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特開2024-125880暗所判定装置、暗所判定方法、及び暗所判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125880
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】暗所判定装置、暗所判定方法、及び暗所判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240911BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240911BHJP
   H04N 23/741 20230101ALN20240911BHJP
【FI】
H04N23/60 500
G08G1/16 C
H04N23/741
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033998
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢太
(72)【発明者】
【氏名】今任 祐基
【テーマコード(参考)】
5C122
5H181
【Fターム(参考)】
5C122DA03
5C122DA14
5C122EA21
5C122EA47
5C122FH09
5C122FH18
5C122HA35
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB05
5H181AA01
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】暗所に進入する前に、暗所に進入予定であることを判定することができる。
【解決手段】暗所判定装置は、第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得する取得部と、前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出する暗所進行度算出部と、前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する判定部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得する取得部と、
前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出する暗所進行度算出部と、
前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する判定部と、
を備えた暗所判定装置。
【請求項2】
前記暗所進行度算出部は、前記判定領域を分割した複数の分割領域の一部の分割領域を前記時間変化量の算出対象から除外して、前記時間変化量を算出する
請求項1記載の暗所判定装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記車両の操舵角及び走行速度の少なくとも一方を含む車両状態情報を取得し、
前記暗所進行度算出部は、前記車両状態情報に基づいて、前記算出対象から除外する前記分割領域を設定する
請求項2記載の暗所判定装置。
【請求項4】
前記暗所進行度算出部は、前記判定領域の中央の前記分割領域を前記算出対象から除外する
請求項2又は請求項3記載の暗所判定装置。
【請求項5】
前記暗所進行度算出部は、前記判定領域を分割した複数の分割領域の各々に設定された重み付け係数を用いて、前記時間変化量を算出する
請求項1記載の暗所判定装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記車両の操舵角及び走行速度の少なくとも一方を含む車両状態情報を取得し、
前記暗所進行度算出部は、前記車両状態情報に基づいて、前記重み付け係数を設定する
請求項5記載の暗所判定装置。
【請求項7】
コンピュータが、
第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得し、
前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出し、
前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する
ことを含む処理を実行する暗所判定方法。
【請求項8】
コンピュータに、
第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得し、
前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出し、
前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する
ことを含む処理を実行させる暗所判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、暗所判定装置、暗所判定方法、及び暗所判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載され、前記車両の周囲の車外照度を測定し、当該測定結果に基づいて、当該車両の外部に設けられた車外灯の点灯制御を行う車両用点灯制御装置において、前記車外照度を測定する照度測定手段と、前記照度測定手段による測定結果に基づき、前記車外照度が低下したか否かを判定する判定手段と、前記車外灯を点灯状態にするための点灯閾値を設定する閾値設定手段と、時間を計時する計時手段と、前記車外灯の点灯制御を行う点灯制御手段と、を備え、前記閾値設定手段は、前記照度測定手段により測定された車外照度が、予め設定された第1基準照度以下となった場合に、当該車外照度よりも値の高い点灯閾値の設定を開始するとともに、前記判定手段により前記車外照度が低下したと判定されるたびに、前記点灯閾値を、当該車外照度よりも高い値に維持しつつ更新し、前記計時手段は、前記閾値設定手段による前記点灯閾値の設定開始に基づいて、計時を開始し、前記点灯制御手段は、前記計時手段による計時時間が、予め設定された所定時間以内である場合は、前記車外灯の消灯状態を継続し、前記計時手段による計時時間が、予め設定された所定時間を超え、かつ、前記照度測定手段により測定された車外照度が、前記閾値設定手段により設定された前記点灯閾値よりも低い場合は、前記車外灯を点灯状態にする、ことを特徴とする車両用点灯制御装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、CCDカメラにより撮像された画像データを画像認識ユニットに入力して、その輝度諧調に基づいて障害物を検出すると共に、サンプル画像データの輝度諧調によりシャッタースピード変更マップを参照してCCDカメラのシャッタースピードを光量に応じて調整するCCD画像式障害物検出装置において、画像認識ユニットからのシャッタースピードと輝度諧調の信号により、車両前方の明暗を判断して点灯または消灯の信号を出力する点灯判定手段と、点灯または消灯の信号により前照灯を自動的に点灯または消灯するオートライト装置とを備えることを特徴とする障害物検出装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、カメラによって撮像された車両前方画像を監視し、車両前方画像の明暗を判断して前照灯を自動的に点灯または消灯する自動灯火装置において、前記車両前方画像を高輝度の明領域と低輝度の暗領域との2つの領域に分ける輝度分布判定手段と、前照灯が消灯である場合、前記輝度分布判定手段により判定した輝度分布の全領域が低輝度の暗領域であると判定されたときにのみ前照灯を自動的に点灯する自動灯火制御手段と、を備えたことを特徴とする自動灯火装置が開示されている。
【0005】
特許文献4には、車両の走行環境を検出する走行環境検出方法であって、車両前方、又は、車両前方及び車室内の双方を、1つの画像内に撮像し、該撮像される画像内には、車両前方の中央部の画像が存在する中央領域、該中央領域の上部の領域であって車両前方上部の画像が存在する上部領域、及び車室内の画像が存在する車室内領域のうち、少なくとも2つの領域が、明暗判定用の判定領域として予め設定されており、前記判定領域の明暗を、該判定領域毎に判定し、該判定結果に基づいて、前記車両の走行環境を検出することを特徴とする走行環境検出方法が開示されている。
【0006】
特許文献5には、車両の周囲の照度を計測する照度計測手段と、前記車両の進行方向を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影した前方視界画像における暗部の占める割合を検出する暗部検出手段と、前記暗部の占める割合が所定の暗部閾値を超えた場合に、前記照度計測手段により得られた照度測定値に基づき、ライトを点灯させる点灯制御手段と、を備えたことを特徴とするライト点灯制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-232623号公報
【特許文献2】特開平7-318644号公報
【特許文献3】特開2004-243895号公報
【特許文献4】特開2009-255722号公報
【特許文献5】特開2001-39210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車両が、夜間、トンネル、及び濃霧等の視界が悪い道路を走行する際は、前照灯、車幅灯、及び尾灯等の各種照明の点灯(灯火)が義務付けられている。近年では、走行中に視界の悪い環境へ移動した際に、各種照明を自動的に点灯するオートライトシステムの導入の標準化及び義務化が進められている
【0009】
現在使用されているオートライトシステムは、車に取り付けられた照度計等を用いて車の現在位置が暗所であるか否かを判定する。このため、実際の走行シーンにおいては、トンネル等の暗所へ進行する際の灯火タイミングが、暗所へ突入した瞬間、又は、暗所へ突入してから数秒後となり、運転者が障害物等を認識しづらくなる虞があった。
【0010】
開示の技術は、上述した課題を解決するためになされたものであり、暗所に進入する前に、暗所に進入予定であることを判定することができる暗所判定装置、暗所判定方法、及び暗所判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様に係る暗所判定装置は、第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得する取得部と、前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出する暗所進行度算出部と、前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する判定部と、を備える。
【0012】
第2の態様に係る暗所判定方法は、コンピュータが、第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得し、前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出し、前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定することを含む処理を実行する。
【0013】
第3の態様に係る暗所判定プログラムは、コンピュータに、第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得し、前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出し、前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定することを含む処理を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
開示の技術によれば、暗所に進入する前に、暗所に進入予定であることを判定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】暗所判定システムの構成図である。
図2】暗所判定装置のハードウェア構成を示す構成図である。
図3】暗所判定装置の機能ブロック図である。
図4】高感度撮影画像の一例を示す図である。
図5】低感度撮影画像の一例を示す図である。
図6】合成画像の一例を示す図である。
図7A】判定領域の画素に対する高感度画素が占める割合について説明するための図である。
図7B】判定領域の画素に対する高感度画素が占める割合について説明するための図である。
図7C】判定領域の画素に対する高感度画素が占める割合について説明するための図である。
図8A】判定領域の画素に対する高感度画素が占める割合について説明するための図である。
図8B】判定領域の画素に対する高感度画素が占める割合について説明するための図である。
図8C】判定領域の画素に対する高感度画素が占める割合について説明するための図である。
図9】分割領域について説明するための図である。
図10】重み付け係数について説明するための図である。
図11】暗所判定プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されている場合があり、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1に示すように、暗所判定システム10は、撮影装置20、暗所判定装置30、及び点灯制御装置40を含む。
【0018】
撮影装置20は、図示しない車両の前方を動画像として撮影した撮影画像を暗所判定装置30へ逐次出力する。撮影装置20は、所謂HDR(High Dynamic Range)機能を有する。HDR機能は、高感度で撮影した高感度撮影画像及び低感度で撮影した低感度撮影画像に基づいて、明るい部分が白飛びしないように、且つ、暗い部分が潰れないように、高感度撮影画像及び低感度撮影画像を合成する機能である。
【0019】
本実施形態では、撮影装置20は、HDR機能により、高感度撮影画像及び低感度撮影画像を合成した合成画像を暗所判定装置30に逐次出力する。なお、合成画像の各画素には、高感度撮影画像の画素であるのか低感度撮影の画素であるのかを示す感度情報が対応付けられている。
【0020】
暗所判定装置30は、撮影装置20から出力された合成画像に基づいて、車両が暗所に進入予定であるか否かを判定し、判定結果を点灯制御装置40に出力する。
【0021】
ここで、暗所とは、車両の前照灯等の照明装置の点灯が必要となる明るさの場所をいう。暗所の例としては、トンネル、森、林、及び地下駐車場等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0022】
点灯制御装置40は、暗所判定装置30の判定結果に基づいて、車両の前照灯等の照明装置の点灯を制御する。具体的には、点灯制御装置40は、暗所判定装置30の判定結果が、暗所に進入予定であるという判定結果であった場合は、車両の前照灯等の照明装置を点灯させ、暗所判定装置30の判定結果が、暗所に進入予定ではないという判定結果であった場合は、照明装置を点灯させない。
【0023】
詳細は後述するが、暗所判定装置30は、暗所に進入してから暗所に進入したと判定するのではなく、暗所に進入する前に、暗所に進入予定であるか否かを判定する。このため、点灯制御装置40は、暗所判定装置30が暗所に進入予定であると判定した場合には、暗所に進入してから車両の照明装置を点灯させるのではなく、暗所に進入する前に照明装置を点灯させることができる。このため、運転者が障害物等を認識しづらくなるのを防ぐことができる。
【0024】
図2は、本実施形態に係る暗所判定装置30のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、暗所判定装置30は、コントローラ31を備える。コントローラ31は、一般的なコンピュータを含む装置で構成される。
【0025】
図2に示すように、コントローラ31は、CPU(Central Processing Unit)31A、ROM(Read Only Memory)31B、RAM(Random Access Memory)31C、及び入出力インターフェース(I/O)31Dを備える。そして、CPU31A、ROM31B、RAM31C、及びI/O31Dがバス31Eを介して各々接続されている。バス31Eは、コントロールバス、アドレスバス、及びデータバスを含む。また、I/O31Dには、通信部32、及び記憶部33が接続されている。
【0026】
通信部32は、撮影装置20及び点灯制御装置40等とデータ通信を行うためのインターフェースである。
【0027】
記憶部33は、ハードディスク等の不揮発性の外部記憶装置で構成される。図2に示すように、記憶部33は、暗所判定プログラム33A等を記憶する。
【0028】
CPU31Aは、コンピュータの一例である。ここでいうコンピュータとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、CPU)、又は、専用のプロセッサ(例えば、GPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0029】
なお、暗所判定プログラム33Aは、不揮発性の非遷移的(non-transitory)記録媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、暗所判定装置30に適宜インストールすることで実現してもよい。
【0030】
不揮発性の非遷移的記録媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD(ハードディスクドライブ)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0031】
図3は、暗所判定装置30のCPU31Aの機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、CPU31Aは、機能的には、取得部34、暗所進行度算出部35、及び判定部36の各機能部を備える。
【0032】
CPU31Aは、記憶部33に記憶された暗所判定プログラム33Aを読み込んで実行することにより図3に示す各機能部として機能する。
【0033】
取得部34は、高感度で車両の前方を撮影した高感度撮影画像と、低感度で車両の前方を撮影した低感度撮影画像と、を合成した合成画像を撮影装置20から取得する。なお、高感度撮影画像は、第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像の一例である。また、低感度撮影画像は、第1感度よりも低い第2感度で車両の前方を撮影した第2撮影画像の一例である。
【0034】
図4には、一例として前方にトンネル50が存在する道路を走行中に撮影した撮影画像であって、高感度で撮影した高感度撮影画像52Hを示した。
【0035】
また、図5には、図4と同様に、前方にトンネル50が存在する道路を走行中に撮影した撮影画像であって、低感度で撮影した低感度撮影画像52Lを示した。
【0036】
図4に示すように、高感度撮影画像52Hは、高感度で撮影された画像であるため、トンネル50のような暗い部分が低感度撮影画像52Lと比較して黒く潰れることなく明瞭に表現されている。一方、トンネル50の周囲については、低感度撮影画像52Lと比較して白飛びしたような画像となっている。
【0037】
また、図5に示すように、低感度撮影画像52Lは、低感度で撮影されて画像であるため、トンネル50のような暗い部分が高感度撮影画像52Hと比較して黒く潰れてしまっている。一方、トンネル50の周囲については、高感度撮影画像52Hと比較して白飛びすることなく明瞭に表現されている。
【0038】
撮影装置20は、HDR機能により、ダイナミックレンジが広くなるように高感度撮影画像及び低感度撮影画像を合成した合成画像を生成し、生成した合成画像及び合成画像の各画素の感度情報を暗所判定装置30に出力する。具体的には、撮影装置20は、トンネル50等の暗い部分については、図4に示す高感度撮影画像52Hの画素を選択し、トンネル50周辺等の明るい部分については、図5に示す低感度撮影画像52Lの画素を選択して合成し、図6に示すような合成画像52Mを生成する。図6に示すように、合成画像52Mは、トンネル50等の暗い部分については、高感度撮影画像52Hの画素が選択され、トンネル50周辺等の明るい暗い部分については、低感度撮影画像52Lの画素が選択されているため、ダイナミックレンジが広い画像となっている。
【0039】
暗所進行度算出部35は、取得部34が取得した合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、判定領域に含まれる高感度撮影画像の高感度画素の高感度画素数又は判定領域に含まれる低感度撮影画像の低感度画素の低感度画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出する。
【0040】
図4~6に示すように、暗所進行度算出部35は、一例として撮影画像の中央付近の予め定めた領域を判定領域54として設定する。撮影画像の中央付近の予め定めた領域を判定領域54として設定するのは、車両の前方を撮影した場合、撮影画像の中央付近にトンネル50等の暗所が存在する可能性が高いためである。
【0041】
具体的には、暗所進行度算出部35は、判定領域54に含まれる判定画素の画素数をHG、判定領域54に含まれる高感度撮影画像52Hの高感度画素の高感度画素数をKG、判定領域54に含まれる低感度撮影画像52Lの低感度画素の低感度画素数をTGとした場合に、判定領域54の画素数HGに対する高感度画素数KG又は低感度画素数TGの割合Wを算出する。すなわち、割合Wとして、KG/HG又はTG/HGを算出する。そして、今回算出した割合Wと、単位時間分遡った時点で算出した割合Waと、の差分(W-Wa)を時間変化量ΔWとして算出し、算出したΔWを暗所進行度ASとする。
【0042】
ここで、車両がトンネルに向かって進み、図7A図7B図7Cの順に時間が経過したとする。この場合、トンネル付近の領域56のサイズは徐々に大きくなる。また、トンネル付近の領域56は、低感度画素よりも高感度画素が占める割合が高い。換言すると、トンネル付近の領域56は、高感度画素よりも低感度画素が占める割合が低い。
【0043】
従って、判定領域54の画素数HGに対する高感度画素数KGの割合Wの時間変化量ΔWが大きくなるに従って、トンネル50に近づいていると言える。また、判定領域54の画素数HGに対する低感度画素数TGの割合Wの時間変化量ΔWが小さくなるに従って、トンネル50に近づいているとも言える。
【0044】
一方、図8A図8B図8Cに示すように、例えば前方に幌付きの軽トラック58が走行している場合において、図8A図8B図8Cの順に時間が経過した場合、幌部分の領域60のサイズは、ほとんど変化しない。従って、時間変化量でΔWがほとんど変化しない場合は、トンネル50等の暗部に近づいているとは言えない。
【0045】
そこで、判定部36は、暗所進行度算出部35が算出した暗所進行度ASが予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する。なお、閾値は、例えば実験結果等に基づいて、精度良く暗所に進入予定であると判定可能な値に設定される。
【0046】
なお、暗所進行度算出部35は、判定領域54を分割した複数の分割領域の一部の分割領域を時間変化量ΔWの算出対象から除外して、時間変化量ΔWを算出するようにしてもよい。例えば、図9に示すように、判定領域54を複数の分割領域54Dに分割する。図9の例では、6×6の36個の分割領域54Dに分割している。そして、図9に示すように、例えば判定領域54の右上の3つの分割領域54D1、54D2、54D3、左上の分割領域54D4の4つの分割領域を除外して、時間変化量ΔWを算出する。なお、除外対象の分割領域54Dとしては、例えば暗所に進入予定であるか否かを判定する際の判定精度に影響を及ぼさない分割領域54Dが予め設定される。
【0047】
図9の場合、除外対象として設定された分割領域54D1~54D4以外の分割領域54Dについて、各画素が高感度画素であるのか、低感度画素であるのかが判定され、判定結果に基づいて時間変化量ΔWが算出される。
【0048】
また、取得部34は、車両の操舵角及び走行速度の少なくとも一方を含む車両状態情報を取得し、暗所進行度算出部35は、取得部34が取得した車両状態情報に基づいて、算出対象から除外する分割領域54Dを設定するようにしてもよい。例えば、車両が右方向に曲がる道路を走行しており、その先にトンネル50が存在する場合、真っ直ぐの道路を走行している場合と比較して、判定領域54におけるトンネル50の位置は右側にずれることとなる。その場合、判定領域54の左側の分割領域54Dを時間変化量ΔWの算出の除外対象としても、暗所に進入予定であるか否かを判定する際の判定精度に影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。そこで、取得した車両の操舵角が、右方向へ曲がるような操舵角となっている場合は、判定領域54の左側の分割領域54Dを時間変化量ΔWの算出対象から除外してもよい。逆に、取得した車両の操舵角が、左方向へ曲がるような操舵角となっている場合は、判定領域54の右側の分割領域54Dを時間変化量ΔWの算出対象から除外してもよい。また、取得した車両の走行速度に応じて、時間変化量ΔWの算出対象から除外する分割領域54Dの位置を予め定めておいてもよい。
【0049】
また、暗所進行度算出部35は、判定領域54の中央の分割領域を時間変化量ΔWの算出対象から除外するようにしてもよい。判定領域54にトンネルが存在する場合、トンネルの出口付近は明るくなるため低感度画素が使用されている可能性が高い。そこで、判定領域54の中央の分割領域を時間変化量ΔWの算出対象から除外することにより、暗所に進入予定であるか否かの判定精度が低下するのを抑制することができる。
【0050】
また、暗所進行度算出部35は、判定領域54を分割した複数の分割領域54Dの各々に設定された重み付け係数を用いて、時間変化量ΔWを算出するようにしてもよい。すなわち、各分割領域54Dについて算出した高感度画素の画素数KG又は低感度画素の画素数TGに、その分割領域54Dに設定された重み付け係数を乗算する。これにより、重み付け係数が大きい分割領域54Dほど、高感度画素の画素数KG又は低感度画素の画素数TGがより多く算出される。例えば、図10に示すように、分割領域54Dの各々に重み付け係数を設定する。図10の例では、重み付け係数が「0」、「1」、「2」、「4」の4種類であるが、重み付け係数の種類はこれに限られるものではない。
【0051】
また、取得部34は、車両の操舵角及び走行速度の少なくとも一方を含む車両状態情報を取得し、暗所進行度算出部35は、車両状態情報に基づいて、重み付け係数を設定するようにしてもよい。例えば前述したように、車両が右方向に曲がる道路を走行しており、その先にトンネル50が存在する場合において、取得した車両の操舵角が、右方向へ曲がるような操舵角となっている場合は、判定領域54の右側の分割領域54Dの重み付け係数と比較して、左側の分割領域54Dの重み付け係数を小さくしてもよい。逆に、取得した車両の操舵角が、左方向へ曲がるような操舵角となっている場合は、判定領域54の左側の分割領域54Dの重み付け係数と比較して、右側の分割領域54Dの重み付け係数を小さくしてもよい。また、前回算出した暗所進行度ASに基づいて重み付け係数の配置を変更してもよい。
【0052】
次に、図11を参照して、暗所判定装置30のCPU31Aで実行される暗所判定プログラムのフローチャートについて説明する。なお、図11の処理は繰り返し実行される。
【0053】
ステップS100において、CPU31Aが、撮影装置20から車両の前方を高感度及び低感度で撮影した画像を合成した合成画像及び感度情報を取得する。
【0054】
ステップS101では、CPU31Aが、ステップS100で取得した合成画像52M及び感度情報に基づいて、暗所進行度ASを算出する。すなわち、前述したように、取得した合成画像の予め定めた判定領域54に含まれる判定画素の画素数HGに対する、判定領域に含まれる高感度撮影画像52Hの高感度画素の高感度画素数KG又は判定領域に含まれる低感度撮影画像52Lの低感度画素の低感度画素数TGの割合の時間変化量ΔWを算出し、算出した時間変化量ΔWを暗所進行度ASとする。
【0055】
ステップS102では、CPU31Aが、ステップS101で算出した暗所進行度ASが予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。そして、暗所進行度ASが予め定めた閾値以上である場合はステップS103へ移行する。一方、暗所進行度ASが予め定めた閾値未満である場合は本ルーチンを終了する。
【0056】
ステップS103では、CPU31Aが、暗所へ進入予定であることを点灯制御装置40に通知する。これにより、点灯制御装置40は、車両の前照灯等の照明装置を点灯させる。
【0057】
このように、本実施形態では、HDR機能により生成された合成画像及び感度情報に基づいて、合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数HGに対する、判定領域54に含まれる高感度撮影画像52Hの高感度画素の高感度画素数KG又は判定領域54に含まれる低感度撮影画像52Lの低感度画素の低感度画素数TGの割合の時間変化量ΔWを算出して暗所進行度ASとし、暗所進行度ASが閾値以上の場合を暗所へ進入予定であると判定する。これにより、暗所に進入する前に、暗所に進入予定であることを判定することができ、前照灯等の点灯が遅くなるのを抑制することができる。
【0058】
上記の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0059】
(付記1)
第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得する取得部と、
前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出する暗所進行度算出部と、
前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する判定部と、
を備えた暗所判定装置。
(付記2)
前記暗所進行度算出部は、前記判定領域を分割した複数の分割領域の一部の分割領域を前記時間変化量の算出対象から除外して、前記時間変化量を算出する
付記1記載の暗所判定装置。
(付記3)
前記取得部は、前記車両の操舵角及び走行速度の少なくとも一方を含む車両状態情報を取得し、
前記暗所進行度算出部は、前記車両状態情報に基づいて、前記算出対象から除外する前記分割領域を設定する
付記2記載の暗所判定装置。
(付記4)
前記暗所進行度算出部は、前記判定領域の中央の前記分割領域を前記算出対象から除外する
付記2又は付記3記載の暗所判定装置。
(付記5)
前記暗所進行度算出部は、前記判定領域を分割した複数の分割領域の各々に設定された重み付け係数を用いて、前記時間変化量を算出する
付記1~4の何れか1つに記載の暗所判定装置。
(付記6)
前記取得部は、前記車両の操舵角及び走行速度の少なくとも一方を含む車両状態情報を取得し、
前記暗所進行度算出部は、前記車両状態情報に基づいて、前記重み付け係数を設定する
付記5記載の暗所判定装置。
(付記7)
コンピュータが、
第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得し、
前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出し、
前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する
ことを含む処理を実行する暗所判定方法。
(付記8)
コンピュータに、
第1感度で車両の前方を撮影した第1撮影画像と、前記第1感度よりも低い第2感度で前記車両の前方を撮影した第2撮影画像と、を合成した合成画像を取得し、
前記合成画像の予め定めた判定領域に含まれる判定画素の画素数に対する、前記判定領域に含まれる前記第1撮影画像の第1画素の第1画素数又は前記判定領域に含まれる前記第2撮影画像の第2画素の第2画素数の割合の時間変化量を、暗所進行度として算出し、
前記暗所進行度が予め定めた閾値以上である場合に、暗所に進入予定であると判定する
ことを含む処理を実行させる暗所判定プログラム。
【符号の説明】
【0060】
10 暗所判定システム
20 撮影装置
30 暗所判定装置
33A 暗所判定プログラム
34 取得部
35 暗所進行度算出部
36 判定部
40 点灯制御装置
50 トンネル
52H 高感度撮影画像
52L 低感度撮影画像
52M 合成画像
54 判定領域
54D 分割領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11