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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125876
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】ばね組立体
(51)【国際特許分類】
   F16F 3/04 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
F16F3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033993
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信吾
【テーマコード(参考)】
3J059
【Fターム(参考)】
3J059AC02
3J059AD02
3J059BA01
3J059BB03
3J059BC02
3J059BD01
3J059CA01
3J059CB02
3J059DA17
(57)【要約】
【課題】2段階の異なる荷重特性を得られ所定箇所への設置時の作業性を向上させるばね組立体を提供する。
【解決手段】このばね組立体10は第1コイルばね20及び第2コイルばね30が支持部材40で支持されてなり、支持部材40は第1支持部材50と第2支持部材70と中間部材90とを有し、第1支持部材50は第1支持部51と第1保持部55とを有し、第2支持部材は第2支持部71と第2保持部75とを有し、中間部材90は第1支持面92と第2支持面93とを有し、第1コイルばね20が圧縮されて縮んだ状態から第2コイルばね30が縮む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルばね及び第2コイルばねが支持部材で支持されてなる、ばね組立体であって、
前記支持部材は、前記第1コイルばねを支持する第1支持部材と、前記第2コイルばねを支持する第2支持部材と、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の間に配置された中間部材とを有しており、
前記第1支持部材は、前記第1コイルばねの一端部を支持する第1支持部と、前記中間部材を軸方向に所定距離スライド可能に保持する第1保持部とを有しており、
前記第2支持部材は、前記第2コイルばねの他端部を支持する第2支持部と、前記中間部材を軸方向に所定距離スライド可能に保持する第2保持部とを有しており、
前記中間部材は、前記第1支持部に対向して配置され、前記第1コイルばねの他端部を支持する第1支持面と、前記第2支持部に対向して配置され、前記第2コイルばねの一端部を支持する第2支持面とを有しており、
前記第1コイルばねが圧縮されて所定量縮んだ状態から、前記第2コイルばねが縮むように構成されていることを特徴とするばね組立体。
【請求項2】
前記第1支持部から前記第2支持部材に向けて、複数の第1延出部が延出しており、該第1延出部に前記第1保持部が形成され、且つ、前記第2支持部から前記第1支持部材に向けて、複数の第2延出部が延出しており、該第2延出部に前記第2保持部が形成されており、
前記第1延出部及び前記第2延出部は、前記第1コイルばね及び前記第2コイルばねの軸方向から見たときに、重ならない位置となるように配置されている請求項1記載のばね組立体。
【請求項3】
前記中間部材は、前記第1保持部に保持される第1突部と、前記第2保持部に保持される第2突部とを有しており、
前記第1保持部は、前記第1コイルばねの軸方向に延び、前記第1突部がスライド可能に係合する第1係合部と、該第1係合部に連通し、前記第1突部を導入する第1導入部とを有しており、
前記第2保持部は、前記第2コイルばねの軸方向に延び、前記第2突部がスライド可能に係合する第2係合部と、該第2係合部に連通し、前記第2突部を導入する第2導入部とを有している請求項1又は2記載のばね組立体。
【請求項4】
前記第1支持部材と前記第2支持部材とを、前記第1コイルばね及び前記第2コイルばねの軸方向から見たときに、前記第1支持部材の外接円と前記第2支持部材の外接円とが共通したものとなっている請求項1又は2記載のばね組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1コイルばね及び第2コイルばねが支持部材で支持されてなる、ばね組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の近接離反可能な部材の間に、複数のコイルばねからなる、ばね組立体を設置して、両部材の近接又は離反時にコイルばねを伸縮させることで、所定の部材にばね力を付与したり振動を吸収したりすることが行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、基盤と振動体との間にばね材を介装させて、振動体の振動を減衰させ、ばね材が、ばね受け治具と、ばね受け治具と振動体との間に介装された第1のばね体と、第1のばね体のばね定数と異なるばね定数を有してばね受け治具と基盤との間に介装された第2のばね体とを備えた、振動装置が記載されている。
【0004】
特許文献1の第1図に示すように、ばね受け治具は、所定長さで延びる筒状部と、該筒状部の延出方向上方に配置された有底部と、筒状部の延出方向下端部から外方に突出した、リング状の鍔部とを有しており、有底部上面及び鍔部下面にはクッション材が設けられている。
【0005】
また、第1のばね体は、筒状部の外周に配置されて、その下端部が鍔部上面に当接して支持されていると共に、上端部が振動体下面に当接して支持されている。更に、第2ばね体は、筒状部の内周に配置されて、その上端部が有底部下面に当接して支持されていると共に、下端部が基盤上面に当接して支持されている。
【0006】
そして、この防振装置においては、振動体から所定圧力が付与されると、まず、第1のばね体だけが圧縮され、有底部上面のクッション体に振動体が当接すると、第1のばねのそれ以上の圧縮が規制され、その後は第2のばね体が圧縮されるようになっており、2段階の異なる荷重特性が得られるようになっている(特許文献1の第3図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1-111837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、上記の振動装置においては、2段階の異なる荷重特定が得られるようになっている。
【0009】
しかし、第1のばね体は、その下端部が、ばね受け治具の鍔部上面に当接しているだけで、上端部も、振動体下面に当接しているだけであり、ばね受け治具や振動体に組付けられてはいない。また、第2のばね体は、その上端部が、ばね受け治具の有底部下面に当接しているだけで、下端部も、基盤上面に当接しているだけであって、ばね受け治具や基盤に組付けられてはいない。
【0010】
上記のように、第1のばね体や、第2のばね体、ばね受け治具、振動体、基盤等の各部材が、互いに組付けられた構成とはなっていないので、基盤と振動体との間に振動装置を設置する際の作業性に、支障が生じるおそれがあった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、2段階の異なる荷重特性を得られると共に、所定箇所に設置する際の作業性を向上させることができる、ばね組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、第1コイルばね及び第2コイルばねが支持部材で支持されてなる、ばね組立体であって、前記支持部材は、前記第1コイルばねを支持する第1支持部材と、前記第2コイルばねを支持する第2支持部材と、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の間に配置された中間部材とを有しており、前記第1支持部材は、前記第1コイルばねの一端部を支持する第1支持部と、前記中間部材を軸方向に所定距離スライド可能に保持する第1保持部とを有しており、前記第2支持部材は、前記第2コイルばねの他端部を支持する第2支持部と、前記中間部材を軸方向に所定距離スライド可能に保持する第2保持部とを有しており、前記中間部材は、前記第1支持部に対向して配置され、前記第1コイルばねの他端部を支持する第1支持面と、前記第2支持部に対向して配置され、前記第2コイルばねの一端部を支持する第2支持面とを有しており、前記第1コイルばねが圧縮されて所定量縮んだ状態から、前記第2コイルばねが縮むように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1コイルばねのストローク量が小さいばねストローク初期では、第1コイルばねの弾性反発力による荷重のみを得ることができ、その後、第2コイルばねも縮むようになると、第1コイルばねの弾性反発力による荷重に加えて、第2コイルばね30の弾性反発力による荷重も得ることができ、2段階の異なる荷重特性を有するばね組立体10を得ることができる。
【0014】
また、中間部材の第1支持面が、第1支持部材の第1支持部に対向配置され、且つ、中間部材が第1保持部にスライド可能に保持されると共に、中間部材の第2支持面が、第2支持部材の第2支持部に対向配置され、且つ、中間部材が第2保持部にスライド可能に保持される。
【0015】
そのため、第1支持部材と第2支持部材とが、中間部材を介してスライド可能に組付けられると共に、第1支持部と第1支持面との間で第1コイルばねが保持され、第2支持部と第2支持面との間で第2コイルばねが保持されるので、第1コイルばね及び第2コイルばねを、第1支持部材、中間部材、第2支持部材によって支持することが可能となる。
【0016】
その結果、両コイル部を含めた全ての部材を一体化したばね組立体を得ることができるので、所定箇所にばね組立体を設置する際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るばね組立体の一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同ばね組立体の組立て斜視図である。
図3】同ばね組立体の平面図である。
図4】同ばね組立体において、他部材から荷重が付与されていない状態における、正面図である。
図5図4の状態での側面図である。
図6図4の状態で、他部材から荷重が付与された場合の、第1状態を示す正面図である。
図7図6の状態での側面図である。
図8図6の状態で、他部材から更に荷重が付与された場合の、第2状態を示す正面図である。
図9図8の状態での側面図である。
図10図8の状態で、他部材から更に荷重が付与された場合の、第3状態を示す正面図である。
図11図10の状態での側面図である。
図12図10の状態で、他部材から更に荷重が付与された場合の、第4状態を示す正面図である。
図13図12の状態での側面図である。
図14】本発明に係るばね組立体において、ストローク(作動量)と荷重との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(ばね組立体の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係るばね組立体の、一実施形態について説明する。
【0019】
図2や、図4図5に示すように、このばね組立体10は、第1コイルばね20及び第2コイルばね30が、支持部材40で支持されてなるものである。
【0020】
この実施形態のばね組立体10は、例えば、図4,5に示すような一対の部材1,7間に設置される。すなわち、図4に示すように、この実施形態におけるばね組立体10は、第1部材1に形成された所定径の配置孔3内に挿入されて配置されると共に、第1部材1の配置孔3の底面5と、この底面5に対して近接離反する第2部材7との間に設置されるようになっている。
【0021】
また、支持部材40は、第1コイルばね20を支持する第1支持部材50と、第2コイルばね30を支持する第2支持部材70と、第1支持部材50及び第2支持部材70の間に配置された中間部材90とを有している。
【0022】
この実施形態における前記第1支持部材50は、第1コイルばね20の一端部21を支持する第1支持部51と、該第1支持部51から第2支持部材70に向けて延出した一対の第1延出部53,53と、中間部材90を軸方向に所定距離スライド可能に保持する第1保持部55とを有している。
【0023】
なお、上記の「軸方向」とは、第1コイルばね20や第2コイルばね30の延出方向や長手方向、更には、ばね組立体10全体の延出方向や長手方向を意味する(以下の説明でも同様)。
【0024】
また、第2支持部材70は、第2コイルばね30の他端部33を支持する第2支持部71と、該第2支持部71から第1支持部材50に向けて延出した一対の第2延出部73,73と、中間部材90を軸方向に所定距離スライド可能に保持する第2保持部75とを有している。
【0025】
更に、中間部材90は、第1支持部51に対向して配置され、第1コイルばね20の他端部23を支持する第1支持面92と、第2支持部71に対向して配置され、第2コイルばね30の一端部31を支持する第2支持面93とを有している。
【0026】
なお、この実施形態の場合、第1部材1が固定されて不動とされており(図4,5参照)、第2部材7が移動することで、第1支持部材50の第1支持部51が、中間部材90の第1支持面92に対して近接離反するようにスライド動作し、且つ、中間部材90が、その第2支持面93を、第2支持部材70の第2支持部71に対して近接離反するようにスライド動作する構成となっている(図4~13参照)。
【0027】
言い換えると、中間部材90を介して間接的に、第1支持部材50の第1支持部51と、第2支持部材70の第2支持部71とが近接離反するように、且つ、一対の第1延出部53,53及び一対の第2延出部73,73の重なり量(ラップ量)が増減するように、第1支持部材50と第2支持部材70とが相対的に軸方向にスライド移動する構成となっている。
【0028】
図1に示すように、この実施形態の中間部材90は、略円形板状をなした基板91を有している。この基板91の、厚さ方向一端面であって第1支持部51に対向する面(図1,4,5中における下面)が、前記第1支持面92をなしている。一方、基板91の、厚さ方向他端面であって第2支持部71に対向する面(図1,4,5中における上面)が、前記第2支持面93をなしている。
【0029】
また、基板91の外周であって、径方向に対向する箇所からは、一対の第1突部95,95が突出している。更に、基板91の外周の径方向対向箇所であって、前記一対の第1突部95,95に直交する位置からは、一対の第2突部97,97が突出している。すなわち、基板91の外周には、周方向に均等な間隔を空けて、複数の突部95,97が突設されている。
【0030】
また、一対の第1突部95,95は、第1支持部材50の一対の保持部55,55に保持される(図2,4参照)。一方、一対の第2突部97,97は、第2支持部材70の第2保持部75,75に保持される(図2,5参照)。
【0031】
上記中間部材90は、第1支持部材50の第1支持部51に対して、軸方向に所定距離スライド可能となっていると共に、第2支持部材70の第2支持部71に対しても、軸方向に所定距離スライド可能となっている。また、この中間部材90は、この中間部材90は、第1支持部材50及び第2支持部材70を、軸方向に互いにスライド移動可能なように抜け止め保持するものである、とも言える。
【0032】
前記第1コイルばね20は、所定線径の円形断面とされた一本の線材を、所定ピッチで巻回して、線材間に隙間を空けて形成されている。第1コイルばね20の軸方向(巻回されて延びる方向)の一端部21が、第1支持部材50の第1支持部51に支持され、軸方向の他端部23が、中間部材90の第1支持面92に支持される(図2,4,5参照)。
【0033】
一方、第2コイルばね30も、第1コイルばね20と同様に、所定線径の円形断面とされた一本の線材を、所定ピッチで巻回して、線材間に隙間を空けて形成されている。第2コイルばね30の軸方向の一端部31が、中間部材90の第2支持面93に支持され、軸方向の他端部33が、第2支持部材70の第2支持部71に支持される(図2,4,5参照)。
【0034】
また、図1に示すように、第2コイルばね30を形成する線材の線径は、第1コイルばね20を形成する線材の線径よりも大きい。そのため、第2コイルばね30の弾性反発力(ばね力、弾性付勢力とも言える)は、第1コイルばね20の弾性反発力よりも大きく、且つ、第2コイルばね30のばね定数が、第1コイルばね20のばね定数よりも大きくなるように構成されている。
【0035】
更に、各ばね20,30に荷重が何ら付与されていない状態での、第2コイルばね30の自由長は、第1コイルばね20の自由長よりも長く形成されている(図1参照)。
【0036】
次に、第1支持部材50について詳述する。
【0037】
この実施形態における第1支持部材50は、所定方向に長く延びる略長板状をなすと共に、延出方向両端部が円弧状をなした第1支持部51を有している。この第1支持部51の内面(第1コイルばね20の一端部21との対向面)に、第1コイルばね20の一端部21が当接して支持される。
【0038】
また、第1支持部51の延出方向中央部には、円形状の貫通孔51aが形成されている。更に、第1支持部51の、貫通孔51aの内周縁部からは、略円環状をなした環状突部52が、第2支持部材70側に向けて突設されている。
【0039】
そして、環状突部52が、第1コイルばね20の一端部21の内側に挿入されて、第1コイルばね20の外径側に向けて広がる方向にカシメられることで、環状突部52が第1コイルばね20の一端部21の内周部分に係合する。その結果、第1コイルばね20の一端部21は、環状突部52を介して、第1支持部51に抜け止め状態で支持される。
【0040】
また、第1支持部51の延出方向中央部であって、第1支持部51の幅方向(延出方向に直交する方向)の両側辺からは、第2支持部材70に向けて、一対の第1延出部53,53が互いに平行に延出されている。各第1延出部53は、第1支持部51よりも幅狭の略長板状をなしている。
【0041】
図2に示すように、一対の第1延出部53,53は、第2支持部材70の一対の第2延出部73,73の間に、軸方向にスライド可能に入り込むように配置されるようになっている。
【0042】
そして、各第1延出部53の延出方向の先端部53aに、第1保持部55が設けられている。この第1保持部55は、第1コイルばね20の軸方向に延び、且つ、第1突部95がスライド可能に係合する第1係合部56と、該第1係合部56に連通し、第1突部95を導入する第1導入部57とを有している。
【0043】
図2,4に示すように、前記第1係合部56は、第1延出部53の延出方向途中であって、第1延出部53の延出方向に直交して配置された第1端部58と、該第1端部58の幅方向両端から、第1延出部53の延出方向先端に向けて次第に広がるように傾斜しつつテーパ状に延びる一対のテーパ状部59,60と、該一対のテーパ状部59,60の延出方向先端から延出方向に沿って互いに平行に直線状に延びる一対の直線状部61,62と、一方の直線状部61の延出方向先端から、第1端部58に対して平行に且つ第1端部58よりも長く延びる第2端部63とからなり、全体として第1延出部53の延出方向に長く延びる異形の長孔状をなしている。
【0044】
なお、上記の第1係合部56は、第1延出部53の厚さ方向に貫通した貫通孔となっている。
【0045】
上記の、互いに平行に配置された第1端部58と第2端部63との間隔の範囲内で、第1突部95が、コイルばね20,30の軸方向にスライド可能となる(図4,6,8,10,12参照)。すなわち、第1係合部56の第1端部58及び第2端部63は、第1突部95を介して、中間部材90と第1支持部材50との相対的なスライド動作を規制する、ストッパーとなっている。
【0046】
また、一対のテーパ状部59,60は、第1コイルばね20を介しての、第1支持部材50と中間部材90との組立て時(組付け時とも言える)において、第1導入部57から導入した第1突部95を第1端部58側にガイドしたり、或いは、第1端部58から離間した第1突部95を、再び第1端部58側に近接移動する際にガイドしたりする部分となっている。
【0047】
更に、第1端部58と一対のテーパ状部59,60との連結部分(境界部分、隅部分とも言える)、及び、直線状部61と第2端部63との連結部分には、凹状曲面(R状面)をなした曲面部64,65が設けられている。なお、曲面部65の方が、曲面部64よりも大きな半径で設けられている。
【0048】
そして、一対の曲面部64,64は、中間部材90がコイルばね20,30の径方向に横ずれ移動等した場合に、第1突部95の角部の食い込み等を抑制して、第1突部95のスライド動作性能を担保する。
【0049】
一方、曲面部65は、中間部材90がコイルばね20,30の径方向に横ずれ移動等した場合に、第1突部95を押圧して、その横ずれを是正する。その結果、第1突部95を第2端部63上に位置させやすくして、第2端部63と第1突部95との接触面積を確保して、第2端部63と第1突部95との間に生じる、コイルばね20,30からのばね力を伝達させやすくする。
【0050】
また、第1導入部57は、第1係合部56の他方の直線状部62に隣接する位置に設けられた第1内縁部67と、第1係合部56の第2端部63に隣接する位置に設けられた第2内縁部68とを有しており、第1延出部53の延出方向に直交する方向に開口する、切欠き溝状をなすように形成されている。すなわち、第1導入部57は、第1係合部56の内側空間と、第1延出部53の外側空間とを互いに連通させるように開口している。
【0051】
なお、上記第1導入部57は、第1係合部56に対して、第1延出部53の延出方向先端寄りに偏位した箇所に、形成されている。
【0052】
また、両内縁部67,68は、共に丸みを帯びた円弧状をなしている。そのため、第1突部95を、第1導入部57を通過させて、第1係合部56に導入するときに、その導入途中において、第1突部95が第1導入部57に引っ掛かりにくくなり、スムーズに第1係合部56内に導入可能となっている。
【0053】
更に、第2内縁部68は、第1係合部56の第2端部63に対して、第1延出部53の軸方向基端側に出っ張るように突出しており、第1導入部57の開口幅(第1延出部53の延出方向に沿った長さ)が、第2内縁部68が出っ張り形状でない場合と比べて、狭くなる構成となっている。
【0054】
上記のように、第1導入部57が幅狭に構成されているため、第1導入部57を通じて、一旦、第1係合部56に第1突部95が導入されてスライド可能に係合保持された後に、中間部材90がコイルばね20,30の径方向に横ずれ移動等したとしても、第1導入部57から第1突部95が抜け外れにくくなる。
【0055】
また、図1に示すように、一対の第1延出部53,53に設けた第1導入部57,57の、第1延出部53の外側空間に連通する側方開口の向きは、互いに逆向きとなるように設けられている。
【0056】
すなわち、一方の第1延出部53の第1導入部57の側方開口は、第1延出部53の幅方向の一側辺53bに向いているのに対して(図1中の紙面手前側の第1導入部57は、右側が開口している)、他方の第1延出部53の第1導入部57の側方開口は、第1延出部53の幅方向の他側辺53cに向いている(図1中の紙面奥側の第1導入部57は、左側が開口している)。
【0057】
次に、第2支持部材70について詳述する。
【0058】
この実施形態における第2支持部材70は、所定方向に長く延びる略長板状をなすと共に、延出方向両端部が円弧状をなした第2支持部71を有している。この第2支持部71の内面(第2コイルばね30の他端部33との対向面)に、第2コイルばね30の他端部33が当接して支持される。
【0059】
また、第2支持部71の延出方向中央部には、円形状の貫通孔71aが形成されている。更に、第2支持部71の、貫通孔71aの内周縁部からは、略円環状をなした環状突部72が、第1支持部材50側に向けて突設されている。
【0060】
そして、環状突部72が、第2コイルばね30の他端部33の内側に挿入されて、第2コイルばね30の外径側に向けて広がる方向にカシメられることで、環状突部72が第2コイルばね30の他端部33の内周部分に係合する。その結果、第2コイルばね30の他端部33は、環状突部72を介して、第2支持部71に抜け止め状態で支持される。
【0061】
また、両コイルばね20,30を支持部材40で支持して、ばね組立体10を組立てた状態において(この状態を以下の説明において、単に「ばね組立て状態」ともいう)、第2支持部71は、第1支持部材50の第1支持部51に対して交差するように配置されるようになっている(図2参照)。この実施形態では、上記ばね組立て状態で、第2支持部71の延出方向が、第1支持部51の延出方向に対して直交するように配置される(図2,3参照)。
【0062】
更に、第2支持部71の延出方向中央部であって、第2支持部71の幅方向(延出方向に直交する方向)の両側辺からは、第1支持部材50に向けて、一対の第2延出部73,73が互いに平行に延出されている。各第2延出部73は、第2支持部71よりも幅狭の略長板状をなしている。また、各第2延出部73は、第1支持部材50の第1延出部53よりも長く延びている。
【0063】
なお、図2に示すように、一対の第2延出部73,73は、第1支持部材50の一対の第1延出部53,53の間に、軸方向にスライド可能に入り込むように配置されるようになっている。
【0064】
また、図4~13に示すように、第1支持部材50の第1支持部51が、中間部材90の第1支持面92に対して近接方向にスライドし、且つ、中間部材90が、その第2支持面93を、第2支持部材70の第2支持部71に対して近接方向にスライドした場合に、
一対の第2延出部73,73の、一対の第1延出部53,53に対する軸方向の重なり量(ラップ量)が次第に増大するようになっている。
【0065】
そして、各第2延出部73の延出方向の先端部73aに、第2保持部75が設けられている。この第2保持部75は、第2コイルばね30の軸方向に延び、且つ、第2突部97がスライド可能に係合する第2係合部76と、該第2係合部76に連通し、第2突部97を導入する第2導入部77とを有している。
【0066】
図2,5に示すように、前記第2係合部76は、第2延出部73の延出方向途中であって、第2延出部73の延出方向に直交して配置された第1端部78と、該第1端部78の幅方向両端から、第2延出部73の延出方向先端に向けて次第に広がるように傾斜しつつテーパ状に延びる一対のテーパ状部79,80と、テーパ状部80の延出方向先端から延出方向に沿って直線状に延びる直線状部81と、該直線状部81の延出方向先端から、第1端部78に対して平行に且つ第1端部78よりも長く延びる第2端部83とからなり、全体として第2延出部73の延出方向にやや長く延びる異形の孔となっている。
【0067】
上記の第2係合部76は、第2延出部73の厚さ方向に貫通した貫通孔となっている。また、図1に示すように、第2係合部76は、第1支持部材50の第1係合部56よりも短く形成されている。
【0068】
上記の、互いに平行に配置された第1端部78と第2端部83との間隔の範囲内で、第2突部97が、コイルばね20,30の軸方向にスライド可能となる(図5,7,9,11,13参照)。すなわち、第2係合部76の第1端部78及び第2端部83は、第2突部97を介して、中間部材90と第2支持部材70との相対的なスライド動作を規制する、ストッパーとなっている。
【0069】
また、一対のテーパ状部79,80は、第2コイルばね30を介しての、第2支持部材70と中間部材90との組立て時において、第2導入部77から導入した第2突部97を第1端部78側にガイドしたり、或いは、第1端部78から離間した第2突部97を、再び第1端部78側に近接移動する際にガイドしたりする部分となっている。
【0070】
更に、第1端部78と一対のテーパ状部79,80との連結部分、及び、直線状部81と第2端部83との連結部分には、凹状曲面をなした曲面部84,85が設けられている。なお、曲面部85の方が、曲面部84よりも大きな半径で設けられている。
【0071】
そして、一対の曲面部84,84は、中間部材90がコイルばね20,30の径方向に横ずれ移動等した場合に、第2突部97の角部の食い込み等を抑制して、第2突部97のスライド動作性能を担保する。
【0072】
一方、曲面部85は、中間部材90がコイルばね20,30の径方向に横ずれ移動等した場合に、第2突部97を押圧して、その横ずれを是正する。その結果、第2突部97を第2端部83上に位置させやすくして、第2端部83と第2突部97との接触面積を確保して、第2端部83と第2突部97との間に生じる、コイルばね20,30からのばね力を伝達させやすくする。
【0073】
また、第2導入部77は、第2係合部76の一方のテーパ状部79に隣接する位置に設けられた第1内縁部87と、第2係合部76の第2端部83に隣接する位置に設けられた第2内縁部88とを有しており、第2延出部73の延出方向に直交する方向に開口する、切欠き溝状をなすように形成されている。すなわち、第2導入部77は、第2係合部76の内側空間と、第2延出部73の外側空間とを互いに連通させるように開口している。
【0074】
なお、上記第2導入部77は、第1係合部56に対して、第2延出部73の延出方向先端寄りに偏位した箇所に形成されている。
【0075】
また、第1内縁部87は、幅方向の外側縁部87aが丸みを帯びた円弧状をなしている。更に、第2内縁部88は、幅方向の外側縁部88aが丸みを帯びた円弧状をなしていると共に、幅方向の内側縁部88bが、第2端部83に向けて次第に高さが低くなるテーパ面状をなしている。
【0076】
両内縁部87,88の外側縁部87a,88aによって、第2突部97を、第2導入部77を通過させて、第2係合部76に導入するときに、その導入途中において、第2突部97が第2導入部77に引っ掛かりにくくなり、スムーズに第2係合部76内に導入可能となっている。
【0077】
また、第2内縁部88の内側縁部88bは、第2コイルばね30を介しての、第2支持部材70と中間部材90との組立て時に、第2導入部77から導入した第2突部97を第2端部83側へと迅速にガイドする。
【0078】
更に、第2内縁部88は、第2係合部76の第2端部83に対して、第2延出部73の軸方向基端側に出っ張るように突出しており、第2導入部77の開口幅(第2延出部73の延出方向に沿った長さ)が、第2内縁部88が出っ張り形状でない場合と比べて、狭くなる構成となっている。
【0079】
上記のように、第2導入部77が幅狭に構成されているため、第2導入部77を通じて、一旦、第2係合部76に第2突部97が導入されてスライド可能に係合保持された後に、中間部材90がコイルばね20,30の径方向に横ずれ移動等したとしても、第2導入部77から第2突部97が抜け外れにくくなる。
【0080】
また、図1に示すように、一対の第2延出部73,73に設けた第2導入部77,77の、第2延出部73の外側空間に連通する側方開口の向きは、互いに逆向きとなるように設けられている。
【0081】
すなわち、一方の第2延出部73の第2導入部77の側方開口は、第2延出部73の幅方向の一側辺73bに向いているのに対して(図1中の紙面右側の第2導入部77は、左側が開口している)、他方の第2延出部73の第2導入部77の側方開口は、第2延出部73の幅方向の他側辺73cに向いている(図1中の紙面左側の第2導入部77は、右側が開口している)。
【0082】
次に、第1支持部材50と第2支持部材70との関係における構造・構成について、説明する。
【0083】
図2~4等に示すように、第1延出部53及び第2延出部73は、第1コイルばね20及び第2コイルばね30の軸方向から見たときに、重ならない位置となるように配置されている。
【0084】
具体的には、第1支持部材50の一対の第1延出部53,53と、第2支持部材70の一対の第2延出部73,73とは、互いに直交するように配置されて、延出部53,73どうしが重ならずに干渉しないように位置する構成となっている。
【0085】
すなわち、図5に示すように、ばね組立体10を側面から見たときに、一対の第1延出部53,53の間に、一対の第2延出部73,73が位置し、且つ、図4に示すように、ばね組立体10を正面から見たときに、一対の第2延出部73,73の間に、一対の第1延出部53,53が位置しており、ばね組立体10を正面又は側面から見たときに延出部53,73どうしが軸方向には重なるものの軸方向に直交する方向(幅方向)には重ならないレイアウトとなっている。
【0086】
また、一対の支持部材の各々の延出部どうしが、互いに相手側の延出部に対して干渉しないように軸方向にスライド可能とされた構成となっている、とも言える。
【0087】
その結果、中間部材90を介しての、第1支持部材50及び第2支持部材70の軸方向の相対的なスライド動作(軸方向移動)の際に、一方の延出部が他方の延出部に干渉することを防ぎ、両支持部材50,70のスライド動作が確実になされるように構成されている。
【0088】
また、図3に示すように、第1支持部材50と第2支持部材70とを、第1コイルばね20及び第2コイルばね30の軸方向から見たときに、第1支持部材50の外接円と前記第2支持部材の外接円とが共通したものとなっている。
【0089】
より具体的には、第1支持部材50を構成する第1支持部51の外接円(第1支持部51の延出方向両端部の円弧状の外周に対する外接円)と、第2支持部材70を構成する第2支持部71の外接円(第2支持部71の延出方向両端部の円弧状の外周に対する外接円)とが、両支持部材50,70を軸方向から見たときに共通した外接円Pとなっている。
【0090】
以上説明した、ばね組立体10は、図2に示すように、第1コイルばね20及び第2コイルばね30が、支持部材40を構成する、第1支持部材50、第2支持部材70、及び中間部材90を介して、直列的に支持される構造となっている。
【0091】
また、このばね組立体10においては、第1コイルばね20は、第1支持部51と第1支持面92との間に保持され、第2コイルばね30は、第2支持部71と第2支持面93との間に保持されており、第1コイルばね20が圧縮されて所定量縮んだ状態から、第2コイルばね30が縮むように構成されている。
【0092】
更に、この実施形態におけるばね組立体10は、第1コイルばね20は、第1支持部51と第1支持面92との間に保持され、第2コイルばね30は、第2支持部71と第2支持面93との間に圧縮状態で保持されており、第1コイルばね20が圧縮されて所定量縮んだ状態から、圧縮状態の第2コイルばね30が更に縮むように構成されている。
【0093】
次に、ばね組立体10の、コイルばね20,30の伸縮動作等について、図4~14を参照して説明する。
【0094】
図2,4,5には、両コイルばね20,30を支持部材40で支持して、ばね組立体10を組立てた状態が示されている。また、この実施形態におけるばね組立体10は、図4に示すような第1部材1の配置孔3内に挿入配置されて、第1部材1の底面5に第2支持部材70の第2支持部71が当接支持されると共に、第1支持部材50の第1支持部51が第2部材7上に載置されるようになっている。
【0095】
また、図4,5に示すばね組立て状態において、第1コイルばね20は、その一端部21が第1支持部51に支持され、他端部23が第1支持面92に支持されて、第1支持部51と第1支持面92との間にて、縮んで圧縮された状態で保持されている。また、第2コイルばね30は、その一端部31が第2支持面93に支持され、他端部33が第2支持部71に支持されて、第2支持部71と第2支持面93との間にて、縮んで圧縮された状態で保持されている。
【0096】
更に、圧縮保持された第1コイルばね20の弾性反発力(ばね力、弾性付勢力とも言える)によって、第1支持部51と第1支持面92とが互いに離間するようになるが、この際、図4に示すように、第1突部95が第1係合部56の第2端部63に当接することで、第1支持部51と第1支持面92とのそれ以上の離間が規制される(第1支持部51と第1支持面92とが最大限離間した状態となっている)。
【0097】
また、圧縮保持された第2コイルばね30の弾性反発力によって、第2支持部71と第2支持面93とが互いに離間するようになるが、この際、図5に示すように、第2突部97が第2係合部76の第2端部83に当接することで、第2支持部71と第2支持面93とのそれ以上の離間が規制される(第2支持部71と第2支持面93とが最大限離間した状態となっている)。
【0098】
なお、図4,5に示すばね組立て状態では、ばね組立体10に、他部材からの押圧力(荷重)が作用しておらず、両コイルばね20,30のストローク量(縮み量、圧縮量)が小さい、ばねストローク初期の状態が示されている。この場合、図14の符号S1で示すように、主として第1コイルばね20の弾性反発力による荷重が作用した状態となっている。
【0099】
また、図6,7には、ばね組立体10に他部材からの押圧力が作用した場合の、第1状態が示されている。更に図8,9には、ばね組立体10に他部材からの押圧力が作用した場合の、第2状態が示されている。また、図10,11は、ばね組立体10に他部材からの押圧力が作用した場合の、第3状態が示されている。更に図12,13は、ばね組立体10に他部材からの押圧力が作用した場合の、第4状態が示されている。
【0100】
また、図14には、この実施形態におけるばね組立体10の、コイルばねのストローク量(作動量)と、荷重(ばね荷重)との関係が示されている。
【0101】
そして、図4,5に示すコイルばね20,30のばねストローク初期状態から、ばね組立体10に対して他部材からの押圧力が作用した場合、すなわち、第2部材7が、第1部材1の配置孔3の底面5に対して近接する方向に移動すると、図6に示すように、第1コイルばね20の弾性反発力に抗し、第1支持面92に対して第1支持部51が近接する方向にスライド移動して、第1突部95が第1係合部56の第2端部63から離間し、第1コイルばね20が縮む。
【0102】
なお、図7に示すように、第2突部97は第2係合部76の第2端部83に当接した状態が維持されて、第2コイルばね30自体は縮まないようになっている。
【0103】
そして、図6,7に示す状態では、図14の符号S2で示すように、第1コイルばね20のストローク量が次第に増加すると共に、第1コイルばね20の弾性反発力によって荷重が増加する。
【0104】
更に、第2部材7が配置孔3の底面5側に近接移動すると、図8に示すように、第1コイルばね20の弾性反発力に抗し、第1支持面92に対して第1支持部51が更に近接方向にスライド移動し、第1突部95が第1係合部56の第1端部58に当接して、第1支持部51のスライド移動が規制されると共に、第1コイルばね20が最大限に縮む。
【0105】
なお、この状態でも、図9に示すように、第2突部97は第2係合部76の第2端部83に当接した状態が維持されて、第2コイルばね30自体は縮まないようになっている。
【0106】
そして、図8,9に示す状態では、図14の符号S3で示すように、第1コイルばね20のストローク量が最も増加して最大となり、それ以上の縮みが規制されると共に、第1コイルばね20の弾性反発力によって荷重が増加し、更に、第1突部95が第1係合部56の第1端部58に当接して押圧されることで、第1支持部材50からの反作用に基づく荷重によって、荷重が急上昇する。
【0107】
更に、第2部材7が配置孔3の底面5側に近接移動すると、図11に示すように、第2コイルばね30の弾性反発力に抗し、中間部材90が、その第2支持面93を第2支持部71に近接する方向にスライド移動して(第2支持面93に対して第2支持部71が近接する方向にスライド移動する、とも言える)、第2突部97が第2係合部76の第1端部78から離間し、第2コイルばね30が縮む。
【0108】
なお、図10に示すように、第1突部95は第1係合部56の第1端部58に当接した状態が維持されて、第1コイルばね20自体はそれ以上縮まないようになっている。ただし、第1コイルばね20自体は縮んだ状態に維持されているので、第1コイルばね20の弾性反発力による荷重は付与される。
【0109】
そして、図10,11に示す状態では、第1コイルばね20の弾性反発力による荷重のみから、第1コイルばね20の弾性反発力による荷重と、第2コイルばね30の弾性反発力によるばね荷重との、合算した荷重に切り替わることになるので、図14の符号S4で示すように、第2コイルばね30のストローク量が次第に増加すると共に荷重が増加する。
【0110】
更に、第2部材7が配置孔3の底面5側に近接移動すると、図13に示すように、第2コイルばね30の弾性反発力に抗し、中間部材90が、その第2支持面93を第2支持部71に近接する方向に更にスライド移動し、第2突部97が第2係合部76の第1端部78に当接して、中間部材90のスライド移動が規制されると共に(第2支持部71のスライド移動が規制されると、とも言える)、第2コイルばね30が最大限に縮む。
【0111】
なお、この状態でも、図12に示すように、第1突部95は第1係合部56の第1端部58に当接した状態が維持されて、第1コイルばね20自体は縮まないようになっている。
【0112】
そして、図12,13に示す状態では、図14の符号S5で示すように、第2コイルばね30のストローク量が最も増加して最大となり、それ以上の縮みが規制されると共に、変わらずに付与される第1コイルばね20の弾性反発力と、第2コイルばね30の弾性反発力とによって荷重が増加する。
【0113】
(変形例)
本発明を構成する第1コイルばね、第2コイルばね、支持部材、第1支持部材、第1支持部、第1延出部、第1保持部、第1係合部、第1導入部、第2支持部材、第2支持部、第2延出部、第2保持部、第2係合部、第2導入部、中間部材、第1突部、第2突部等の、形状や、構造、レイアウト等は、上記態様に限定されるものではない。
【0114】
また、ばね組立体10は、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車の、蓄電デバイス用のケースに配置される圧力解放弁に用いたり、自動車のオートマチックトランスミッションに組み込まれる油圧制御用のピストンを付勢するための、ピストンリターン用のバネとして用いたり、或いは、クラッチやブレーキのリターン用バネとして用いたりすることができる。ただし、本発明に係るばね組立体の適用箇所や設置箇所は、特に限定されるものではない。
【0115】
この実施形態における第1支持部材50や第2支持部材70は、一対の第1延出部53,53や一対の第2延出部73,73を有しているが、第1延出部や第2延出部としては、3個や4個、或いはそれ以上であってもよく、中間部材を介しての両支持部材のスライド動作に支障がなければよい。また、第1延出部や第2延出部は、1個のみであってもよい(中間部材の径方向対向位置に第1突部及び第2突部を1個ずつ設けて、第1延出部や第2延出部がそれぞれ係合するような片がかり構造)。
【0116】
また、この実施形態では、コイルばね20,30を、第1支持部材50、第2支持部材70、中間部材90によって直列的に支持しているが、第1支持部材、第2支持部材、中間部材の他に、更に別の部材を設けて、3個以上のコイルばねを直列的に支持する構造としてもよい。
【0117】
なお、第1コイルばね及び第2コイルばねが直列的に支持されるとは、支持部材によって、第1コイルばね及び第2コイルばねが、その軸心が一致又はほぼ一致するように同軸的に配置されて、第1コイルばね及び第2コイルばねの軸方向の向きが一致して、全体として第1コイルばね及び第2コイルばねが、あたかも真っ直ぐに延びるように配置された状態を意味する。
【0118】
更に、第1係合部や第2係合部としては、例えば、円形状や、楕円形状、小判形状、三角形状、四角形状、五角形状等をなしていてもよく、第1突部や第2突部をスライド可能に保持できればよい。また、第1係合部や第2係合部の隅部は、所定角度の面取り形状(テーパ形状)としてもよい。
【0119】
また、この実施形態における第1係合部56及び第2係合部76は、第1延出部53や第2延出部73の厚さ方向に貫通した孔状をなしているが、厚さ方向に所定深さで凹んだ凹部であってよく(厚さ方向に貫通しない形状)、中間部材の第1,第2突部が係合可能であればよい。
【0120】
更に、この実施形態では、コイルばね20,30の端部は、環状突部52,72をカシメることで、各支持部材50,70の支持部51,71に固定支持させているが、カシメではなく、例えば、溶接や、溶着、接着剤等で固定支持させてもよい。
【0121】
また、この実施形態における第1支持部材50、第2支持部材70、中間部材90は、金属から形成されているが、これらの部材の一部又は全部を、合成樹脂から形成してもよい。
【0122】
更に、この実施形態においては、第1コイルばね20及び第2コイルばね30は、支持部材40で支持された際に、圧縮されてやや縮んだ状態で支持されているが、いずれか一方のコイルばね20,30、又は、両方のコイルばね20,30を縮ませずに自由長さで支持するようにしてもよい。
【0123】
また、この実施形態では、第1部材1に設けた配置孔3の底面5に対して、第2部材7が近接離反するように移動して(第1部材1側が固定され、第2部材7側が移動する)、第1支持部材50の第1支持部51や、第2支持部材70の第2支持部71、中間部材90の基板91が、互いに近接離反するようにスライド動作する構成となっているが、例えば、第2部材7側を固定し、第1部材1側を移動するようにしてもよい。
【0124】
すなわち、一対の部材が相対移動可能であって、一対の部材間に設置される、ばね組立体を構成する第1支持部材、第2支持部材、中間部材が相対的にスライド動作可能であればよい。
【0125】
(作用効果)
次に、上記構造からなる、ばね組立体10の作用効果について説明する。
【0126】
このばね組立体10を組立てる場合は、例えば、次のようにする。
【0127】
まず、第1支持部材50の第1支持部51に、第1コイルばね20の一端部21を抜け止め支持して、第1支持部材50と第1コイルばね20とを一体化すると共に、第2支持部材70の第2支持部71に、第2コイルばね30の他端部33を抜け止め支持して、第2支持部材70と第2コイルばね30とを一体化しておく。
【0128】
その後、第1支持部材50に抜け止め支持された第1コイルばね20の他端部23を、中間部材90の第1支持面92で押し込んでやや縮めた状態としながら、中間部材90の一対の第1突部95,95を、一対の第1延出部53,53の第1導入部57,57の側方開口から導入、すなわち、軸方向に直交する横方向から導入していき、一対の第1突部95,95を一対の第1係合部56,56内に配置して係合させる。
【0129】
これによって、一対の第1突部95,95が、一対の第1保持部55,55にスライド可能に保持されると共に、第1コイルばね20の他端部23が、中間部材90の第1支持面92に支持されて、第1コイルばね20がやや圧縮された状態で支持される。
【0130】
その結果、第1支持部材50の第1支持部51及び中間部材90の第1支持面92によって、第1コイルばね20の両端部21,23が支持される。すなわち、第1コイルばね20は、その軸方向が、第1支持部51及び第1支持面92の面方向に直交するように、第1支持部材50及び中間部材90に支持されて、第1コイルばね20と、第1支持部材50と、中間部材90とが組立てられる。
【0131】
その後、第2支持部材70の一対の第2延出部73,73を、第1支持部材50の一対の第1延出部53,53の間に位置するように位置合わせすると共に、第2支持部材70に抜け止め支持された第2コイルばね30の一端部31を、中間部材90の第2支持面93に押し当ててやや縮めた状態としながら、一対の第1延出部53,53の間に一対の第2延出部73,73をスライド配置し、一対の第2突部97,97を、一対の第2延出部73,73の第2導入部77,77の側方開口から導入して、一対の第2突部97,97を一対の第2係合部76,76内に配置して係合させる。
【0132】
これによって、一対の第2突部97,97が、一対の第2保持部75,75にスライド可能に保持されると共に、第2コイルばね30の一端部31が、中間部材90の第2支持面93に支持されて、第2コイルばね30がやや圧縮された状態で支持される。
【0133】
その結果、第2支持部材70の第2支持部71及び中間部材90の第2支持面93によって、第2コイルばね30の両端部31,33が支持される。すなわち、第2コイルばね30は、その軸方向が、第2支持部71及び第2支持面93の面方向に直交するように、第2支持部材70及び中間部材90に支持されて、第2コイルばね30と、第2支持部材70と、中間部材90とが組立てられる。
【0134】
そして、既に組立てられた第1コイルばね20、第1支持部材50、及び中間部材90と合わせて、図2に示すように、ばね組立体10全体が組立てられるようになっている。
【0135】
また、上記状態では、各支持部材50,70の支持部51,71、及び、中間部材90の両支持面92,93の面方向に対して、第1コイルばね20及び第2コイルばね30が直交するように同軸的に配置、すなわち、第1コイルばね20と第2コイルばね30とが直列的に配置されて、全体として両コイルばね20,30が真っ直ぐに延びるように配置されて、第1支持部材50、第2支持部材70、中間部材90によって支持された状態で、ばね組立体10が組立てられている。
【0136】
なお、上記説明では、第1コイルばね20と、第1支持部材50と、中間部材90とを組立てた後、第2コイルばね30と、第2支持部材70と、中間部材90とを組立てているが、例えば、第2コイルばね30と、第2支持部材70と、中間部材90とを組立てた後、第1コイルばね20と、第1支持部材50と、中間部材90とを組立ててもよく、組立て順序は特に限定されない。
【0137】
そして、このばね組立体10においては、第1コイルばね20は、第1支持部51と第1支持面92との間に保持され、第2コイルばね30は、第2支持部71と第2支持面93との間に保持されており(図2,4,5参照)、第1コイルばね20が圧縮されて所定量縮んだ状態から(図8,9及び図14のS3参照)、第2コイルばね30が縮むように構成されている(図10~13及び図14のS4,S5参照)。
【0138】
そのため、第1コイルばね20のストローク量が小さいばねストローク初期では、第1コイルばね20の弾性反発力による荷重のみを得ることができ、その後、第2コイルばね30も縮むようになると、第1コイルばね20の弾性反発力による荷重に加えて、第2コイルばね30の弾性反発力による荷重も得ることができ、2段階の異なる荷重特性を有するばね組立体10を得ることができる。
【0139】
すなわち、図14において、第1コイルばね20の荷重のみが作用する、S1、S2、S3の範囲に対して、第1コイルばね20の荷重に加えて第2コイルばね30の荷重も作用する、S4,S5の範囲においては、グラフの直線の傾きが異なっており、2段階の異なる荷重特性となっている。
【0140】
また、このばね組立体10においては、中間部材90の第1支持面92が、第1支持部材50の第1支持部51に対向配置され、且つ、中間部材90が第1保持部55にスライド可能に保持されると共に、中間部材90の第2支持面93が、第2支持部材70の第2支持部71に対向配置され、且つ、中間部材90が第2保持部75にスライド可能に保持される。
【0141】
そのため、第1支持部材50と第2支持部材70とが、中間部材90を介してスライド可能に組付けられると共に、第1支持部51と第1支持面92との間で第1コイルばね20が保持され、第2支持部71と第2支持面93との間で第2コイルばね30が保持される。
【0142】
その結果、第1コイルばね20及び第2コイルばね30を、第1支持部材50、第2支持部材70、中間部材90によって直列的に支持することが可能となるので、両コイルばね20,30を含めた全ての部材を一体化したばね組立体10を得ることができる。したがって、所定箇所にばね組立体10を設置する際の作業性を向上させることができる。
【0143】
ところで、ばね組立体10を、上述したように、電気自動車(EV)等の蓄電デバイス用のケースに配置される圧力解放弁に用いた場合には、ケース内圧が上昇したときに、ケース内の圧力を低下させるために、開口から弁を開く構成とする。
【0144】
この際、弁が開口から過剰に開くと、ケース内圧が過度に低下するため、弁としては所定のスライド量で停止する必要があるが、バッテリーの熱暴走等によりケース内圧が過度に上昇した場合、ケース内圧を迅速に低下させる必要がある。
【0145】
このような場合は、例えば、ケースに、荷重特性の異なるばね組立体を複数設置することによって対応可能とはなる(例えば、ばね荷重の低いばね組立体と、ばね荷重の高いばね組立体との、2つを設置する)。そして、圧力の上昇速度が低い場合には、荷重の低いばね組立体によって開口を開弁させ、圧力の上昇速度が速い場合には、荷重の高いばね組立体によって開口を迅速に開弁させる。
【0146】
しかし、上記の場合には、2個のばね組立体をケースに設置しなければならならず、レイアウト的な観点や、設置作業性の点から支障がある。
【0147】
これに対して本発明のばね組立体10においては、1個のばね組立体10のみによって、少なくとも2段階の異なる荷重特性を得られるので、上記のような場合であっても、ケースに1個だけ設置することで、圧力の上昇速度が低い場合も高い場合にも対応することができる。そのため、ケース周辺のレイアウトや設置スペースに余裕を持たせることができると共に、ばね組立体10の設置作業も簡単で面倒がない。
【0148】
また、この実施形態においては、第1支持部51から第2支持部材70に向けて、複数の第1延出部53が延出しており、該第1延出部53に第1保持部55が形成され、且つ、第2支持部71から第1支持部材50に向けて、複数の第2延出部73が延出しており、該第2延出部73に第2保持部75が形成されており、第1延出部53及び第2延出部73は、第1コイルばね20及び第2コイルばね30の軸方向から見たときに、重ならない位置となるように配置されている。
【0149】
上記態様によれば、第1支持部51から延出した複数の第1延出部53、及び、第2支持部71から延出した複数の第2延出部73を利用して、第1支持部材50と第2支持部材70とを中間部材90を介して組付けやすくなるので、第1コイルばね20及び第2コイルばね30を直列的に支持しやすくなり、ばね組立体10の組立て作業性を向上させることができる。
【0150】
また、第1延出部53及び第2延出部73は、第1コイルばね20及び第2コイルばね30の軸方向から見たときに、重ならない位置となるように配置されているので(図2参照)、ばね組立体10を径方向においてコンパクトにすることができる。
【0151】
更に、この実施形態においては、中間部材90は、第1保持部55に保持される第1突部95と、第2保持部75に保持される第2突部97とを有しており、第1保持部55は、第1コイルばね20の軸方向に延び、第1突部95がスライド可能に係合する第1係合部56と、該第1係合部56に連通し、第1突部95を導入する第1導入部57とを有しており、第2保持部75は、第2コイルばね30の軸方向に延び、第2突部97がスライド可能に係合する第2係合部76と、該第2係合部76に連通し、第2突部97を導入する第2導入部77とを有している。
【0152】
上記態様によれば、中間部材90の第1突部95を、第1支持部材50の第1導入部57から導入して、第1係合部56に係合させることで、第1支持部材50と中間部材90とを組付けることができると共に、中間部材90の第2突部97を、第2支持部材70の第2導入部77から導入して、第2係合部76に係合させることで、第2支持部材70と中間部材90とを組付けることができる。
【0153】
すなわち、第1支持部材50や第2支持部材70の各保持部に、中間部材90の第1突部95や第2突部97を導入可能な第1導入部57や第2導入部77をそれぞれ設けたことで、各突部95,97を各導入部に導入して各係合部56,76に係合させるだけの簡単な作業で、第1支持部材50及び中間部材90、第2支持部材70及び中間部材90をそれぞれ組付けることができる。その結果、ばね組立体10の組立て作業性を向上させることができる。
【0154】
また、この実施形態においては、図3に示すように、第1支持部材50と第2支持部材70とを、第1コイルばね20及び第2コイルばね30の軸方向から見たときに、第1支持部材50の外接円と第2支持部材70の外接円とが共通したものとなっている。
【0155】
上記態様によれば、第1支持部材50の外接円と第2支持部材70の外接円とが共通したものとなっているので(図3の外接円P参照)、ばね組立体10を、所定の部材に形成された配置孔3等に挿入して配置する際に、当該配置孔3に対して、ばね組立体10を傾かせずに真っ直ぐに設置することができる。また、配置孔3にばね組立体10を挿入配置する際に、ばね組立体10を挿入しやすくなり、配置孔3に対するばね組立体10の挿入作業性を向上させることができる。
【0156】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0157】
10 ばね組立体
20 第1コイルばね
30 第2コイルばね
40 支持部材
50 第1支持部材
51 第1支持部
53 第1延出部
55 第1保持部
56 第1係合部
57 第1導入部
70 第2支持部材
71 第2支持部
73 第2延出部
75 第2保持部
76 第2係合部
77 第2導入部
90 中間部材
92 第1支持面
93 第2支持面
95 第1突部
97 第2突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14