(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125915
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】タッチパネルシステム、表示装置、及びタッチパネルシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240911BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/044 128
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034048
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】山本 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】丸山 武紀
(72)【発明者】
【氏名】山岸 慎治
(72)【発明者】
【氏名】木田 和寿
(72)【発明者】
【氏名】杉田 靖博
(72)【発明者】
【氏名】福島 浩
(57)【要約】
【課題】指示体とタッチパネルとの温度差が大きく、指示体がタッチパネルに触れることによって当該タッチパネルの温度が変化する場合でも、押圧操作の有無を精度良く判断することが可能なタッチパネルシステム、表示装置、及びタッチパネルシステムの制御方法を提供する。
【解決手段】タッチパネルシステムは、タッチパネルと、コントローラ2とを備える。コントローラ2は、位置検出電極から信号値を取得し、押圧検出電極から信号値を取得する信号取得部52と、信号取得部52により得られた位置信号値G1に基づいて指示体の位置を検出する位置検出部53と、指示位置における押圧操作の有無を判断する押圧判断部55と、を含む。押圧判断部55は、押圧値Zの2回微分値Bを取得し、2回微分値Bに基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を備えた静電容量式タッチパネルと、
前記静電容量式タッチパネルを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記ドライブ電極に駆動信号を与え、
前記位置検出電極から信号値を取得し、
前記押圧検出電極から信号値を取得し、
前記位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体による指示位置を検出し、
前記押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、
前記押圧値の2回微分値に基づいて前記指示位置における押圧操作の有無を判断する、タッチパネルシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、
単位時間ごとに、前記押圧検出電極から信号値を取得し、
前記押圧検出電極により得られた信号値と、当該信号値の取得よりも複数回前に得られた信号値とに基づいて、前記押圧値の1回微分値を取得し、
前記押圧値の1回微分値と、当該1回微分値の取得よりも複数回前に得られた1回微分値とに基づいて、前記押圧値の2回微分値を取得する、請求項1に記載のタッチパネルシステム。
【請求項3】
前記静電容量式タッチパネルの環境温度を検出する温度検出装置を、さらに備え、
前記コントローラは、
前記環境温度が、指示体の温度が含まれる温度範囲外の場合に、前記押圧値の2回微分値に基づいて前記指示位置における押圧操作の有無を判断し、
前記環境温度が前記温度範囲内の場合に、前記押圧値の1回微分値に基づいて前記指示位置における押圧操作の有無を判断する、請求項1に記載のタッチパネルシステム。
【請求項4】
前記静電容量式タッチパネルは、前記位置検出電極と前記押圧検出電極との間に挟まれた感圧部材を、さらに含み、
前記温度検出装置は、
前記位置検出電極と前記押圧検出電極とにより形成される電気容量を検出し、
検出した電気容量に基づいて前記感圧部材の誘電率を求め、
求めた誘電率に基づいて、前記環境温度を求める、請求項3に記載のタッチパネルシステム。
【請求項5】
前記温度検出装置は、前記静電容量式タッチパネルの外部に配置された温度センサであって、前記静電容量式タッチパネルの環境温度を検出する温度センサをさらに含む、請求項3に記載のタッチパネルシステム。
【請求項6】
前記静電容量式タッチパネルは、熱検出電極を、さらに含み、
前記コントローラは、
前記ドライブ電極および前記熱検出電極に駆動信号を供給し、
前記押圧検出電極から得られる信号値を、前記熱検出電極と前記押圧検出電極との結合容量の変化から得られる熱検出信号で補正する、請求項1~5のいずれか1項に記載のタッチパネルシステム。
【請求項7】
タッチパネルシステムと、
画像を表示するディスプレイと、を備え、
前記ディスプレイの表示面上に、前記タッチパネルシステムが配置されている、表示装置であって、
前記タッチパネルシステムは、
ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を備えた静電容量式タッチパネルと、
前記静電容量式タッチパネルを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記ドライブ電極に駆動信号を与え、
前記位置検出電極から信号値を取得し、
前記押圧検出電極から信号値を取得し、
前記位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体による指示位置を検出し、
前記押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、
前記押圧値の2回微分値に基づいて前記指示位置における押圧操作の有無を判断する、表示装置。
【請求項8】
ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を含む静電容量式タッチパネルを備えたタッチパネルシステムの制御方法であって、
前記ドライブ電極に駆動信号を与え、
前記位置検出電極から信号値を取得し、
前記押圧検出電極から信号値を取得し、
前記位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体の指示位置を検出し、
前記押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、
前記押圧値の2回微分値に基づいて前記指示位置における押圧操作の有無を判断する、タッチパネルシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指やタッチペンなどの指示体の位置及び押圧操作の有無を判断するタッチパネルシステム、当該タッチパネルシステムを備えた表示装置、及び当該タッチパネルシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルシステムが普及している。特許文献1には、手指やペンなどの指示体の位置と押圧とを検出するタッチパネルが開示されている。
【0003】
特許文献1のタッチパネルシステムには、ドライブ電極と位置検出電極と押圧検出電極とを備えた静電容量式タッチパネルと、コントローラとが設けられている。コントローラは、ドライブ電極に駆動信号を与える。コントローラは、位置検出電極から位置信号値を取得するとともに、押圧検出電極から押圧信号値を取得する。そして、コントローラは、位置信号値に基づいて指示体の位置を検出し、押圧信号値に基づく押圧値の1回微分値に基づいて指示体による押圧を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、指示体からタッチパネルへの熱の影響(熱ノイズ)によって、押圧値の絶対値は変化する。ただし、通常の環境温度では、熱ノイズによる押圧値の変化率(1回微分値)は、指示体の押圧による押圧値の変化率(1回微分値)に比べて十分に小さくなる。このため、上記特許文献1に記載のタッチパネルシステムは、押圧値の変化率に基づいて押圧操作の有無を判断することにより、熱ノイズによる押圧値の絶対値への影響を低減している。
【0006】
しかしながら、通常の環境温度とは異なり、低温下又は高温下で、タッチパネルシステムが使用される場合、タッチパネルの温度(環境温度)と、指示体の温度とが大きく異なる状態で使用される状態となる。
【0007】
本開示は、指示体とタッチパネルとの温度差が大きく、指示体がタッチパネルに触れることによって当該タッチパネルの温度が変化する場合でも、押圧操作の有無を精度良く判断することが可能なタッチパネルシステム、表示装置、及びタッチパネルシステムの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の第1の態様に係るタッチパネルシステムは、ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を備えた静電容量式タッチパネルと、前記静電容量式タッチパネルを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記ドライブ電極に駆動信号を与え、前記位置検出電極から信号値を取得し、前記押圧検出電極から信号値を取得し、前記位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体による指示位置を検出し、前記押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、前記押圧値の2回微分値に基づいて前記指示位置における押圧操作の有無を判断する。
【0009】
第2の態様に係る表示装置は、タッチパネルシステムと、画像を表示するディスプレイと、を備え、前記ディスプレイの表示面上に、前記タッチパネルシステムが配置されている、表示装置であって、前記タッチパネルシステムは、ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を備えた静電容量式タッチパネルと、前記静電容量式タッチパネルを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記ドライブ電極に駆動信号を与え、前記位置検出電極から信号値を取得し、前記押圧検出電極から信号値を取得し、前記位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体による指示位置を検出し、前記押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、前記押圧値の2回微分値に基づいて前記指示位置における押圧操作の有無を判断する。
【0010】
第3の態様に係るタッチパネルシステムの制御方法は、ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を含む静電容量式タッチパネルを備えたタッチパネルシステムの制御方法であって、前記ドライブ電極に駆動信号を与え、前記位置検出電極から信号値を取得し、前記押圧検出電極から信号値を取得し、前記位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体の指示位置を検出し、前記押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、前記押圧値の2回微分値に基づいて前記指示位置における押圧操作の有無を判断する。
【発明の効果】
【0011】
上記構成のタッチパネルシステム、表示装置及びタッチパネルシステムの制御方法では、指示体とタッチパネルとの温度差が大きく、指示体がタッチパネルに触れることによって当該タッチパネルの温度が変化する場合でも、押圧操作の有無を精度良く判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るタッチパネルシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るタッチパネルシステムを備えた表示装置の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、タッチパネルが備えるドライブ電極の構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、タッチパネルが備える位置検出電極及び押圧検出電極の構成を示す平面図である。
【
図5】
図3及び
図4の1000-1000線に沿った断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、タッチパネルの動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のコントローラの機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、コントローラが処理する入力データの構成例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、コントローラによる指示体の詳細位置の算出方法を示す模式図(1)である。
【
図10】
図10は、コントローラによる指示体の詳細位置の算出方法を示す模式図(2)である。
【
図11】
図11は、フレームごとの押圧値の例を示す図である。
【
図12】
図12は、フレームごとの平滑化された押圧値の例を示す図である。
【
図13】
図13は、平滑処理部の効果を説明するための図である。
【
図14A】
図14Aは、押圧値に熱ノイズの値が重畳することを説明するための図である。
【
図14B】
図14Aは、1回微分値の信号波形と2回微分値の信号波形とを説明するための図である。
【
図15】
図15は、2回微分値を求める方法について説明するための図である。
【
図16】
図16は、指示体の押圧操作の有無の判断及び指示体の押圧操作の解除の判断を説明するための図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態に係るタッチパネルシステムが備えるコントローラ2による制御処理を示すフロー図(1)である。
【
図18】
図18は、第1実施形態に係るタッチパネルシステムが備えるコントローラ2による制御処理を示すフロー図(2)である。
【
図19】
図19は、第2実施形態によるタッチパネルシステムのコントローラの機能ブロック図である。
【
図20】
図20は、感圧部材の比誘電率の温度依存性を説明するための図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態の制御処理を示すフロー図(1)である。
【
図22】
図22は、第2実施形態の制御処理を示すフロー図(2)である。
【
図23】
図23は、第2実施形態の制御処理を示すフロー図(3)である。
【
図24】
図24は、第2実施形態の制御処理を示すフロー図(4)である。
【
図25】
図25は、第2実施形態の制御処理を示すフロー図(5)である。
【
図26】
図26は、第2実施形態の第1変形例によるタッチパネルシステムの構成を示すブロック図である。
【
図27】
図27は、第2実施形態の第1変形例によるコントローラの機能ブロック図である。
【
図28】
図28は、第3実施形態によるタッチパネルシステムの構成を示すブロック図である。
【
図29】
図29は、第3実施形態による熱検出電極の構成を示す図である。
【
図30】
図30は、第3実施形態によるコントローラの機能ブロック図である。
【
図31】
図31は、第2実施形態の第2変形例によるタッチパネルシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本開示の実施形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。また、以下において参照する図面では、各種電極を識別し易くするために、各種電極にハッチングを付して表示している。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態によるタッチパネルシステム100の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るタッチパネルシステム100の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、タッチパネルシステム100は、タッチパネル1と、コントローラ2とを備える。タッチパネル1は、静電容量式のタッチパネルとして構成されており、指示体の位置を示す位置信号値G1と、指示体による押圧を示す押圧信号値G2とを出力するように構成されている。また、コントローラ2は、タッチパネル1に駆動信号を与え、タッチパネル1からの位置信号値G1及び押圧信号値G2を取得して、位置信号値G1及び押圧信号値G2に基づいて、指示体によりタッチされた位置(以下、「指示位置」という)及び指示位置における押圧操作の有無を判断する。コントローラ2は、指示位置及び指示位置における押圧操作の有無の判断結果を出力データとして、タッチパネルシステム100を備えた表示装置101(
図2参照)の制御部に送信する。出力データは、例えば、表示装置101が表示する画像の制御などに利用される。
【0016】
図2は、第1実施形態に係るタッチパネルシステム100を備えた表示装置101の構成を示す断面図である。
図2に示すように、表示装置101は、タッチパネル1と、表示面401aに画像を表示するディスプレイ40とを備える。ディスプレイ40は、例えば、液晶ディスプレイや、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどで構成される。
【0017】
(タッチパネルの構造)
図3及び
図4は、第1実施形態に係るタッチパネル1が備える電極の構成を示す平面図である。
図5は、
図3及び
図4の1000-1000線に沿った断面図である。なお、図示の便宜上、タッチパネル1が備える電極を、
図3及び
図4に分けて図示しているが、
図5に示す通り、
図3及び
図4に図示した電極は積層されている。
【0018】
図5に示すように、タッチパネル1は、第1基板10、ドライブ電極11、浮島電極12、第2基板20、位置検出電極21、押圧検出電極22、シールド電極23及び感圧部材30(誘電体層)を備える。例えば、第1基板10及び第2基板20は、ガラス・PET(Polyethylene terephthalate)フイルムなどの透明な材料で構成される。また、ドライブ電極11、浮島電極12、位置検出電極21、押圧検出電極22及びシールド電極23は、ITO(Indium Tin Oxide)などの導電性のある透明な材料で構成される。また、感圧部材30は、例えば、高分子材料、OCA(Optical Clear Adhesive)、OCR(Optical Clear Resin)などの弾性を有する透明な材料で構成される。
【0019】
第1基板10及び第2基板20は、第1基板10の第1表面10aと第2基板20の第2表面20aが対向するように配置されている。ドライブ電極11は、駆動信号が与えられる電極であり、第1表面10aに形成されている。浮島電極12は、フローティングの状態であり、第1表面10aに形成されている。
【0020】
位置検出電極21は、指示体の位置を検出するための電極であり、第2表面20aに形成されている。押圧検出電極22は、指示体による押圧の大きさを検出するための電極であり、第2表面20aに形成されている。シールド電極23は、接地電位または位置検出電極21もしくは押圧検出電極22に与えられる電位と等しい電位が与えられるか、フローティングの状態であり、第2表面20aに形成されている。
【0021】
図3に示すように、ドライブ電極11は、複数の菱形状の電極がその対角線方向に連結された形状(ダイヤパターン)になっている。また、浮島電極12は、連結されていない複数の菱形状電極で構成されている。なお、ドライブ電極11及び浮島電極12は、菱形状に限られず、三角形、菱形以外の多角形、円形、又は楕円形を有していてもよい。
【0022】
図4に示すように、位置検出電極21は、ドライブ電極11と同様に、複数の菱形状の電極が連結されたダイヤパターンである。また、押圧検出電極22も、複数の菱形状の電極が連結されたダイヤパターンである。位置検出電極21及び押圧検出電極22は、菱形状の電極のそれぞれの連結方向が平行であり、当該連結方向と垂直な方向に対して交互に配置されている。位置検出電極21及び押圧検出電極22のそれぞれにおける菱形状の電極の連結方向は、ドライブ電極11における菱形状の電極の連結方向に対して垂直である。なお、位置検出電極21及び押圧検出電極22は、菱形状に限られず、三角形、菱形以外の多角形、円形、又は楕円形を有していてもよい。
【0023】
また、
図4及び
図5に示すように、シールド電極23は、位置検出電極21及び押圧検出電極22の間に配置されている。例えば、シールド電極23は、位置検出電極21及び押圧検出電極22を隔てるように、これらの間に配置されている。
【0024】
第1基板10から第2基板20を見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において、ドライブ電極11は、押圧検出電極22の少なくとも一部を覆っている。なお、
図3~
図5に例示するタッチパネル1では、平面視において、ドライブ電極11を構成する1つの菱形状の電極が、押圧検出電極22を構成する1つの菱形状の電極を包含している。同様に、平面視において、浮島電極12を構成する1つの菱形状の電極が、位置検出電極21を構成する1つの菱形状の電極を包含している。
【0025】
(タッチパネルの動作)
次に、
図6を参照して、タッチパネル1の動作について説明する。
図6では、指示体Fと各種電極の間で生じる容量結合や各種電極間で生じる容量結合に対応する電気力線を、破線L1およびL2と一点鎖線L3で示している。
図6に示すように、指示体Fが、第1基板10の第1表面10aとは反対側の面に接触すると、破線L1で示すように、ドライブ電極11と浮島電極12が容量結合する。このとき、破線L2で示すように、浮島電極12と位置検出電極21が容量結合しているため、浮島電極12を介してドライブ電極11と位置検出電極21が容量結合する。これにより、指示体Fを介してドライブ電極11と位置検出電極21の間の静電容量が減少し、位置検出電極21で検出される位置信号値G1が変化する。コントローラ2は、位置信号値G1の変化に基づいて、指示体Fの位置を検出する。
【0026】
また、
図6の一点鎖線L3で示すように、ドライブ電極11と押圧検出電極22は容量結合している。ここで、指示体Fによって第1基板10が押圧されると、感圧部材30が弾性を有する材料であるため、押圧された部分において、ドライブ電極11と押圧検出電極22との距離が短くなる。これにより、両電極11,22間の静電容量が増加し、押圧検出電極22において検出される押圧信号値G2が変化する。コントローラ2は、押圧信号値G2の変化に基づいて、指示体Fによる指示位置における押圧操作の有無を判断する。
【0027】
また、指示体Fにより第1基板10が押圧されると、ドライブ電極11と位置検出電極21との距離も短くなる。しかし、ドライブ電極11は、位置検出電極21よりもシールド電極23の方に近いため、
図6の一点鎖線L4で示すように、シールド電極23の方に容量結合し易い。そのため、ドライブ電極11と位置検出電極21の間の静電容量が増大し難くなり、指示体Fによる両電極11,21間の静電容量の減少分が相殺され難くなる。
【0028】
また、指示体Fから押圧検出電極22に至るまでの経路上において、指示体Fは、押圧検出電極22よりもシールド電極23の方に近いため、シールド電極23に容量結合し易い。そのため、指示体Fがドライブ電極11と押圧検出電極22のそれぞれと容量結合することが抑制され、両電極間の静電容量が変動することが抑制される。
【0029】
(コントローラの構成)
次に、
図7~
図16Bを参照して、コントローラ2の構成について説明する。
図7は、コントローラ2の機能ブロック図である。コントローラ2は、プログラムを実行することにより、タッチパネルシステム100の制御処理を行うプロセッサ(制御回路)を含む。
図7に示すように、コントローラ2は、駆動制御部51、信号取得部52、位置検出部53、押圧値取得部54、及び押圧判断部55として機能する。
【0030】
〈駆動制御部の構成〉
駆動制御部51は、単位時間(1フレーム期間)ごとに、タッチパネル1に駆動信号を送信する。例えば、駆動制御部51は、タッチパネル1のドライブ電極11に順次、駆動信号を送信する。「1フレーム期間」とは、タッチパネル1のドライブ電極11の全てに駆動信号を送信する期間(一巡する期間)を意味する。
【0031】
〈信号取得部の構成〉
信号取得部52は、取得した位置信号値G1及び押圧信号値G2によりデータマップMを生成する。ここで、
図8を参照して、データマップMについて説明する。
図8に例示するデータマップMは、ドライブ電極11が15本、位置検出電極21及び押圧検出電極22がそれぞれ32本である場合に得られるデータである。データマップMは、(X,Y)の二次元座標で表された要素を有するデータである。X方向はドライブ電極11が並ぶ方向であり、Y方向は位置検出電極21及び押圧検出電極22が並ぶ方向である。なお、以下では、Yの値が増大する方向を下、減少する方向を上と表現する。
【0032】
データマップMは、位置信号値G1及び押圧信号値G2を1つのニ次元座標系の異なる領域に配置して組み合わせたデータである。
図8に例示するデータマップMは、Y方向の中央部分に2行分のダミーDDを挟んで、位置検出電極21から得られた位置信号値G1が並べられた位置検出マップTMが上側、押圧検出電極22から得られた押圧信号値G2が並べられた押圧検出マップFMが下側となるように、それぞれ異なる領域に配置されている。
図4に示したように、位置検出電極21及び押圧検出電極22は交互に並んでいるが、位置信号値G1及び押圧信号値G2は分離されて配置されている。
図8に例示するデータマップMにおいて、タッチパネル1上のある角を原点としてX本目のドライブ電極11とY本目の位置検出電極21で形成される静電容量に対応した位置信号値G1は、(X,Y)の要素になる。一方、X本目のドライブ電極11と、Y本目の押圧検出電極22で形成される静電容量に対応した押圧信号値G2は、(X,Y+34)の要素になる。
【0033】
以下、データマップMが、タッチパネル1の表面が指示体Fによって押圧された場合、位置検出マップTM内における指示体Fの接触部分の中心付近に相当する要素の位置信号値G1が正の値に大きくなるとともに、押圧検出マップFM内においても指示体Fの接触部分の中心付近に相当する要素の押圧信号値G2が正の値に大きくなる場合を例に挙げて説明する。
【0034】
〈位置検出部の構成〉
図8に示すように、位置検出部53は、データマップMの位置検出マップTM内から、指示体Fの位置TPを検出する。ここで、第1実施形態では、位置検出部53は、位置検出マップTM内の要素のうち、位置信号値G1が複数のフレーム期間(例えば、3フレーム期間)連続して位置検出閾値G1t以上となった場合に、4フレーム目の位置検出閾値G1t以上でかつ位置検出マップTM内で最大となる要素を、指示体Fの位置TPとして検出する。この構成によれば、複数回連続して位置信号値G1が位置検出閾値G1t以上となった場合に検出されるので、ノイズにより位置信号値G1が1回だけ位置検出閾値G1t以上となった場合に、誤った位置を指示体Fの位置として誤検出することを防止することができる。なお、位置検出部53は、位置検出マップTM内に、位置信号値G1が位置検出閾値G1t以上の要素がない場合、タッチパネル1に接触している指示体Fは存在しないものと判定する。
【0035】
また、位置検出部53は、指示体Fの詳細位置を算出する。「詳細位置」とは、位置検出マップTM内の最大値となる位置TPを中心する所定の範囲(位置検出範囲TR)内の重心位置を意味する。位置検出部53による詳細位置の算出方法について、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9及び
図10は、コントローラ2による指示体Fの詳細位置の算出方法を示す模式図である。なお、
図9及び
図10では、指示体Fの位置TPを(0,0)としている。
【0036】
図8及び
図9に示すように、位置検出部53は、指示体Fの位置TPを含むようにA×Bの大きさの位置検出範囲TRを設定する。
図8及び
図9では、指示体Fの位置TPを中心として、5×5の領域を位置検出範囲TRとして設定する場合を例示している。なお、指示体Fの位置TPを中心として5×5の位置検出範囲TRを設定すると一部が位置検出マップTMからはみ出す場合、位置検出範囲TRが、はみ出す部分が削除されて5×5よりも小さくなるように設定されてもよいし、5×5の大きさであるが指示体Fの位置TPが中心からずれることで位置検出マップTM内に収まるように設定されてもよい。
【0037】
位置検出部53は、位置検出範囲TR内における信号値D(X,Y)を、Y方向に累積加算することで、信号値C(X,Y)を算出する。具体的に、位置検出部53は、信号値C(X,Y)を、C(X,Y)=C(X,Y-1)+D(X,Y)で算出する。ただし、位置検出部53は、信号値C(X,Y)の算出にあたり、C(X,Y-1)を算出することができない位置検出範囲TRの上端の要素については、C(X,Y)=D(X,Y)とする。
【0038】
位置検出部53は、算出した信号値C(X,Y)について、信号値の大きさと座標(X,Y)に基づいて重心位置を算出し、この重心位置を指示体Fの詳細位置とする。このように指示体Fの詳細位置を算出すると、座標(X,Y)の間に存在する指示体Fの位置を検出することができるため、指示体Fの位置を検出する分解能を向上させることができる。
【0039】
〈押圧値取得部の構成〉
押圧値取得部54は、押圧信号値G2に基づいて、暫定値を取得するとともに、暫定値を増幅させた値(押圧値Z)を取得する。詳細には、
図8に示すように、押圧値取得部54は、データマップMの押圧検出マップFM内に、押圧検出範囲FRを設定する。そして、押圧値取得部54は、指示体Fの位置TPを含むようにC×Dの大きさの押圧検出範囲FRを設定する。
図8では、指示体Fの位置TPに対応した押圧検出マップFM内の位置FPを中心として、5×5の領域を押圧検出範囲FRとして設定する場合を例示している。
図8に示す例の場合、位置FPのX座標は位置TPと同じであり、位置FPのY座標は位置TPのY座標に34を加算した値になる。なお、位置FPを中心として5×5の押圧検出範囲FRを設定すると一部が押圧検出マップFMからはみ出す場合、押圧検出範囲FRが、はみ出す部分が削除されて5×5よりも小さくなるように設定されてもよいし、5×5の大きさであるが位置FPを中心とせず押圧検出マップFM内に収まるように設定されてもよい。
【0040】
そして、押圧値取得部54は、押圧検出範囲FR内の押圧信号値G2に基づいて、指示体Fによる押圧の大きさの暫定値を算出する。例えば、押圧値取得部54は、押圧検出範囲FR内の押圧信号値G2の絶対値を合算して、暫定値を算出する。なお、押圧検出範囲FRの設定方法を含む暫定値の算出方法は、例えば、一定の接触面積である指示体Fを、押しつける力を変えながらタッチパネル1に押しつけたときに、暫定値が押しつけた力に比例する値になるようにすると好ましい。
【0041】
そして、押圧値取得部54は、暫定値を増幅した値である押圧値Zを算出する。押圧値取得部54は、暫定値に増幅率を乗じた後、オフセット値を加算または減算して、押圧値Zを算出してもよい。
【0042】
(押圧判断部の構成)
図7に示すように、押圧判断部55は、平滑化処理部55a、微分値取得部55b、及び押圧座標取得部55cを含む。すなわち、コントローラ2は、プログラムを実行することにより、平滑化処理部55a、微分値取得部55b、及び押圧座標取得部55cとして機能する。
【0043】
〈平滑化処理部の構成〉
平滑化処理部55aは、押圧値取得部54により算出された押圧値Zを平滑化して平滑化された押圧値Zaを取得する。
図11は、複数のフレーム期間(例えば、21フレーム分)において取得された押圧値Zの例を示している。ここで、平滑化処理部55aは、4フレーム目から指示体の位置の検出を行う位置検出部53と異なり、位置信号値G1が位置検出閾値G1t以上となった時点(1フレーム目)から平滑化する処理を行う。
【0044】
図12は、
図11の平滑化された押圧値Zaの例である。位置信号値G1が位置検出閾値G1t以上となった時点を1フレーム目(第1の時点)とし、1フレーム目からNフレーム後(Nは自然数)に得られた押圧信号値G2の押圧値ZをZ1とし、第Nの時点から1フレーム前に得られた押圧信号値G2の押圧値ZをZ2とした場合に、平滑化処理部55aは、下記式(1)に示す平滑化された押圧値Zaを取得する。この式(1)によれば、第1の時点(1フレーム目)に近い時点(Nが小さい)程、より強力に平滑化されるので、第1の時点直後でも、ノイズの影響を低減することができる。
Za = {(N-1)/N}×Z2 + (1/N)×Z1 ・・・ (1)
【0045】
図13は、平滑化処理部55aの効果を説明するための比較例との比較結果を示す図である。第1比較例は、平滑化される前の押圧値Zの変動を示す図である。第2比較例は、1~3フレーム目については、最新のフレームにおける押圧値Zと1フレーム前の押圧値Zとの平均値であり、4フレーム目~(N-1)フレーム目については、最新のフレームから直近の4フレームの押圧値Zの平均値であり、Nフレーム目以降については第1実施形態と同様の平滑化処理を行ったものとする。この結果、第2比較例の値は、平滑化前の第1比較例の押圧値Zよりも変動が低減されるものの、第1実施形態による平滑化された押圧値Zaの方が第2比較例に比べて、より顕著に平滑化された押圧値Zaの変動が抑制されることが判明した。第1実施形態の構成によれば、第1の時点直後でも、ノイズの影響を低減することができることが判明した。
【0046】
〈微分値取得部の構成〉
第1実施形態では、微分値取得部55bは、押圧値取得部54及び平滑化処理部55aにより得られた平滑化された押圧値Zaに基づく2回微分値Bを取得する。「2回微分」とは、本実施形態では、押圧値Zaを時間(フレームの数)により微分した値(1回微分値)に対して再度時間により微分することのみならず、押圧値Zaに基づいて、後述する式(5)を用いて、1回微分値を求めることなく、2回微分値を直接求めることも含む概念である。「1回微分」とは、押圧値Zaを時間により微分することを意味する。
【0047】
ここで、
図14Aに示すように、平滑化された押圧値Za(及び平滑化する前の押圧値Z)には、熱ノイズによる値(
図14Aの点線部分)が重畳している。すなわち、感圧部材30に、指示体の熱が伝わることにより、感圧部材30の誘電率が変化し、当該誘電率の変化による平滑化された押圧値Za(及び平滑化する前の押圧値Z)の変化が生じる。すなわち、感圧部材30の温度が上昇すると、指示体が第1基板10を押し込んでいないにもかかわらず、静電容量が変化し、押圧検出電極22から得られる押圧値Zが変化する。
【0048】
また、
図14Bは、タッチパネル1の温度が環境温度と等しい状態から、指示体による押圧が繰り返された場合における、平滑化された押圧値Za(以下、単に「押圧値Za」という)、1回微分値A、及び2回微分値Bの信号値の波形を示している。
図14Bの結果は、環境温度が摂氏-30度の状態で取得されたものである。押圧値Zaは、
図14Aと同様に、熱ノイズの影響により、上昇し続ける。1回微分値Aは、押圧値Zaに比べて熱ノイズの影響は低減されているものの、押圧された時点t1、t2、及びt3とは異なる時点taにおいても、1回微分値Aが閾値を上回っており、時点taで押圧が誤って検出されてしまう。なお、「閾値」とは、信号値が閾値未満から閾値以上となった場合に、押圧されたものと判定するための基準値である。2回微分値Bは、1回微分値Aに比べてさらに熱ノイズの影響が低減されており、押圧された時点t1、t2、及びt3は閾値以上となる一方、時点taにおいては、信号値が閾値未満(さらに0未満)となる。すなわち、2回微分値Bにより、押圧操作の有無を判断することにより、熱ノイズの影響を防止することができる。
【0049】
図15は、2回微分値Bの取得(算出)の一例を説明するための図である。第1実施形態では、例えば、微分値取得部55bは、押圧値Zaの1回微分値Aを取得し、1回微分値Aに基づいて、2回微分値Bを求める。微分値取得部55bは、平滑化処理部55aと同様に、位置信号値G1が位置検出閾値G1t以上となった時点(1フレーム目)から2回微分値Bを取得する処理を行う。
【0050】
図15に示すように、微分値取得部55bは、最新の押圧値Zaから過去の押圧値Zaを差分することにより、1回微分値Aを求める。ここで、「過去の押圧値Za」とは、最新の押圧信号値G2を取得した時点(フレーム)からd(自然数)フレーム前に押圧検出電極22から得られた押圧信号値G2に基づいて算出された押圧値Zaである。また、「最新の押圧値Za」とは、取得された押圧値Zaのなかで、最も後に取得された押圧値Zaである。なお、
図15の例では、dは、2以上の自然数として記載しているが、dが1であってもよい。最新の押圧値Zaを、押圧値Za(N)として、過去の押圧値Zaを、押圧値Za(N-d)とする。微分値取得部55bは、1回微分値Aを、1フレームごとに、下記式(2)に基づいて算出する。ここで、Nフレーム目の1回微分値AをA(N)とする。また、N-dフレーム目の1回微分値AをA(N-d)とする。
A(N) = Za(N) - Za(N-d) ・・・ (2)
A(N-d) = Za(N-d) - Za(N-2d) ・・・ (3)
【0051】
そして、微分値取得部55bは、1回微分値A(N)と1回微分値A(N-d)との差分を求めることにより、2回微分値Bを求める。すなわち、微分値取得部55bは、2回微分値Bを、1フレームごとに、下記式(4)に基づいて算出する。なお、微分値取得部55bは、下記式(5)に示すように、1回微分値A(N)と1回微分値A(N-d)とを求めずに、押圧値Za(N)、押圧値Za(N-d)、及び押圧値Za(N-2d)から直接、2回微分値Bを求めてもよい。
B(N) = A(N) - A(N-d) ・・・ (4)
B(N) = Za(N) - 2×Za(N-d) + Za(N-2d) ・・・ (5)
【0052】
なお、dの値は、操作者からの入力操作に基づいて、コントローラ2により変更されてもよい。dの値は、熱ノイズの影響の低減と応答性の特性上、1以上6以下が望ましい。「操作者からの入力操作」は、タッチパネル1上における操作者による入力操作であってもよいし、タッチパネル1とは別個に設けられた操作部(図示せず)に対する操作者による入力操作であってもよい。自然数dの値を大きく設定する程、シグナルが大きくなるが、記憶しておくべき押圧値Zの数が増えるので、コントローラ2のメモリ(図示せず)の負担が大きくなる。この構成によれば、自然数dの値を任意に設定することができるので、1回微分値A及び2回微分値Bの絶対値(シグナル)をより大きくする場合には自然数dを大きく設定し、メモリの負担を軽減させる場合には自然数dを小さく設定すればよい。
【0053】
〈押圧座標取得部の構成〉
図16に示すように、押圧座標取得部55cは、2回微分値Bと押圧検出閾値Bt1とを比較することにより、指示体により指示位置に対する押圧操作が行われたと判断する。具体的には、タッチパネル1を指示体が押圧すると、2回微分値Bが上昇する。押圧判断部55は、2回微分値Bが押圧検出閾値Bt1以上となった場合に、位置FPにおいて指示体により押圧されたと判定する。
【0054】
そして、押圧判断部55は、2回微分値Bが押圧検出閾値Bt1以上となった後、2回微分値Bと押圧解除検出閾値Bt2とを比較することにより、指示位置における押圧操作が解除されたと判断する。具体的には、タッチパネル1を押圧する指示体Fの押圧力が弱められると、2回微分値Bが低下する。そして、押圧判断部55は、2回微分値Bが押圧解除検出閾値Bt2以下となった場合に、位置FPにおける押圧操作が解除されたと判断する。押圧解除検出閾値Bt2は、押圧検出閾値Bt1よりも小さな値である。
【0055】
以上の構成によれば、指示体とタッチパネル1との温度差が大きく熱ノイズによる押圧値の1回微分値Aが大きい場合でも、2回微分値Bに基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断するので、
図14Bに示すように、熱ノイズを誤って押圧操作として検出することを防止することができる。
【0056】
(タッチパネルシステムの制御方法)
次に、
図17及び
図18を参照して、タッチパネルシステム100の制御方法について説明する。
図17及び
図18は、タッチパネルシステム100の制御処理のフローを示す図である。下記のタッチパネルシステム100の制御処理は、コントローラ2により実行される。
【0057】
図17に示すように、ステップS1において、データマップMの取得が行われる。すなわち、タッチパネル1から位置信号値G1及び押圧信号値G2を取得する。
【0058】
ステップS2において、位置検出マップTM内から指示体の位置TPを検出する。その後、ステップS3において、指示体の詳細位置が算出され、指示体の詳細位置の情報を含む出力データが表示装置101に送信される。「詳細位置」とは、位置検出マップTM内の最大値となる位置TPを中心する所定の範囲(位置検出範囲TR)内の重心位置を意味する。
【0059】
ステップS4において、指示体の位置TPに基づいて押圧検出範囲FRが設定される。その後、ステップS5において、押圧値Zが算出される。その後、ステップS6において、押圧値Zが平滑化され、平滑化された押圧値Zaが取得される。
【0060】
ステップS7において、最新フレームNが自然数2d(dの2倍)を超えたか否かが判断される。最新フレームNが自然数2dを超えている場合、ステップS8に進み、最新フレームNが自然数2dを超えていない場合、ステップS9に進む。
【0061】
ステップS8において、上記式(2)に基づいて、押圧値Zaの1回微分値Aが算出され、上記式(4)に基づいて、2回微分値Bが算出される。なお、上記式(5)に基づいて、2回微分値Bが算出されてもよい。他方、ステップS9においては、2回微分値B(及び1回微分値A)が0に設定される。その後、ステップS10に進む。
【0062】
ステップS10において、1回微分値Aが押圧検出閾値Bt1以上か否かが判断される。1回微分値Aが押圧検出閾値Bt1以上の場合、ステップS11に進む。1回微分値Aが押圧検出閾値Bt1未満の場合、ステップS1に戻り、次のフレーム期間におけるデータマップMを取得する。
【0063】
ステップS11において、位置FPにおいて指示体により指示位置における押圧操作が行われたと判断され、位置FPにおいて指示体により押圧操作されたことを示す情報を含む出力データが表示装置101に送信される。その後、ステップS21(
図18参照)に進む。
【0064】
図18に示すように、ステップS21において、データマップMの取得が行われる。その後、ステップS22において、位置検出マップTM内から指示体の位置TPを検出する。その後、ステップS23において、指示体の詳細位置が算出され、指示体の詳細位置の情報を含む出力データが表示装置101に送信される。
【0065】
そして、ステップS24において、指示体の位置TPに基づいて押圧検出範囲FRが設定される。その後、ステップS25において、押圧値Zが算出される。そして、ステップS26において、押圧値Zが平滑化される。その後、ステップS27において、平滑化された押圧値Zaの2回微分値Bが算出される。
【0066】
ステップS28において、2回微分値Bが押圧解除検出閾値Bt2以下か否かが判断される。2回微分値Bが押圧解除検出閾値Bt2以下の場合、ステップS29に進む。2回微分値Bが押圧解除検出閾値Bt2よりも大きい場合、このステップS21に戻り、次のフレーム期間におけるデータマップMを取得する。
【0067】
ステップS29において、指示体による指示位置における押圧操作が解除されたと判断され、指示体による押圧操作が解除されたことを示す情報を含む出力データが表示装置101に送信される。その後、ステップS1(
図17参照)に戻る。
【0068】
以上のように、指示体とタッチパネル1との温度差が大きく熱ノイズによる押圧値の1回微分値Aが大きい場合でも、2回微分値Bに基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断するので、
図14Bに示すように、熱ノイズを誤って押圧操作として検出することを防止することができる。
【0069】
[第2実施形態]
次に、
図19及び
図20を参照して、第2実施形態のタッチパネルシステム200の構成について説明する。第2実施形態のタッチパネルシステム200には、第1実施形態のタッチパネルシステム100の構成に加えて、環境温度Teに基づいて、1回微分値A及び2回微分値Bのいずれに基づいて押圧操作の有無を判断するかを判別する機能が設けられている。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ符号を用いる場合、第1実施形態と同様の構成を示しており、特に説明がない限り先行する説明を参照する。
【0070】
図19は、タッチパネルシステム200のコントローラ202の機能ブロック図である。コントローラ202には、押圧判断部255と、温度取得部256と、が設けられている。
【0071】
図20は、タッチパネル1の感圧部材30の比誘電率εの温度依存性を説明するための図である。温度取得部256は、感圧部材30(
図5参照)の容量値CLを取得するとともに、感圧部材30の容量値CLに基づいて、環境温度Teを取得する。この構成によれば、新たに温度検出器(温度センサ)を設けることなく、環境温度Teを取得することができる。
図20に示すように、感圧部材30の比誘電率εは、温度依存性があるため、温度の変化に応じて、比誘電率εが変化し容量値CLは変化する。そこで、第2実施形態の温度取得部256は、容量値CLを測定することにより、比誘電率εを求め、比誘電率εに基づいて環境温度Teを取得する。例えば、コントローラ202には、予め
図20に示す比誘電率ε(又は容量値CL)と環境温度Teとが対応付けられたテーブルが設けられている。そして、温度取得部256は、容量値CL及び比誘電率εを取得し、テーブルを参照して、比誘電率εに対応する環境温度Teを取得する。ここで、「環境温度Te」とは、指示体によりタッチパネル1がタッチされる前のタッチパネル1(感圧部材30)の温度を意味する。
【0072】
図19に示すように、押圧判断部255は、微分値取得部255bと、押圧座標取得部255cとを含む。微分値取得部255bは、環境温度Teが温度範囲R内の場合に、1回微分値Aを求め、環境温度Teが温度範囲R外の場合に、2回微分値Bを求める。押圧座標取得部255cは、環境温度Teが温度範囲R内の場合に、1回微分値Aに基づいて押圧操作の有無を判断し、環境温度Teが温度範囲R外の場合に、2回微分値Bに基づいて押圧操作の有無を判断する。温度範囲Rには、指示体の温度(例えば、摂氏20度~摂氏40度)が含まれる。温度範囲Rには、例えば、摂氏0度以上摂氏60度以下の範囲である。なお、温度範囲Rは、この例に限られず、摂氏0度未満の温度、又は摂氏60度を超える温度が含まれてもよい。
【0073】
第2実施形態による構成によれば、環境温度Teが温度範囲R内の場合、指示体とタッチパネル1の温度差が小さいので、熱ノイズによる影響が小さく、押圧値の1回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断する方法によっても、熱ノイズを誤って押圧操作として検出することを防止することができる。この結果、環境温度Teが温度範囲R内の場合には、押圧判断部255の処理負担を軽減することができる。また、環境温度Teが温度範囲R外の場合には、2回微分値Bに基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断することにより、熱ノイズを誤って押圧操作として検出することを防止することができる。
【0074】
(第2実施形態による制御方法)
次に、
図21~
図25を参照して、第2実施形態によるタッチパネルシステム200の制御方法について説明する。タッチパネルシステム200の制御方法は、コントローラ202により実行される。なお、第1実施形態と同様の制御処理には、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0075】
図21に示すように、ステップS101において、環境温度Teが取得される。具体的には、感圧部材30の容量値CL(比誘電率ε)を取得するとともに、感圧部材30の容量値CL(比誘電率ε)に基づいて、環境温度Teを取得する。そして、ステップS102において、環境温度Teが温度範囲R内か否かを判断される。環境温度Teが温度範囲R内の場合、
図22に示すステップS1に進む。環境温度Teが温度範囲R外の場合、
図24に示すステップS1に進む。
【0076】
図22に示すように、環境温度Teが温度範囲R内の場合に進むステップS1の処理が実行され、その後、ステップS2~S6が実行される。そして、ステップS207において、最新フレームNがdを超えたか否かが判断される。最新フレームNがdを超えている場合、ステップS208に進み、最新フレームNがdを超えていない場合、ステップS209に進む。
【0077】
ステップS208において、1回微分値Aが求められる。ステップS209において、1回微分値A(N)が0に決定される。そして、ステップS208又はステップS209の後、ステップS210において、1回微分値Aが押圧検出閾値At1以上か否かが判断される。1回微分値Aが押圧検出閾値At1以上でない場合、ステップS101(
図21参照)に戻り、1回微分値Aが押圧検出閾値At1以上の場合、ステップS11に進む。その後、ステップS21~S26が実行される。
【0078】
ステップS26の後のステップS227において、1回微分値Aが求められる。そして、ステップS228において、1回微分値Aが押圧解除検出閾値At2以下か否かが判断される。1回微分値Aが押圧解除検出閾値At2以下の場合、ステップS229に進み、1回微分値Aが押圧解除検出閾値At2以下でない場合、ステップS21に戻る。ステップS229において、指示体による押圧操作が解除されたものと判断し、ステップS101(
図21参照)に戻る。
【0079】
また、環境温度Teが温度範囲R外の場合、
図24に示すステップS1~S9の処理が実行される。その後、ステップS310において、2回微分値Bが押圧検出閾値Bt1以上の場合、ステップS11に進み、2回微分値Bが押圧検出閾値Bt1以上でない場合、ステップS101(
図21参照)に戻る。ステップS11に進んだ場合であって、ステップS11を実行した後、
図25に示すように、ステップS21~S28が実行される。ステップS28が実行された後、2回微分値BがBt2以下の場合に進む、ステップS329において、指示体による押圧操作が解除されたものと判断し、ステップS101(
図21参照)に戻る。
【0080】
第2実施形態による制御方法によれば、環境温度Teが温度範囲R内の場合、指示体とタッチパネル1の温度差が小さいので、熱ノイズによる影響が小さく、押圧値の1回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断する方法によっても、熱ノイズを誤って押圧操作として検出することを防止することができる。この結果、環境温度Teが温度範囲R内の場合には、タッチパネルシステム200の処理負担を軽減することができる。また、環境温度Teが温度範囲R外の場合には、2回微分値Bに基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断することにより、熱ノイズを誤って押圧操作として検出することを防止することができる。
【0081】
[第2実施形態の第1変形例]
次に、
図26及び
図27を参照して、第2実施形態の第1変形例によるタッチパネルシステム300の構成について説明する。感圧部材30の比誘電率ε(容量値CL)に基づいて環境温度Teを検出した第2実施形態のタッチパネルシステム200と異なり、第2実施形態の第1変形例によるタッチパネルシステム300は、タッチパネル1の外部に、温度センサ301が設けられている。なお、以下の説明において、第1実施形態又は第2実施形態と同じ符号を用いる場合、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成を示しており、特に説明がない限り先行する説明を参照する。
【0082】
図26に示すように、タッチパネルシステム300は、温度センサ301とコントローラ302とを備える。温度センサ301は、タッチパネル1の外部に配置されており、タッチパネルシステム300の環境温度Teを検出する。そして、温度センサ301は、検出した環境温度Teをコントローラ302に出力する。
【0083】
図27に示すように、コントローラ302は、温度取得部356を含む。温度取得部356は、温度センサ301から環境温度Teを取得する。そして、押圧判断部255は、取得した環境温度Teが温度範囲R内の場合に、1回微分値Aを求め、環境温度Teが温度範囲R外の場合に、2回微分値Bを求める。そして、押圧判断部255は、第2実施形態と同様に、環境温度Teが温度範囲R内の場合に、1回微分値Aに基づいて押圧操作の有無を判断し、環境温度Teが温度範囲R外の場合に、2回微分値Bに基づいて押圧操作の有無を判断する。第2実施形態の変形例によれば、第2実施形態と異なり、比誘電率e(容量値CL)を求めることなく、温度センサ301から環境温度Teの検出結果を取得することができる。この結果、コントローラ302における制御処理を簡素化することができる。
【0084】
[第3実施形態]
次に、
図28~
図30を参照して、第3実施形態のタッチパネルシステム400の構成について説明する。第3実施形態のタッチパネルシステム400には、第1実施形態のタッチパネルシステム100の構成のシールド電極23に代えて、熱検出電極423が設けられている。そして、タッチパネルシステム400は、熱検出電極423による検出結果に基づいて押圧値Zを補正する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ符号を用いる場合、第1実施形態と同様の構成を示しており、特に説明がない限り先行する説明を参照する。
【0085】
図28に示すように、タッチパネルシステム400は、タッチパネル401と、コントローラ402とを含む。
【0086】
ここで、
図20に示すように感圧部材30は、温度に応じて比誘電率εが変化する。このため、比誘電率εに応じて押圧値Zの値が変化する。そこで、第3実施形態では、
図29に示すように、タッチパネル401には、熱検出電極423が設けられている。熱検出電極423は、第2基板20上に配置されている。熱検出電極423は、押圧検出電極22と隣接して配置されている。熱検出電極423は、例えば、押圧検出電極22と同一の材料からなる。そして、コントローラ402は、補正制御部456を含む。補正制御部456は、ドライブ電極11に駆動信号を印加した後に、熱検出電極423に駆動信号を印加する。そして、補正制御部456は、押圧検出電極22から信号を取得し、当該信号に基づいて、熱検出信号を生成する。
【0087】
そして、補正制御部456は、熱検出信号に基づいて、押圧値Zを補正する。例えば、指示体が第1基板10の第1表面10aに接触した場合において、タッチパネル1の周囲の環境温度が低いと、指示体から感圧部材30へ熱が伝わる。このため、
図20に示す特性を有する感圧部材30の場合、温度が上昇すると、比誘電率は小さくなる。従って、温度が上昇すると、容量値が大きくなるため、容量値が押圧値Zに比例する場合、補正制御部456は、熱検出信号の大きさに応じて、押圧値Zを小さくする。また、温度が下降すると、容量値が小さくなるため、容量値が押圧値Zに比例する場合、補正制御部456は、熱検出信号の大きさに応じて、押圧値Zを大きくする。そして、押圧判断部55は、補正後の押圧値Zに基づいて、2回微分値Bを求め、当該2回微分値Bに基づいて、押圧操作の有無を判断する。第3実施形態によれば、押圧値Zを補正することができるので、より正確に押圧操作の有無を判断することができる。
【0088】
[変形等]
以上、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0089】
(1)上記第1~第3実施形態では、押圧値Zを平滑化する例を示したが、これに限られない。すなわち、押圧値Zを平滑化せずに、押圧値Zの2回微分値を算出してもよい。
【0090】
(2)上記第2実施形態の第1変形例では、タッチパネル1の外部に配置された温度センサ301からコントローラ302に検出結果が出力される例を示したが、本開示これに限られない。例えば、
図31に示す第2変形例のタッチパネルシステム500のように、環境温度Teを測定する温度センサ503がタッチパネルシステム500外に設けられていてもよい。この場合、温度センサ503が検出した環境温度Teを、ホスト(制御部502a)側から、コントローラ502が取得するように構成される。
【0091】
(3)上記第1~第3実施形態では、位置信号値G1が、複数回連続して位置検出閾値G1t以上となった場合に、指示体の位置を検出する例を示したが、これに限られない。すなわち、位置信号値G1が初めて位置検出閾値G1t以上となった場合に、指示体の位置を検出してもよい。
【0092】
(4)上記第1~第3実施形態では、位置信号値G1が位置検出閾値G1t以上となった時点(1フレーム目)から、2回微分値Bを取得する例を示したが、これに限られない。すなわち、位置信号値G1が位置検出閾値G1t以上となった時点(1フレーム目)よりも後の時点から、2回微分値Bを取得してもよいし、検出された押圧値Z(Za)の全てに対して、2回微分値Bを取得してもよい。
【0093】
(5)上記第1~第3実施形態では、2回微分値Bと押圧検出閾値Bt1および押圧解除検出閾値Bt2とを比較する例を示したが、これに限られない。例えば、2回微分値Bと押圧検出閾値Bt1および押圧解除検出閾値Bt2とを比較せずに、2回微分値Bを、指示体の押圧の大きさを示す情報(出力データ)としてコントローラから出力させてもよい。
【0094】
(6)上記第1及び第2実施形態では、タッチパネルに、浮島電極12及びシールド電極23が設けられる例を、上記第3実施形態では、タッチパネルに、浮島電極12が設けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、浮島電極12及びシールド電極23は、タッチパネルに設けられなくてもよい。
【0095】
(7)上記第2実施形態では、環境温度Teを取得するために、比誘電率εを求める例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、コントローラが、容量値CLと環境温度Teとが対応付けられたテーブルを参照して、比誘電率ε求めずに、容量値CLから環境温度Teを算出してもよい。
【0096】
(8)上記第1~第3実施形態では、上記式(4)及び(5)を用いて2回微分値Bを求める例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、押圧値(平滑された押圧値)に対して二次回帰分析を行うことで二次近似式を求め、当該二次近似式から二回微分を求めることにより、2回微分値を求めてもよい。
【0097】
また、上述した構成は、以下のように説明することができる。
【0098】
第1の構成に係るタッチパネルシステムは、ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を備えた静電容量式タッチパネルと、静電容量式タッチパネルを制御するコントローラと、を備え、コントローラは、ドライブ電極に駆動信号を与え、位置検出電極から信号値を取得し、押圧検出電極から信号値を取得し、位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体による指示位置を検出し、押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、押圧値の2回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断する(第1の構成)。
【0099】
ここで、熱ノイズによる押圧値の変化率(1回微分値)が、指示体の押圧による押圧値の変化率(1回微分値)を超える場合でも、熱がタッチパネル内で伝わる速度よりも押圧力が伝わる速度の方が速い。このため、指示体による押圧による押圧値の2回微分値は、熱ノイズによる押圧値の2回微分値は、よりも大きくなる。そこで、上記第1の構成によれば、指示体とタッチパネルとの温度差が大きく熱ノイズによる押圧値の1回微分値が大きい場合でも、押圧値の2回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断するので、指示位置における押圧操作の有無を精度良く判断することができる。
【0100】
第1の構成において、コントローラは、単位時間ごとに、押圧検出電極から信号値を取得し、押圧検出電極により得られた信号値と、当該信号値の取得よりも複数回前に得られた信号値とに基づいて、押圧値の1回微分値を取得し、押圧値の1回微分値と、当該1回微分値の取得よりも複数回前に得られた1回微分値とに基づいて、押圧値の2回微分値を取得するように構成されてもよい(第2の構成)。
【0101】
ここで、タッチパネルにおいて、温度変化による誘電率変化による容量(押圧値)の変化は、押圧による容量(押圧値)の変化に比べ緩やかであるという特徴がある。このため、2回微分値を求めるための差分する時間間隔を大きくすれば、シグナルを大きくすることが可能となる。そこで、上記第2の構成によれば、現在から複数回前に得られた1回微分値に基づいて、押圧値の2回微分値を取得するので、シグナルを大きくすることができる。この結果、検出精度を向上させることができる。
【0102】
第1又は第2の構成において、タッチパネルシステムは、静電容量式タッチパネルの環境温度を検出する温度検出装置を、さらに備えてもよい。コントローラは、環境温度が、指示体の温度が含まれる温度範囲外の場合に、押圧値の2回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断し、環境温度が温度範囲内の場合に、押圧値の1回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断するように構成されてもよい(第3の構成)。
【0103】
上記第3の構成によれば、環境温度が基準温度範囲内の場合、熱ノイズによる影響が小さいので、押圧値の1回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断する方法によっても、精度良く押圧操作の有無を判断することができる。この結果、環境温度が基準温度範囲内の場合には、押圧判断部の処理負担を軽減しながら、環境温度が基準温度範囲外の場合には、押圧値の2回微分値に基づいて、精度良く指示位置における押圧操作の有無を判断することができる。
【0104】
第3の構成において、静電容量式タッチパネルは、位置検出電極と押圧検出電極との間に挟まれた感圧部材を、さらに含んでもよい。温度検出装置は、位置検出電極と押圧検出電極とにより形成される電気容量を検出し、検出した電気容量に基づいて感圧部材の誘電率を求め、求めた誘電率に基づいて、環境温度を求めるように構成されてもよい(第4の構成)。
【0105】
上記第4の構成によれば、位置検出電極と押圧検出電極との間に挟まれた感圧部材を用いて、環境温度を求めることができる。このため、タッチパネルとは別個に、温度センサを設ける必要がない。
【0106】
第3の構成において、温度検出装置は、静電容量式タッチパネルの外部に配置された温度センサであって、静電容量式タッチパネルの環境温度を検出する温度センサをさらに含んでもよい(第5の構成)。
【0107】
上記第5の構成によれば、感圧部材の電気容量を検出し、検出した電気容量に基づいて誘電率を求め、求めた誘電率に基づいて、環境温度を求める場合と異なり、誘電率を求めることなく、温度センサから環境温度の検出結果を取得することができる。この結果、温度検出装置における制御処理を簡素化することができる。
【0108】
第1~第5の構成のいずれか1つにおいて、静電容量式タッチパネルは、熱検出電極を、さらに含んでもよい。コントローラは、ドライブ電極および熱検出電極に駆動信号を供給し、押圧検出電極から得られる信号値を、熱検出電極と押圧検出電極との結合容量の変化から得られる熱検出信号で補正するように構成されてもよい(第6の構成)。
【0109】
上記第6の構成によれば、押圧検出電極から得られる信号値を補正することができるので、より正確に押圧操作の有無を判断することができる。
【0110】
第7の構成に係る表示装置は、タッチパネルシステムと、画像を表示するディスプレイと、を備え、ディスプレイの表示面上に、タッチパネルシステムが配置されている、表示装置であって、タッチパネルシステムは、ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を備えた静電容量式タッチパネルと、静電容量式タッチパネルを制御するコントローラと、を備え、コントローラは、ドライブ電極に駆動信号を与え、位置検出電極から信号値を取得し、押圧検出電極から信号値を取得し、位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体による指示位置を検出し、押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、押圧値の2回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断する(第7の構成)。
【0111】
上記第7の構成による表示装置では、指示体とタッチパネルとの温度差が大きく、指示体がタッチパネルに触れることで当該タッチパネルの温度が変化する場合でも、指示位置における押圧操作の有無を精度良く判断することができる。
【0112】
第8の構成に係るタッチパネルシステムの制御方法は、ドライブ電極、位置検出電極及び押圧検出電極を含む静電容量式タッチパネルを備えたタッチパネルシステムの制御方法であって、ドライブ電極に駆動信号を与え、位置検出電極から信号値を取得し、押圧検出電極から信号値を取得し、位置検出電極から得られた信号値に基づいて指示体の指示位置を検出し、押圧検出電極から得られた信号値に基づく押圧値の2回微分値を取得し、押圧値の2回微分値に基づいて指示位置における押圧操作の有無を判断する(第8の構成)。
【0113】
上記第8の構成によるタッチパネルシステムの制御方法では、指示体とタッチパネルとの温度差が大きく、指示体がタッチパネルに触れることで当該タッチパネルの温度が変化する場合でも、指示位置における押圧操作の有無を精度良く判断することができる。
【符号の説明】
【0114】
1,401:タッチパネル、2,202,302,402,502:コントローラ、11:ドライブ電極、21:位置検出電極、22:押圧検出電極、30:感圧部材、40:ディスプレイ、52:信号取得部、53:位置検出部、54:押圧値取得部、55,255:押圧判断部、55b,255b:微分値取得部、55c,255c:押圧座標取得部、100,200,300,400,500:タッチパネルシステム、101:表示装置、256:温度取得部、301,501:温度センサ、356:温度取得部、401:タッチパネル、423:熱検出電極、456:補正制御部