(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125905
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】マルチチップ半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240911BHJP
G01R 31/3185 20060101ALI20240911BHJP
G01R 31/3167 20060101ALI20240911BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01L27/04 V
H01L27/04 U
H01L27/04 T
G01R31/3185
G01R31/3167
G01R31/28 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034032
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 道昭
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 浩一
【テーマコード(参考)】
2G132
5F038
【Fターム(参考)】
2G132AA11
2G132AA14
2G132AC03
2G132AD01
2G132AD04
2G132AL31
5F038AV15
5F038AV18
5F038BB05
5F038BB07
5F038CD02
5F038DF04
5F038DF05
5F038DT02
5F038DT12
5F038DT15
5F038DT17
5F038DT19
5F038EZ07
5F038EZ20
(57)【要約】
【課題】パッケージ内に封入された個々の半導体チップ内部電源電圧を、パッケージ封止後に調整できるマルチチップ半導体装置を提供すること。
【解決手段】マルチチップ半導体装置100は、2以上の半導体チップ(第一集積回路チップ101、第二集積回路チップ102)を含み、そのうちの少なくとも1つの半導体チップ(第二集積回路チップ102)の内部電源電圧を、半導体チップをパッケージ化する前にトリミングする第1の調整回路(ヒューズ回路124)と、前記半導体チップをパッケージ化した後にトリミングコードを使用してトリミングする第2の調整回路(レジスタ回路125)と、を介して調整して前記少なくとも1つの半導体チップ(第二集積回路チップ102)の内部回路に供給する電圧調整回路を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の半導体チップを含み、そのうちの少なくとも1つの半導体チップの内部電源電圧を、前記半導体チップをパッケージ化する前にトリミングする第1の調整回路と、前記半導体チップをパッケージ化した後にトリミングコードを使用してトリミングする第2の調整回路と、を介して調整して前記少なくとも1つの半導体チップの内部回路に供給する電圧調整回路を備える、マルチチップ半導体装置。
【請求項2】
前記電圧調整回路は、バンドギャップ電圧生成回路により生成されたバンドギャップ電圧を用いて基準電圧を生成する基準電圧生成回路を含む、請求項1記載のマルチチップ半導体装置。
【請求項3】
前記基準電圧生成回路は、前記バンドギャップ電圧と、出力される前記基準電圧を固定抵抗と可変抵抗との分割比により分割された電圧と、を入力とし、出力を前記基準電圧とする演算増幅器を含む、請求項2記載のマルチチップ半導体装置。
【請求項4】
前記可変抵抗は、前記第1の調整回路であるヒューズ回路と前記第2の調整回路である不揮発性レジスタからなるレジスタ回路とを含み、ウエハ試験時に前記ヒューズ回路をアナログトリミングすることにより前記基準電圧を設定し、さらに、パッケージ化後に前記レジスタ回路の前記不揮発性レジスタの値を調整することにより前記基準電圧を調整する、請求項3記載のマルチチップ半導体装置。
【請求項5】
前記電圧調整回路が少なくとも1つの半導体チップ内に設けられる、請求項1から4のいずれか1項記載のマルチチップ半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の集積回路装置を単一のパッケージ内に封入したマルチチップ半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の集積回路装置又はチップを単一のパッケージ内に封入し、外観上一つの集積回路装置としたマルチチップ半導体装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マルチチップ半導体装置を構成する複数の集積回路装置又はチップのうちの1つの動作周波数が、他のチップ又はマルチチップ半導体装置の全体の動作周波数と一致していない場合には、マルチチップ半導体装置は動作せず、不良品となる。そのため、こうしたマルチチップ半導体装置では、パッケージ内の複数のチップ間において正確なデータ通信を行うために、パッケージ組立後にチップ毎に動作周波数を調整する必要がある。各チップの動作周波数のためにパッケージ組立後にそれぞれのチップの内部電源電圧を調整することができればマルチチップ半導体装置の歩留まり問題を解決することができる。
【0005】
ここで、上記特許文献1は、一つの半導体集積回路内に、レーザ照射により第1のトリミングコードを記憶させるためのレーザヒューズ回路と、電圧印加により第2のトリミングコードを記憶させるための電気ヒューズ回路と、第1又は第2のトリミングコードに応じて電位レベル又はタイミングを調整する調整回路とを有する半導体集積回路を開示している。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1は、半導体ウエハ上に形成されたチップのトリミングを行うものであり、複数のチップがパッケージ内に封入された後に内部電源を調整するものではない。
【0007】
したがって、本発明は、上記の事情を踏まえ、パッケージ内に封入された個々の半導体チップ内部電源電圧を、パッケージ封止後に調整できるマルチチップ半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るマルチチップ半導体装置は、2以上の半導体チップを含み、そのうちの少なくとも1つの半導体チップの内部電源電圧を、前記半導体チップをパッケージ化する前にトリミングする第1の調整回路と、前記半導体チップをパッケージ化した後にトリミングコードを使用してトリミングする第2の調整回路と、を介して調整して前記少なくとも1つの半導体チップの内部回路に供給する電圧調整回路を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パッケージ内に封入された個々の半導体チップの内部電源電圧を、パッケージ封止後に調整できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態のマルチチップ半導体装置の全体概略図である。
【
図2】実施形態のマルチチップ半導体装置に含まれる第二集積回路チップの内部回路の構成を示している。
【
図3】第二集積回路チップの基準電圧回路の構成を示す図である。
【
図4】
図4(A)は実施形態のマルチチップ半導体装置のウエハ試験の流れを示すフローチャートであり、
図4(B)は実施形態のマルチチップ半導体装置のパッケージ封止後に行うパッケージ後テストの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のマルチチップ半導体装置の全体概略図である。
図1に示すように、マルチチップ半導体装置100は、2以上の半導体チップ、即ち第一集積回路チップ101、第二集積回路チップ102を有しており、これらがパッケージ内に封入されている。例えば、第一集積回路チップ101は中央演算処理装置(CPU)、第二集積回路チップ102はDRAM(Dynamic Random Access Memory)といったメモリである。
【0013】
第一集積回路チップ101と第二集積回路チップ102は、それぞれ外部電源入力を備えており、それぞれに外部電源電圧VCC1とVCC2が印加され、内部回路に電力を供給している。第一集積回路チップ101のCLK出力は、第二集積回路チップ102のCLK入力に接続されており、第二集積回路チップ102は、第一集積回路チップ101のCLK出力に同期して動作する。
【0014】
また、第一集積回路チップ101は、CMD出力、ADD出力を有しており、それぞれ第二集積回路チップ102のCMD入力、ADD入力に接続されている。さらに、第一集積回路チップ101は信号I/Oを有し、第二集積回路チップ102の信号I/Oに接続されている。第二集積回路チップ102は、第一集積回路チップ101のCMD出力から受信した命令に従い、第一集積回路チップ101のADD出力により指定されたアドレスに、信号I/Oを介して受信したデータを書き込む。あるいは、第二集積回路チップ102は、第一集積回路チップ101のCMD出力から受信した命令に従い、第一集積回路チップ101のADD出力により指定されたアドレスからデータを読み出して信号I/Oを介して出力する。
【0015】
図2は、第二集積回路チップ102の内部回路の構成を示している。
図2に示すように、第二集積回路チップ102は、インタフェース回路110、制御回路111、電源電圧回路112を含む。
【0016】
インタフェース回路110は、第二集積回路チップ102の制御回路111に対して第一集積回路チップ101とのデータのやり取りを行うための機能を提供する回路である。
【0017】
制御回路111は、第一集積回路チップ101からCMD入力に入力された指示に応じ、ADD入力に指定されたメモリセル(図示せず)に対して信号I/Oを介して受信したデータを書き込んだり、当該メモリセルから読みだしたデータを信号I/Oへ出力したりする制御を行う。
【0018】
また、制御回路111は、第一集積回路チップ101からCMD入力に入力された指示に応じて、後述するテスト回路116に対して、基準電圧生成回路114の基準電圧を調整するためのレジスタ値(トリミングコード)を生成させるよう指示する。
【0019】
電源電圧回路112は本発明の電圧調整回路を含み、この電圧調整回路は、本実施形態においてはバンドギャップ電圧生成回路113、基準電圧生成回路114、内部電源回路115、テスト回路116を含んでいる。
【0020】
バンドギャップ電圧生成回路113は、外部電源電圧VCC2及び周囲温度に左右されず一定のバンドギャップ電圧VBGを発生させる回路である。
【0021】
基準電圧生成回路114は、後述するが、バンドギャップ電圧VBGから所望の基準電圧VREFを生成する。
【0022】
内部電源回路115は、基準電圧生成回路114によって生成された基準電圧VREFと同電位の内部電源電圧IVCCを第二集積回路チップ102全体、即ち第二集積回路チップ102の内部回路に供給する。
【0023】
テスト回路116は、基準電圧生成回路114が出力する基準電圧VREFを測定するもので、パッド117に接続されており、パッド117から入力された計測指示信号に応じ、当該信号を受信した時点における基準電圧VREFを出力する。なお、パッド117は、マルチチップ半導体装置100のパッケージの外部へ露出しており、外部の計測装置によって計測指示信号を入力し、そこに出力される電位を計測することが可能である。
【0024】
また、テスト回路116は、制御回路111からの指示に応じ、基準電圧生成回路114のレジスタ回路125に対して後述のレジスタ値(トリミングコード)を生成して入力する。
【0025】
次に、基準電圧生成回路114の構成について、
図3を参照して説明する。基準電圧生成回路114は、演算増幅器であるオペアンプ120、固定抵抗121、可変抵抗122、123、ヒューズ回路124、レジスタ回路125から構成されている。
【0026】
オペアンプ120は、非反転入力端子VIN+、反転入力端子VIN-、出力端子VOUTを少なくとも備える。非反転入力端子VIN+には、バンドギャップ電圧生成回路113が生成するバンドギャップ電圧VBGが印加される。一方、反転入力端子VIN-には、オペアンプ120の出力端子VOUTから出力される基準電圧VREFを抵抗値R0の固定抵抗121と、それぞれ抵抗値VR0、VR1の可変抵抗122、123とによって分割した電圧が印加される。したがって、オペアンプ120は非反転増幅回路として動作し、オペアンプ120の出力である基準電圧VREFは、バンドギャップ電圧VBGを固定抵抗121と可変抵抗122との分割比により分割された値となる。具体的には、基準電圧VREFは、VBG(1+(R0+VR0+VR1)/R0)となり、抵抗値R0、VR0、VR1を選択することで所望の基準電圧VREFの出力を得られる。
【0027】
ヒューズ回路124は、本発明の第1の調整回路であるが、半導体ウエハ上に集積回路が形成された際に、ウエハ試験を行いながらレーザリペア又は電気リペアによってアナログトリミングすることにより、可変抵抗122の抵抗値VR0を調整する。つまり、ヒューズ回路124は、半導体チップをパッケージ化する前に、基準電圧VREFを調整するものである。なお、ウエハ試験についての詳細については後述する。
【0028】
レジスタ回路125は、可変抵抗123の抵抗値VR0を、トリミングコードを使用したデジタルトリミングによって調整する本発明の第2の調整回路である。レジスタ回路125は、複数の不揮発性レジスタから構成されており、設定されたレジスタ値(トリミングコード)を記憶するとともに、当該レジスタ値に応じた抵抗値VR0となるよう可変抵抗122の抵抗値を調整する。なお、レジスタ回路125に設定されるレジスタ値は、テスト回路116から入力される。
【0029】
[ウエハ試験]
上記説明したマルチチップ半導体装置100のウエハ試験の流れを、
図4(A)を参照して説明する。まず、パッド117に外部の計測装置を接続し、第一集積回路チップ101と第二集積回路チップ102の双方に外部電源電圧V
CC1とV
CC2を接続する。
【0030】
ステップS401において、パッド117に計測指示信号を入力し、テスト回路116を介してパッド117に出力される基準電圧VREFを計測する。
【0031】
ステップS402において、基準電圧VREFが所望の電圧値から予め定められた範囲内の値であるか否かを判断する。基準電圧VREFが所望の電圧値から予め定められた範囲内の値である場合には処理を終了し、基準電圧VREFが所望の電圧値から予め定められた範囲内の値ではない場合にはステップS403に進む。
【0032】
ステップS403において、ヒューズ回路124をレーザリペア又は電気リペアによってトリミングすることにより、可変抵抗122の抵抗値VR0を調整する。そして、ステップS402に戻って、基準電圧VREFが所望の電圧値から予め定められた範囲内の値となるまで、ステップS401~ステップS403の処理を行う。
【0033】
本実施形態のマルチチップ半導体装置100は、ウエハ試験において基準電圧VREFが所望の電圧値から予め定められた範囲内の値となるようにトリミングした後、樹脂パッケージに封入し、パッケージ化される。パッケージ化後に、さらに以下に説明するパッケージ後テスト(出荷前テスト)が行われる。
【0034】
[パッケージ後テスト]
図4(B)を参照して、本実施形態のマルチチップ半導体装置100を封止したパッケージ化後に行うパッケージ後テストの流れを説明する。
【0035】
まず、第一集積回路チップ101と第二集積回路チップ102の双方に外部電源電圧VCC1とVCC2を接続し、第一集積回路チップ101に対して外部の計測装置を接続する。
【0036】
ステップS411において、第一集積回路チップ101に対し、第二集積回路チップ102が所定周波数で動作しているか否かを判定するためのテスト信号パターンを入力する。
【0037】
ステップS412において、第一集積回路チップ101からの出力を計測することにより、上記テスト信号パターンによるテストに合格したか否かを判定する。つまり、第二集積回路チップ102が所定周波数で動作しているか否かを判定する。第二集積回路チップ102が上記テスト信号パターンによるテストに合格した場合、すなわち所定周波数で動作していると判定された場合、パッケージ後テストを終了する。
【0038】
ステップS412において、上記テスト信号パターンによるテストに不合格であった場合、すなわち第二集積回路チップ102が所定周波数で動作していないと判定された場合、ステップS413に進む。
【0039】
ステップS413において、外部の計測装置から第一集積回路チップ101に対して、第二集積回路チップ102の基準電圧VREFを変更するように指示する。この指示を受けて、第一集積回路チップ101は、第二集積回路チップ102に対して、基準電圧生成回路114の基準電圧を調整するためのレジスタ値を変更するよう指示するCMD出力を出力する。
【0040】
第一集積回路チップ101からの上記指示を受けて、第二集積回路チップ102の制御回路111は、テスト回路116に対して、基準電圧生成回路114の基準電圧を調整するためのレジスタ値(トリミングコード)を変更するよう指示する。テスト回路116は、制御回路111からの指示に応じてレジスタ値を生成、あるいは変更し、基準電圧生成回路114のレジスタ回路125に対してレジスタ値を入力して基準電圧VREFを変更させる。
【0041】
次いで、ステップS412に戻り、上記テスト信号パターンによるテストに合格するまで、つまり、第二集積回路チップ102が所定周波数で動作するようになるまでステップS411~ステップS413の処理を行う。
【0042】
なお、上記ステップS411~ステップS412の繰り返し処理に上限を設け、2回程度繰り返し、テストに合格したマルチチップ半導体装置100のみを出荷するようにしてもよい。なお、レジスタ値は、第一集積回路チップ101に対して入力したテスト信号パターンに応じて出力される信号を計測しつつ、予め準備された対応表を参照して決定された値を指定してもよい。その場合、当該指定されたレジスタ値は、第一集積回路チップ101から第二集積回路チップ102の制御回路111を介してテスト回路116に転送される。
【0043】
なお、パッケージ封止後にも外部に接続可能となっているパッド117を設け、パッケージ後テストにおいて、このパッド117を介して基準電圧生成回路114の基準電圧VREFを直接計測してもよい。また、同様のパッド117を使用して第二集積回路チップ102の動作周波数を計測できるようにしてもよい。
【0044】
上記説明したマルチチップ半導体装置100によれば、第二集積回路チップ102の基準電圧生成回路114の基準電圧VREF、および内部電源電圧を、パッケージ封止後に微調整することが可能となり、歩留まりを向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
100 マルチチップ半導体装置
101 第一集積回路チップ
102 第二集積回路チップ
110 インタフェース回路
111 制御回路
112 電源電圧回路
113 バンドギャップ電圧生成回路
114 基準電圧生成回路
115 内部電源回路
116 テスト回路
117 パッド
120 オペアンプ
121 抵抗
122、123 可変抵抗
124 ヒューズ回路
125 レジスタ回路