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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125862
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】メタン製造システム
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/12 20060101AFI20240911BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240911BHJP
   C25B 1/01 20210101ALI20240911BHJP
   C25B 15/025 20210101ALI20240911BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20240911BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240911BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240911BHJP
   B01D 53/76 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C07C1/12
C25B9/00 A
C25B1/01 Z
C25B15/025
C25B1/042
C07C9/04
B01D53/62
B01D53/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033970
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柁山 航介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】岩村 宗千代
(72)【発明者】
【氏名】西薗 賢志
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 みなみ
【テーマコード(参考)】
4D002
4H006
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002BA08
4D002CA20
4D002DA35
4D002DA54
4D002FA10
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB05
4D002GB20
4H006AA02
4H006AA04
4H006BD84
4K021AA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC11
(57)【要約】
【課題】 生成ガス中のメタンの濃度を高めることができるメタン製造システムを提供する。
【解決手段】 水蒸気発生装置11と、二酸化炭素を含む第1ガスを第1配管P1を通じて導入するとともに水蒸気発生装置11で発生した水蒸気を導入し、水蒸気の電気分解により発生した水素と二酸化炭素とを反応させてなるメタンを含む第2ガスを生成し、第2ガスを第2配管P2へ送出する電解メタネーション装置12と、電解メタネーション装置12へ水蒸気の電気分解に用いる直流電流を供給する電源装置16と、制御装置17と、を備え、制御装置17は、電解メタネーション装置12から第2配管P2へ送出された第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度を超えたときに、水蒸気発生装置11に電解メタネーション装置12へ供給する水蒸気の流量を増加させるとともに、電源装置16に電解メタネーション装置12へ供給する直流電流の電流量を増加させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を発生する水蒸気発生装置と、
二酸化炭素を含む第1ガスを第1配管を通じて導入するとともに前記水蒸気発生装置で発生した水蒸気を導入し、水蒸気の電気分解により発生した水素と二酸化炭素とを反応させてなるメタンを含む第2ガスを生成し、前記第2ガスを第2配管へ送出する電解メタネーション装置と、
前記電解メタネーション装置へ水蒸気の電気分解に用いる直流電流を供給する電源装置と、
前記水蒸気発生装置及び前記電源装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度を超えたときに、前記水蒸気発生装置に前記電解メタネーション装置へ供給する水蒸気の流量を増加させるとともに、前記電源装置に前記電解メタネーション装置へ供給する直流電流の電流量を増加させる、
メタン製造システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度以下であり、かつ、前記第2ガス中のメタンの測定濃度が第1の基準濃度未満であるときに、前記水蒸気発生装置に前記電解メタネーション装置へ供給する水蒸気の流量を減少させるとともに、前記電源装置に前記電解メタネーション装置へ供給する直流電流の電流量を減少させる、
請求項1に記載のメタン製造システム。
【請求項3】
前記第2配管の途中に接続され、前記電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガスを前記第1配管へ供給する返送配管と、
前記第2配管へ送出された前記第2ガスを前記第2配管を通じて外部へ排出するか前記返送配管を通じて前記第1配管へ供給するかを切り替える切替装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2ガス中のメタンの測定濃度が第1の基準濃度未満または第1の基準濃度よりも低い第2の基準濃度未満になったときに、前記第2ガスが前記返送配管を通じて前記第1配管へ供給されるように前記切替装置を制御する、
請求項1または2に記載のメタン製造システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記電解メタネーション装置へ導入される前記第1ガス中の二酸化炭素の測定流量の増減に応じて、前記電解メタネーション装置へ導入される水蒸気の流量が増減するように前記水蒸気発生装置を制御するとともに、前記電解メタネーション装置へ供給される直流電流の電流量が増減するように前記電源装置を制御する、
請求項1または2に記載のメタン製造システム。
【請求項5】
前記電解メタネーション装置は第1の電解メタネーション装置であり、
前記第1の電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガスを前記第2配管の途中に接続された導入配管を通じて導入するとともに前記水蒸気発生装置で発生した水蒸気を導入し、水蒸気の電気分解により発生した水素と二酸化炭素とを反応させてなるメタンを含む第3ガスを生成し、前記第3ガスを送出配管を介して前記第2配管へ送出することができ、前記電源装置から水蒸気の電気分解に用いる直流電流が供給される第2の電解メタネーション装置と、
前記第2配管へ送出された前記第2ガスを前記第2配管を通じて外部へ排出するか前記導入配管を通じて前記第2の電解メタネーション装置へ供給するかを切り替える切替装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2ガス中のメタンの測定濃度が第1の基準濃度未満または第1の基準濃度よりも低い第2の基準濃度未満になったときに、前記第2ガスが前記導入配管を通じて前記第2の電解メタネーション装置へ供給されるように前記切替装置を制御する、
請求項1または2に記載のメタン製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メタン製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物処理分野において、二酸化炭素の排出量を削減するための取り組みが図られている。例えば、特許文献1には、流動床炉の燃焼室から排出された排ガス中に含まれる二酸化炭素と、水を電気分解する電気分解装置で生成された水素とを用いて、メタンを生成するメタネーション反応器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-135024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1には、メタネーション反応器内の二酸化炭素の全量と水素の全量が反応してメタンが生成されるように、メタネーション反応器に流入する二酸化炭素の流量に基づいて、メタネーション反応器に流入する水素の流量を制御するようにしている。しかしながら、実際にはメタネーション反応器内で二酸化炭素と水素とが全て反応するとは限らず、メタネーション反応器から送出される生成ガスには、未反応の二酸化炭素や水素が含まれて、生成ガス中のメタンの濃度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、生成ガス中のメタンの濃度を高めることができるメタン製造システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のある態様に係るメタン製造システムは、水蒸気を発生する水蒸気発生装置と、二酸化炭素を含む第1ガスを第1配管を通じて導入するとともに前記水蒸気発生装置で発生した水蒸気を導入し、水蒸気の電気分解により発生した水素と二酸化炭素とを反応させてなるメタンを含む第2ガスを生成し、前記第2ガスを第2配管へ送出する電解メタネーション装置と、前記電解メタネーション装置へ水蒸気の電気分解に用いる直流電流を供給する電源装置と、前記水蒸気発生装置及び前記電源装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度を超えたときに、前記水蒸気発生装置に前記電解メタネーション装置へ供給する水蒸気の流量を増加させるとともに、前記電源装置に前記電解メタネーション装置へ供給する直流電流の電流量を増加させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、以上に説明した構成を有し、生成ガス中のメタンの濃度を高めることができるメタン製造システムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のメタン製造システムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、電解メタネーション装置に用いられるセルの構造の概略を示す図である。
図3図3は、制御装置による処理の概略を示すフローチャートである。
図4図4は、第2実施形態のメタン製造システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のメタン製造システムの一例を示すブロック図である。図1に示すメタン製造システム10Aは、水蒸気発生装置11、電解メタネーション装置12、除湿器13、第1~第4配管P1~P4、返送配管P5、電源装置16、制御装置17、メタン発酵装置18及びガス精製装置19等を備えている。なお、メタン発酵装置18及びガス精製装置19はメタン製造システム10Aに含まれない場合もある。
【0011】
このメタン製造システム10Aは、廃棄物を処理する焼却プラントに設置されている。焼却プラントには、例えば、廃棄物の焼却炉と、焼却炉から排出される排ガスから煤塵を分離する排ガス処理装置と、排ガス処理装置で煤塵が分離された排ガスを大気中へ放出する煙突などが備えられている。さらに、焼却プラントには、焼却炉の排熱を回収するボイラと、ボイラで生成された蒸気を用いて発電する蒸気タービン発電機とが備えられていてもよい。また、焼却プラントには、排ガス処理装置で煤塵が分離された排ガスから二酸化炭素を分離回収する二酸化炭素分離回収装置が備えられている場合がある。二酸化炭素分離回収装置から分離回収された二酸化炭素には、不純物が含まれる。つまり、二酸化炭素分離回収装置では、二酸化炭素を主成分とするガスが回収される。
【0012】
メタン発酵装置18は、焼却炉に投入されていない廃棄物から選別された生ごみをメタン発酵し、二酸化炭素及びメタン等を含むバイオガスを生成し、ガス精製装置19へ送出する。ガス精製装置19は、メタン発酵装置18で生成されたバイオガスからNH,HS,シロキサン及び水蒸気等を除去した後、二酸化炭素分離膜によって二酸化炭素とメタン(CH)とを抽出する。このガス精製装置19で抽出されたメタンはガス会社等へ販売することができる。また、ガス精製装置19で抽出される二酸化炭素は、不純物が含まれた二酸化炭素を主成分とするガスである。このガスを、本実施形態では、第1ガスとして、第1配管P1を通じて電解メタネーション装置12へ導入する。なお、前述の焼却プラントの二酸化炭素分離回収装置によって排ガスから分離回収された二酸化炭素を主成分とするガスを、第1ガスとして、電解メタネーション装置12へ導入するようにしてもよい。また、焼却プラントに二酸化炭素分離回収装置が備えられていない場合には、排ガス処理装置で煤塵が分離された排ガスである二酸化炭素を含むガスを、第1ガスとして、電解メタネーション装置12へ導入するようにしてもよい。
【0013】
水蒸気発生装置11は、水を加熱して水蒸気を発生し、発生した水蒸気を電解メタネーション装置12での反応に適した所定温度に加熱して第3配管P3へ送出する。水蒸気発生装置11は、第3配管P3へ送出する水蒸気の流量を調整可能である。
【0014】
電解メタネーション装置12は、二酸化炭素を含む第1ガスを第1配管P1を通じて導入するとともに、水蒸気発生装置11で発生した水蒸気を第3配管P3を通じて導入する。
【0015】
そして、電解メタネーション装置12では、第1ガスに含まれる二酸化炭素と水蒸気とを原料とし、水蒸気の電気分解により発生した水素と二酸化炭素とを反応させてなるメタン、水(水蒸気)及び酸素を生成する。よって、電解メタネーション装置12は、メタン製造装置である。
【0016】
図2は、電解メタネーション装置12に用いられるセルの構造の概略を示す図である。電解メタネーション装置12のセルは、陽極121と陰極123との間に固体電解質層122が挟持され、陰極123の外側表面に触媒層124が形成されている。水蒸気(HO)は、陽極121で電気分解されて酸素(O)と水素イオン(H)とに分解される。この水素イオン(H)は固体電解質層122を通って陰極123へ移動し、触媒層124で水素イオン(H)と二酸化炭素(CO)との反応によって水蒸気(HO)とメタン(CH)が生成される。
【0017】
この結果、電解メタネーション装置12では、以下の反応が生じる。
CO+4HO→CH+2HO+2O
つまり、この電解メタネーション装置12では、理論的には、1当量のCOに対し、4当量のHOが必要になる。
【0018】
電解メタネーション装置12には、図2のようなセルが1つまたは複数備えられている。電解メタネーション装置12は、生成された水蒸気等を含みメタンを含む第2ガスが送出される第1のガス出口と、生成された酸素と導入されて電気分解されなかった余剰の水蒸気とが混合された酸素含有水蒸気WOが送出される第2のガス出口とを備える。第1のガス出口には第2配管P2が接続され、第2配管P2へ送出された第2ガスは、150℃から600℃程であり、大気に比べて高温のガスである。また、第2のガス出口には第4配管P4が接続され、第4配管P4へ送出される酸素含有水蒸気WOは、180℃から300℃程であり、大気に比べて高温のガスである。
【0019】
電源装置16は、電解メタネーション装置12が水蒸気を電気分解するために必要な直流電流を供給し、供給する直流電流の電流量を調整可能である。
【0020】
第1配管P1には二酸化炭素測定器31が設置されている。二酸化炭素測定器31は、電解メタネーション装置12に導入される第1ガス中の二酸化炭素の流量を測定する。この二酸化炭素測定器31は、第1ガスの流量を測定する流量センサS1と、第1ガス中の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサS2とを用いて構成することができる。すなわち、流量センサS1により測定された流量と二酸化炭素濃度センサS2で測定された二酸化炭素濃度とを乗算することにより、電解メタネーション装置12に導入される二酸化炭素の流量を算出できる。二酸化炭素測定器31の測定値である二酸化炭素の測定流量は制御装置17へ送信される。なお、流量センサS1及び二酸化炭素濃度センサS2の測定値を制御装置17へ送信し、制御装置17で二酸化炭素の測定流量を算出するようにしてもよい。
【0021】
第2配管P2には、電解メタネーション装置12の第2ガスが送出される第1のガス出口に近い方から順に、除湿器13、二酸化炭素濃度センサ32、メタン濃度センサ33、開閉弁B1が備えられている。二酸化炭素濃度センサ32は、電解メタネーション装置12から送出されて除湿器13で除湿された第2ガス中の二酸化炭素の濃度を測定し、測定値である二酸化炭素の測定濃度を制御装置17へ送信する。ここで測定される第2ガスには、メタンを含むが、電解メタネーション装置12において未反応の二酸化炭素や水素も含んでいる。メタン濃度センサ33は、除湿器13で除湿された第2ガス中のメタンの濃度を測定し、測定値であるメタンの測定濃度を制御装置17へ送信する。
【0022】
返送配管P5は、第2配管P2のメタン濃度センサ33と開閉弁B1との間の部分と、第1配管P1の二酸化炭素測定器31よりも上流側部分との間を連通するように接続されている。返送配管P5の途中には開閉弁B2が備えられている。開閉弁B1と開閉弁B2とで切替装置20が構成されている。開閉弁B1と開閉弁B2とは、逆の開閉状態となるように制御装置17によって制御される。よって、電解メタネーション装置12から第2配管P2へ送出された第2ガスは、開状態の開閉弁B1を通過して第2配管P2の下流側端部から外部へ送出される場合と、開状態の開閉弁B2を通過して返送配管P5を通って第1配管P1へ供給される場合とがある。このように切替装置20によって電解メタネーション装置12から送出された第2ガスの送り先を切り替えることができる。なお、返送配管P5には、第2配管P2を通る第2ガスを引き込んで第1配管P1へ送るためのファンが設置されていてもよい。
【0023】
制御装置17は、例えばCPU及びメモリ等を含んで構成され、CPUがメモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、種々の演算を行うとともに、メタン製造システム10Aの全体の動作を制御する。なお、制御装置17は、集中制御する単独の制御装置によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御装置によって構成されていてもよい。
【0024】
なお、本明細書で開示する制御装置17の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本明細書において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、または手段はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0025】
次に、メタン製造システム10Aの運転中の動作について説明する。運転開始時には、例えば、開閉弁B1は閉状態で、開閉弁B2は開状態となるように制御装置17によって制御される。運転が開始されると、メタン発酵装置18でバイオガスが生成されて、このバイオガスがガス精製装置19へ供給される。そして、ガス精製装置19は、メタン(CH)と、二酸化炭素を含む第1ガスとを抽出し、第1ガスを第1配管P1を通じて電解メタネーション装置12へ供給する。
【0026】
また、制御装置17の制御によって水蒸気発生装置11及び電源装置16等の動作が開始され、水蒸気発生装置11から水蒸気が電解メタネーション装置12へ供給されるとともに、電源装置16から直流電流が電解メタネーション装置12へ供給される。運転開始時においては、水蒸気発生装置11から電解メタネーション装置12へ供給する水蒸気の流量、電源装置16から電解メタネーション装置12へ供給する直流電流の電流量は、例えば、ガス精製装置19から電解メタネーション装置12へ導入される第1ガス中の二酸化炭素の想定された流量に基づいて予め定められていてもよい。
【0027】
このようにして運転が開始されると、電解メタネーション装置12は、第1配管P1から第1ガスを導入するとともに、第3配管P3から水蒸気を導入する。そして電解メタネーション装置12は、第2配管P2からメタンを含む第2ガスを送出するとともに、第4配管P4から酸素含有水蒸気WOを送出する。第2配管P2へ送出された第2ガスは除湿器13で除湿された後、下流側へ送られる。
【0028】
そして、運転中、二酸化炭素測定器31、二酸化炭素濃度センサ32及びメタン濃度センサ33は、所定時間間隔で繰り返し測定を行い、測定するたびに測定値を制御装置17へ送信する。そして、制御装置17では、二酸化炭素測定器31、二酸化炭素濃度センサ32及びメタン濃度センサ33の測定値に基づいて次に述べる処理を行う。
【0029】
図3は、水蒸気発生装置11及び電源装置16の制御に関わる制御装置17による処理の概略を示すフローチャートである。制御装置17は、図3に示す処理を、例えば所定時間間隔で繰り返し行う。
【0030】
ステップST1では、制御装置17は、二酸化炭素測定器31で測定された第1ガス中の二酸化炭素の測定流量に基づいて、電解メタネーション装置12へ供給される水蒸気の流量及び電解メタネーション装置12へ供給される直流電流の電流量を算出し、水蒸気発生装置11及び電源装置16を制御する。
【0031】
なお、繰り返し行われるステップST1のうち、1回目のステップST1では、二酸化炭素測定器31で測定された第1ガス中の二酸化炭素の測定流量に基づいて、電解メタネーション装置12に導入される二酸化炭素と水蒸気とが、1当量の二酸化炭素(CO)に対して少なくとも4当量の水蒸気(HO)の割合となるように、水蒸気の流量を算出する。そして算出した流量の水蒸気を電気分解するために必要な直流電流の電流量を算出する。ここで、電解メタネーション装置12において電気分解される水蒸気の量と電気分解に必要な電流量とは比例する。そして、制御装置17は、上記算出した流量の水蒸気を電解メタネーション装置12へ供給するように水蒸気発生装置11を制御するとともに、上記算出した電流量の直流電流を電解メタネーション装置12へ供給するように電源装置16を制御する。2回目以降のステップST1については後述する。
【0032】
次に、ステップST2では、制御装置17は、二酸化炭素濃度センサ32で測定された第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度と所定の基準濃度Sfとを比較し、二酸化炭素の測定濃度が所定の基準濃度Sfを超えたか否かを判定する。二酸化炭素の測定濃度が基準濃度Sfを超えている場合には、ステップST3へ進み、二酸化炭素の測定濃度が基準濃度Sf以下の場合にはステップST4へ進む。
【0033】
ステップST3は、第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度Sfを超えている場合に行う処理である。このステップST3では、制御装置17は、水蒸気発生装置11に電解メタネーション装置12へ送出する水蒸気の流量を増加させるともに、電源装置16に電解メタネーション装置12へ供給する直流電流の電流量を増加させる。ここで、制御装置17は、増加後の水蒸気の流量を、例えば、増加前の流量に所定量を加えた流量として算出してもよいし、増加前の流量の所定倍、例えば1.1倍として算出してもよい。また、前述したように電流量は水蒸気の流量に比例するものとし、増加後の電流量を、増加後の水蒸気の流量に応じて算出してもよい。なお、増加後の水蒸気の流量を増加前の流量の所定倍とする場合には、増加後の電流量を増加前の電流量の所定倍として算出してもよい。
【0034】
ここで、第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度Sfを超えた場合には、第2ガス中に電解メタネーション装置12において未反応の二酸化炭素が多く含まれ、水蒸気の電気分解によって生成される水素イオンの量が少ないと考えられる。よって、電解メタネーション装置12に導入される水蒸気の流量を増加させるとともに電気分解に寄与する直流電流の電流量を増加させることにより、電気分解によって生成される水素イオンの量を増加させて二酸化炭素との化学反応を促進し、未反応の二酸化炭素を減少させてメタンの生成量を増加させることができる。これにより、生成ガスとなる第2ガス中のメタンの濃度を高めることができる。
【0035】
ステップST4では、制御装置17は、メタン濃度センサ33で測定された第2ガス中のメタンの測定濃度と所定の第1の基準濃度Saとを比較し、メタンの測定濃度が第1の基準濃度Sa以上であるか否かを判定する。ステップST4で、メタンの測定濃度が第1の基準濃度Sa以上でない場合、すなわち、メタンの測定濃度が第1の基準濃度Sa未満の場合には、ステップST5へ進む。
【0036】
ステップST5は、第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度Sf以下であり、かつ、メタンの測定濃度が第1の基準濃度Sa未満の場合に行う処理である。このステップST5では、制御装置17は、水蒸気発生装置11に電解メタネーション装置12へ供給する水蒸気の流量を減少させるとともに、電源装置16に電解メタネーション装置12へ供給する直流電流の電流量を減少させる。ここで、減少後の水蒸気の流量は、例えば、減少前の流量から所定量少なくした流量として算出してもよいし、減少前の流量の所定倍、例えば0.9倍として算出してもよい。また、前述したように電流量は水蒸気の流量に比例するものとし、減少後の電流量を、減少後の水蒸気の流量に応じて算出してもよい。なお、減少後の水蒸気の流量を減少前の流量の所定倍とする場合には、減少後の電流量を減少前の電流量の所定倍として算出してもよい。
【0037】
ここで、第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度Sf以下であり、かつ、第2ガス中のメタンの測定濃度が第1の基準濃度Sa未満の場合には、第2ガス中に電解メタネーション装置12において二酸化炭素と未反応の水素が多く含まれ、水蒸気の電気分解によって生成される水素イオンの量が多すぎると考えられる。よって、電解メタネーション装置12に導入される水蒸気の流量を減少させるとともに電気分解に寄与する直流電流の電流量を減少させることにより、電気分解によって生成される水素イオンの量を減少させて未反応の水素を減少させることができる。これにより、生成ガスとなる第2ガス中のメタンの濃度を高めることができる。
【0038】
ここで、2回目以降のステップST1について説明する。例えば、nを正の整数とした場合に、n回目のステップST1において、二酸化炭素測定器31で測定された第1ガス中の二酸化炭素の測定流量がC11であり、水蒸気の流量をW1、直流電流の電流量をI1に設定したとする。その後、ステップST3またはステップST5において、水蒸気の流量をW2、電流量をI2に設定したとする。その後、(n+1)回目のステップST1において、第1ガス中の二酸化炭素の測定流量がC12であれば、同ステップST1において、水蒸気の流量をW2×(C12÷C11)に設定するようにしてもよいし、さらに所定の係数を乗算した値に設定するようにしてもよい。そして、直流電流の電流量をI2×(C12÷C11)に設定するようにしてもよい。ここで、C12=C11の場合には、水蒸気の流量は直前のW2のままで変更されず、直流電流の電流量も直前のI2のままで変更されない。
【0039】
上記のように、ステップST1の処理では、制御装置17は、電解メタネーション装置12へ導入される第1ガス中の二酸化炭素の測定流量の増減に応じて、電解メタネーション装置12へ導入される水蒸気の流量が増減するように水蒸気発生装置11を制御するとともに、電解メタネーション装置12へ供給される直流電流の電流量が増減するように電源装置16を制御する。これにより、電解メタネーション装置12での反応を効率よく行わせ、電解メタネーション装置12から送出される第2ガス中に未反応の水素や未反応の二酸化炭素が多く含まれるのを抑制することができる。
【0040】
本実施形態のように、ガス精製装置19にてメタン発酵装置18で生成されたバイオガスから抽出される第1ガスの流量は変動し、また、第1ガス中の二酸化炭素濃度も変動する。例えば、ガス精製装置19から供給される第1ガス中の二酸化炭素濃度は、90~95%の範囲で変動する。このように、第1ガスの流量や第1ガス中の二酸化炭素濃度の変動によって電解メタネーション装置12に導入される第1ガス中の二酸化炭素の流量が変動する場合、上記のステップST1の処理を行うことは特に有効である。
【0041】
上記の図3に示す処理以外に、制御装置17は、メタン濃度センサ33で第2ガス中のメタンの濃度が測定されるたびに、メタンの測定濃度が第1の基準濃度Saよりも低い所定の第2の基準濃度Sb以上であるか否かを判定している。第2の基準濃度Sbは第2ガスを生成ガスとして外部へ送出する場合に目標とする最低濃度である。そして、制御装置17は、メタン濃度センサ33で測定されたメタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb以上の場合には、切替装置20の開閉弁B1を開状態、開閉弁B2を閉状態とする。これにより、第2ガスは第2配管P2を通って第2配管P2の下流側端部からメタン製造システム10Aの生成ガスとして外部へ送出される。また、制御装置17は、メタン濃度センサ33で測定されたメタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb未満の場合には、切替装置20の開閉弁B1を閉状態、開閉弁B2を開状態とする。これにより、第2ガスは返送配管P5を通じて第1配管P1へ供給され、第1ガスとともに電解メタネーション装置12へ導入される。
【0042】
これにより、メタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb未満の第2ガスは生成ガスとして外部へ送出されず、メタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb以上の第2ガスのみが生成ガスとして第2配管P2を通って外部へ送出される。よって、第2の基準濃度Sb以上の高濃度のメタンを含む生成ガスを製造することができる。
【0043】
なお、先に述べた図3に示す処理は、切替装置20の状態、すなわち、開閉弁B1、B2の開閉状態に関係なく実施される。
【0044】
本実施形態において、第1の基準濃度Saを例えば96%、第2の基準濃度Sbを例えば95%としてもよい。また、上記では、第2の基準濃度Sbを第1の基準濃度Saよりも低い濃度としたが、第1の基準濃度Saと第2の基準濃度Sbとを同一の濃度、例えば95%としてもよい。
【0045】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態のメタン製造システムの一例を示すブロック図である。図4において、図1と同一あるいは相当する部分には同一符号を付している。図4に示すメタン製造システム10Bは、第1及び第2の電解メタネーション装置12,14を備えている。第1の電解メタネーション装置12は、図1に示す電解メタネーション装置12と同じものであり、第2の電解メタネーション装置14は、第1の電解メタネーション装置12と同様の構成を有する。
【0046】
このメタン製造システム10Bは、図1に示すメタン製造システム10Aにおいて、開閉弁B2を備えた返送配管P5を無くし、第2の電解メタネーション装置14を有する予備システム51を備えている。
【0047】
予備システム51は、第2の電解メタネーション装置14、除湿器15、配管P11~P14及び返送配管P15等を備えている。
【0048】
導入配管P11は、メタン濃度センサ33と開閉弁B1との間の第2配管P2の途中の部分と第2の電解メタネーション装置14のガスの入口とを接続している。第1の電解メタネーション装置12から第2配管P2へ送出された第2ガスを導入配管P11を通じて第2の電解メタネーション装置14へ導入することができる。導入配管P11の途中に開閉弁B3が備えられており、開閉弁B1と開閉弁B3とで切替装置21が構成されている。開閉弁B1と開閉弁B3とは、逆の開閉状態となるように制御装置17によって制御される。よって、第1の電解メタネーション装置12から第2配管P2へ送出された第2ガスは、開状態の開閉弁B1を通過して第2配管P2の下流側端部から外部へ送出される場合と、開状態の開閉弁B3を通過して第2の電解メタネーション装置14へ導入される場合とがある。このように切替装置21によって第1の電解メタネーション装置12から送出された第2ガスの送り先を切り替えることができる。
【0049】
第2の電解メタネーション装置14は、上述のように第2ガスを導入配管P11を通じて導入するとともに、水蒸気発生装置11で発生した水蒸気を配管P13を通じて導入する。本実施形態の水蒸気発生装置11は、配管P3を通じて第1の電解メタネーション装置12へ供給する水蒸気の流量を調整可能であるとともに、配管P13を通じて第2の電解メタネーション装置14へ供給する水蒸気の流量を調整可能である。なお、水蒸気発生装置11は、第1の電解メタネーション装置12へ水蒸気を供給する水蒸気発生装置と、第2の電解メタネーション装置14へ水蒸気を供給する水蒸気発生装置とに分離されていてもよい。
【0050】
また、第2の電解メタネーション装置14には、電源装置16から第2の電解メタネーション装置14が水蒸気を電気分解するために必要な直流電流が供給される。本実施形態の電源装置16は、第1の電解メタネーション装置12へ供給する直流電流の電流量を調整可能であるとともに、第2の電解メタネーション装置14へ供給する直流電流の電流量を調整可能である。なお、電源装置16は、第1の電解メタネーション装置12へ直流電流を供給する電源装置と、第2の電解メタネーション装置14へ直流電流を供給する電源装置とに分離されていてもよい。
【0051】
第2の電解メタネーション装置14は、生成された水蒸気等を含むとともにメタンを含む第3ガスが送出される第1のガス出口に送出配管P12が接続され、酸素含有水蒸気WOが送出される第2のガス出口に配管P14が接続されている。
【0052】
導入配管P11には二酸化炭素測定器34が設置されている。二酸化炭素測定器34は、第2の電解メタネーション装置14に導入される第2ガス中の二酸化炭素の流量を測定する。この二酸化炭素測定器34は、二酸化炭素測定器31と同様、第2ガスの流量を測定する流量センサS5と、第2ガス中の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサS6とを用いて構成することができる。二酸化炭素測定器34の測定値である二酸化炭素の測定流量は制御装置17へ送信される。なお、流量センサS5及び二酸化炭素濃度センサS6の測定値を制御装置17へ送信し、制御装置17で二酸化炭素の測定流量を算出するようにしてもよい。
【0053】
送出配管P12には、第2の電解メタネーション装置14の第3ガスが送出される第1のガス出口に近い方から順に、除湿器15、二酸化炭素濃度センサ35、メタン濃度センサ36、開閉弁B4が備えられている。送出配管P12の下流側端部は第2配管P2に接続されている。二酸化炭素濃度センサ35は、第2の電解メタネーション装置14から送出されて除湿器15で除湿された第3ガス中の二酸化炭素の濃度を測定し、測定値である二酸化炭素の測定濃度を制御装置17へ送信する。メタン濃度センサ36は、除湿器15で除湿された第3ガス中のメタンの濃度を測定し、測定値であるメタンの測定濃度を制御装置17へ送信する。
【0054】
返送配管P15は、送出配管P12のメタン濃度センサ36と開閉弁B4との間の部分と、導入配管P11の開閉弁B3と二酸化炭素測定器34との間の部分とを連通するように接続されている。返送配管P15の途中には開閉弁B5が備えられている。開閉弁B4と開閉弁B5とで切替装置22が構成されている。開閉弁B4と開閉弁B5とは、逆の開閉状態となるように制御装置17によって制御される。よって、第2の電解メタネーション装置14から送出配管P12へ送出された第3ガスは、開状態の開閉弁B4を通過して第2配管P2へ供給されて第2配管P2の下流側端部から外部へ送出される場合と、開状態の開閉弁B5を通過して返送配管P15を通って導入配管P11へ供給される場合とがある。このように切替装置22によって第2の電解メタネーション装置14から送出された第3ガスの送り先を切り替えることができる。
【0055】
本実施形態では、制御装置17は、第1実施形態の図3で示す処理と同様にして、二酸化炭素測定器31,二酸化炭素濃度センサ32及びメタン濃度センサ33の測定値に基づいて、水蒸気発生装置11に第1の電解メタネーション装置12へ供給する水蒸気の流量を調整させるとともに、電源装置16に第1の電解メタネーション装置12へ供給する直流電流の電流量を調整させる。
【0056】
また、制御装置17は、メタン濃度センサ33で測定されたメタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb以上の場合には、切替装置21の開閉弁B1を開状態、開閉弁B3を閉状態とする。また、制御装置17は、メタン濃度センサ33で測定されたメタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb未満の場合には、切替装置21の開閉弁B1を閉状態、開閉弁B3を開状態とする。これにより、メタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb未満の第2ガスは、予備システム51の第2の電解メタネーション装置14へ導入され、メタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb以上の第2ガスは第2配管P2を通って生成ガスとして外部へ送出される。
【0057】
制御装置17は、予備システム51に対しても図3と同様の処理を行ってもよい。すなわち、運転中、二酸化炭素測定器34、二酸化炭素濃度センサ35及びメタン濃度センサ36は、所定時間間隔で繰り返し測定を行い、測定するたびに測定値を制御装置17へ送信する。そして、制御装置17は、水蒸気発生装置11及び電源装置16に第1の電解メタネーション装置12に対して供給する水蒸気の流量および直流電流の電流量を調整させる場合と同様にして、二酸化炭素測定器34,二酸化炭素濃度センサ35及びメタン濃度センサ36の測定値に基づいて、水蒸気発生装置11に第2の電解メタネーション装置14へ供給する水蒸気の流量を調整させるとともに、電源装置16に第2の電解メタネーション装置14へ供給する直流電流の電流量を調整させることができる。
【0058】
また、制御装置17は、予備システム51のメタン濃度センサ36で測定されたメタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb以上の場合には、切替装置22の開閉弁B4を開状態、開閉弁B5を閉状態とする。また、制御装置17は、メタン濃度センサ36で測定されたメタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb未満の場合には、切替装置22の開閉弁B4を閉状態、開閉弁B5を開状態とする。これにより、メタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb以上の第3ガスは第2配管P2へ供給され、第2配管P2を通って生成ガスとして外部へ送出される。また、メタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb未満の第3ガスは、返送配管P15を通じて導入配管P11へ供給され、第2ガスとともに第2の電解メタネーション装置14へ導入される。よって、メタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb以上のガスのみが第2配管P2の下流側端部から生成ガスとして外部へ送出される。
【0059】
なお、本実施形態では、開閉弁B3を通過して第2の電解メタネーション装置14へ導入される第2ガスは、メタンを含むガスであり、二酸化炭素は含まれるものの少量である。よって、制御装置17は、予備システム51に対して図3と同様の処理を全て行わなくても、ステップST1と同様の処理を行うだけで、第2の電解メタネーション装置14から送出される第3ガスは、メタン濃度センサ36でのメタンの測定濃度が第2の基準濃度Sb以上になりやすいと考えられる。ここで、制御装置17が行うステップST1と同様の処理は、以下の通りである。制御装置17は、二酸化炭素測定器34で測定される第2の電解メタネーション装置14へ導入されるガス中の二酸化炭素の測定流量の増減に応じて、第2の電解メタネーション装置14へ導入される水蒸気の流量が増減するように水蒸気発生装置11を制御するとともに、第2の電解メタネーション装置14へ供給される直流電流の電流量が増減するように電源装置16を制御する。これにより、第2の電解メタネーション装置14での反応を効率よく行わせることができる。
【0060】
本実施形態においても、第1の電解メタネーション装置12に供給される水蒸気の流量及び直流電流の電流量は、第1実施形態の場合と同様にして調整されるので、第1実施形態の場合と同様の効果が得られる。また、第1実施形態の場合と同様、本実施形態においても、第1の基準濃度Saと第2の基準濃度Sbとを同一の濃度としてもよい。
【0061】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0062】
(本開示のまとめ)
本開示の第1態様に係るメタン製造システムは、水蒸気を発生する水蒸気発生装置と、二酸化炭素を含む第1ガスを第1配管を通じて導入するとともに前記水蒸気発生装置で発生した水蒸気を導入し、水蒸気の電気分解により発生した水素と二酸化炭素とを反応させてなるメタンを含む第2ガスを生成し、前記第2ガスを第2配管へ送出する電解メタネーション装置と、前記電解メタネーション装置へ水蒸気の電気分解に用いる直流電流を供給する電源装置と、前記水蒸気発生装置及び前記電源装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度を超えたときに、前記水蒸気発生装置に前記電解メタネーション装置へ供給する水蒸気の流量を増加させるとともに、前記電源装置に前記電解メタネーション装置へ供給する直流電流の電流量を増加させる。
【0063】
ここで、第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度を超えた場合には、第2ガス中に電解メタネーション装置において未反応の二酸化炭素が多く含まれ、水蒸気の電気分解によって生成される水素イオンの量が少ないと考えられる。よって、水蒸気の流量を増加させるとともに電気分解に寄与する直流電流の電流量を増加させることにより、電気分解によって生成される水素イオンの量を増加させて二酸化炭素との化学反応を促進し、未反応の二酸化炭素を減少させてメタンの生成量を増加させることができる。これにより、生成ガスとなる第2ガス中のメタンの濃度を高めることができる。
【0064】
本開示の第2態様に係るメタン製造システムは、第1態様に係るメタン製造システムにおいて、前記制御装置は、前記電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度以下であり、かつ、前記第2ガス中のメタンの測定濃度が第1の基準濃度未満であるときに、前記水蒸気発生装置に前記電解メタネーション装置へ供給する水蒸気の流量を減少させるとともに、前記電源装置に前記電解メタネーション装置へ供給する直流電流の電流量を減少させるようにしてもよい。
【0065】
ここで、第2ガス中の二酸化炭素の測定濃度が基準濃度以下であり、かつ、第2ガス中のメタンの測定濃度が第1の基準濃度未満の場合には、第2ガス中に電解メタネーション装置において二酸化炭素と未反応の水素が多く含まれ、水蒸気の電気分解によって生成される水素イオンの量が多すぎると考えられる。よって、水蒸気の流量を減少させるとともに電気分解に寄与する直流電流の電流量を減少させることにより、電気分解によって生成される水素イオンの量を減少させて未反応の水素を減少させることができる。これにより、生成ガスとなる第2ガス中のメタンの濃度を高めることができる。
【0066】
本開示の第3態様に係るメタン製造システムは、第1または第2態様に係るメタン製造システムにおいて、前記第2配管の途中に接続され、前記電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガスを前記第1配管へ供給する返送配管と、前記第2配管へ送出された前記第2ガスを前記第2配管を通じて外部へ排出するか前記返送配管を通じて前記第1配管へ供給するかを切り替える切替装置と、をさらに備え、前記制御装置は、前記第2ガス中のメタンの測定濃度が第1の基準濃度未満または第1の基準濃度よりも低い第2の基準濃度未満になったときに、前記第2ガスが前記返送配管を通じて前記第1配管へ供給されるように前記切替装置を制御するようにしてもよい。
【0067】
この構成によれば、メタンの測定濃度が第1の基準濃度未満または第2の基準濃度未満の第2ガスは外部へ送出されずに第1配管へ供給され、メタンの測定濃度が第1の基準濃度以上または第2の基準濃度以上の第2ガスのみが生成ガスとして第2配管を通って外部へ送出される。よって、第1の基準濃度以上または第2の基準濃度以上の高濃度のメタンを含む生成ガスを製造することができる。
【0068】
本開示の第4態様に係るメタン製造システムは、第1~第3態様のいずれかに係るメタン製造システムにおいて、前記制御装置は、前記電解メタネーション装置へ導入される前記第1ガス中の二酸化炭素の測定流量の増減に応じて、前記電解メタネーション装置へ導入される水蒸気の流量が増減するように前記水蒸気発生装置を制御するとともに、前記電解メタネーション装置へ供給される直流電流の電流量が増減するように前記電源装置を制御するようにしてもよい。これにより、電解メタネーション装置での反応を効率よく行わせ、電解メタネーション装置から送出される第2ガス中に含まれる未反応の水素や未反応の二酸化炭素が多くなるのを抑制することができる。
【0069】
本開示の第5態様に係るメタン製造システムは、第1または第2態様に係るメタン製造システムにおいて、前記電解メタネーション装置は第1の電解メタネーション装置であり、前記第1の電解メタネーション装置から前記第2配管へ送出された前記第2ガスを前記第2配管の途中に接続された導入配管を通じて導入するとともに前記水蒸気発生装置で発生した水蒸気を導入し、水蒸気の電気分解により発生した水素と二酸化炭素とを反応させてなるメタンを含む第3ガスを生成し、前記第3ガスを送出配管を介して前記第2配管へ送出することができ、前記電源装置から水蒸気の電気分解に用いる直流電流が供給される第2の電解メタネーション装置と、前記第2配管へ送出された前記第2ガスを前記第2配管を通じて外部へ排出するか前記導入配管を通じて前記第2の電解メタネーション装置へ供給するかを切り替える切替装置と、をさらに備え、前記制御装置は、前記第2ガス中のメタンの測定濃度が第1の基準濃度未満または第1の基準濃度よりも低い第2の基準濃度未満になったときに、前記第2ガスが前記導入配管を通じて前記第2の電解メタネーション装置へ供給されるように前記切替装置を制御するようにしてもよい。
【0070】
この構成によれば、メタンの測定濃度が第1の基準濃度未満または第2の基準濃度未満の第2ガスは外部へ送出されずに第2の電解メタネーション装置へ供給され、第2の電解メタネーション装置においてメタンの濃度がより高濃度となった第3ガスを生成することができる。また、メタンの測定濃度が第1の基準濃度以上または第2の基準濃度以上の第2ガスのみが生成ガスとして第2配管を通って外部へ送出される。よって、第1の基準濃度以上または第2の基準濃度以上の高濃度のメタンを含む生成ガスを製造することができる。
【0071】
また、第5態様に係るメタン製造システムにおいて、前記制御装置は、前記第2の電解メタネーション装置へ導入されるガス中の二酸化炭素の測定流量の増減に応じて、前記第2の電解メタネーション装置へ導入される水蒸気の流量が増減するように前記水蒸気発生装置を制御するとともに、前記第2の電解メタネーション装置へ供給される直流電流の電流量が増減するように前記電源装置を制御するようにしてもよい。これにより、第2の電解メタネーション装置での反応を効率よく行わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
10A,10B メタン製造システム
11 水蒸気発生装置
12 第1の電解メタネーション装置
14 第2の電解メタネーション装置
16 電源装置
17 制御装置
31,34 二酸化炭素測定器
32,35 二酸化炭素濃度センサ
33,36 メタン濃度センサ
P1 第1配管
P2 第2配管
P5 返送配管
P11 導入配管
P12 送出配管
図1
図2
図3
図4