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特開2024-125840塗料形成系並びに当該塗料形成系を構成する液状材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125840
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】塗料形成系並びに当該塗料形成系を構成する液状材料
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240911BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240911BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240911BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240911BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/02
C09D7/63
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033937
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】星野 勇門
(72)【発明者】
【氏名】原田 航
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB032
4J038DB061
4J038DB151
4J038DB152
4J038DJ012
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA10
4J038MA15
4J038NA27
(57)【要約】
【課題】
本発明は、骨材保持力に優れている塗料を形成するための塗料形成系を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、自己乳化型エポキシ樹脂である主剤を含む第一液と、当該自己乳化型エポキシ樹脂を硬化するための硬化剤を含む第二液と、を含む塗料形成系であって、前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液を混合して塗料を形成するために用いられるものであり、前記塗料形成系は、さらに分散剤を含み、前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル系重合物を含む、前記塗料形成系を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己乳化型エポキシ樹脂である主剤を含む第一液と、当該自己乳化型エポキシ樹脂を硬化するための硬化剤を含む第二液と、を含む塗料形成系であって、
前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液を混合して塗料を形成するために用いられるものであり、
前記塗料形成系は、さらに分散剤を含み、
前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル系重合物を含む、
前記塗料形成系。
【請求項2】
前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液の混合物に骨材をさらに混合して骨材含有塗料を得るために用いられるものである、請求項1に記載の塗料形成系。
【請求項3】
前記第一液の粘度が、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により測定したときに、30000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の塗料形成系。
【請求項4】
前記第二液の粘度が、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により測定したときに、30000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載の塗料形成系。
【請求項5】
前記第一液及び前記第二液の混合物の粘度が、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により測定したときに、3000mPa・s以上である、請求項1又は2に記載の塗料形成系。
【請求項6】
前記第一液及び前記第二液のいずれもが、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により粘度を測定可能である液状材料である、請求項1又は2に記載の塗料形成系。
【請求項7】
前記分散剤は前記第一液に含まれている、請求項1又は2に記載の塗料形成系。
【請求項8】
前記塗料形成系は、さらに水を含む、請求項1又は2に記載の塗料形成系。
【請求項9】
前記水は前記第二液に含まれている、請求項8に記載の塗料形成系。
【請求項10】
前記硬化剤は、変性脂肪族ポリアミン硬化剤である、請求項1又は2に記載の塗料形成系。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の塗料形成系に含まれる前記第一液及び前記第二液の混合物である塗料。
【請求項12】
請求項11に記載の塗料の硬化物。
【請求項13】
自己乳化型エポキシ樹脂を含有する液状材料であって、
前記液状材料は、硬化剤及び分散剤と組み合わせて塗料を形成するために用いられるものであり、
前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル重合物である、
前記液状材料。
【請求項14】
硬化剤を含有する液状材料であって、
前記液状材料は、自己乳化型エポキシ樹脂及び分散剤と組合せて塗料を形成するために用いられるものであり、
前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル重合物である、
前記液状材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料形成系に関する。また、本発明は、当該塗料形成系を構成する液状材料にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境配慮の観点から、廃材を再利用することがしばしば検討される。そのような再利用手法の例として、廃材の粉砕物を塗料に混合して用いることが考えられる。塗料において用いられる廃材粉砕物は、しばしば骨材とも呼ばれる。骨材を含む塗料は、環境配慮の観点において優れているだけでなく、美観の観点からも優れている。
【0003】
このような塗料に関する技術として、これまでにいくつかの提案が行われている。例えば下記特許文献1には、塗材仕上げ工法に関する技術が開示されている。当該文献に記載の塗材仕上げ工法は、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:2.8~15.0である水系塗材組成物を用いるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-15015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗料を製造するために2液型の塗料形成系が用いられることがある。当該塗料形成系は、主剤を含む第一液と、硬化剤を含む第二液と、を含みうる。このような2液型の塗料形成系に関して、前記第一液及び前記第二液は、別々の容器に保存されて流通されうる。そして、これら2つの液は、ユーザにより混合され、そして、当該混合により得られた塗料がユーザにより所望の面に施与されうる。
【0006】
しかしながら、当該塗料形成系を形成する液は、高いチキソ性を有することがあり、しばしば計量しにくい。当該塗料形成系は、多くの場合は、塗装を行うユーザにより計量及び混合作業が行われるところ、計量しにくいことは、当該ユーザに好まれない。また、当該液は、例えばマヨネーズのような物性を有する場合があり、このような場合は、計量用の容器へ充填する際に、当該容器内の空間が当該液によって完全には充填されないという事態をもたらしうる。当該2つの液の量に比率によって、得られる塗料の物性は変化しうる。当該2つの液を適切に計量できないことは、これら2つの液の混合物に悪影響を及ぼしうる。当該2つの液が適切な比率で混合されない場合は、得られる塗料に悪影響を及ぼし、塗料の塗布性に影響を与えうる。例えば、壁面に塗料が塗工された場合に、当該塗料がダレたり又は壁面から落下しうる。
【0007】
また、骨材を含有する塗料に関しては、2つの液が適切に計量できないことは特に問題になる。骨材を含有する塗料は、塗装された面からダレやすく又は塗装された面から落下しやすいところ、このようなダレや落下は、2つの液が適切に計量されていない場合に生じうる。
【0008】
また、骨材を含有する塗料に関しては、塗工時の塗料のダレ又は落下の問題は、前記2つの液の量が適切に計量されたとしても、しばしば生じうる。この問題は、骨材が、前記2つの液の混合物中に適切に分散されていなことや、又は、骨材が前記混合物によって十分に濡れていないことに起因しているとも考えられる。
また、骨材を含有する塗料は、しばしば塗工しにくい。そのため、塗布性の向上も求められている。
【0009】
また、塗装面には、所望の硬度が達成される必要もある。上記2つの液が適切に混合されないと、適切な硬度が達成されない場合もある。また、適切な硬度が達成されない場合は、上記で述べた追加処理が施された際に、塗装面が過度に傷つき、さらには、骨材の脱離も起こりうる。
また、骨材を含有する塗料に関しては、硬化後の塗工面が研磨される場合がある。当該研磨は、骨材に起因する模様又は光沢を発現させるために行われたり、又は、樹脂硬化物自体の光沢や艶の発現のために行われたりする。このような研磨を行う場合において、所望の硬度が達成されていないと、望ましい塗工面外観が得られない。
【0010】
本発明は、以上で述べた課題の少なくとも一つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定の塗料形成系が、優れた塗布性を有する塗料を得るために適していることを見出した。また、本発明者らは、特定の塗料形成系が、骨材保持力に優れた塗料を得るために適していることを見出した。
本発明は以下を提供する。
[1]自己乳化型エポキシ樹脂である主剤を含む第一液と、当該自己乳化型エポキシ樹脂を硬化するための硬化剤を含む第二液と、を含む塗料形成系であって、
前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液を混合して塗料を形成するために用いられるものであり、
前記塗料形成系は、さらに分散剤を含み、
前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル系重合物を含む、
前記塗料形成系。
[2]前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液の混合物に骨材をさらに混合して骨材含有塗料を得るために用いられるものである、[1]に記載の塗料形成系。
[3]前記第一液の粘度が、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により測定したときに、30000mPa・s以下である、[1]又は[2]に記載の塗料形成系。
[4]前記第二液の粘度が、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により測定したときに、30000mPa・s以下である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の塗料形成系。
[5]前記第一液及び前記第二液の混合物の粘度が、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により測定したときに、3000mPa・s以上である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の塗料形成系。
[6]前記第一液及び前記第二液のいずれもが、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により粘度を測定可能である液状材料である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の塗料形成系。
[7]前記分散剤は前記第一液に含まれている、[1]~[6]のいずれか一つに記載の塗料形成系。
[8]前記塗料形成系は、さらに水を含む、[1]~[7]のいずれか一つに記載の塗料形成系。
[9]前記水は前記第二液に含まれている、[8]に記載の塗料形成系。
[10]前記硬化剤は、変性アミン化合物である、[1]~[8]のいずれか一つに記載の塗料形成系。
[11][1]~[10]のいずれか一つに記載の塗料形成系に含まれる前記第一液及び前記第二液の混合物である塗料。
[12][11]のいずれか一つに記載の塗料の硬化物。
[13]自己乳化型エポキシ樹脂を含有する液状材料であって、
前記液状材料は、硬化剤及び分散剤と組み合わせて塗料を形成するために用いられるものであり、
前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル重合物である、
前記液状材料。
[14]硬化剤を含有する液状材料であって、
前記液状材料は、自己乳化型エポキシ樹脂及び分散剤と組合せて塗料を形成するために用いられるものであり、
前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル重合物アミンである、
前記液状材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従う塗料形成系は、優れた塗布性を有する塗料を形成することができる。また、本発明により、例えばユーザによって計量しやすい塗料形成系が提供される。計量のしやすさは、適切な塗料の調製のために適している。
また、当該塗料形成系は、例えば骨材を含む塗料を形成するために適している。当該塗料形成系は、骨材が含まれる塗料を形成するために用いられた場合において、優れた塗装面を形成することができる。
また、当該塗料形成系は、骨材を利用するために適してるので、例えば廃材などのアップサイクルの観点からも優れており、SDGsの達成のために貢献することもできる。
また、当該塗料形成系は、優れた硬度を有する塗料硬化物を形成することができる。骨材含有塗料の硬化面は、意匠的な美観を与えるために、しばしば研磨して利用される。当該塗料形成系は、そのような研磨処理によって優れた美観を有する塗装面を提供するためにも適している。
なお、本発明の効果は、ここで述べたいずれか1つ又は2つ以上の効果であってよく、又は、本明細書以下で述べるいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0014】
本発明について、以下の順序で説明を行う。
1.塗料形成系
1.1 第一液
1.2 第二液
1.3 分散剤
1.4 水
1.5 使用方法
1.5.1 骨材
1.5.2 混合比率
1.5.3 粘度
1.5.4 施与方法
1.6 製造方法
1.7 混合物
1.8 硬化物
1.9 塗料を形成するために用いられる液状材料
2.実施例
2.1 試験例1(希釈用エポキシ樹脂による粘度調節)
2.2 試験例2(水による粘度調節)
2.3 試験例3(分散剤の添加)
2.4 試験例4(分散剤の種類及び量の検討)
2.5 試験例5(硬化剤の種類の検討)
2.6 試験例6(骨材のバリエーション)
2.7 試験例7(水の添加)
2.8 試験例8(分散剤の量)
2.9 試験例9(骨材の例)
2.10 試験例10(基材の例)
【0015】
1.塗料形成系
【0016】
本発明者らは、特定の塗料形成系が、良好な塗布性を有する塗料を得るために適していることを見出した。当該塗料形成系を構成する2つの液は、計量しやすい。また、当該2つの液を用いて得られる塗料は、塗布性に優れている。また、当該塗料形成系は、特には、骨材を含む塗料を得るために適しており、前記2つの液の混合物に骨材を添加した場合においても、塗布性に優れており、塗装される面(例えば壁面などの鉛直面)からのダレや落下が生じにくい。
【0017】
一実施態様において、前記塗料形成系は、自己乳化型エポキシ樹脂である主剤を含む第一液と、当該自己乳化型エポキシ樹脂を硬化するための硬化剤を含む第二液と、を含んでよい。ここで、前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液を混合して塗料を形成するために用いられるものである。さらに、前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液の混合物に骨材をさらに混合して骨材含有塗料を得るために用いられるものであってよい。
【0018】
前記塗料形成系は、さらに分散剤を含む。前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル重合物であってよい。
一実施態様において、前記分散剤は、前記第一液に含まれていてよく、又は、前記第二液に含まれていてよく、又は、前記第一液及び前記第二液の両方に含まれていてもよい。この場合、前記塗料形成系は、2液型の塗料形成系として構成されてよい。
他の実施態様において、前記分散剤は、第三液(又は第三成分)として、前記塗料形成系に含まれていてもよい。すなわち、前記分散剤は、前記第一液及び前記第二液とは別の実体として、前記塗料形成系の一部を構成してもよい。この場合、前記塗料形成系は、例えば3液型の塗料形成系として構成されてよい。
【0019】
他の実施態様において、前記塗料形成系は、自己乳化型エポキシ樹脂である主剤を含む第一液と、当該自己乳化型エポキシ樹脂を硬化するための硬化剤を含む第二液と、を含んでよい。ここで、前記第一液は、反応性希釈剤をさらに含み、前記第一液中における前記自己乳化型エポキシ樹脂の含有質量と前記反応性希釈剤の含有質量の比が、70:30~100:0であってよく、さらには75:25~99:1であってよく、より好ましくは80:10~95:5であってよく、さらにより好ましくは85:15~95:5であってよい。このような含有質量比によって、前記塗料形成系により得られる塗料の硬化物は優れた硬度を有し、さらに、前記第一液は計量や混合において取り扱い易くなる。
【0020】
以下で、本発明の塗料形成系についてより具体的に説明する。
【0021】
1.1 第一液
【0022】
(自己乳化型エポキシ樹脂)
【0023】
前記第一液は、自己乳化型エポキシ樹脂を含む。当該自己乳化型エポキシ樹脂は、主剤として含まれてよい。
前記自己乳化型エポキシ樹脂は、親水基が導入されたエポキシ樹脂である。前記自己乳化型エポキシ樹脂は、当該親水基の導入によって、疎水性及び親水性の両方の性質を有する。当該自己乳化型エポキシ樹脂は水に乳化可能であり、例えば界面活性剤を用いなくとも水に乳化可能である。
【0024】
前記自己乳化型エポキシ樹脂は、例えば汎用の液状エポキシ樹脂が化学的に変性されたエポキシ樹脂であってよい。当該化学的変性は、例えば親水基の導入である。前記親水基として、例えば、アミノ基(-NH)、ヒドロキシ基(-OH)、及びカルボキシ基(-COOH)で挙げられる。前記自己乳化型エポキシ樹脂は、これらのうちの1種又は2種以上の親水基を有してよい。
一実施態様において、前記自己乳化型エポキシ樹脂は、アミノ基を有する自己乳化型エポキシ樹脂であってよい。当該樹脂は、本発明による効果を奏するために適している。
例えば、前記自己乳化型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含んで良い。前記自己乳化型エポキシ樹脂は、例えばポリオキシエチレンアルキルアミンとエポキシ化合物との反応物をさらに含んでよい。
【0025】
前記自己乳化型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば10g/eq以上、好ましくは50g/eq以上、より好ましくは100g/eq以上であってよく、さらには150g/eq以上であってもよく、いくつかの実施態様においては200g/eq以上であってよい。
前記エポキシ当量は、例えば1000g/eq以下であってよく、特には500g/eq以下、好ましくは400g/eq以下、より好ましくは300g/eq以下であってよく、いくつかの実施態様においては250g/eq以下であってよい。
前記エポキシ当量は、JIS K 7236:2001に従い測定されてよい。
【0026】
前記自己乳化型エポキシ樹脂は、当該樹脂自体に対して粘度が測定された場合に、例えば10000mPa・s以上、特には15000mPa・s以上、より特には18000mPa・s以上であってよく、さらにより特には20000mPa・s以上の粘度を有してよい。
前記自己乳化型エポキシ樹脂は、当該樹脂自体に対して粘度が測定された場合に、例えば30000mPa・s以下、特には28000mPa・s以下、より特には25000mPa・s以下、さらにより特には23000mPa・s以下の粘度を有してよい。
前記粘度は、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により測定される粘度である。
【0027】
前記自己乳化型エポキシ樹脂の比重は、25℃において、例えば0.90以上、特には0.95以上、より特には1.00以上、さらにより特には1.05以上であってよく、いくつかの実施態様においては1.10以上であってよい。
前記自己乳化型エポキシ樹脂の比重は、25℃において、例えば1.50以下、特には1.40以下、より特には1.30以下、さらにより特には1.25以下であってよく、いくつかの実施態様においては1.20以下であってよい。
前記比重は、JIS K 5600(比重カップ法)に従い測定されてよい。
【0028】
前記自己乳化型エポキシ樹脂は、例えば固形分が90%以上の液状樹脂資材として構成されてよく、より特には固形分が95%以上の液状樹脂資材として構成されてよく、さらにより特には固形分が100%である液状樹脂資材として構成されてもよい。
当該液状樹脂資材は、水を含まない液状樹脂資材であってよい。当該液状樹脂資材は、乳化剤を含まない液状樹脂資材であってよい。さらには、当該液状樹脂資材は、水及び乳化剤のいずれも含まない液状樹脂資材であってよい。
前記自己乳化型エポキシ樹脂は、このような液状樹脂資材として、前記第一液を調製するために用いられてよい。
【0029】
前記自己乳化型エポキシ樹脂は、前記第一液の主成分として含まれてよく、前記第一液中の前記自己乳化型エポキシ樹脂の含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってよい。
一実施態様においては、前記含有割合は、例えば72質量%以上、74質量%以上、又は76質量%以上であってもい。
他の実施態様において、前記含有割合はさらに高くてもよく、例えば80質量%以上、85質量%、又は90質量%以上であってもよい。
前記含有割合は100質量%であってもよく、前記含有割合の上限は特に設定されなくてよいが、例えば反応性希釈剤、分散剤、又は水などの他の成分が第一液に含まれる場合は、前記含有割合は100質量%未満であり、例えば95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよい。
【0030】
(希釈剤)
【0031】
前記第一液は、さらに希釈剤を含んでもよい。前記希釈剤の例として、例えば単官能反応型、2官能反応型、又は3官能反応型である反応性希釈剤が挙げられる。また、前記希釈剤の他の例として、非反応性希釈剤が挙げられる。前記第一液に含まれる希釈剤は、これらのうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせであってよい。前記希釈剤によって、前記第一液の粘度を下げることができ、これは、前記第一液の計量のしやすさの向上又は前記第一液と前記第二液との混合のしやすさの向上に貢献する。
【0032】
一実施態様において、前記第一液は、反応性希釈剤を含む。前記反応性希釈剤は、例えば、単官能反応型希釈剤、2官能反応型希釈剤、又は3官能以上の多官能反応型希釈剤のうちのいずれか1種又は2種以上の組合せであってよく、特には2官能反応型希釈剤又は3官能以上の多官能反応型希釈剤であってよく、例えば3官能反応型希釈剤であってよい。
2官能反応型希釈剤の例として、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
3官能以上の多官能反応型希釈剤の例として、例えばトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、キャスターオイルポリグリシジルエーテル、及びソルビトールポリグリシジルエーテルなど、特にはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、キャスターオイルトリグリシジルエーテル、及びソルビトールトリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0033】
前記希釈剤の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってよい。
前記希釈剤の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下であってよく、いくつかの実施態様においては例えば10質量%以下であってもよい。
このような含有割合は、例えば塗料を形成する際における計量又は混合などの作業に適した物性(特には粘度)を前記第一液に付与することに貢献する。
【0034】
(その他の成分)
前記第一液は、さらに分散剤を含んでよい。当該分散剤については、後段で別途説明する。当該分散剤は、前記第一液の粘度を調節することができるだけでなく、前記第一液と前記第二液との混合物の骨材保持力の向上にも貢献する。
前記第一液は、さらに水を含んでもよい。当該水によって、前記第一液の粘度が調節されてもよい。当該水については、後段で別途説明する。
また、前記第一液は、例えば顔料又は染料などの着色剤、消泡剤、又は粘度調節剤(例えば増粘剤など)をさらに含んでもよい。前記着色剤によって、所望の色を塗料に付与することができる。前記消泡剤により、前記第一液中における気泡を除去し又は気泡発生を抑制することができる。前記粘度調節剤によって、所望の粘度を前記第一液に与えることができる。
【0035】
(粘度)
前記第一液は、例えば30000mPa・s以下、特には25000mPa・s以下の粘度を有してよい。
いくつかの実施態様において、前記第一液は、好ましくは15000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s以下、さらにより好ましくは8000mPa・s以下の粘度を有してよく、例えば5000mPa・s以下の粘度を有してもよい。
前記第一液の粘度の下限値については、例えば100mPa・s以上、特には500mPa・s以上、より特には1000mPa・s以上であってよい。
このような粘度は、例えば塗料を形成する際における計量又は混合などの作業に適している。
前記粘度は、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計(品番:RB-85形粘度計(BM形)、会社名:東機産業株式会社)により測定される粘度である。当該測定いおいて3または4号のローターが用いられてよく、当該ローターの回転速度は12rpmである。前記粘度は、JIS K 7117-1に従い測定されてよい。本明細書内の他の粘度(前記自己乳化型エポキシ樹脂自体の粘度、第二液の粘度、及び混合物の粘度など)についても、同じ方法で測定される。
すなわち、前記第一液は、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により粘度を測定可能である液状材料であってよい。特に好ましくは、前記第一液及び前記第二液のいずれもが、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により粘度を測定可能である液状材料である。これら2液がこのような粘度を有することにより、当該塗料形成系から塗料を調製する際における計量や混合が行いやすくなる。
【0036】
1.2 第二液
【0037】
(硬化剤)
前記第二液は、前記自己乳化型エポキシ樹脂を硬化するための硬化剤を含む。前記硬化剤は、自己乳化型エポキシ樹脂の種類に応じて当業者により適宜選択されてよい。前記硬化剤は、例えばアミン系硬化剤であってよい。当該アミン系硬化剤の例として、脂肪族ポリアミン硬化剤、アミドアミン硬化剤、脂環式アミン硬化剤、及び芳香族アミン硬化剤を挙げることができる。前記アミン系硬化剤は、これら挙げられた硬化剤のうちの1種であってよいが、2種以上の組合せであってもよい。本発明において、様々なアミン系硬化剤が用いられてよく、これらアミン系硬化剤によって、良好な骨材保持力が達成される。
【0038】
前記アミン系硬化剤の活性水素当量(AHEW)は、例えば30以上、好ましくは40以上、より好ましくは50以上であってよい。いくかの実施態様において、前記AHEWは、100以上であってよく、さらには150以上であってよく、さらには200以上であってもよい。
前記アミン系硬化剤の活性水素当量は、例えば500以下、好ましくは400以下、より好ましくは300以下であってよい。
このような活性水素当量を有する硬化剤は、例えば良好な骨材保持力を達成することに貢献する。また、硬化物の良好な硬度を達成することにも貢献する。
【0039】
前記アミン系硬化剤は、例えば50以上、好ましくは70以上、より好ましくは100以上のアミン価を有する硬化剤であってよい。
また、前記アミン系硬化剤は、例えば1000以下、好ましくは800以下のアミン価を有する硬化剤であってよい。いくつかの実施態様において、前記アミン系硬化剤のアミン価は、500以下であってよく、さらには300以下、さらには200以下であってもよい。
このようなアミン価を有する硬化剤は、良好な骨材保持力を達成するために特に好ましい。また、硬化物の良好な硬度を達成することにも貢献する。
【0040】
前記脂肪族ポリアミン硬化剤は、変性脂肪族ポリアミン硬化剤であってよい。当該変性脂肪族ポリアミン硬化剤は、例えば、AHEWが100~500、特には200~300である硬化剤であってよい。そのような硬化剤として、例えばサンマイドWH-900(エアープロダクツ社製)及びjERキュア(登録商標)WD11M60(三菱ケミカル株式会社製)を挙げることができる。また、変性脂肪族アミンが用いられてもよく、その例といて、JOINTMIDE921及び989、並びに、ハードナーPH-760、PH-770、及びPH-777Pが挙げられる。
前記脂肪族ポリアミン硬化剤は、ポリエーテルアミンであってもよい。前記ポリエーテルアミンは、例えばジアミン又はトリアミンであってよい。前記ポリエーテルアミンは、例えばオキシプロピレン単位の繰り返し構造を有するポリアミン(特にはジアミン又はトリアミン)であってよい。前記ジアミンの例として、例えば両末端がアミノ化されたポリプロピレングリコールが挙げられ、特にはポリオキシプロピレンα,ω-ジアミンがあげられる。前記トリアミンの例として、エチルトリス{アミノポリプロピルオキシ(n=3)メチル}メタンが挙げられる。このような脂肪族ポリアミン硬化剤(特には未変性脂肪族ポリアミン硬化剤)の例として、ジェファーミンシリーズ(巴工業株式会社)の硬化剤(例えばZD-123、D-230、D-2000、ZT-143、T-403、及びT-5000)を挙げることができる。
前記アミドアミン硬化剤は、ポリアミドアミンであってよい。当該ポリアミドアミンは、例えばダイマー酸とポリアミンとの縮合反応物であってよい。
前記脂環式アミン硬化剤(特には未変性脂環式ポリアミン)は、例えば1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンであってよく、又は、ビスパラアミノシクロヘキシルメタン(PACM)、又は、ノルボルナンジアミン(NBDA)であってもよい。
前記芳香族アミン硬化剤は、例えばポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートであってよい。当該芳香族ポリアミン硬化剤の例として、エラスマーシリーズ(クミアイ化学工業株式会社)の硬化剤(例えばエラスマー250P、650P、及び1000Pなど)が挙げられる。
本発明において採用されうる硬化剤は、これらの例に限られず、当業者により適宜選択されてよい。
【0041】
前記硬化剤は、前記第二液の主成分として含まれてよく、前記第二液中の前記硬化剤の含有割合は、前記第二液の質量に対して、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってよい。
前記含有割合はさらに高くてもよく、例えば80質量%以上、85質量%、又は90質量%以上であってもよい。
前記含有割合は100質量%であってもよく、前記含有割合の上限は特に設定されなくてよいが、例えば分散剤又は水などの他の成分が第二液に含まれる場合は、前記含有割合は100質量%未満であり、例えば95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよい。
【0042】
(その他の成分)
前記第二液は、さらに分散剤を含んでよい。当該分散剤については、後段で別途説明する。当該分散剤は、前記第二液の粘度を調節することができるだけでなく、前記第一液と前記第二液との混合物の骨材保持力の向上にも貢献する。
前記第二液は、さらに水を含んでもよい。当該水によって、前記第一液の粘度が調節されてもよい。当該水については後段で別途説明する。
また、前記第二液は、例えば顔料又は染料などの着色剤、消泡剤、又は粘度調節剤(例えば増粘剤など)をさらに含んでもよい。前記着色剤によって、所望の色を塗料に付与することができる。前記消泡剤により、前記第一液中における気泡を除去し又は気泡発生を抑制することができる。前記粘度調節剤によって、所望の粘度を前記第一液に与えることができる。
【0043】
(粘度)
前記第二液は、例えば30000mPa・s以下、特には25000mPa・s以下の粘度を有してよい。
いくつかの実施態様において、前記第二液は、好ましくは15000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s以下、さらにより好ましくは8000mPa・s以下の粘度を有してよく、例えば5000mPa・s以下の粘度を有してもよい。
前記第二液の粘度の下限値については、例えば100mPa・s以上、特には500mPa・s以上、より特には1000mPa・s以上であってよい。
このような粘度は、例えば塗料を形成する際における計量又は混合などの作業に適している。
前記粘度は、上記で第一液について述べたように、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により測定される粘度である。
すなわち、前記第二液は、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により粘度を測定可能である液状材料であってよい。特に好ましくは、前記第一液及び前記第二液のいずれもが、温度23℃且つ湿度50%RHにおいて、BM型粘度計により粘度を測定可能である液状材料である。
【0044】
前記第二液の粘度は、前記第一液の粘度の例えば0.1倍以上であってよく、好ましくは0.2倍以上であってよく、より好ましくは0.25倍以上であってよい。
前記第二液の粘度は、前記第一液の粘度の例えば10倍以下であってよく、好ましくは8倍以下であってよく、より好ましくは5倍以下であってよい。
前記第一液及び前記第二液の粘度がこのような関係を満たすことは、これら2液の混合作業を容易にすることに貢献する。
【0045】
1.3 分散剤
【0046】
一実施態様において、前記塗料形成系は、さらに分散剤を含んでよい。
【0047】
好ましい実施態様において、前記分散剤は、前記第一液に含まれていてよい。前記分散剤によって、前記第一液の粘度が調整される(特には低下される)とともに、前記第一液及び前記第二液の混合物における塗布性及び/又は骨材保持力を向上させることができる。
【0048】
他の好ましい実施態様において、前記分散剤は、前記第二液に含まれていてよい。前記分散剤によって、前記第二液の粘度が調整される(特には低下される)とともに、前記第一液及び前記第二液の混合物における塗布性及び/又は骨材保持力を向上させることができる。
【0049】
さらに他の好ましい実施態様において、前記分散剤は、前記第一液及び前記第二液の両方に含まれていてよい。前記分散剤によって、前記第一液及び前記第二液の粘度が調整される(特には低下される)とともに、前記第一液及び前記第二液の混合物の塗布性及び/又は骨材保持力を向上させることができる。
【0050】
さらに他の好ましい実施態様において、前記分散剤は、前記第一液及び前記第二液とは別の構成要素として、前記塗料形成系に含まれいてよい。例えば、前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液に加えて、前記分散剤を含む第三材料を含んでよい。前記第三材料は、液状材料であってよく又は固形材料であってもよい。
この実施態様において、例えばユーザが、前記第一液に前記第三材料を添加及び混合し、その後、当該混合により得られた混合物に、前記第二液が添加及び混合されてよい。このようにして3つの材料の混合物が得られ、当該混合物が硬化されうる。前記分散剤によって、当該混合物の塗布性及び/又は骨材保持力を向上させることができる。
【0051】
一実施態様において、前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及びアクリル重合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組合せであってよい。これらの界面活性剤及びアクリル重合物は、第一液若しくは第二液又はこれら2液の混合物の粘度を下げるとともに、前記第一液及び前記第二液の混合物の骨材保持力の維持又は向上及び/又は塗布性の向上に貢献する。
前記第一液又は前記第二液の粘度が下がることは、これら2液の計量作業または混合作業を実行しやすくすることに貢献する。
また、前記第一液及び前記第二液の混合物の粘度が下がることは、塗布性の向上又は骨材との混合作業の実行しやすさの向上に貢献する。
また、前記第一液及び前記第二液の混合物の粘度が下がると、骨材保持力は低下するが、これらの分散剤が用いられることによって、当該混合物の粘度が下がるにもかかわらず、骨材保持力は維持又は向上される。
【0052】
特に好ましくは、前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤である。前記ノニオン系界面活性剤は、前記混合物が有しうる臭気の低減ももたらす。前記混合物はしばしば臭気を生じ、当該臭気は、前記混合物の調製又は塗工を実行するユーザに不快感を与える。前記ノニオン系界面活性剤は、当該臭気の低減をもたらすので、特に好ましい。
【0053】
前記分散剤は、前記第一液中の硬化性成分の合計量(前記希釈剤が第一液に含まれない場合は、前記自己乳化型エポキシ樹脂の量。前記希釈剤が前記第一液に含まれる場合は当該樹脂と当該希釈剤との合計量。)を100質量部とした場合において、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上の量で用いられてよく、いくつかの実施態様においては2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、又は5質量部以上の量で用いられてもよい。
また、前記分散剤は、前記第一液中の硬化性成分の合計量(すなわち前記自己乳化型エポキシ樹脂及び、任意的に、前記希釈剤の合計量)を100質量部とした場合において、例えば30質量部以下、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下で用いられてもよい、いくつかの実施態様においては18質量部以下、17質量部以下、16質量部以下、又は15質量部以下で用いられてもよい。
【0054】
前記分散剤が前記第一液中に含まれている場合(特には前記第一液中に含まれているが前記第二液には含まれていない場合)において、前記分散剤の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってよい。
前記場合において、前記分散剤の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下であってよい。
このような含有割合によって、前記第一液の粘度が適切に低減され、これにより前記第一液は取り扱いやすくなる。また、当該含有割合は、塗料の硬度の向上にも貢献する。また、当該含有割合は、骨材保持力の向上及び/又は塗料の塗布性向上にも貢献する。
【0055】
前記分散剤が前記第二液中に含まれている場合(特には前記第二液中に含まれているが前記第一液には含まれていない場合)においては、前記分散剤の前記第二液中における含有割合は、前記第二液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってよい。
前記場合において、前記分散剤の前記第二液中における含有割合は、前記第二液の質量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下であってよい。
このような含有割合によって、前記第二液の粘度が適切に低減され、これにより前記第二液は取り扱いやすくなる。また、当該含有割合は、塗料の硬度の向上にも貢献する。また、当該含有割合は、骨材保持力の向上及び/又は塗料の塗布性向上にも貢献する。
【0056】
前記分散剤が前記第一液及び前記第二液の両方に含まれている場合において、これら両方の液に含まれる前記分散剤の合計量は、上記で述べた質量部に関する数値範囲内にあってよい。
前記場合において、前記分散剤の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であってよい。
前記場合において、前記分散剤の前記第二液中における含有割合は、前記第二液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であってよい。
前記場合において、前記分散剤の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
前記場合において、前記分散剤の前記第二液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
このような含有割合によって、前記第一液及び前記第二液の粘度が適切に低減され、これにより前記第一液及び前記第二液が取り扱いやすくなる。また、当該含有割合は、塗料の硬度の向上にも貢献する。また、当該含有割合は、骨材保持力の向上及び/又は塗料の塗布性向上にも貢献する。
【0057】
前記ノニオン系界面活性剤は、例えば、当該剤の1%水溶液を調製した場合において当該水溶液が4~8のpHを示す剤であってよく、特には5~7のpHを示すように構成された剤であってよい。
また、前記ノニオン系界面活性剤は、当該剤中の有効成分含有割合が例えば95%以上、特には98%以上、より特には100%である剤であってよい。
また、前記ノニオン系界面活性剤は、20℃における比重が例えば0.95g/cm~1.15g/cm、特には1.00g/cm~1.10g/cm、より特には1.02g/cm~1.08g/cmである剤であってよい。
前記ノニオン系界面活性剤の例として、例えばDA-550及びDN-900(楠本化成株式会社)、並びに、ノニオンE-212、ノニオンID-206、及びノニオンID-209(日油株式会社)を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0058】
前記アニオン系界面活性剤は、当該剤中の有効成分含有割合が例えば20%~40%、特には25%~35%である剤であってよい。当該剤は、アニオン界面活性剤のアミン塩を有効成分として含んでよい。
また、前記アニオン系界面活性剤は、酸価が例えば10~40、特には20~30であってよい。
また、前記アニオン系界面活性剤は、アミン価が15~45、特には25~35であってよい。
また、前記アニオン系界面活性剤は、20℃における比重が例えば0.90g/cm~1.10g/cm、特には0.95g/cm~1.05g/cm、より特には1.00g/cm~1.05g/cmである剤であってよい。
【0059】
前記アクリル重合物は、当該剤中の有効成分含有割合が例えば20%~40%、特には25%~35%である剤であってよい。前記アクリル重合物アミンは、アクリルポリマー及びアミンを含むものであってよい。
また、前記アクリル重合物は、20℃における比重が例えば0.88g/cm~1.08g/cm、特には0.90g/cm~1.06g/cm、より特には0.92g/cm~1.04g/cmである剤であってよい。
また、前記アクリル重合物は、酸価が例えば5~30、特には10~20であってよい。
また、前記アクリル重合物は、アミン価が3~30、特には5~15であってよい。
【0060】
1.4 水
一実施態様において、前記塗料形成系は、さらに水を含んでよい。
【0061】
好ましい実施態様において、前記水は、前記第二液に含まれていてよい。前記水によって、前記第二液の粘度が調整される(特には低下される)とともに、前記第一液及び前記第二液の混合物における塗布性及び/又は骨材保持力を向上させることができる。
【0062】
他の好ましい実施態様において、前記水は、前記第一液に含まれていてよい。前記水によって、前記第一液の粘度が調整されてもよく、特には低下されてもよい。また、前記水によって、前記第一液及び前記第二液の混合物における塗布性及び/又は骨材保持力を向上させることができる。
【0063】
さらに他の好ましい実施態様において、前記水は、前記第一液及び前記第二液の両方に含まれていてよい。前記水によって、前記第一液及び前記第二液の粘度が調整されてよく、特には低下されてよい。さらに、前記水によって、前記第一液及び前記第二液の混合物の塗工性及び/又は骨材保持力を向上させることができる。
【0064】
さらに他の好ましい実施態様において、前記水は、前記第一液及び前記第二液とは別の構成要素として、前記塗料形成系に含まれていてよい。例えば、前記塗料形成系は、前記第一液及び前記第二液に加えて、前記水を第三材料として含んでよい。
この実施態様において、例えばユーザが、前記第一液に前記水を添加及び混合し、その後、当該混合により得られた混合物に、前記第二液が添加及び混合されてよい。このようにして3つの材料の混合物が得られ、当該混合物が硬化されうる。前記水によって、当該混合物の塗工性及び/又は骨材保持力を向上させることができる。
【0065】
前記水の含有量は、前記第一液又は前記第二液の粘度が所望の数値範囲内となるように、当業者により適宜選択されてよい。
【0066】
前記水が前記第一液中に含まれている場合(特には前記第一液中に含まれているが前記第二液には含まれていない場合)において、前記水の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であってよい。
前記場合において、前記水の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば15質量%以下、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
このような含有割合によって、前記第一液の粘度が適切に低減され、これにより前記第一液は取り扱いやすくなる。また、当該含有割合は、塗料の硬度の向上にも貢献する。また、当該含有割合は、骨材保持力の向上及び/又は塗料の塗工性向上にも貢献する。
【0067】
前記水が前記第二液中に含まれている場合(特には前記第二液中に含まれているが前記第一液には含まれていない場合)においては、前記水の前記第二液中における含有割合は、前記第二液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってよい。
前記場合において、前記水の前記第二液中における含有割合は、前記第二液の質量に対して、例えば50質量%以下、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であってよい。
このような含有割合によって、前記第二液の粘度が適切に低減され、これにより前記第二液は取り扱いやすくなる。また、当該含有割合は、塗料の硬度の向上にも貢献する。また、当該含有割合は、骨材保持力の向上及び/又は塗料の塗工性向上にも貢献する。
【0068】
前記水が前記第一液及び前記第二液の両方に含まれている場合において、前記水の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってよい。
前記場合において、前記水の前記第二液中における含有割合は、前記第二液の質量に対して、例えば1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってよい。
前記場合において、前記水の前記第一液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば15質量%以下、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
前記場合において、前記水の前記第二液中における含有割合は、前記第一液の質量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であってよい。
このような含有割合によって、前記第一液及び前記第二液の粘度が適切に低減され、これにより前記第一液及び前記第二液が取り扱いやすくなる。また、当該含有割合は、塗料の硬度の向上にも貢献する。また、当該含有割合は、骨材保持力の向上及び/又は塗料の塗工性向上にも貢献する。
【0069】
1.5 使用方法
本発明の塗料形成系の使用方法の一例は、例えば以下のとおりである。すなわち、まず当該塗料形成系を構成する材料(前記第一液及び前記第二液、並びに、任意的に前記分散剤及び/又は前記水)を混合して混合物が得られる。前記混合物が塗料として用いられてよい。そして、当該塗料(すなわち当該混合物)が所望の部位に塗布され、その後、当該混合物が硬化される。当該硬化は、常温での硬化であってよく、すなわち塗布された前記塗料が放置されて硬化されてよい。また、当該硬化を促進するために、加熱及び/又は乾燥が行われてもよい。
【0070】
1.5.1 骨材
前記混合物には、骨材がさらに混合されてよい。すなわち、前記混合物にさらに骨材が添加及び混合されて、骨材含有塗料が得られる。なお、前記混合物は、骨材を混合されることなく、塗料(すなわち骨材不含有塗料)として面に施与されてもよい。
前記骨材は、無機物又は有機物のいずれであってもよく、無機物及び有機物の両方を含む材料であってもよい。骨材の例を以下に説明する。
【0071】
前記骨材は、砂状骨材であってよい。当該砂状骨材は、例えば砂、砂利、砂鉄、及び石(例えば砕石などの人工砂又は人工砂利など)を包含するがこれらに限定されない。当該砂様骨材は、川、陸地、山、又は海に由来するものであってよい。また、当該砂状骨材は、パーライトなど軽量骨材であってもよい。
また、前記骨材は、金属粉状骨材であってよい。当該金属粉状骨材は、例えば金属粉、特には鉄粉、銅粉、アルミ粉、ニッケル粉、又は合金粉などを包含するがこれらに限定されない。
また、前記骨材は、例えばセラミック(例えば陶器、磁器、又はガラスなど)などに由来する骨材、特にはセラミックの粉砕物であってもよい。前記骨材として、例えばセラミック粉末が前記骨材として用いられてもよいが、これらに限定されない。
また、前記骨材は、例えば植物などに由来する骨材、特には木材又は紙に由来する骨材であってもよい。当該骨材は、例えばおがくず又は木粉又は紙粉が挙げられるがこれらに限定されない。
前記塗料形成系の混合物に混合される骨材は、以上で挙げた骨材のうちの1種であってよく又は2種以上の組合せであってもよい。骨材の種類は、当業者により適宜選択されてよい。
【0072】
前記骨材は、平均粒子サイズが例えば10mm以下、特には5mm以下、より特には3mm以下であってよい。前記骨材は、所望の塗装外観を得るために、適宜粉砕処理などによってそのサイズが調整されてよい。前記骨材の粒径は、JIS A 1102:2014に従い測定されてよい。
【0073】
1.5.2 混合比率
前記第一液及び前記第二液の混合比率は、前記第一液のエポキシ当量及び前記第二液の活性水素当量(特にはアミン当量)に応じて、当業者により適宜選択されてよい。例えば、エポキシ樹脂と硬化剤との間での付加重合が適切に進行するように、前記混合比率は調整されてよい。
【0074】
一実施態様において、前記第一液100質量部に対して、前記第二液が例えば50質量部~150質量部で、好ましくは70質量部~130質量部で、より好ましくは80質量部~120質量部で、前記第一液及び前記第二液は混合されてよい。前記第一液及び前記第二液の混合比率がこのような数値範囲であることは、これら液の混合のための作業性を向上させる。
【0075】
1.5.3 粘度
前記第一液及び前記第二液を混合して得られる混合物(前記骨材不含有塗料)の粘度は、温度23℃且つ湿度50%RHにおいてBM型粘度計により測定したときに、例えば3000mPa・s以上であり、好ましくは5000mPa・s以上、より好ましくは5000mPa・s以上であってよく、いくつかの実施態様においては、8000mPa・s以上、9000mPa・s以上、又は10000mPa・s以上であってよい。
前記混合物の粘度は、温度23℃且つ湿度50%RHにおいてBM型粘度計により測定したときに、例えば300000mPa・s以下、好ましくは250000mPa・s以下、より好ましくは200000mPa・s以下であってよく、いくつかの実施態様においては、150000mPa・s以下、100000mPa・s以下、50000mPa・s以下、又は30000mPa・s以下であってもよい。
このような粘度は、塗工性の向上に貢献する。また、骨材保持力の向上にも貢献する。
前記粘度は、上記で第一液について述べたように、温度23℃且つ湿度50%RHにおいてBM型粘度計により測定される。また、前記粘度は、前記第一液及び前記第二液を温度23℃且つ湿度50%RHで温調し、そして、これら2つの液(前記第一液及び前記第二液とは別に分散剤及び/又は水が追加成分として塗料形成系に含まれる場合は、これらすべての成分)を所定の比率で混合し、約2分間手作業で攪拌して混合物が得られる。当該攪拌直後に、前記混合物に対して上記のとおりに粘度測定が実施される。
【0076】
また、前記粘度などの塗料物性を調整するために、本開示の塗料形成系とは別にユーザ自身が予め保有している水又は分散剤が適宜混合されてもよい。本開示の塗料形成系は、そのような混合が行いやすく、利便性が高い。
【0077】
1.5.4 施与方法
本発明の塗料形成系を用いて製造された塗料(前記骨材含有塗料又は前記骨材不含有塗料)は、当技術分野で既知の手法で基材(すなわち塗装が行われるべき面)に施与されてよい。前記塗料は、塗工性に優れているので、ユーザが扱いやすい。また、前記塗料は、骨材保持力にすぐれているので、ダレにくい。
【0078】
前記基材は、例えば木材、金属、ガラス、モルタル、コンクリート、又は樹脂から形成された基材であってよい。すなわち、前記塗料は、例えば木材面、金属面、ガラス面、モルタル面、コンクリート面、又は樹脂面に施与されてよい。前記塗料は、特には、木材面、金属面、ガラス面、モルタル面、又はコンクリート面に施与されるために、特に適している。
【0079】
前記塗料は、塗膜の厚みが例えば0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上となるように前記基材に施与されてよい。
また、前記塗料は、塗膜の厚みが例えば20mm以下、好ましくは10mm以下となるように前記基材に施与されてよい。
このような厚みとなるように施与されることで、前記塗料は適切に硬化する。また、当該厚みは、塗装面の硬度を高めることにも貢献する。
【0080】
前記塗料が所望の面に施与された後に、前記塗料は硬化される。当該硬化は、上記のとおり常温で放置されることにより実行されてよいが、例えば加熱及び/又は乾燥などの硬化促進処理が実行されてもよい。
【0081】
前記硬化後に、硬化物の面が、研磨されてもよい。当該研磨によって、例えば硬化物の面に光沢をもたらすことができ、又は、骨材に由来する模様がより顕著に表れる。また、当該研磨によって、骨材に由来する光沢の発現を高めることもできる。当該研磨のための手段は、当業者により適宜選択されてよいが、例えば当技術分野で既知の研磨剤、バフ、サンドペーパー、若しくは耐水ペーパー又はこれらの組合せが適宜使用されてよい。さらに、当該研磨のための手段として、例えばサンダーまたはグラインダーなどの研磨機が用いられてもよい。
【0082】
本発明の塗料形成系を用いて得られる塗料(骨材を含まない塗料)は、タイプDデュロメータ硬さが、例えば63以上であり、好ましくは64以上、より好ましくは65以上であってよい。いくつかの実施態様においては、前記タイプDデュロメータ硬さは、さらに66以上であってもよい。前記タイプDデュロメータ硬さの上限は特に設定されなくてよいが、例えば90以下、85以下、又は80以下であってよい。前記デュロメータ硬さは、JIS K 6253に従い測定される。当該測定のための測定装置は、硬さ試験機(HN-0112、興國機工株式会社)である。当該デュロメータ硬さを測定するためのサンプルは、前記第一液及び前記第二液の混合物を、容器に流して硬化させて得られる円盤型の硬化物である。当該硬化物のサンプルの厚みは、約8~10mmである。当該硬化物を得るための養生時において、前記混合物は、反応促進の為に40℃恒温槽にて硬化される。また、当該恒温槽に投入されてから、丸2日以上経過した後に、23℃へ調温されて測定される。当該デュロメータ硬さは、温度23℃且つ湿度50%RHの環境下で測定される。
本発明の塗料形成系は、このように優れた硬さを有する塗装面を形成することができる。
【0083】
本発明の塗料形成系を用いて得られる塗料(骨材を含まない塗料)は、モース硬度が、例えば2以上であってよく、好ましくは3以上である。前記モース硬度の上限は特に設定されなくてよいが、例えば6以下、5以下、又は4以下であってよい。前記モース硬度は、10段階の基準鉱物との比較により、測定サンプルの硬度が測定される。当該モース硬度は、当該モース硬度はモース硬度計(GE006、株式会社東京サイエンス)を用いて測定される。当該モース硬度を測定される測定サンプル及び測定環境は、上記で述べたデュロメータ硬さに関するものと同じである。
本発明の塗料形成系は、このように優れた硬さを有する塗装面を形成することができる。
【0084】
1.6 製造方法
前記塗料形成系は、当技術分野における既知の手法により製造されてよい。例えば、前記第一液及び前記第二液は、各液に含まれる材料を、当技術分野において既知の混合装置を用いて混合することで製造されてよい。当該混合において用いられる装置及び混合条件は、当業者により適宜選択されてよい。
【0085】
1.7 混合物
本発明は、前記塗料形成系を構成する材料の混合物も提供する。当該混合物は塗料として用いられてよい。当該混合物は、前記第一液及び前記第二液の混合物であってよい。前記混合物に、前記分散剤及び/又は前記水がさらに含まれていてもよい。当該混合物自体が塗料として用いられてよく、又は、当該混合物にさらに骨材が添加及び混合されたものが塗料として用いられてもよい。すなわち、本発明は、前記塗料形成系を用いて得られた塗料も提供する。前記混合物は、塗工性に優れており、また、骨材保持力にも優れている。
また、前記混合物は、優れた硬度を有する塗装面も提供することができる。
また、前記混合物は、例えば種々の骨材を含むことができるので、優れた美観を有する塗装面を提供することができる。
【0086】
1.8 硬化物
本発明は、前記混合物(特には前記塗料)の硬化物も提供する。すなわち、本発明は、前記塗料形成系を用いて得られた塗料の硬化物も提供する。前記混合物は、塗工性に優れており、また、骨材保持力にも優れている。また、前記混合物は、優れた硬度を有する塗装面も提供することができる。
【0087】
1.9 塗料を形成するために用いられる液状材料
本発明は、前記第一液そのものも提供する。
すなわち、本発明は、自己乳化型エポキシ樹脂を含有する液状材料を提供する。前記液状材料は、硬化剤(特には前記第二液)と組み合わせて塗料を形成するために用いられるものであってよい。
いくつかの実施態様において、前記液状材料は、前記塗料を形成するために、さらに分散剤と組み合わされてよい。形成前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル重合物であってよい。
前記液状材料(すなわち前記第一液)の詳細については、上記で述べた通りであるので省略する。
【0088】
また、本発明は、前記第二液そのものも提供する。
すなわち、本発明は、硬化剤を含有する液状材料を提供する。前記液状材料は、自己乳化型エポキシ樹脂と組合せて塗料を形成するために用いられるものであってよい。
いくつかの実施態様において、前記液状材料は、前記塗料を形成するために、さらに分散剤と組み合わされてよい。形成前記分散剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又はアクリル重合物であってよい。
前記液状材料(すなわち前記第二液)の詳細については、上記で述べた通りであるので省略する。
【0089】
2.実施例
【0090】
以下、本発明を、実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものでない。
【0091】
2.1 試験例1(希釈用エポキシ樹脂による粘度調節)
【0092】
以下表1に示される組成を有する試験例1~5の塗料形成系を用意した。当該塗料形成系は、同表に示されるように、第一液と第二液の2液から構成される。
【0093】
【表1】
【0094】
上記表中の各資材の詳細は以下のとおりである。
AW-1000:自己乳化型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(化審法番号:7-1283)及びポリオキシエチレンアルキルアミンとエポキシ化合物との反応物(化審法番号:7-260)を含む、エポキシ当量210~220g/eq)、蝶理GLEX株式会社
サンマイドWH-900:変性脂肪族ポリアミン(トリエチレンテトラミン及びキシリレンジアミンを含む)、エボニック・ジャパン株式会社
ED-505:反応性希釈剤(第一液の希釈用の3官能反応型エポキシ化合物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エポキシ当量150g/eq、アデカグリシロールED-505、株式会社ADEKA)
【0095】
各塗料形成系の第一液及び第二液の粘度を測定した。測定結果が同表に示されている。
【0096】
また、各塗料形成系の第一液及び第二液を混合して塗料を形成した。各試験例の塗料について、硬度(タイプDデュロメータ硬さ)及び粘度を測定した。これらの測定方法は、上記で述べたとおりである。
【0097】
さらに、これら塗料の骨材保持力を評価した。当該評価は以下のとおりに実行された。用いられた骨材は、川砂であった。当該川砂は、目開き3mmの濾過網を通過した砂利(あかぎ園芸株式会社)である。
(1)前記第一液及び前記第二液を、所定の比率(表に記載されている)で混合し、約2分間手作業で攪拌して、これら2液の混合物を得る。
(2)当該混合物:骨材=1:4の質量比となるように、当該混合物に骨材を投入し、当該骨材が当該混合物に馴染むまで手作業で攪拌して、骨材含有塗料を得る。
(3)ラワン合板(JAS:JTIC-TW3、サイズ:150mm×70mm×40mm)に上記(2)の骨材含有塗料を約30g塗布し、全面に塗り広げる。
(4)上記(3)において、前記骨材含有塗料が全面に塗布された前記ラワン合板を鉛直になるようにつるし、約30分間放置する。
(5)前記ラワン合板からの前記骨材含有塗料の落下の程度を目視にて確認し、以下の基準により骨材保持力を評価する。
<骨材保持力>
AA:骨材含有塗料はダレておらず、また、骨材含有塗料の合板からの落下もない。優れた骨材保持力を示す。
A:骨材含有塗料のわずかにダレる又は落下するが、許容可能な骨材保持力である。
B:多量の骨材含有塗料がダレる又は落下し、許容できない骨材保持力である。
【0098】
さらに、これら塗料の塗布性が評価された。当該評価の基準は以下のとおりである。
<塗布性>
AA:基材への濡れ性が良好であり、一度コテで拡げるだけで容易に塗布することが出来る。また塗布後コテ離れが良い。
A:塗布時にある程度力を込めるか、複数回塗り広げることで基材へ塗布することが出来る。
B:基材への濡れ性が悪く、合板の上で骨材含有塗料が広がらない。またコテ離れが悪い。
【0099】
同表に示されるように、主剤(自己乳化型エポキシ樹脂)に希釈用のエポキシ化合物を加えることで、第一液の粘度を下げることができ、さらに第一液及び第二液の混合物の粘度も下げることができる。しかしながら、塗料の塗布性は改善されない。
【0100】
2.2 試験例2(水による粘度調節)
【0101】
以下表2に示される組成を有する試験例2-1~2-5の塗料形成系を用意した。当該塗料形成系は、同表に示されるように、第一液と第二液の2液から構成される。同表中の各資材の詳細は、表1に関して説明したとおりである。
【0102】
【表2】
【0103】
各塗料形成系の第一液及び第二液の粘度を測定した。測定結果が同表に示されている。
【0104】
また、各塗料形成系の第一液及び第二液を混合して塗料を形成した。各試験例の塗料について、硬度及び粘度を測定した。さらに、塗布性及び骨材保持力を評価した。これらの測定結果及び評価結果も同表に示されている。
【0105】
同表に示されるように、塗料形成系に水を追加することで(特には硬化剤に水を加えることで)、第二液の粘度を下げることができ、第一液及び第二液の混合物の粘度を下げることができる。しかしながら、塗料の塗布性は、改善されない。また、得られた塗料硬化物の硬度もやや低い値となっている。
【0106】
2.3 試験例3(分散剤の添加)
【0107】
以下表3に示される組成を有する試験例3-1~3-12の塗料形成系を用意した。試験例3-1~3-6の塗料形成系は分散剤を含まない。試験例3-7~3-12の塗料形成系は、分散剤を含むこと以外は、試験例3-1~3-6の塗料形成系と同じである。同表中の分散剤の詳細は以下のとおりである。その他の各資材の詳細は、表1に関して説明したとおりである。
DA-550:ノニオン系界面活性剤、楠本化成株式会社
【0108】
【表3】
【0109】
各塗料形成系の第一液及び第二液の粘度を測定した。次に、各塗料形成系の第一液及び第二液を混合して塗料を形成した。各試験例の塗料について、硬度及び粘度を測定した。さらに、塗布性及び骨材保持力を評価した。これらの測定結果及び評価結果も同表に示されている。
【0110】
同表に示されるように、分散剤を添加することによって、塗布性が改善されることが分かる。
また、分散剤が主剤に添加されることで、第一液の粘度が低下し、さらに、第一液及び第二液の混合物の粘度も低下することが分かる。粘度の低下は、液体の計量しやすさを高める。
また、分散剤が主剤に添加されることで、粘度が低下するものの、骨材保持力は維持されている。すなわち、当該分散剤は、良好な骨材保持力を維持しつつ、計量しやすさを高めることができる。
また、表2と表3の結果より、前記第一液中に含まれる自己乳化性エポキシ樹脂の含有割合と反応性希釈剤との含有割合を調整することによって、硬度を高めることができることもわかる。
【0111】
以上のとおり、塗料形成系に分散剤が加えられることで、特には主剤に分散剤が組み合わされることで、塗料の計量のしやすさを高めることができ、且つ、塗料の塗布性を向上することができ、且つ、良好な骨材保持力をもたらすことができる。
すなわち、本発明に従う塗料形成系は、塗布性に優れた塗料を形成することができ、さらに、当該塗料は良好な骨材保持力を有する。
また、本発明に従う塗料形成系は、良好な硬度を有する塗料を形成することもできる。
【0112】
2.4 試験例4(分散剤の種類及び量の検討)
【0113】
以下表4に示される組成を有する試験例4-1の塗料形成系を用意した。当該塗料形成系は、同表に示されるように、第一液と第二液の2液から構成される。
【0114】
【表4】
【0115】
上記表中の各資材の詳細は以下のとおりである。
AW-1000:自己乳化型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(化審法番号:7-1283)及びポリオキシエチレンアルキルアミンとエポキシ化合物との反応物(化審法番号:7-260)を含む)、蝶理GLEX株式会社
サンマイドWH-900:変性脂肪族ポリアミン(トリエチレンテトラミン及びキシリレンジアミンを含む)、エボニック・ジャパン株式会社
AEROSIL RY-200S:疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社
BYK-066N:シリコン系消泡剤、BYK社
【0116】
上記試験例1の塗料形成系に、さらに各種分散剤を加えた以下表5に示される組成の試験例4-2~4-15の塗料形成系を用意した。そして、各塗料形成系の第一液、第二液、及び分散剤を混合して塗料を形成した。なお、これら試験例に関して、各分散剤はいずれも、第一液と第二液の混合物に添加された。
【0117】
これら試験例の塗料について、骨材を含まない状態で塗布した際のダレ性を評価した。また、これら試験例の塗料について、上記と同様に、骨材保持力も評価した。これらの評価は、各塗料をラワン合板に施与することによって行われた。当該評価の結果も表5に示されている。
【0118】
【表5】
【0119】
上記表中の各分散剤の詳細(分散剤成分)は以下のとおりである。
AQ-380:アクリル重合物、楠本化成株式会社
AQ-360:アニオン系界面活性剤、楠本化成株式会社
DA-325:ポリエーテル燐酸エステルアミン、楠本化成株式会社
DA-375:ポリエーテル燐酸エステル、楠本化成株式会社
DA-550:非イオン系界面活性剤 、楠本化成株式会社
DN-900:アクリル系重合物、楠本化成株式会社
AQ-320:ポリエーテル及び燐酸エステル、楠本化成株式会社
AQ-330:ポリエーテル及び燐酸エステル、楠本化成株式会社
AQ-340:燐酸エステル、楠本化成株式会社
【0120】
同表に示されるように、いずれの分散剤も含まない試験例1での評価結果はAであるのに対し、アクリル重合物、アニオン系界面活性剤、又はノニオン系界面活性剤を含む試験例の塗料については、ダレ性の評価結果がAAであった。そのため、このような水系分散剤を含む塗料形成系は、ダレにくい塗料を形成することができることが分かる。また、骨材保持力の観点からは、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤を含む塗料形成系が特に優れていた。
【0121】
また、溶剤系の分散剤又はリン酸エステルの分散剤を含む試験例の塗料については、ダレ性の評価結果はBであった。そのため、これらの分散剤が塗料に含まれることで、塗料はダレやすくなることも分かる。
【0122】
次に、以下の表6に示されるように、分散剤の量を変更したこと以外は試験例2と同じ塗料形成系を2種用意した(試験例12及び13)。同様に、分散剤の量を変更したこと以外は試験例7と同じ塗料形成系を2種用意した(試験例14及び15)。そして、各塗料形成系の第一液、第二液、及び分散剤を混合して塗料を形成した。
【0123】
これら6種の試験例の塗料について、ダレ性及び骨材保持力を評価した。当該評価は、各塗料をラワン合板に施与することによって行われた。当該評価の結果も表6に示されている。
【0124】
【表6】
【0125】
同表に示されるように、分散剤の量がいずれの値であっても、評価結果がAAであった。そのため、分散剤の量として種々の値が利用でき、良好な塗料特性をもたらすことができる。
【0126】
2.5 試験例5(硬化剤の種類の検討)
【0127】
以下表7に示される組成を有する試験例5-1~5-6の塗料形成系を用意した。当該塗料形成系は、同表に示されるように、第一液と第二液の2液から構成される。各塗料形成系は、硬化剤の種類が異なること以外は、同じである。なお、各試験例で、硬化剤の量が異なるが、これは、主剤のエポキシ当量に基づく調整である。
【0128】
【表7】
【0129】
上記表中の各資材の詳細は以下のとおりである。
サンマイドWH-900:変性脂肪族ポリアミン(トリエチレンテトラミン及びキシリレンジアミンを含む)、エボニック・ジャパン株式会社
JEFFAMINE T-403:脂肪族ポリアミン、エチルトリス{アミノポリプロピルオキシ(n=3)メチル}メタン(CAS: 39423-51-3、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン)、分子量440、ハンツマン・ジャパン株式会社
JEFFAMINE D-230:脂肪族ポリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン(
ポリオキシプロピレンα,ω-ジアミン、CAS: 9046-10-0)、分子量230、ハンツマン・ジャパン株式会社
JOINTMIDE 3205:ポリアミドアミン(CAS: 68410-23-1)、蝶理GLEX株式会社
1,3-BAC:1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(CAS: 2579-20-6)、分子量142.24、蝶理GLEX株式会社
エラスマー1000P:ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(CAS: 54667-43-5)、分子量470、クミアイ化学工業株式会社
【0130】
試験例5-1~5-6のいずれ塗料形成系についても、良好な骨材保持力が得られた。そのため、本発明の効果は、種々の硬化剤を用いた場合においても発揮されることが分かる。
【0131】
2.6 試験例6(骨材のバリエーション)
【0132】
以下表8に示される組成を有する試験例6-1~6-2の塗料形成系を用意した。また、上記で述べた試験例4-1の塗料形成系も用意した。これら塗料形成系は、同表に示されるように、第一液と第二液の2液から構成される。各塗料形成系の第一液及び第二液を同表に示される混合比で混合して得られた混合物に、さらに、同表に示される骨材を添加及び混合して塗料を形成した。
【0133】
各塗料形成系の2つの液の粘度及び塗料の粘度が測定された。また、各骨材含有塗料の骨材保持力を評価した。当該評価の結果も同表に示されている。
【0134】
【表8】
【0135】
同表に示されるとおり、いずれの骨材含有塗料も、骨材保持力の評価結果がAAであった。そのため、本発明の塗料形成系は、骨材の種類かかわらず、良好な骨材保持力を発揮することが分かる。
【0136】
2.7 試験例7(水の添加)
【0137】
以下表9に示される組成を有する試験例7-1~7-2の塗料形成系を用意した。試験例7-1の塗料形成系は分散剤を含まないが、試験例7-2の塗料形成系は分散剤を含む。
【0138】
塗料形成系は、しばしばユーザによって適宜水が添加されて、塗布性が調整されうる。そこで、試験例7-1及び7-2の塗料形成系に、同表に示される量の水を添加した場合の塗布性及び骨材保持力を評価した。
【0139】
水の添加割合は、同表に示されるように、塗料形成系の第一液及び第二液の混合物10g当たり水1g、2g、3g、又は4gであり、すなわち希釈倍率10%、20%、30%、及び40%とした。水の添加後に、さらに川砂40gをそれぞれ加えて混合して、骨材含有塗料を得た。当該塗料を、JAS規格の木材試験片に30g塗布し、塗布性(塗り易さ)と骨材保持力を評価した。
【0140】
【表9】
【0141】
同表に示されるように、希釈倍率が10%及び20%のいずれの場合においても、試験例7-1の塗料形成系を用いて得られた骨材含有塗料よりも、試験例7-2の塗料形成系を用いて得られた骨材含有塗料のほうが、塗布性は優れていた。さらに、試験例7-2の塗料形成系を用いて得られた骨材含有塗料は、骨材保持力も優れていた。
【0142】
これらの結果より、本発明の塗料形成系は、水により希釈されても、塗布性に優れており且つ骨材保持力にも優れていることが分かる。
【0143】
2.8 試験例8(分散剤の量)
【0144】
以下表10に示される組成を有する試験例8-1~8-5の塗料形成系を用意した。試験例8-1の塗料形成系は分散剤を含まないが、試験例8-2~8-4の塗料形成系は、同表に示される量の分散剤を含む。試験例8-5は、試験例8-3における分散剤の代わりに、当該分散剤と同量の水が添加されたものである。
【0145】
これら試験例の塗料形成系を構成する2液の粘度を測定した。また、これら試験例の塗料形成系の液を混合して得られる混合物の粘度を測定した。また、これら試験例の塗料形成系を用いて得られた骨材含有塗料の塗布性及び骨材保持力を評価した。測定結果及び評価結果が同表に示されている。
【0146】
【表10】
【0147】
同表に示されるように、分散剤を添加することによって、分散剤を含まない場合と比べて、塗布性が改善された。また、同表に示されるように、分散剤の添加量が変更されても塗布性改善効果は発揮された。また、分散剤の添加により粘度が低下するものの、骨材保持力は維持されていることも分かる。
また、分散剤の代わりに水が添加された場合は、分散剤を含む場合と比べて塗布性は改善されないことも分かる。
【0148】
2.9 試験例9(骨材の例)
【0149】
試験例6-2の塗料形成系の第一液の構成成分のうちAW-1000の割合を上げ且つED-505の割合を下げて粘度が2700mPa・sとなるよう調整した第一液並びに試験例6-2の塗料形成系の第二液の構成成分のうちサンマイドWH-900の割合を上げ且つ水の割合を下げて粘度が5020mPa・sとなるよう調整した第二液からなる塗料形成系(「試験例9の塗料形成系」ともいう)を用意した。
試験例9の塗料形成系の前記第一液及び前記第二液が、エポキシ当量及び活性水素当量を踏まえ100:120の混合比で混合されて、8580mPa・sの粘度を有する混合物が得られた。
試験例9の塗料形成系についても、試験例6と同じように硬度及び骨材保持力を評価したところ、硬度については試験例6-2より良い結果が得られ、その硬度は69であった。また、骨材保持力は、試験例6-2と同程度に優れていた。
これらの結果より、硬度をより高めるために、前記第一液中の前記自己乳化型エポキシ樹脂の含有割合は、試験例6-2の場合よりもさらに高くてもよく、例えば前記第一液の質量に対して、例えば75質量%以上、好ましくは76質量%以上であってよい。
また、硬度をより高めるために、前記希釈剤の前記第一液中における含有割合は、試験例6-2の場合よりもさらに低くてもよく、前記第一液の質量に対して、例えば12質量%以下、好ましくは10質量%以下であってもよい。
また、硬度をより高めるために、前記第二液中の硬化剤の含有割合は、試験例6-2の場合よりもさらに高くてもよく、第二液の質量に対して、例えば70質量%以上、好ましくは75質量%以上であってもよい。この場合、前記第二液中の水の含有割合は、残部であってよく、前記第二液質量に対して、例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下であってよい。
【0150】
試験例9の上記混合物に、種々の骨材(砂鉄又は鉄粉)をさらに混合して骨材含有塗料を得た。当該骨材含有塗料中の前記混合物及び前記骨材の質量割合は、混合物:骨材=1:5(砂鉄の場合)又は1:6(鉄粉の場合)であった。このようにして得られた骨材含有塗料の骨材保持力を上記で述べたように評価したところ、いずれの場合もAAの評価結果であった。
すなわち、当該骨材含有塗料中の前記混合物及び前記骨材の質量割合は、当業者により適宜選択されてよいが、例えば1:0.01~1:10であってよく、好ましくは1:0.1~1:8であり、より好ましくは1:0.5~1:7、得には1:1~1:6であってよい。このような比率は、例えば砂状骨材、金属粉状骨材、又はセラミック骨材の場合に適しており、このような骨材が用いられる場合に採用されてよい。
このような比率によって、より多くの骨材が前記混合物に含まれる。このような比率は、上記のとおり、無機系材料また、本開示の塗料形成系は、このように多量の骨材が含まれたとしても、良好な骨材保持力を発揮できる。
【0151】
次に、前記混合物に、骨材としておがくずをさらに混合して他の骨材含有塗料を得た。前記混合物と前記骨材との質量割合は、当該骨材含有塗料中の前記混合物及び前記骨材の質量割合は、混合物:骨材=4:1であった。このようにして得られた骨材含有塗料の骨材保持力を上記で述べたように評価したところ、AAの評価結果であった。なお、おがくずなどの植物性材料は、その状態によっては、前記混合物中に分散しにくいが、含有割合を調整することによって、良好な骨材含有塗料が得られる。
このように、前記混合物と前記骨材とは、当該骨材含有塗料中の前記混合物及び前記骨材の質量割合は、例えば20:1~1:1であってよく、好ましくは15:1~2:1であり、より好ましくは10:1~3:1であってよい。このような比率は、例えば植物性骨材の場合に適している。
このような比率によって、植物性の骨材が良好に前記混合物中に分散される。また、良好な骨材保持力が発揮される。
【0152】
これらの結果より、本発明の塗料形成系において、分散剤の量は種々の割合で添加された場合において、塗布性改善効果が発揮される。さらに、本発明の塗料形成系において、分散剤の添加による粘度低下が起こっても、骨材保持力は維持される。
【0153】
2.10 試験例10(基材の例)
【0154】
試験例9の塗料形成系の第一液及び第二液を試験例9において述べたとおりの混合比で混合し、そして、当該混合により得られた混合物を、種々の基材へ塗布して硬化させた。用いられた基材は、ガラス、モルタル、アルミ、SPCC(冷間圧延鋼板)、SUS304(ステンレス鋼 )、及びボンデであった。当該混合物の塗布厚みは、約0.2mmであった。また、塗布後の硬化は温度23℃で行われた。前記硬化物の各基材からの剥離しにくさを評価したところ、手作業では硬化物は各基材から剥離できなかった。そのため、本発明の塗料形成系により得られる塗料の硬化物は、このようなセラミック系材料、コンクリート系材料、及び金属系材料の基材との密着性に優れている。
【0155】
上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値はあくまでも例に過ぎず、これと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値が用いられてもよい。
【0156】
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0157】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階における数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階における数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。