動音声による電話の内容は受話側のボタン操作を促すものであることが好ましい。例えば自動音声の最後に「内容をご理解された方は(1)を押してください。内容に不明点がある方は薬剤師につなぎますので(2)を押してください。」という内容を音声出力してボタン操作を促す。また、ボタン操作があった場合、第4記憶部121dは、患者側のレスポンス内容としてボタン操作があった旨や電話音声を記憶することとなる。
【0046】
次に、本実施形態に係る服薬情報提供装置100の動作を説明する。
図7は、服薬情報提供装置100の処理内容を示すフローチャートであって、第1及び第2機能について示している。なお、
図7に示す処理は服薬情報提供装置100の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0047】
まず、制御部120は、処方箋情報PDなどを入力して記憶する(S11)。この処理において処方箋情報PDは、病院側端末200から送信された情報を受信する形態で入力されてもよいし、患者側によって持ち込まれた紙媒体による処方箋に記載の処方箋情報PDが手作業によって入力されてもよい。また、この処理においては、処方箋情報PDのほか、患者の氏名や連絡先等についても入力のうえ記憶される。
【0048】
次に、制御部120の判断部123は、疑義照会条件(所定の条件)を満たすか否かを判断する(S12)。このとき、判断部123は、ステップS1において入力された処方箋情報PD、及び、患者からの申し出があったか否かに基づいて、疑義照会条件を満たすか否かを判断する。
【0049】
疑義照会条件を満たす場合(S12:YES)、伝達部125は、満たされた疑義照会条件に応じた内容の疑義照会を、第5記憶部121eにより記憶された医師の連絡先に対して行う(S13)。その後、
図7に示す処理は終了する。
【0050】
一方、疑義照会条件を満たさない場合(S12:NO)、制御部120は、ステップS11において記憶した患者個人を示す情報(氏名やID)PD1に基づいて、その患者の過去の処方箋情報PDがあるかを判断する(S14)。なお、制御部120は、過去の数か月などの一定期間前までにおいて、過去の処方箋情報PDがあるかを判断することが好ましい。
【0051】
患者の過去の処方箋情報PDがある場合(S14:YES)、第3抽出部124cは、ステップS11において記憶した患者個人を示す情報(氏名やID)PD1に基づいて、その患者の過去の処方箋情報PDを抽出する(S15)。
【0052】
次に、制御部120は、新たに処方された薬の情報PD2及び薬の服用タイミングの情報PD3と、ステップS15において抽出された薬の情報PD2及び薬の服用タイミングの情報PD3とに差分があるかを判断する(S16)。
【0053】
差分がある場合(S16:YES)、第4抽出部124dは差分を抽出し、伝達部125は、表示部130に対して情報伝達することにより、差分の情報と、薬剤師が行うべき服薬指導の情報とを画面表示させる(S17)。その後、制御部120は、差分ありフラグを設定し(S18)、
図7に示す処理は終了する。
【0054】
ところで、患者の過去の処方箋情報PDがない場合(S14:NO)、及び、差分がない場合(S16:NO)、伝達部125は、表示部130に対して情報伝達することにより、薬剤師が行うべき服薬指導の情報を画面表示させる(S19)。その後、
図7に示す処理は終了する。
【0055】
図8及び
図9は、服薬情報提供装置100の処理内容を示すフローチャートであって、第3機能について示している。なお、
図8及び
図9に示す処理は服薬情報提供装置100の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0056】
まず、
図8に示すように、第1抽出部124aは、服薬指導タイミングの患者を抽出する(S21)。この処理は、薬剤師からの抽出指示があった場合に行われてもよいし、毎日(又は平日のみや営業日のみ)予め定められた時刻に自動的に実行されてもよい。
【0057】
次に、決定部122は、第1抽出部124aにより抽出された患者に指導対象者がいるか否かを判断する(S22)。このとき、決定部122は、
図3に示した対象者情報TMに基づいて、指導対象者がいるかを判断する。
【0058】
なお、決定部122は、対象者情報TMに基づいて指導対象者がいるかを判断する場合に限らず、例えば、ステップS22の処理時点において、処方薬にハイリスク薬が含まれているかなどを判断して指導対象者がいるかを判断するようにしてもよい。
【0059】
指導対象者がいない場合(S22:NO)、
図8に示す処理は終了する。一方、指導対象者がいる場合(S22:YES)、第2抽出部124bは、指導対象者それぞれについて、第2記憶部121bから服薬指導内容の情報MD1を抽出する(S23)。
【0060】
次に、制御部120は、ステップS23において抽出された服薬指導内容の情報MD1に基づいて、指導情報MD2を生成する(S24)。なお、制御部120は、差分ありフラグが設定されている場合、差分内容を反映させた指導情報MD2を生成することとなる。
【0061】
次いで、伝達部125は、患者毎の指導情報MD2を伝達する(S25)。次に、第3記憶部121cは、ステップS25において伝達した指導情報MD2を患者毎に記憶する(S26)。その後、
図8に示す処理は終了する。
【0062】
また、
図9に示すように、制御部120は、指導先となる患者側からレスポンスがあったかを判断する(S27)。レスポンスがなかった場合(S27:NO)、
図9に示す処理は終了する。一方、レスポンスがあった場合(S27:YES)、第4記憶部121dは、レスポンス内容として音声や文字データを記憶する(S28)。なお、レスポンスとして直接薬局に来る患者もいるため、対面での会話を音声として記憶するようにしてもよい。
【0063】
このようにして、本実施形態に係る服薬情報提供装置100、服薬情報提供プログラム、及び服薬情報提供プログラムを記録した記録媒体によれば、薬の処方日の情報DD、処方された薬の情報PD2、及び薬の服用タイミングの情報PD3に基づく服薬指導タイミングに達した患者を抽出して、指導情報MD2を伝達するため、各患者に対応した内容で、且つより適切なタイミングで服薬指導が行われることとなる。また、伝達部125により伝達が行われることから、薬剤師が個別に電話を行う必要もない。従って、処方後において、より効率的に適切なタイミングで指導を行うことができる。
【0064】
また、伝達した指導情報MD2を患者毎に記憶するため、どの患者に対してどのような服薬指導を行ったかについて履歴を残すことができる。
【0065】
また、第2記憶部121bにより記憶される服薬指導内容の情報MD1には、正しく服用が行われなかったときに発生し得る身体上の問題の情報が含まれるため、警告的な意味合いでより正しい服用を促すことができる。
【0066】
また、自動音声による電話の発信を利用して指導情報MD2を伝達するため、スマートフォンなどの端末を持たない患者側に対しても服薬指導を行うことができる。
【0067】
また、自動音声による電話の内容は、受話側のボタン操作を促すものであるため、ボタン操作に応じた回答内容を記憶したり(例えばしっかりと服用していますかの回答を記憶したり)、薬剤師に電話をつないだりすることができる。
【0068】
また、患者側からのレスポンス内容を記録するため、服薬指導の内容が患者側に伝わったかの確認などに役立てることができる。
【0069】
また、患者に対して新たに薬が処方された場合、新たに処方された薬の情報PD2と薬の服用タイミングの情報PD3とについて、過去との差分を抽出するため、処方の際には薬剤師が過去の差分を確認し易くなり、処方の際の服薬指導について誤りが発生してしまう可能性を低減することができる。
【0070】
また、差分の内容を服薬指導に反映させたうえで伝達するため、例えば「前回の○○薬に代えて××薬が処方されていますのでご注意ください。」や「○○薬については前回は毎食後に服用でしたが今回は朝晩のみとなっています。」や「前回の○○薬に代えて、××薬が処方されています。××薬はハイリスク薬ですので、□□にご注意ください。」などを服薬指導することができる。
【0071】
また、指導情報MD2の伝達を行うか否かを決定する決定部122をさらに備えるため、例えば湿布薬のみを処方され湿布薬を常用する患者については、処方後に服薬指導(湿布については、かぶれた時に使用を禁止する旨の指導)を行うと煩わしく感じることもあることから、このような患者については指導情報MD2の伝達をしないようにすることができる。同様に、処方された薬にハイリスク薬を含む場合には、必ず伝達を行うと決定することで、より一層適切な服薬指導を行うことができる。
【0072】
また、所定の条件を満たして疑義照会を行うと判断された場合に、所定の条件に応じた内容の疑義照会を医師の連絡先に対して行うため、例えば、所定の条件が「処方数が多い(所定値以上)」である場合には、処方数が多すぎる旨の疑義照会を行うことができ、また所定の条件が「副作用リスクが高い特定の薬の組合せがある」である場合には、特定の薬の組合せについては副作用リスクが高い旨の疑義照会を行うことができる。従って、従来、薬剤師が電話やメールなどにより行っていた疑義照会についても装置側が適切な内容で行うことができ、薬剤師による業務の効率化を図ることができる。
【0073】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0074】
例えば、上記実施形態において服薬情報提供装置100は単体にパーソナルコンピュータなどを想定しているが、これに限らず、例えばネットワーク接続される2台以上の機器によって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 :服薬情報提供システム
100 :服薬情報提供装置(指導情報表示装置)
120 :制御部
121 :記憶部
121a :第1記憶部(第1記憶手段)
121b :第2記憶部(第2記憶手段)
121c :第3記憶部(第3記憶手段)
121d :第4記憶部(第4記憶手段)
121e :第5記憶部(第5記憶手段)
122 :決定部(決定手段)
123 :判断部(判断手段)
124 :抽出部
124a :第1抽出部(第1抽出手段)
124b :第2抽出部(第2抽出手段)
124c :第3抽出部(処方抽出手段)
124d :第4抽出部(差分抽出手段)
125 :伝達部(伝達手段)
130 :表示部(表示手段)
CD :薬を処方された患者側の連絡先の情報
DD :薬の処方日の情報
MD1 :服薬指導内容の情報
MD2 :指導情報
PD2 :処方された薬の情報
PD3 :処方された薬の服用タイミングの情報
PD :処方箋情報
PPD :患者処方情報
RD2 :レンスポンス内容
TM :対象者情報
TTS :服薬指導時期の情報