(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125910
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】情報提供装置、情報提供方法及び情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034041
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】檜物 亮一
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA36
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C100BB33
(57)【要約】
【課題】品質目標を安定して達成すること。
【解決手段】実施形態の情報提供装置10は、収集部151、分析部153及び生成部154を有する。収集部151は、製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を収集する。分析部153は、製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析する。生成部154は、調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、調整内容と、を対応付けた情報を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を収集する収集部と、
前記製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析する分析部と、
前記調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、前記調整内容と、を対応付けた情報を生成する生成部と、
を有することを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記生成部は、ロットの製造工程の開始時に判定可能な条件と、前記ロットの製造工程の開始時までに実施可能な調整内容と、を対応付けた情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記生成部は、ロットの製造工程の実行中に判定可能な条件と、前記ロットの製造工程の途中で品質を回復する操作として実施可能な調整内容と、を対応付けた情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記生成部によって生成された情報、及び評価対象のロットの管理パラメータを基に、前記評価対象のロットの品質が向上する調整内容を特定し、特定した調整内容を出力する評価部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項5】
製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を収集し、
前記製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析し、
前記調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、前記調整内容と、を対応付けた情報を生成する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報提供方法。
【請求項6】
製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を収集し、
前記製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析し、
前記調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、前記調整内容と、を対応付けた情報を生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置、情報提供方法及び情報提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製造業において、目標とするPQCD(Productivity(生産性)、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(製造時間))を安定して実現し、製品の生産ができるようにすることが求められる。
【0003】
例えば、ベテランの暗黙知を形式化して活用することは、製造される製品の品質(Quality)の安定化を図る上で有効である。
【0004】
従来、個人が持っている暗黙知(ベテランノウハウ)を、形式知化(文章化、ルール化等)して企業内で共有する手法に、ナレッジマネジメントがある。このナレッジマネジメントを実現するフレームワークとして、SECIモデルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、PQCDのうちQ(品質)の目標(品質目標)を達成するための技術が提案されている。しかしながら、従来の技術では、品質目標を安定して達成することが難しいという問題がある。
【0007】
例えば、SECIモデルを、製造業における品質の向上に活用するための指針は提案されていない。また、ベテランからヒアリングを行う方法も考えられるが、ベテランが品質向上のためのノウハウを意識しているとは限らない。
【0008】
一つの側面では、品質目標を安定して達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面にかかる情報提供装置は、製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を収集する収集部と、前記製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析する分析部と、前記調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、前記調整内容と、を対応付けた情報を生成する生成部と、を有することを特徴とする。
【0010】
一側面にかかる情報提供方法は、製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を収集し、前記製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析し、前記調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、前記調整内容と、を対応付けた情報を生成する、処理をコンピュータが実行することを特徴とする。
【0011】
一側面にかかる情報提供プログラムは、製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を収集し、前記製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析し、前記調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、前記調整内容と、を対応付けた情報を生成する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
一実施形態によれば、品質目標を安定して達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る情報提供装置の構成例を示す図である。
【
図7】判定情報を生成する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】判定情報を用いてロットを評価する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する情報提供装置、情報提供方法及び情報提供プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、ここで説明する実施形態により本願の発明が限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、各実施形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0015】
本実施形態の情報提供装置は、プラント等の施設における製品の製造に関する情報を提供する。製品は、オペレータが製造設備を運転することによって製品の製造が行われる。オペレータは、管理パラメータを設定することができる。管理パラメータは、製造設備の操作量、材料の投入量、処理時間等を決定するためのパラメータである。また、製品は、ロット単位で製造される。オペレータは、ロット単位で管理パラメータを設定する。
【0016】
図1を用いて、情報提供装置10の構成を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る情報提供装置の構成例を示す図である。
図1に示すように、情報提供装置10は、通信部11、入力部12、出力部13、記憶部14及び制御部15を有する。
【0017】
通信部11は、他の装置との間でデータの通信を行う。入力部12は、データの入力を受け付ける。入力部12は、キーボード及びマウス等の入力装置と接続されるインタフェースであってもよい。出力部13は、データを出力する。出力部13は、ディスプレイ及びスピーカ等の出力装置と接続されるインタフェースであってもよい。
【0018】
記憶部14は、各種データ、及び制御部15が実行する各種プログラム等を記憶する。例えば、記憶部14は、メモリ及びハードディスク等の記憶装置である。この記憶部14は、制御部15が各種処理を実行する際の過程で得られるデータ、及び各種処理を実行したことで得られる処理結果等、情報提供装置10が実行する処理で発生する各種データを記憶する。記憶部14は、集計データ141及び判定情報142を記憶する。
【0019】
集計データ141は、製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を集計したデータである。
図2は、集計データの例を示す図である。
【0020】
図2に示す集計データ141の各レコード(行)は、製造済みのロットに対応する。また、集計データ141の各項目(列)は、管理パラメータ又は品質に対応する。管理パラメータは、「原料A.特性1」、「攪拌時間」、「内部温度」、「出口温度」、「反応時間」を含む。また、品質は、「粘度」によって表される。
【0021】
また、集計データ141の各セルは、管理パラメータ又は品質のばらつきの度合いを示す離散値である。ばらつきの度合いが「+X」であることは、管理パラメータ又は品質が上側(値が増加する側)にX段階ばらついていることを意味する。ばらつきの度合いが「-X」であることは、管理パラメータ又は品質が下側(値が減少する側)にX段階ばらついていることを意味する。ばらつきの度合いが「0」であることは、管理パラメータ又は品質が所定の範囲に収まっていることを意味する。
【0022】
判定情報142は、評価対象のロットについて、条件(兆候)を基に、品質を向上させるための管理パラメータの調整内容を得るための情報である。判定情報142の詳細については後述する。
【0023】
制御部15は、情報提供装置10全体を司る処理部である。制御部15は、例えばプロセッサ等により実現される。制御部15は、収集部151、評価部152、分析部153、生成部154及び表示制御部155を有する。
【0024】
収集部151は、製造済みのロット及び評価対象のロットの管理パラメータ及び品質を収集する。ここで、製造済みのロット及び評価対象のロットでは、同じ製品が製造されているものとする。
【0025】
収集部151は、条件(例えば、過去1か月のような特定の期間)を指定した上で、組織の様々な部署のデータベースから、製造時の4Mデータ(原料データ、設備データ、人のデータ及び工程データ)及び製品の品質検査データから管理パラメータ及び品質を収集する。
【0026】
また、収集部151は、評価対象のロットのデータとして、リアルタイムに運転中のロットに関するデータを収集する。
【0027】
収集部151は、収集した製造済みロットの管理パラメータ及び品質のばらつきを、集計データ141として記憶部14に記憶させる。
【0028】
収集部151は、管理パラメータ又は品質があらかじめ決められた管理幅の中の上限値から下限値の間に収まっている場合、集計データ141における当該管理パラメータ又は品質の値を「0」に設定する。
【0029】
収集部151は、管理パラメータ又は品質が上限値を上回り、かつ上側の閾値を下回っている場合、集計データ141における当該管理パラメータ又は品質の値を「+1」に設定する。
【0030】
収集部151は、管理パラメータ又は品質が上側の閾値を上回っている場合、集計データ141における当該管理パラメータ又は品質の値を「+2」に設定する。
【0031】
収集部151は、管理パラメータ又は品質が下限値を上回り、かつ下側の閾値を上回っている場合、集計データ141における当該管理パラメータ又は品質の値を「-1」に設定する。
【0032】
収集部151は、管理パラメータ又は品質が下側の閾値を下回っている場合、集計データ141における当該管理パラメータ又は品質の値を「-2」に設定する。
【0033】
ここで、管理パラメータ「攪拌時間」の管理幅を「32~42」とし、上限値を「39」、下限値を「37」、上側の閾値を「40」、下側の閾値を「34」とする。例えば、収集部151は、あるロットの管理パラメータ「攪拌時間」が「38」であれば、当該ロットの集計データ141における「攪拌時間」列の値を「0」に設定する。また、例えば、収集部151は、あるロットの管理パラメータ「攪拌時間」が「39」であれば、当該ロットの集計データ141における「攪拌時間」列の値を「+1」に設定する。また、例えば、収集部151は、あるロットの管理パラメータ「攪拌時間」が「33」であれば、当該ロットの集計データ141における「攪拌時間」列の値を「-2」に設定する。
【0034】
なお、評価対象のロットは、製品の製造は完了していなくてもよい。その場合、評価対象のロットにおける一部の管理パラメータ及び製品の品質は未知である。
【0035】
評価部152は、管理パラメータ及び品質を基に、製造済みのロット(過去ロット)を5段階で評価する。集計データ141は、評価部152による評価の結果を表している。
【0036】
表示制御部155は、製造済みのロットの評価結果を示し、かつ、評価対象ロットの品質の評価に利用可能な画面を表示させる。例えば、表示制御部155は、出力部13を介して、ディスプレイ等に画面を表示させる。
【0037】
表示制御部155は、
図4に示す画面を表示させる。
図4は、画面の例を示す図である。
図4に示すように、表示制御部155は、製造済みのロットの複数の管理パラメータのそれぞれに対応し、かつ管理パラメータの基準値に対するばらつきの度合いを表す離散値のそれぞれに対応する円グラフをマトリックス上に配置する。
【0038】
マトリックスの横軸は、管理パラメータが、製造過程で値が決まっていく順(時間順)に並び、右端の列は品質に対応する。縦軸は、管理パラメータ又は品質のばらつきを離散値(「-2」、「-1」、「0」、」、「+1」、「+2」の5段階)で表している。また、縦軸の値は、集計データ141の値(評価部152による評価結果)に対応する。
【0039】
また、円グラフは、対応するロットの品質が良品であった割合と不良品であった割合とを表す。円グラフの実線で囲まれた部分は、良品であったロットの割合である。また、円グラフの破線で囲まれた部分は、不良品であったロットの割合である。
【0040】
例えば、管理パラメータ「原料A.特性1」のばらつき「-1」に対応する円グラフは、約90%の部分が実線で囲まれ、約10%の部分が破線で囲まれている。これは、管理パラメータ「原料A.特性1」のばらつきが「-1」であった製造済みのロットのうち、約90%の品質が良品であり、約10%の品質が不良品であったことを意味している。
【0041】
また、円グラフ間に引かれた線は、ロットにおける管理パラメータの遷移を表している。実線は良品であったロットに対応し、破線は不良品であったロットに対応する。
【0042】
図4には、管理パラメータ「原料A.特性1」、「攪拌時間」、「内部温度」、「出口温度」、「反応時間」が「+1」、「0」、「0」、「+1」、「0」と遷移し、製品が良品(品質「粘度」が「0」)であったロットが存在することが示されている。
【0043】
また、
図4には、管理パラメータ「原料A.特性1」、「攪拌時間」、「内部温度」、「出口温度」、「反応時間」が「-1」、「0」、「-1」、「0」、「0」と遷移し、製品が不良品(品質「粘度」が「+2」)であったロットが存在することが示されている。
【0044】
また、表示制御部155は、円グラフの選択を受け付ける。
【0045】
分析部153は、製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析する。
【0046】
ここで、多くの管理パラメータがばらついている場合でも、それぞれが独立してばらついているわけではない。分析部153は、ばらつきのパターンがあるのかを見つけ出す。
【0047】
まず、いずれかの管理パラメータがばらつき、他の管理パラメータがその影響を受けてばらついている場合がある。ある管理パラメータがばらついている際に、他の管理パラメータがいつも同じようにばらついているのであれば、分析部153は、この現象をパターンとして特定する。
【0048】
[きっかけを基にパターンを特定]
図5に示すように、分析部153は、管理パラメータ「原料A.特性1」が「+2」の円グラフを選択する。このとき、表示制御部155は、この条件を満たすロット、すなわち管理パラメータ「原料A.特性1」が「+2」であったロットのみを線で表示させる。
【0049】
図5で表示されたロットを見ると、管理パラメータ「内部温度」が小さく(「0」、「-1」、「-2」)、管理パラメータ「反応時間」が大きく(「0」、「+1」、「+2」)なる傾向がある。分析部153は、このようなパターンを、管理パラメータ「原料A.特性1」が「+2」をきっかけとしたパターンとして特定する。
【0050】
[故障モードを基にパターンを特定]
まず、分析部153は、故障モードを特定する。故障モードとは、品質が要求を満たせなかったこと(品質が「+2」又は「-2」であったこと)の原因となった現象である。
【0051】
図6の左側に示すように、分析部153は、品質を示す「粘度」が「-2」の円グラフを選択する。このとき、表示制御部155は、この条件を満たすロット、すなわち「粘度」が「-2」であったロットのみを線で表示させる。
【0052】
図6の左側で表示されたロットを見ると、管理パラメータ「攪拌時刻」が大きく(「+1」、「+2」)、管理パラメータ「出口温度」が小さい(「-1」、「-2」)傾向がある。分析部153は、このようなパターンを品質「粘度」が「-2」である故障モードを発生させるパターンとして特定する。
【0053】
さらに、分析部153は、これまでに説明した方法で特定したパターンに、良品質ロットと不良品ロットがある場合、品質に影響を与えるパラメータとその値の調整内容を特定する。このような管理パラメータを、管理ポイントと呼ぶ。
【0054】
ここでは、分析部153は、収集部151が収集したデータを基に自動的に管理ポイント及び調整内容を特定してもよい。
【0055】
また、分析部153は、オペレータから管理ポイント及び調整内容の入力を受け付けてもよい。オペレータは、分析部153が特定したパターンを基に、ベテランにヒアリングを行うことができる。
【0056】
図5の例では、管理パラメータ「内部温度」及び「反応時間」が管理ポイントとなり得る。また、
図6の右側の例では、管理パラメータ「出口温度」及び「反応時間」が管理ポイントとなり得る。
【0057】
分析部153によれば、管理ポイントとなる管理パラメータが特定されるため、オペレータは、ベテランへのヒアリングを効率良く行うことができる。
【0058】
生成部154は、調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、調整内容と、を対応付けた情報を生成する。生成部154は、
図3に示す判定情報142を生成する。
【0059】
[兆候の決定]
まず、生成部154は、分析部153によって特定された管理ポイントのうち、運転中に時系列で最初に特定できる管理パラメータとそのばらつきの組み合わせを、兆候として特定する。兆候は、調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件である。
【0060】
図5の例では、生成部154は、「管理パラメータ「原料A.特性1」が大きいこと」を兆候として特定する。また、
図6の右側の例では、生成部154は、「管理パラメータ「攪拌時間」が大きく、かつ管理パラメータ「内部温度」が大きいこと」を兆候として特定する。
【0061】
[運転モードごとの事前調整]
工程開始時に分かる兆候を運転モードと呼ぶ。兆候「管理パラメータ「原料A.特性1」が大きいこと」は運転モードである。
【0062】
図3に示すように、生成部154は、運転モードである兆候「管理パラメータ「原料A.特性1」が大きい(>0.5)」に、分析部153によって特定された「反応時間を大きめに調整する(30~35)」という調整内容を対応付ける。また、運転モードに対応する調整内容のタイプは「事前調整」である。
【0063】
[運転中の回復操作]
運転モードではない兆候は、運転中に発生する。運転モードではない兆候に対する調整内容を「回復操作」と呼ぶ。
【0064】
「管理パラメータ「攪拌時間」が大きく、かつ管理パラメータ「内部温度」が大きいこと」という兆候は、運転モードではない。
【0065】
図3に示すように、生成部154は、運転モードではない兆候「撹拌時間がやや大きい/大きい(>42)、又は内部温度がやや大きい/大きい(>58)」に、分析部153によって特定された「出口温度が小さくならないように回復する(40~45)」という調整内容を対応付ける。また、運転モードに対応する調整内容のタイプは「回復操作」である。
【0066】
評価部152は、判定情報142、すなわち生成部154によって生成された情報、及び評価対象のロットの管理パラメータを基に、評価対象のロットの品質が向上する調整内容を特定し、特定した調整内容を出力する。
【0067】
例えば、評価対象のロットが「管理パラメータ「原料A.特性1」が大きい(>0.5)」という条件を満たす場合、評価部152は、「反応時間を大きめに調整する(30~35)」という調整内容を出力する。
【0068】
また、例えば、評価対象のロットが「撹拌時間がやや大きい/大きい(>42)、又は内部温度がやや大きい/大きい(>58)」という条件を満たす場合、評価部152は、「出口温度が小さくならないように回復する(40~45)」という調整内容を出力する。
【0069】
評価対象のロットが判定情報142のいずれも条件も満たさない場合、収集部151は引き続き評価対象のロットのデータを収集する。
【0070】
図7を用いて、判定情報142を生成する処理の流れを説明する。
図7は、判定情報を生成する処理の流れを示すフローチャートである。
【0071】
図7に示すように、まず、情報提供装置10は、過去のロット(製造済みのロット)のデータを収集する(ステップS101)。そして、情報提供装置10は、過去のロットの管理パラメータを評価する(ステップS102)。
【0072】
ここで、情報提供装置10は、評価結果を基に、管理パラメータのパターンを選択する(ステップS103)。
【0073】
選択したパターンにおいて、同じパターンの中で品質が事なる場合があるか否かを判定する(ステップS104)。これは、例えば、管理パラメータを時系列に並べた場合に、管理ポイントまでの管理パラメータが同じであっても、最終的な品質が良品と不良品の両方があるパターンである。
【0074】
同じパターンで品質が異なる場合がなければ(ステップS104、No)、情報提供装置10は、管理ポイントを変更して(ステップS105)さらにパターンを選択する(ステップS103)。
【0075】
同じパターンで品質が異なる場合があれば(ステップS104、Yes)、情報提供装置10は、当該パターンの兆候が「運転又は工程の開始時に分かるもの(運転モード)」であるか、「運転又は工程の途中に分かるもの」であるかを判定する。
【0076】
例えば、選択したパターンの兆候が「管理パラメータ「原料A.特性1」が大きい(>0.5)」であれば、情報提供装置10は、当該兆候を「運転又は工程の開始時に分かるもの」と判定する。
【0077】
例えば、選択したパターンの兆候が「撹拌時間がやや大きい/大きい(>42)、又は内部温度がやや大きい/大きい(>58)」であれば、情報提供装置10は、当該兆候を「運転又は工程の途中に分かるもの」と判定する。
【0078】
情報提供装置10は、パターンの兆候を「運転又は工程の開始時に分かるもの(運転モード)」と判定した場合(ステップS106、運転又は工程の開始時)、運転前の事前調整を設定する(ステップS107)。すなわち、情報提供装置10は、
図3の判定情報142のタイミングが「開始時」でありタイプが「事前調整」であるレコードを生成する。
【0079】
このように、生成部154は、ロットの製造工程の開始時に判定可能な条件と、ロットの製造工程の開始時までに実施可能な調整内容と、を対応付けた情報を生成する。
【0080】
情報提供装置10は、パターンの兆候を「運転又は工程の途中に分かるもの」と判定した場合(ステップS106、運転又は工程の途中)、運転中の回復操作を設定する(ステップS108)。すなわち、情報提供装置10は、
図3の判定情報142のタイミングが「実行中」でありタイプが「回復操作」であるレコードを生成する。
【0081】
このように、生成部154は、ロットの製造工程の実行中に判定可能な条件と、ロットの製造工程の途中で品質を回復する操作として実施可能な調整内容と、を対応付けた情報を生成する。
【0082】
図8を用いて、判定情報142を用いてロットを評価する処理の流れを説明する。
図8は、判定情報を用いてロットを評価する処理の流れを示すフローチャートである。
【0083】
図8に示すように、まず、情報提供装置10は、評価対象ロットの管理パラメータを取得する(ステップS201)。次に、管理パラメータからパターンを抽出する(ステップS202)。パターンは、例えば管理パラメータの組み合わせである。
【0084】
ここで、情報提供装置10は、判定情報142に設定済みの兆候に、抽出したパターンが合致するか否かを判定する(ステップS203)。
【0085】
情報提供装置10は、判定情報142に設定済みの兆候に、抽出したパターンが合致する場合(ステップS203、Yes)、判定情報142を参照し、兆候に対応する調整内容を出力する(ステップS204)。
【0086】
情報提供装置10は、判定情報142に設定済みの兆候に、抽出したパターンが合致しない場合(ステップS203、No)、処理を終了する。このとき、情報提供装置10は、ステップS201に戻ってもよい。
【0087】
[効果]
これまで説明してきたように、情報提供装置10は、収集部151及び評価部152を有する。収集部151は、製造済みのロットの管理パラメータ及び品質を収集する。分析部153は、製造済みのロットの管理パラメータの中から、品質に影響を与える管理パラメータを特定し、特定した管理パラメータの調整内容であって、品質が向上する調整内容を分析する。生成部154は、調整内容を実施することで品質が向上する場合の条件と、調整内容と、を対応付けた情報を生成する。
【0088】
また、評価部152は、生成部154によって生成された情報、及び評価対象のロットの管理パラメータを基に、評価対象のロットの品質が向上する調整内容を特定し、特定した調整内容を出力する。
【0089】
情報提供装置10によれば、過去の製造済みのロットに基づき生成された情報を用いて、評価対象のロットを評価し、実施すべき調整内容を確認することができる。このため、オペレータは、情報提供装置10による評価結果を参考にすることで、品質目標を安定して達成することができる。
【0090】
生成部154は、ロットの製造工程の開始時に判定可能な条件と、ロットの製造工程の開始時までに実施可能な調整内容と、を対応付けた情報を生成する。また、生成部154は、ロットの製造工程の実行中に判定可能な条件と、ロットの製造工程の途中で品質を回復する操作として実施可能な調整内容と、を対応付けた情報を生成する。これにより、製造工程の様々なタイミングで実施可能な調整内容を事前に設定しておくことが可能になる。
【0091】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0092】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0093】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0094】
[ハードウェア]
次に、情報提供装置10のハードウェア構成例を説明する。
図9は、ハードウェア構成例を説明する図である。
図9に示すように、情報提供装置10は、通信装置100a、HDD(Hard Disk Drive)100b、メモリ100c、プロセッサ100dを有する。また、
図9に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0095】
通信装置100aは、ネットワークインタフェースカード等であり、他のサーバとの通信を行う。HDD100bは、
図1に示した機能を動作させるプログラム及びDBを記憶する。
【0096】
プロセッサ100dは、
図1に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD100b等から読み出してメモリ100cに展開することで、
図1等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報提供装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ100dは、収集部151、評価部152及び表示制御部155と同様の機能を有するプログラムをHDD100b等から読み出す。そして、プロセッサ100dは、収集部151、評価部152及び表示制御部155と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0097】
このように、情報提供装置10は、プログラムを読み出して実行することで情報提供方法を実行する情報提供装置として動作する。また、情報提供装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施例でいうプログラムは、情報提供装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータ又はサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0098】
このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 情報提供装置
11 通信部
12 入力部
13 出力部
14 記憶部
15 制御部
141 集計データ
151 収集部
152 評価部
153 分析部
154 生成部
155 表示制御部