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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125851
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】梁接合構造及び梁接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20240911BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
E04B1/24 Q
E04B1/58 506F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033957
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 哲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】青柳 智
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】西 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】永峰 頌子
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AA14
2E125AA17
2E125AB01
2E125AC15
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG25
2E125AG45
2E125BB02
2E125BB22
2E125BD01
2E125BF01
2E125BF06
2E125BF08
2E125CA05
2E125CA14
(57)【要約】
【課題】第2梁の横座屈耐力を向上させた梁接合構造を提供する。
【解決手段】梁接合構造1は、自身の材軸方向Xに直交する断面形状がH形状である第1梁10と、自身の材軸方向Yに直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジ16が第1梁の上フランジ11と同じ高さに配置され、第1梁に交差する第2梁15と、自身の厚さ方向が第2梁のウェブ18の厚さ方向に沿うように配置され、第1梁のウェブ13及び第2梁のウェブ18にそれぞれ接合された第1接続板20と、自身の厚さ方向が上下方向に沿った状態で第1接続板を第1梁の材軸方向に挟むように配置され、第1梁のウェブ及び第2梁の下フランジ17にそれぞれ接合された一対の第1補強板25を有する一対の第1仕口部材と、を備え、一対の第1補強板全体における第1梁の材軸方向の両端間の距離Wが、第2梁の幅の2倍以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジが前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置され、前記第1梁に交差するように配置された第2梁と、
自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置され、前記第1梁のウェブ及び前記第2梁の前記ウェブにそれぞれ接合された第1接続板と、
自身の厚さ方向が上下方向に沿った状態で前記第1接続板を前記第1梁の前記材軸方向に挟むように配置され、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第2梁の下フランジにそれぞれ接合された一対の第1補強板を有する一対の第1仕口部材と、
を備え、
前記一対の第1補強板全体における前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離が、前記第2梁の幅の2倍以上である、梁接合構造。
【請求項2】
前記第2梁の前記下フランジと前記一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板とが溶接接合部によりそれぞれ接合されている、請求項1に記載の梁接合構造。
【請求項3】
前記第2梁の前記下フランジと前記一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板とがボルト接合部によりそれぞれ接合されている、請求項1に記載の梁接合構造。
【請求項4】
前記第1梁の前記ウェブと前記一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板とが断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の梁接合構造。
【請求項5】
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジが前記第1梁の前記上フランジと同じ高さに配置され、前記第1梁に対して前記第2梁とは反対側に、前記第1梁に交差するように配置された第3梁と、
自身の厚さ方向が前記第3梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置され、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第3梁の前記ウェブにそれぞれ接合された第2接続板と、
自身の厚さ方向が上下方向に沿った状態で前記第2接続板を前記第1梁の前記材軸方向に挟むように配置され、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第3梁の下フランジにそれぞれ接合された一対の第2補強板を有する一対の第2仕口部材と、
を備え、
前記一対の第2補強板全体における前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離が、前記第3梁の幅と同程度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の梁接合構造。
【請求項6】
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジが前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置され、前記第1梁に交差するように配置された第2梁と、
自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置され、前記第1梁のウェブ及び前記第2梁の前記ウェブにそれぞれ接合された第1接続板と、
自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置され、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第2梁の下フランジにそれぞれ接合された第1補強板を有する第1仕口部材と、
を備え、
前記第1補強板の前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離が、前記第2梁の幅の2倍以上である、梁接合構造。
【請求項7】
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さい第2梁と、を接合する梁接合方法であって、
自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置された第1接続板を前記第1梁のウェブに接合し、
自身の厚さ方向が上下方向に沿った一対の第1補強板を有する一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板を、前記第1梁の前記材軸方向に前記第1接続板を挟むように配置するとともに、前記一対の第1補強板を前記第1梁の前記ウェブにそれぞれ接合し、
前記第2梁が前記第1梁に交差するとともに、前記第2梁の上フランジを前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置し、
前記第1接続板を、前記第2梁の前記ウェブに接合し、
前記一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板を、前記第2梁の下フランジにそれぞれ接合し、
前記一対の第1補強板全体における前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離を、前記第2梁の幅の2倍以上にする、梁接合方法。
【請求項8】
自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さい第2梁と、を接合する梁接合方法であって、
自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置された第1接続板を前記第1梁のウェブに接合し、
自身の厚さ方向が上下方向に沿った第1補強板を有する第1仕口部材の前記第1補強板を、前記第1梁の前記ウェブにそれぞれ接合し、
前記第2梁が前記第1梁に交差するとともに、前記第2梁の上フランジを前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置し、
前記第1接続板を、前記第2梁の前記ウェブに接合し、
前記第1仕口部材の前記第1補強板を、前記第2梁の下フランジに接合し、
前記第1補強板の前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離を、前記第2梁の幅の2倍以上にする、梁接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁接合構造及び梁接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大梁(第1梁)と小梁(第2梁)の接合部には、部材の加工量の少なさや施工の容易さから、大梁に設けたウェブガセットプレート(第1接続板)に対して小梁のウェブのみをボルト接合する、いわゆるピン接合が用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。しかし、小梁の端部の固定度が低いピン接合の場合には、小梁の中央のたわみが大きくなりやすい。小梁のたわみ抑制のために小梁の材軸方向に直交する断面積を大きくすると、小梁の鋼材量が多くなってしまう。
そこで、小梁のたわみを抑制し、かつ鋼材量を低減するために、小梁の端部を大梁に剛接合する場合がある(例えば、特許文献2から5参照)。
【0003】
小梁を大梁にピン接合する場合には、小梁に作用する曲げモーメントにより、小梁の全長にわたって上フランジが圧縮される。この場合、小梁の上フランジは床スラブによって拘束を受けるために、小梁の横座屈が問題となることがない。一方で、小梁を大梁に剛接合する場合には、小梁に作用する曲げモーメントにより、小梁の端部(大梁と小梁との接合部近傍)では、下フランジが圧縮される。この場合、小梁の下フランジは床スラブ等により拘束されていないため、小梁に横座屈が生じる可能性がある。
【0004】
一般的に小梁は大梁よりもせい(梁せい)が小さい場合が多く、通常は床スラブを支持する上フランジの外面を揃えた状態で(両梁の上フランジが同じ高さに配置された状態で)、大梁と小梁は接合される。そのため、小梁の下フランジは、フランジガセットプレートを介して大梁のウェブに接合される。小梁の下フランジが大梁の下フランジに接合される場合には、小梁の面外方向(小梁のウェブの主面(面積が広い外面)に交差する方向)の曲げに対して高い固定度を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6038082号公報
【特許文献2】特開2009-052302号公報
【特許文献3】特許第6347930号公報
【特許文献4】特許第6283839号公報
【特許文献5】特許第6753043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、小梁の下フランジが大梁のウェブに接合される場合には、大梁のウェブの面外方向の曲げ抵抗が小さいために、小梁の面外方向の曲げに対する固定度が低くなる。このため、剛接合された小梁の端部は下フランジの固定度が低く、横座屈が生じやすいという課題がある。
【0007】
梁床構造に使用される鋼材量を減らすには、小梁には断面効率が高い、幅が細く(狭く)せいの高いH形鋼を用いるのが好ましい。しかしながら、幅が細くせいの高いH形鋼では、横座屈が生じやすい。小梁の端部における下フランジの固定度が低いため、小梁の横座屈耐力が不足することがある。この場合、横座屈耐力を向上させるために、小梁のフランジ幅や板厚を増大させるか、横補剛材を配置する必要が生じる。その結果、小梁の鋼材量や加工・施工手間が増え、コスト増を招いてしまう。
つまり、大梁と小梁の接合部における下フランジの、大梁のウェブにおける面外方向の曲げに対する固定度を向上した、横座屈が生じ難い接合構造を考案する必要がある。ただし、固定度の高い接合構造は、加工性及び施工性に優れたものとする必要がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、加工性及び施工性を維持しつつ第2梁の横座屈耐力を向上させた梁接合構造及び梁接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1は、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジが前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置され、前記第1梁に交差するように配置された第2梁と、自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置され、前記第1梁のウェブ及び前記第2梁の前記ウェブにそれぞれ接合された第1接続板と、自身の厚さ方向が上下方向に沿った状態で前記第1接続板を前記第1梁の前記材軸方向に挟むように配置され、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第2梁の下フランジにそれぞれ接合された一対の第1補強板を有する一対の第1仕口部材と、を備え、前記一対の第1補強板全体における前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離が、前記第2梁の幅の2倍以上である、梁接合構造である。
【0010】
この発明では、第1梁と第2梁とは、互いに交差するように配置されるとともに、第1梁の上フランジと第2梁の上フランジとが同じ高さに配置されている。第2梁のせいは第1梁のせいよりも小さいため、第2梁の下フランジは第1梁のウェブと同じ高さに配置されている。第1梁のウェブに第1接続板を介して、第2梁のウェブが接合されている。さらに、第1接続板を第1梁の材軸方向に挟むように配置された一対の第1補強板を有する一対の第1仕口部材において、一対の第1補強板が第1梁のウェブ及び第2梁の下フランジにそれぞれ接合されている。以上のようにして、第1梁と第2梁とが接合されている。
ここで、一対の第1補強板全体における第1梁の材軸方向の両端間の距離が、第2梁の幅の2倍以上である。このため、第2梁が横座屈する過程で、第2梁の下フランジから第1仕口部材に作用する、第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントを、一対の第1補強板により、第1梁のウェブにおける、第1梁の材軸方向の比較的広い範囲にわたって支持することができ、第1仕口部材と第1梁のウェブの接合部が第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントに対して高い固定度を発揮することになる。その結果として、第2梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【0011】
また、一対の第1仕口部材が有する一対の第1補強板は、従来の梁接合構造でも用いられている部材である。このため、一対の第1補強板の長さが長くなっても、梁接合構造に用いられる部材の数は増えず、一対の第1仕口部材が長くなり、第1梁のウェブと一対の第1補強板とを接合する長さが長くなるだけである。このため、梁接合構造の加工性及び施工性を、従来の梁接合構造と同等に維持することができる。
【0012】
(2)本発明の態様2は、前記第2梁の前記下フランジと前記一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板とが溶接接合部によりそれぞれ接合されている、(1)に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、溶接接合部により、第2梁の下フランジと一対の第1仕口部材の一対の第1補強板とをそれぞれ確実に接合することができる。
【0013】
(3)本発明の態様3は、前記第2梁の前記下フランジと前記一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板とがボルト接合部によりそれぞれ接合されている、(1)に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、ボルト接合部により、第2梁の下フランジと一対の第1仕口部材の一対の第1補強板とをそれぞれ確実に接合することができる。
【0014】
(4)本発明の態様4は、前記第1梁の前記ウェブと前記一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板とが断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されている、(1)から(3)のいずれか一に記載の梁接合構造であってもよい。
この発明では、断続隅肉溶接部により、第1梁のウェブと一対の第1仕口部材の一対の第1補強板とをそれぞれ確実に接合することができる。そして、例えばこれらを隅肉溶接により連続的に溶接した場合に比べて、隅肉溶接する範囲を低減させ、接合を容易に行うことができる。
【0015】
(5)本発明の態様5は、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジが前記第1梁の前記上フランジと同じ高さに配置され、前記第1梁に対して前記第2梁とは反対側に、前記第1梁に交差するように配置された第3梁と、自身の厚さ方向が前記第3梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置され、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第3梁の前記ウェブにそれぞれ接合された第2接続板と、自身の厚さ方向が上下方向に沿った状態で前記第2接続板を前記第1梁の前記材軸方向に挟むように配置され、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第3梁の下フランジにそれぞれ接合された一対の第2補強板を有する一対の第2仕口部材と、を備え、前記一対の第2補強板全体における前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離が、前記第3梁の幅と同程度である、(1)から(4)のいずれか一に記載の梁接合構造であってもよい。
【0016】
この発明では、第1梁と第2梁とが接合された梁接合構造が、第1梁に対して第2梁とは反対側に、第1梁に交差するように配置された第3梁を備える。第3梁のせいは第1梁のせいよりも小さいため、第3梁の下フランジは第1梁のウェブと同じ高さに配置されている。第3梁のウェブは第2接続板を介して第1梁のウェブに接合され、第3梁の下フランジは一対の第2仕口部材を介して第1梁のウェブに接合されているが、この第1梁のウェブに、一対の第1仕口部材の一対の第1補強板がそれぞれ接合されている。このため、第1梁のウェブの面外方向の変形が抑制される。従って、例えば、梁接合構造が、第1梁のウェブ及び第2梁の下フランジにそれぞれ接合された一対の第2仕口部材の、一対の第2補強板全体における第1梁の材軸方向の両端間の距離が第3梁の幅と同程度であっても、第2仕口部材を介して第1梁のウェブに接合された第3梁の下フランジは第3梁の面外方向に変形し難くなる。このため、第3梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【0017】
(6)本発明の態様6は、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さく、自身の上フランジが前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置され、前記第1梁に交差するように配置された第2梁と、自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置され、前記第1梁のウェブ及び前記第2梁の前記ウェブにそれぞれ接合された第1接続板と、自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置され、前記第1梁の前記ウェブ及び前記第2梁の下フランジにそれぞれ接合された第1補強板を有する第1仕口部材と、を備え、前記第1補強板の前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離が、前記第2梁の幅の2倍以上である、梁接合構造である。
【0018】
この発明では、第1梁と第2梁とは、互いに交差するように配置されるとともに、第1梁の上フランジと第2梁の上フランジとが同じ高さに配置されている。第2梁のせいは第1梁のせいよりも小さいため、第2梁の下フランジは第1梁のウェブと同じ高さに配置されている。第1梁のウェブに第1接続板を介して、第2梁のウェブが接合されている。さらに、第1仕口部材の第1補強板が第1梁のウェブ及び第2梁の下フランジにそれぞれ接合されている。以上のようにして、第1梁と第2梁とが接合されている。
ここで、第1補強板における第1梁の材軸方向の両端間の距離が、第2梁の幅の2倍以上である。このため、第2梁が横座屈する過程で、第2梁の下フランジから第1仕口部材に作用する、第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントを、第1補強板により、第1梁のウェブにおける、第1梁の材軸方向の比較的広い範囲にわたって支持することができ、第1仕口部材と第1梁のウェブの接合部が第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントに対して高い固定度を発揮することになる。その結果として、第2梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【0019】
(7)本発明の態様7は、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さい第2梁と、を接合する梁接合方法であって、自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置された第1接続板を前記第1梁のウェブに接合し、自身の厚さ方向が上下方向に沿った一対の第1補強板を有する一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板を、前記第1梁の前記材軸方向に前記第1接続板を挟むように配置するとともに、前記一対の第1補強板を前記第1梁の前記ウェブにそれぞれ接合し、前記第2梁が前記第1梁に交差するとともに、前記第2梁の上フランジを前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置し、前記第1接続板を、前記第2梁の前記ウェブに接合し、前記一対の第1仕口部材の前記一対の第1補強板を、前記第2梁の下フランジにそれぞれ接合し、前記一対の第1補強板全体における前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離を、前記第2梁の幅の2倍以上にする、梁接合方法である。
【0020】
この発明では、例えばまず、第1梁のウェブに、第1接続板、及び一対の第1仕口部材の一対の第1補強板をそれぞれ接合する。この際に、一対の第1補強板を、第1梁の材軸方向に第1接続板を挟むように配置する。
次に、第1梁と第2梁とを、互いに交差するように配置するとともに、第1梁の上フランジと第2梁の上フランジとを同じ高さに配置する。さらに、第1接続板を第2梁のウェブに接合し、一対の第1仕口部材の一対の第1補強板を第2梁の下フランジに接合することで、第1梁と第2梁とを接合する。
ここで、一対の第1補強板全体における第1梁の材軸方向の両端間の距離を、第2梁の幅の2倍以上にする。このため、第2梁が横座屈する過程で、第2梁の下フランジから第1仕口部材に作用する、第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントを、一対の第1補強板により、第1梁のウェブにおける、第1梁の材軸方向の比較的広い範囲にわたって支持させることができ、第1仕口部材と第1梁のウェブの接合部が第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントに対して高い固定度を発揮することになる。その結果として、第2梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【0021】
また、一対の第1仕口部材が有する一対の第1補強板は、従来の梁接合方法でも用いられている部材である。このため、一対の第1補強板の長さが長くなっても、梁接合方法で用いられる部材の数は増えず、一対の第1仕口部材が長くなり、第1梁のウェブと一対の第1補強板を接合する長さが長くなるだけである。このため、梁接合方法の加工性及び施工性を、従来の梁接合方法と同等に維持することができる。
【0022】
(8)本発明の態様8は、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状である第1梁と、自身の材軸方向に直交する断面形状がH形状であり、自身のせいが前記第1梁のせいよりも小さい第2梁と、を接合する梁接合方法であって、自身の厚さ方向が前記第2梁のウェブの厚さ方向に沿うように配置された第1接続板を前記第1梁のウェブに接合し、自身の厚さ方向が上下方向に沿った第1補強板を有する第1仕口部材の前記第1補強板を、前記第1梁の前記ウェブにそれぞれ接合し、前記第2梁が前記第1梁に交差するとともに、前記第2梁の上フランジを前記第1梁の上フランジと同じ高さに配置し、前記第1接続板を、前記第2梁の前記ウェブに接合し、前記第1仕口部材の前記第1補強板を、前記第2梁の下フランジに接合し、前記第1補強板の前記第1梁の前記材軸方向の両端間の距離を、前記第2梁の幅の2倍以上にする、梁接合方法である。
【0023】
この発明では、例えばまず、第1梁のウェブに、第1接続板、及び第1仕口部材の第1補強板をそれぞれ接合する。
次に、第1梁と第2梁とを、互いに交差するように配置するとともに、第1梁の上フランジと第2梁の上フランジとを同じ高さに配置する。さらに、第1接続板を第2梁のウェブに接合し、第1仕口部材の第1補強板を第2梁の下フランジに接合することで、第1梁と第2梁とを接合する。
ここで、第1補強板における第1梁の材軸方向の両端間の距離を、第2梁の幅の2倍以上にする。このため、第2梁が横座屈する過程で、第2梁の下フランジから第1仕口部材に作用する、第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントを、第1補強板により、第1梁のウェブにおける、第1梁の材軸方向の比較的広い範囲にわたって支持させることができ、第1仕口部材と第1梁のウェブの接合部が第2梁の面外方向に曲げる曲げモーメントに対して高い固定度を発揮することになる。その結果として、第2梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の梁接合構造及び梁接合方法では、加工性及び施工性を維持しつつ第2梁の横座屈耐力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態の梁接合構造の斜視図である。
図2】同梁接合構造の正面図である。
図3】同梁接合構造の側面図である。
図4】本発明の一実施形態の梁接合方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態の第1変形例の梁接合構造の斜視図である。
図6】同梁接合構造の正面図である。
図7】本発明の一実施形態の第2変形例の梁接合構造の斜視図である。
図8】同梁接合構造の正面図である。
図9】同梁接合構造の解析モデルを示す斜視図である。
図10】大梁の断面寸法を説明する図である。
図11】第1小梁の断面寸法を説明する図である。
図12】同第1小梁に作用させる曲げモーメントを説明する図である。
図13】ケース1における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
図14】ケース1における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
図15】ケース2における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
図16】ケース2における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
図17】ケース3における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
図18】ケース3における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
図19】ケース4における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
図20】ケース4における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
図21】ケース5における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力の変化を示す図である。
図22】ケース5における、(L/H)に対する弾性横座屈耐力比の変化を示す図である。
図23】従来の梁接合構造に横座屈が発生したときの挙動を示す斜視図である。
図24】本実施形態の梁接合構造に横座屈が発生したときの挙動を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る梁接合構造及び梁接合方法の一実施形態を、図1から図24を参照しながら説明する。
【0027】
〔1.梁接合構造の構成〕
図1から図3に示すように、本実施形態の梁接合構造1は、大梁(第1梁)10と、第1小梁(第2梁)15と、第1ウェブガセットプレート(第1接続板)20と、一対の第1フランジガセットプレート(第1仕口部材、第1補強板)25と、第2小梁(第3梁)30と、第2ウェブガセットプレート(第2接続板)35と、一対の第2フランジガセットプレート(第2仕口部材、第2補強板)40と、を備える。
【0028】
大梁10、第1小梁15、及び第2小梁30は、それぞれ水平面に沿って延びている。ここで言う水平面に沿うとは、水平面に対して、45°以下の角度(0°も含む)をなして延びることを意味する。この角度は、30°以下であることが好ましい。材軸方向に沿う、上下方向に沿う等についても、同様である。
大梁10の第1材軸方向(材軸方向)Xに直交する断面形状は、H形状である。例えば、大梁10は、H形鋼で形成されている。大梁10は、上フランジ11、下フランジ12、及びウェブ13を有する。上フランジ11、下フランジ12、及びウェブ13は、それぞれ鋼板により平板状に形成されている。
【0029】
上フランジ11及び下フランジ12は、それぞれの厚さ方向が上下方向に沿うように配置されている。上フランジ11は、下フランジ12よりも上方に、下フランジ12に対向するように配置されている。
ウェブ13は、自身の厚さ方向が水平面に沿うように配置されている。ウェブ13は、上フランジ11と下フランジ12との間に配置されている。ウェブ13は、上フランジ11の幅方向の中心と下フランジ12の幅方向の中心とにそれぞれ接合されている。
なお、大梁10は、圧延H形鋼でもよいし、溶接組立H形断面でもよい。大梁10の幅方向は、第1材軸方向X及び上下方向にそれぞれ直交する方向を意味する。大梁10の幅は、大梁10における幅方向の長さを意味する。
【0030】
第1小梁15の第2材軸方向(材軸方向)Yに直交する断面形状は、H形状である。第1小梁15及び第2小梁30は、せい、幅、フランジ及びウェブの厚さ以外は、大梁10と同様に構成されている。
第1小梁15は、上フランジ16、下フランジ17、及びウェブ18を有する。第1小梁15のせいは、大梁10のせいよりも小さい。第1小梁15の上フランジ16は、大梁10の上フランジ11と同じ高さに配置されている。より詳しくは、第1小梁15の上フランジ16の上面は、大梁10の上フランジ11の上面と同じ高さに配置されている。
第1小梁15の下フランジ17は、大梁10の下フランジ12よりも上方に、大梁10のウェブ13における上下方向の一部と同じ高さに配置されている。
第1小梁15は、大梁10に直交するように配置されている。なお、第1小梁15は大梁10に交差するように配置されていてもよい。
【0031】
第1ウェブガセットプレート20及び一対の第1フランジガセットプレート25は、それぞれ鋼板により平板状に形成されている。
第1ウェブガセットプレート20は、自身の厚さ方向が第1小梁15のウェブ18の厚さ方向(第1材軸方向X)に沿うように配置されている。第1ウェブガセットプレート20は、第1片20aと、第2片20bとを有する。第1材軸方向Xに見たときに、第1片20a及び第2片20bは、第2材軸方向Yに平行な辺及び上下方向に平行な辺をそれぞれ有する矩形状を呈する。
第1片20aは、大梁10の下フランジ12から上フランジ11まで延びている。第2片20bは、第1片20aにおける上下方向の中間部から、第2材軸方向Yに向かって突出している。
【0032】
第1ウェブガセットプレート20の第1片20aは、大梁10の上フランジ11、下フランジ12及びウェブ13に溶接によりそれぞれ接合されている。
第1ウェブガセットプレート20の第2片20bは、大梁10から第2材軸方向Yに向かって突出している。第1小梁15のウェブ18と第1ウェブガセットプレート20の第2片20bとは、高力ボルト等を有するボルト接合部21によりそれぞれ接合されている。ウェブ18と第2片20bとは複数のボルト接合部21により接合され、複数のボルト接合部21は、互いに上下方向に間隔を空けて配置されている。
【0033】
各第1フランジガセットプレート25は、自身の厚さ方向に見たときに、第1材軸方向Xに平行な辺、及び第2材軸方向Yに平行な辺をそれぞれ有する矩形状を呈する。
各第1フランジガセットプレート25の第2材軸方向Yの長さは、大梁10の幅の半分程度である(各第1フランジガセットプレート25の第2材軸方向Yの端、及びフランジ11、12の第2材軸方向Yの端が一致する)ことが好ましい。しかし、各第1フランジガセットプレート25の第2材軸方向Yの長さがある程度あれば、後述するように大梁10のウェブ13の面外方向の変形が抑制される。このため、各第1フランジガセットプレート25の第2材軸方向Yの長さは、大梁10の幅の半分よりも短くてもよい。
【0034】
一対の第1フランジガセットプレート25は、自身の厚さ方向が上下方向に沿った状態で第1ウェブガセットプレート20を第1材軸方向Xに挟むように配置されている。この例では、一対の第1フランジガセットプレート25は、第1小梁15の下フランジ17と同じ高さに配置されている。
大梁10のウェブ13と一対の第1フランジガセットプレート25とは、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。第1ウェブガセットプレート20と一対の第1フランジガセットプレート25とは、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。一対の第1フランジガセットプレート25と大梁10のウェブ13及び第1ウェブガセットプレート20は、断続隅肉溶接による断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されてもよい。第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とは、突合せ溶接による突合せ溶接接合部26によりそれぞれ接合されている。
【0035】
一対の第1フランジガセットプレート25全体における第1材軸方向Xの両端間の距離Wが、第1小梁15の幅の3倍である。ここで、一対の第1フランジガセットプレート25のうち、第1材軸方向Xの第1側X1に配置された第1フランジガセットプレート25を第1フランジガセットプレート25Aとも言い、第1材軸方向Xにおける第1側X1とは反対側の第2側X2に配置された第1フランジガセットプレート25を第1フランジガセットプレート25Bとも言う。距離Wは、第1フランジガセットプレート25Aの第1側X1の端と、第1フランジガセットプレート25Bの第2側X2の端との距離を意味する。一対の第1フランジガセットプレート25が第1材軸方向Xに離間し、一対の第1フランジガセットプレート25間に隙間が形成されている場合には、その隙間も含めた距離Wを意味する。
なお、前記距離Wは、第1小梁15の幅の3倍に限定されず、第1小梁15の幅の2倍以上であればよい。
【0036】
この例では、一対の第1フランジガセットプレート25の形状は互いに同一である。しかし、一対の第1フランジガセットプレート25において、第1材軸方向Xの長さ等の形状が互いに異なっていてもよい。ただし、各第1フランジガセットプレート25の第1材軸方向Xの長さは、第1小梁15の幅の半分以上であることが好ましい。
各第1フランジガセットプレート25における第2材軸方向Yの長さ(幅)は、第1小梁15のウェブ18から離間するに従い漸次、短くなってもよい。より具体的には、各第1フランジガセットプレート25において、第2材軸方向Yにおける第2小梁30側の端の位置を維持しつつ、第2材軸方向Yにおける第2小梁30とは反対側の端の位置を、第1小梁15のウェブ18から離間するに従い漸次、第2小梁30側に近づけてもよい。
この場合、各第1フランジガセットプレート25は、自身の厚さ方向に見たときに、台形状を呈する。
【0037】
なお、第1仕口部材は、第1補強板である第1フランジガセットプレート25であるとしたが、第1仕口部材は第1補強板を有していればこれに限定されない。例えば、第1仕口部材は、山形鋼により形成されてもよい。この場合、第1仕口部材は、第1フランジガセットプレート25と、第1支持板I1(図1参照)とを有する。第1支持板I1は、第1フランジガセットプレート25から下方に向かって延び、大梁10のウェブ13に溶接等により接合されている。
この例では、大梁10の上フランジ11と第1小梁15の上フランジ16とは、突合せ溶接による突合せ溶接接合部27により接合されている。
なお、第1小梁15の上フランジ16は、高力ボルト等を有するボルト接合部(不図示)により大梁10の上フランジ11及び第2小梁30の上フランジ31に接合されてもよいし、大梁10の上フランジ11及び第1小梁15の上フランジ16の上方に設置される床スラブ(不図示)を介した荷重伝達に期待して、第1小梁15の上フランジ16を大梁10の上フランジ11と直接接合しなくてもよい。
【0038】
この例では、第2小梁30の材軸方向は、第2材軸方向Yに沿っている。なお、第2小梁30の材軸方向は、第2材軸方向Yに交差していてもよい。
第2小梁30の第2材軸方向Yに直交する断面形状は、H形状である。第2小梁30は、上フランジ31、下フランジ32、及びウェブ33を有する。第2小梁30のせいは、大梁10のせいよりも小さい。第2小梁30の上フランジ31は、大梁10の上フランジ11と同じ高さに配置されている。
第2小梁30は、大梁10に対して第1小梁15とは反対側に、大梁10に直交するように配置されている。なお、第2小梁30は、大梁10に交差するように配置されてもよい。第2小梁30の下フランジ32は、大梁10の下フランジ12よりも上方に、大梁10のウェブ13における上下方向の一部と同じ高さに配置されている。
【0039】
第2ウェブガセットプレート35、一対の第2フランジガセットプレート40は、第1ウェブガセットプレート20、一対の第1フランジガセットプレート25と同様にそれぞれ形成されている。
第2ウェブガセットプレート35は、自身の厚さ方向が第2小梁30のウェブ33の厚さ方向(第1材軸方向X)に沿うように配置されている。第2ウェブガセットプレート35は、大梁10の上フランジ11、下フランジ12及びウェブ13に溶接によりそれぞれ接合されている。
第2小梁30のウェブ33と第2ウェブガセットプレート35とは、高力ボルト等を有するボルト接合部36によりそれぞれ接合されている。
【0040】
一対の第2フランジガセットプレート40は、自身の厚さ方向が上下方向に沿った状態で第2ウェブガセットプレート35を第1材軸方向Xに挟むように配置されている。この例では、一対の第2フランジガセットプレート40は、第2小梁30の下フランジ37と同じ高さに配置されている。
大梁10のウェブ13と一対の第2フランジガセットプレート40とは、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。第2ウェブガセットプレート35と一対の第2フランジガセットプレート40とは、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。一対の第2フランジガセットプレート40と大梁10のウェブ13及び第2ウェブガセットプレート35は、断続隅肉溶接による断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されてもよい。
第2小梁30の下フランジ32と一対の第2フランジガセットプレート40とは、突合せ溶接による突合せ溶接接合部41によりそれぞれ接合されている。
【0041】
この例では、大梁10の上フランジ11と第2小梁30の上フランジ31とは、突合せ溶接による突合せ溶接接合部42により接合されている。
なお、第2小梁30の上フランジ31は、高力ボルト等を有するボルト接合部(不図示)により大梁10の上フランジ11及び第1小梁15の上フランジ16に接合されてもよいし、大梁10の上フランジ11及び第2小梁30の上フランジ31の上方に設置される床スラブ(不図示)を介した荷重伝達に期待して、第2小梁30の上フランジ31を大梁10の上フランジ11と直接接合しなくてもよい。
【0042】
大梁10、第1小梁15、及び第2小梁30は、図示しない床スラブを、床スラブの下方から支持する。
なお、従来の梁接合構造では、一対の第1フランジガセットプレート25全体における第1材軸方向Xの両端間の距離は、第1小梁15の幅程度であり、一対の第2フランジガセットプレート40全体における第1材軸方向Xの両端間の距離は、第2小梁30の幅と同程度である。
ここで言う一対の第2フランジガセットプレート40全体における距離が第2小梁30の幅と同程度とは、前記距離が第2小梁30の幅に対して80%以上120%以下であることを意味する。前記距離は第2小梁30の幅に対して90%以上110%以下であることがより好ましい。
【0043】
各第1フランジガセットプレート25は、1枚の鋼板により形成される必要はなく、各第1フランジガセットプレート25は、互いに溶接等により接合された複数枚の鋼板により構成されてもよい。
各第1フランジガセットプレート25において、第1小梁15の下フランジ17に接合され部分は、応力伝達の都合から、下フランジ17と同等の厚さが必要となる。一方で、各第1フランジガセットプレート25における下フランジ17に接合される部分以外は、厚さを他の部分よりも薄くしてもよい。
一対の第1フランジガセットプレート25は、第1ウェブガセットプレート20に予め切欠きを設けるなどして各第1フランジガセットプレートを部分的に連結させた一枚の鋼板としてもよい。また、第1ウェブガセットプレート20について第1フランジガセットプレート25を挟んで上下に分割する事で、一対の第1フランジガセットプレート25を一枚の鋼板で代替してもよい。
【0044】
この場合、変形例の梁接合構造(以下では、第0変形例の梁接合構造と言う)は、梁接合構造1における一対の第1フランジガセットプレート25に代えて、1枚の第1フランジガセットプレートを備える。1枚の第1フランジガセットプレートは、第1材軸方向Xにおいて、第1小梁15のウェブ18を中心にして対称に配置されてもよいし、対称に配置されなくてもよい。
1枚の第1フランジガセットプレートの第1材軸方向Xの両端間の距離は、第1小梁15の幅の2倍以上である。
【0045】
〔2.梁接合方法〕
次に、以上のように構成された梁接合構造1を施工する梁接合方法を、大梁10と第1小梁15を接合する方法に重点をおいて説明する。図4は、梁接合方法S1を示すフローチャートである。梁接合方法S1は、大梁10と第1小梁15とを接合して梁接合構造1を構成する方法である。以下では、梁接合方法S1の要部に重点をおいて説明する。
まず、大梁-第1ウェブガセットプレート接合工程(図4におけるステップS5)において、自身の厚さ方向が第1小梁15のウェブ18の厚さ方向に沿うように配置された第1ウェブガセットプレート20を、大梁10の上フランジ11、下フランジ12、及びウェブ13に接合する。大梁-第1ウェブガセットプレート接合工程S5が終了すると、ステップS7に移行する。
【0046】
次に、大梁-第1フランジガセットプレート接合工程S7において、自身の厚さ方向が上下方向に沿った一対の第1フランジガセットプレート25を、第1材軸方向Xに第1ウェブガセットプレート20を挟むように配置する。そして、一対の第1フランジガセットプレート25を、大梁10のウェブ13及び第1ウェブガセットプレート20にそれぞれ接合する。このとき、一対の第1フランジガセットプレート25全体における第1材軸方向Xの両端間の距離Wを、第1小梁15の幅の2倍以上にする。
大梁-第1ウェブガセットプレート接合工程S5及び大梁-第1フランジガセットプレート接合工程S7は、大梁10を加工する工場で行うことができる。
大梁-第1フランジガセットプレート接合工程S7が終了すると、ステップS9に移行する。
大梁-第1フランジガセットプレート接合工程S7に続けて行われる第1小梁配置工程S9以降は、梁接合構造1の施工現場で行われる。
次に、第1小梁配置工程S9において、第1小梁15が、大梁10に交差するように配置する。そして、第1小梁15の上フランジ16を、大梁10の上フランジ11と同じ高さに配置する。第1小梁配置工程S9が終了すると、ステップS11に移行する。
【0047】
次に、第1小梁接合工程S11において、第1ウェブガセットプレート20を、第1小梁15のウェブ18に接合する。そして、第1小梁15の上フランジ16を大梁10の上フランジ11に接合する。更に、一対の第1フランジガセットプレート25を第1小梁15の下フランジ17にそれぞれ接合する。
第1小梁接合工程S11が終了すると、梁接合方法S1の全工程が終了し、大梁10と第1小梁15とが接合される。
なお、大梁10と第2小梁30とは、大梁10と第1小梁15と同様に接合される。
【0048】
なお、第0変形例の梁接合構造を施工する梁接合方法では、大梁-第1フランジガセットプレート接合工程S7において、1枚の第1フランジガセットプレートを、大梁10のウェブ13及び第1ウェブガセットプレート20にそれぞれ接合する。このとき、第1フランジガセットプレート25の第1材軸方向Xの両端間の距離を、第1小梁15の幅の2倍以上にする。
【0049】
〔3.梁接合構造の変形例〕
本実施形態の梁接合構造1は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図5及び図6に示す第1変形例の梁接合構造1Aのように、本実施形態の梁接合構造1の各構成に対して、一対の第1フランジガセットプレート25及び突合せ溶接接合部27,42に代えて、一対の第1フランジガセットプレート45及び接合プレート50を有してもよい。
各第1フランジガセットプレート45は、その上面を第1小梁15の下フランジ17の下面に摩擦面として接触させ、その摩擦面を介して第1小梁15に力を伝達するという、いわゆるシングルシアータイプで、第1小梁15に接合されている。また、一対の第1フランジガセットプレート45は、各第1フランジガセットプレート45における大梁10から突出した部分同士を連結させた一体化形状としてもよい。
【0050】
具体的に説明すると、各第1フランジガセットプレート45は、自身の厚さ方向に見たときに、L字状を呈する。各第1フランジガセットプレート45は、第1片46と、第2片47と有する。
第1片46及び第2片47は、自身の厚さ方向が上下方向に沿うように配置されている。第1片46及び第2片47は、同一面上に配置され、互いに連なっている。
第1片46は、第1フランジガセットプレート25と同じ形状に形成され、第1小梁15の下フランジ17よりも下方に配置されている。一対の第1フランジガセットプレート45が有する一対の第1片46は、第1ウェブガセットプレート20を第1材軸方向Xに挟むように配置されている。
【0051】
大梁10のウェブ13と一対の第1片46とは、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。第1ウェブガセットプレート20と一対の第1片46とは、隅肉溶接による隅肉溶接接合部(不図示)によりそれぞれ接合されている。一対の第1片46と大梁10のウェブ13及び第1ウェブガセットプレート20は、断続隅肉溶接によりそれぞれ接合されてもよい。
第2片47は、第1片46における第1小梁15の下フランジ17側の端部から、第2材軸方向Yに沿って大梁10から離間する向きに突出している。第2片47は、第1小梁15の下フランジ17よりも下方から下フランジ17に接触している。
第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート45の第2片47とは、高力ボルト等を有するボルト接合部48によりそれぞれ接合されている。
なお、各第1フランジガセットプレート45は、自身の厚さ方向に見たときに、台形状を呈してもよい。
【0052】
接合プレート50は、第2材軸方向Yに沿って延びる板状に形成されている。接合プレート50は、大梁10の上フランジ11、第1小梁15の上フランジ16、及び第2小梁30の上フランジ31に、高力ボルト等を有するボルト接合部51により接合されている。
【0053】
図7及び図8に示す第2変形例の梁接合構造1Bのように、本実施形態の梁接合構造1の各構成に対して、一対の第1フランジガセットプレート25及び突合せ溶接接合部27,42に代えて、一対のスプライスプレート55を2組及び一対の接合プレート57を備えてもよい。
各第1フランジガセットプレート25は、一対のスプライスプレート55という2枚の鋼板との摩擦面を介して第1小梁15に力を伝達するという、いわゆるダブルシアータイプで、第1小梁15に接合されている。
具体的に説明すると、梁接合構造1Bでは、第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とは、溶接接合部により直接接合されていない。一対のスプライスプレート55は、第1小梁15の下フランジ17及び第1フランジガセットプレート25をそれぞれ上下方向に挟むように配置されている。
第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とは、下フランジ17と一対のスプライスプレート55、一対のスプライスプレート55と第1フランジガセットプレート25とを接合する、高力ボルト等を有するボルト接合部56によりそれぞれ接合されている。
【0054】
第1フランジガセットプレート25の第1材軸方向Xの長さは、第1小梁15の幅の半分よりも長く、かつ、スプライスプレート55の第1材軸方向Xの長さよりも長いことが好ましい。第1小梁15のウェブ18から最も離間した位置に配置されたボルト接合部56に作用した応力を、大梁10のウェブ13に分散させて伝達するためである。
【0055】
各接合プレート57は、平面視において、第1端部の幅が、接合プレート57における他の部分よりも広い板状に形成されている。接合プレート57の第1端部は、大梁10の上フランジ11にボルト接合部51により接合されている。接合プレート57における第1端部以外の部分は、第1小梁15の上フランジ16、及び第2小梁30の上フランジ31に、ボルト接合部51により接合されている。
【0056】
〔4.梁接合構造の効果の解析による検証〕
次に、一対の第1フランジガセットプレート25全体の距離Wが比較的長い梁接合構造1,1A,1Bにおける第1小梁15の横座屈耐力の向上効果を、梁接合構造1で代表して解析した。
なお、梁接合構造1と梁接合構造1A,1Bとでは、第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25等との接合方法が、溶接接合かボルト接合かで異なるだけで、以下の解析モデルでは、構成や境界条件に差はない。
解析は、FEM(Finite Element Method:有限要素法)による弾性座屈解析を行った。図9に、梁接合構造1の解析モデルの斜視図を示す。
【0057】
梁接合構造1では、第1小梁15の第2材軸方向Yの両端部が一対の大梁10に接合されている状態をモデル化した。以下では、一対の大梁10のうち、一方を大梁10Aとも言い、他方を大梁10Bとも言う。
一対の大梁10と第1小梁15の端部とは、ウェブガセットプレート20,35及びフランジガセットプレート25,40により接合されている。梁接合構造1の各構成を、4節点シェル要素によりモデル化した。
【0058】
ここで、図10及び図11に示すように、大梁10及び第1小梁15の断面寸法を規定した。
図10に示すように、大梁10について、フランジ11,12の厚さをそれぞれ、tF1(mm)と規定する。フランジ11,12の幅を、B(mm)と規定する。ウェブ13の厚さをそれぞれ、tW1(mm)と規定する。大梁10のせい(高さ)を、H(mm)と規定する。
図11に示すように、第1小梁15について、フランジ16,17の厚さをそれぞれ、tF2(mm)と規定する。フランジ16,17の幅を、B(mm)と規定する。ウェブ18の厚さをそれぞれ、tW2(mm)と規定する。第1小梁15のせいを、H(mm)と規定する。
図9に示すように、第1小梁15の長さを、L(mm)と規定する。なお、大梁10の長さは、一般的な第1小梁15の配置間隔を考慮して、3mとした。
【0059】
第2材軸方向Yに沿ってx軸を規定し、第1材軸方向Xに沿ってz軸を規定した。x軸及びz軸にそれぞれ直交する方向に、y軸を規定した。x軸、y軸、及びz軸は、右手系の直交座標系を構成する。第1小梁15のx軸方向の第1端をx軸の原点とし、第1小梁15の第1端から、x軸方向において第1端とは反対側の第2端に向かう向きを、x軸の正の向きとする。
一対の大梁10及び第1小梁15に対して、図9に示す境界条件を与えた。
大梁10Aのウェブ13における第1小梁15が接合された部分のy軸方向の中心である節点P1において、dy=0,dz=0,rotx=0とした。ここで言う「dy=0」とは、節点P1のy軸方向の移動による変位がない(節点P1がy軸方向に固定されている)ことを意味する。「dz=0」及び「dx=0」も、「dy=0」と同様の意味である。
「rotx=0」とは、節点P1のx軸回りの回転による回転角がない(節点P1がx軸回りに固定されている)ことを意味する。「roty=0」及び「rotz=0」も、「rotx=0」と同様の意味である。
【0060】
大梁10Bのウェブ13における第1小梁15が接合された部分のy軸方向の中心である節点P2において、dx=0,dy=0,dz=0,rotx=0とした。
一対の大梁10のウェブ13におけるz軸方向の両端のy軸方向の中心である節点P3において、それぞれdy=0,rotx=0,roty=0とした。
第1小梁15に作用する曲げモーメントが図12に示す分布となるように、第1小梁15の上フランジ16に所定の分布の荷重を作用させるとともに、第1小梁15のx軸方向の端にモーメント反力を作用させた。
【0061】
図12において、横軸は第1小梁15のx軸方向の無次元化座標を表し、縦軸は無次元化曲げモーメントを表す。ここで言う第1小梁15のx軸方向の無次元化座標とは、第1小梁15の長さLに対する、x軸方向における第1小梁15の所定の部分のx軸の座標の比を意味する。無次元化曲げモーメントとは、第1小梁15のx軸方向の各端に作用する曲げモーメントの最大値に対する、x軸方向における第1小梁15の所定の部分に作用する曲げモーメントの比を意味する。
なお、第1小梁15に作用させた荷重は、長期荷重を想定している。
【0062】
前記解析モデルにおいて、大梁10及び第1小梁15の断面寸法、第1小梁15の長さL、及び一対の第1フランジガセットプレート25全体の距離Wを変数とした。大梁10及び第1小梁15の断面寸法の組み合わせは、表1に示すケース1からケース5の5通りとした。
【0063】
【表1】
【0064】
例えば、ケース1では、大梁10において、せいHが700mmである。フランジ11,12の幅Bが300mm、ウェブ13の厚さtW1が13mm、フランジ11,12の厚さtF1が24mmである。第1小梁15において、せいHが500mmである。フランジ16,17の幅Bが200mm、ウェブ18の厚さtW2が10mm、フランジ16,17の厚さtF2が16mmである。
第1小梁15のせいHに対する第1小梁15の長さLの比(L/H)が、6以上30以下の範囲で2刻みとなるように第1小梁15の長さLを設定した。フランジ16,17の幅Bに対する一対の第1フランジガセットプレート25全体の距離Wの比(W/B)は、1,2,4,6,8,10の6通りとした。なお、一対の第2フランジガセットプレート40全体の第1材軸方向Xの両端間の距離は、一対の第1フランジガセットプレート25全体の距離Wと同等とした。
一対の第1フランジガセットプレート25及び一対の第2フランジガセットプレート40の厚さは、第1小梁15のフランジ16,17の厚さと同等とし、第1ウェブガセットプレート20及び第2ウェブガセットプレート35の厚さは、第1小梁15のウェブ18の厚さと同等とした。
【0065】
図13から図22に、ケース1からケース5の解析結果を示す。なお、図13から図22では、第1小梁を小梁と略して言う。
図13から図22において、横軸は、第1小梁15のせいHに対する第1小梁15の長さLの比(L/H)の値(-)を表す。図13図15図17図19、及び図21における縦軸の第1小梁15の弾性横座屈耐力(kNm)は、解析により直接求められる。図14図16図18図20、及び図22における縦軸の弾性横座屈耐力比(-)は、(W/B)の値が1以外である場合の弾性横座屈耐力の、第1小梁15の長さLが同じで(W/B)の値が1である場合の弾性横座屈耐力に対する比である。
(W/B)の値が1である場合は、従来の梁接合構造に相当する。
【0066】
図13図15図17図19、及び図21に示されるいずれのケースの弾性横座屈耐力においても、第1小梁15の長さLに関わらず、(W/B)の値が大きくなるのに従い、弾性横座屈耐力が大きくなることが分かる。
図14図16図18図20、及び図22に示されるいずれのケースの弾性横座屈耐力比においても、(W/B)の値が1から10になるまでは、(W/B)の値が大きいほど弾性横座屈耐力が大きくなることが分かる。
【0067】
また、(W/B)の値が大きくなるのに従い、(W/B)の値に対する弾性横座屈耐力の上昇率が小さくなる(弾性横座屈耐力の上昇が飽和する)ことが分かる。この理由は、(W/B)の値(一対の第1フランジガセットプレート25全体の距離W及び一対の第2フランジガセットプレート40全体の距離)がある程度以上大きくなると、大梁10のウェブ13が面外方向に変形し難くなり、それ以上(W/B)の値を大きくしても、ウェブ13を変形し難くする効果が薄くなるためである。
一対の第1フランジガセットプレート25及び一対の第2フランジガセットプレート40に使用する鋼材量に対する第1小梁15の弾性横座屈耐力の向上の程度を考えると、(W/B)の値は2以上4以下であることが、より好ましい。
【0068】
実用的な第1小梁15では、(L/H)の値は10以上20以下程度である。(L/H)の値が10以上20以下程度の場合であれば、(W/B)の値が4であれば、従来の梁接合構造に比べて、弾性横座屈耐力が10%~20%程度向上する(弾性横座屈耐力比が1.1~1.2となる)。
【0069】
〔5.横座屈が発生したときの梁接合構造の挙動〕
図23及び図24に、従来の梁接合構造2、及び本実施形態の梁接合構造1における横座屈が発生したときの挙動を示す。図23及び図24では、第1フランジガセットプレート25,60に重点をおいて説明するため、第1フランジガセットプレート25,60以外の構成を、二点鎖線で示す。
ここで、第1小梁15の下フランジ17における厚さ方向の中心の面と、第1小梁15のウェブ18における厚さ方向の中心の面との交線を、線L1と規定する。一対の第1フランジガセットプレート25,60の間と大梁10のウェブ13との接合点を、点Aと規定する。
【0070】
図23に示すように、従来の梁接合構造2では、一対の第1フランジガセットプレート60全体における第1材軸方向Xの両端間の距離は、第1小梁15の幅程度である。
第1小梁15に横座屈が発生する場合、下フランジ17がウェブ18の面外方向であるz軸方向(第1材軸方向X)に変形する。このため、線L1は、z軸方向に撓んで、線L2のように変形する。このとき、第1小梁15の下フランジ17及び一対の第1フランジガセットプレート60は、点Aを通るy軸回りに回転することとなり、大梁10のウェブ13には、第1小梁15の下フランジ17の回転に対するモーメント反力として、一対の偶力Fが作用する。一対の偶力Fのうち、第1側X1の偶力FAは、大梁10のウェブ13を押し込む方向に作用し、第2側X2の偶力FBは、大梁10のウェブ13を引き込む方向に作用する。
【0071】
図23に示す従来の梁接合構造2では、一対の第1フランジガセットプレート60全体の距離が比較的短い。このため、一対の偶力Fが大きくなり、一対の偶力Fが伝達される大梁10のウェブ13のz軸方向の範囲も狭くなる。従って、第1小梁15の下フランジ17及び一対の第1フランジガセットプレート60の点Aを通るy軸回りにおける回転角が大きくなりやすく、結果として第1小梁15に横座屈が発生しやすくなる。
【0072】
一方で、図24に示す本実施形態の梁接合構造1では、一対の第1フランジガセットプレート25全体の距離Wが比較的長いため、一対の偶力Fが作用する位置が点Aから離れ、一対の偶力Fの大きさが小さくなるとともに、一対の偶力Fが伝達される大梁10のウェブ13のz軸方向の範囲も広くなる。従って、第1小梁15の下フランジ17及び一対の第1フランジガセットプレート25の点Aを通るy軸回りにおける回転角が小さくなり、結果として第1小梁15に横座屈が発生し難くなる。
【0073】
〔6.本実施形態の効果〕
以上説明したように、本実施形態の梁接合構造1では、大梁10と第1小梁15とは、互いに交差するように配置されるとともに、大梁10の上フランジ11と第1小梁15の上フランジ16とが同じ高さに配置されている。第1小梁15のせいは大梁10のせいよりも小さいため、第1小梁15の下フランジ17は大梁10のウェブ13と同じ高さに配置されている。大梁10のウェブ13に第1ウェブガセットプレート20を介して、第1小梁15のウェブ18が接合されている。さらに、第1ウェブガセットプレート20を第1材軸方向Xに挟むように配置された一対の第1フランジガセットプレート25が、大梁10のウェブ13及び第1小梁15の下フランジ17にそれぞれ接合されている。以上のようにして、大梁10と第1小梁15とが接合されている。
ここで、一対の第1フランジガセットプレート25全体における第1材軸方向Xの両端間の距離Wが、第1小梁15の幅の2倍以上である。このため、第1小梁15が横座屈する過程で、第1小梁15の下フランジ17から一対の第1フランジガセットプレート25と大梁10のウェブ13の接合部に作用する、第1小梁15の下フランジ17を第1小梁15の面外方向に曲げる曲げモーメントを、一対の第1フランジガセットプレート25により、大梁10のウェブ13における、第1材軸方向Xの比較的広い範囲にわたって支持することができる。従って、第1小梁15の横座屈変形に対する抵抗を大きくすることができ、その結果として横座屈耐力を向上させることができる。
【0074】
また、一対の第1フランジガセットプレート25は、従来の梁接合構造でも用いられている部材である。このため、一対の第1フランジガセットプレート25の長さが長くなっても、梁接合構造1に用いられる部材の数は増えず、一対の第1フランジガセットプレート25が第1材軸方向Xに長くなり、大梁10のウェブ13と一対の第1フランジガセットプレート25とを接合する長さが長くなるだけである。このため、梁接合構造1の加工性及び施工性を、従来の梁接合構造と同等に維持することができる。
一対の第1フランジガセットプレート25の距離Wを長くすることだけの、わずかな使用鋼材量の増加で第1小梁15の横座屈耐力を向上させることができ、第1小梁15の横座屈を抑制するために第1小梁15の断面寸法を変える必要が無いため、梁接合構造1を合理的に設計することができる。梁接合構造1に用いられる横補剛材を、削減することができる。
【0075】
第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とが溶接接合部26によりそれぞれ接合されている場合がある。この場合には、溶接接合部26により、第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とをそれぞれ確実に接合することができる。
第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とがボルト接合部48によりそれぞれ接合されている場合がある。この場合には、ボルト接合部48により、第1小梁15の下フランジ17と一対の第1フランジガセットプレート25とをそれぞれ確実に接合することができる。
【0076】
大梁10のウェブ13と一対の第1フランジガセットプレート25とが隅肉溶接部によりそれぞれ接合されている。このため、隅肉溶接部により、大梁10のウェブ13と一対の第1フランジガセットプレート25とをそれぞれ確実に接合することができる。
また、大梁10のウェブ13と一対の第1フランジガセットプレート25が断続隅肉溶接部によりそれぞれ接合されている場合がある。この場合には、これらを隅肉溶接により連続的に溶接した場合に比べて、隅肉溶接する範囲を低減させ、接合を容易に行うことができる。
【0077】
梁接合構造1は、一対の第2フランジガセットプレート40全体における第1材軸方向Xの両端間の距離が、第2小梁30の幅と同程度でもよい。ここで言う一対の第2フランジガセットプレート40全体における第1材軸方向Xの両端間の距離とは、一対の第2フランジガセットプレート40が第1材軸方向Xに離間し、一対の第2フランジガセットプレート40間に隙間が形成されている場合には、その隙間も含めた距離を意味する。
【0078】
大梁10と第1小梁15とが接合された梁接合構造1は、大梁10に対して第1小梁15とは反対側に、大梁10に交差するように配置された第2小梁30を備える。第2小梁30のせいは大梁10のせいよりも小さいため、第2小梁30の下フランジ32は大梁10のウェブ13と同じ高さに配置されている。第2小梁30のウェブ33は第2ウェブガセットプレート35を介して大梁10のウェブ13に接合され、第2小梁30の下フランジ32は一対の第2フランジガセットプレート40を介して大梁10のウェブ13に接合されているが、この大梁10のウェブ13に、第1材軸方向Xの両端間の距離Wが第1小梁15の幅の2倍以上となる一対の第1フランジガセットプレート25がそれぞれ接合されている。このため、大梁10のウェブ13の面外方向の変形が抑制される。従って、梁接合構造1が、大梁10のウェブ13及び第2小梁30の下フランジ32にそれぞれ接合された一対の第2フランジガセットプレート40における第1材軸方向Xの両端間の距離が、第2小梁30の幅と同程度の場合においても、大梁10のウェブ13に接合された第2小梁30の下フランジ32が第2小梁30の面外方向に変形し難くなる。このため、第2小梁30の横座屈耐力を向上させることができる。
【0079】
第0変形例の梁接合構造は、1枚の第1フランジガセットプレートを備える。
この場合において、第1フランジガセットプレートにおける第1材軸方向Xの両端間の距離が、第1小梁15の幅の2倍以上である。このため、第1小梁15が横座屈する過程で、第1小梁15の下フランジ17から第1フランジガセットプレートに作用する、第1小梁15の面外方向に曲げる曲げモーメントを、第1フランジガセットプレートにより、大梁10のウェブ13における、第1材軸方向Xの比較的広い範囲にわたって支持することができ、第1フランジガセットプレートと大梁10のウェブ13の接合部が第1小梁15の面外方向に曲げる曲げモーメントに対して高い固定度を発揮することになる。その結果として、第1小梁15の横座屈耐力を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態の梁接合方法S1では、まず、大梁10のウェブ13に、第1ウェブガセットプレート20、及び一対の第1フランジガセットプレート25をそれぞれ接合する。この際に、一対の第1フランジガセットプレート25を、第1材軸方向Xに第1ウェブガセットプレート20を挟むように配置する。
次に、大梁10と第1小梁15とを、互いに交差するように配置するとともに、大梁10の上フランジ11と第1小梁15の上フランジ16とを同じ高さに配置する。さらに、第1ウェブガセットプレート20を第1小梁15のウェブ18に接合し、一対の第1フランジガセットプレート25を第1小梁15の下フランジ17に接合することで、大梁10と第1小梁15とを接合する。
ここで、一対の第1フランジガセットプレート25全体における第1材軸方向Xの両端間の距離Wを、第1小梁15の幅の2倍以上にする。このため、第1小梁15が横座屈する過程で第1小梁15の下フランジ17から一対の第1フランジガセットプレート25と大梁10のウェブ13の接合部に作用する、第1小梁15の面外方向に曲げる曲げモーメントを、一対の第1フランジガセットプレート25により、大梁10のウェブ13における、第1材軸方向Xの比較的広い範囲にわたって支持させることができる。従って、第1小梁15の横座屈変形に対する抵抗を大きくすることができ、その結果として横座屈耐力を向上させることができる。
【0081】
また、一対の第1フランジガセットプレート25は、従来の梁接合方法でも用いられている部材である。このため、一対の第1フランジガセットプレート25の長さが長くなっても、梁接合方法S1で用いられる部材の数は増えず、一対の第1フランジガセットプレート25が第1材軸方向Xに長くなり、大梁10のウェブ13と一対の第1フランジガセットプレート25とを接合する長さが長くなるだけである。このため、梁接合方法S1の加工性及び施工性を、従来の梁接合方法と同等に維持することができる。
【0082】
第0変形例の梁接合構造に係る梁接合方法では、梁接合構造は、1枚の第1フランジガセットプレートを備える。
この場合においても、第0変形例の梁接合構造と同様に、第1小梁15の横座屈耐力を向上させることができる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態及びその変形例で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記実施形態及び変形例では、梁接合構造1が備える第1ウェブガセットプレート20と第1小梁15のウェブ18は一対のスプライスプレートを介して接合してもよい。この場合、一対のスプライスプレートは、第1ウェブガセットプレート20と第1小梁15のウェブ18を第1材軸方向Xに挟むように配置される。
【0084】
大梁10のウェブ13と一対の第1フランジガセットプレート25とは、突合せ溶接によりそれぞれ接合されてもよい。
一対の第1フランジガセットプレート25は、第1ウェブガセットプレート20にそれぞれ接合されなくてもよい。
大梁10はH形鋼に限定されず、大梁は、上フランジ、下フランジ、及びウェブを有し、大梁の材軸方向に直交する断面形状がH形状である部材であれば、限定されない。第1小梁15及び第2小梁30についても、大梁10と同様である。
梁接合構造1,1A,1Bは、第2小梁30、第2ウェブガセットプレート35、及び一対の第2フランジガセットプレート40を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,1A,1B 梁接合構造
10 大梁(第1梁)
11,16,31 上フランジ
13,18,33 ウェブ
15 第1小梁(第2梁)
12,17,32 下フランジ
20 第1ウェブガセットプレート(第1接続板)
25,45 第1フランジガセットプレート(第1仕口部材、第1補強板)
30 第2小梁(第3梁)
35 第2ウェブガセットプレート(第2接続板)
40 第2フランジガセットプレート(第2仕口部材、第2補強板)
48,56 ボルト接合部
S1 梁接合方法
W 距離
X 第1材軸方向(材軸方向)
Y 第2材軸方向(材軸方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図24