IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-吸収性物品 図1
  • 特開-吸収性物品 図2
  • 特開-吸収性物品 図3
  • 特開-吸収性物品 図4
  • 特開-吸収性物品 図5
  • 特開-吸収性物品 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125860
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/539 20060101AFI20240911BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A61F13/539
A61F13/532 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033968
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB20
3B200CA08
3B200DA12
3B200DB05
3B200DE10
(57)【要約】
【課題】本開示は、着用感が向上した吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】吸収性物品は、吸収体と、吸収体の肌面側に配置された透水性を有する肌面側シートと、吸収体の非肌面側に配置され非透水性を有し、吸収性物品の外装面を形成する非肌面側シートと、幅方向中央から両側に15mmの範囲に設けられ、肌面側シートと吸収体とが接着状態または強接着状態の領域と、肌面側シートと吸収体とが接着状態または強接着状態の領域よりも外側に設けられ、肌面側シートと吸収体とが非接着状態、または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態の領域と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有する吸収性物品であって、
吸収体と、
前記吸収体の肌面側に配置された透水性を有する肌面側シートと、
前記吸収体の非肌面側に配置され非透水性を有し、前記吸収性物品の外装面を形成する非肌面側シートと、
前記幅方向中央から両側に15mmの範囲に設けられ、前記肌面側シートと前記吸収体とが接着状態または強接着状態の領域と、
前記肌面側シートと前記吸収体とが接着状態または強接着状態の領域よりも外側に設けられ、前記肌面側シートと前記吸収体とが非接着状態、または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態の領域と、
を備える、吸収性物品。
【請求項2】
前記肌面側シートと前記吸収体とは、前記幅方向に間隔を30mm空けて接着状態または強接着状態であり、前記接着状態または前記強接着状態の領域以外では、前記肌面側シートと前記吸収体とが非接着状態、または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記幅方向端部側において、前記肌面側シートと前記吸収体とが接着状態または強接着状態の領域を備える、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記肌面側シートの肌面側には、防漏壁を形成する非透水性の防漏シートが設けられておらず、
前記肌面側シートの前記幅方向端部における前記吸収体が非接着状態または仮接着状態である部位において、前記肌面側シートは、前記吸収体の前記幅方向端部に沿って前記非肌面側で前記幅方向の内側に入り込み、前記非肌面側シート上で前記幅方向の外側に折り返されて、前記幅方向の外側に延在している、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記非肌面側シートに伸長状態で接着された収縮部材であって、少なくとも前記非肌面側シートを前記長手方向に収縮させる収縮部材を備え、
前記肌面側シートおよび前記非肌面側シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長く、且つ、前記吸収体の前記幅方向端部よりも外側に延在しており、
前記収縮部材は、前記吸収体の前記幅方向端部よりも外側に且つ前記幅方向端部の両側であって、前記肌面側シートと前記非肌面側シートの間に配置されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体は、前記幅方向中央に設けられ前記長手方向に延在する溝を有し、
前記肌面側シートと前記吸収体とが接着状態または強接着状態の領域は、前記溝の両側に配置されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者から排出された尿などの排出液を吸収する吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、吸収性パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/114209号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、着用感が向上した吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有する吸収性物品であって、吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置された透水性を有する肌面側シートと、前記吸収体の非肌面側に配置され非透水性を有し、前記吸収性物品の外装面を形成する非肌面側シートと、前記幅方向中央から両側に15mmの範囲に設けられ、前記肌面側シートと前記吸収体とが接着状態または強接着状態の領域と、前記肌面側シートと前記吸収体とが接着状態または強接着状態の領域よりも外側に設けられ、前記肌面側シートと前記吸収体とが非接着状態、または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態の領域と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、吸収性物品の着用感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る吸収性パッドを肌面側から視た平面図である。
図2図2は、実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図4図4は、バックシートの静摩擦係数と位置ずれとの関係を調べた実験結果に関する表である。
図5図5は、変形例に係る吸収性パッドを肌面側から視た平面図である。
図6図6は、変形例に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0009】
<実施形態>
本実施形態では、交換式(使い捨て)の吸収性パッド(本願でいう「吸収性物品」の一例)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後
身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が連接して位置している。また、吸収性パッドが着用者に着用された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。吸収性パッドは、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有する。
【0010】
図1は、実施形態に係る吸収性パッドを肌面側から視た平面図である。吸収性パッド1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する股下領域1Bと、股下領域1Bの腹部側に位置し、着用者の前身頃と腰回りに対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの背部側に位置し、着用者の後身頃と腰回りに対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。前身頃領域1F、後身頃領域1R、股下領域1Bには、股下領域1Bを中心に、平面形状が長方形状の吸収体6が組み込まれている。なお、本実施形態に係る吸収性パッド1は、長手方向において対称な形状および構成を有しており、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rとで同じ形状および構成を有する。吸収性パッド1は、テープ型おむつやパンツ型おむつの肌面側に重ねて使用される。着用者が排出した尿などの排出液は、吸収性パッド1が吸収し保持するので、吸収性パッド1のみを交換し、おむつ自体は再利用することができる。なお、吸収性パッド1は、下衣肌着の肌面側に配置し、おむつと併用されることなく、単独で使用されてもよい。なお、本実施形態では、大人用(介護用)の吸収性パッドについて説明する。
【0011】
また、吸収性パッド1は、長手方向に延在し、幅方向の両側に配置された弾性体2L,2R(本願でいう「収縮部材」の一例)を備える。吸収性パッド1には、弾性体2L,2Rの収縮力により着用者の大腿部に沿うレグギャザーが形成される。レグギャザーが着用者の大腿部に沿うことにより、着用者から排出される排出液は、吸収性パッド1からほとんど漏出することなく吸収性パッド1の吸収体6に吸収される。なお、弾性体2L,2Rを構成する弾性部材としては糸ゴムや帯状のゴム等を適宜選択できる。また、弾性体2L,2Rは、平行する複数本の糸ゴムであってもよい。本実施形態では、弾性体2L,2Rは、2本の糸ゴムによって構成されている。
【0012】
図2は、実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。吸収性パッド1は、トップシート7(本願でいう「肌面側シート」の一例)と、バックシート5(本願でいう「非肌面側シート」の一例)と、トップシート7とバックシート5の間に配置された吸収体6と、トップシート7とバックシート5の間であって、吸収体6の幅方向外側に配置された弾性体2L,2Rとを備える。吸収性パッド1は、肌面側からトップシート7、吸収体6、バックシート5の順で積層された層構造を備える。トップシート7、吸収体6およびバックシート5はいずれも長方形状を有し、それらの長手方向は、吸収性パッド1の長手方向と一致する。吸収性パッド1の前身頃端部、後身頃端部および幅方向端部では、吸収体6は存在せず、トップシート7とバックシート5が接着されている。このように、吸収性パッド1においては、吸収体6の配置領域外においてトップシート7とバックシート5が接着されており、この接着された部位で吸収体6が囲まれている。なお、吸収体6の平面形状は瓢箪型形状であってもよい。なお、トップシート7とバックシート5は、ホットメルト接着剤によって接着にされている。
【0013】
トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される。トップシート7は、熱可塑性樹脂の繊維を含んで形成されたスパンボンド不織布や、エアスルー不織布等からなる。このトップシート7は、その一部又は全部において透水性(液透過性)を有する。そのため、吸収性パッド1の着用状態において、着用者から排出され
た排出液は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。また、トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0014】
吸収体6は、液体を吸収する吸収コアと、吸収コアを包み込むコアラップシートとを有する。吸収コアは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維によって形成されている。コアラップシートには、透液性を有する不織布が用いられる。本実施形態では、コアラップシートにティッシュが用いられている。なお、吸収体6の詳細については後述する。
【0015】
バックシート5は、排出物の漏れを抑制するために非透液性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
【0016】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、いずれも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、吸収性パッド1によって着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が仰臥位を取っている場合でも、伏臥位を取っている場合でも、排出液はトップシート7を介して吸収体6に進入することになる。
【0017】
図3は、実施形態に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した断面図である。具体的には、図3は、図1のA-A線に沿って切断した断面図である。本実施形態に係る吸収性パッド1の吸収体6は、吸収コア6Cと、吸収コア6Cを包み込むコアラップシート6Wを有する。吸収コア6Cは、複数の吸収マットが積層して形成されている。具体的には、吸収コア6Cは、着用者の肌面側に設けられた上層吸収マット6Aと、着用者の非肌面側に設けられた下層吸収マット6Bとを有する。また、吸収コア6Cは、上層吸収マット6Aと下層吸収マット6Bとの間にSAP層6L,6Rを有する。SAP層6L,6Rは、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)の粒状が複数集まることによって形成されている。SAP層6L,6Rは、吸収体6の幅方向中央部の外側に配置されており、吸収体6の長手方向に沿って延在している。SAP層6L,6Rは幅方向に互いに対称に設けられている。なお、トップシート7は、非肌面側、すなわち、バックシート5側に延在し、バックシート5に接着されている。
【0018】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。なお、上層吸収マット6Aおよび下層吸収マット6Bの短繊維間にSAPの粒子が配置されていてもよい。
【0019】
コアラップシート6Wは、薄い透液性のシートであり、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより、SAP層6L,6RのSAPの粒子が吸収体6の外部にこぼれるのを防いでいる。また、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより吸収コア6Cの型崩れが抑制される。コアラップシート6Wは、不織布またはパルプ繊維で形成することができ、一例としてはコアラップシート6Wにティッシュペーパーを用いることができる。なお、吸収体6はバックシート5とトップシート7に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート6Wを設けない構成として
もよい。なお、図3に示す構成では、コアラップシート6Wは、吸収コア6Cの肌面側であるトップシート7側を覆う上層コアラップシート6WAと、吸収コア6Cの非肌面側であるバックシート5側と、吸収コア6Cの側面側を覆う下層コアラップシート6WBの2枚のシートから構成されている。上層コアラップシート6WAと下層コアラップシート6WBは、吸収コア6Cの肌面側の幅方向両端部において、重なり合い、互いに接着されている。吸収体6の肌面側は上層コアラップシート6WAと下層コアラップシート6WBから構成され、吸収体6の側面側と非肌面側は、下層コアラップシート6WBから構成されている。なお、図示は省略するが、下層コアラップシート6WBとバックシート5とはホットメルト接着剤によって接着されている。
【0020】
また、吸収体6は、吸収性パッド1の幅方向中央に設けられ長手方向に延在する溝6Hを有する。図3に示されるように、溝6Hは、上層吸収マット6Aを厚み方向に貫通している。溝6Hは、上層吸収マット6Aをフォーミングドラムによって成型する際に形成される。溝6Hは、幅方向中央に設けられており、着用者の尿道口と対向する。着用者が排出した尿は、溝6H内を流れることにより拡散される。これにより、吸収性パッド1は、尿を吸収体6の全体で吸収することができる。
【0021】
一般的に、吸収性パッドは、上述の通り、おむつと組み合わせて使用される場合が多い。パンツ型のおむつやテープ型のおむつは、着用者のウエスト部分で固定される。しかしながら、吸収性パッドは、おむつの肌面側に配置されるものの、着用者に対して直接的に固定されないので、吸収性パッドがおむつ内で位置ずれを起こす虞がある。本実施形態に係る吸収性パッド1は、着用者に対しての固定力を向上させることを目的とする。この固定力の向上には、両面テープなどは使用されない。本実施形態に係る吸収性パッド1は、両面テープなどを用いることなく、すなわち、使用する材料を低減させつつ、位置ずれを抑制することができる。よって、本実施形態に係る吸収性パッド1は、おむつ内での位置ずれを抑制することができ、以って、着用感を向上させることができる。
【0022】
本実施形態に係る吸収性パッド1において、トップシート7と吸収体6とは、少なくとも一部において非接着状態または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態である。ここで、非接着状態とは、トップシート7と吸収体6が全く接着されていないことをいう。また、仮接着状態とは、吸収性パッド1を破るなどの破壊をすることなく、トップシート7を吸収体6から引き剥がせる程度の強さの接着状態をいう。仮接着状態は、接着領域と非接着領域との割合を調整したり、接着剤の性能や塗布量を調整したりするなどして形成できる。非接着状態および仮接着状態は、言い換えると、トップシート7が吸収体6から剥がれ易い状態である。
【0023】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、トップシート7の少なくとも一部を吸収体6から剥がれ易くし、尿などの水分を含んだトップシート7が着用者の肌面に貼り付くように構成されている。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、着用者への固定力を向上させることで、おむつ内での位置ずれを抑制することができ、以って、着用感を向上させることができる。なお、トップシート7は、吸収性パッド1の他の部材と比較して剛性が小さいため、肌に密着しやすく、肌に貼り付きやすい。
【0024】
ここで、トップシート7と吸収体6との接着について、図1および図3を参照しつつより詳細に説明する。図1および図3の二点鎖線で示す中心線Cは、吸収性パッド1の幅方向中央を表している。幅方向中央から両側に15mmの範囲にトップシート7と吸収体6とが接着状態または強接着状態である領域20L,20Rが設けられている。接着状態とは、吸収性パッド1を破るなど破壊することなく接着箇所を剥がすことができない程度の強さで接着されていることである。強接着状態とは、吸収性パッド1を破るなど破壊することなく吸収体6から剥がすことは可能であるが、上述の仮接着状態よりも強固に接着し
ている状態のことである。
【0025】
トップシート7と吸収体6との接着には、ホットメルト接着剤が用いられている。図3に示されるように、ホットメルト接着剤が塗布されることによって形成された接着部HM1がコアラップシート6Wとトップシート7との間に複数設けられている。複数の接着部HM1は、中心線Cを中心として左右対称に配置されており、接着部HM1同士の間隔は、30mmに設定されている。よって、中心線Cに最も近い左右の接着部HM1同士の間隔も30mmであり、当該左右の接着部HM1の各々と中心線Cとの間隔は、15mmとなる。同様に、コアラップシート6Wと吸収コア6Cとの接着には、ホットメルト接着剤が用いられている。図3に示すように、ホットメルト接着剤が塗布されることによって形成された接着部HM2が、上層コアラップシート6WAと上層吸収マット6Aとの間に複数設けられている。複数の接着部HM2は、中心線Cを中心として左右対称に配置されている。また、図3に示すように、ホットメルト接着剤が塗布されることによって形成された接着部HM3が、下層コアラップシート6WBと下層吸収マット6Bとの間に複数設けられている。複数の接着部HM3は、中心線Cを中心として左右対称に配置されている。接着部HM1,HM2,HM3は吸収性パッド1の長手方向に沿って吸収体6の長手方向端部まで延在している。
【0026】
領域20L,20Rでは、吸収体6上にトップシート7が載置された後、トップシート7と吸収体6とがローラによってプレスされることによって、トップシート7と吸収体6とが接着状態または強接着状態とされる。なお、領域20L,20Rでは、トップシート7および吸収体6をプレスする際に、接着部HM2を形成するホットメルト接着剤がトップシート7と吸収体6との間に染み出し、トップシート7と吸収体6との接着状態または強接着状態の形成にも寄与している。領域20L,20Rでは、接着部HM1と接着部HM2とが厚み方向に重なっている。接着部HM1と接着部HM2とが重なることによって、トップシート7とコアラップシート6Wとを剥離する場合に必要な剥離力が接着部HM1の外側、すなわち領域20L,20Rの外側と比較して大きくなるため、領域20L,20Rは、接着状態または強接着状態となる。よって、接着部HM1,HM2が重なる部分が領域20L,20Rとなる。接着部HM1同士の間隔が30mmであり、図1に示されるように、領域20Lと領域20Rの間隔D1も30mmとなる。領域20L,20Rは、溝6Hの両側に配置されている。なお、溝6Hは、着用者が男性である場合の男性器の大きさを考慮して幅が30mm以下に設定されている。
【0027】
領域20L,20Rの間は、着用者の尿道口が当接する位置を含んでいる。尿道口当接位置では、トップシート7と吸収体6の間にホットメルト接着剤が塗布されていないので、トップシート7を浸透した尿が吸収体6に迅速に到達可能となる。
【0028】
また、吸収性パッド1は、図1に示されるように、領域20L,20Rよりも外側に設けられ、トップシート7と吸収体6とが非接着状態、または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態の領域21L,21Rを有する。図3に示されるように、領域20L,20Rの外側で接着部HM1が設けられていない部分では、トップシート7と吸収体6とが非接着状態である。また、中心線Cから左右に2番目の接着部HM1は、中心線Cから左右に2番目の接着部HM2と重なっておらず、当該接着部HM1の形成範囲は、トップシート7と吸収体6とが弱接着の状態となる。このため、中心線Cから左右に2番目の接着部HM1の形成範囲は、領域21L,21Rに含まれる。なお、中心線Cから左右に2番目の接着部HM1が接着部HM2の幅方向に半分の以下の範囲で当該接着部HM2と重なっていれば、トップシート7とコアラップシート6Wとを剥離する場合に必要な剥離力を小さくすることができるので、当該接着部HM1の形成範囲でトップシート7と吸収体6とを弱接着状態とすることができる。
【0029】
吸収性パッド1は、当該吸収性パッド1を着用してから初回の排尿後に、領域21L,21Rにおいてトップシート7が吸収体6のコアラップシート6Wから剥がれる。例えば、着用者が男性であれば、この剥がれた領域21L,21Rのトップシート7によって男性器を包み、排尿後により濡れることで男性器やその周囲の肌面に貼り付き、吸収性パッド1の位置ずれを効果的に抑制できる。また、着用者が女性であれば、この剥がれた領域21L,21Rのトップシート7が女性器の左右方向外側(例えば、脚の付け根、女性器よりも頭頂部側に凹んでいる箇所(鼠径部))に貼り付き、吸収性パッド1の位置ずれを
効果的に抑制できる。なお、本実施形態では、領域21L,21Rは、吸収体6の長手方向の全体に亘って形成されているが、着用者の尿道口の左右方向を含んで、着用者の肌面に貼り付くのに必要な長さ程度に少なくとも形成されることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態に係る吸収性パッド1は、大人用(介護用)である。吸収体6に設けられる溝6Hは、幅方向中央部に設けられており、この位置は男性着用者の男性器と対向する位置である。男性着用者の男性器(陰茎)の標準的な太さに鑑み、溝6Hの幅は30mm以下に設定されている。領域20L,20R間の間隔D1(図1参照)を30mmとすることによって、吸収性パッド1は、幅方向中央では吸収体6の溝6Hによって男性器を覆い、かつ、領域20L,20Rの外側の領域21L,21Rのトップシート7によって男性器を側面から覆い、男性器を保持することができる。これにより、吸収性パッド1は、男性器からの排尿方向を幅方向中央方向に規制することができるので、尿が吸収性パッド1の横方向に向けて排出された横から漏れるのを防止できる。また、吸収性パッド1は、尿を溝6Hに沿って拡散することができるので、吸収コア6Cの全体で尿を吸収保持することができる。
【0031】
次に、本実施形態におけるバックシート5の静摩擦係数(静止摩擦係数)と吸収性パッド1の位置ずれの関係について説明する。吸収性パッド1の静摩擦係数は、以下の方法で測定可能である。静摩擦係数は、新東科学株式会社製の表面性測定機(トライボギアTYPE:14DR)を用いて、JIS P 8147:2010(紙及び板紙-静及び動摩擦係数の測定方法)に準
拠して測定した。
【0032】
<実験例>
バックシートの静摩擦係数と位置ずれの関係を調べる実験を行った。本実験例では、バックシートにポリエチレンの樹脂フィルムを用いて、サンプルの吸収性パッドを作成した。図4は、本実験結果を示す表である。本実験例では、本実施形態の実施例および比較例の吸収性パッドを各15枚ずつ作成した。図4の表は、「目付(g/m)(小数点第1位で四捨五入)」、「静摩擦係数(小数点第3位で四捨五入)」、「実施例」、「比較例」の項目で構成されている。「目付(g/m)(小数点第1位で四捨五入)」の欄の各数値は、バックシートの目付の値である。「静摩擦係数(小数点第3位で四捨五入)」の欄の各数値は、バックシートの静摩擦係数の値である。「実施例」の欄は、本実施形態の実施例に係る吸収性パッドにおいて、位置ずれが生じたか否かを示している。「比較例」の欄は、比較例に係る吸収性パッドにおいて、位置ずれが生じたか否かを示している。「実施例」および「比較例」の欄において、「〇」の表記は位置ずれが生じなかった結果を示し、「×」の表記は位置ずれが生じた結果を示している。なお、実施例に係る吸収性パッド1は、トップシート7と吸収体6との間で少なくとも一部において非接着状態または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態とである領域21L,21Rを備え、比較例に係る吸収性パッドは、領域21L,21Rを備えていない。
【0033】
本実験例では、実施例および比較例に係る吸収性パッドを、65歳~80歳の成人(着用者)に対して、おむつと組み合わせて使用した場合に吸収性パッドに位置ずれが生じる否かを調査した。各着用者に対して、介護士20名が実際におむつと実施例および比較例に係る吸収性パッドを着用させて、位置ずれについて調査した。なお、吸収性パッドの着
用枚数は、介護士1名につき3枚とした。そして、6名以下の介護士が着用動作や着用後の吸収性パッドの位置ずれが気になったと回答した場合を位置ずれが生じなかった(図4中の「〇」)とし、7名以上の介護士が着用動作や着用後の吸収性パッドの位置ずれが気になったと回答した場合を位置ずれが生じた(図4中の「×」)とした。
【0034】
なお、実施例および比較例に係る吸収性パッドのサイズは以下の通りある。外寸は、幅が22cmであり、長さが49cmである。なお、トップシートの幅が22cmであり、吸収体の幅が15cmであり、バックシートの幅が21cmである。吸収体の吸収コアのパルプ量は、21gであり、吸収コアのパルプの目付は330g/mである。SAP層のSAP量は4gであり、SAP層のSAP目付は80g/mである。
【0035】
図4の表に示すように、バックシートの静摩擦係数が0.68以上であれば、実施例および比較例に係る吸収性パッドにおいて、位置ずれが生じない結果となった。しかしながら、バックシートの静摩擦係数が0.63以下である場合は、実施例に係る吸収性パッドでは位置ずれが生じない結果となり、比較例に係る吸収性パッドでは位置ずれが生じる結果となった。なお、図4の表から分かるように、バックシートの静摩擦係数は、位置ずれの結果には影響していないと言える。
【0036】
本実験果より、吸収性パッド1は、バックシート5の静摩擦係数が0.63以下である場合であっても、トップシート7と吸収体6とは、少なくとも一部において非接着状態または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態とすることで、位置ずれを抑制できることが分かった。本実施形態に係る吸収性パッド1は、バックシート5の静摩擦係数が0.63以下であっても、位置ずれを抑制し、以って、着用感を向上させることができる。なお、バックシート5の静摩擦係数は、好ましくは0.50以上であるが、0.50より小さくてもよい。
【0037】
一般的に、外装面が滑りやすい資材で構成された吸収性パッドは、組み合わせて用いられるおむつやホルダーパンツ内において位置ずれを起こさないようにするため、おむつなどと接着する接着部を設けたり、静摩擦係数を高めるために不織布などを積層したりするなどの必要がある。市販されている吸収性パッドにおいては、不織布が用いられるカバーシートが外装面を形成していることが多い。一方、本実施形態に係る吸収性パッド1は、カバーシートを備えておらず、バックシート5が外装面を形成している。バックシート5は、非透液性を有するシート材(例えば、フィルム)が用いられてる。このようなバックシート5は、不織布のカバーシートよりも静摩擦係数が小さく、カバーシートよりも滑りやすい。しかしながら、本実施形態に係る吸収性パッド1は、トップシート7が着用者に密着することで、位置ずれを防止することができる。
【0038】
また、幅方向端部において、トップシート7と吸収体6とは、接着状態または強接着状態である領域22L,22Rを備える。領域22L,22Rは、最も外側の接着部HM1によって形成される。例えば、最も外側の接着部HM1のみ相対的に多めのホットメルト接着剤を塗布することによって領域22L,22Rを接着状態または強接着状態とすることができる。本実施形態では、領域22L,22Rは、吸収体6の長手方向の全域に亘って設けられている。トップシート7を伝って幅方向へ広がった尿は、吸収体6と接着されている部位の周囲を介して吸収体6に浸入し、吸収体6で吸収される。なお、領域22L,22Rは、長手方向に沿って連続的に設けられていてもよいし、非連続的に設けられていてもよい。なお、接着状態または強接着状態の領域20L,20R,22L,22R以外では、トップシート7と吸収体6とが非接着状態、または接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態である。
【0039】
また、図1および図3に示されるように、トップシート7およびバックシート5は、吸
収体6よりも幅方向に長く、且つ、吸収体6の幅方向端部よりも外側に延在している。すなわち、トップシート7は、バックシート5よりも幅方向に長く、且つ、バックシート5の幅方向端部よりも外側に延在している。このため、トップシート7は、吸収性パッド1内で最も幅方向外側に出ており、組み合わせて使用されるおむつなどの資材に接する。トップシート7は、着用者が排出した尿などで濡れて、おむつなどの資材に密着する。本実施形態に係るおむつ1は、このトップシート7による密着力によっても位置ずれを抑制できる。
【0040】
また、おむつの交換頻度は、吸収性パッド1よりも低く、おむつのトップシートが濡れた状態で新しい吸収性パッド1がおむつ内に配置される場合もある。この場合、吸収性パッド1のトップシート7は、幅方向の外側に延在する部分がおむつのトップシートに接して濡れた状態となる。トップシート7は、濡れることで、おむつのトップシートに密着するため、吸収性パッド1は、位置ずれを抑制できる。
【0041】
また、本実施形態に係る吸収性パッド1において、トップシート7の肌面側には、立体ギャザー(本願でいう「防漏壁」の一例)を形成する非透水性の防漏シートが設けられておらず、トップシート7は、幅方向の全面において最も着用者側に配置されている。通常、吸収性パッド1は、組み合わせて使用されるおむつの一対の立体ギャザーの間に配置される。吸収性パッド1は、防漏シートを有さないことによって、トップシート7がおむつの立体ギャザーに接触する。このような状態で着用者が排出した液体がトップシート7の幅方向全域に伝わることで、トップシート7とおむつの立体ギャザーとの間に水分が存在するようになり、両者間の表面張力によってトップシート7とおむつの立体ギャザーとが密着し、吸収性パッド1の位置ずれを抑制できる。また、吸収性パッド1から排出液が漏れておむつとバックシート5の間に排出液が進入する場合も想定される。バックシート5とおむつのトップシートの間に水分が存在することで、両者間の表面張力によってバックシート5とおむつのトップシートとが密着し、吸収性パッド1の位置ずれを抑制できる。
【0042】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例に係る吸収性パッド1について説明する。図5は、変形例1に係る吸収性パッドを肌面側から視た平面図である。なお、上述の通り、本変形例においても、トップシート7の肌面側には、立体ギャザーを形成する非透水性の防漏シートが設けられていない。本変形例に係る吸収性パッド1では、幅方向端部側において、トップシート7と吸収体6とが接着状態または強接着状態である領域22L,22Rが非連続的に設けられている。領域22L同士の間では、トップシート7と吸収体6とが非接着状態または仮接着状態である部位となる。次に、この部位における吸収性パッド1の断面について説明する。
【0043】
図6は、変形例1に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した断面図である。具体的には、図6は、トップシート7と吸収体6とが非接着状態または仮接着状態である部位を含む断面図であり、図5のB-B線に沿って切断した断面図である。この非接着状態または仮接着状態である部位において、トップシート7は、吸収体6の幅方向端部に沿って非肌面側で幅方向の内側に入り込み、バックシート5上で幅方向の外側に折り返されて、幅方向の外側に延在している。図6中、点線で囲んだ領域24において、トップシート7がバックシート5上で内側に入り込んでいる。このように構成することで、吸収性パッド1は、トップシート7を伝って吸収体6の幅方向端部に到達した液体を吸収体6の非肌面側(裏側)に誘導する。これによって、液体の進行方向が幅方向中央側に変更されるため、吸収性パッド1は、当該液体が幅方向端部から漏出するのを防ぎ所謂横漏れを抑制することができる。このように、トップシート7と吸収体6とが非接着状態または仮接着状態である部位であっても、トップシート7は、領域24においてバックシート5上で吸収体6と接するため、トップシート7を伝った液体を吸収体6に移動させることが可能となる。
【0044】
また、上述した通り、トップシート7およびバックシート5は、吸収体6よりも幅方向に長く、且つ、吸収体6の幅方向端部よりも外側に延在している。弾性体2L,2Rは、吸収体6の幅方向端部よりも外側に且つ幅方向端部の両側であって、トップシート7とバックシート5の間に配置されている弾性体2L,2Rは、バックシート5に伸長状態で接着されており、バックシート5、吸収体6およびトップシート7を長手方向に収縮させている。なお、弾性体2L,2Rは、トップシート7にも接着されており、バックシート5と接着されている吸収体6にも弾性力が伝わる。吸収性パッド1は、このような構成を備えることにより、吸収体6の幅方向端部を収縮させ、トップシート7がバックシート5上で内側に入り込んだ状態を維持させ易くなる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態に係る吸収性パッド1では、外装面を形成するシートがフィルムのバックシート5であったが、これに限られない。吸収性パッド1において、不織布のバックシートが用いられていてもよい。なお、上記実施形態では、溝6Hは、上層吸収マット6Aを貫通する溝であるが、本発明はこれに限られない。溝6Hは、上層吸収マット6Aおよび下層吸収マット6Bを厚み方向に貫通する溝であってもよいし、上層吸収マット6Aの肌面側を圧搾することによって形成される凹状の圧搾溝であってもよい。
【0046】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・吸収性パッド
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L,2R・・弾性体
5・・バックシート
6・・吸収体
6C・・吸収コア
6A・・上層吸収マット
6B・・下層吸収マット
6L,6R・・SAP層
6H・・溝
6W・・コアラップシート
6WA・・上層コアラップシート
6WB・・下層コアラップシート
7・・トップシート
20・・領域
21L,21R・・領域
22L,22R・・領域
24・・領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6