IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミラクシアエッジテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-測距装置および測距方法 図1
  • 特開-測距装置および測距方法 図2
  • 特開-測距装置および測距方法 図3
  • 特開-測距装置および測距方法 図4
  • 特開-測距装置および測距方法 図5
  • 特開-測距装置および測距方法 図6
  • 特開-測距装置および測距方法 図7
  • 特開-測距装置および測距方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125857
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】測距装置および測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/487 20060101AFI20240911BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G01S7/487
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033965
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】520423334
【氏名又は名称】ミラクシアエッジテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】南 有紀
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA07
2F112BA16
2F112CA12
2F112DA25
2F112DA26
2F112EA05
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA05
5J084BA20
5J084BA34
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA12
5J084CA19
5J084EA01
5J084EA20
(57)【要約】
【課題】受光信号のS/Nを確保した上でマルチパスの影響を軽減可能な測距装置を提供する。
【解決手段】測距装置100は、L(≧2)個の発光領域を有する発光部101と、N(≧2)個の受光領域を有する受光部102と、発光制御部103と、受光制御部104と、距離信号113を出力する信号処理部105とを備え、発光制御部103は、L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示し、受光制御部104は、N個の受光領域のそれぞれに対してL個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示し、信号処理部105は、N個の受光領域のそれぞれについて、M種類の受光信号112のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号112を背景光信号としてM-1種類の受光信号112から減算後、距離信号113を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を測定対象に対して発光するL(≧2)個の発光領域を有する発光部と、
測定対象からの反射光を受光しM(≧3)種類の信号電荷として蓄積するN(≧2)個の受光領域を有し、前記M種類の信号電荷に応じたM種類の受光信号を出力する受光部と、
前記L個の発光領域に対して発光を指示する発光制御部と、
前記N個の受光領域に対して受光を指示する受光制御部と、
前記M種類の受光信号に基づいて距離信号を出力する信号処理部とを備え、
前記発光制御部は、前記L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示し、
前記受光制御部は、前記N個の受光領域のそれぞれに対して前記L個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示し、
前記信号処理部は、前記N個の受光領域のそれぞれについて、前記M種類の受光信号のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号を背景光信号としてM-1種類の受光信号から減算後、前記距離信号を生成する、
測距装置。
【請求項2】
前記発光制御部は、前記L個の発光領域のそれぞれに対し、1回または複数回の発光毎に所定の基準タイミングに対する発光タイミングのシフト量を変更することを1フレーム期間内に複数回繰り返す、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記発光制御部は、前記シフト量を乱数により決定する、
請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記シフト量の最大値は、前記L個の発光領域の発光開始から前記背景光信号の受光終了までの期間と同じである、
請求項2または3に記載の測距装置。
【請求項5】
パルス光を測定対象に対して発光するL(≧2)個の発光領域を有する発光部と、測定対象からの反射光を受光しM(≧3)種類の信号電荷として蓄積するN(≧2)個の受光領域を有し、前記M種類の信号電荷に応じたM種類の受光信号を出力する受光部とを備える測距装置による測距方法であって、
前記L個の発光領域に対して発光を指示する発光制御ステップと、
前記N個の受光領域に対して受光を指示する受光制御ステップと、
前記M種類の受光信号に基づいて距離信号を出力する信号処理ステップとを含み、
前記発光制御ステップでは、前記L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示し、
前記受光制御ステップでは、前記N個の受光領域のそれぞれに対して前記L個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示し、
前記信号処理ステップでは、前記N個の受光領域のそれぞれについて、前記M種類の受光信号のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号を背景光信号としてM-1種類の受光信号から減算後、前記距離信号を生成する、
測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、TOF(Time Of Flight)方式により距離を測定する測距装置および測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、測定対象からの反射光の飛行時間に基づいて距離を測定するTOF方式の測距センサおよび測距装置を提案している。一般に、TOF方式の測距装置は、マルチパス(言い換えると、「間接反射光」)が発生する条件下において測定精度が低下する。これに対して、例えば特許文献2、特許文献3および特許文献4は、領域毎の照射光のマスクあるいは減弱により照射パターンを形成することで間接反射成分が優位を占める受光信号を取り出し、直接反射成分が優位を占める受光信号から減算することでマルチパスの影響を軽減する測距装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-294420号公報
【特許文献2】特許第6241793号公報
【特許文献3】特表2017-517737号公報
【特許文献4】国際公開第2022/004441号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2および特許文献3の測距装置では、領域毎に照射光がマスクされている期間が受光信号の直接反射成分に寄与しない。さらに、間接反射成分が優位を占める受光信号を前半位相および後半位相それぞれについて取得する必要があり、受光信号読出し時間の増加により受光期間を圧迫する。以上のことから、特許文献2および特許文献3の技術では、受光信号のS/N(Signal-to-Noise ratio)を確保することが困難である。
【0005】
これに対して特許文献4の測距装置では複数波長の照射光を組み合わせることで、単純に照射光をマスクするよりも多くの直接反射成分を含む受光信号を取得している。しかしながら、Siイメージセンサが実用感度を有する波長範囲において、複数波長の光を光学フィルタ等により完全に分離するのは困難であるため、十分なS/Nを確保することが困難である。
【0006】
上記課題に鑑み、本開示は、受光信号のS/Nを確保した上でマルチパスの影響を軽減可能な測距装置および測距方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る測距装置は、パルス光を測定対象に対して発光するL(≧2)個の発光領域を有する発光部と、測定対象からの反射光を受光しM(≧3)種類の信号電荷として蓄積するN(≧2)個の受光領域を有し、前記M種類の信号電荷に応じたM種類の受光信号を出力する受光部と、前記L個の発光領域に対して発光を指示する発光制御部と、前記N個の受光領域に対して受光を指示する受光制御部と、前記M種類の受光信号に基づいて距離信号を出力する信号処理部とを備え、前記発光制御部は、前記L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示し、前記受光制御部は、前記N個の受光領域のそれぞれに対して前記L個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示し、前記信号処理部は、前記N個の受光領域のそれぞれについて、前記M種類の受光信号のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号を背景光信号としてM-1種類の受光信号から減算後、前記距離信号を生成する。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る測距方法は、パルス光を測定対象に対して発光するL(≧2)個の発光領域を有する発光部と、測定対象からの反射光を受光しM(≧3)種類の信号電荷として蓄積するN(≧2)個の受光領域を有し、前記M種類の信号電荷に応じたM種類の受光信号を出力する受光部とを備える測距装置による測距方法であって、前記L個の発光領域に対して発光を指示する発光制御ステップと、前記N個の受光領域に対して受光を指示する受光制御ステップと、前記M種類の受光信号に基づいて距離信号を出力する信号処理ステップとを含み、前記発光制御ステップでは、前記L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示し、前記受光制御ステップでは、前記N個の受光領域のそれぞれに対して前記L個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示し、前記信号処理ステップでは、前記N個の受光領域のそれぞれについて、前記M種類の受光信号のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号を背景光信号としてM-1種類の受光信号から減算後、前記距離信号を生成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る測距装置および測距方法によれば、受光信号のS/Nを確保した上でマルチパスの影響が軽減された距離測定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における測距装置およびその周辺の構成例を示すブロック図
図2】実施形態における発光部および受光部の模式図
図3】実施形態における受光領域上の画素構成を示す回路図
図4】実施形態における測距装置の動作を示すタイミング図
図5】実施形態における発光部および受光部の動作を示すタイミング図
図6】実施形態における受光動作の特異例を示すタイミング図
図7】実施形態における信号電荷蓄積の例を示すタイミング図
図8】実施形態における測距装置の動作(測距方法)を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態に係る測距装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものであり、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定するものではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
[1 装置の構成]
図1は、本実施形態における測距装置100およびその周辺の構成例を模式的に示すブロック図である。本図では、周辺の構成例として、測定対象10が図示されている。図1に示すように、本実施形態における測距装置100は、TOF方式の測距装置であり、発光部101、受光部102、発光制御部103、受光制御部104、および、信号処理部105を備える。
【0013】
発光部101は、パルス光110を測定対象10に対して発光するL(≧2)個の発光領域(ここでは、3個の発光領域)を有するレーザーダイオードまたはLEDなどの発光素子を含む構成を備える。
【0014】
受光部102は、測定対象10からの反射光を受光しM(≧3)種類の信号電荷(ここでは、3種類の信号電荷)として蓄積するN(≧2)個の受光領域(ここでは、3個の受光領域)を有し、M種類の信号電荷に応じたM種類の受光信号112を出力する、二次元状に配置された受光素子を含む画素回路である。
【0015】
発光制御部103は、L個の発光領域に対して発光を指示するタイミング信号発生回路である。より詳しくは、発光制御部103は、L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示する。このとき、発光制御部103は、L個の発光領域のそれぞれに対し、1回または複数回の発光毎に所定の基準タイミングに対する発光タイミングのシフト量を変更することを1フレーム期間内に複数回繰り返す。このシフト量については、発光制御部103は、シフト量を乱数により決定する。シフト量の最大値は、L個の発光領域の発光開始から背景光信号の受光終了までの期間と同じである。
【0016】
受光制御部104は、N個の受光領域に対して受光を指示するタイミング信号発生回路である。より詳しくは、受光制御部104は、N個の受光領域のそれぞれに対してL個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示する。
【0017】
信号処理部105は、M種類の受光信号112に基づいて距離信号113を出力する信号処理回路であり、メモリ、および、プログラムを内蔵し実行するプロセッサなどで構成される。より詳しくは、信号処理部105は、N個の受光領域のそれぞれについて、M種類の受光信号112のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号112を背景光信号としてM-1種類の受光信号112から減算後、距離信号113を生成する。
【0018】
図2は、本実施形態における発光部101および受光部102を模式的に示す図である。図2に示すように、発光部101は、本実施形態では、第1から第3の発光領域201~203を有しており、各発光領域は中心波長が940nm付近の近赤外光を発するVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などの発光素子、および、発光素子の発光側を覆う拡散板で構成されており、各発光領域が独立したタイミングで一定の照射角を有するパルス光110を照射する。また、受光部102は、本実施形態では、第1から第3の受光領域211~213を有しており、各受光領域はCMOSイメージセンサなどの撮像素子上の二次元領域であり、それぞれ独立したタイミングで測定対象10からの反射光111を、図示されないレンズ、および光学フィルタを通して受光する。なお、図中ではパルス光110、および反射光111の一部の光線のみを例示している。
【0019】
ここで、反射光111のうち第1の発光領域201から照射されたパルス光110に起因する成分は第1の受光領域211で直接反射成分(つまり、直接反射光による成分)として受光される。第1の発光領域201から照射されたパルス光110に起因する反射光111の一部は図中破線で示す経路を通り、第2および第3の受光領域212および213で間接反射成分(つまり、間接反射光による成分)として受光される。また、反射光111のうち第2の発光領域202から照射されたパルス光110に起因する成分は第2の受光領域212で直接反射成分として受光される。第2の発光領域202から照射されたパルス光110に起因する反射光111の一部は、第1および第3の受光領域211および213で間接反射成分として受光される。同様に、反射光111のうち第3の発光領域203から照射されたパルス光110に起因する成分は第3の受光領域213で直接反射成分として受光される。第3の発光領域203から照射されたパルス光110に起因する反射光111の一部は、第1および第2の受光領域211および212で間接反射成分として受光される。各受光領域で受光した反射光111はそれぞれ信号電荷として蓄積された後、受光信号112として出力される。このように、第1から3の受光領域211~213のそれぞれは、直接反射成分を受光する対象として、第1から第3の発光領域201~203のいずれかと対応づけられている。
【0020】
なお、発光領域の数Lおよび受光領域の数Nは、2以上であればよく、例えば、4つ以上でもよく、分割方向は横方向および格子状であってもよい。また、発光領域の数Lと受光領域の数Nは異なっていてもよく、例えば発光領域の数Lが6、かつ受光領域の数Nが3であり、2つの発光領域の組を1つの発光領域と見立てて用いてもよい。なお厳密に言えば、発光領域および受光領域の分割により間接反射成分を完全に分離出来るわけではなく、例えば、第1の発光領域201から照射されたパルス光110に起因する間接反射成分の一部が第1の受光領域211により受光されることもありうる。ただし、このような間接反射成分は、発光領域および受光領域の分割数が十分に多い場合は無視できるレベルになるため、以降の説明では言及しないこととする。
【0021】
図3は、実施形態における受光領域上の画素構成を示す回路図であり、より詳しくは、本実施形態における第1から第3の受光領域211~213を構成するCMOSイメージセンサの画素構成を示す図である。図3に示すように、本実施形態における受光領域上の画素は、一般的なCMOSイメージセンサの画素と類似の構造を有するが、3種類の受光信号A0~A2を出力するため、3種類の信号電荷を独立して蓄積可能な構造となっている点が一般的なCMOSイメージセンサとは異なり、入射光を信号電荷に変換するフォトダイオードPD、3種類の信号電荷を蓄積する電荷蓄積部C0~C2、リセット信号RSTに応じて各電荷蓄積部C0~C2の電位をリセットするリセットトランジスタTR、受光制御部104からの受光制御信号X0~X2に応じて信号電荷を選択的に転送する転送トランジスタTX0~TX2、インピーダンス変換のためのソースフォロワトランジスタSF0~SF2、受光制御部104からの読出し制御信号R0~R2に応じて受光信号A0~A2を時系列で選択的に取り出すための選択トランジスタSEL0~SEL2からなる。ここで、受光制御信号X0~X2は第1から第3の受光領域211~213のそれぞれ毎に独立しており、第1から第3の受光領域211~213はそれぞれ異なるタイミングで信号電荷を蓄積する。第1から3の受光領域211~213には、このような構成を備える画素が2次元状に配置されている。
【0022】
[2 装置の動作]
以下、本実施形態における測距装置100の動作について、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態における測距装置100の動作を示すタイミング図である。図4に示すように、まず、タイミング401において受光部102内の信号電荷(つまり、電荷蓄積部C0~C2に蓄積されている信号電荷)をリセットするリセット動作を行い、タイミング402において発光部101(つまり、第1から第3の発光領域201~203)の発光と、受光部102(つまり、第1から3の受光領域211~213)による電荷蓄積を行う1回目の受光動作を行う。同様に、タイミング403以降も2~P回目の受光動作を繰り返し行い、電荷蓄積部C0~C2に累積的に信号電荷を蓄積する。その後、タイミング404において電荷蓄積部C0~C2に蓄積された信号電荷を読み出す読出し動作と、信号処理部105による距離信号113の生成を並列して行う。以上を1フレームの動作として、さらにフレーム毎に繰り返すことで、時系列の距離画像(つまり、2次元状に配置された画素毎の距離信号113)を生成する。
【0023】
図5は、本実施形態における発光部101、および受光部102の動作を示すタイミング図である。本図には、第1の発光領域201のパルス光110、第1の受光領域211における受光制御信号X0~X2、第2の発光領域202のパルス光110、第2の受光領域212における受光制御信号X0~X2、第3の発光領域203のパルス光110、第3の受光領域213における受光制御信号X0~X2、および、リセット信号RSTのタイミングが図示されている。
【0024】
まずリセット動作として、リセット信号RSTをHIGHレベルに設定したうえで、第1から第3の受光領域における受光制御信号X0~X2を順番にHIGHレベルに設定することで電荷蓄積部C0~C2に蓄積されている各信号電荷をリセットし、リセット信号RSTをLOWレベルに戻す。
【0025】
次に1回目の受光動作として、第1の発光領域201が、リセット信号RSTがLOWレベルになってから時間TL1(1)後に幅TPのパルス光110を照射し、幅TPのパルス光110の照射と同期間に第1の受光領域211の受光制御信号X0をHIGHレベルに設定することで電荷蓄積部C0に信号電荷を蓄積し、電荷蓄積部C0への信号電荷の蓄積を開始してから時間TP後に第1の受光領域211の受光制御信号X1をHIGHレベルに設定することで電荷蓄積部C1に信号電荷を蓄積し、さらに電荷蓄積部C1への信号電荷の蓄積を開始してから時間TB後に第1の受光領域の受光制御信号X2をHIGHレベルに設定することで電荷蓄積部C2に信号電荷を蓄積する。このように、第1の発光領域201の動作と第1の受光領域211の動作とは、時間関係が固定されており、同期している。
【0026】
ここで、時間TL1(1)は、0~TP+TBの時間範囲内での疑似乱数であり、受光制御部104によってM系列などのアルゴリズム(つまり、疑似乱数発生器)を用いて決定される。また、時間TBは反射光111が実用上無視できるレベルまで減衰する距離を進む時間である。
【0027】
さらに、第1の発光領域201、および第1の受光領域211の動作と並行し、第2の発光領域202が、リセット信号RSTがLOWレベルになってから時間TL2(1)後に、第3の発光領域203が、リセット信号RSTがLOWレベルになってから時間TL3(1)後にそれぞれ幅TPのパルス光110を照射し、第2の受光領域212、および第3の受光領域213が第1の受光領域211と同様の手順で信号電荷を蓄積する。なお、TL2(1)、およびTL3(1)はTL1(1)と同様に疑似乱数である。このように、第1の発光領域201の動作と第2および第3の受光領域212および213の動作とは、時間関係がランダムに決定され、同期していない。
【0028】
以上の1回目の受光動作を周期TEで2回目以降も繰り返すことで、受光信号112の生成に十分な信号電荷量を確保する。ここで、周期TE=TI+max[TLi(j)]=TI+TP+TBであり、TIは各発光領域の最短発光間隔(発光から次の発光が可能になるまでの時間)であり、TI>2×TP+TBとする。また、TLi(j)はj回目の受光動作における第iの発光領域の発光タイミングを示す。なお、TLi(j)を1回の発光毎に変更せず、例えば2回の発光毎に変更してもよいし、乱数で定まる発光毎に変更してもよいし、1フレーム期間内で変更の間隔を変えてもよい。
【0029】
図6は、本実施形態における受光動作の特異例を示すタイミング図である。ここでは、第1の受光領域211と第2の受光領域212について、同じ回数目における受光動作の特異例が2つ(図6の(a)および(b))示されている。図6の(a)および(b)には、第1の発光領域201のパルス光110、第1の受光領域211における受光制御信号X0~X2、第2の発光領域202のパルス光110、および、第2の受光領域212における受光制御信号X0~X2のタイミングが図示されている。
【0030】
図6の(a)の一つ目の例に示すように、同じ回数目の受光動作において、第1の発光領域201の発光タイミングTL1=0かつ、第2の発光領域202の発光タイミングTL2=2×TP+TBのとき、第1の発光領域201の発光から第2の受光領域212の受光までの期間が最大となり、第1の発光領域201のパルス光110は第2の受光領域212でかろうじて受光されず、第2の発光領域202のパルス光110も第1の受光領域211に受光されない。
【0031】
同様に、図6の(b)の二つ目の例に示すように、同じ回数目の受光動作において、第1の発光領域201の発光タイミングTL1=2×TP+TBかつ、第2の発光領域202の発光タイミングTL2=0のとき、第2の発光領域202の発光から第1の受光領域211の受光までの期間が最大となり、第2の発光領域202のパルス光110は第1の受光領域211でかろうじて受光されず、第1の発光領域201のパルス光110も第2の受光領域212に受光されない。
【0032】
以上のことに加え、前述のようにTL1およびTL2は発光毎に疑似乱数をとるため、第1の発光領域201のパルス光110は第2の受光領域212の電荷蓄積部C0~C2に均等に分散されて蓄積され、同様に、第2の発光領域202のパルス光110は第1の受光領域211の電荷蓄積部C0~C2に均等に分散されて蓄積される。第3の発光領域203、および第3の受光領域213についても同様である。
【0033】
図7は、本実施形態における信号電荷蓄積の例を示すタイミング図である。ここでは、仮にTLi(j)を固定にした場合に得られる信号電荷蓄積の例(図7の(a))と、実施形態のようにTLi(j)を疑似乱数により変化させた場合に得られる信号電荷蓄積の例(図7の(b))とが示されている。図7の(a)および(b)には、1フレームにわたる信号電荷蓄積の例として、直接反射成分、間接反射成分、背景光成分、受光制御信号X0~X2、および、電荷蓄積部C0~C2の信号電荷蓄積のタイミングが図示されている。
【0034】
図7の(a)に示すように、例えば、TLi(j)=0に固定すると、間接反射成分は電荷蓄積部C0~C2に異なる比率で(つまり、均等に分散されることなく)信号電荷として蓄積される。電荷蓄積部C0~C2に蓄積された信号電荷を示す受光信号A0~A2の信号比率も同様に変化するため、間接反射成分は、電荷蓄積部C0~C2のそれぞれに対してマルチパスに対応する時間に依存した影響を与えることとなり、距離計算に悪影響を及ぼす。
【0035】
一方、同図の(b)に示す本実施形態のように、TLi(j)を疑似乱数により変化させた場合、パルス光110が照射されてから間接反射光が受光されるまでの時間がランダムに変化するので、間接反射成分は電荷蓄積部C0~C2に均等比率で分散されて信号電荷として蓄積される。よって、受光信号A0~A2における間接反射成分も同様の比率となり、さらに、受光信号A2は間接反射成分、および背景光成分のみが占める背景光信号となる。よって、信号処理部105は、以下の数式1を用いることで間接反射成分および背景光成分の影響を除去した距離信号を各画素に対して生成することができる。
【0036】
【数1】
【0037】
以上の動作により、本実施形態における測距装置100は、少ない個数の電荷蓄積部C0~C2を用いて高い時間効率で受光し、マルチパスの影響を時間軸で均等に分散させることで、高精度(つまり、高S/Nを確保した上)でマルチパス(言い換えると、間接反射光)の影響を軽減した時系列の距離画像を生成することができる。
【0038】
図8は、実施形態における測距装置100の動作(つまり、測距方法)を示すフローチャートである。ここでは、パルス光110を測定対象10に対して発光するL(≧2)個の発光領域を有する発光部101と、測定対象10からの反射光を受光しM(≧3)種類の信号電荷として蓄積するN(≧2)個の受光領域を有し、M種類の信号電荷に応じたM種類の受光信号112を出力する受光部102とを備える測距装置100による測距方法の手順が示されている。
【0039】
まず、発光制御部103は、L個の発光領域に対して発光を指示する(発光制御ステップS10)。より詳しくは、発光制御部103は、L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示する。
【0040】
一方、受光制御部104は、N個の受光領域に対して受光を指示する(受光制御ステップS11)。より詳しくは、受光制御部104は、N個の受光領域のそれぞれに対してL個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示する。
【0041】
なお、上記発光制御ステップS10および受光制御ステップS11は、上述した実施形態のように、並行して行われる。
【0042】
次に、信号処理部105は、M種類の受光信号112に基づいて距離信号113を出力する(信号処理ステップS12)。より詳しくは、信号処理部105は、N個の受光領域のそれぞれについて、M種類の受光信号112のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号112を背景光信号としてM-1種類の受光信号112から減算後、距離信号113を生成する。
【0043】
以上の動作により、本実施形態における測距装置100は、少ない個数の電荷蓄積部C0~C2を用いて高い時間効率で受光し、マルチパスの影響を時間軸で均等に分散させることで、受光信号のS/Nを確保した上でマルチパス(言い換えると、間接反射光)の影響を軽減した時系列の距離画像を生成することができる。
【0044】
[3 まとめ等]
以上のように、本実施形態における測距装置100は、パルス光110を測定対象10に対して発光するL(≧2)個の発光領域(実施形態では、第1から第3の発光領域201~203)を有する発光部101と、測定対象10からの反射光を受光しM(≧3)種類の信号電荷として蓄積するN(≧2)個の受光領域(実施形態では、第1から第3の受光領域211~213)を有し、M種類の信号電荷に応じたM種類の受光信号112を出力する受光部102と、L個の発光領域に対して発光を指示する発光制御部103と、N個の受光領域に対して受光を指示する受光制御部104と、M種類の受光信号112に基づいて距離信号113を出力する信号処理部105とを備え、発光制御部103は、L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示し、受光制御部104は、N個の受光領域のそれぞれに対してL個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示し、信号処理部105は、N個の受光領域のそれぞれについて、M種類の受光信号112のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号112を背景光信号としてM-1種類の受光信号112から減算後、距離信号113を生成する。
【0045】
本実施形態によれば、従来技術のように照射光をマスクしたり、複数波長の照射光を組み合わせたりする必要がないので、少ない個数の電荷蓄積部C0~C2を用いて高い時間効率で受光し、マルチパスの影響を時間軸で均等に分散させることで、高精度(つまり、高S/Nを確保した上で)かつマルチパスの影響が軽減された距離測定が実現される。
【0046】
ここで、発光制御部103は、L個の発光領域のそれぞれに対し、1回または複数回の発光毎に所定の基準タイミングに対する発光タイミングのシフト量を変更することを1フレーム期間内に複数回繰り返す。これにより、間接反射光を受光する受光領域での間接反射成分が時間的に分散されて蓄積され、背景光信号が正確に算出される。
【0047】
また、発光制御部103は、シフト量を乱数により決定する。これにより、間接反射光を受光する受光領域での間接反射成分が、確実に、時間的に分散されて蓄積される。
【0048】
また、シフト量の最大値は、L個の発光領域の発光開始から背景光信号の受光終了までの期間と同じである。これにより、確実に間接反射成分が背景光信号に含まれることになり、背景光成分の影響を抑制した距離信号の生成が可能になる。
【0049】
また、本実施形態における測距方法は、パルス光110を測定対象10に対して発光するL(≧2)個の発光領域(第1から第3の発光領域201~203)を有する発光部101と、測定対象10からの反射光を受光しM(≧3)種類の信号電荷として蓄積するN(≧2)個の受光領域(第1から第3の受光領域211~213)を有し、M種類の信号電荷に応じたM種類の受光信号112を出力する受光部102とを備える測距装置100による測距方法であって、L個の発光領域に対して発光を指示する発光制御ステップS10と、N個の受光領域に対して受光を指示する受光制御ステップS11と、M種類の受光信号112に基づいて距離信号113を出力する信号処理ステップS12とを含み、発光制御ステップS10では、L個の発光領域のそれぞれに対して他の発光領域とは異なる時系列の発光を行うように指示し、受光制御ステップS11では、N個の受光領域のそれぞれに対してL個の発光領域のいずれかの発光に同期して受光を行うように指示し、信号処理ステップS12では、N個の受光領域のそれぞれについて、M種類の受光信号112のうち背景光および間接反射光の影響が占める割合が最も高い受光信号112を背景光信号としてM-1種類の受光信号112から減算後、距離信号113を生成する。
【0050】
これにより、従来技術のように照射光をマスクしたり、複数波長の照射光を組み合わせたりする必要がないので、少ない個数の電荷蓄積部C0~C2を用いて高い時間効率で受光し、マルチパスの影響を時間軸で均等に分散させることで、高精度(つまり、高S/Nを確保した上で)かつマルチパスの影響が軽減された距離測定が実現される。
【0051】
以上、本開示に係る測距装置および測距方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0052】
例えば、上記実施の形態では、発光制御部103は、L個の発光領域のそれぞれに対し、1回または複数回の発光毎に所定の基準タイミングに対する発光タイミングのシフト量を乱数で変更したが、これに限られず、L個の発光領域の1フレームにおける発光タイミングが互いに異なるパターンとなるならば、予め定められた固定の発光タイミングのパターンであってもよい。
【0053】
また、上記実施の形態における測距方法は、DVD等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録されるプログラムとして実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示に係る測距装置は、マルチパスの影響が少なく高精度な距離測定を行えるため、例えば、屋内搬送ロボット等における3次元測定に有用である。
【符号の説明】
【0055】
10 測定対象
100 測距装置
101 発光部
102 受光部
103 発光制御部
104 受光制御部
105 信号処理部
110 パルス光
111 反射光
112、A0~A2 受光信号
113 距離信号
201 第1の発光領域
202 第2の発光領域
203 第3の発光領域
211 第1の受光領域
212 第2の受光領域
213 第3の受光領域
PD フォトダイオード
TR リセットトランジスタ
TX0~TX2 転送トランジスタ
C0~C2 電荷蓄積部
SF0~SF2 ソースフォロワトランジスタ
SEL0~SEL2 選択トランジスタ
X0~X2 受光制御信号
R0~R2 読出し制御信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8