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特開2024-125877二酸化炭素の吸収放出剤、二酸化炭素の吸収方法、二酸化炭素の放出方法、二酸化炭素の回収方法、及び置換非晶質シリカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125877
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】二酸化炭素の吸収放出剤、二酸化炭素の吸収方法、二酸化炭素の放出方法、二酸化炭素の回収方法、及び置換非晶質シリカ
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20240911BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240911BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240911BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/34 H
B01D53/14 100
C07F7/10 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033994
(22)【出願日】2023-03-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/二酸化炭素のリサイクル・資源化のための新しい触媒プロセス開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山添 誠司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 聡一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 実織
【テーマコード(参考)】
4D020
4G066
4H049
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA07
4D020BA08
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB01
4D020BC01
4D020CA05
4G066AA22C
4G066AB10B
4G066AB13B
4G066AB21B
4G066BA26
4G066BA31
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA03
4G066GA01
4H049VN01
4H049VP10
4H049VP11
4H049VQ35
4H049VQ38
4H049VQ86
4H049VR21
4H049VR43
4H049VR44
4H049VU31
4H049VW01
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の吸収及び放出が可能な二酸化炭素の吸収放出剤であって、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることなく、二酸化炭素の吸収放出剤を製造可能であり、アミノ基を有する基が、化学結合によって支持体に結合した構造を有する、新規の二酸化炭素の吸収放出剤の提供。
【解決手段】置換非晶質シリカを含有する二酸化炭素の吸収放出剤であって、前記置換非晶質シリカは、非晶質シリカ中の同一の前記酸素原子に結合している2個のケイ素原子のうち、一方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、下記一般式(1)で表される基に結合し、他方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記非晶質シリカ中の前記一方のケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有する、二酸化炭素の吸収放出剤。
-R11-(NZ-R12-)NH (1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素の吸収放出剤であって、
前記二酸化炭素の吸収放出剤は置換非晶質シリカを含有し、
前記置換非晶質シリカは、非晶質シリカ中の1個又は2個以上の酸素原子が、他の基で置換された構造を有し、
前記置換非晶質シリカは、前記非晶質シリカ中の同一の前記酸素原子に結合している2個のケイ素原子のうち、一方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、下記一般式(1)
-R11-(NZ-R12-)NH (1)
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基であり、前記R11及びR12中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にアミノ基で置換されていてもよく;Zは水素原子又は下記一般式(13)
-R13-NH (13)
(式中、R13はアルキレン基であり、前記R13中の1個又は2個以上の水素原子はアミノ基で置換されていてもよい。)で表される基であり;nは1以上の整数であり;nが2以上である場合には、n個のR12は互いに同一でも異なっていてもよく、n個のZは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される基に結合し、他方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記非晶質シリカ中の前記一方のケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有し、前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(1)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のアミノ基は、塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のn個の下記一般式(12)
-NZ- (12)
(式中、Zは前記と同じである。)
で表される基は、塩を形成していてもよく、前記nが2以上である場合には、n個の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、
前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、前記置換非晶質シリカ中の前記一般式(1)で表される基の一部が、下記一般式(11)
-R11-X (11)
(式中、R11は前記と同じであり;Xはハロゲン原子である。)
で表される基で置換されていてもよく、前記置換非晶質シリカが前記一般式(11)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(11)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(11)における前記R11中の1個又は2個以上の水素原子がアミノ基で置換されている場合には、前記アミノ基は塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい、二酸化炭素の吸収放出剤。
【請求項2】
前記R11及びR12が、それぞれ独立に炭素数2~8のアルキレン基であり、
前記Zが水素原子であるか、又は前記一般式(13)で表される基であり、かつ前記R13が、前記R11及びR12とは独立に炭素数2~8のアルキレン基である、請求項1に記載の二酸化炭素の吸収放出剤。
【請求項3】
前記nが1~3の整数である、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の吸収放出剤。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される基が、下記式(1)-101~(1)-107
-(CH-(NH-(CH-)NH (1)-101
-(CH-NH-(CH-N((CH-NH)-(CH-NH (1)-102
-(CH-NH-(CH-NH (1)-103
-(CH-NH-(CH-NH (1)-104
-(CH-NH-(CH-NH (1)-105
-(CH-NH-(CH-NH (1)-106
-(CH-NH-(CH-NH (1)-107
のいずれかで表される基、又はその中のイミノ基及びアミノ基が、それぞれ独立に塩を形成している基である、請求項1に記載の二酸化炭素の吸収放出剤。
【請求項5】
二酸化炭素の吸収方法であって、
前記二酸化炭素の吸収方法は、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させることで、前記置換非晶質シリカと、前記二酸化炭素と、の反応物を得る工程(α)を有する、二酸化炭素の吸収方法。
【請求項6】
二酸化炭素の放出方法であって、
前記二酸化炭素の放出方法は、二酸化炭素の放出剤を加熱処理することにより、前記二酸化炭素の放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(β1)を有し、
前記二酸化炭素の放出剤が、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の吸収放出剤が含有する前記置換非晶質シリカと、二酸化炭素と、の反応物を含有する、二酸化炭素の放出方法。
【請求項7】
二酸化炭素の回収方法であって、
前記二酸化炭素の回収方法は、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させることで、前記置換非晶質シリカと、前記二酸化炭素と、の反応物を得る工程(α)と、
前記反応物が得られた後の前記二酸化炭素の吸収放出剤を、加熱処理することにより、前記二酸化炭素の吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(β2)と、を有する、二酸化炭素の回収方法。
【請求項8】
前記工程(α)及び工程(β2)を2回以上繰り返して行う、請求項7に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項9】
非晶質シリカ中の1個又は2個以上の酸素原子が、他の基で置換された構造を有する置換非晶質シリカであって、
前記置換非晶質シリカは、前記非晶質シリカ中の同一の前記酸素原子に結合している2個のケイ素原子のうち、一方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、下記一般式(1)
-R11-(NZ-R12-)NH (1)
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基であり、前記R11及びR12中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にアミノ基で置換されていてもよく;Zは水素原子又は下記一般式(13)
-R13-NH (13)
(式中、R13はアルキレン基であり、前記R13中の1個又は2個以上の水素原子はアミノ基で置換されていてもよい。)で表される基であり;nは1以上の整数であり;nが2以上である場合には、n個のR12は互いに同一でも異なっていてもよく、n個のZは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される基に結合し、他方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記非晶質シリカ中の前記一方のケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有し、前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(1)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のアミノ基は、塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のn個の下記一般式(12)
-NZ- (12)
で表される基は、塩を形成していてもよく、前記nが2以上である場合には、n個の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、
前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、前記置換非晶質シリカ中の前記一般式(1)で表される基の一部が、下記一般式(11)
-R11-X (11)
(式中、R11は前記と同じであり;Xはハロゲン原子である。)
で表される基で置換されていてもよく、前記置換非晶質シリカが前記一般式(11)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(11)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(11)における前記R11中の1個又は2個以上の水素原子がアミノ基で置換されている場合には、前記アミノ基は塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい、置換非晶質シリカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の吸収放出剤、二酸化炭素の吸収方法、二酸化炭素の放出方法、二酸化炭素の回収方法、及び置換非晶質シリカに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素ガスは、温室効果ガスであり、大気中での濃度が上昇することによって、地球温暖化の原因となる。地球上ではこれまでに、文明の進歩によって化石燃料の大量消費が続き、二酸化炭素の排出量が増大し続けてきた。これに対して、植物は光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素を放出する。しかし、世界的規模で森林伐採が進み、植物が大量に失われてきており、二酸化炭素の消費量が減少し続けてきている。その結果、大気中の二酸化炭素の濃度が上昇してきており、温暖化が原因と考えられる様々な弊害が、世界的規模で認められる。このような背景から、大気中の二酸化炭素を直接回収(吸収)する、いわゆるDirect Air Capture(「DAC」と称することがある)に関する技術が、種々検討されている。
【0003】
このような用途で用いるのに好適な、二酸化炭素を吸収し、吸収した二酸化炭素を放出可能な化合物としては、例えば、分子鎖中にアミノ基を有するシランカップリング剤を、シリカ等の支持体に化学結合させた修飾シリカ(例えば、特許文献1~2参照);シリカゲル、活性炭、アルミナ、ゼオライト等にアミンを吸着させたアミン吸着化合物(例えば、特許文献3参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-261670号公報
【特許文献2】国際公開第2016/181997号
【特許文献3】特開平4-200742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アミノ基を有するシランカップリング剤で利用可能なものは、その種類が限定的であるため、特許文献1~2で開示されている修飾シリカは、その構造の自由度が低いという問題点があった。特許文献3で開示されているアミン吸着化合物においては、アミンが支持体に化学結合によって結合していないため、二酸化炭素の吸収又は放出時に、アミンが支持体から脱離し易く、アミン吸着化合物の安定性が低いという問題点があった。
【0006】
本発明は、二酸化炭素の吸収及び放出が可能な二酸化炭素の吸収放出剤であって、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることなく、二酸化炭素の吸収放出剤を製造可能であり、かつ、アミノ基を有する基が、化学結合によって支持体に結合した構造を有する、新規の二酸化炭素の吸収放出剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、前記二酸化炭素の吸収放出剤を用いた二酸化炭素の吸収方法及び放出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 二酸化炭素の吸収放出剤であって、
前記二酸化炭素の吸収放出剤は置換非晶質シリカを含有し、
前記置換非晶質シリカは、非晶質シリカ中の1個又は2個以上の酸素原子が、他の基で置換された構造を有し、
前記置換非晶質シリカは、前記非晶質シリカ中の同一の前記酸素原子に結合している2個のケイ素原子のうち、一方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、下記一般式(1)
-R11-(NZ-R12-)NH (1)
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基であり、前記R11及びR12中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にアミノ基で置換されていてもよく;Zは水素原子又は下記一般式(13)
-R13-NH (13)
(式中、R13はアルキレン基であり、前記R13中の1個又は2個以上の水素原子はアミノ基で置換されていてもよい。)で表される基であり;nは1以上の整数であり;nが2以上である場合には、n個のR12は互いに同一でも異なっていてもよく、n個のZは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される基に結合し、他方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記非晶質シリカ中の前記一方のケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有し、前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(1)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のアミノ基は、塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のn個の下記一般式(12)
-NZ- (12)
(式中、Zは前記と同じである。)
で表される基は、塩を形成していてもよく、前記nが2以上である場合には、n個の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、
前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、前記置換非晶質シリカ中の前記一般式(1)で表される基の一部が、下記一般式(11)
-R11-X (11)
(式中、R11は前記と同じであり;Xはハロゲン原子である。)
で表される基で置換されていてもよく、前記置換非晶質シリカが前記一般式(11)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(11)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(11)における前記R11中の1個又は2個以上の水素原子がアミノ基で置換されている場合には、前記アミノ基は塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい、二酸化炭素の吸収放出剤。
【0008】
[2] 前記R11及びR12が、それぞれ独立に炭素数2~8のアルキレン基であり、前記Zが水素原子であるか、又は前記一般式(13)で表される基であり、かつ前記R13が、前記R11及びR12とは独立に炭素数2~8のアルキレン基である、[1]に記載の二酸化炭素の吸収放出剤。
[3] 前記nが1~3の整数である、[1]又は[2]に記載の二酸化炭素の吸収放出剤。
[4] 前記一般式(1)で表される基が、下記式(1)-101~(1)-107
-(CH-(NH-(CH-)NH (1)-101
-(CH-NH-(CH-N((CH-NH)-(CH-NH (1)-102
-(CH-NH-(CH-NH (1)-103
-(CH-NH-(CH-NH (1)-104
-(CH-NH-(CH-NH (1)-105
-(CH-NH-(CH-NH (1)-106
-(CH-NH-(CH-NH (1)-107
のいずれかで表される基、又はその中のイミノ基及びアミノ基が、それぞれ独立に塩を形成している基である、[1]に記載の二酸化炭素の吸収放出剤。
【0009】
[5] 二酸化炭素の吸収方法であって、前記二酸化炭素の吸収方法は、[1]~[4]のいずれか一項に記載の二酸化炭素の吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させることで、前記置換非晶質シリカと、前記二酸化炭素と、の反応物を得る工程(α)を有する、二酸化炭素の吸収方法。
[6] 二酸化炭素の放出方法であって、前記二酸化炭素の放出方法は、二酸化炭素の放出剤を加熱処理することにより、前記二酸化炭素の放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(β1)を有し、前記二酸化炭素の放出剤が、請求項1~[4]のいずれか一項に記載の二酸化炭素の吸収放出剤が含有する前記置換非晶質シリカと、二酸化炭素と、の反応物を含有する、二酸化炭素の放出方法。
[7] 二酸化炭素の回収方法であって、前記二酸化炭素の回収方法は、請求項1~[4]のいずれか一項に記載の二酸化炭素の吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させることで、前記置換非晶質シリカと、前記二酸化炭素と、の反応物を得る工程(α)と、前記反応物が得られた後の前記二酸化炭素の吸収放出剤を、加熱処理することにより、前記二酸化炭素の吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(β2)と、を有する、二酸化炭素の回収方法。
[8] 前記工程(α)及び工程(β2)を2回以上繰り返して行う、[7]に記載の二酸化炭素の回収方法。
【0010】
[9] 非晶質シリカ中の1個又は2個以上の酸素原子が、他の基で置換された構造を有する置換非晶質シリカであって、
前記置換非晶質シリカは、前記非晶質シリカ中の同一の前記酸素原子に結合している2個のケイ素原子のうち、一方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、下記一般式(1)
-R11-(NZ-R12-)NH (1)
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基であり、前記R11及びR12中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にアミノ基で置換されていてもよく;Zは水素原子又は下記一般式(13)
-R13-NH (13)
(式中、R13はアルキレン基であり、前記R13中の1個又は2個以上の水素原子はアミノ基で置換されていてもよい。)で表される基であり;nは1以上の整数であり;nが2以上である場合には、n個のR12は互いに同一でも異なっていてもよく、n個のZは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される基に結合し、他方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記非晶質シリカ中の前記一方のケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有し、前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(1)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のアミノ基は、塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のn個の下記一般式(12)
-NZ- (12)
で表される基は、塩を形成していてもよく、前記nが2以上である場合には、n個の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、
前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、前記置換非晶質シリカ中の前記一般式(1)で表される基の一部が、下記一般式(11)
-R11-X (11)
(式中、R11は前記と同じであり;Xはハロゲン原子である。)
で表される基で置換されていてもよく、前記置換非晶質シリカが前記一般式(11)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(11)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(11)における前記R11中の1個又は2個以上の水素原子がアミノ基で置換されている場合には、前記アミノ基は塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい、置換非晶質シリカ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二酸化炭素の吸収及び放出が可能な二酸化炭素の吸収放出剤であって、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることなく、二酸化炭素の吸収放出剤を製造可能であり、かつ、アミノ基を有する基が、化学結合によって支持体に結合した構造を有する、新規の二酸化炭素の吸収放出剤が提供される。
また、本発明によれば、前記二酸化炭素の吸収放出剤を用いた二酸化炭素の吸収方法及び放出方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1~4における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の吸収量と、分析結果と、を示すグラフである。
図2】実施例2における塩素原子導入シリカ及び置換非晶質シリカのFT-IRによる分析結果である。
図3】実施例2における置換非晶質シリカのXRD法による分析結果である。
図4】実施例2における二酸化炭素の吸収放出剤の、FT-IR分析により取得した、二酸化炭素を吸収前後のスペクトルデータと、これらから求めた差スペクトルのデータである。
図5】実施例2、7~12における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の吸収量を示すグラフである。
図6】実施例2における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図7】実施例2における二酸化炭素の放出時の、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
図8】実施例13~18における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図9】実施例1~4及び13~18における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の吸収量を示すグラフである。
図10】実施例19における、化合物(C)を再利用したときの、二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図11】実施例2、13、20~27における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の吸収量を示すグラフである。
図12】実施例2’及び14’における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図13】実施例20及び24における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図14】実施例26における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図15】実施例23及び27における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図16】実施例28及び29における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の吸収量を示すグラフである。
図17】実施例30における、二酸化炭素の繰り返し回収時の、二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の吸収量及び放出を示すグラフである。
図18】実施例31における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の除去効率を示すグラフである。
図19】実施例32における二酸化炭素の吸収放出剤の、二酸化炭素の吸収量を示すグラフである。
図20】実施例32における二酸化炭素の吸収放出剤の、FT-IR分析により取得した、二酸化炭素を吸収前後の差スペクトルのデータである。
図21】従来法での二酸化炭素の吸収量と、実施例2’、24及び27での二酸化炭素の吸収量と、をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◇二酸化炭素の吸収放出剤
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収放出剤は、置換非晶質シリカを含有し、
前記置換非晶質シリカは、非晶質シリカ中の1個又は2個以上の酸素原子が、他の基で置換された構造を有し、
前記置換非晶質シリカは、前記非晶質シリカ中の同一の前記酸素原子に結合している2個のケイ素原子のうち、一方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、下記一般式(1)
-R11-(NZ-R12-)NH (1)
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基であり、前記R11及びR12中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にアミノ基で置換されていてもよく;Zは水素原子又は下記一般式(13)
-R13-NH (13)
(式中、R13はアルキレン基であり、前記R13中の1個又は2個以上の水素原子はアミノ基で置換されていてもよい。)で表される基であり;nは1以上の整数であり;nが2以上である場合には、n個のR12は互いに同一でも異なっていてもよく、n個のZは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される基に結合し、他方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記非晶質シリカ中の前記一方のケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有し、前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(1)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のアミノ基は、塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(1)中のn個の下記一般式(12)
-NZ- (12)
(式中、Zは前記と同じである。)
で表される基は、塩を形成していてもよく、前記nが2以上である場合には、n個の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよく、
前記置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、前記置換非晶質シリカ中の前記一般式(1)で表される基の一部が、下記一般式(11)
-R11-X (11)
(式中、R11は前記と同じであり;Xはハロゲン原子である。)
で表される基で置換されていてもよく、前記置換非晶質シリカが前記一般式(11)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(11)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよく、前記一般式(11)における前記R11中の1個又は2個以上の水素原子がアミノ基で置換されている場合には、前記アミノ基は塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0014】
本実施形態の二酸化炭素の吸収放出剤において、二酸化炭素を吸収し、吸収後の二酸化炭素を放出する活性成分は、前記置換非晶質シリカである。すなわち、置換非晶質シリカは二酸化炭素との反応性(換言すると吸収性)を有し、置換非晶質シリカと二酸化炭素との反応物は、二酸化炭素の放出性を有する。
【0015】
より具体的には、置換非晶質シリカは、その中の一部又はすべてのアミノ基(-NH)において、二酸化炭素と反応し、アミノ基がカルボキシアミノ基(-NH-C(=O)-OH)となったカルバミン酸誘導体となることにより、二酸化炭素を吸収した状態になると推測される。このとき、カルバミン酸誘導体が置かれた条件、又は置換非晶質シリカと二酸化炭素との反応条件によっては、前記カルボキシアミノ基は式「-NH-C(=O)-O」で表される基、又は式「-NH -C(=O)-O」で表される基になることもあると推測される。さらに、置換非晶質シリカと二酸化炭素との反応物は、その中の少なくとも一部の反応部位から二酸化炭素を放出することで、アミノ基を再生し、条件によっては、すべての反応部位から二酸化炭素を放出して、二酸化炭素を吸収前の置換非晶質シリカと同一のものに戻ることもあると推測される。
この二酸化炭素を吸収し、放出した後の置換非晶質シリカは、再度、同様の反応機構によって、二酸化炭素を吸収し、放出することが可能である。すなわち、置換非晶質シリカは、二酸化炭素の吸収及び放出を繰り返すことが可能である。
【0016】
本明細書においては、置換非晶質シリカと二酸化炭素との反応物を用いて二酸化炭素を放出させたときに、前記反応物のすべての反応部位から二酸化炭素を放出した場合だけでなく、一部の反応部位は二酸化炭素を放出せずにそのままの状態となっている場合であっても、置換非晶質シリカが再生されたものとして取り扱う。
【0017】
本明細書において、濃度単位「M」は「mol/L」を表し、濃度単位「mM」は「mmol/L」を表す。
以下、まず、置換非晶質シリカについて説明する。
【0018】
<<置換非晶質シリカ>>
前記置換非晶質シリカは、非晶質シリカ中の1個又は2個以上の酸素原子が、他の基で置換された構造を有する、新規化合物である。
本明細書において、非晶質シリカとは、-Si-O-の網目構造を有し、シリカゲルはその代表的なものである。非晶質シリカは、例えば、オルトケイ酸テトラアルキル(別名:テトラアルコキシシラン)を用いて、公知のゾルゲル法によって製造できる。
【0019】
前記置換非晶質シリカは、前記非晶質シリカ中の同一の前記酸素原子に結合している2個のケイ素原子のうち、一方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記一般式(1)で表される基に結合し、他方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記非晶質シリカ中の前記一方のケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有する。
【0020】
前記一般式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基である。すなわち、R11及びR12は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
11及びR12における前記アルキレン基は、飽和脂肪族炭化水素から2個の水素原子が除かれた構造を有する。
すなわち、R11及びR12における前記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
本明細書においては、環状構造を有しない(換言すると、直鎖状又は分岐鎖状である)アルキレン基は鎖状であるとし、環状構造を有する(換言すると、環状構造のみを有するか、又は環状構造と、直鎖状構造又は分岐鎖状構造と、をともに有する)アルキレン基は環状であるとする。
【0021】
11及びR12における前記アルキレン基の炭素数は、特に限定されないが、1~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、2~10であることがさらに好ましく、2~8であることが特に好ましく、例えば、2~6、及び2~4のいずれかであってもよい。前記アルキレン基の炭素数がこのような範囲であることにより、置換非晶質シリカ(換言すると二酸化炭素の吸収放出剤)の二酸化炭素の吸収能が、より高くなる。
【0022】
11及びR12における前記アルキレン基のうち、鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基(別名:1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基(別名:1,3-プロパンジイル基)、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基(別名:1,2-ブタンジイル基)、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、1,3-ジメチルトリメチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、1-メチル-2-エチルエチレン基、n-プロピルエチレン基、ヘキサメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、1,2-ジメチルテトラメチレン基、1,3-ジメチルテトラメチレン基、1,4-ジメチルテトラメチレン基、2,3-ジメチルテトラメチレン基、2,2-ジメチルテトラメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、1-メチル-2-エチルトリメチレン基、1-メチル-3-エチルトリメチレン基、2-メチル-3-エチルトリメチレン基、1-メチル-1-エチルトリメチレン基、2-メチル-2-エチルトリメチレン基、1,2,3-トリメチルトリメチレン基、1,1,2,2-テトラメチルエチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、2-エチルヘキサメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカンジイル基、ドデカンジイル基、トリデカンジイル基、テトラデカンジイル基、ペンタデカンジイル基、ヘキサデカンジイル基、ヘプタデカンジイル基、オクタデカンジイル基、ノナデカンジイル基、イコサンジイル基等が挙げられる。
11及びR12における鎖状の前記アルキレン基の炭素数は、1~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、2~10であることがさらに好ましく、2~8であることが特に好ましく、例えば、2~6、及び2~4のいずれかであってもよい。
【0023】
11及びR12における前記アルキレン基のうち、環状のアルキレン基としては、例えば、シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロオクタンジイル基、シクロノナンジイル基、シクロデカンジイル基、ノルボルナンジイル基、イソボルナンジイル基、アダマンタンジイル基、トリシクロデカンジイル基等が挙げられ、さらに、これら環状のアルキレン基の1個又は2個以上の水素原子が、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基で置換された構造を有する基も挙げられる。
11及びR12における環状の前記アルキレン基の炭素数は、3~20であることが好ましく、4~15であることがより好ましく、5~10であることがさらに好ましく、5~8であることが特に好ましく、例えば、5~6、及び2~8のいずれかであってもよい。
【0024】
11及びR12中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にアミノ基で置換されていてもよく、置換されている場合のアミノ基による置換位置は、特に限定されない。
前記水素原子がアミノ基で置換されている場合のその置換数は、特に限定されないが、1~3であることが好ましく、例えば、1~2及び1のいずれかであってもよい。前記置換数がこのような範囲である置換非晶質シリカは、より容易に製造可能であり、かつ、二酸化炭素の吸収能が、より高くなる。
【0025】
前記一般式(1)中、Zは水素原子又は前記一般式(13)で表される基である。
前記一般式(13)中、R13はアルキレン基である。
13における前記アルキレン基としては、R11及びR12における前記アルキレン基と同様のものが挙げられる。そして、前記一般式(1)において、R13における前記アルキレン基は、R11及びR12における前記アルキレン基のいずれか一方又は両方と同一であってもよいし、R11及びR12における前記アルキレン基と異なっていてもよい。
【0026】
13における前記アルキレン基の炭素数は、特に限定されないが、1~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、2~10であることがさらに好ましく、2~8であることが特に好ましく、例えば、2~6、及び2~4のいずれかであってもよい。前記アルキレン基の炭素数がこのような範囲であることにより、置換非晶質シリカ(換言すると二酸化炭素の吸収放出剤)の二酸化炭素の吸収能が、より高くなる。
【0027】
13中の1個又は2個以上の水素原子は、アミノ基で置換されていてもよく、R13中の水素原子がアミノ基で置換される態様は、R11及びR12中の水素原子がアミノ基で置換される態様と同じである。
【0028】
前記一般式(1)中、nは、一般式「NZ-R12-」で表される基の繰り返し数であり、1以上の整数である。
nは、例えば、1~5及び1~4のいずれかであってよく、なかでも1~3であることが好ましく、1~2及び1のいずれかであってもよい。nがこのような範囲である置換非晶質シリカは、より容易に製造可能であり、かつ、二酸化炭素の吸収能が、より高くなる。
【0029】
nが2以上である場合には、前記一般式(1)中のn個のR12は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、n個のR12は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
同様に、nが2以上である場合には、前記一般式(1)中のn個のZは、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、n個のZは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0030】
置換非晶質シリカが、より容易に製造可能であり、かつ、二酸化炭素の吸収能が、より高くなる点では、前記一般式(1)で表される基において、R11、R12及びZは、すべて上記の好ましいものであることが好ましく、Zが前記一般式(13)で表される基である場合には、R11、R12及びR13は、すべて上記の好ましいものであることがより好ましい。
上記と同様の理由で、前記一般式(1)で表される基において、R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数2~8のアルキレン基であり、Zは水素原子であるか、又は前記一般式(13)で表される基であり、かつR13が、R11及びR12とは独立に炭素数2~8のアルキレン基であることが、特に好ましい。
【0031】
置換非晶質シリカが、さらに容易に製造可能であり、かつ、二酸化炭素の吸収能が、さらに高くなる点では、前記一般式(1)で表される基において、R11、R12、Z及びnは、すべて上記の好ましいものであることが好ましく、Zが前記一般式(13)で表される基である場合には、R11、R12、R13及びnは、すべて上記の好ましいものであることがより好ましい。
上記と同様の理由で、前記一般式(1)で表される基において、R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数2~8のアルキレン基であり、Zは水素原子であるか、又は前記一般式(13)で表される基であり、かつR13が、R11及びR12とは独立に炭素数2~8のアルキレン基であり、nは1~3であることが、特に好ましい。
【0032】
置換非晶質シリカは、前記一般式(1)で表される基を1個又は2個以上有し、2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(1)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、2個以上の前記一般式(1)で表される基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0033】
前記一般式(1)中のアミノ基、すなわち、一般式「NZ-R12-」で表される基に結合しているアミノ基と、R11、R12及びR13からなる群より選択される1種又は2種以上が、1個又は2個以上のアミノ基を有する(水素原子がアミノ基で置換されている)場合には、その場合のアミノ基と、は塩を形成していてもよいし、形成していなくてもよい。
前記一般式(1)中の前記アミノ基が形成している塩は、1個であってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、2個以上の前記塩は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0034】
前記一般式(12)中のZは、前記一般式(1)中のZと同じである。
前記一般式(1)中のn個の前記一般式(12)で表される基は、塩を形成していてもよいし、形成していなくてもよい。前記nが2以上である場合には、n個の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、n個の前記塩は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0035】
前記一般式(1)中のアミノ基と、前記一般式(12)で表される基と、が形成している塩(本明細書においては、単に「塩」と称することがある)は、特に限定されず、例えば、後述する置換非晶質シリカの製造方法での、各種製造条件によって決定される。
前記塩は、例えば、無機酸の塩及び有機酸の塩のいずれであってもよい。
前記無機酸の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩等が挙げられる。
前記有機酸の塩としては、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩等のカルボン酸塩;スルホン酸塩等が挙げられる。
【0036】
置換非晶質シリカは、前記一般式(1)で表される基を1個又は2個以上有し、その数は特に限定されない。例えば、前記一般式(1)で表される基の数が少ないほど、置換非晶質シリカの製造は容易になり、前記一般式(1)で表される基の数が多いほど、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能が高くなる傾向にある。
【0037】
置換非晶質シリカの、その1gあたりのアミノ基の含有量(本明細書においては、単に「アミノ基含有量」と称することがある)(mmol/g)は、特に限定されないが、1.2mmol/g以上であることが好ましく、例えば、1.6mmol/g以上、2mmol/g以上、及び2.4mmol/g以上のいずれかであってもよい。前記アミノ基含有量が前記下限値以上であることで、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能がより高くなる。
一方、前記アミノ基含有量は、5.2mmol/g以下であることが好ましく、3.8mmol/g以下であることがより好ましく、例えば、2.6mmol/g以下、及び2.2mmol/g以下のいずれかであってもよい。前記アミノ基含有量が前記上限値以下であることで、置換非晶質シリカの製造がより容易になる。
前記アミノ基含有量は、例えば、1.2~5.2mmol/g、1.6~5.2mmol/g、2~5.2mmol/g、及び2.4~5.2mmol/gのいずれかであってもよいし、1.2~3.8mmol/g、1.6~3.8mmol/g、2~3.8mmol/g、及び2.4~3.8mmol/gのいずれかであってもよいし、1.2~2.6mmol/g、1.6~2.6mmol/g、2~2.6mmol/g、及び2.4~2.6mmol/gのいずれかであってもよいし、1.2~2.2mmol/g、及び1.6~2.2mmol/gのいずれかであってもよい。ただし、これらは前記アミノ基含有量の一例である。
【0038】
置換非晶質シリカのアミノ基の密度(μmol/m)は、例えば、1~34350μmol/m、1~9500μmol/m、及び1~350μmol/mのいずれかであってもよいが、1~15μmol/mであることが好ましく、1~5μmol/m、5~10μmol/m、及び2~7μmol/mのいずれかであってもよい。置換非晶質シリカのアミノ基の密度(μmol/m)が、このような範囲、特に1~15μmol/mであることで、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能がより高くなる。
【0039】
置換非晶質シリカにおいて、アミノ基の量を直接定量することが困難である場合には、例えば、前記一般式(11)中のR12、前記一般式(13)中のR13等の、アミノ基が直接結合している基を定量することで、前記アミノ基含有量と、前記アミノ基の密度と、を求められる。アミノ基が直接結合している基は、例えば、元素分析等の公知の方法を利用することで定量できる。
【0040】
前記アミノ基含有量と、前記アミノ基の密度は、例えば、後述する置換非晶質シリカの製造方法での、各種製造条件を調節することで、製造できる。
【0041】
前記一般式(1)で表される基は、下記式(1)-101~(1)-107
-(CH-(NH-(CH-)NH (1)-101
-(CH-NH-(CH-N((CH-NH)-(CH-NH (1)-102
-(CH-NH-(CH-NH (1)-103
-(CH-NH-(CH-NH (1)-104
-(CH-NH-(CH-NH (1)-105
-(CH-NH-(CH-NH (1)-106
-(CH-NH-(CH-NH (1)-107
のいずれかで表される基、又はその中のイミノ基及びアミノ基が、それぞれ独立に塩を形成している基であることが好ましい。このような一般式(1)で表される基を有する置換非晶質シリカは、さらに容易に製造可能であり、かつ、二酸化炭素の吸収能がさらに高い。
【0042】
置換非晶質シリカは、非晶質シリカ中の1個又は2個以上の酸素原子が、その1個あたり、2個の他の基で置換された構造を有し、非晶質シリカ中の同一の前記酸素原子に結合している2個のケイ素原子のうち、一方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、一方の前記他の基として、前記一般式(1)で表される基に結合し、他方の前記ケイ素原子が、前記酸素原子に結合しているのに代わり、他方の前記他の基として、非晶質シリカ中の前記一方のケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有する。
さらに、置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、置換非晶質シリカ中の前記一般式(1)で表される基の一部は、前記一般式(11)で表される基で置換されていてもよい。
【0043】
すなわち、置換非晶質シリカが前記一般式(1)で表される基を2個以上有する場合には、置換非晶質シリカは、非晶質シリカ中の2個以上の酸素原子が、他の基で置換された構造を有し、置換非晶質シリカは、非晶質シリカ中のいずれか1以上の同一の前記酸素原子(第1酸素原子)に結合している2個の第1ケイ素原子のうち、一方の前記第1ケイ素原子が、前記第1酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記一般式(1)で表される基に結合し、他方の前記第1ケイ素原子が、前記第1酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、非晶質シリカ中の前記一方の第1ケイ素原子とは異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合し、かつ、非晶質シリカ中の他の1以上の同一の前記酸素原子(第2酸素原子)に結合している2個の第2ケイ素原子のうち、一方の前記第2ケイ素原子が、前記第2酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、前記一般式(11)で表される基に結合し、他方の前記第2ケイ素原子が、前記第2酸素原子に結合しているのに代わり、前記他の基として、非晶質シリカ中の前記一方の第2ケイ素原子と、前記第1ケイ素原子と、のいずれとも異なる他のケイ素原子に結合している別の酸素原子に結合した構造を有していてもよい。
【0044】
置換非晶質シリカの製造時には、例えば、後述するように、前記一般式(1)で表される基に代えて、前記一般式(11)で表される基を有するハロゲン原子導入シリカを製造し、前記一般式(11)で表される基を前記一般式(1)で表される基に変換することで置換非晶質シリカを得る。このとき、前記ハロゲン原子導入シリカが2個以上の前記一般式(11)で表される基を有する場合には、その一部が前記一般式(1)で表される基に変換されなくても、得られた化合物は二酸化炭素の吸収能を有する。本明細書においては、このような、前記一般式(11)で表される基を有する化合物も、置換非晶質シリカである。
このような置換非晶質シリカの特徴となる部分構造の一般式の例を、以下に示す。
【0045】
【化1】
(式中、R11、R12、Z及びnは、前記と同じであり;2個のケイ素原子は、これらに結合しているいずれかの基を介して、互いに間接的に結合している。)
【0046】
前記一般式(11)中のR11は、前記一般式(1)中の前記R11と同じであり、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0047】
前記一般式(11)中、Xはハロゲン原子であり、置換非晶質シリカの製造時には、脱離基として機能し得る。
前記Xにおける前記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0048】
置換非晶質シリカが前記一般式(11)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(11)で表される基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、2個以上の前記一般式(11)で表される基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0049】
前記一般式(11)における前記R11中の1個又は2個以上の水素原子が、アミノ基で置換されている場合には、前記アミノ基は塩を形成していてもよいし、形成していなくてもよい。前記一般式(11)における前記水素原子が、アミノ基で置換され、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、2個以上の前記塩は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0050】
本実施形態の二酸化炭素の吸収放出剤が含有する置換非晶質シリカは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、置換非晶質シリカには、R11、R12、又は一般式(13)中のR13の構造に由来する立体異性体が存在するものがあるが、本実施形態においては、立体異性体の関係にある置換非晶質シリカは、同一種として取り扱う。
【0051】
<<置換非晶質シリカの製造方法>>
置換非晶質シリカは、例えば、下記一般式(a)で表される化合物(A)と、下記一般式(b)で表される化合物(B)と、を反応させることで、下記一般式(ii)で表されるハロゲン原子導入シリカを得る工程(P1)と、前記工程(P1)の後に、前記ハロゲン原子導入シリカと、下記一般式(c)で表される化合物(C)と、を反応させることで、下記一般式(i)で表される置換非晶質シリカを得る工程(P2)と、を有する製造方法で製造できる。このような製造方法で得られた置換非晶質シリカは、本発明の効果が良好に得られる点で、好ましい。
【0052】
【化2】
(式中、R11及びXは、前記と同じであり;R91、R92、R93、R94、R95、R96及びR97は、それぞれ独立にアルキル基である。)
【0053】
【化3】
(式中、R11、R12、X、Z及びnは、前記と同じであり;m及びmは、それぞれ独立に0以上の整数であり、ただし、m+m+1=nであり;mが0である場合には、Z10はZであり、mが1以上である場合には、Z10は水素原子である。)
【0054】
なお、一般式(ii)は、ハロゲン原子導入シリカを判り易くする説明するために、ハロゲン原子導入シリカを、そのハロゲン原子の導入部位に焦点を当てて示す概念的な式である。したがって、一般式(ii)は、ハロゲン原子導入シリカにおいて、ハロゲン原子の導入部位(換言すると、前記一般式(11)で表される基)の数が1に限定されることを意味しない。
同様に、一般式(i)は、置換非晶質シリカを判り易くする説明するために、置換非晶質シリカを、そのアミノ基の導入部位に焦点を当てて示す概念的な式である。したがって、一般式(i)は、置換非晶質シリカにおいて、アミノ基の導入部位(換言すると、前記一般式(1)で表される基)の数が1に限定されることを意味せず、また、未反応のハロゲン原子の導入部位(前記一般式(11)で表される基)の残存を否定しない。
【0055】
<工程(P1)>
前記工程(P1)としては、ゾルゲル法が挙げられる。化合物(B)を用いることなく、化合物(A)同士を反応させる場合のゾルゲル法は、非晶質シリカの製造方法として、広く知られている。すなわち、工程(P1)は、化合物(A)と化合物(B)を反応させる点を除けば、非晶質シリカを製造するための公知のゾルゲル法と同じであってよい。化合物(A)と化合物(B)を用い、これらを加水分解し、縮合させることで、ハロゲン原子導入シリカが良好な収率で得られる。
【0056】
[化合物(A)]
一般式(a)中、R91、R92、R93及びR94は、それぞれ独立にアルキル基である。すなわち、化合物(A)はテトラアルコキシシランである。
91、R92、R93及びR94は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
91、R92、R93及びR94における前記アルキル基は、鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。このような化合物(A)を用いることで、ハロゲン原子導入シリカの収率がより高くなる。
【0057】
特に好ましい化合物(A)としては、例えば、テトラエトキシシラン(別名:オルトケイ酸テトラエチル、本明細書においては、「TEOS」と称することがある)が挙げられる。
【0058】
工程(P1)で用いる化合物(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0059】
[化合物(B)]
一般式(b)中、R95、R96及びR97は、それぞれ独立にアルキル基である。
前記R95、R96及びR97における前記アルキル基としては、R91、R92、R93及びR94における前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
95、R96及びR97は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
一般式(b)中のR11は、前記一般式(1)中の前記R11と同じであり、ここでは、その詳細な説明を省略する。
一般式(b)中のXは、前記一般式(11)中の前記Xと同じであり、ここでは、その詳細な説明を省略する。
すなわち、化合物(B)は、モノ(ハロゲノアルキル)トリアルコキシシランである。
95、R96及びR97における前記アルキル基は、鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。このような化合物(B)を用いることで、ハロゲン原子導入シリカの収率がより高くなる。
【0060】
特に好ましい化合物(B)としては、例えば、3-クロロプロピルトリエトキシシラン(本明細書においては、「CPTES」と称することがある)及び3-ブロモプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0061】
工程(P1)で用いる化合物(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0062】
工程(P1)において、化合物(A)の使用量(mol)に対する、化合物(B)の使用量(mol)の比率(本明細書においては、「化合物(B)/化合物(A)モル比」と称することがある)は、目的に応じて適宜調節できる。通常、前記化合物(B)/化合物(A)モル比が大きくなるほど、ハロゲン原子導入シリカの、ハロゲン原子含有量(換言すると、前記一般式(11)で表される基の含有量)と、ハロゲン原子の密度と、が増大する傾向にある。しかし、最終的な目的物である置換非晶質シリカの、アミノ基含有量(換言すると、前記一般式(1)で表される基の含有量)は、前記化合物(B)/化合物(A)モル比が大き過ぎると、低下してしまう傾向にある。置換非晶質シリカのアミノ基含有量を増大させるためには、前記化合物(B)/化合物(A)モル比は、0.1~4.2であることが好ましく、例えば、0.1~2.5、0.1~1.5、0.1~0.7、及び0.1~0.4のいずれかであってもよいし、0.2~4.2、0.4~4.2、0.7~4.2、1.5~4.2、及び2.5~4.2のいずれかであってもよいし、0.2~2.5、及び0.4~1.5のいずれかであってもよい。なかでも、前記化合物(B)/化合物(A)モル比が0.1~1.5であるなど、比較的小さい場合には、置換非晶質シリカのアミノ基含有量が増大し易い傾向にある。
【0063】
[溶媒]
工程(P1)においては、溶媒の共存下で、化合物(A)と化合物(B)を反応させることが好ましい。溶媒を用いることで、化合物(A)と化合物(B)の反応がより円滑に進行する。
【0064】
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、溶質を溶解させるための、常温で液状の成分と、分散質を分散させるための分散媒として機能する、常温で液状の成分と、の両方を包含する概念である。また、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0065】
工程(P1)における前記溶媒としては、有機溶媒、水等が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)等のアルコールが挙げられる。
【0066】
工程(P1)で用いる溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
工程(P1)で2種以上の溶媒を用いる場合には、例えば、有機溶媒と水の混合溶媒を用いてもよい。
【0067】
工程(P1)において、溶媒の使用量は、化合物(A)と化合物(B)の合計量1モルに対して、1~5Lであることが好ましい。溶媒の使用量が前記下限値以上であることで、溶媒の使用効果がより顕著に得られる。溶媒の使用量が前記上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が抑制される。
【0068】
[酸]
工程(P1)の初期においては、化合物(A)と化合物(B)に加え、酸を共存させることが好ましい。酸を用いることで、化合物(A)と化合物(B)の反応がより円滑に進行する。
工程(P1)で用いる酸は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。通常は、工程(P1)で用いる酸は、1種のみであることが好ましい。
前記酸は、無機酸であることが好ましく、強酸であることがより好ましく、塩酸であることがさらに好ましい。
【0069】
工程(P1)において、酸の使用量は、触媒量であることが好ましく、化合物(A)中のアルコキシ基のモル量と、化合物(B)中のアルコキシ基のモル量と、の合計モル量に対して、0.02~0.1倍モル量であることが好ましい。酸の使用量が前記下限値以上であることで、酸の使用効果がより顕著に得られる。酸の使用量が前記上限値以下であることで、酸の過剰使用が抑制される。
【0070】
[塩基]
工程(P1)においては、酸の使用後、塩基の共存下で、化合物(A)と化合物(B)を反応させることが好ましい。
工程(P1)で用いる塩基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。通常は、工程(P1)で用いる塩基は、1種のみであることが好ましい。
前記塩基は、求核性が低い弱塩基であることが好ましく、アンモニアであることがより好ましい。
【0071】
工程(P1)において、塩基の使用量は、酸の使用量に対して、20~40倍モル量であることが好ましい。塩基の使用量が前記下限値以上であることで、塩基の使用効果がより顕著に得られる。塩基の使用量が前記上限値以下であることで、塩基の過剰使用が抑制される。
【0072】
[他の成分]
工程(P1)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(A)と、化合物(B)と、溶媒と、酸と、塩基と、後述する化合物(C)と、のいずれにも該当しない他の成分を用いて(配合して)、化合物(A)と化合物(B)を反応させてもよい。
工程(P1)における前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
工程(P1)で用いる前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0073】
工程(P1)において、化合物(A)と化合物(B)の反応時の、溶媒以外の成分の総使用量(質量部)に対する、化合物(A)と、化合物(B)と、酸と、塩基と、の合計使用量(質量部)の割合([反応時の化合物(A)と、化合物(B)と、酸と、塩基と、の合計使用量(質量部)]/[反応時の溶媒以外の成分の総使用量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、97質量%以上であることが特に好ましい。前記割合が高いほど、ハロゲン原子含有量が多いハロゲン原子導入シリカが、より容易に得られる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
【0074】
[他の反応条件]
工程(P1)において、すべての成分を配合した後の反応時間は、配合成分(化合物(A)及び化合物(B)、並びに必要に応じて、溶媒、酸、塩基及び前記他の成分からなる群より選択される1種又は2種以上))の種類に応じて適宜調節できる。通常、前記反応時間は、8~24時間であることが好ましい。
【0075】
工程(P1)において、すべての成分を配合した後の反応温度は、常温であってよく、室温であってもよく、例えば、15~25℃であってもよい。
【0076】
工程(P1)においては、反応終了後、公知の方法で後処理及び取り出しを行うことで、ハロゲン原子導入シリカが得られる。前記後処理は、例えば、析出している粗生成物を、水、有機溶媒等の洗浄溶媒を用いて、1回又は2回以上洗浄することで、行うことができる。
【0077】
[ハロゲン原子導入シリカ]
前記一般式(ii)で表されるハロゲン原子導入シリカは、工程(P1)における目的物である。
一般式(ii)中のR11は、前記一般式(1)中のR11と同じであり、一般式(ii)中のXは、前記一般式(11)中のXと同じである。したがって、これらの符号については、その詳細な説明を省略する。
【0078】
ハロゲン原子導入シリカの、その1gあたりのハロゲン原子の含有量(本明細書においては、単に「ハロゲン原子含有量」と称することがある)は、特に限定されないが、1~7mmol/gであることが好ましく、例えば、1~4mmol/g、4~7mmol/g、及び2~6mmol/gのいずれかであってもよい。前記ハロゲン原子含有量がこのような範囲であることで、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能がより高くなる。
【0079】
この後の工程(P2)で用いる化合物(C)は、その分子の一方の末端にアミノ基(-NH)を有し、他方の末端に一般式「-NZ-H(式中、Zは前記と同じである)」で表される基を有しており、これらの基はいずれも、ハロゲン原子導入シリカと反応し得る。さらに、化合物(C)は、R12中の水素原子、又は一般式(13)におけるR13中の水素原子が、アミノ基で置換されていてもよく、この場合のアミノ基も、ハロゲン原子導入シリカと反応し得る。そのため、前記ハロゲン原子含有量が多過ぎると、ハロゲン原子導入シリカのハロゲン原子の密度(μmol/m)も高くなり、その場合には、工程(P2)において、少なくとも一部の化合物(C)が、その中の2箇所以上でハロゲン原子導入シリカと反応し得る。そして、両末端においてハロゲン原子導入シリカと反応した化合物(C)は、置換非晶質シリカにおいて、二酸化炭素の吸収に寄与し難いと推測される。したがって、前記ハロゲン原子含有量が多過ぎることは望ましくなく、前記ハロゲン原子含有量が前記上限値以下であることで、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能がより高くなる。
一方、前記ハロゲン原子含有量が前記下限値以上であることで、工程(P2)において、ハロゲン原子導入シリカの化合物(C)と反応し得る部位が増えるため、置換非晶質シリカの前記アミノ基含有量が増大し、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能がより高くなる。
【0080】
ハロゲン原子導入シリカのハロゲン原子の密度(μmol/m)は、例えば、1~34350μmol/m、及び1~1100μmol/mのいずれかであってもよいが、1~20μmol/mであることが好ましく、1~10μmol/m、10~20μmol/m、及び3~15μmol/mのいずれかであってもよい。ハロゲン原子導入シリカのハロゲン原子の密度(μmol/m)が、このような範囲、特に1~20μmol/mであることで、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能がより高くなる。
【0081】
上述のハロゲン原子導入シリカのハロゲン原子含有量と、ハロゲン原子の密度は、いずれもハロゲン原子導入シリカの元素分析値から求められる。
【0082】
ハロゲン原子導入シリカのハロゲン原子含有量と、ハロゲン原子の密度は、いずれも、工程(P1)の条件を調節することで、調節できる。例えば、前記化合物(B)/化合物(A)モル比を調節することで、ハロゲン原子含有量と、ハロゲン原子の密度をより容易に調節できる。
【0083】
<工程(P2)>
前記工程(P2)においては、ハロゲン原子導入シリカの化合物(C)による置換反応によって、置換非晶質シリカを得る。
【0084】
[化合物(C)]
一般式(c)中のZ、R12及びnは、それぞれ、前記一般式(1)中の前記Z、R12及びnと同じである。
ただし、nが1である場合には、Zは水素原子であることが好ましく、nが2以上である場合には、符号nが付されている構造中の末端の窒素原子に結合しているZは、水素原子であることが好ましい。このような化合物(C)は、ハロゲン原子導入シリカとの反応性がより高い。
一般式(c)中のZ、R12及びnについては、これ以上の詳細な説明を省略する。
すなわち、化合物(C)は、その1分子中に、アミノ基及びイミノ基を合計で2個以上有するポリアミンである。
【0085】
好ましい化合物(C)としては、例えば、エチレンジアミン(本明細書においては「EDA」と称することがある)、1,3-ジアミノプロパン(別名;1,3-プロパンジアミン、本明細書においては「DAP」と称することがある)、1,4-ジアミノブタン(別名;1,4-ブタンジアミン、プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(別名;1,5-ペンタンジアミン)、1,6-ジアミノヘキサン(別名;1,6-ヘキサンジアミン、本明細書においては「DAH」と称することがある)、1,7-ジアミノヘプタン(別名;1,7-ヘプタンジアミン)、1,8-ジアミノオクタン(別名;1,8-オクタンジアミン)、1,9-ジアミノノナン(別名;1,9-ノナンジアミン)、1,10-ジアミノデカン(別名;1,10-デカジアミン)等の、炭素数2~10の鎖状のジアミノアルカン;
1,3-シクロペンタンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン(本明細書においては「CHDA」と称することがある)、1,3-シクロヘプタンジアミン、1,4-シクロヘプタンジアミン、1,3-シクロオクタンジアミン、1,4-シクロオクタンジアミン、1,5-シクロオクタンジアミン、1,5-シクロノナンジアミン、1,6-シクロノナンジアミン、1,4-シクロデカンジアミン、1,6-シクロデカンジアミン、1,7-シクロデカンジアミン、イソホロンジアミン(本明細書においては「IPDA」と称することがある)等の、炭素数5~10の環状のジアミノアルカン;
ジエチレントリアミン(NH(CHNH(CHNH、本明細書においては「DETA」と称することがある)、トリエチレンテトラミン(NH(CHNH(CHNH(CHNH)、テトラエチレンペンタミン(NH(CHNH(CHNH(CHNH(CHNH)、ペンタエチレンヘキサミン(NH(CHNH(CHNH(CHNH(CHNH(CHNH)、トリス(2-アミノエチル)アミン(本明細書においては「TREN」と称することがある)、トリス(3-アミノプロピル)アミン、スペルミジン(NH(CHNH(CHNH)、スペルミン(NH(CHNH(CHNH(CHNH)等の、アミノ基及びイミノ基を合計で3個以上有する、炭素数4~10の鎖状のポリアミンが挙げられる。
【0086】
これらの中でも、より好ましい化合物(C)としては、炭素数2~8の鎖状のジアミノアルカン、及び炭素数4~8の鎖状のポリアミンが挙げられ、特に好ましい化合物(C)としては、ジエチレントリアミン(DETA)、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)、エチレンジアミン(EDA)、1,3-ジアミノプロパン(DAP)、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン及び1,6-ジアミノヘキサン(DAH)が挙げられる。
【0087】
化合物(C)は、先の説明のとおり、その中の2箇所以上でハロゲン原子導入シリカと反応し得るのであり、両末端においてハロゲン原子導入シリカと反応した化合物(C)は、置換非晶質シリカにおいて、二酸化炭素の吸収に寄与し難いと推測される。これに対して、例えば、炭素数が比較的短く、鎖状構造が比較的短い化合物(C)を用いれば、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能は、より高くなる傾向にある。上記の好ましいものとして挙げた化合物(C)は、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能を高くするのに有利である。
【0088】
工程(P2)で用いる化合物(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0089】
工程(P2)において、ハロゲン原子導入シリカ中のハロゲン原子の量(mol)に対する、化合物(C)の使用量(mol)の比率(本明細書においては、「化合物(C)/ハロゲン原子モル比」と称することがある)は、0.5~210であることが好ましく、例えば、0.5~120、0.5~70、0.5~30、及び0.5~12のいずれかであってもよいし、8~210、18~210、40~210、80~210、及び120~210のいずれかであってもよいし、8~120、及び18~70のいずれかであってもよい。前記化合物(C)/ハロゲン原子モル比が前記下限値以上であることで、置換非晶質シリカのアミノ基含有量が増大し、その結果、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収能が高くなる傾向にある。前記化合物(C)/ハロゲン原子モル比が前記上限値以下であることで、化合物(C)の過剰使用が抑制される。
【0090】
[溶媒]
工程(P2)においては、溶媒の共存下で、ハロゲン原子導入シリカと化合物(C)を反応させることが好ましい。溶媒を用いることで、ハロゲン原子導入シリカと化合物(C)の反応がより円滑に進行する。
【0091】
工程(P2)における前記溶媒としては、有機溶媒が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0092】
工程(P2)で用いる溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0093】
工程(P2)において、溶媒の使用量は、ハロゲン原子導入シリカの使用量1gに対して、10~100mLであることが好ましい。溶媒の使用量が前記下限値以上であることで、溶媒の使用効果がより顕著に得られる。溶媒の使用量が前記上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が抑制される。
【0094】
[他の成分]
工程(P2)においては、本発明の効果を損なわない範囲で、ハロゲン原子導入シリカと、化合物(C)と、溶媒と、のいずれにも該当しない他の成分を用いて(配合して)、ハロゲン原子導入シリカと化合物(C)を反応させてもよい。
工程(P2)における前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
工程(P2)で用いる前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0095】
工程(P2)でのハロゲン原子導入シリカと化合物(C)の反応時において、溶媒以外の成分の総使用量(質量部)に対する、ハロゲン原子導入シリカと、化合物(C)と、の合計使用量(質量部)の割合([反応時のハロゲン原子導入シリカと、化合物(C)と、の合計使用量(質量部)]/[反応時の溶媒以外の成分の総使用量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、97質量%以上であることが特に好ましい。前記割合が高いほど、アミノ基含有量が多い置換非晶質シリカが、より容易に得られる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
【0096】
[他の反応条件]
工程(P2)において、すべての成分を配合した後の反応時間は、配合成分(ハロゲン原子導入シリカ及び化合物(C)、並びに必要に応じて、溶媒及び前記他の成分からなる群より選択される1種又は2種以上))の種類に応じて適宜調節できる。通常、前記反応時間は、10~40時間であることが好ましい。
【0097】
工程(P2)において、すべての成分を配合した後の反応温度は、80~120℃であることが好ましく、溶媒等の液状成分を加熱によって還流させながら反応を行うことがより好ましい。
【0098】
工程(P2)において、ハロゲン原子導入シリカと化合物(C)の反応は、不活性ガスを反応液中に流通させるか、又は不活性ガス雰囲気下で、行うことが好ましい。
前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。これらの中でも、窒素ガスは、安価であるため特に好適である。
【0099】
工程(P2)においては、反応終了後、公知の方法で後処理及び取り出しを行うことで、置換非晶質シリカが得られる。前記後処理は、例えば、析出している粗生成物を、水、有機溶媒等の洗浄溶媒を用いて、1回又は2回以上洗浄することで、行うことができる。
【0100】
[置換非晶質シリカ]
前記一般式(i)で表される置換非晶質シリカは、本実施形態での目的物であり、先に詳細に説明済みである。
一般式(i)中、m及びmは、それぞれ独立に0以上の整数である。すなわち、m及びmは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
ただし、m+m+1=nである。すなわち、nが1である場合には、m及びmは0であり、nが2である場合には、m及びmのいずれか一方はゼロであり、かつ他方は1である。
【0101】
一般式(i)中、mが0である場合には、Z10はZであり、mが1以上である場合には、Z10は水素原子である。
が0である場合のZ10(Z)は、前記一般式(1)中の前記Zと同じである。
ただし、mが0である場合には、Z10(=Z)は水素原子であることが好ましい。
【0102】
一般式(i)中のZ、R11及びR12は、それぞれ、前記一般式(1)中の前記Z、R11及びR12と同じである。
例えば、一般式(i)における、R11及びR12中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立にアミノ基で置換されていてもよい。
例えば、Zにおける、R13中の1個又は2個以上の水素原子はアミノ基で置換されていてもよい。
例えば、R12が2個以上である場合には、これら2個以上のR12は、互いに同一でも異なっていてもよい。
例えば、Zが2個以上である場合には、これら2個以上のZは、互いに同一でも異なっていてもよい。
例えば、前記一般式(12)で表される基(-NZ-)は、塩を形成していてもよく、前記一般式(12)で表される基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい。
例えば、一般式(i)で表される置換非晶質シリカが、R11に結合している基であって、その中の窒素原子によってR11に結合している基(ケイ素原子側とは反対側の基。一般式(i)では記載を省略している。)を2個以上有する場合には、一般式(i)で表される置換非晶質シリカ中の前記基の一部は、前記一般式(11)で表される基(-R11-X)で置換されていてもよい。そして、一般式(i)で表される置換非晶質シリカが前記一般式(11)で表される基を2個以上有する場合には、2個以上の前記一般式(11)で表される基は互いに同一でも異なっていてもよい。
例えば、前記一般式(11)におけるR11中の1個又は2個以上の水素原子は、アミノ基で置換されていてもよい。
例えば、一般式(i)中のアミノ基(一般式(11)中のアミノ基も含む)は、塩を形成していてもよく、前記アミノ基が形成している塩が2個以上である場合には、2個以上の前記塩は互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(i)中のZ、R11及びR12については、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0103】
<<他の成分>>
本実施形態の二酸化炭素の吸収放出剤は、置換非晶質シリカを含有しており、置換非晶質シリカのみを含有していてもよい(換言すると、置換非晶質シリカからなるものであってもよい)し、置換非晶質シリカと、置換非晶質シリカ以外の他の成分と、を含有していてもよい。
【0104】
置換非晶質シリカは固形状であり、本実施形態の二酸化炭素の吸収放出剤は、置換非晶質シリカと、必要に応じて前記他の成分と、を含有する固形状のものであってもよいし、置換非晶質シリカと、液状の前記他の成分と、必要に応じて固形状の前記他の成分と、を含有し、不溶成分として置換非晶質シリカを含有する液状のものであってもよい。
【0105】
二酸化炭素の吸収放出剤が含有する前記他の成分は、目的に応じ任意に選択でき、特に限定されない。
【0106】
例えば、置換非晶質シリカ以外に、前記他の成分として溶媒を含有する液状の二酸化炭素の吸収放出剤は、その取り扱い性が良好な場合がある。
この場合の溶媒としては、例えば、前記工程(P2)で用いる溶媒と同じものが挙げられる。
【0107】
二酸化炭素の吸収放出剤が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0108】
二酸化炭素の吸収放出剤(二酸化炭素の吸収を開始する前の二酸化炭素の吸収放出剤)において、二酸化炭素の吸収放出剤の総質量(質量部)に対する、前記他の成分の含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、30質量%以下であることが好ましく、例えば、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。溶媒の含有の有無によらず、前記割合が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の吸収放出剤が二酸化炭素を吸収及び放出する能力が、より高くなる。
換言すると、二酸化炭素の吸収放出剤(二酸化炭素の吸収を開始する前の二酸化炭素の吸収放出剤)において、二酸化炭素の吸収放出剤の総質量(質量部)に対する、置換非晶質シリカの含有量(質量部)の割合([二酸化炭素の吸収放出剤の置換非晶質シリカの含有量(質量部)]/[二酸化炭素の吸収放出剤の総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、70質量%以上であることが好ましく、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
【0109】
非晶質シリカを利用した従来の二酸化炭素の吸収放出剤としては、先の説明のとおり、アミノ基を有するシランカップリング剤をシリカに化学結合させたものが知られている。しかし、アミノ基を有するシランカップリング剤で利用可能なものは、その種類が限定的であるため、このような二酸化炭素の吸収放出剤は、その構造の自由度が低いという問題点があった。
また、非晶質シリカを利用した従来の二酸化炭素の吸収放出剤としては、シリカゲルにアミンを吸着させたものも知られている。しかし、このような二酸化炭素の吸収放出剤は、アミンがシリカゲルに化学結合によって結合していないため、二酸化炭素の吸収又は放出時に、アミンがシリカゲルから脱離し易く、安定性が低いという問題点があった。
【0110】
これに対して、本実施形態の二酸化炭素の吸収放出剤は、前記置換非晶質シリカを含有しており、前記置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)は、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることなく製造可能である。しかも、ハロゲン原子導入シリカと反応させる化合物(C)の構造を調節することで、種々の構造の置換非晶質シリカが得られる。したがって、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)の構造の自由度が高い。
さらに、置換非晶質シリカは、その構造の自由度が高いことによって、その構造中でアミノ基又はイミノ基の数を増大させることが可能であり、二酸化炭素を吸収及び放出する能力を、より高くすることが可能である。
さらに、置換非晶質シリカは、アミノ基を有する基が化学結合によって非晶質シリカに結合した構造を有しており、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)の安定性が高い。例えば、置換非晶質シリカは、200℃程度の高温下でも安定であり、熱安定性が高い。
さらに、置換非晶質シリカと二酸化炭素との反応物は、後述するように、80℃程度の比較的低温でも容易に二酸化炭素を放出でき、二酸化炭素の放出性が良好である。従来の二酸化炭素の吸収放出剤は、例えば、二酸化炭素を容易に吸収できる反面、二酸化炭素を放出することが困難であるか、又は、二酸化炭素を容易に放出できる反面、二酸化炭素を吸収することが困難であるものが多かった。すなわち、従来の二酸化炭素の吸収放出剤は、二酸化炭素の吸収及び放出を実用的に両立できないものが多かった。
このように、本実施形態の二酸化炭素の吸収放出剤は、その特性に優れており、DAC技術で利用するのに、特に好適である。
【0111】
置換非晶質シリカと、前記他の成分と、を含有する、本実施形態の二酸化炭素の吸収放出剤は、これらの成分を混合することで、製造できる。
【0112】
◇二酸化炭素の吸収方法
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収方法は、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させることで、前記二酸化炭素の吸収放出剤が含有する前記置換非晶質シリカと、前記二酸化炭素と、の反応物を得る工程(α)を有する。
【0113】
<<工程(α)>>
前記工程(α)においては、二酸化炭素の吸収放出剤中の置換非晶質シリカが、その中のアミノ基において二酸化炭素と反応することで、先の説明のように、前記カルバミン酸誘導体となることにより、二酸化炭素が吸収された状態となる。
【0114】
工程(α)においては、例えば、二酸化炭素ガスを二酸化炭素の吸収放出剤と接触させればよい。二酸化炭素の吸収放出剤が固形状及び液状のいずれであっても、二酸化炭素の吸収放出剤は二酸化炭素ガスを良好に吸収する。
【0115】
二酸化炭素(ガス)は、単独で二酸化炭素の吸収放出剤に吸収させてもよいし、他のガスとの混合ガスの状態で二酸化炭素の吸収放出剤に吸収させてもよい。
前記混合ガスとしては、例えば、二酸化炭素の吸収対象であるガス状の目的物を、そのまま用いてもよいし、前記目的物をさらに他のガスと混合して希釈して用いてもよい。前記混合ガスとしては、例えば、空気を用いてもよく、乾燥空気は、二酸化炭素の回収対象として、より好適である。他の前記混合ガスとしては、例えば、二酸化炭素ガス及び不活性ガスを含む混合ガスが挙げられる。ただし、ここで挙げた混合ガスは一例である。
【0116】
前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。これらの中でも、窒素ガスは、安価であるため特に好適である。
【0117】
二酸化炭素の吸収放出剤と接触させる、二酸化炭素を含むガスの、二酸化炭素の濃度は、100体積%以下であればよく、例えば、80体積%以下、60体積%以下、40体積%以下、32体積%以下、25体積%以下、15体積%以下、及び5体積%以下のいずれかであってもよい。
二酸化炭素の吸収放出剤と接触させる、二酸化炭素を含むガスの、二酸化炭素の濃度は、例えば、0.04体積%(400ppm)以上であってもよい。
本実施形態の二酸化炭素の吸収方法においては、前記二酸化炭素の吸収放出剤を用いることで、二酸化炭素を容易に吸収できるだけでなく、二酸化炭素の濃度が上記のように幅広いガスを用いることができ、有用性が高い。
【0118】
二酸化炭素(ガス)を含む前記混合ガスの二酸化炭素の濃度は、特に限定されないが、0.04~25体積%であることが好ましく、例えば、0.04~15体積%、及び0.04~5体積%のいずれかであってもよいし、5~25体積%、及び15~25体積%のいずれかであってもよいし、5~15体積%であってもよい。前記濃度が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の吸収量がより多くなる。前記濃度が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の吸収漏れがより抑制される。
本実施形態の吸収方法においては、前記二酸化炭素の吸収放出剤を用いることで、二酸化炭素を容易に吸収できるだけでなく、二酸化炭素の濃度が上記のように幅広い前記混合ガスを用いることができ、有用性が高い。
【0119】
二酸化炭素を二酸化炭素の吸収放出剤に吸収させるときの、二酸化炭素ガスの流量は、目的に応じて任意に選択できる。
前記流量は、二酸化炭素を単独で用いるか、又は混合ガスとして用いるか、の使用形態によらず、二酸化炭素の吸収放出剤中の置換非晶質シリカの量1gあたり、0.03~1mmol/hであることが好ましく、例えば、0.03~0.7mmol/h、及び0.03~0.3mmol/hのいずれかであってもよいし、0.08~1mmol/h、及び0.3~1mmol/h、のいずれかであってもよいし、0.08~0.7mmol/hであってもよい。前記流量が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の吸収量がより多くなる。前記流量が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の吸収漏れがより抑制される。
【0120】
二酸化炭素を二酸化炭素の吸収放出剤に吸収させるときの、二酸化炭素の吸収放出剤の温度は、二酸化炭素の吸収放出剤の種類に応じて適宜選択でき、特に限定されない。
前記温度は、-18~30℃であることが好ましく、例えば、-18~25℃、-18~15℃、及び-18~5℃のいずれかであってもよいし、-8~30℃、8~30℃、及び18~30℃のいずれかであってもよいし、-8~25℃、及び8~15℃のいずれかであってもよい。前記温度が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の吸収量がより多くなる。前記温度が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の吸収漏れがより抑制される。
【0121】
工程(α)においては、二酸化炭素の吸収放出剤(置換非晶質シリカ)を、その前処理として加熱処理してから、二酸化炭素の吸収に供してもよい。このようにすることで、置換非晶質シリカが活性化され、二酸化炭素の吸収効率が向上することがある。
この加熱処理時の加熱温度は、70~130℃であることが好ましい。前記加熱温度が前記下限値以上であることで、加熱処理したことによる効果がより高くなる。前記加熱温度が前記上限値以下であることで、過剰な加熱を抑制できる。
【0122】
本実施形態においては、置換非晶質シリカ中の一部のアミノ基が二酸化炭素と未反応の段階で、工程(α)を終了してもよいし、前記アミノ基のすべてを二酸化炭素と反応させてから、工程(α)を終了してもよい。
【0123】
置換非晶質シリカの、その質量1gあたりの二酸化炭素の吸収量(本明細書においては、単に「二酸化炭素の吸収量」と称することがある)は、0.03mmol/g以上であることが好ましく、例えば、0.1mmol/g以上、0.3mmol/g以上、及び0.5mmol/g以上のいずれかであってもよい。前記二酸化炭素の吸収量が前記下限値以上であることで、後述する二酸化炭素の放出方法において、二酸化炭素の放出量がより増大する。
一方、前記二酸化炭素の吸収量が1.5mmol/g以下の置換非晶質シリカは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記二酸化炭素の吸収量は、例えば、0.03~1.5mmol/g、0.1~1.5mmol/g、0.3~1.5mmol/g、及び0.5~1.5mmol/gのいずれかであってもよい。ただし、これらは前記二酸化炭素の吸収量の一例である。
【0124】
本実施形態の二酸化炭素の吸収方法における、二酸化炭素の吸収放出剤による、二酸化炭素の吸収効率は、例えば、下記式で算出される置換非晶質シリカのアミノ基利用率を指標として、判断できる。
[置換非晶質シリカのアミノ基利用率(%)]=[置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収量(mmol/g)]/[置換非晶質シリカのアミノ基含有量(mmol/g)]×100
【0125】
本実施形態においては、置換非晶質シリカのアミノ基利用率は、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、及び50%以上のいずれかとすることが可能である。
一方、アミノ基利用率が60%以下である置換非晶質シリカは、より容易に製造できる。
【0126】
本実施形態の二酸化炭素の吸収方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、工程(α)に該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類及び数と、前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0127】
◇二酸化炭素の放出方法
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の放出方法は、二酸化炭素の放出剤を加熱処理することにより、前記二酸化炭素の放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(β1)を有し、前記二酸化炭素の放出剤が、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収放出剤が含有する前記置換非晶質シリカと、二酸化炭素と、の反応物を含有する。
【0128】
<<二酸化炭素の放出剤>>
<置換非晶質シリカと二酸化炭素との反応物>
前記二酸化炭素の放出剤が含有する、置換非晶質シリカと二酸化炭素との反応物(本明細書においては、単に「反応物」と称することがある)としては、先の説明のとおり、置換非晶質シリカ中のアミノ基が二酸化炭素と反応して生成した反応物が挙げられる。
【0129】
前記反応物は、例えば、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収方法によって、置換非晶質シリカと二酸化炭素を反応させることで、製造できる。
【0130】
<他の成分>
二酸化炭素の放出剤は、前記反応物を含有しており、前記反応物のみを含有していてもよい(換言すると、前記反応物からなるものであってもよい)し、前記反応物と、前記反応物以外の他の成分と、を含有していてもよい。
【0131】
前記反応物は固形状であり、二酸化炭素の放出剤は、前記反応物と、必要に応じて前記他の成分と、を含有する固形状のものであってもよいし、前記反応物と、液状の前記他の成分と、必要に応じて固形状の前記他の成分と、を含有し、不溶成分として前記反応物を含有する液状のものであってもよい。
【0132】
二酸化炭素の放出剤が含有する前記他の成分は、目的に応じ任意に選択でき、特に限定されない。
【0133】
例えば、前記反応物以外に、前記他の成分として溶媒を含有する液状の二酸化炭素の放出剤は、その取り扱い性が良好な場合がある。
この場合の溶媒としては、例えば、前記工程(P2)で用いる溶媒と同じものが挙げられる。
【0134】
二酸化炭素の放出剤が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0135】
二酸化炭素の放出剤(二酸化炭素の放出を開始する前の二酸化炭素の放出剤)において、二酸化炭素の放出剤の総質量(質量部)に対する、前記他の成分の含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、30質量%以下であることが好ましく、例えば、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。溶媒の含有の有無によらず、前記割合が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の放出剤が二酸化炭素を放出する能力が、より高くなる。
換言すると、二酸化炭素の放出剤(二酸化炭素の放出を開始する前の二酸化炭素の放出剤)において、二酸化炭素の放出剤の総質量(質量部)に対する、前記反応物の含有量(質量部)の割合([二酸化炭素の放出剤の前記反応物の含有量(質量部)]/[二酸化炭素の放出剤の総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、70質量%以上であることが好ましく、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
【0136】
従来の二酸化炭素の放出剤は、その製造が容易である反面、二酸化炭素の放出が容易ではないものが多かった。
これに対して、本実施形態の二酸化炭素の放出剤中の前記反応物は、後述するように、80℃程度の比較的低温でも容易に二酸化炭素を放出でき、二酸化炭素の放出性が良好である。
このように、本実施形態の二酸化炭素の放出剤は、その特性に優れており、DAC技術で利用するのに、特に好適である。
【0137】
前記反応物と、前記他の成分と、を含有する、二酸化炭素の放出剤は、これらの成分を混合することで、製造できる。
【0138】
<<工程(β1)>>
前記工程(β1)においては、二酸化炭素の放出剤を加熱処理することにより、二酸化炭素の放出剤から二酸化炭素を放出させる。このとき、前記反応物中のアミノ基と二酸化炭素との反応部位においては、二酸化炭素が放出され、アミノ基が再生される。
【0139】
工程(β1)において、二酸化炭素の放出剤を加熱処理するときの温度は、目的に応じて適宜調節できる。二酸化炭素の放出がより円滑に進行する点では、前記加熱処理時の温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。
一方、前記加熱処理時の温度は、過剰な加熱が避けられる点では、120℃以下であることが好ましい。
【0140】
本実施形態においては、前記反応物中のアミノ基と二酸化炭素との反応部位がすべて、二酸化炭素を放出してから工程(β1)を終了してもよいし、前記反応部位の一部が二酸化炭素を放出していない段階で、工程(β1)を終了してもよい。工程(β1)を行うことで、前記反応部位の一部が二酸化炭素を放出しなくても、一部の前記反応部位からアミノ基が再生され、二酸化炭素を放出後の二酸化炭素の放出剤は、再度二酸化炭素の吸収放出剤として使用可能となる。すなわち、置換非晶質シリカが再生される。
【0141】
本実施形態の二酸化炭素の放出方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、工程(β1)に該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類及び数と、前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0142】
◇二酸化炭素の回収方法
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の回収方法は、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収放出剤に、二酸化炭素を吸収させることで、前記置換非晶質シリカと、前記二酸化炭素と、の反応物を得る工程(α)と、
前記反応物が得られた後の前記二酸化炭素の吸収放出剤を、加熱処理することにより、前記二酸化炭素の吸収放出剤から前記二酸化炭素を放出させる工程(β2)と、を有する。
【0143】
本実施形態の二酸化炭素の回収方法では、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収放出剤を用いることにより、前記工程(α)による二酸化炭素の吸収と、前記工程(β2)による二酸化炭素の放出と、を続けて行うことができる。そして、二酸化炭素の吸収と放出を効率よく行うことができる。
【0144】
<<工程(α)>>
本実施形態の二酸化炭素の回収方法における前記工程(α)は、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の吸収方法における前記工程(α)と同じである。したがって、ここでは、工程(α)についての詳細な説明を省略する。
【0145】
<<工程(β2)>>
前記工程(β2)においては、置換非晶質シリカと、二酸化炭素と、の反応物が得られた後の前記二酸化炭素の吸収放出剤を、加熱処理することにより、前記反応物が得られた後の二酸化炭素の吸収放出剤から二酸化炭素を放出させる。
【0146】
工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤は、置換非晶質シリカと、二酸化炭素と、の反応物を含有する。一方、上述の本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の放出方法の工程(β1)で用いる二酸化炭素の放出剤も、置換非晶質シリカと、二酸化炭素と、の反応物を含有する。このように、前記反応物を含有する点で、工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤は、工程(β1)で用いる二酸化炭素の放出剤と同じである。しかし、工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤は、前記反応物を含有する素材の中でも、工程(β2)の直前の工程(α)で得られた二酸化炭素の吸収放出剤に限定されるという点で、工程(β1)で用いる二酸化炭素の放出剤とは相違する。ただし、工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤は、含有成分及び物性の点も含めて、工程(β1)で用いる二酸化炭素の放出剤と同様のものであり、前記二酸化炭素の放出剤と同様に取り扱うことができる。
【0147】
例えば、工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記反応物に該当しない他の成分を含有していてもよい。例えば、直前の工程(α)で得られた二酸化炭素の吸収放出剤に、さらに前記他の成分を添加したものを、工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤としてもよい。
前記他の成分は、目的に応じ任意に選択でき、特に限定されない。
【0148】
工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0149】
工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤(二酸化炭素の放出を開始する前の二酸化炭素の吸収放出剤)において、二酸化炭素の吸収放出剤の総質量(質量部)に対する、前記他の成分の含有量(質量部)の割合は、特に限定されないが、30質量%以下であることが好ましく、例えば、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。溶媒の含有の有無によらず、前記割合が前記上限値以下であることで、工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤が二酸化炭素を放出する能力が、より高くなる。
換言すると、工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤(二酸化炭素の放出を開始する前の二酸化炭素の吸収放出剤)において、二酸化炭素の吸収放出剤の総質量(質量部)に対する、前記反応物の含有量(質量部)の割合([工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤の前記反応物の含有量(質量部)]/[工程(β2)で用いる二酸化炭素の吸収放出剤の総質量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、70質量%以上であることが好ましく、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
【0150】
本実施形態においては、工程(α)での二酸化炭素の吸収量(モル)に対する、工程(β2)での二酸化炭素の放出量(モル)の割合を、70モル%以上、80モル%以上、及び90モル%以上のいずれかとすることが可能であり、吸収した二酸化炭素を容易に放出できる。なお、前記割合は100モル%以下である。
【0151】
工程(β2)は、二酸化炭素の放出方法の工程(β1)と同様に行うことができる。そこで、工程(β2)についての、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0152】
前記回収方法においては、工程(α)及び工程(β2)を、1回のみ行ってもよいし、2回以上繰り返して行ってもよい。
先の説明のとおり、工程(β2)を行うことによって、前記反応物が二酸化炭素を放出し、置換非晶質シリカが再生される。この再生された置換非晶質シリカは、再度、二酸化炭素の吸収及び放出に利用できる。したがって、前記回収方法においては、工程(α)及び工程(β2)を2回以上繰り返して行うことが可能である。
【0153】
工程(α)及び工程(β2)を繰り返して行う場合には、置換非晶質シリカ中の一部のアミノ基が二酸化炭素と未反応の段階で、工程(α)を終了することによって、工程(α)及び工程(β2)をより円滑に行うことができ、二酸化炭素の回収の全工程をより短時間で行うことが可能となることがある。
【0154】
工程(α)及び工程(β2)を繰り返して行う場合には、1サイクル目の工程(β2)の終了後に、必要に応じて、工程(α)と、工程(β2)と、のいずれにも該当しない、工程(γ)を行ってもよい。
工程(γ)の種類及び数と、工程(γ)を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【実施例0155】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されない。
【0156】
各実施例で用いた主な原料は、以下のとおりである。
3-クロロプロピルトリエトキシシラン(CPTES):東京化成工業社製
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS):富士フイルム和光純薬社製
エチレンジアミン(EDA):富士フイルム和光純薬社製
ジエチレントリアミン(DETA):東京化成工業社製
イソホロンジアミン(IPDA):富士フイルム和光純薬社製
1,4-シクロヘキサンジアミン(CHDA):東京化成工業社製
トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN):東京化成工業社製
【0157】
各実施例で引用するグラフ中において、「CO capacity(mmolco2/g)」及び「Abs. CO(mmol/g)」は、いずれも「置換非晶質シリカのその1gあたりの二酸化炭素の吸収量(mmol)」を意味する。
「CO removal efficiency(%)」は「二酸化炭素の除去効率(%)」を意味する。
「Abs. CO(mmol)」は「置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収量(mmol)」を意味する。
「Des. CO(mmol)」は「二酸化炭素を吸収後の置換非晶質シリカの二酸化炭素の放出量(mmol)」を意味する。
「Amine efficiency(%)」は、「アミノ基利用率」を意味する。
「Amin loading(mmol/g)」は「置換非晶質シリカのその1gあたりのアミノ基の量(mmol)」を意味する。
【0158】
以下に示す、二酸化炭素の吸収実験においては、特に断りのない限り、二酸化炭素の吸収放出剤(置換非晶質シリカ)は、窒素ガス雰囲気下において80℃で加熱することにより、前処理してから用いた。
【0159】
[実施例1]
<<二酸化炭素の吸収放出剤の製造>>
<ハロゲン原子導入シリカの製造>
常温、常圧及び空気雰囲気下で、エタノール(20mL)、水(10mL)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、化合物(A)に相当)(6.7mmol)及び3-クロロプロピルトリエトキシシラン(CPTES、化合物(B)に相当)(6.7mmol、TEOSに対して1倍モル量)を混合し、さらに、濃度が2.5Mの塩酸(1mL)を混合した。得られた混合物をこのまま2時間撹拌した。
次いで、濃度が14.8Mのアンモニア水溶液(5mL)をここに添加し、得られた配合物をそのまま終夜(10時間以上)撹拌し、反応を行った。その結果、反応液中に析出物が認められた。
次いで、反応液をろ別することで、前記析出物を取り出し、前記析出物を水とメタノールによって、この順に洗浄し、洗浄後の前記析出物を、60℃で乾燥させることにより、塩素原子導入シリカ(下記式(ii)-1で表す)を得た。
【0160】
【化4】
【0161】
上記で得られた塩素原子導入シリカを、元素分析により分析した。そして、プロピル基の定量値から、塩素原子含有量を算出した。その結果を表1に示す。
塩素原子導入シリカの赤外吸収分光法による分析結果は、後述する実施例2の場合と同様であった。
【0162】
<置換非晶質シリカの製造>
上記で得られた塩素原子導入シリカ(0.5g)に、エチレンジアミン(EDA、化合物(C)に相当)(15.9g、265mmol、塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)及びトルエン(20mL)を添加し、得られた配合物を、これに窒素ガスを流通させながら、95℃で20時間撹拌することにより、反応を行った。その結果、反応液中に析出物が認められた。
次いで、反応液をろ別することで、前記析出物を取り出し、前記析出物をメタノールによって洗浄し、洗浄後の前記析出物を、60℃で乾燥させることにより、目的物である置換非晶質シリカ(下記式(i)-1で表す)を得た。
【0163】
上記で得られたものが置換非晶質シリカであることは、元素分析により確認した。このときの分析結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素23.91質量%、水素5.83質量%、窒素9.26質量%
【0164】
得られた置換非晶質シリカの赤外吸収分光法及び粉末X線回折法による分析結果は、後述する実施例2の場合と同様であった。
【0165】
【化5】
【0166】
<<二酸化炭素の吸収>>
上記で得られた置換非晶質シリカ(すなわち二酸化炭素の吸収放出剤)を用いて、以下に示す手順により、二酸化炭素の吸収実験を行った。
すなわち、直径6mm、長さ200mmのガラス管を用意した。このガラス管の内部のうち、ガラス管の長さ方向における中ほどに、上記で得られた置換非晶質シリカ(0.1g)を詰め、その両端には石英ウールを詰めて、ガラス管の内部で置換非晶質シリカが動かないように調節した。
次いで、このような置換非晶質シリカを詰めたガラス管の内部に、ガラス管の一方の端部から、乾燥空気(二酸化炭素を体積基準で約400ppm含む。以下、同様。)を10mL/minの流量で15時間流入させ、置換非晶質シリカを通過させ、ガラス管の他方の端部からガスを排出させた。このときの、乾燥空気の流量から換算した二酸化炭素の流量は、0.011mmol/hであった。そして、この排出ガスを、赤外吸収分光法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、置換非晶質シリカによる二酸化炭素の吸収量を算出し、その値から、置換非晶質シリカの、その質量1gあたりの二酸化炭素の吸収量(mmol/g)を算出した。置換非晶質シリカが二酸化炭素を吸収したことは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認した。
結果を図1に示す。図1は、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)の二酸化炭素の吸収量を示すグラフであり、図1中では前記吸収量を棒グラフで示している。
【0167】
なお、本実施例に限らず、置換非晶質シリカのFT-IRによる分析は、以下のように行った。
すなわち、置換非晶質シリカを薄いディスクに成形した後、ガスを導入可能なガラス製のセルにこのディスクを装填し、FT-IR分析を行った。分析時には、窒素ガスを10mL/minの流量で流通させ、80℃で1時間の前処理を行った。そして、30℃以下まで降温後に、二酸化炭素を体積基準で約400ppm含む、窒素で希釈したガスを流通させ、スペクトルデータを取得した。
【0168】
さらに、上記で算出した(a)二酸化炭素の吸収量と、置換非晶質シリカの元素分析値のデータから算出した(b)アミノ基含有量と、から、式「(a)/(b)×100」により、置換非晶質シリカの(c)アミノ基利用率を算出した。(b)アミノ基含有量を表1に、(c)アミノ基利用率を図1に、それぞれ示す。図1中では、(c)アミノ基利用率を点で示している。
【0169】
[実施例2]
<<二酸化炭素の吸収放出剤の製造、及び二酸化炭素の吸収>>
TEOSの使用量を6.7mmolに代えて9.13mmolとし、CPTESの使用量を6.7mmolに代えて4.56mmol(TEOSに対して0.5倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子導入シリカを製造した。
得られた塩素原子導入シリカについて、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子含有量を求めた。その結果を表1に示す。
次いで、エチレンジアミンの使用量を15.9g(265mmol)に代えて11.7g(195mmol、塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカを製造した。
得られた置換非晶質シリカのFT-IRによる分析結果を図2に、粉末X線回折法(XRD)による分析結果を図3に、それぞれ示す。図3は、置換非晶質シリカが確かに非晶質であることを示していた。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素18.87質量%、水素5.16質量%、窒素6.69質量%
【0170】
得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図1に示す。
【0171】
<<二酸化炭素を吸収後の、二酸化炭素の吸収放出剤の分析>>
上記で得られた、二酸化炭素を吸収後の置換非晶質シリカ(すなわち、置換非晶質シリカと二酸化炭素との反応物)について、FT-IRにより分析した。このとき取得したスペクトルデータを、二酸化炭素を吸収前の置換非晶質シリカのスペクトルデータとともに、図4に示す。図4には、さらに、これらスペクトルデータから求めた、二酸化炭素を吸収前後の差スペクトルもあわせて示す。図4には、さらに、この分析結果から同定される、二酸化炭素を吸収後の置換非晶質シリカの構造もあわせて示している。
【0172】
図4の分析データから、置換非晶質シリカは、その化合物(C)由来の末端部のアミノ基において、二酸化炭素と反応することで、アルキルアンモニウムカルバメートタイプの化合物を形成していることが確認された。
【0173】
<<二酸化炭素の吸収放出剤の製造、及び二酸化炭素の吸収>>
[実施例3]
TEOSの使用量を6.7mmol代えて11mmolとし、CPTESの使用量を6.7mmolに代えて2.8mmol(TEOSに対して0.25倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子導入シリカを製造した。
得られた塩素原子導入シリカについて、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子含有量を求めた。その結果を表1に示す。
次いで、エチレンジアミンの使用量を15.9g(265mmol)に代えて7.51g(125mmol、塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカを製造した。
得られた置換非晶質シリカのFT-IR及びXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素14.12質量%、水素3.61質量%、窒素5.40質量%
【0174】
得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図1に示す。
【0175】
[実施例4]
TEOSの使用量を6.7mmol代えて13mmolとし、CPTESの使用量を6.7mmolに代えて1.6mmol(TEOSに対して0.123倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子導入シリカを製造した。
得られた塩素原子導入シリカについて、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子含有量を求めた。その結果を表1に示す。
次いで、エチレンジアミンの使用量を15.9g(265mmol)に代えて4.21g(70mmol、塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカを製造した。
得られた置換非晶質シリカのFT-IR及びXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素9.77質量%、水素2.95質量%、窒素4.77質量%
【0176】
得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図1に示す。
【0177】
[実施例5]
TEOSの使用量を6.7mmol代えて4.4mmolとし、CPTESの使用量を6.7mmolに代えて8.7mmol(TEOSに対して2倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子導入シリカを製造した。
得られた塩素原子導入シリカについて、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子含有量を求めた。その結果を表1に示す。
次いで、エチレンジアミンの使用量を15.9g(265mmol)に代えて17.7g(295mmol、塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカを製造した。
本実施例では、実施例1等の場合とは異なり、置換非晶質シリカの生成量が少なく、反応液中に析出物が生じなかった。
【0178】
[実施例6]
TEOSの使用量を6.7mmol代えて2.6mmolとし、CPTESの使用量を6.7mmolに代えて10mmol(TEOSに対して3.8倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子導入シリカを製造した。
得られた塩素原子導入シリカについて、実施例1の場合と同じ方法で、塩素原子含有量を求めた。その結果を表1に示す。
次いで、エチレンジアミンの使用量を15.9g(265mmol)に代えて15.3g(255mmol、塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカを製造した。
本実施例では、実施例1等の場合とは異なり、置換非晶質シリカの生成量が少なく、反応液中に析出物が生じなかった。
【0179】
実施例1~6における置換非晶質シリカの製造条件と分析結果の一部を、表1にまとめて示す。
【0180】
【表1】
【0181】
実施例5~6の場合には、実施例1~4の場合よりも置換非晶質シリカの収量が少なかった。すなわち、化合物(B)/化合物(A)モル比には、置換非晶質シリカの収量を向上させるための好適な範囲が存在していた。
【0182】
<<二酸化炭素の吸収放出剤の製造>>
[実施例7~12]
エチレンジアミンの使用量を、塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して、100倍モル量とするのに代えて、200倍モル量(実施例7)、50倍モル量(実施例8)、20倍モル量(実施例9)、10倍モル量(実施例10)、5倍モル量(実施例11)、又は1倍モル量(実施例12)とした点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカを製造した。
得られた置換非晶質シリカのFT-IR及びXRDによる分析結果は、実施例7~12のいずれの場合も、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:
実施例7:炭素20.18質量%、水素4.66質量%、窒素7.46質量%
実施例8:炭素18.48質量%、水素5.31質量%、窒素6.74質量%
実施例9:炭素18.57質量%、水素5.16質量%、窒素6.27質量%
実施例10:炭素17.83質量%、水素5.24質量%、窒素5.89質量%
実施例11:炭素18.41質量%、水素4.86質量%、窒素5.79質量%
実施例12:炭素16.36質量%、水素4.29質量%、窒素3.33質量%
【0183】
実施例2、7~12における置換非晶質シリカの製造条件を、表2にまとめて示す。
【0184】
【表2】
【0185】
<<二酸化炭素の吸収>>
上記の各実施例で得られた置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)を用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。
これらの結果を、実施例2での結果とともに、図5に示す。
【0186】
図5から明らかなように、化合物(C)/塩素原子モル比が20以下の場合には、前記モル比の増大に伴い、二酸化炭素の吸収量が急激に増大し、前記モル比が20超の場合には、前記モル比の増大に伴い、二酸化炭素の吸収量が緩やかに増大して、前記モル比が100の場合に、二酸化炭素の吸収量が最大であった。
【0187】
<<二酸化炭素の回収(実施例2)>>
<二酸化炭素の吸収>
実施例2で得られた置換非晶質シリカを、窒素ガス雰囲気下において80℃で加熱することにより、前処理を行った。
次いで、この80℃で前処理済みの置換非晶質シリカを用い、上記の「二酸化炭素の吸収」時に用いたものと同じ構成の、置換非晶質シリカ(0.1g)を詰めたガラス管を用意した。
次いで、このような状態のガラス管の内部に、ガラス管の一方の端部から、前記乾燥空気を10mL/minの流量で流入させ、置換非晶質シリカを通過させ、ガラス管の他方の端部からガスを排出させた。そして、この排出ガスを、熱伝導度検出器(TCD)を用いたガスクロマトグラフィー(TCD-GC)法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量した。そして、二酸化炭素の流入量と排出量から、置換非晶質シリカ(すなわち二酸化炭素の吸収放出剤)による二酸化炭素の吸収量を算出し、下記式
[二酸化炭素の除去効率(%)]=[二酸化炭素の吸収量]/[二酸化炭素の流入量]×100
により、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図6に示す。
【0188】
別途、実施例2で得られた置換非晶質シリカを、窒素ガス雰囲気下において120℃で加熱することにより、前処理を行い、この120℃で前処理済みの置換非晶質シリカを用いて、80℃で前処理を行った場合と同じ方法で、置換非晶質シリカ(すなわち二酸化炭素の吸収放出剤)の二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図6に示す。
【0189】
このときの置換非晶質シリカによる二酸化炭素の吸収量を算出した結果、前処理温度が80℃の場合には0.098mmolであり、前処理温度が120℃の場合には0.091mmolであった。
【0190】
図6から明らかなように、前処理温度が80℃の場合に、120℃の場合よりも、二酸化炭素の除去効率が100%で維持される時間が若干長かった。しかし、前処理温度が80℃及び120℃のいずれであっても、二酸化炭素の除去効率は同様の傾向を示した。
【0191】
<二酸化炭素の放出>
上記の、二酸化炭素の吸収量を算出後の、80℃で前処理済みの置換非晶質シリカが詰められているガラス管を用い、昇温速度5℃/minでガラス管の加熱を開始するとともに、ガラス管の一方の端部からガラス管の内部に、窒素ガスを10mL/minの流量で流入させ、置換非晶質シリカを通過させ、ガラス管の他方の端部からガスを排出させた。そして、FT-IRを用いて、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。この間の加熱によるガラス管の最高温度は、120℃とした。結果を図7に示す。図7のグラフ中の「CO concentration」(二酸化炭素の濃度)に付された単位「%」は、「体積%」を意味する。
【0192】
二酸化炭素の吸収量を算出後の、120℃で前処理済みの置換非晶質シリカが詰められているガラス管を用い、同様に、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。結果を図7に示す。
【0193】
このときの、二酸化炭素を吸収後の置換非晶質シリカによる二酸化炭素の放出量を算出した結果、前処理温度が80℃の場合には0.086mmolであり、二酸化炭素の吸収量に対して、88モル%であった。前処理温度が120℃の場合には、前記放出量は0.083mmolであり、二酸化炭素の吸収量に対して、91モル%であった。
【0194】
図7から明らかなように、前処理温度が80℃及び120℃のいずれであっても、二酸化炭素の濃度は同様の傾向を示した。すなわち、加熱開始から約5分が経過すると、排出ガス中の二酸化炭素の濃度が急激に上昇し、約10分が経過した段階で、前記二酸化炭素の濃度が最大となり、その後、前記二酸化炭素の濃度は急激に減少した。前記二酸化炭素の濃度が最大となったのは、ガラス管の加熱温度が約80℃のときであった。
【0195】
[実施例13~18]
<<二酸化炭素の吸収放出剤の製造>>
置換非晶質シリカの製造時に、EDAの使用量を、塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量とするのに代えて、3倍モル量とした点、及び、窒素ガスを流通させずに大気下で反応を行った点、以外は、実施例1~6の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカを製造した(実施例13~18)。
【0196】
実施例13~18における置換非晶質シリカの製造条件を、表3にまとめて示す。
【0197】
【表3】
【0198】
<<二酸化炭素の吸収>>
上記の各実施例で得られた置換非晶質シリカについて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図8に示す。
【0199】
図8から明らかなように、実施例13~18のいずれにおいても、二酸化炭素の除去効率の変化は、同様の傾向を示した。
一方、化合物(B)/化合物(A)モル比が0.5(実施例14)、1(実施例13)、0.25(実施例15)、0.123(実施例16)、2(実施例17)及び3.8(実施例18)である場合にこの順に、二酸化炭素の除去効率が100%程度である場合の持続時間が長かった。すなわち、化合物(B)/化合物(A)モル比には、二酸化炭素の高い除去効率を長時間維持するのに好適な範囲が存在していた。特に、化合物(B)/化合物(A)モル比が0.123~1である場合に、二酸化炭素の高い除去効率が長時間維持された。
【0200】
さらに、これら実施例13~18(化合物(C)/塩素原子モル比が3)における二酸化炭素の吸収量のデータと、先の実施例1~4(化合物(C)/塩素原子モル比が100)における二酸化炭素の吸収量のデータと、をまとめて表示したグラフを図9に示す。
図9から明らかなように、化合物(B)/化合物(A)モル比が0.5で、かつ化合物(C)/塩素原子モル比が100(すなわち実施例2)の場合に、二酸化炭素の吸収量が最大であった。そして、化合物(C)/塩素原子モル比が100の場合の方が、3の場合よりも二酸化炭素の吸収量が多かった。
【0201】
<<置換非晶質シリカの物性の評価>>
上記の実施例13~18で得られた置換非晶質シリカについて、二酸化炭素の除去効率の算出時に同時に算出した(a)二酸化炭素の吸収量を表4に示す。さらに、置換非晶質シリカの元素分析値のデータから、(b)アミノ基含有量、及び(f)アミノ基の密度を算出し、式「(a)/(b)×100」により(c)アミノ基利用率を算出した。さらに、置換非晶質シリカの(d)BET比表面積を測定した。さらに、置換非晶質シリカの製造過程で得られた塩素原子導入シリカについて、元素分析を行い、そのデータから(e)塩素原子の密度を算出した。これらの結果を表4に示す。
【0202】
【表4】
【0203】
表3~表4から明らかなように、化合物(B)/化合物(A)モル比が、2(実施例17)及び3.8(実施例18)である場合よりも、1(実施例13)、0.5(実施例14)、0.25(実施例15)及び0.123(実施例16)である場合の方が、(a)二酸化炭素の吸収量が多く、(c)アミノ基利用率が高く、(d)BET比表面積も大きかった。前記モル比が2(実施例17)及び3.8(実施例18)である場合には、(e)塩素原子導入シリカの塩素原子の密度が高くなっており、これは、化合物(A)に対する化合物(B)の相対的な使用量が増大することによって、塩素原子導入シリカの塩素原子含有量が増大したためであった。その結果、置換非晶質シリカの(a)二酸化炭素の吸収量と二酸化炭素の除去効率に、影響が出たと推測された。
【0204】
図9から、化合物(B)/化合物(A)モル比が、0.25~1の場合に、二酸化炭素の吸収量が多くなる傾向が確認されたが、表4中の実施例13~15と、表1中の実施例1~3においては、置換非晶質シリカの(b)アミノ基含有量が多くなっており、この結果は上記の傾向を裏付けていた。
【0205】
[実施例19]
<<二酸化炭素の吸収放出剤の製造(繰り返し製造)>>
製造スケールを増大させた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、塩素原子導入シリカを製造した。すなわち、化合物(B)/化合物(A)モル比を0.5とした。
次いで、この塩素原子導入シリカの一部を用いて、実施例2の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)を製造した(1回目)。すなわち、化合物(C)/塩素原子モル比を100とした。ここで得られた置換非晶質シリカを、以下、「置換非晶質シリカ(19-1)」と称する。
次いで、置換非晶質シリカ(19-1)をろ別して得られた反応液中に、上記で得られた塩素原子導入シリカのさらに一部を添加して、実施例2の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)を製造した(2回目)。ここで得られた置換非晶質シリカを、以下、「置換非晶質シリカ(19-2)」と称する。
さらに、置換非晶質シリカ(19-2)をろ別して得られた反応液中に、上記で得られた塩素原子導入シリカのさらに一部を添加して、実施例2の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)を製造した(3回目)。ここで得られた置換非晶質シリカを、以下、「置換非晶質シリカ(19-3)」と称する。
得られた置換非晶質シリカ(19-1)、(19-2)及び(19-3)のFT-IR及びXRDによる分析結果は、いずれも実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:
実施例(19-1):炭素18.79質量%、水素5.08質量%、窒素6.97質量%
実施例(19-2):炭素20.00質量%、水素4.77質量%、窒素6.80質量%
実施例(19-3):炭素20.11質量%、水素4.73質量%、窒素7.03質量%
【0206】
<<二酸化炭素の吸収>>
上記で得られた置換非晶質シリカ(19-1)、(19-2)及び(19-3)について、それぞれ個別に、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行い、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。結果を図10に示す。
【0207】
図10から明らかなように、置換非晶質シリカ(19-1)、(19-2)及び(19-3)はいずれも、二酸化炭素の除去効率については、同様の傾向を示した。
すなわち、置換非晶質シリカの製造時に、化合物(C)/塩素原子モル比が100であって、化合物(C)(すなわちEDA)の使用量が、塩素原子導入シリカ中の塩素原子の量に対して過剰であることによって、反応液中には、塩素原子導入シリカとは未反応の化合物(C)が残存していた。そして、この化合物(C)は、置換非晶質シリカを除去した後に、さらに、塩素原子導入シリカと反応可能であり、過剰分の化合物(C)が再利用可能であることを確認できた。
【0208】
さらに、置換非晶質シリカ(19-1)、(19-2)及び(19-3)の元素分析によってEDAの導入量を求め、その結果から、これら置換非晶質シリカの製造時における、(g)EDA(化合物(C))の消費量を算出した。また、このときの置換非晶質シリカ中の(h)塩素原子置換量を元素分析により算出した。結果を表5に示す。
さらに、実施例13等の場合と同じ方法で、置換非晶質シリカ(19-1)、(19-2)及び(19-3)について、(a)二酸化炭素の吸収量、(b)アミノ基含有量、及び(c)アミノ基利用率を算出した。これらの結果を表5に示す。
【0209】
【表5】
【0210】
表5から明らかなように、化合物(C)を再利用して得られた置換非晶質シリカ(置換非晶質シリカ(19-2)及び(19-3))の品質は、化合物(C)を最初に利用して得られた置換非晶質シリカ(置換非晶質シリカ(19-1))の品質と、ほぼ同等であることを確認できた。
【0211】
<<二酸化炭素の吸収放出剤の製造、及び二酸化炭素の吸収>>
[実施例20]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量のジエチレントリアミン(DETA、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して3倍モル量)を用いた点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカ(下記式(i)-2で表す)を製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素25.18質量%、水素4.80質量%、窒素7.52質量%
【0212】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図11に示す。図11には、先の実施例13の結果もあわせて示している。
【0213】
【化6】
【0214】
[実施例21]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量のイソホロンジアミン(IPDA、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して3倍モル量)を用いた点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカ(下記式(i)-3で表す)を製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素33.66質量%、水素5.28質量%、窒素3.09質量%
【0215】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図11に示す。
【0216】
【化7】
【0217】
[実施例22]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量の1,4-シクロヘキサンジアミン(CHDA、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して3倍モル量)を用いた点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカ(下記式(i)-4で表す)を製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
【0218】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図11に示す。
【0219】
【化8】
[実施例23]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量のトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して3倍モル量)を用いた点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカ(下記式(i)-5で表す)を製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
【0220】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図11に示す。
【0221】
【化9】
【0222】
[実施例24]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量のジエチレントリアミン(DETA、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカを製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素23.26質量%、水素5.17質量%、窒素8.65質量%
【0223】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図11に示す。図11には、先の実施例2の結果もあわせて示している。
【0224】
[実施例25]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量のイソホロンジアミン(IPDA、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカを製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素27.94質量%、水素5.35質量%、窒素3.89質量%
【0225】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図11に示す。
【0226】
[実施例26]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量の1,4-シクロヘキサンジアミン(CHDA、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカを製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素26.84質量%、水素5.16質量%、窒素5.72質量%
【0227】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図11に示す。
【0228】
[実施例27]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量のトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して100倍モル量)を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカを製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素25.11質量%、水素5.64質量%、窒素9.96質量%
【0229】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図11に示す。
【0230】
実施例20~27における置換非晶質シリカの製造条件を、表6にまとめて示す。
さらに、実施例24~27については、塩素原子導入シリカの塩素原子置換率を算出したので、その結果も表6に示す。塩素原子導入シリカの塩素原子置換率は、置換非晶質シリカの元素分析により窒素の導入量を求め、その値から算出した。
【0231】
【表6】
【0232】
図11から明らかなように、化合物(C)の種類がいずれであっても、化合物(B)/化合物(A)モル比が0.5であり、かつ、化合物(C)/塩素原子モル比が100である場合(すなわち実施例24~27、2)の方が、化合物(B)/化合物(A)モル比が1であり、かつ、化合物(C)/塩素原子モル比が3である場合(すなわち実施例20~23、13)よりも、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)の二酸化炭素の吸収量が多かった。
また、実施例24、27及び2の方が、実施例25及び26よりも、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収量が多く、実施例20、23及び13の方が、実施例21及び22よりも、置換非晶質シリカの二酸化炭素の吸収量が多かった。これは、化合物(C)同士の間で、その炭素数が大きく異なっていない場合には、化合物(C)が鎖状構造である方が、環状構造を有する場合よりも、二酸化炭素の吸収に有利であることを示唆していた。
また、実施例20、23及び13の比較から、化合物(C)がその分子構造中に、末端のアミノ基以外にイミノ基を有するか、又は末端のアミノ基を2個以上有する場合の方が、二酸化炭素の吸収に有利であることを示唆していた。さらに、この結果は、これらイミノ基、又は末端の余剰のアミノ基(いずれか1個のアミノ基を特定した場合の他のアミノ基)が、二酸化炭素との反応に関与していることを示唆していた。
【0233】
<<二酸化炭素の除去効率の比較>>
実施例2の再現実験を行った実施例2’、及び実施例14の再現実験を行った実施例14’の、それぞれの二酸化炭素の吸収時における、置換非晶質シリカの二酸化炭素の除去効率を図12に示す。
実施例20及び実施例24の二酸化炭素の吸収時における、置換非晶質シリカの二酸化炭素の除去効率を図13に示す。
実施例26の二酸化炭素の吸収時における、置換非晶質シリカの二酸化炭素の除去効率を図14に示す。
実施例23及び実施例27の二酸化炭素の吸収時における、置換非晶質シリカの二酸化炭素の除去効率を図15に示す。
これら実施例における置換非晶質シリカについて、実施例13等の場合と同じ方法で算出した(a)二酸化炭素の吸収量、(b)アミノ基含有量、及び(c)アミノ基利用率を、を表7にまとめて示す。
【0234】
【表7】
【0235】
図12図15から明らかなように、化合物(C)の種類がいずれであっても、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)の二酸化炭素の除去効率は、同様の傾向を示した。
【0236】
<<二酸化炭素の吸収放出剤の製造、及び二酸化炭素の吸収>>
[実施例28]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量の1,3-ジアミノプロパン(DAP、別名;1,3-プロパンジアミン、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して3倍モル量)を用いた点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカ(下記式(i)-6で表す)を製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素24.98質量%、水素4.69質量%、窒素5.10質量%
【0237】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図16に示す。図16には、先の実施例20~23、13の結果もあわせて示している。
【0238】
【化10】
【0239】
[実施例29]
置換非晶質シリカの製造時に、エチレンジアミン(EDA)に代えて、同じモル量の1,6-ジアミノヘキサン(DAH、別名;1,6-ヘキサンジアミン、化合物(C)に相当)(塩素原子導入シリカ中の塩素原子に対して3倍モル量)を用いた点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、目的物である置換非晶質シリカ(下記式(i)-7で表す)を製造した。
得られた置換非晶質シリカのXRDによる分析結果は、実施例2の場合と同様であった。
得られた置換非晶質シリカの元素分析の結果を以下に示す。
元素分析の結果:炭素29.04質量%、水素5.20質量%、窒素4.03質量%
【0240】
さらに、得られた置換非晶質シリカを用いて、実施例1の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った。このときの結果を図16に示す。
【0241】
図16から明らかなように、化合物(C)がDAP(実施例28)及びDAH(実施例29)のいずれであっても、置換非晶質シリカ(二酸化炭素の吸収放出剤)の二酸化炭素の吸収量は、化合物(C)がEDAである場合(実施例13)に対して同等以上であり、化合物(C)がIPDAである場合(実施例21)、及びCHDAである場合(実施例22)に対しても顕著に多かった。すなわちこれら実施例も、上記のとおり、化合物(C)が鎖状構造である方が、環状構造を有する場合よりも、二酸化炭素の吸収に有利であることを示唆していた。
【0242】
【化11】
【0243】
[実施例30]
<<二酸化炭素の繰り返し回収>>
実施例2で得られた二酸化炭素の吸収放出剤(置換非晶質シリカ)を用いて、実施例2の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行い、二酸化炭素の吸収量を算出した。その後、引き続き、実施例2の場合と同じ方法で、二酸化炭素の放出実験を行い、二酸化炭素の放出量を算出した。このとき、ガラス管からの排出ガスを、熱伝導度検出器(TCD)を用いたガスクロマトグラフィー(TCD-GC)法により分析し、排出ガス中の二酸化炭素を定量し、その定量値から二酸化炭素の放出量を算出した(以上、1サイクル目)。これらの結果を図17に示す。
【0244】
次いで、上記の1サイクル目の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行い、引き続き、二酸化炭素の放出実験を行って、二酸化炭素の吸収量及び放出量を算出した(以上、2サイクル目)。
次いで、さらにもう一度、二酸化炭素の吸収実験及び放出実験を繰り返し行い、二酸化炭素の吸収量及び放出量を算出した(以上、3サイクル目)。
これらの結果を図17に示す。
【0245】
図17から明らかなように、二酸化炭素の回収の1サイクル目、2サイクル目及び3サイクル目のいずれにおいても、二酸化炭素の吸収量はほぼ同一であり、二酸化炭素の放出量もほぼ同一であった。すなわち、この二酸化炭素の吸収放出剤は、二酸化炭素の繰り返し回収を行うのに好適であることを確認できた。
【0246】
[実施例31]
<<湿潤条件下での二酸化炭素の吸収>>
実施例2で得られた二酸化炭素の吸収放出剤(置換非晶質シリカ)を用いて、この二酸化炭素の吸収放出剤に対して、前記乾燥空気(二酸化炭素を体積基準で約400ppm含む)に代えて湿潤空気を供給した点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行った(実施例31-1)。より具体的には、置換非晶質シリカが詰められているガラス管に対して、10mL/minの流量で前記乾燥空気を供給するのに代えて、前記乾燥空気を10mL/minの流量で試験管内部の水中に流入させてバブリングし、この水中を通過した試験管内部のガスを供給することで、二酸化炭素の吸収実験を行い、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した。
別途、比較実験として、実施例2で得られた二酸化炭素の吸収放出剤を用いて、実施例2の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行い、二酸化炭素の除去効率(吸収効率)を算出した(実施例31-2)。
これらの結果を図18に示す。
【0247】
図18から明らかなように、二酸化炭素の吸収放出剤は、湿潤条件下でも、乾燥条件下の場合と同等の二酸化炭素の吸収能を有することが確認された。
【0248】
[実施例32]
<<異なる濃度の二酸化炭素の吸収>>
実施例2で得られた二酸化炭素の吸収放出剤(置換非晶質シリカ)を用いて、この二酸化炭素の吸収放出剤に対して、前記乾燥空気(二酸化炭素を体積基準で約400ppm含む)に代えて、二酸化炭素を1体積%、窒素を99体積%でそれぞれ含む混合ガスを供給した点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行い、二酸化炭素の吸収量を算出した(実施例32-1)。
別途、実施例2で得られた二酸化炭素の吸収放出剤(置換非晶質シリカ)を用いて、この二酸化炭素の吸収放出剤に対して、前記乾燥空気に代えて、二酸化炭素を20体積%、窒素を80体積%でそれぞれ含む混合ガスを供給した点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行い、二酸化炭素の吸収量を算出した(実施例32-2)。
別途、比較実験として、実施例2で得られた二酸化炭素の吸収放出剤を用いて、実施例2の場合と同じ方法で、二酸化炭素の吸収実験を行い、二酸化炭素の吸収量を算出した(実施例32-3)。
これらの結果を図19に示す。
【0249】
図19から明らかなように、混合ガス(乾燥空気も混合ガスである)中の二酸化炭素の濃度が高くなるほど、二酸化炭素の吸収量が増大していた。
【0250】
さらに、実施例32-1及び実施例32-3で得られた、二酸化炭素を吸収後のそれぞれの置換非晶質シリカについて、先に記載の条件でFT-IRを用いて分析した。さらに、二酸化炭素を吸収前の置換非晶質シリカについても、同じ条件でFT-IRを用いて分析した。そして、これら分析により取得したスペクトルデータから、二酸化炭素を吸収前後の差スペクトルを求めた。これら差スペクトルのデータを図20に示す。
【0251】
図20から明らかなように、実施例32-1(二酸化炭素の濃度が1体積%)では、実施例32-3(二酸化炭素の濃度が約400ppm)よりも、「CO」に相当するシグナルが強く検出された。これから、混合ガス中の二酸化炭素の濃度が高くなると、図20中にあわせて示す構造式のように、置換非晶質シリカは、その化合物(C)由来の末端部のアミノ基において、二酸化炭素と反応することで、N置換カルバミン酸を形成し、図4に示すものとは異なるタイプの化合物を形成していると推測された。
【0252】
<<二酸化炭素の吸収放出剤の二酸化炭素の吸収能の比較>>
非特許文献1「ChemSusChem.,5,2058(2012)」、非特許文献2「いnd.Eng.Chem.Res.,49,359(2010)」及び非特許文献3「Energy Environ.Sci.,4,3584(2011)」には、上述の特許文献1~2で開示されている修飾シリカと同様の形式の化合物を用いて、二酸化炭素を吸収する方法が開示されている。これら方法を、これら非特許文献の番号に対応させてそれぞれ、方法(I)、方法(II)及び方法(III)と称する。
一方、非特許文献4「Energy Fuels.,25,5528(2011)」及び非特許文献5「JACS Au,2,380(2022)」には、上述の特許文献3で開示されているアミン吸着化合物と同様の形式の化合物を用いて、二酸化炭素を吸収する方法が開示されている。これら方法を、これら非特許文献の番号に対応させてそれぞれ、方法(IV)及び方法(V)と称する。
これら方法(I)~(V)で二酸化炭素の吸収実験を行ったときの二酸化炭素の吸収量と、上記の実施例2’、24及び27での二酸化炭素の吸収量と、をプロットしたグラフを、図21として示す。
【0253】
図21から明らかなように、実施例2’、24及び27での二酸化炭素の吸収量は、上記の従来法での二酸化炭素の吸収量に対して、同等以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明は、二酸化炭素の固定、及び二酸化炭素の回収の分野全般で利用可能である。
図1
図2
図3
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図8
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図11
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図21