(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125897
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】物流管理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20240101AFI20240911BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034020
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 唯
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一
(72)【発明者】
【氏名】永原 聡士
(72)【発明者】
【氏名】細田 順子
(72)【発明者】
【氏名】平林 重幸
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L049AA16
5L049CC51
(57)【要約】
【課題】
動的に発生し得る配送変更要求に応じて、中継拠点での作業をも考慮した最適な配送計画案を導出し得る物流管理システム及び方法を提案する。
【解決手段】
配送変更要求に対応する配送計画案を生成し、生成した配送計画案を適用した場合における、荷物を配送期限内に配送可能な最遅の運送便の組合せ情報を配送対象の荷物ごとにそれぞれ生成すると共に、中継拠点で行われる荷物に対する作業の所要時間を考慮した将来の各荷物の配送状況を予測し、荷物ごとの将来の予測配送状況及び最終便組合せ情報に基づいて、各荷物がそれぞれ当該荷物の配送期限を超過するか否かを判定し、判定結果及び配送変更要求への対応状況に基づいて各配送計画案による各荷物の配送期限の超過時間の合計値をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記配送計画案を評価するようにした。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中継拠点を有する物流ネットワークにおける物流を管理する物流管理装置において、
予め定められた配送計画を変更すべき旨の配送変更要求を取得する配送変更要求取得部と、
前記配送変更要求取得部が取得した前記配送変更要求に対応する前記配送計画の変更案である1又は複数の配送計画案を生成する配送計画案生成部と、
前記配送計画案生成部により生成された前記配送計画案を適用した場合における、荷物を配送期限内に配送可能な最遅の運送便の組合せの情報を最終便組合せ情報として配送対象の荷物ごとにそれぞれ生成する最終便組合せ情報生成部と、
前記中継拠点で行われる前記荷物に対する作業の所要時間を考慮した将来の各前記荷物の配送状況を予測する配送状況予測部と、
前記配送状況予測部の予測結果及び前記荷物ごとの前記最終便組合せ情報に基づいて、各荷物がそれぞれ当該荷物の配送期限を超過するか否かを判定する配送期限超過判定部と、
前記配送期限超過判定部の判定結果及び前記配送変更要求への対応状況に基づいて、各前記配送計画案による各前記荷物の配送期限の超過時間の合計値をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記配送計画案を評価する評価部と
を備えることを特徴とする物流管理装置。
【請求項2】
前記最終便組合せ情報生成部は、
前記荷物が最初に経由する前記中継拠点である始発拠点と、当該荷物が最後に経由する前記中継拠点である前記終点拠点との組合せごとにそれぞれ予め定義された、当該荷物が経由する前記中継拠点の組合せ及び順番、並びに、経由する前記中継拠点で発生する作業の内容及び所要時間の情報である中継指示情報と、
各前記運送便のダイヤ情報である運送便ダイヤ情報と、
前記荷物ごとの配送期限とに基づいて前記最終便組合せ情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の物流管理装置。
【請求項3】
前記配送期限超過判定部は、
前記荷物ごとに、前記配送状況予測部が予測した当該荷物の将来の配送状況の予測結果と、当該荷物の前記最終便組合せ情報とに基づいて、当該荷物が配送期限を超過するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の物流管理装置。
【請求項4】
前記評価部は、
前記配送計画案生成部により生成された前記配送計画案を適用した場合の輸送コストの増加量を考慮して各前記配送計画案をそれぞれ評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の物流管理装置。
【請求項5】
前記配送変更要求取得部は、
取得した前記配送変更要求に対して優先度を設定し、
前記評価部は、
前記配送変更要求の前記優先度を考慮して当該配送変更要求に対応する各前記配送計画案をそれぞれ評価する
ことを特徴とする請求項1に記載の物流管理装置。
【請求項6】
複数の中継拠点を有する物流ネットワークにおける物流を管理する物流管理装置において実行される物流管理方法であって、
予め定められた配送計画を変更すべき旨の配送変更要求を取得する第1のステップと、
取得した前記配送変更要求に対応する前記配送計画の変更案である1又は複数の配送計画案を生成する第2のステップと、
生成した前記配送計画案を適用した場合における、荷物を配送期限内に配送可能な最遅の運送便の組合せの情報を最終便組合せ情報として配送対象の荷物ごとにそれぞれ生成する第3のステップと、
前記中継拠点で行われる前記荷物に対する作業の所要時間を考慮した将来の各前記荷物の配送状況を予測し、予測した将来の各前記荷物の配送状況及び前記荷物ごとの前記最終便組合せ情報に基づいて、各荷物がそれぞれ当該荷物の配送期限を超過するか否かを判定する第4のステップと、
前記第4のステップにおける前記荷物ごとの判定結果及び前記配送変更要求への対応状況に基づいて、各前記配送計画案による各前記荷物の配送期限の超過時間の合計値をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記配送計画案を評価する第5のステップと
を備えることを特徴とする物流管理方法。
【請求項7】
前記第3のステップにおいて、前記物流管理装置は、
前記荷物が最初に経由する前記中継拠点である始発拠点と、当該荷物が最後に経由する前記中継拠点である前記終点拠点との組合せごとにそれぞれ予め定義された、当該荷物が経由する前記中継拠点の組合せ及び順番、並びに、経由する前記中継拠点で発生する作業の内容及び所要時間の情報である中継指示情報と、
各前記運送便のダイヤ情報である運送便ダイヤ情報と、
前記荷物ごとの配送期限とに基づいて前記最終便組合せ情報を生成する
ことを特徴とする請求項6に記載の物流管理方法。
【請求項8】
前記第4のステップにおいて、前記物流管理装置は、
前記荷物ごとに、予測した当該荷物の将来の配送状況の予測結果と、当該荷物の前記最終便組合せ情報とに基づいて、当該荷物が配送期限を超過するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の物流管理方法。
【請求項9】
前記第5のステップにおいて、前記物流管理装置は、
前記配送計画案生成部により生成された前記配送計画案を適用した場合の輸送コストの増加量を考慮して各前記配送計画案をそれぞれ評価する
ことを特徴とする請求項6に記載の物流管理方法。
【請求項10】
前記物流管理装置は、
取得した前記配送変更要求に対して優先度を設定し、
前記第5のステップにおいて、前記物流管理装置は、
前記配送変更要求の前記優先度を考慮して当該配送変更要求に対応する各前記配送計画案をそれぞれ評価する
ことを特徴とする請求項6に記載の物流管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物流管理装置及び方法に関し、例えば、物流ネットワークにおける物流を管理する物流管理装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子商取引(EC:Electronic Commerce)市場の拡大に伴い、宅配便の取扱量は年々増加している。宅配便においては、一般に荷物が届け先にいつ到着するかの目安となる基準日であるサービスレベルが設定されている。また顧客からの要望によって配送期限が指定される場合もある。このような配送期限を遵守することは、配送業者の信頼に関わる問題であるため重要である。
【0003】
配送業者は、集配基地や中継拠点などの物流拠点間の運送便本数、各物流拠点における輸送車両の着発時刻、運送便の走行ルートなどを予め定めた運送便ダイヤを立案し、輸送車両、出荷作業員、ドライバなどの出荷・輸送の主体又は手段となる輸送リソースを手配する。しかしながら、配送計画立案時の物量予測と当日の物量とのずれ、交通渋滞、ドライバや出荷作業員の欠勤などによるリソース量の変化などにより、荷物を配送するための配送計画を変更する必要が生じることがある。
【0004】
このような状況に鑑み、従来、配送計画の変更に関する技術が特許文献1及び特許文献2に開示されている。具体的に、特許文献1には、動的に発生し得る配送変更要求に応じ、実施可能な配送計画を立案する技術が開示されている。また特許文献2には、輸送量の変動と輸送リソースの変更に対して、少なくとも計画変更量を低減する輸送計画を立案する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-131797号公報
【特許文献2】特開2022-048586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
運送便(宅配便)における輸配送業務では、差出元地域の集配基地から1以上の中継拠点を経由して届け地域の集配基地に荷物を配送する。また中継拠点では、集配基地又は他の中継拠点から配送されてきた荷物の入荷や、入荷した荷物の出荷先ごとの仕分けが行われる。
【0007】
このため、配送変更要求(予め定められた配送計画を変更すべき旨の要求)があった場合、中継拠点で運送便を乗り継ぐ荷物については、中継拠点での作業内容及び作業時間を考慮する必要があるが、かかる特許文献1や特許文献2ではそのような考慮はなされていない。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、動的に発生し得る配送変更要求に応じて、中継拠点での作業をも考慮した配送計画案を導出し得る物流管理システム及び方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、複数の中継拠点を有する物流ネットワークにおける物流を管理する物流管理装置において、予め定められた配送計画を変更すべき旨の配送変更要求を取得する配送変更要求取得部と、前記配送変更要求取得部が取得した前記配送変更要求に対応する前記配送計画の変更案である1又は複数の配送計画案を生成する配送計画案生成部と、前記配送計画案生成部により生成された前記配送計画案を適用した場合における、荷物を配送期限内に配送可能な最遅の運送便の組合せの情報を最終便組合せ情報として配送対象の荷物ごとにそれぞれ生成する最終便組合せ情報生成部と、前記中継拠点で行われる前記荷物に対する作業の所要時間を考慮した将来の各前記荷物の配送状況を予測する配送状況予測部と、前記配送状況予測部の予測結果及び前記荷物ごとの前記最終便組合せ情報に基づいて、各荷物がそれぞれ当該荷物の配送期限を超過するか否かを判定する配送期限超過判定部と、前記配送期限超過判定部の判定結果及び前記配送変更要求への対応状況に基づいて、各前記配送計画案による各前記荷物の配送期限の超過時間の合計値をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記配送計画案を評価する評価部とを設けるようにした。
【0010】
また本発明においては、複数の中継拠点を有する物流ネットワークにおける物流を管理する物流管理装置において実行される物流管理方法であって、予め定められた配送計画を変更すべき旨の配送変更要求を取得する第1のステップと、取得した前記配送変更要求に対応する前記配送計画の変更案である1又は複数の配送計画案を生成する第2のステップと、生成した前記配送計画案を適用した場合における、荷物を配送期限内に配送可能な最遅の運送便の組合せの情報を最終便組合せ情報として配送対象の荷物ごとにそれぞれ生成する第3のステップと、前記中継拠点で行われる前記荷物に対する作業の所要時間を考慮した将来の各前記荷物の配送状況を予測し、予測した将来の各前記荷物の配送状況及び前記荷物ごとの前記最終便組合せ情報に基づいて、各荷物がそれぞれ当該荷物の配送期限を超過するか否かを判定する第4のステップと、前記第4のステップにおける前記荷物ごとの判定結果及び前記配送変更要求への対応状況に基づいて、各前記配送計画案による各前記荷物の配送期限の超過時間の合計値をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記配送計画案を評価する第5のステップとを設けるようにした。
【0011】
本発明の物流管理装置及び方法によれば、中継拠点で行われる荷物に対する作業の所要時間を考慮した各荷物の配送状況の予測結果に基づいて各配送計画案を評価し、評価結果に基づいて例えば最良の配送計画案を選択することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、動的に発生し得る配送変更要求に応じて、中継拠点での作業をも考慮した配送計画案を導出し得る物流管理装置及び方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本実施の形態による物流管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】物流管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施の形態による物流管理装置の論理構成を示すブロック図である。
【
図5】荷物配送期限情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図6】荷物ステータス情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図7】第1の実施の形態による配送変更要求情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図8】運送便ダイヤ情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図9】第1の実施の形態による配送計画案情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図10】中継指示情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図11】最終便組合せ情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図12】第1の実施の形態による配送計画変更処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13A】配送期限超過判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13B】配送期限超過判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】第1の実施の形態による最適化処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】配送計画案表示画面の画面構成例を示す図である。
【
図16】第2の実施の形態による物流管理装置の論理構成を示すブロック図である。
【
図17】輸送コスト情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図18】第2の実施の形態による最適化処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図19】第3の実施の形態による物流管理装置の論理構成を示すブロック図である。
【
図20】第3の実施の形態による配送変更要求情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図21】第2の実施の形態による配送計画案情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図22】第3の実施の形態による配送計画変更処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0015】
なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化されている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0016】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0017】
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0018】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0019】
実施の形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。
【0020】
同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0021】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施の形態において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0022】
(1)第1の実施の形態
(1-1)実施の形態による配物流管理システムの構成例
図1は、配送ネットワークの構成例を示す。この配送ネットワーク1は、複数の中継拠点2を備えて構成される。各中継拠点2には、それぞれ他の中継拠点2から配送されてきた荷物のほか、その中継拠点2が管轄する集配基地(図示せず)から配送されてきた荷物も入荷される。そして、各中継拠点2に入荷された各荷物がそれぞれその中継拠点2において仕分けされて届け先地域の集配基地を管轄する中継拠点2に配送される。
【0023】
後述する輸送車両7は、これらの中継拠点2間で荷物を配送する車両であり、これらの輸送車両7からなる各運送便の走行ルートなどを定めた運送便ダイヤが予め作成される。また荷物の引受地域の集配基地を管轄する中継拠点2(以下、これを始発拠点と呼ぶ)と、その荷物の届け先地域の集配基地を管轄する中継拠点2(以下、これを終点拠点と呼ぶ)との組合せに応じて荷物が経由すべき中継拠点2及びその順番や、その中継拠点2においてその荷物に対して行うべき仕分け等の作業内容を定義した中継指示も予め作成される。
【0024】
図2は、配送ネットワーク1における物流を管理する本実施の形態による物流管理システム3を示す。この物流管理システム3は、各中継拠点2にそれぞれ設置された拠点管理装置4及びリソース機器5と、輸配送管理装置6及び複数の輸送車両7と、物流管理装置8とを備えて構成される。これらの各拠点管理装置4、各リソース機器5、輸配送管理装置6、輸送車両7及び物流管理装置8は、図示しないネットワークを介して接続されている。
【0025】
拠点管理装置4は、例えば汎用のコンピュータ装置から構成され、設置先の中継拠点2においてリソース機器5の稼動状況及びリソース機器5によって荷物から読み取ったその荷物に関する情報(以下、これを荷物情報と呼ぶ)を収集及び管理する機能を有する装置である。またリソース機器5は、例えばマテリアルハンドリング機器やソータなどの物流設備又は作業員端末から構成される。
【0026】
中継拠点2に荷物を入荷する際、作業員により作業員端末を用いて各荷物にそれぞれ貼り付けられたラベルを読み取る検品作業が行われ、このとき読み取られたこれらの荷物の識別情報等の荷物情報と、そのときの時刻(入荷時刻)とがその中継拠点2に設置された拠点管理装置4に送信されて管理される。
【0027】
また中継拠点2から荷物を出荷する際にも、作業員により作業員端末を用いて各荷物のラベルを読み取る検品作業が行われ、このとき読み取られたこれら荷物に関する識別情報等の荷物情報と、そのときの時刻(出荷時刻)と、その荷物及びその荷物が積載された輸送車両7を紐付ける紐付け情報とがその中継拠点2に設置された拠点管理装置4に送信されて管理される。
【0028】
さらに荷物がソータなどの仕分け機を通過する際にも、その荷物のラベルがソータに設けられた読取り装置により読み取られ、読み取られた荷物情報と対応付けて、その荷物の現在の処理状況(「入荷済み」、「仕分け中」又は「出荷待ち」など)が拠点管理装置4に送信されて管理される。
【0029】
輸配送管理装置6は、汎用のコンピュータ装置から構成され、輸送車両7を管理するために利用される。輸配送管理装置6は、予め作成された上述の運送便ダイヤを記憶し、記憶した運送便ダイヤに従って各輸送車両7に運行指示を与える。また輸配送管理装置6は、各輸送車両7からその輸送車両7の現在位置を取得し、取得した各輸送車両7の現在位置に基づいて、これら輸送車両7の動態管理を行う。
【0030】
輸送車両7は、輸配送管理装置6との間で無線通信を行うための無線通信装置と、自車位置を計測するためのGPS(Global Positioning System)受信機とが搭載されたトラックから構成される。輸送車両7は、GPS受信機により計測した自車の位置を定期的に又は輸配送管理装置6からの要求に応じて輸配送管理装置6に送信する。
【0031】
物流管理装置8は、各拠点管理装置4から必要な情報を収集すると共に、輸配送管理装置6から運送便ダイヤや各輸送車両7の現在位置及び車両車両状態(例えば、走行中又は作業中)などの情報を収集し、収集したこれらの情報と、運送便ダイヤに従って予め作成された配送計画とに基づいて、
図1の配送ネットワーク1における物流を管理する機能を有するコンピュータ装置である。
【0032】
また物流管理装置8は、配送計画立案時の物量予測と当日の物量とのずれ、交通渋滞、ドライバや出荷作業員の欠勤などによるリソース量の変化などにより、かかる配送計画を変更すべき旨の配送変更要求が各中継拠点2の管理者などのユーザから与えられた場合には、新たな配送計画案を生成し、生成した配送計画案をそのユーザに提示する。
【0033】
ここで「配送計画案」とは、物流拠点の位置情報や、道路交通情報に基づき認識される道路の混雑状況、手配可能な輸送車両及びその車種の情報、ドライバの勤務時間などの情報に基づいて生成される、一部の配送対象の荷物に関する新たな配送計画である。
【0034】
図3は、このような物流管理装置8のハードウェア構成を示す。この
図3に示すように、物流管理装置8は、内部バス10を介して相互に接続された処理部11、記憶部12、通信部13、入力部14及び出力部15を備えて構成される。
【0035】
処理部11は、物流管理装置8の動作制御を司る機能部であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、プロセッサのワーキングメモリとして利用されるRAM(Random Access Memory)などのメモリとなどから構成される。
【0036】
記憶部12は、例えばハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)などの大容量の不揮発性の記憶装置から構成され、各種プログラムや長期間保存が必要なデータを保持するために利用される。記憶部12に格納されたプログラムが物流管理装置8の起動時や必要時に処理部11により読み出され、読み出したプログラムを処理部11が実行することにより、後述のような物流管理装置8全体としての各種処理が実行される。
【0037】
通信部13は、例えばNIC(Network Interface Card)などの通信装置から構成され、上述のように図示しないネットワークを介して接続された拠点管理装置4や輸配送管理装置6との通信時におけるプロトコル制御を行う。
図4について後述する情報取得部の配送期限取得部、輸送車両位置情報取得部、拠点作業情報取得部、荷物ステータス情報更新部及び配送変更要求取得部は、この通信部13を介して各拠点管理装置4や輸配送管理装置6と通信を行う。
【0038】
入力部14は、例えばキーボードやマウスなどから構成され、ユーザが物流管理装置8に対して指示や情報を入力するために利用される。また出力部15は、例えば液晶ディスプレイ装置や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置から構成され、必要な情報を表示するために利用される。なお、入力部14及び出力部15に代えて、これらが一体化したタッチパネルを適用するようにしてもよい。
【0039】
図4は、かかる物流管理装置8の論理構成を示す。この
図4に示すように、物流管理装置8は、情報取得部20及び最適化処理部21と、記憶部12に格納された荷物配送期限情報テーブル23、荷物ステータス情報テーブル24、配送変更要求情報テーブル25、運送便ダイヤ情報テーブル26、配送計画案情報テーブル27、中継指示情報テーブル28及び最終便組合せ情報テーブル29とを備えて構成される。なお情報取得部20及び最適化処理部21は、処理部11(
図3)が記憶部12から読み出した対応するプログラム(図示せず)を実行することにより具現化される機能部である。
【0040】
情報取得部20は、各中継拠点2にそれぞれ設置された拠点管理装置4や輸配送管理装置6から必要な情報を取得する機能を有する機能部であり、配送期限取得部30、輸送車両位置情報取得部31、拠点作業情報取得部32、荷物ステータス情報更新部33及び配送変更要求取得部34を備えて構成される。
【0041】
このうち配送期限取得部30は、配送ネットワーク1(
図1)に流入した配送対象の各荷物の始発拠点、終点拠点及び配送期限などの情報を、例えばその荷物の始発拠点に設置された拠点管理装置4から取得する機能を有する機能部である。配送期限取得部30は、取得した荷物の発拠点、終点拠点及び配送期限などの情報をそれぞれ荷物配送期限情報として荷物配送期限情報テーブル23に格納して管理する。
【0042】
また輸送車両位置情報取得部31は、各輸送車両7の現在位置及び車両状態を輸配送管理装置から定期的に取得する機能を有する機能部である。さらに拠点作業情報取得部32は、各中継拠点2における各荷物の入出荷状況と仕分け等の作業状況とを各拠点管理装置4から定期的に取得する機能を有する機能部である。拠点作業情報取得部32は、取得した各荷物の入出荷状況及び作業状況を荷物ステータス情報として荷物ステータス情報テーブル24に格納して管理する。
【0043】
荷物ステータス情報更新部33は、配送ネットワーク1に流入した配送対象の各荷物の現在の配送状況(位置及び状況)を、輸送車両位置情報取得部31が輸配送管理装置6から取得した各種情報や、拠点作業情報取得部32が各拠点管理装置4からそれぞれ取得した各種情報に基づいて導出する機能を有する機能部である。荷物ステータス情報更新部33は、導出した各荷物の配送状況をそれぞれ荷物ステータス情報として荷物ステータス情報テーブル24に登録したり、登録されている各荷物の荷物ステータス情報を定期的に更新する。
【0044】
配送変更要求取得部34は、ユーザ操作に応じて拠点管理装置4から送信されてきた配送変更要求を取得し、取得した配送変更要求の内容を配送変更要求情報テーブル25に格納する機能を有する機能部である。
【0045】
実際上、本物流管理システム3(
図2)の場合、ユーザは、顧客から追加の荷物の配送依頼があった場合や、想定していた荷物量よりも当日に配送すべき荷物が多い場合など、事前に作成された運送便ダイヤに従った輸配送ではすべての荷物をその配送期限内に配送しきれないと判定した場合などに拠点管理装置4を操作して配送変更要求を物流管理装置8に送信する。ただし、輸送車両7の遅延、中継拠点2での荷物の滞留などを検知し、拠点管理装置4、輸配送管理装置6又は物流管理装置8のいずれかが配送変更要求を自動生成するようにしてもよい。
【0046】
一方、最適化処理部21は、配送変更要求取得部34がユーザからの配送変更要求を取得したことを受けて、現在の荷物の配送計画の一部を見直した配送計画案を立案して提案する機能を有する機能部であり、配送計画案生成部35、最終便組合せ情報生成部36、配送状況予測部37、配送期限超過判定部38及び評価部39を備えて構成される。
【0047】
このうち配送計画案生成部35は、配送変更要求取得部34が取得したユーザからの配送変更要求に応じて配送計画案を生成する機能を有する機能部である。配送計画案生成部35は、配送変更要求及び
図8について後述する運送便ダイヤ情報テーブル26に格納された運送便ダイヤ情報に基づいてこのような配送計画案を1又は複数生成し、生成した配送計画案の情報(以下、これを配送計画案情報と呼ぶ)を配送計画案情報テーブル27に格納する。
【0048】
また最終便組合せ情報生成部36は、配送計画案生成部35により生成された配送計画案により配送計画が変更される場合における各荷物の最終便組合せをそれぞれ算出し、算出した荷物ごとの最終便組合せの情報(以下、これを最終便組合せ情報と呼ぶ)を最終便組合せ情報テーブル29に格納する機能を有する機能部である。ここで「最終便組合せ」とは、対応する荷物をその配送期限内に終点拠点にまで配送可能な最遅の運送便の組合せを指す。最終便組合せ情報生成部36は、荷物の始発拠点、終点拠点及び引受時間帯の組合せに基づいてその荷物の最終便組合せを算出する。
【0049】
配送状況予測部37は、中継拠点2で行われる荷物に対する作業の内容及び所要時間を考慮した将来の各荷物の配送状況を予測する機能を有する機能部である、具体的に、配送状況予測部37は、中継指示情報テーブル28に格納された後述の中継指示情報などに基づいて、荷物がいずれかの中継拠点2に到着する到着時刻や、いずれかの中継拠点2に到着した荷物が出荷可能となる時刻を予測する。
【0050】
また配送期限超過判定部38は、配送状況予測部37の予測結果と、最終便組合せ情報生成部36により生成された荷物ごとの最終便組合せ情報とに基づいて、各荷物がその配送期限内に終点拠点に配送可能であるか否かを判定する機能を有する機能部である。
【0051】
評価部39は、配送計画案生成部35により生成された各配送計画案に対する配送期限超過判定部38の判定結果に基づいて各配送計画案をそれぞれ評価し、評価値が最良となる配送計画案を探索する処理(以下、これを最適化処理と呼ぶ)を実行する機能を有する機能部である。「評価値」の詳細については後述する。なお、評価値が最良となる配送計画案について説明する際に、「評価値が最良となる配送計画案」、「最適解」、「評価値が最良となる解」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0052】
また評価部39は、かかる最適化処理により最良と判定した配送計画案を出力部15に表示し、その配送計画案を適用するか否かを物流管理装置8のユーザに問い合わせる。そして評価部39は、ユーザが入力部14を操作してその配送計画案を適用するとの入力を行った場合には、その配送計画案を輸配送管理装置6に送信する。そして輸配送管理装置6は、この配送計画案に従って既存の運送便ダイヤを更新し、更新後の運送便ダイヤに従って必要な輸送車両7の運行を制御する。ただし、評価部39が、最適化処理により最良と判定した配送計画案の適用の可否をユーザに問い合わせることなく直ちに輸配送管理装置6にその配送計画案を送信するようにしてもよい。
【0053】
一方、荷物配送期限情報テーブル23は、上述のように配送期限取得部30により各拠点管理装置4からそれぞれ取得された、配送ネットワーク1に流入した各荷物の配送期限等の情報を管理するために利用されるテーブルであり、
図5に示すように、荷物ID欄23A、始発拠点ID欄23B、終点拠点ID欄23C、引受日欄23D、引受時間帯欄23E及び配送期限欄23Fを備えて構成される。荷物配送期限情報テーブル23では、1つのレコード(行)が配送対象の1つの荷物に対応する。
【0054】
そして荷物ID欄23Aには、対応する荷物に付与されたその荷物に固有の識別ID(荷物ID)が格納される。また始発拠点ID欄23Bには、その荷物の引受地域の集配基地を管轄する中継拠点2(始発拠点)の識別ID(始発拠点ID)が格納され、終点拠点ID欄23Cには、その荷物の届け先地域の集配基地を管轄する中継拠点2(終点拠点)の識別ID(終点拠点ID)が格納される。
【0055】
さらに引受日欄23Dには、その荷物を引き受けた日付が格納され、引受時間帯欄23Eには、その荷物をその引受日に引き受けた際の時間帯が格納される。この場合の時間帯としては、「午前」及び「午後」の2種類がある。また配送期限欄23Fには、その荷物の配送期限(その荷物を終点拠点に到着させるべき日時の期限)が格納される。「配送期限内に荷物を配送可能」とは、その荷物を積載した輸送車両7が配送期限として指定された日時以前にその荷物の終点拠点に到着することを意味する。
【0056】
従って、
図5の場合、例えば、「荷物12-1」という荷物IDが付与された荷物の始発拠点は「中継拠点A」、終点拠点は「中継拠点B」であり、その荷物の引受日は「9/1」、引き受けた時間帯は「午前」で、配送期限は「9/1 20:00」であることが示されている。
【0057】
また荷物ステータス情報テーブル24は、上述のように荷物ステータス情報更新部33により取得された各荷物の最新の配送状況を管理するために利用されるテーブルであり、
図6に示すように、荷物ID欄24A、ステータス欄24B及び現在位置欄24Cを備えて構成される。荷物ステータス情報テーブル24では、1つのレコードが1つの荷物の現在のステータス(配送状況)に対応する。
【0058】
そして荷物ID欄24Aには、対応する荷物の荷物IDが格納され、ステータス欄24Bには、その荷物の現在のステータスが格納される。かかるステータスとしては、中継拠点に入荷したままの状態で未だ行き先ごとの仕分けが行われていない「仕分け待ち」と、仕分けまでの作業が完了した状態の「出荷待ち」と、出荷が行われ、現在配送中である「配送中」と、既に終点拠点までの配送が完了した「配送完了」などがある。
【0059】
また現在位置欄24Cには、対応する荷物の現在位置が格納される。具体的に、荷物が「仕分け待ち」や「出荷待ち」の場合には、その荷物が現在存在する中継拠点2の中継拠点IDが現在位置欄24Cに格納され、荷物が「配送中」の場合には、その荷物を配送している輸送車両7の識別子(車両ID)と、その輸送車両7の現在の走行位置を表す情報とが現在位置欄24Cに格納される。
【0060】
従って、
図6の場合、例えば、「荷物12-1」という荷物IDが付与された荷物は、現在、「中継拠点A」で「出荷待ち」の状況にあり、「荷物24-1」という荷物IDが付与された荷物は、「車両0」という輸送車両7により「配送中」で、その輸送車両7(及びその荷物)は、現在、「中継拠点B~中継拠点D」の区間に位置していることが示されている。
【0061】
配送変更要求情報テーブル25は、ユーザ操作に応じて拠点管理装置4から送信されてきた配送変更要求の内容を管理するために利用されるテーブルであり、
図7に示すように、変更要求ID欄25A及び要求内容欄25Bを備えて構成される。配送変更要求情報テーブル25では、1つのレコードが1つの配送変更要求に対応する。
【0062】
そして変更要求ID欄25Aには、対応する配送変更要求に対して付与されたその配送変更要求に固有の識別子(変更要求ID)が格納され、要求内容欄25Bには、その配送変更要求の具体的な内容が格納される。
【0063】
従って、
図7の場合、「1」という変更要求IDが付与された配送変更要求の内容は、「中継拠点E」で「9/1 17:00~18:00」の間に荷物を集荷し、「中継拠点B」へ配送(「中継拠点Eで9/1 17:00~18:00の間に荷物を集荷。中継拠点Bへ荷物を配送。」)であることが示されている。
【0064】
運送便ダイヤ情報テーブル26は、予め作成された運送便ダイヤを管理するためのテーブルであり、情報取得部20(
図4)を構成する図示しない運送便ダイヤ情報取得部が輸配送管理装置6から定期的に取得する運送便ダイヤ情報を保持するために利用されるテーブルである。
【0065】
この運送便ダイヤ情報テーブル26は、
図8に示すように、運送便ID欄26A、車両ID欄26B及び複数の配送先欄26Cを備えて構成される。運送便ダイヤ情報テーブル26では、1つの運送便ID欄26Aに対応するレコードが、運送便ダイヤで定義された1つの運送便の運行ダイヤの情報(運送便ダイヤ情報)に対応する。
【0066】
そして運送便ID欄26Aには、対応する運送便に付与されたその運送便に固有の識別子(運送便ID)が格納され、車両ID欄26Bには、その運送便として適用される輸送車両7の車両IDが格納される。
【0067】
また配送先欄26Cは、それぞれ中継拠点ID欄26CA、到着時刻欄26CB及び出発時刻欄26CCに区分されており、中継拠点ID欄26CAには、対応する運送便が最初に出発し又は最後に到着する中継拠点2の中継拠点IDが格納される。また到着時刻欄26CBには、対応する運送便が対応する中継拠点2に到着する時刻(到着時刻)が格納され、出発時刻欄26CCには、対応する運送便が対応する中継拠点2を出発する時刻(出発時刻)が格納される。
【0068】
従って、
図8の場合、例えば「1」という運送便IDが付与された運送便については、「1」という車両IDが付与された輸送車両7が適用され、「9/1 14:00」に「中継拠点E」という中継拠点2を出発し、「9/1 14:30」に「中継拠点B」という中継拠点2に到着するという運行ダイヤが定義されていることが示されている。
【0069】
配送計画案情報テーブル27は、配送変更要求に応じて配送計画案生成部35により生成された配送計画案を管理するために利用されるテーブルであり、
図9に示すように、変更要求ID欄27A、計画案ID欄27B、車両ID欄27C及び複数の配送先欄27Dを備えて構成される。配送計画案情報テーブル27では、1つの変更要求欄27Aに対応するレコードが、配送変更要求取得部34(
図4)が取得した1つの配送変更要求に対応する。
【0070】
そして変更要求ID欄27Aには、対応する配送変更要求に付与されたその配送変更要求に固有の識別子(変更要求ID)が格納される。また計画案ID欄27B及び車両ID欄27Cは、それぞれ対応する配送変更要求に対して配送計画案生成部35(
図4)により生成された各配送計画案にそれぞれ対応させた小欄27Eに区分されている。
【0071】
そして計画案ID欄27Bの各小欄27E内には、それぞれ対応する配送計画案に対して付与されたその配送計画案に固有の識別子(計画案ID)が格納され、車両ID欄27Cの各小欄27E内には、それぞれ対応する配送計画案において、運送便ダイヤで定義された元の配送計画からの変更が発生する運送便として適用される輸送車両7の車両IDが格納される。なお、
図9では、いずれの配送計画案でも配送計画が変更される輸送車両7が1台だけである場合の例が示されている。
【0072】
さらに各配送先欄27Dは、それぞれ中継拠点ID欄27DA、到着時刻欄27DB及び出発時刻欄27DCに区分されている。そして中継拠点欄27DAには、対応する運送便が経由する中継拠点2の中継拠点IDが格納される。また到着時刻欄27DBには、その運送便がその中継拠点2に到着する時刻(到着時刻)が格納され、出発時刻欄27DCには、その運送便がその中継拠点2を出発する時刻(出発時刻)が格納される。
【0073】
なお、配送先欄27Dは、対応する運送便が経由する中継拠点2と同じ数だけ利用され、これ以外の配送先欄27Dは空欄のままとなる。具体的に、最初に経由する中継拠点2(始発拠点)に関する情報が「配送先1」という配送先欄27Dに格納され、次に経由する中継拠点2に関する情報が「配送先2」という配送先欄27Dに格納され、さらにその次に経由する中継拠点2に関する情報が「配送先3」という配送先欄27Dに格納され、……のように、対応する運送便が経由する中継拠点2の順番でその中継拠点2に関する情報が「配送先1」から順番に配送先欄27Dに格納される。
【0074】
従って、
図9の例では、「1」という変更要求IDが付与された配送変更要求に対して、それぞれ「候補1」及び「候補2」という計画案IDが付与された配送計画案が配送計画案生成部35により作成されたことが示されている。
【0075】
また
図9では、「候補1」という配送計画案は、「車両11」という車両IDの輸送車両7について、「中継拠点E」という中継拠点2(ここでは始発拠点)を「9/1 17:00」に出発し、「中継拠点B」という中継拠点2(ここでは終点拠点)に「9/1 17:30」に到着するという配送計画案であることが示されている。
【0076】
さらに
図9では、「候補2」という配送計画案は、「車両2」という車両IDの輸送車両7について、「中継拠点A」という中継拠点2(ここでは始発拠点)を「9/1 17:00」に出発し、「中継拠点E」という中継拠点2に「9/1 17:40」に到着した後、この中継拠点2を「9/1 17:50」に出発し、「中継拠点B」という中継拠点2(ここでは終点拠点)に「9/1 18:20」に到着するという配送計画案であることが示されている。
【0077】
中継指示情報テーブル28は、荷物の始発拠点及び終点拠点の組合せ(以下、これを拠点組合せと呼ぶ)に応じて予め定義された、その荷物が経由すべきすべての中継拠点2及びその順番と、これらの中継拠点2で荷物に対して行うべき作業とからなる拠点組合せごとの中継指示の情報(以下、これを中継指示情報と呼ぶ)が格納されたテーブルであり、予め作成されて物流管理装置8に与えられる。
【0078】
この中継指示情報テーブル28は、
図10に示すように、始発拠点ID欄28A、終点拠点ID欄28B及び複数の経由地欄28Cを備えて構成される。中継指示情報テーブル28では、1つの始発拠点ID欄28Aや終点拠点ID欄28Bに対応するレコードが1つの拠点組合せに対応する。
【0079】
そして始発拠点欄28Aには、対応する拠点組合せにおける始発拠点となる中継拠点2の中継拠点IDが格納され、終点拠点欄28Bには、その拠点組合せにおける終点拠点となる中継拠点2の中継拠点IDが格納される。
【0080】
また各経由地欄28Cは、中継拠点ID欄28CA、作業内容欄28CB及び作業時間欄28CCにそれぞれ区分されている。そして中継拠点欄28CAには、対応する拠点組合せにおいて荷物が経由する中継拠点2の中継拠点IDが格納され、作業内容欄28CBには、その中継拠点2でその荷物に対して行われる作業の内容が格納される。ここでの作業内容としては、荷物が積み付けられたパレットやかご車などの機材ごと別の運送便に積み替える「継ぎ越し」や、荷物を一度機材から降ろし、予め定められた仕分け指示に従って荷物を再度機材に積み付ける「方面別仕分け」などがある。
【0081】
また作業時間欄28CCには、その作業の所要時間が格納される。所要時間としては、例えば、過去の作業履歴情報に基づき算出されたその作業の作業開始から作業完了までに要した時間の平均値を適用することができる。ただし、過去の作業履歴情報に基づいて統計モデルを構築し、構築した統計モデルを用いて予測したその作業の所要時間を適用するようにしてもよい。
【0082】
なお、経由地欄28Cは、対応する拠点組合せにおいて荷物が経由する中継拠点2と同じ数だけ利用され、これ以外の経由地欄28Cは空欄のままとなる。具体的に、荷物が最初に経由する中継拠点2(始発拠点)に関する情報が「経由地1」という経由地欄28Cに格納され、次に経由する中継拠点2に関する情報が「経由地2」という経由地欄28Cに格納され、さらにその次に経由する中継拠点2に関する情報が「経由地3」という経由地欄28Cに格納され、……のように、荷物が経由する中継拠点2の順番でその中継拠点2に関する情報が「経由地1」という経由地欄20Cから順番に各経由地欄28Cに格納される。
【0083】
また本実施の形態においては、ある経由地(始発拠点を含む)から次の経由地(終点拠点を含む)に荷物を配送する際には、荷物を連続して配送可能な1つの運送便によって配送するものとする。具体的には、ある経由地M-1から次の経由地Mに配送された荷物は、一度その経由地Mで運送便から降ろされ、さらに次の経由地M+1(又は終点拠点)に配送されるものとする。なお始発拠点から終点拠点まで荷物を連続して配送可能な1つの運送便によって配送可能な場合は経由地は存在しない。
【0084】
従って、
図10の場合、例えば「中継拠点A」を始発拠点、「中継拠点C」を終点拠点とする荷物については、「中継拠点B」を経由して配送するものとし、この場合には、「中継拠点B」において荷物の「継ぎ越し」を行い、その所要時間が「30分」であることが示されている。
【0085】
なお本実施の形態においては、配送計画を変更した場合においても、中継指示情報テーブル28に格納された各拠点組合せの中継指示情報は変更されず、中継指示情報として定義されたルール(中継指示)が遵守されるものとする。
【0086】
例えば、
図9の配送計画案情報テーブル27における計画案IDが「候補2」の配送計画案は、「車両2」という輸送車両7の配送経路を、「中継拠点A」→「中継拠点B」という配送経路から「中継拠点A」→「中継拠点E」→「中継拠点B」という配送経路に変更することで配送変更要求に応えた配送計画案である。この配送変更案を採用した場合、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点E」の荷物は「車両2」から荷卸しされることなく「中継拠点E」を通過して「中継拠点B」に入荷される。これは中継指示情報テーブル28において、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点B」の荷物については、「中継拠点B」において仕分け作業を行うことが定義されているためである。このため、この場合、「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点E」の荷物は、「中継拠点B」で仕分けが行われて「中継拠点E」へと出荷されることになる。
【0087】
最終便組合せ情報テーブル29は、最終便組合せ情報生成部36(
図4)により算出された各荷物の最終便組合せの情報(最終便組合せ情報)を管理するために利用されるテーブルである。最終便組合せは、上述のように対応する荷物をその配送期限内に終点拠点にまで配送可能な最遅の運送便の組合せであり、その荷物の始発拠点、終点拠点及び引受時間帯の組合せに基づいて算出される。なお、運送便ダイヤに従った元の配送計画に従って運送便を運行した場合の最終便組合せは、配送計画の立案時に予め定義されているものとする。
【0088】
また最終便組合せに含まれる運送便は、各中継拠点2における輸送車両7の着発時刻が変化すると、これに伴って変化することがある。従って、運送便ダイヤ(
図8参照)で定義された元の配送計画と、配送計画案生成部35が生成した各配送計画案とのそれぞれについて、各荷物の最終便組合せが導出される。
【0089】
最終便組合せ情報テーブル29は、
図11に示すように、計画ID欄29A、荷物ID欄29B、始発拠点ID欄29C、終点拠点ID欄29D、配送期限欄29E、区間順欄29F、出発拠点欄29G、到着拠点欄29H及び運送便ID欄29Iを備えて構成される。
【0090】
そして計画ID欄29Aは、運送便ダイヤで定義された元の配送計画と、配送計画案生成部35が生成した各配送計画案とにそれぞれ対応させて小欄29AAに区分されており、これらの小欄29AA内に対応する配送計画又は配送計画案に対して付与されたその配送計画又は配送計画案に固有の識別子が格納される。
【0091】
また荷物ID欄29B、始発拠点ID欄29C、終点拠点ID欄29D及び配送期限欄29Eは、計画ID欄29Aの小欄29AAごとにそれぞれ配送対象の各荷物にそれぞれ対応させた小欄29Jに区分されている。
【0092】
そして荷物ID欄29Bの各小欄29Jには、対応する荷物の荷物IDがそれぞれ格納される。また始発拠点ID欄29Cの各小欄29Jには、対応する荷物の始発拠点となる中継拠点2の拠点IDがそれぞれ格納され、終点拠点ID欄29Dの各小欄29Jには、その荷物の終点拠点となる中継拠点2の拠点IDがそれぞれ格納される。さらに配送期限欄29Eの各小欄29Jには、対応する荷物の終点拠点への配送期限がそれぞれ格納される。
【0093】
一方、区間順欄29F、出発拠点欄29G、到着拠点欄29H及び運送便ID欄29Iは、対応する荷物の始発拠点及び終点拠点に対して中継指示情報テーブル28で定義された、その荷物を荷積み及び又は荷卸しする中継拠点2から次にその荷物を荷積み及び又は荷卸しする中継拠点2までの各区間にそれぞれ対応させた小欄29Kにそれぞれ区分されている。
【0094】
そして出発拠点欄29Gの各小欄29Kには、対応する区間において対応する荷物が輸送車両7に積み付けられる中継拠点2(以下、これを出発拠点と呼ぶ)の中継拠点IDがそれぞれ格納され、到着拠点欄29Hの各小欄29Kには、その区間においてその荷物がその輸送車両7から荷卸しされる中継拠点2(以下、これを到着拠点と呼ぶ)の中継拠点IDがそれぞれ格納される。
【0095】
また運送便ID欄29Iの各小欄29Kには、対応する区間においてその荷物を配送する運送便の運送便IDがそれぞれ格納される。さらに区間順欄29Fの各小欄29Kには、対応する荷物の始発拠点から終点拠点までの間に存在する各区間のうちでその荷物がその区間を通過する順位が格納される。
【0096】
従って、
図11の場合、例えば「荷物13-1」という荷物IDが付与された荷物は、「中継拠点A」を始発拠点、「中継拠点C」を終点拠点とし、「9/1 23:00」を配送期限とする荷物であり、運送便ダイヤで定義された配送計画を基にしたこの荷物の最終便組合せは、区間順が「1」である「中継拠点A」~「中間拠点B」の区間については運送便IDが「2」の運送便、区間順が「2」である「中継拠点B」~「中間拠点C」の区間については運送便IDが「4」の運送便という組合せであることが示されている。
【0097】
なお、最終便組合せ情報テーブル29に、各荷物の引受日や荷物の引受時間帯の情報を含ませるようにしてもよい。
【0098】
(1-2)物流管理装置において実行される各種処理の内容
(1-2-1)配送計画変更処理
図12は、拠点管理装置4からの配送変更要求を受信した物流管理装置8において実行される一連の処理(以下、これを配送計画変更処理と呼ぶ)の流れを示す。物流管理装置8は、かかる配送変更要求が与えられると、この
図12に示す処理手順に従って、その配送変更要求に応じた1又は複数の配送計画案を生成すると共に、生成した各配送計画案と、運送便ダイヤに基づく元の配送計画とをそれぞれ評価し、最良の配送計画案又は元の配送計画をその配送変更要求の送信元のユーザに提示する。
【0099】
実際上、物流管理装置8が配送変更要求を受信すると、この
図12に示す配送計画変更処理が開始され、まず、配送変更要求取得部34(
図4)が、受信した配送変更要求を取得してその内容を配送変更要求情報テーブル25(
図7)に格納する(S1)。
【0100】
続いて、配送計画案生成部35(
図4)が、配送変更要求情報テーブル25に格納された配送変更要求と、運送便ダイヤ情報テーブル26(
図8)に格納された運送便ダイヤ情報とに基づいて配送計画案を生成する。この際、配送計画案生成部35は、各中継拠点2の位置情報、道路交通情報による道路の混雑状況、手配可能な輸送車両7及びその車種、並びに、ドライバの勤務時間制約などの情報も参照して配送計画案を可能な限り数多く生成する。
【0101】
なお、かかる配送計画案を生成する公知技術としては、例えば上述の特許文献2(特開2022-48586号公報)の技術がある。この特許文献2に開示された技術は、荷物の輸送元、輸送先及び輸送量を表す輸送量情報と、荷物の輸送に使用できる輸送車両を表す輸送リソース情報とに基づいて荷物の輸送に使用できる輸送車両を用いた荷物の輸送計画案を作成するものである。そして配送計画案生成部35は、生成した各配送計画案の情報(配送計画案情報)を配送計画案情報テーブル27(
図9)に格納する(S2)。
【0102】
次いで、最終便組合せ情報生成部36(
図4)が、元の配送計画と、配送計画案情報テーブル27に配送計画案情報が格納された各配送計画案との中から、ステップS4以降が未処理の配送計画又は配送計画案を1つを選択する(S3)。
【0103】
また最終便組合せ情報生成部36は、選択した配送計画又は配送計画案(以下、これを選択配送計画案と呼ぶ)の配送計画案情報と、運送便ダイヤ情報テーブル26に格納された運送便ダイヤ情報と、荷物配送期限情報テーブル23(
図5)に格納された各荷物の荷物配送期限情報と、中継指示情報テーブル28(
図10)に格納された拠点組合せごとの中継指示情報とに基づいて、運送便ダイヤを変更しない場合(ステップS3で元の配送計画を選択した場合)場合や、選択配送計画案に基づいて運送便ダイヤを変更した場合における配送対象の各荷物の最終便組合せ情報をそれぞれ生成する(S4)。
【0104】
ここで、最終便組合せ情報生成部36による荷物ごとの最終便組合せ情報の具体的な生成手法について、選択配送計画案が元の配送計画であった場合に、最終便組合せ情報生成部36が
図5の「荷物12-1」という荷物IDが付与された荷物と、「荷物13-1」という荷物IDが付与された荷物との最終便組合せ情報をそれぞれ生成する場合について説明する。
【0105】
まず、荷物IDが「荷物12-1」の荷物の最終便組合せ情報の導出方法について説明する。荷物配送期限情報テーブル23を参照すると、「荷物12-1」は、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点B」、引受日が「9/1」、引受時間帯が「午前」であり、配送期限は「9/1 20:00」である。また中継指示情報テーブル28を参照すると、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点B」の組合せの場合、経由地は存在しないため、「荷物12-1」は始発拠点から終点拠点に直送される。従って、「荷物12-1」の最終便組合せで考慮すべき運送便は、始発拠点の「中継拠点A」から終点拠点の「中継拠点B」へ連続して荷物を配送可能な運送便のみとなる。
【0106】
そこで運送便ダイヤ情報テーブル26を参照すると、「中継拠点A」及び「中継拠点B」の順番で中継拠点に立ち寄る運送便としては、運送便IDが「2」の運送便と、運送便IDが「5」の運送便との2つがある。また「荷物12-1」の配送期限である「20:00」以前に「中継拠点B」に到着する最遅の運送便は、運送便IDが「2」の運送便だけである。そこで、最終便組合せ情報生成部36は、以上の考察から運送便IDが「2」の運送便を「荷物12-1」の最終便組合せとして特定する。
【0107】
次に、荷物IDが「荷物13-1」の荷物の最終便組合せ情報の導出方法について説明する。荷物配送期限情報テーブル23を参照すると、「荷物13-1」は、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点C」、引受日が「9/1」、引受時間帯が「午前」であり、配送期限は「9/1 23:00」である。また中継指示情報テーブル28を参照すると、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点C」の拠点組合せの場合、荷物は「中継拠点B」を経由する。従って、「荷物13-1」の最終便組合せで考慮すべき運送便は、始発拠点の「中継拠点A」から「中継拠点B」へ連続して荷物を配送可能な運送便と、「中継拠点B」から終点拠点の「中継拠点C」へ連続して荷物を配送可能な運送便との2つとなる。
【0108】
そこで運送便ダイヤ情報テーブル26を参照すると、終点拠点の1つ手前の経由地である「中継拠点B」から、終点拠点である「中継拠点C」へ連続して荷物を配送可能な運送便のうち、「中継拠点C」に「23:00」以前に到着する最遅の運送便は、運送便IDが「4」の運送便だけである。
【0109】
一方、運送便IDが「4」の運送便は、「22:00」に「中継拠点B」を出発するため、「荷物13-1」は、「22:00」以前に「中継拠点B」において出荷準備が完了していなければならない。中継指示情報テーブル28を参照すると、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点C」の荷物に対して「中継拠点B」で発生する作業は「継ぎ越し」である。そして、その作業の所要時間は「30分」であることから、「22:00」から「30分」だけ逆算すると、「21:00」となる。そのため、始発拠点である「中継拠点A」から経由地である「中継拠点B」へ連続して荷物を配送可能な運送便のうち、「21:30」以前に「中継拠点B」に到着する最遅の運送便を求める。運送便ダイヤ情報テーブル26を参照すると、条件に合致するのは運送便IDが「2」の運送便である。
【0110】
そこで、最終便組合せ情報生成部36は、以上の考察から運送便IDが「2」の運送便と、運送便IDが「4」の運送便との組合せを「荷物13-1」の最終便組合せとして特定する。
【0111】
次に、最終便組合せ情報生成部36による荷物ごとの最終便組合せ情報の具体的な生成手法について、選択配送計画案が
図10の「候補1」であった場合について説明する。「候補1」は、「車両11」という車両IDの輸送車両7からなる運送便を増便する配送計画案である。この「候補1」という配送計画案を適用した場合、始発拠点が「中継拠点E」、終点拠点が「中継拠点B」、配送期限が「23:00」の荷物は、「車両11」からなる運送便が最終便組合せとなる。
【0112】
また、最終便組合せ情報生成部36による荷物ごとの最終便組合せ情報の具体的な生成手法について、選択配送計画案が
図10の「候補2」であった場合について説明する。「候補2」は、「車両2」という車両IDの輸送車両7からなる運送便のルートを変更し、「中継拠点A」から「中継拠点B」に向かう途中で「中継拠点E」に立ち寄る配送計画案である。この「候補2」という配送計画案を適用した場合、始発拠点が「中継拠点E」、終点拠点が「中継拠点B」、配送期限が「23:00」の荷物は、「車両2」という輸送車両7からなる運送便が最終便組合せとなる。
【0113】
このとき「車両2」という輸送車両7からなる運送便は、「中継拠点B」における到着時刻が「18:00」から「18:20」に変化するが、最終便組合せに「車両2」という輸送車両7からなる運送便を含む始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点C」の荷物の最終便組合せは元の配送計画と同様である。これは、元の配送計画よりも20分遅く「中継拠点B」に到着した場合でも、「22:00」以前に出荷準備を完了できるためである。
【0114】
最終便組合せ情報生成部36は、このようにして選択配送計画案を採用した場合における各荷物の最終便組合せをそれぞれ生成し、生成した荷物ごとの最終便組合せの情報をそれぞれ最終便組合せ情報として最終便組合せ情報テーブル29(
図11)に格納する。
【0115】
続いて、配送期限超過判定部38が、荷物の終点拠点への到着時刻がその荷物の配送期限を超過するか否かを荷物ごとにそれぞれ判定する配送期限超過判定処理を実行する(S5)。この配送期限超過判定処理の詳細については後述する。
【0116】
次いで、最終便組合せ情報生成部36が、元の配送計画及び配送計画案の中でステップS4以降が未処理のものがあるか否かを判定する(S6)。そして判定で否定結果が得られた場合、処理がステップS3に戻り、この後、ステップS6で肯定結果が得られるまでステップS3~ステップS6の処理が繰り返される。
【0117】
そして、やがて元の配送計画及びすべての配送計画案に対するステップS4~ステップS5の処理を実行し終えることによりステップS6で肯定結果が得られると、評価部39(
図5)が、元の配送計画及び各配送計画案に対する配送期限超過判定処理の処理結果に基づいて元の配送計画及び各配送計画案をそれぞれ評価する最適化処理を実行する(S7)。最適化処理の具体的な処理内容についても後述する。
【0118】
そして評価部39は、かかる最適化処理により評価結果が最良となる元の配送計画又は配送計画案を検出すると、その配送計画又は配送計画案に関する情報に基づいて
図15について後述する配送計画案表示画面40を生成し、生成した配送計画案表示画面40を出力部15に表示させる(S8)。以上により、この一連の配送計画変更処理が終了する。
【0119】
(1-2-2)配送期限超過判定処理
図13A及び
図13Bは、
図12について上述した配送計画変更処理のステップS5において配送状況予測部37及び配送期限超過判定部38により実行される配送期限超過判定処理の具体的な処理内容を示す。配送状況予測部37及び配送期限超過判定部38は、配送計画変更処理がステップS5に進むと、この
図13A及び
図13Bに示す配送期限超過判定処理を開始する。
【0120】
そして、まず、配送期限超過判定部38が、配送期限超過判定の対象となる荷物(配送対象の各荷物)の中からステップS11以降が未処理の荷物を1つ選択する(S10)。このとき選択する荷物としては、その終点拠点に到達していないすべての荷物であっても良く、さらには特定の輸送車両7に搭載され、特定の中継拠点2を始発拠点又は終点拠点とし又は経由する荷物のみに限定したものであってもよい。
【0121】
続いて、配送期限超過判定部38は、ステップS10で選択した荷物(以下、これを対象荷物と呼ぶ)が配送中であるか否かを判定する(S11)。この判定は、荷物ステータス情報テーブル24(
図6)のステータス欄24Bに格納された対象荷物のステータスに基づいて、その対象荷物が配送中であるか否か(ステータス欄24Bに格納されたステータスが「配送中」であるか否か)を判定することにより行うことができる。
【0122】
そして配送期限超過判定部38は、この判定で肯定結果を得ると、その対象荷物が次に荷卸しされる中継拠点2に到着する時刻を予測するよう配送状況予測部37に要求する。かくして配送状況予測部37は、この要求に応じて、かかる到着時刻を予測する(S12)。
【0123】
なお、このような予測は、既知の技術を用いて行うことができる。例えば、輸送車両7の位置情報と、道路交通情報に基づき認識される道路の混雑状況とを入力としてかかる到着時刻を出力とする統計モデルを予め構築しておき、ステップS12を実行する際の輸送車両7の位置情報と、交通情報とを入力として到着時刻の予測値(予測到着時刻)を求めることができる。
【0124】
続いて、配送期限超過判定部38が、荷物配送期限情報テーブル23から対象荷物の終点拠点を取得し、ステップS12で配送状況予測部37が到着時刻を予測した中継拠点2(対象荷物が次に荷卸しされる中継拠点2)がその対象荷物の終点拠点であるか否かを判定する(S13)。
【0125】
そして配送期限超過判定部38は、この判定で肯定結果を得ると、荷物配送期限情報テーブル23から対象荷物の配送期限を取得し、取得した配送期限と、ステップS12で配送状況予測部37が予測した到着時刻とに基づいて、対象荷物がその配送期限よりも前に終点拠点に到着するか否かを判定する(S14)。具体的に、配送期限超過判定部38は、ステップS12で配送状況予測部37が予測した到着時刻が、対象荷物の配送期限よりも早い時間であるか否かを判定する。
【0126】
配送期限超過判定部38は、この判定で肯定結果を得ると、対象荷物は配送期限を超過することなく終点拠点に到着すると判定し(S15)、この後ステップS18に進む。
【0127】
これに対して配送期限超過判定部38は、ステップS14の判定で否定結果を得ると、対象荷物は配送期限を超過して終点拠点に到着すると判定し(S16)、ステップS12で配送状況予測部37により予測された対象荷物の終点拠点への到着時刻と、配送期限との差分を算出する(S17)。この差分は、ステップS12で配送状況予測部37により予測された対象荷物の終点拠点への到着時刻から対象荷物の配送期限を減算することにより算出することができる。
【0128】
続いて、配送期限超過判定部38は、配送期限超過判定の対象となるすべての荷物についてステップS11~ステップS17の処理を実行し終えたか否かを判定する(S18)。そして配送期限超過判定部38は、この判定で否定結果を得るとステップS10に戻り、この後、ステップS10で選択する荷物をステップS11以降の処理が未処理の他の荷物に順次切り替えながらステップS10以降の処理を繰り返す。
【0129】
そして配送期限超過判定部38は、やがて配送期限超過判定の対象となるすべての荷物について終点拠点への到着時刻が配送期限を超過するか否かを判定し終えることによりステップS18で肯定結果を得ると、この配送期限超過判定処理を終了して配送計画変更処理(
図12)に戻る。
【0130】
一方、配送期限超過判定部38は、ステップS11又はステップS13の判定で否定結果を得ると、対象荷物が出荷可能となる時刻を予測するよう配送状況予測部37に要求する。かくして配送状況予測部37は、この要求に応じて、かかる到着時刻を予測する(S19)。
【0131】
なお、ここでの「出荷可能となる時刻」とは、ステップS11で否定結果を得てステップS19に進んだ場合には、対象荷物がそのとき位置している中継拠点2から出荷可能となる時刻を指し、ステップS13で否定結果を得てステップS19に進んだ場合には、対象荷物が次にいずれかの中継拠点2で荷卸しされてからその中継拠点2を出荷可能となる時刻を指す。
【0132】
例えば、ステップS11で否定結果を得てステップS19に進んできた場合、配送状況予測部37は、荷物ステータス情報テーブル24を参照して対象荷物のステータスを確認する。そして配送状況予測部37は、そのステータスが「出荷待ち」であった場合には現在時刻を「出荷可能となる時刻」とする。また配送状況予測部37は、対象荷物のステータスが「仕分け待ち」であった場合には、対象荷物に対して現在の中継拠点2において行われる作業の作業時間を中継指示情報テーブル28(
図10)から取得し、取得した作業時間を対象荷物がその中継拠点2に到着した時間に加算するようにして、対象荷物が出荷可能となる時刻を算出する。
【0133】
これに対して、配送状況予測部37は、ステップS13で否定結果を得てステップS19に進んできた場合には、対象荷物が次に降ろされる中継拠点2に到着する時刻(到着時刻)を予測すると共に、その中継拠点2においてその対象荷物に行われる作業の作業時間を中継指示情報テーブル28から取得し、取得した作業時間を上述のように予測した対象荷物の次に降ろされる中継拠点2への到着時刻に加算するようにして、対象荷物が出荷可能となる時刻を算出する。
【0134】
続いて、配送期限超過判定部38は、運送便ダイヤ情報テーブル26(
図8)を参照して、対象荷物を積載可能な最早の運送便を特定する(S20)。具体的に、配送期限超過判定部38は、ステップS11で否定結果を得てステップS19に進んできた場合には、対象荷物を現在の中継拠点2で積載可能な最早の運送便を特定する。また配送期限超過判定部38は、ステップS13で否定結果を得てステップS19に進んできた場合には、次に対象荷物が降ろされる中継拠点2においてその対象荷物を積載可能な最早の運送便を特定する。
【0135】
次いで、配送期限超過判定部38は、最終便組合せ情報テーブル29(
図11)を参照して、ステップS20で特定した運送便が対応する最終便組合せ情報において定義された運送便よりも前の時刻にその中継拠点2を出発する運送便であるか否かを判定する(S21)。この判定は、ステップS20で特定した運送便がその中継拠点2を出発する時刻と、対応する最終便組合せ情報において定義されたその中継拠点2から運送便が出発する時刻とを運送便ダイヤ情報テーブル26からそれぞれ取得し、前者が後者よりも時間的に早いか否かを判定することにより行うことができる。
【0136】
そして配送期限超過判定部38は、ステップS21の判定で肯定結果を得ると、対象荷物は配送期限を超過することなく終点拠点に到着すると判定し(S22)、この後ステップS18に進む。
【0137】
これに対して配送期限超過判定部38は、ステップS21の判定で否定結果を得ると、対象荷物は配送期限を超過して終点拠点に到着すると判定し(S23)、対象荷物が経由する残りの中継拠点2を特定する(S24)。なお「残りの中継拠点」とは、その後に対象荷物が経由して荷卸しや荷積みなどされるために、滞在時間を考慮すべきすべての中継拠点2を指す。
【0138】
ここで、滞在時間を考慮すべき中継拠点2の特定方法について具体的に説明する。例えば、対象荷物が
図5の荷物配送期限情報テーブル23に登録された「荷物15-1」である場合、その始発拠点は「中継拠点A」で、終点拠点は「中継拠点E」である。また中継指示情報テーブル28を参照すると、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点E」の荷物は、「中継拠点B」を経由することが定義されている。従って、「荷物15-1」が滞在する中継拠点は、「中継拠点A」及び「中継拠点B」である。また荷物ステータス情報テーブル24を参照すると、「荷物15-1」は「中継拠点A」において「出荷待ち」の状態にあるため、滞在時間を考慮すべき中継拠点2は「中継拠点A」及び「中継拠点B」となる。
【0139】
また、例えば、対象荷物が
図5の荷物配送期限情報テーブル23に登録された「荷物13-1」である場合、その始発拠点は「中継拠点A」で、終点拠点は「中継拠点C」である。また中継指示情報テーブル28を参照すると、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点C」の荷物は、「中継拠点B」を経由することが定義されている。従って、「荷物13-1」が滞在する中継拠点2は、「中継拠点A」及び「中継拠点B」である。また荷物ステータス情報テーブル24を参照すると、「荷物13-1」は「中継拠点A」において「出荷待ち」の状態にあるため、滞在時間を考慮すべき中継拠点2は「中継拠点A」及び「中継拠点B」となる。
【0140】
配送期限超過判定部38は、上述のようにしてステップS24で対象荷物が経由する残りの中継拠点2を特定すると、特定した中継拠点2(以下、これを特定中継拠点2と呼ぶ)の中からステップS26以降が未処理の1つの中継拠点2を選択する(S25)。
【0141】
また配送期限超過判定部38は、ステップS25で選択した特定中継拠点2から対象荷物が出荷可能となる時刻を予測する(S26)。例えば、配送期限超過判定部38は、現在、対象荷物がいずれかの中継拠点2に存在する場合には、その中継拠点2において対象荷物に対して行われる作業の作業時間を中継指示情報テーブル28から取得し、対象荷物がその中継拠点2に到着した時刻にかかる作業時間を加算するようにして、対象荷物がその中継拠点2から出荷可能となる時刻を予測する。
【0142】
また配送期限超過判定部38は、現在、対象荷物が配送中である場合には、その対象荷物が次に荷卸しされる中継拠点2に到着する時刻を配送状況予測部37に予測させると共に、当該中継拠点2において対象荷物に対して行われる作業の作業時間を中継指示情報テーブル28から取得し、配送状況予測部37が予測した時刻に中継指示情報テーブル28から取得した作業時間を加算するようにして、対象荷物がその中継拠点2から出荷可能となる時刻を予測する。
【0143】
続いて、配送期限超過判定部38は、運送便ダイヤ情報テーブル26を参照して、ステップS26で対象荷物の出荷可能な時刻を算出した中継拠点2において、対象荷物を最も早く出荷可能な運送便を特定する(S27)。ここでの「対象荷物を最も早く出荷可能な運送便」とは、対象荷物が出荷可能となる時刻よりも後にその中継拠点2から出発する運送便であって、かつ、対象荷物が次に荷卸しされるべき中継拠点2を経由する運送便である。
【0144】
次いで、配送期限超過判定部38は、荷物ステータス情報テーブル24及び中継指示情報テーブル28を参照して、対象荷物を次に荷卸しする中継拠点2に到着する時刻(到着時刻)を予測するよう配送状況予測部37に要求する。かくして、配送状況予測部37は、この要求に応じてかかる到着時刻を予測する(S28)。
【0145】
この後、配送期限超過判定部38は、すべての特定中継拠点2についてステップS26~ステップS28の処理を実行し終えたか否かを判断する(S29)。そして配送期限超過判定部38は、この判断で否定結果を得るとステップS25に戻り、この後ステップS25で選択する特定中継拠点2をステップS26以降が未処理の他の特定中継拠点2に順次切り替えながらステップS25~ステップS29の処理を繰り返す。
【0146】
そして配送期限超過判定部38は、やがてすべての特定中継拠点2についてステップS26~ステップS28の処理を実行し終えることによりステップS29で肯定結果を得ると、ステップS25~ステップS29の繰返し処理における最後のステップS28で配送状況予測部37により予測された対象荷物の終点拠点への到着時刻と、荷物配送期限情報テーブル23に登録された対象荷物の配送期限との差分を算出する(S17)。
【0147】
続いて、配送期限超過判定部38は、配送期限超過判定の対象となるすべての荷物についてステップS10以降の処理を実行し終えたか否かを判定する(S18)。そして配送期限超過判定部38は、この判定で否定結果を得るとステップS10に戻り、この後、ステップS10で選択する荷物をステップS11以降の処理が未処理の他の荷物に順次切り替えながらステップS10以降の処理を繰り返す。
【0148】
そして配送期限超過判定部38は、やがて配送期限超過判定の対象となるすべての荷物についてステップS10以降の処理を実行し終えることによりステップS18で肯定結果を得ると、この配送期限超過判定処理を終了して配送計画変更処理に戻る。
【0149】
このように荷物が中継拠点2から出発可能となる時刻を予測し、その荷物を配送可能な最も早い運送便を特定し、特定した運送便が最終便組合せ情報で定義された運送便より前の時刻に出発する運送便か否かを判定することにより、その荷物が複数の運送便を乗り継ぐ場合であっても、配送期間内に配送可能か否かを判定することができる。
【0150】
(1-2-3)最適化処理
図14は、
図12について上述した配送計画変更処理のステップS7において評価部39により実行される最適化処理の具体的な処理内容を示す。評価部39は、この
図14に示す処理手順に従って運送便ダイヤ情報により定義された元の配送計画と、配送計画案生成部35により生成された各配送計画案との中から最良の配送計画又は配送計画案を特定する。
【0151】
実際上、評価部39は、配送計画変更処理がステップS7に進むと、この
図14に示す最適化処理を開始し、まず、配送計画変更処理のステップS2で配送計画案生成部35が生成した配送計画案の中からステップS31以降が未処理の配送計画案を1つ選択する(S30)。
【0152】
続いて、評価部39は、ステップS30で選択した配送計画案(以下、これを選択配送計画案と呼ぶ)について、荷物配送期限情報テーブル23及び運送便ダイヤ情報テーブル26にそれぞれ格納された各情報と、配送計画案情報テーブル27に格納された選択配送計画案に関する情報と、
図13A及び
図13Bについて上述した配送期限超過判定処理で導出した、選択配送計画案を適用した場合に配送期限を超過する荷物に関する情報とに基づいて、α及びβを任意のパラメータとして、次式
【数1】
により、選択配送計画案を適用した場合における各荷物の配送期限の超過時間の合計値を評価値fcとして算出する(S31)。
【0153】
(1)式において、xiは、荷物iが配送期限を超過する場合は「1」、そうでない場合は「0」の値をとる0-1変数であり、Δtiは、tを単位時間としたときの荷物iの終点拠点における予測到着時刻と配送期限との差分である。また(1)式において、yは、配送変更要求に対応している場合は「0」、そうでない場合は「1」の値をとる0-1変数である。なお元の配送計画と比較した輸送車両7の稼動時間の増加量や走行距離の増加量などを評価指数に加えてもよい。また(1)式では、評価値fcが最小となる配送計画案が最適解として導出される。
【0154】
次いで、評価部39は、ステップS31で算出した選択配送計画案の評価値fcと、暫定解とを比較し、暫定化よりもかかる評価値fcが良い(小さい)か否かを判断する(S32)。暫定解については、後述する。最初のステップS32では、暫定解が存在しないために肯定結果を得るものとする。そして、評価部39は、ステップS32の判断で肯定結果を得ると、ステップS31で算出したそのときの選択配送計画案の評価値fcを暫定解に設定する(S33)。また評価部39は、2回目以降のステップS32において否定結果を得るとステップS34に進む。
【0155】
この後、評価部39は、
図12について上述した配送計画変更処理のステップS2で配送計画案生成部35が生成したすべての配送計画案についてステップS31~ステップS33の処理を実行し終えたか否かを判断する(S34)。
【0156】
評価部39は、この判断で否定結果を得るとステップS30に戻り、この後、ステップS30で選択する配送計画案をステップS31以降が未処理の他の配送計画案に順次切り替えながらステップS30~ステップS34の処理を繰り返す。この繰返し処理により、最も評価値fcが良い(小さい)配送計画案が最終的な暫定解となる。
【0157】
そして評価部39は、やがて配送計画案生成部35が生成したすべての配送計画案の評価値fcを算出し終えることによりステップS34で肯定結果を得ると、いずれの配送計画案も採用しない場合、すなわち運送便ダイヤ情報テーブル26で定義された運送便ダイヤ通りの元の配送計画で運送便を運行する場合の評価値fcを算出する(S35)。
【0158】
続いて、評価部39は、ステップS35で算出した、いずれの配送計画案も採用しない場合の評価値fcと、そのとき設定されている暫定解とを比較し、かかる評価値fcがかかる暫定解よりも良いか(小さいか)否かを判断する(S36)。
【0159】
そして評価部39は、この判断で否定結果を得ると、暫定解が最適解と判定し(S37)、この後、この最適化処理を終了して配送計画変更処理に戻る。また評価部39は、ステップS36の判断で肯定結果を得ると元の配送計画が最良と判定し(S38)、この後、この最適化処理を終了して配送計画変更処理に戻る。
【0160】
ここで、以上の最適化処理におけるステップS30~ステップS38の具体的な処理内容について、荷物配送期限情報テーブル23、荷物ステータス情報テーブル24、配送変更要求情報テーブル25、運送便ダイヤ情報テーブル26、配送計画案情報テーブル27、中継指示情報テーブル28及び最終便組合せ情報テーブル29の内容が
図5~
図11の通りである場合を例に説明する。ここでは、(1)式のα及びβはいずれも「1」であるものとする。
【0161】
まず、ステップS31における評価値fcの算出手順について、ステップS30で選択した配送計画案が、
図9に例示した配送計画案情報テーブル27の「候補1」であった場合について説明する。
【0162】
この配送計画案は、車両IDが「車両11」の輸送車両を新たに手配し、増便を行う配送計画案である。この場合、「車両11」が配送する荷物は、配送変更要求に含まれる荷物のみであり、増便によって配送期限を超過する荷物は発生しない(すべてのxiが「0」)。また、この配送計画案は配送変更要求に対応しているため、yは「0」である。よって、この配送計画案の評価値fcは「0」となる。
【0163】
次に、ステップS30で選択した配送計画案が、配送計画案情報テーブル27の「候補2」であった場合のステップSにおける評価値fcの算出手順について説明する。
【0164】
この配送計画案は、車両IDが「車両2」の配送経路を「中継拠点B」→「中継拠点A」から、「中継拠点A」→「中継拠点E」→「中継拠点B」に変更する配送計画案である。また中継指示情報テーブル28(
図10)によると、「中継拠点A」から「中継拠点B」に向かう必要がある荷物は、終点拠点が「中継拠点B」、「中継拠点C」、「中継拠点D」及び「中継拠点E」のいずれかの荷物である。
【0165】
さらに荷物配送期限情報テーブル23(
図5)によると、「荷物12-1」、「荷物13-1」及び「荷物14-1」の3つは、それぞれ「中継拠点B」、「中継拠点C」又は「中継拠点D」が終点拠点となっている。従って、これらの荷物は、「車両2」によって「中継拠点A」から「中継拠点B」へと配送される。
【0166】
また運送便ダイヤ情報テーブル26(
図8)及び配送計画案情報テーブル27によると、「車両2」の配送計画を変更した場合、「車両2」が「中継拠点B」に到着する時刻は「18:00」から「18:20」に変化するが、荷物配送期限情報テーブル23によると、終点拠点が「中継拠点B」である「荷物12-1」の配送期限は「20:00」であるため、「荷物12-1」は配送期限内に配送可能である。
【0167】
一方で、中継指示情報テーブル28によると、「中継拠点B」を経由地とする「荷物13-1」は「中継拠点B」において「30分」の作業時間が必要であるため、「荷物13-1」が出荷可能となる時刻は18:50である。また運送便ダイヤ情報テーブル26によると、「荷物13-1」を「中継拠点B」から出発可能な最も早い運送便は、運送便IDが「4」の運送便であり、「中継拠点C」への到着時刻は「22:30」である。
【0168】
さらに最終便組合せ情報テーブル29(
図11)によると、計画案IDが「候補2」において、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点C」、引受日が「9/1」、引受時間帯が「午前」である「荷物13-1」の最終便組合せは、運送便IDが「2」の運送便及び運送便IDが「4」の運送便の組合せである。このうち「中継拠点B」から「中継拠点C」に配送する運送便として定義された運送便は、運送便IDが「4」の運送便である。よって、「荷物13-1」は、最終便組合せ情報テーブル29で定義された運送便で配送可能であるため、配送期限内に配送可能である。
【0169】
他方、中継指示情報テーブル28によると、「中継拠点B」を経由地とする「荷物14-1」は「中継拠点B」において「90分」の作業時間が必要であるため、「荷物14-1」が出荷可能となる時刻は19:50である。また運送便ダイヤ情報テーブル26によると、「荷物14-1」を「中継拠点B」から出荷可能な最も早い運送便は、運送便IDが「6」の運送便であり、「中継拠点D」における到着時刻は「0:10」である。
【0170】
さらに最終便組合せ情報テーブル29によると、計画案IDが「候補2」において、始発拠点が「中継拠点A」、終点拠点が「中継拠点D」、引受日が「9/1」、引受時間帯が「午前」である「荷物14-1」の最終便組合せは、運送便IDが「2」の運送便及び運送便IDが「3」の運送便の組合せである。このうち「中継拠点B」から「中継拠点D」に配送する運送便として定義された運送便は、運送便IDが「3」の運送便である。そして運送便IDが「6」の運送便は、運送便IDが「3」の運送便よりも後に出発する運送便であるため、「荷物14-1」は最終便組合せ情報テーブル29で定義された運送便よりも後に出発する運送便で配送され、配送期限内に配送することができない。また、この場合における予測到着時刻と配送期限との差分は70分である。よって、単位時間tを1分とした場合、この配送計画案の評価値fcは「70」となる。
【0171】
以上の結果から、この例では、「候補1」の評価値fcが「候補2」の評価値fcよりも小さく、「候補1」の評価値fcが最小となるため、「候補1」が最終的な暫定解となる。
【0172】
一方、運送便ダイヤ情報テーブル26で定義された運送便ダイヤ情報に基づく元の配送計画によると、配送変更要求において集荷される荷物(荷物IDが「荷物52-3」及び「荷物52-4」の各荷物)は、「車両5」によって配送される。また荷物配送期限情報テーブル23によると、「荷物52-3」及び「荷物52-4」の配送期限の時刻は共に「23:00」であるため、いずれも配送期限内に配送可能である。よって、元の配送計画によれば配送期限を超過する荷物は存在しない。ただし、この配送計画は配送変更要求に対応していないため、ステップS35で算出される元の配送計画の評価値fcは「1」となる。
【0173】
このように元の配送計画の評価値fcよりも暫定解(「候補2」の評価値fc)の方が小さい値となるため、この例ではステップS36において否定結果が得られることとなり、この結果、
図12について上述した配送計画変更処理のステップS8では、「候補2」の配送計画案が対応する拠点管理装置4に表示されることになる。
【0174】
(1-3)配送計画案表示画面
図15は、物流管理装置8の評価部39が、
図12~
図14について上述した配送計画変更処理により最良と判定した元の配送計画又は配送計画案を適用するか否かを、物流管理装置8のユーザに問い合わせるために、物流管理装置8に表示させる配送計画案表示画面40の画面構成例を示す。
【0175】
なお、
図15は、
図9に例示した配送計画案情報テーブル27における「候補2」が最良の配送計画案と判定された場合の表示例である。かかる「候補2」は、車両IDが「2」の運送便の経路を「中継拠点A」→「中継拠点B」から「中継拠点A」→「中継拠点E」→「中継拠点B」に変更する配送計画案である。
【0176】
図15に示すように、この配送計画案表示画面40は、配送ネットワーク表示領域41及び運送便ダイヤ変更詳細表示領域42と、適用ボタン43及びキャンセルボタン44とを備えて構成される。
【0177】
そして、配送ネットワーク表示領域41には、物流管理システム3(
図2)が物流を管理している配送ネットワーク1のうちの中継拠点2のネットワーク構成を表す模式図(以下、これを中継拠点ネットワーク模式図と呼ぶ)50が表示される。
【0178】
この中継拠点ネットワーク模式
図50では、その配送ネットワークにおける各中継拠点2が丸印51で表現され、その丸印内に対応する中継拠点2の中継拠点IDが表示される。また中継拠点ネットワーク模式
図50では、荷物の出荷元及びその荷物の出荷先となり得る2つの中継拠点2にそれぞれ対応する丸印51間が線52で接続される。
【0179】
そして配送ネットワーク表示領域41には、運送便ダイヤ情報テーブル26に登録された運送便ダイヤと、評価部39により最良と判定された配送計画案との間で変更が生じた輸送車両(以下、これを配送計画変更輸送車両と呼ぶ)7について、運送便ダイヤにより定義されたその配送計画変更輸送車両7の配送経路と、評価部39により最良と判定された配送計画案に基づく配送計画変更輸送車両7の配送経路とが表示される。
【0180】
具体的に、配送ネットワーク表示領域41には、
図15に示すように、運送便ダイヤによって定義された配送計画変更輸送車両7の配送経路を表す実線矢印53A及びこの実線矢印53Aが運送便ダイヤによって定義された配送経路であることが表記された吹出し54Aと、かかる配送計画案で定義された配送計画変更輸送車両7の配送経路を表す実線矢印53B及びこの実線矢印53Bが最良と判定された配送計画案の配送経路であることが表記された吹出し54Bとが表示される。
【0181】
また運送便ダイヤ変更詳細表示領域42には、運送便ダイヤで定義された配送計画変更輸送車両7の車両IDと、運送便ダイヤによって定義された配送計画変更輸送車両7の配送経路上の各中継拠点2における着発時刻と、評価部39により最良と判定された配送計画案に基づく配送計画変更輸送車両7の配送経路上の各中継拠点2における着発時刻とが表示される。
【0182】
そして物流管理装置8のユーザは、配送計画案表示画面40の配送ネットワーク表示領域41や運送便ダイヤ変更詳細表示領域42に表示された、評価部39により最良と判定された配送計画案を適用する場合には、適用ボタン43をクリックするようにする。この結果、かかる配送計画案が上述のように評価部39から輸配送管理装置6(
図2)に送信され、当該輸配送管理装置6において、この配送計画案に基づいて運送便ダイヤが更新される。
【0183】
また、かかるユーザは、配送計画案表示画面40の配送ネットワーク表示領域41や運送便ダイヤ変更詳細表示領域42に表示された、評価部39により最良と判定された配送計画案を適用しない場合には、キャンセルボタン44をクリックするようにする。この場合には、かかる配送計画案は輸配送管理装置6に送信されない。
【0184】
(1-4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の物流管理装置8は、配送変更要求に対して1又は複数の配送計画案を生成し、生成した配送計画案ごとに最終便組合せ情報を生成すると共に、中継拠点2で行われる荷物に対する作業の所要時間を考慮した将来の各荷物の配送状況を中継指示情報に基づいて予測する。また物流管理装置8は、各荷物の配送状況の予測結果及び最終便組合せ情報に基づいて、配送期限内に配送できない各荷物の配送期限超過時間の予測値をそれぞれ算出し、その合計値に基づいて各配送計画案をそれぞれ評価し、評価結果に基づいて最良の配送計画案を選択してユーザに提示する。
【0185】
従って、本物流管理装置8によれば、中継拠点2で行われる荷物に対する作業の所要時間を考慮した各荷物の配送状況の予測結果に基づいて各配送計画案を評価し、評価結果に基づいて最良の配送計画案を選択することができ、かくして動的に発生し得る配送変更要求に応じて、中継拠点での作業をも考慮した最良の配送計画案を導出することができる。
【0186】
(2)第2の実施の形態
図4との対応部分に同一符号を付して示す
図16は、第1の実施の形態の物流管理装置8に代えて
図2について上述した物流管理システム3に適用される第2の実施の形態による物流管理装置60の論理構成を示す。この物流管理装置60は、記憶部12に輸送コスト情報テーブル61が追加的に格納されている点と、最適化処理部62に輸送コスト算出部63が追加的に設けられている点とを除いて第1の実施の形態による物流管理装置8とハードウェア構成を含めて同様に構成されている。
【0187】
図17は、輸送コスト情報テーブル61の構成例を示す。輸送コスト情報テーブル61は、各輸送車両7をそれぞれ運送便として利用する際の輸送コストを管理するために利用されるテーブルであり、
図17に示すように、車両ID欄61A、運行形態欄61B、稼動時間欄61C及び運賃欄61Dを備えて構成される。
【0188】
そして車両ID欄61Aには、運送便として利用可能な各輸送車両7にそれぞれ付与された車両IDが格納される。また運行形態欄61Bは、対応する輸送車両を運送便として利用する際の各運行形態(ここでは、「定期便」及び「臨時便」)にそれぞれ対応させて小欄61Eに区分されており、これらの小欄61E内に対応する運行形態を表す情報が格納される。なお、ここでの「運行形態」としては、例えば、運送便ダイヤによって予め運行計画が定められている「定期便」や、当日に輸送車両7を手配し運行計画を決定する「臨時便」などがある。
【0189】
さらに稼動時間欄61C及び運賃欄61Dは、対応する輸送車両7を運送便として利用する際の運行形態ごとに、それぞれ稼動時間を稼動開始からの一定時間(図では2時間)ごとの時間帯に分けた場合の各時間帯にそれぞれ対応させて小欄61Fに区分されている。そして稼動時間欄61Cの各小欄61Fにはそれぞれ対応する時間帯が格納され、運賃欄61Dの小欄61Fにはそれぞれ対応する時間帯における対応する輸送車両7の運賃が格納される。なお、かかる運賃として、車両代だけでなく、その輸送車両7の運転を担当するドライバの人件費も含めるようにしてもよい。
【0190】
従って、
図17の例では、車両IDが「1」の輸送車両7を「定期便」として使用する場合、「1~120分」の時間帯の運賃が「8,000円」、「121~240分」の時間帯の運賃が「9,000円」、「241~360分」の時間帯の運賃が「10,000円」であり、同じ輸送車両7を「臨時便」として使用する場合には、「1~120分」の時間帯の運賃が「10,000円」、「121~240分」の時間帯の運賃が「12,000円」、「241~360分」の時間帯の運賃が「14,000円」であることが示されている。
【0191】
図18は、本実施の形態の物流管理装置60により
図12のステップS7で実行される最適化処理の流れを示す。本実施の形態の最適化処理の場合、まず、評価部64が、配送計画変更処理のステップS2(
図12)で配送計画案生成部35が生成した配送計画案の中からステップS41以降が未処理の配送計画案を1つ選択する(S40)。
【0192】
続いて、輸送コスト算出部63が、輸送コスト情報テーブル61を参照して、ステップS40で評価部64が選択した配送計画案(選択配送計画案)を適用した場合の輸送コストの増加量(以下、これを輸送コスト増加量と呼ぶ)を算出する(S41)。例えば、輸送コスト算出部63は、
【数2】
により、n番目の配送計画案の輸送コスト増加量C
nを算出する。
【0193】
なお(2)式において、x
iは、選択配送計画案において、運送便ダイヤ情報テーブル26(
図8)で定義された車両IDが車両iである輸送車両7の運行計画が変更されていた場合は「1」、そうでない場合は「0」の値をとる0-1変数である。またΔc
iは、運送便ダイヤ情報テーブル26で定義されたかかる車両iの運行計画を実行することで生じる輸送コストと、その選択配送計画案により定義されたかかる車両iの運行計画を実行することで生じる輸送コストとの差分である。
【0194】
続いて、評価部64が、荷物配送期限情報テーブル23(
図5)、運送便ダイヤ情報テーブル26(
図8)及び配送計画案情報テーブル27(
図9)にそれぞれ格納された各情報と、ステップS41で算出した選択配送計画案の輸送コスト増加量とに基づいて、選択配送計画案を適用した場合の評価値fcを算出する(S42)。本実施の形態の場合、評価部64は、評価値fcを次式
【数3】
により算出するものとする。なお、(3)式において、α、β及びγは、いずれも任意のパラメータであり、x
i、Δt
i及びyは、(1)式と同様である。また(3)式では、評価値fcが最小となる配送計画案が最適解として導出される。
【0195】
次いで、評価部64は、ステップS42で算出した選択配送計画案の評価値fcと、暫定解とを比較し、暫定化よりもかかる評価値fcが良い(小さい)か否かを判断する(S43)。上述のように最初のステップS43では、暫定解が存在しないために常に肯定結果を得ることになる。そして、評価部64は、ステップS43の判断で肯定結果を得ると、ステップS42で算出したそのときの選択配送計画案の評価値fcを暫定解に設定する(S44)。また評価部64は、2回目以降のステップSにおいて否定結果を得るとステップS45に進む。
【0196】
この後、評価部64は、
図12について上述した配送計画変更処理のステップS2で配送計画案生成部35が生成したすべての配送計画案についてステップS41~ステップS44の処理を実行し終えたか否かを判断する(S45)。
【0197】
評価部64は、この判断で否定結果を得るとステップS40に戻り、この後、ステップS40で選択する配送計画案をステップS41以降が未処理の他の配送計画案に順次切り替えながらステップS40~ステップS45の処理を繰り返す。この繰返し処理により、最も評価値fcが良い(小さい)配送計画案の当該評価値fcが最終的な暫定解となる。
【0198】
そして評価部64は、やがて配送計画案生成部35が生成したすべての配送計画案の評価値fcを算出し終えることによりステップS45で肯定結果を得ると、いずれの配送計画案も採用しない場合、すなわち運送便ダイヤ情報テーブル26で定義された運送便ダイヤ通りの元の配送計画で運送便を運行する場合の評価値fcを算出する(S46)。
【0199】
続いて、評価部64は、ステップS46で算出した、いずれの配送計画案も採用しない場合の評価値fcと、そのとき設定されている暫定解とを比較し、かかる評価値fcがかかる暫定解よりも良いか(小さいか)否かを判断する(S47)。
【0200】
そして評価部64は、この判断で否定結果を得ると暫定解が最適解と判定し(S48)、この後、この最適化処理を終了して配送計画変更処理に戻る。また評価部64は、ステップS47の判断で肯定結果を得ると元の配送計画が最良と判定し(S49)、この後、この最適化処理を終了して配送計画変更処理に戻る。
【0201】
ここで、以上の最適化処理におけるステップS40~ステップS49の具体的な処理内容について、荷物配送期限情報テーブル23、荷物ステータス情報テーブル24、配送変更要求情報テーブル25、運送便ダイヤ情報テーブル26、配送計画案情報テーブル27、中継指示情報テーブル28及び最終便組合せ情報テーブル29の内容が
図5~
図23の通りである場合を例に説明する。ここでは、(3)式のα、β及びγは、いずれも「1」であるものとする。
【0202】
まず、ステップS40で選択した配送計画案(選択配送計画案)が
図9に例示した配送計画案情報テーブルの「候補1」であった場合について説明する。
【0203】
この配送計画案では、「車両11」が「17:00」に「中継拠点E」を出発し、「17:30」に「中継拠点B」に到着することが定義されている。このとき「車両11」は、運送便ダイヤ情報テーブル26上では運行計画が定義されていないため、その運行形態は臨時便となる。
【0204】
また輸送コスト情報テーブル61を参照すると、「車両11」を臨時便として運行する場合であって、その稼動時間が「1~120分」の場合、運賃は「10,000円」である。従って、コストの単価を円とすると、かかる「候補1」の計画案を適用した場合の運送コストの差分は10,000円であり、この10,000円が「候補1」を適用した場合の輸送コスト増加量としてステップS41で算出される。
【0205】
また配送計画案情報テーブル27(
図9)によれば、「候補1」の配送計画案を適用した場合には、配送期限を超過する荷物は発生しない。また、この場合における輸送コスト増加量は上述のように10,000円である。さらに「候補1」の配送計画案は、配送変更要求に対応しているため、yは「0」である。よって、ステップS42では、「候補1」の評価値fcが「10,000」として算出される。
【0206】
次に、ステップS40で選択した配送計画案(選択配送計画案)が配送計画案情報テーブル27の「候補2」であった場合について説明する。
【0207】
この配送計画案では、「車両2」の配送経路が「中継拠点A」→「中継拠点E」→「中継拠点B」と定義されている。また「車両2」は、運送便ダイヤ情報テーブル26(
図8)において運行計画が定義されているため、「車両2」の運行形態は定期便となる。
【0208】
また運送便ダイヤ情報テーブル26では、「車両2」の運行時間は「60分」となっているのに対して、「候補2」の配送計画案では「車両2」の運行時間は「80分」である。そして輸送コスト情報テーブル61(
図17)を参照すると、「車両2」を定期便として運行する場合であって、その稼動時間が「1~120分」の場合、運賃は「10,000円」である。従って、かかる「候補2」の計画案を適用した場合の運送コストの差分は0円であり、この0円が「候補2」を適用した場合の輸送コスト増加量としてステップS41で算出される。
【0209】
また配送計画案情報テーブル27によれば、「候補2」の配送計画案を適用した場合、「荷物14-1」がその配送期限を超過し、この配送期限と予測到着時刻との差分は「70分」である。また「候補2」の配送計画案を適用した場合の輸送コスト増加量は、上述のように「0」である。さらに「候補2」の配送計画案は、配送変更要求に対応しているため、yは「0」である。よって、ステップS42では、「候補2」の評価値fcが「70」として算出される。
【0210】
以上の結果から、「候補2」の評価値が最小となるため、この例における暫定解は「候補2」を適用した場合の評価値fcである「70」となる。
【0211】
一方、運送便ダイヤ情報テーブル26で定義された運送便ダイヤに基づく元の配送計画によれば、上述のように配送期限を超過する荷物は存在しない。また、いずれの輸送車両の運行計画も変更していないため、輸送コスト増加量は「0」である。さらに、この配送計画は配送変更要求に対応していないため、ステップS46で算出される元の配送計画の評価値fcは「1」となる。
【0212】
このため元の配送計画の評価値fcの方が暫定解(「候補2」の評価値fc)よりも小さい値となるため、この例ではステップS47において肯定結果が得られることとなり、ステップS49で元の配送計画が最良のもの(最適解)と判定される。この結果、
図12について上述した配送計画変更処理のステップS8では、元の配送計画に関する情報が配送計画案表示画面40に表示されることになる。
【0213】
以上のように本実施の形態の物流管理装置60は、配送計画案ごとにその配送計画案を適用した場合の輸送コスト増加量を算出し、輸送コスト増加量をその配送計画案の評価値fcの算出に利用するため、中継拠点での作業に加えて輸送コスト増加量をも考慮した最良の配送計画案を導出できるという効果を得ることができる。
【0214】
(3)第3の実施の形態
図4との対応部分に同一符号を付した
図19は、第1の実施の形態による物流管理装置8(
図4)に代えて
図2について上述した物流管理システム3に適用される第3の実施の形態による物流管理装置70の論理構成を示す。
【0215】
この物流管理装置70は、一定期間内に複数の配送変更要求を受信した場合に、これらの配送変更要求に対してそれぞれ優先度を設定し、優先度の高い配送変更要求に対応する配送計画案ほど評価値が高くなるように各配送計画案の評価値を算出する点を除いて、第1の実施の形態とハードウェア構成を含めて同様に構成されている。
【0216】
なお、以下においては、「中継拠点E」から「中継拠点B」に配送する荷物を配送するための配送変更要求と、「中継拠点E」から「中継拠点C」に荷物を配送するための配送変更用要求とが物流管理装置に与えられた場合を想定する。
【0217】
図20は、本実施の形態における配送変更要求情報テーブル71の構成例を示す。本実施の形態の場合、配送変更要求情報テーブル71は、変更要求ID欄71A、要求内容欄71B、優先度欄71C及び最適化処理済みフラグ欄71Dを備えて構成される。配送変更要求情報テーブル71では、1つのレコードが1つの配送変更要求に対応する。
【0218】
そして変更要求ID欄71A及び要求内容欄71Bには、それぞれ第1の実施の形態の配送変更要求情報テーブル25(
図7)の変更要求ID欄25A及び要求内容欄25Bにそれぞれ格納される情報と同様の内容が格納される。
【0219】
また優先度欄71Cには、対応する配送変更要求に対して設定された優先度が格納される。優先度は、例えば、配送変更要求において集荷を要求されている荷物の配送期限及び荷量を含む各種の配送条件を入力することで優先度を出力する統計モデル(以下、これを優先度決定モデルと呼ぶ)を予め構築し、構築した優先度決定モデルに対して、対象となる荷物の配送期限及び荷量を含む各種の配送条件を入力することにより得られた値である。ただし、優先度の決定方法としては、この他種々の方法を広く適用することができる。
【0220】
最適化処理済フラグ欄71Dには、その配送計画案に対して最適化処理が実行済であるか否かを表すフラグ(以下、これを最適化処理済フラグと呼ぶ)が格納される。なお、最適化処理済フラグは、対応する配送計画案に対する最適化処理が実行済みの場合は「1」に設定され、そうでない場合には「0」に設定される。
【0221】
従って、
図20の場合、「1」という変更要求IDが付与された配送変更要求の内容は、「中継拠点E」で「9/1 17:00~18:00」の間に荷物を集荷し、「中継拠点B」へ配送(「中継拠点Eで9/1 17:00~18:00の間に荷物を集荷。中継拠点Bへ荷物を配送。」)であり、その配送変更要求に対する優先度が「2」に設定され、この配送変更要求に対する最適化処理が実行されていない(最適化処理済フラグが「0」)ことが示されている。
【0222】
また
図20では、「2」という変更要求IDが付与された配送変更要求の内容は、「中継拠点E」で「9/1 17:00~18:00」の間に荷物を集荷し、「中継拠点C」へ配送(「中継拠点Eで9/1 17:00~18:00の間に荷物を集荷。中継拠点Cへ荷物を配送。」)であり、その配送変更要求に対する優先度が「1」に設定され、この配送変更要求に対する最適化処理が実行されていない(最適化処理済フラグが「0」)ことが示されている。
【0223】
図21は、本実施の形態の配送計画案情報テーブル27の具体例を示す。この例では、
図20で例示した2つの配送変更要求に対して「候補1」、「候補2」、「候補3」及び「候補4」の4つの配送計画案が配送計画案生成部35により生成された例を示している。ここでは、「候補1」については、配送計画が変更される輸送車両7が2台あり、「候補2」、「候補3」及び「候補4」については、配送計画が変更される輸送車両7が1台だけの場合が例示されている。
【0224】
そして、本実施の形態の場合、変更要求ID欄27Aには、対応する配送計画案が対応付けられたすべての配送変更要求の変更要求IDが格納される。
【0225】
例えば、「候補1」という配送計画案は、「中継拠点E」から「中継拠点B」に荷物を配送する運送便と、「中継拠点E」から「中継拠点C」に荷物を配送する運送便とを増便する配送計画案である。従って、「候補1」という配送計画案は、変更要求IDが「1」の配送変更要求と、変更要求IDが「2」の配送変更要求との両方に対応した配送計画案であるため、「候補1」に対応する変更要求ID欄27Aには「1」及び「2」という変更要求IDが格納される。
【0226】
また「候補2」という配送計画案は、「車両2」という輸送車両7の配送経路を「中継拠点A」→「中継拠点B」から「中継拠点A」→「中継拠点E」→「中継拠点B」に変更する配送計画案である。中継指示情報テーブル28(
図10)を参照すると、始発拠点が「中継拠点E」、終点拠点が「中継拠点C」の荷物は、「中継拠点B」を経由地とすると定義されているため、「候補2」という配送計画案は、変更要求IDが「1」の配送変更要求と、変更要求IDが「2」の配送変更要求との両方に対応した配送計画案である。よって「候補2」に対応する変更要求ID欄27Aにも、「1」及び「2」という変更要求IDが格納される。
【0227】
なお、配送変更要求において中継指示情報テーブル28に従って荷物を配送するよう指示されていない限り、中継指示情報テーブル28で定義された荷物の中継経路(荷物が経由する中継拠点)と、配送計画案により定義された荷物の中継経路とが異なっていても良いものとする。
【0228】
さらに「候補3」は、「中継拠点E」から「中継拠点B」に荷物を配送する運送便のみを増便する配送計画案であり、変更要求IDが「1」の配送変更要求に対してのみ対応した配送計画案である。よって「候補3」に対応する変更要求ID欄27Aには、「1」という変更要求IDのみが格納される。
【0229】
また「候補4」は、「中継拠点E」から「中継拠点C」に荷物を配送する運送便のみを増便する配送計画案であり、変更要求IDが「2」の配送変更要求に対してのみ対応した配送計画案である。よって「候補4」に対応する変更要求ID欄27Aには、「2」という変更要求IDのみが格納される。
【0230】
図22は、
図12について上述した第1の実施の形態による配送計画変更処理に代えて本実施の形態の物流管理装置70において実行される配送計画変更処理の流れを示す。本実施の形態の場合、この配送計画変更処理は、周期的に所定の時間ごとに繰返し実行される。
【0231】
そして、この配送計画変更処理が開始されると、まず、配送変更要求取得部74(
図19)が、所定時間(例えば15分)が経過するまで配送変更要求の受付を行う(S50)。そして配送変更要求取得部74は、この間に配送変更要求を取得した場合には、取得した配送変更要求を配送変更要求情報テーブル71(
図20)に登録する。なお、この段階では、配送変更要求情報テーブル71の対応するレコードにおける変更要求ID欄71A及び要求内容欄71Bが埋められ、優先度欄71Cには情報が格納されない。また最適化処理済フラグ欄71Dに格納された最適化処理済フラグは、この段階では「0」に設定される。
【0232】
そして配送変更要求取得部74は、やがてかかる所定時間が経過すると、この所定時間内に何らかの配送変更要求を受信したか否かを判断する(S51)。そして配送変更要求取得部74は、この判断で否定結果を得るとこの配送計画変更処理を終了する。
【0233】
これに対して配送変更要求取得部74は、ステップS51の判断で肯定結果を得ると、ステップS50で配送変更要求情報テーブル71に登録した各配送変更要求に対して優先度をそれぞれ設定し、設定した各配送変更要求の優先度を配送変更要求情報テーブル71の対応するレコードの優先度欄71Cにそれぞれ格納する(S52)。このときの優先度の決定方法としては、上述した優先度決定モデルに対して対象となる荷物の配送期限及び荷量を含む各種の配送条件を入力することにより得ることができる。
【0234】
次いで、最適化処理部75(
図19)の配送計画案生成部35が、配送変更要求情報テーブル71に登録された各配送変更要求に対して配送計画案をそれぞれ生成し、生成した配送計画案を配送計画案情報テーブル27にそれぞれ登録する(S53)。そして、この後、
図12について上述した第1の実施の形態の配送計画変更処理のステップS3~ステップS5と同様にステップS54~ステップS57が実行される。
【0235】
そしてステップS57の判断で肯定結果が得られると、最適化処理部75の評価部76(
図19)が、配送変更要求情報テーブル71に登録された配送変更要求のうち、最適化処理済フラグが「0」の配送変更要求に対してそれぞれ最適化処理を実行する(S58)。
【0236】
なお、このとき評価部76が実行する最適化処理の内容は、
図14について上述した第1の実施の形態の最適化処理とほぼ同様である。ただし、本実施の形態の場合、評価部76は、元の配送計画や各配送計画案に対する評価値fcを、α及びβを任意のパラメータとして、次式
【数4】
によりそれぞれ算出する。
【0237】
なお(4)式において、xiは、荷物iが配送期限を超過する場合は「1」、そうでない場合は「0」の値をとる0-1変数であり、Δtiは、tを単位時間としたときの荷物iの終点拠点における予測到着時刻と配送期限との差分である。
【0238】
また(4)式において、y
jは、配送変更要求jに対応している場合には「0」、そうでない場合はその配送変更要求jの優先度に応じた値をとる。例えば配送変更要求jに対応していない場合にy
jがその配送変更要求jの優先度の逆数をとるものとすると、
図21の「候補1」の配送計画案の場合、配送変更要求IDが「1」及び「2」の両方の配送変更要求に対応しているため、次式
【数5】
となる。また「候補3」の場合、配送変更要求IDが「1」の配送変更要求のみに対応しているため、
【数6】
となる。さらに運送便ダイヤで定義された元の配送計画に従う場合、いずれの配送変更要求にも対応していないため、次式
【数7】
となる。
【0239】
そして評価部76は、かかる最適化処理により評価結果が最良となる元の配送計画又は配送計画案を検出すると、その配送計画又は配送計画案に関する情報に基づいて
図15について上述した配送計画案表示画面40を生成し、生成した配送計画案表示画面40を出力部15に表示させる(S59)。以上により、この一連の配送計画変更処理が終了する。
【0240】
以上のように本実施の形態の物流管理装置70では、配送変更要求に対して優先度を設定し、優先度の高い配送変更要求に対応するほど評価値を良くするため、中継拠点での作業に加えて配送変更要求の優先度をも考慮した最良の配送計画案を導出できるという効果を得ることができる。
【0241】
(4)他の実施の形態
なお上述の第1~第3の実施の形態においては、
図1について上述した配送ネットワーク1の物流を管理する物流管理システム3に本発明の物流管理装置8を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成の配送ネットワークの物流を管理する種々の構成の物流管理システムに本発明の物流管理装置を広く適用することができる。
【0242】
また上述の第1~第3の実施の形態においては、物流管理装置8,60,70を1台のコンピュータ装置により構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、物流管理装置8,60,70を複数のコンピュータ装置から構成される分散型コンピューティングシステムにより構成し、物流管理装置8,60,70に搭載された情報取得部20,73や最適化処理部21,62,75の機能をこれら複数のコンピュータ装置に分散して配置するようにしてもよい。
【0243】
さらに上述の第3の実施の形態においては、配送変更要求の優先度に基づいて各配送計画案の評価値fcを算出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、配送変更要求の優先度に加えて第2の実施の形態のように輸送コストの増加量をも考慮して各配送計画案の評価値fcを算出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本発明は、複数の中継拠点を有する物流ネットワークにおける物流を管理する種々の構成の物流管理装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0245】
1……配送ネットワーク、2……中継拠点、3……物流管理システム、4,60,70……拠点管理装置、6……輸配送管理装置、7……輸送車両、8……物流管理装置、11……処理部、20,73……情報取得部、21,62,75……最適化処理部、23……荷物配送期限情報テーブル、24……荷物ステータス情報テーブル、25,71……配送変更要求情報テーブル、26……運送便ダイヤ情報テーブル、27……配送計画案情報テーブル、28……中継指示情報テーブル、29……最終便組合せ情報テーブル、30……配送期限取得部、31……輸送車両位置情報取得部、32……拠点作業情報取得部、33……荷物ステータス情報更新部、34,74……配送変更要求取得部、35……配送計画案生成部、36……最終便組合せ情報生成部、37……配送状況予測部、38……配送期限超過判定部、39,64,76……評価部、40……配送計画案表示画面、61……輸送コスト情報テーブル、63……輸送コスト算出部。