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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125871
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】浮上装置
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/06 20060101AFI20240911BHJP
   B64B 1/40 20060101ALI20240911BHJP
   B64D 27/24 20240101ALI20240911BHJP
   B64B 1/34 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B64B1/06
B64B1/40
B64D27/24
B64B1/34
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033988
(22)【出願日】2023-03-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】523081650
【氏名又は名称】株式会社三圓
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】范 国鋒
(57)【要約】
【課題】上空での発電において、飛行物体の数を最小限に抑え、構成を簡略化及び省電力化することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、本体部1と、本体部1に接続され揚力を発生させる回転翼2と、を備える浮上装置Xであって、本体部1は、気嚢12と、気嚢12を収める枠体11と、太陽光発電装置と、電力を溜め込む二次電池と、を有する。また、本発明の好ましい形態では、気嚢12は、空気より軽い気体を封入可能であり、該気体による浮力の大きさよりも重力の大きさが大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部に接続され揚力を発生させる回転翼と、を備える浮上装置であって、
前記本体部は、気嚢と、前記気嚢を収める枠体と、太陽光発電装置と、電力を溜め込む二次電池と、を有する浮上装置。
【請求項2】
前記気嚢は、空気より軽い気体を封入可能であり、
前記気体による浮力の大きさよりも重力の大きさが大きい、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項3】
前記枠体は、外壁と内壁とを有し、
前記気嚢は、前記外壁と前記内壁との間に収められる、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記内壁の内側の温度及び圧力を維持する環境維持装置を設ける、
請求項3に記載の浮上装置。
【請求項5】
前記本体部は、位置と姿勢とを制御する信号を受信する受信部を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項6】
前記回転翼は、前記本体部との相対位置及び方向を変更可能な関節部を有する、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項7】
前記回転翼は、前記本体部と着脱可能な接続部を有する、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項8】
前記本体部は、複数の前記枠体同士を連結可能な連結部を有する、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項9】
前記本体部は、風力発電装置を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項10】
前記本体部は、画像を表示可能な表示手段を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項11】
前記本体部は、人を収容可能な収容部を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項12】
前記本体部は、植物を栽培可能な植物栽培手段を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高高度に浮上して発電を行う装置を効率化し、さらに拡張性を向上可能な浮上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IT技術の発展、電気自動車の普及など、電力を使用する場面が拡大し続けている昨今の情勢においては、環境保護の観点から再生可能エネルギへの転換が必要不可欠である。その手段の一つが太陽光発電であり、太陽光発電の普及に向けた開発が行われている。しかしながら、太陽光発電で十分な電力を賄うには広大な面積が必要であるほか、天候の変化によって発電量が大きく変動するため、電力の安定的な供給を実現することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-244837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発電装置は、太陽電池が取付けられた飛行船或いは巨大な太陽光パネルの周りを、無人飛行機が編隊飛行して誘導及び電力を回収することで、空中での太陽光発電を行うものである。
しかしながら、複数の飛行物体を同時に駆動・制御しなければならないため、各飛行機のエネルギ消費を考慮すると、決して効率的とは言えない。
また、太陽電池を飛行船の外壁に設ける形態では、システムが1機だけで完結することになり、装置の拡張やサイズ変更が難しい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、上空での発電において、飛行物体の数を最小限に抑え、構成を簡略化及び省電力化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本願発明は、本体部と、前記本体部に接続され揚力を発生させる回転翼と、を備える浮上装置であって、前記本体部は、気嚢と、前記気嚢を収める枠体と、太陽光発電装置と、電力を溜め込む二次電池と、を有する。
このような構成によって、上空での発電において、飛行物体の数を最小限に抑え、構成を簡略化及び省電力化することができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記気嚢は、空気より軽い気体を封入可能であり、前記気体による浮力の大きさよりも重力の大きさが大きい。
このような構成によって、浮上装置の高度の維持や変更を容易に、かつ省電力で行うことができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記枠体は、外壁と内壁とを有し、前記気嚢は、前記外壁と前記内壁との間に収められる。
このような構成によって、枠体の中の一部を、浮上以外の用途に使用することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、前記内壁の内側の温度及び圧力を維持する環境維持装置を設ける。
このような構成によって、高高度でも、地上と同じ環境下で経済活動を行うことができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、位置と姿勢とを制御する信号を受信する受信部を設ける。
このような構成によって、地上から浮上装置を制御することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記回転翼は、前記本体部との相対位置及び方向を変更可能な関節部を有する。
このような構成によって、浮上装置の状況に合わせて容易に回転翼を動かし、適切な飛行状態を保つことができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記回転翼は、前記本体部と着脱可能な接続部を有する。
このような構成によって、必要に応じて回転翼を容易に着脱することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、複数の前記枠体同士を連結可能な連結部を有する。
このような構成によって、発電量や作業スペースの需要に合わせて、浮上装置を容易に拡張又は縮小することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、風力発電装置を設ける。
このような構成によって、上空の安定的な気流を用いて効率的に発電することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、画像を表示可能な表示手段を設ける。
このような構成によって、広告などの情報発信を行うことができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、人を収容可能な収容部を設ける。
このような構成によって、上空に一時的な生活空間を提供することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、植物を栽培可能な植物栽培手段を設ける。
このような構成によって、地上に農地を増やさずに植物を栽培することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記課題を解決する本発明は、上空での発電において、飛行物体の数を最小限に抑え、構成を簡略化及び省電力化することができる浮上装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一の実施形態に係る、浮上装置の斜視図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る、浮上装置の平面Aにおける断面図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る、浮上装置の平面Bにおける断面図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る、浮上装置が浮上する原理を示す模式図である。
図5】本発明の第一の実施形態に係る、浮上装置の制御システムを示すブロック図である。
図6】本発明の第一の実施形態に係る、浮上装置を連結する構成を示す模式図である。
図7】本発明の第一の実施形態に係る、浮上装置を複数連結させた状態の斜視図である。
図8】本発明の第一の実施形態に係る、浮上装置に表示手段を加える構成の模式図である。
図9】本発明の第二の実施形態に係る、浮上装置が居住用の収容部を有する構成の断面図である。
図10】本発明の第三の実施形態に係る、浮上装置が植物栽培用の設備を有する構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る浮上装置について説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す各実施形態はそれぞれ本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0021】
≪第一の実施形態≫
以下、図1~8を用いて、本発明の第一の実施形態に係る浮上装置Xについて詳述する。
浮上装置Xは、本体部1と、本体部1に取付けられる回転翼2と、を備え、2000m以上の高空に浮上可能な装置である。
【0022】
本体部1は、浮上装置Xの胴体部分であり、枠体11によってその形状が定められ、内部に気体を封入可能な気嚢12を敷き詰める。
【0023】
枠体11は、図1図2、及び図3に示すように、外壁111と内壁112と、によって本体部1の形状を定める構造体である。外壁111は、少なくとも300hPa程度の圧力差に耐えられる強度をもち、平板を組み合わせて本体部1を箱型に閉じる部材であり、枠体11の外形及び外壁111は、直方体をなす構成であることが好ましい。このとき、枠体11の長さ及び幅は10m以上30m以下、高さが5m以上20m以下であることが好ましい。このような構成によって、枠体11の中に人が乗る場合でも、気嚢12を敷き詰める空間を確保することができる。
【0024】
内壁112は、枠体11の内部に独立した部屋を作るように設けられる仕切りであって、図1図2、及び図3に示すように、本体部1の中央部を長方形断面の筒状に貫通する構成が好ましい。但し、外壁111と内壁112との間の空間を確保し、尚且つ内壁112に囲まれて独立した部屋(以下、内部屋と称す)に人が入り作業をする空間を確保するため、内部屋の断面は、幅が1m以上4m以下、高さが1m以上3m以下であることが好ましい。また、図1に示す構成では、内部屋は、本体部1の中央部付近、すなわち床面が本体部1(枠体11)の底面から2m~10m程度上に設けられるが、浮上装置Xの重心を低くして安定させるため、低い位置に設けられる構成が好ましい。特に、内部屋は、浮上装置Xの外部と出入可能な出入口が、枠体11の一の面において、水平方向の中央に設けられる構成が好ましい。このような構成によって、本体部1の向きを揃えることで、複数の本体部1同士を連結する場合に、内部屋同士の出入口の位置も揃い、内部屋同士を容易に行き来することができる。
【0025】
枠体11は、内部に搭載される機器類(詳細は後述)を回転翼2と繋ぐ配線を通すための配管部113を有する。配管部113は、電気配線や有線通信用配線を格納する円形又は長方形断面の筒状の部材であり、枠体11に固定され、支持される。また、この配線は、後述する制御部15と、回転翼2と、連結部115と、を電気及び有線通信で接続可能な構成であり、配管部113は、それらに対応する位置に設けられる。
【0026】
枠体11は、本体部1の上面の角付近に、回転翼接続部114を有する。回転翼接続部114は、回転翼2を本体部1に固定接続する穴部(凹部)であり、ボルトなどを用いて、空中で本体部1と回転翼2が外れないように、かつ使用者の手作業で本体部1と回転翼2とを容易に着脱可能にする構成である。また、回転翼2と電気回路及び通信回路を接続する端子を設けており、穴部の形状に合わせたソケットが好ましいが、手作業で配線を接続するためのソケットを設けてもよい。さらに、回転翼接続部114に回転翼2を取付けないときは、本体部1の上面と面一になる蓋を別途設けてもよい。このような構成によって、必要に応じて回転翼2を着脱し、浮上装置Xを柔軟に運用することができる。
【0027】
枠体11は、本体部1同士を連結可能な連結部115を有する。連結部115は、凹部と凸部を嵌め合わせ、ボルト締結などで固定接続する部分であり、空中で本体部1同士が分離しない程度の強度を保つ。また、複数の本体部1同士を連結することから、図6、8に示すような複数の浮上装置Xの挙動を連動させる必要があるため、連結部115は電気及び通信の接続が可能な構成とする。
【0028】
連結部115の構成は、例えば図6に示すように、全ての連結部115が凹部で、2つの凹部を合わせてできる空間に連結ブロックを入れてボルトで締結する構成でもよい。また、連結部115は、図7に示すように、枠体11のすべての面に設けられ、鉛直方向及び水平方向の両方に制限なく連結可能な構成とすることが好ましい。このような構成によって、浮上装置Xを必要な数だけ連結して飛ばすことができる。また、図7に示すように、回転翼接続部114において、稼働させる数だけ回転翼2を取付けて飛ばすこともできる。
【0029】
連結部115は、枠体11の一の面ごとに、上下若しくは前後若しくは左右に対称な位置に設けられる構成が好ましい。このような構成によって、連結部115を設けるすべての面で同じように連結を行うことができる。
【0030】
枠体11は、内部屋の出入口を密閉可能なシャッター116を有する。シャッター116は、少なくとも300hPa程度の圧力差に耐えられる強度をもつ平板状の部材によって、内部屋を密閉する扉である。平板の大きさは内部屋の断面と略同じ形状であり、ゴム素材等を用いてより確実に内部屋を密閉する。シャッター116の開閉機構は、鉛直方向や水平方向に摺動する構成でも、本体部1の中心部に向かって回転する、所謂内開きのドアでもよい。また、浮上装置Xの飛行中に意図せずシャッター116が開くことを防ぐため、フック等で外壁111に固定可能なロック機構を有する構成が好ましい。
【0031】
枠体11は、本体部1の上面の縁付近に、照明117を有する。照明117は、高輝度のLEDや電球等であり、図1に示すように、本体部1の上面を囲む各辺の中点付近、若しくは回転翼接続部114から可能な限り離れた位置に複数設けられる。このような構成によって、空中や夜間でも浮上装置Xを遠くから視認することができ、浮上装置Xを安全に運用することができる。
【0032】
枠体11は、本体部1の外部と、外壁111及び内壁112に囲まれた部屋(以下、外部屋と称す)と、を出入可能なハッチ118を有する。ハッチ118は、図1に示すように、本体部1の側面部の、下辺寄りに設けられる出入口であり、水平方向に摺動する構成若しくは内開きのドアで開閉可能な構成である。また、ハッチ118は、縁部にフックや閂型等のロック機構を備え(複数箇所あると好ましい)、外壁111に固定可能な構成である。このような構成によって、浮上装置Xの飛行中に、意図せずハッチ118が開く事態を防ぐことができる。
【0033】
枠体11は、使用者が外部屋の中で作業することが可能な足場119を有する。足場119は、図2及び図3に示すように、外壁111の内側に沿う、又は外壁111と内壁112とを架け渡す、等の構成で設けられる平板上の通路であり、高さ方向に2m~3m程度の間隔で重なるように設けられる。このような構成によって、使用者は連結部115における連結作業や、配管部113における配線の保守等の作業を行うことができる。また、図面には示されていないが、足場119は人が乗って作業するため、外壁111及び内壁112の他に、支柱を設ける構成が好ましい。また、使用者が足場119に登るための梯子を係止するため、又は使用者が足場119上で命綱を取付けるための、フックやリング等の係止部を設ける構成が好ましい。
【0034】
気嚢12は、空気より軽い気体を封入可能な袋状の部品であり、封入口は密閉可能な構成である。気嚢12には、例えばヘリウムが封入され、それを本体部1の外部屋に敷き詰めることによって、本体部1が単体で浮力を得る。気嚢12は、図2及び3に示すように、角が丸い略直方体の形状に膨らみ、それを本体部1の形状に合わせて敷き詰める。気嚢12の大きさは、縦、横、高さがそれぞれ1mであることが好ましいが、内部屋の大きさや、足場119による寸法の変動等を考慮し、0.5m~1.5mの範囲で変わってもよい。このような構成によって、気嚢12を無駄なく外部屋に敷き詰めて、より効率的に浮力を得ることができる。
【0035】
本体部1は、下部に脚部13を有する。脚部13は、車輪131と緩衝部132とを設け、浮上装置Xを地上で移動させる際に用いられる。また、脚部13は、枠体11の底面において3か所以上設けられ、底面の四隅及び中央の5か所に設けられる構成が好ましい。但し、本体部1の大きさによっては、荷重を分散させるために、6か所以上設けられてもよい。このほか、本体部1を鉛直方向に重ねて接続可能とするため、脚部13は、枠体11から着脱可能な構成であることが好ましい。
【0036】
車輪131は、脚部13の先端に位置し、浮上装置Xを地上で運搬する際の移動手段として用いられる。また、車輪131は、ヘリコプターに倣い1か所の脚部13につき1個でもよく、航空機に倣い1か所の脚部13につき2対(4個)や3対(6個)などでもよい。
【0037】
緩衝部132は、枠体11と車輪131とを接続し、車輪131に加わる衝撃や振動を吸収する減衰機構を設ける部分である。減衰機構は、例えば航空機の着陸脚に倣い空気圧シリンダを有する構成である。このような構成によって、浮上装置Xが着陸するとき、枠体11を傷つけたり、振動で脚部13以外の部分が破損したりするリスクを減らすことができる。
【0038】
本体部1は、外面に太陽電池14を有する。太陽電池14は、外壁111の外側に設けられるパネル若しくはフィルム状の太陽光発電装置であって、図1に示すように、本体部1の上面と、側面の1か所との2面に設けられる構成が好ましい。このような構成によって、回転翼2の動力源を太陽電池14から得ることができ、浮上装置Xの飛行時間を長くすることができる。また、浮上装置Xに横から当たる光によっても発電可能であり、同時により多くの発電を行うことができる。
【0039】
本体部1は、浮上装置Xの挙動、特に回転翼2を制御する制御部15を有する。制御部15は、図2及び図3に示すように、枠体11の内部、特に内部屋の中に設けられるコンピュータであり、図5に示すように、位置情報センサ151、ジャイロセンサ152、光度センサ153、発信部154、受信部155、記憶部156、温度計157、圧力計158、演算部159を有する。
【0040】
本実施形態における回転翼2の「制御」とは、回転翼2の回転数(rpm)、若しくは後述する関節部222の回動角度を表す。
【0041】
制御部15の各部は、広義の回路を含むハードウェアと、このハードウェアを介して実現されるソフトウェアの情報処理と、を含み得る。このほか、通信に用いるのはネットワークパスであり、このネットワークパスは、インターネット・プロトコルを含み得る。また、通信プロトコルの種類は特に制限されず、さらに、ネットワークの種類、規模にも制限はない。
【0042】
位置情報センサ151は、人工衛星からの情報により浮上装置Xの現在位置を緯度及び経度で認識する位置情報システム、所謂GPSであり、この情報をもとに、浮上装置Xの飛行ルートを決定する。
【0043】
ジャイロセンサ152は、浮上装置Xの空中での姿勢、特に回転運動を検出する。ジャイロセンサ152で取得した情報をもとに、浮上装置Xの姿勢制御が行われる。
【0044】
光度センサ153は、浮上装置Xが受ける光の量を明るさ若しくはエネルギ量で検出するセンサであり、この情報をもとに、太陽光の光源の向きを判別する。
【0045】
発信部154は、位置情報センサ151、ジャイロセンサ152、光度センサ153にて得た情報を、電波信号によって地上にいる使用者に向け発信する通信装置である。
【0046】
受信部155は、地上にいる使用者から送られる信号を受信する通信装置である。また、発信部154と一体の基盤に設けられる構成が好ましい。ここで受取る情報をもとに、回転翼2を制御することで、浮上装置Xが安定して飛行及び発電を行うことができる。
【0047】
記憶部156は、受信部155で受信した情報や、位置情報センサ151にて取得した情報を記憶する揮発性メモリである。これにより、浮上装置Xの飛行経路や、制御に用いた信号を記録として保持できる。この記録は、発信部154から地上にいる使用者に送られるか、若しくは浮上装置Xの着陸時に回収される等の手段を経て、飛行するごとに、又は一定時間ごとに消去され、新しい記録に置き換わるのが好ましい。これにより、浮上装置Xに搭載するメモリの量を最小限に抑え、制御部15の容量逼迫や、それに伴う発熱を抑えることができる。
【0048】
温度計157は、浮上装置Xの外部の気温を計測する温度センサである。これにより、高度が上がるにつれて大気の温度が低下することを利用し、浮上装置Xの高度及び上昇速度を計算することができる。また、気嚢12の温度を計測する温度センサを設ける構成が好ましい。
【0049】
制御部15は、温度計157と合わせて、気嚢12の温度を調整する加熱装置を設ける構成が好ましい。この加熱装置は、気嚢12に封入された気体を高度に関わらず一定に保つ、あるいは浮上装置Xの外部の気温よりも高温に加熱する装置であり、太陽電池14にて得られた電力を用いる構成が好ましい。このような構成によって、気嚢12による浮力を十分に確保し、回転翼2の駆動に用いる電力を抑えることができる。
【0050】
圧力計158は、浮上装置Xの外部の圧力を計測する圧力センサである。これにより、高度が上がるにつれて大気の圧力が低下することを利用し、浮上装置Xの高度及び上昇速度を計算することができる。
【0051】
演算部159は、制御部15の各部が取得する情報を処理し、発信部154に発信させたり、記憶部156に記憶させたり、回転翼2を制御する命令を出したりする、所謂プロセッサである。演算部159は、位置情報処理、機体情報処理、制御処理を行う。以下、これらについて詳述する。
【0052】
位置情報処理は、位置情報センサ151にて取得した位置情報を、記憶部156に累積された位置情報と紐づけて飛行経路のデータを更新する処理、及び温度計157、圧力計158にて取得した外気の温度及び圧力の情報をもとに浮上装置Xの高度を算出する処理、及び位置情報、高度の情報を発信部154に発信させる処理である。これにより、使用者は浮上装置Xの位置を略リアルタイムで追跡でき、航空機の航路を回避したり、他の飛行物体との衝突を回避したりできる。
【0053】
機体情報処理は、光度センサ153にて取得する情報から太陽光の向き及び太陽光と太陽電池14がなす角度を割り出し、ジャイロセンサ152にて取得する浮上装置Xの姿勢及び回転運動と合わせて、発信部154に発信させる処理である。
【0054】
制御処理は、地上にいる使用者側から送られ受信部155で取得する制御信号を、回転翼2に伝達して揚力の大小などを変動させ、浮上装置Xを目標の高度、姿勢、方向に動かす処理である。また、このときの制御信号を記憶部156に記憶させる処理を含んでもよい。
【0055】
機体情報処理においては、地上にいる使用者側で生成される制御信号を利用せず、演算部159で制御信号を生成する処理を行い、その制御信号を用いて制御処理を行ってもよい。これにより、浮上装置Xの挙動を自動化することができる。この場合、演算部159は、生成した制御信号を発信部154に発信させ、地上にいる使用者が常に制御の様子を把握できるようにする。また、非常時には地上にいる使用者からの制御信号を受信部155で受信し、それを優先して制御処理を行う。
【0056】
本体部1は、太陽電池14にて発電した電力を溜め込む蓄電池16を有する。蓄電池16は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池であり、太陽電池14にて発電した電力のうち、回転翼2及び制御部15の駆動に使用されなかった電力を溜め込む。また、蓄電池16は、容易に取り外し可能な構成、若しくはコンセントなど電力回収用の端子を設ける構成が好ましい。このような構成によって、溜め込んだ電力を地上で容易に回収することができる。
【0057】
蓄電池16は、充電量検知部161を設ける。充電量検知部161は、蓄電池16の容量に対する蓄電量の割合を検出する。検出された蓄電割合は、演算部159で常時或いは一定時間おきに読み込まれ、発信部154にて発信される。特に蓄電割合が100%(若しくは90%など適宜設定してよい)に達した場合、演算部159は、充電完了の信号を発信部154に発信させる構成が好ましい。
【0058】
本体部1は、内部屋の内部の温度及び圧力を調整する環境維持装置17を有する。環境維持装置17は、浮上装置Xが飛行中であっても、内部屋の温度及び圧力を地表の状態、例えば25℃、1013hPa、に維持する空調装置である。また、酸素供給手段により、内部屋の酸素濃度を地表の状態と同水準に保つ機能も有する。このような構成によって、内部屋の中で植物(農作物や花き等)を栽培することができるほか、人を載せて快適に経済活動を行うことができる。
【0059】
本体部1は、枠体11の底面と、側面の少なくとも1面と、に表示手段18を有する。表示手段18は、枠体11の底面又は側面と略同じ形状で、画像や動画を表示可能な画面である。このような構成によって、広告などの情報表示が可能であり、また付近の航空機などに接近を知らせる警告表示なども行うことができる。また、表示手段18は、可能な限り薄型である構成が好ましい。このような構成によって、本体部1を軽量化できるほか、気嚢12を搭載する空間を広くとり、より大きい浮力を得ることができる。
【0060】
本体部1は、表示手段18を枠体11の底面に有する場合、図8に示すように脚部13を設けず底面の全面に画像を表示可能な構成とすることが好ましい。このような構成によって、複数の本体部1同士を連結して浮上装置Xを飛行させるとき、底面部分を複数の表示手段18の結合によって大画面として使用することができる。例えば、図7に示すように、9つの本体部1を連結する場合は、表示手段18も9枚を並べた大画面として使用する。このため、各表示手段18の表示内容は、1か所の制御部15によって一括で制御可能とすることが好ましい。
【0061】
本体部1は、避雷装置19を有する。避雷装置19は、外壁111の一部に設けられる電気抵抗が小さい金属部材(例えば銅など)、及びその金属部材と繋がり、枠体11の底面から下に伸びる放電索191(航空機のスタティック・ディスチャージャと同様)から形成される。このような構成によって、航空機と同様の原理で落雷による浮上装置Xの破損確率を低く抑えることができる。
【0062】
回転翼2は、本体部1に接続され、揚力を発生させる装置であり、翼本体21と基礎部22とを有する。
【0063】
翼本体21は、浮上装置Xを持ち上げる揚力を発生させるプロペラである。図面では2枚羽であるが、大きさによっては、3枚以上の羽で構成されていてもよい。また、翼本体21の直径は、本体部1の大きさに合わせて、3m以上20m以下、好ましくは4m以上15m以下で設定される。
【0064】
基礎部22は、翼本体21を回動可能に取付け、本体部1と接続する柱状の部材であり、動力部221、関節部222、本体接続部223を設ける。また、基礎部22は、本体部1から遠ざかる方向に伸び、翼本体21が本体部1よりも水平方向外側にせり出すように設けられる。
【0065】
動力部221は、太陽電池14にて発電された電力を、翼本体21を回動させる動力に変換するモータである。また、動力部221は、浮上装置Xが回転しないように、2か所ずつが逆方向に回動する。例えば、図1に示す4基の回転翼2は、対角線上にある2基ずつがそれぞれ同じ方向に回動し、枠体11の上面の辺沿いに隣同士の2基は互いに逆方向に回動するように設けられる。
【0066】
関節部222は、回動により基礎部22と本体部1との角度を変更可能にする軸関節である。また、後述する本体接続部223と一体に設けられてもよい。このような構成によって、回転翼2、特に翼本体21の、本体部1との相対位置及び角度を必要に応じて変更でき、図7に示すように複数の浮上装置Xが連結される状態において、翼本体21同士の干渉を防ぐことができる。
【0067】
関節部222は、制御部15で回動を制御することが可能な構成が好ましい。この制御は、本体部1の姿勢や距離などから目標角度を決定し、その目標角度に合わせる位置制御が好ましい。このような構成によって、飛行中の状況に合わせて適宜翼本体21の位置を変えることができる。
【0068】
本体接続部223は、関節部222に隣接又は関節部222と一体に設けられる柱状の部分であり、回転翼接続部114に貫入し、ボルト締結などで容易に固定接続される。また、回転翼接続部114と電気回路及び通信回路を接続するための端子を設けており、前記固定接続に合わせて接点で接続される構成、若しくは使用者が手作業で配線を接続する構成を有する。
【0069】
浮上装置Xの浮上においては、図4に示すように、翼本体21による揚力と、気嚢12に封入された気体の浮力を合わせる。浮上装置Xは、気体の浮力だけでは浮上せず、翼本体21の揚力が加わった状態で浮上が可能となる重量である。このような構成によって、回転翼2の駆動に用いる電力を抑え、浮上装置Xを容易に浮上、制御することができる。
【0070】
浮上装置Xの重量は、前述の条件に加え、翼本体21による揚力が一定以下でも浮上可能な程度に制限することが好ましい。これは、例えば揚力の大きさが浮力の大きさの50%であるときの値を基に、浮上装置Xの重量の上限を決定するということである。但し、この重量の上限を決定する方法においては、他の基準を用いてもよい。このような構成によって、空中で回転翼2又は発電装置が故障し、浮上装置Xが揚力を失った場合でも、浮力によって緩やかに降下することができる。
【0071】
本体部1、特に枠体11は、炭素繊維などの軽量素材で構成される。これにより、浮上装置Xの重量を抑え、より少ない電力で浮上することができる。但し、内壁112やシャッター116など、大きな圧力差に耐える必要がある部分については、金属など、他の材料による構成も想定され得る。
【0072】
浮上装置Xを操作する使用者は、制御部15との通信が可能なコントローラを用いる。このコントローラは、回転翼2を操作し、浮上装置Xの飛行速度や姿勢をコントロールできればよく、例えばドローンの操縦に用いられるような、周知の無線コントローラの類である。但し、高高度に浮上する浮上装置Xと通信するため、電波での通信を用いるものが好ましい。
【0073】
浮上装置Xは、以下の構成を有してもよい。但し、以下に示す構成はあくまで一例であり、また各構成の有無は特に言及がない限りそれぞれ独立して決定できる。
【0074】
≪変更例≫
枠体11は、外部屋の中において、複数の足場119同士、又は足場119と外壁111又は内壁112と、を上下方向に繋ぐワイヤを設けてもよい。このワイヤは、外部屋の中に敷き詰めた気嚢12がずれ動かないように、位置決めを行う。このような構成によって、気嚢12を縦に積み上げる作業を行いやすくなるほか、浮上装置Xが空中で傾いても、気嚢12がずれ動いて全体のバランスが変動する事態を防ぐことができる。
【0075】
複数の浮上装置Xを連結して飛行させる場合、制御部15による制御は1か所で行い、その1か所で各回転翼2及び環境維持装置17を一括で制御する。若しくは、各本体部1に設けられる制御部15同士で、互いに通信を行って連携する。これにより、複数の浮上装置Xが連結される状態でも、単独の浮上装置Xと同じ要領で飛行させることができる。また、これに対応するため、連結部115に電気回路及び通信回路を接続可能な端子、又はプラグ及びソケットを設ける。これにより、連結部115での連結作業と同時に、各制御部15同士を接続することができる。
【0076】
本体部1は、内部屋の中に操縦設備を有してもよい。この操縦設備は、制御部15と情報通信が可能となるように有線接続された(構成によっては無線でもよい)操作台であり、使用者は、操縦設備を用いて浮上装置Xを内部から有人で操縦する。これにより、地上との情報通信による操縦の遅れがなく、内部の操縦者が浮上装置Xの異変をすぐに認識することができる。
【0077】
浮上装置Xは、風力発電装置を有してもよい。この風力発電装置は、上空の大気の流れによる風圧を利用して発電を行う周知の風力発電機であり、太陽電池14と合わせて、回転翼2や蓄電池16に供給する電力を発生させる。また、この風力発電機は、本体部1及び回転翼2に干渉しない範囲であれば、どこに設けられてもよいが、本体部1のうち、太陽電池14が設けられていない面であることが好ましい。これにより、太陽電池14の発電効率を下げることなく、太陽電池14と風力発電装置との両方で、効率的に発電を行うことができる。
【0078】
照明117は、回転翼2、特に基礎部22に設けられてもよい。このような構成によって、複数の浮上装置Xを連結するときに、回転翼2と合わせて照明117の個数を調整することができる。
【0079】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0080】
≪実施の方法≫
使用者は、図1に示すように、本体部1に回転翼2を取付ける。このとき、図6及び図7に示すように、浮上装置Xを複数連結して浮上させる場合は、各本体部1について、回転翼2は必要な数を選択して取付ける。
【0081】
使用者は、ハッチ118から外部屋に入り、外部屋の内部にて、気嚢12に気体(ヘリウム等)を封入して膨らませ、その気嚢12を、外部屋の全体を埋めるように敷き詰める。外部屋の上部においては、足場119の上でこの作業を行う。外部屋が気嚢12で満たされたら、ハッチ118を閉じ、施錠などで固定する。
【0082】
使用者は、複数の本体部1を連結するとき、連結部115の凹凸を噛合わせるか、若しくは図6に示すように、連結ブロックに両側から凹部同士を合わせて、ボルト締結などで固定接続する。この作業は外部屋の中を中心に行うため、外部屋を気嚢12で満たす前に行い、また必要に応じて足場119を用いる。また、図7に示すように、ハッチ118及び内部屋の向きが揃うように連結するのが好ましい。このほか、本体部1を鉛直方向に重ねるように連結してもよい。これにより、図7のような本体部1を2層、3層・・・と重ねて、より大きい機体を浮上させることができる。但し、回転翼2を取付け可能なのは最上層の本体部1のみであるため、全体の重量が大きくなり過ぎないように留意する。
【0083】
使用者は、内部屋を作業スペース又は居住空間として活用する場合、必要な物資、設備を搬入する。浮上装置Xの飛行中に、内部屋に人が滞在する場合は、食料、飲料水の備蓄、酸素供給装置、脱出装置、座席及びシートベルトの設置なども併せて行う。但し、内部屋の入り口(シャッター116)の位置は、本体部1の底面から2m~10m程度上に位置するため、出入の際には梯子、スロープ、昇降機などを用いる必要がある。
【0084】
使用者は、無線で回転翼2を作動させる信号を浮上装置Xに向けて送信し、浮上装置Xを浮上させる。その後は、浮上装置Xと各情報の送受信を繰り返し、浮上装置Xを高高度に滞在させる。
【0085】
使用者は、浮上装置Xを地上に下ろすとき、まずは回転翼2の作動を弱める、すなわち動力部221の回動を遅くしていき、翼本体21による揚力を小さくする。これにより、浮上装置Xは自重で降下を始める。その後は、使用者は浮上装置Xと各情報の送受信を繰り返し、浮上装置Xの姿勢を保ったまま地上に下ろす。
【0086】
浮上装置Xを地上に下ろすのは、日没となり太陽光発電ができなくなる時刻、又は蓄電池16が満充電になるとき、又は内部屋に人が滞在するための物資や資源が尽きる直前などが想定される。
【0087】
浮上装置Xが浮上する高度は2000m以上、好ましくは3000m以上であることが好ましい。これにより、低層雲を避け、効率よく太陽光発電を行うことができる。また、上空の気流は地表付近よりも安定的であるため、風力発電を安定して行うことができる。
【0088】
本体部1が底面に表示手段18を設け、さらに複数の本体部1同士を連結させて浮上装置Xが飛行する場合、表示手段18が複数並び、底面を大画面として画像や映像を映し出すことができる。これにより、映画やスポーツ中継などを地上の建造物を用いずに提供することができる。
【0089】
≪その他の用途及び効果≫
浮上装置Xは、洋上での太陽光発電に特化させて使用することも可能である。これにより、設置が難しい洋上でも、他のインフラの障害にならずに広大な面積で太陽光発電を行うことができる。このほか、適切な設備や物資を内部屋に積み、ソフトウェア開発、上空からの有人気象観測などを行うこともできる。これにより、地上のスペースを占有することなく、経済活動を行うことができる。
【0090】
以下、図9を用いて本発明の第二の実施形態に係る浮上装置Xについて詳述する。なお、前述の実施形態と同様の構成については同様の符号を用いて説明を省略する。
【0091】
≪第二の実施形態≫
本体部1、特に枠体11は、内壁112に囲まれる内部屋の中に人間(使用者)が滞在、又は居住することが可能な収容部A1を設ける。収容部A1は、シャッター116のほかに内扉A11でさらに区切られる構成が好ましく、また内部に家具、家電、飲料水や食料などを備蓄する貯蔵設備A12、シートベルト付きの座席A13、脱出装置、酸素供給装置などを設ける。部屋の気温や気圧は、環境維持装置17によって地表と同程度に維持され、各設備の稼働に必要な電力は太陽電池14や風力発電装置から供給する。このような構成によって、浮上装置Xの内部に人(使用者)が長時間滞在することができる。
【0092】
収容部A1は、制御部15や蓄電池16とは内扉A11で区切られる構成が好ましい。このような構成によって、収容部A1内を住宅のような生活空間とする場合、緊急時以外に使用者が制御部15や蓄電池16に意図せず触れて事故を起こす事態を防ぐことができる。
【0093】
内扉A11は、収容部A1の出入口に設けられる、内開き扉又は引き戸であり、シャッター116の開閉に関わらず、内扉A11が閉じていることで収容部A1内の環境を維持可能にする。また、内扉A11がエアロックの機能を有していれば、浮上装置Xが高高度を飛行していても、収容部A1内の環境維持を行いやすくなる。
【0094】
貯蔵設備A12は、収容部A1に滞在する使用者が使用・消費する物資を備蓄或いは保管する設備であり、戸棚、水タンク、金庫、冷蔵庫などを含む。このような構成によって、食料、飲料水、日用品などを備蓄でき、長時間の滞在に対応することができる。
【0095】
座席A13は、航空機の座席に倣う、シートベルト付きの椅子であり、浮上装置Xが着地するときなど、収容部A1に滞在中の使用者に振動や加速度が伝わる場合に、使用者の身体を固定し、安全を確保することができる。
【0096】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0097】
≪実施の方法≫
使用者は、必要な家具や家電を内部屋に設置し、太陽電池14、風力発電装置、制御部15と接続する配線作業を行うほか、飲料水や食料、日用品等を貯蔵設備A12に積込み、浮上の準備を行う。その後、制御部15若しくはコントローラの操作で浮上装置Xを浮上させ、収容部A1内に滞在或いは居住する。これにより、災害時の避難生活や転居時の待機などを上空で行うことができる。
【0098】
使用者は、複数の本体部1を接続し、複数の収容部A1を設ける居住空間として浮上装置Xを使用してもよい。このとき、シャッター116の位置が互いに一致し、収容部A1同士を行き来できる構成とする。このような構成によって、より多くの物資を積んで長期間上空に滞在することができる。
【0099】
以下、図10を用いて本発明の第三の実施形態に係る浮上装置Xについて詳述する。なお、前述の実施形態と同様の構成については同様の符号を用いて説明を省略する。
【0100】
≪第三の実施形態≫
本体部1、特に枠体11は、内壁112に囲まれる内部屋の中で植物を栽培することが可能な植物栽培手段B1を設ける。植物栽培手段B1は、屋内で植物を栽培可能な栽培棚B11と、植物に水や肥料を与える供給手段B12と、太陽光を内部屋の中に取り込む採光窓B13と、を含み、各設備の稼働に必要な電力は、太陽電池14や風力発電装置から得る。このような構成によって、気候に関わらず、野菜や花き等の多様な植物を栽培することができる。また、栽培環境維持のため、シャッター116の内側に内扉A11を設け、内部屋のさらに内側に植物栽培手段B1を設ける構成が好ましい。また、植物の収穫、植え替えを行えるように、果実や種子などを貯蔵可能な貯蔵庫を設けてもよい。
【0101】
栽培棚B11は、植物のポットを縦、横、高さ方向に並べて支持し、屋内で大量の植物を栽培することができる支持台であり、植物栽培用LED等を有する。また、供給手段B12と一体で構成される栽培システムの一部であってもよく、土を用いずに植物を栽培できる構成が好ましい。このような構成によって、少ない管理人数で植物を栽培することができる。
図10では、栽培棚B11は5段で記載されているが、段数は違ってもよい。特に、浮上装置Xにおいては高空で太陽光を受け続けることができるため、栽培棚B11は1段として、太陽光で植物を栽培する構成でもよい。
【0102】
供給手段B12は、タンク、ポンプ、配管を含み、栽培棚B11に植えられる植物に水や肥料を供給する送液装置である。浮上装置X全体の重心を低く、また慣性モーメントを小さくするため、本体部1の水平方向の中心付近かつ、低い位置に設けられる構成が好ましい。
【0103】
採光窓B13は枠体11の上面と内部屋とを繋ぐ筒状の部分であり、太陽光を内部屋に取り込んで植物に日光を当てられるようにする。枠体11の上面は、この部分のみ太陽電池14がなく、採光窓B13においては、強化ガラスで塞がれた窓になっている構成である。また、好ましくは、内部屋側の端部も強化ガラスで塞がれた窓になっている構成である。このような構成によって、上下の強化ガラスで内部屋の環境を落下物から保護することができ、また内部屋の気温や圧力を維持しやすくなる。このほか、上下の強化ガラスで塞がれた筒の内壁は鏡張りになっている構成が好ましい。これにより、採光窓B13に斜めに入射した光が可能な限り内部屋まで到達することができる。
【0104】
植物栽培には、水耕栽培を含んでもよい。これにより、水や肥料をためておくことで栽培を行うことができるため、送液装置を省略して重量を削減する、若しくは送液装置の稼働時間を減らして電力使用量を抑えることができる。
【0105】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0106】
≪実施の方法≫
使用者は、栽培棚B11と、供給手段B12と、を内部屋に積込み、栽培する植物の種子や苗などを栽培棚B11に植え、水や肥料、必要に応じて使用者の滞在物資等を内部屋に積み込んで浮上の準備を行う。その後、その後、制御部15若しくはコントローラの操作で浮上装置Xを浮上させ、植物の栽培を行う。これにより、地上のスペースを占有せずに大量の植物を栽培することができるほか、天候に左右されず、太陽光を植物に供給することができる。
【符号の説明】
【0107】
X 浮上装置
1 本体部
11 枠体
111 外壁
112 内壁
A1 収容部
A11 内扉
A12 貯蔵設備
A13 座席
B1 植物栽培手段
B11 栽培棚
B12 供給手段
B13 採光窓
113 配管部
114 回転翼接続部
115 連結部
116 シャッター
117 照明
118 ハッチ
119 足場
12 気嚢
13 脚部
131 車輪
132 緩衝部
14 太陽電池
15 制御部
151 位置情報センサ
152 ジャイロセンサ
153 光度センサ
154 発信部
155 受信部
156 記憶部
157 温度計
158 圧力計
159 演算部
16 蓄電池
161 充電量検知部
17 環境維持装置
18 表示手段
19 避雷装置
191 放電索
2 回転翼
21 翼本体
22 基礎部
221 動力部
222 関節部
223 本体接続部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部に接続され揚力を発生させる回転翼と、を備える浮上装置であって、
前記本体部は、気嚢と、前記気嚢を収める箱型の枠体と、太陽光発電装置と、電力を溜め込む二次電池と、複数の前記枠体同士を連結可能な連結部と、を有し、
前記連結部は、前記枠体の隣接する複数の平面上にそれぞれ設けられる浮上装置。
【請求項2】
前記気嚢は、空気より軽い気体を封入可能であり、
前記気体による浮力の大きさよりも重力の大きさが大きい、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項3】
前記枠体は、外壁と内壁とを有し、
前記気嚢は、前記外壁と前記内壁との間に収められる、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記内壁の内側の温度及び圧力を維持する環境維持装置を設ける、
請求項3に記載の浮上装置。
【請求項5】
前記本体部は、位置と姿勢とを制御する信号を受信する受信部を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項6】
前記回転翼は、前記本体部との相対位置及び方向を変更可能な関節部を有する、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項7】
前記回転翼は、前記本体部と着脱可能な接続部を有する、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項8】
前記本体部は、前記浮上装置の位置と姿勢とを制御する制御部を有し、
前記制御部は、光の量を検出する光度センサを設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項9】
前記本体部は、風力発電装置を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項10】
前記本体部は、画像を表示可能な表示手段を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項11】
前記本体部は、人を収容可能な収容部を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。
【請求項12】
前記本体部は、植物を栽培可能な植物栽培手段を設ける、
請求項1に記載の浮上装置。