(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125920
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】導電粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20240911BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01B13/00 501Z
H01B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034054
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】521467881
【氏名又は名称】吉林OLED日本研究所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187388
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 天光
(72)【発明者】
【氏名】張 鵬
(72)【発明者】
【氏名】古山 晃一
【テーマコード(参考)】
5G307
【Fターム(参考)】
5G307AA08
(57)【要約】
【課題】異方性導電フィルム用の導電粒子において、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子の表面に導電膜を均一に厚く形成することができる導電粒子を提供する。
【解決手段】導電粒子1の製造方法は、ポリドデカンアミドよりなる基材粒子2を用意する工程と、基材粒子2の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなる金属層3を、バレルスパッタリング法により形成する工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリドデカンアミドよりなる基材粒子を用意する工程、
(b)前記基材粒子の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する第1合金よりなる第1金属層を、バレルスパッタリング法により形成する工程、
を有する、導電粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の導電粒子の製造方法において、
(c)前記(a)工程の後、前記(b)工程の前に、前記基材粒子の表面を覆い、且つ、Ni及びBを含有するか又はNi及びPを含有する第2合金よりなる第2金属層を、無電解めっき法により形成する工程、
を有し、
前記(b)工程では、前記第2金属層を介して前記基材粒子の表面を覆う前記第1金属層を形成する、導電粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の導電粒子の製造方法において、
前記第1金属層の第1厚さは、前記第2金属層の第2厚さよりも厚い、導電粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の導電粒子の製造方法において、
(d)前記(b)工程の前に、アルミナ、ジルコニア又はシリカよりなるメディア粒子を用意する工程、
を有し、
前記基材粒子の第1平均粒径は、前記メディア粒子の第2平均粒径よりも小さく、
前記(b)工程では、前記第1金属層を、バレルスパッタリング装置を用いたバレルスパッタリング法により形成し、
前記バレルスパッタリング装置は、
水平方向に沿った第1軸を中心として揺動可能又は回転可能に設けられた真空容器と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気部と、
前記真空容器を前記第1軸を中心として揺動駆動又は回転駆動する駆動部と、
前記真空容器内に配置され、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する第3合金よりなるターゲットと、
前記ターゲットに電力を供給する電力供給部と、
を含み、
前記(b)工程は、
(b1)前記基材粒子及び前記メディア粒子を、前記真空容器内に収容する工程、
(b2)前記(b1)工程の後、前記真空容器内を前記真空排気部により真空排気する工程、
(b3)前記(b2)工程の後、前記真空容器内が前記真空排気部により真空排気された状態で、前記真空容器を前記駆動部により揺動駆動又は回転駆動し、前記電力供給部により前記ターゲットに電力を供給し、電力が供給されている前記ターゲットがスパッタされることにより、前記真空容器内に収容されている前記基材粒子の表面を覆う前記第1金属層を形成し、前記真空容器内に収容されている前記メディア粒子の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する第4合金よりなる第3金属層を形成する工程、
(b4)前記(b3)工程の後、前記基材粒子を前記メディア粒子から篩分ける工程、
を含む、導電粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の導電粒子の製造方法において、
前記(b2)工程では、前記真空容器内を前記真空排気部により真空排気することにより、前記真空容器内の圧力を9.5×10-4~3.7×10-3Paの第1圧力に減圧し、
前記(b3)工程では、前記電力供給部により前記ターゲットに180~220Wの第1電力を供給し、前記第1電力が供給されている前記ターゲットがスパッタされることにより、前記第1金属層を形成し、前記第3金属層を形成し、
前記(b3)工程にて、前記第1電力が供給されている前記ターゲットがスパッタされている間の前記真空容器内の圧力は、1.5~3Paである、導電粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の導電粒子の製造方法において、
前記(b3)工程にて、前記第1電力が供給されている前記ターゲットがスパッタされている間の前記基材粒子の温度は、100~180℃である、導電粒子の製造方法。
【請求項7】
ポリドデカンアミドよりなる基材粒子と、
前記基材粒子の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する第1合金よりなる第1金属層と、
を有する、導電粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の導電粒子において、
前記基材粒子の表面を覆い、且つ、Ni及びBを含有するか又はNi及びPを含有する第2合金よりなる第2金属層を有し、
前記第1金属層は、前記第2金属層を介して前記基材粒子の表面を覆っている、導電粒子。
【請求項9】
請求項8に記載の導電粒子において、
前記第1金属層の第1厚さは、前記第2金属層の第2厚さよりも厚い、導電粒子。
【請求項10】
請求項7に記載の導電粒子において、
前記導電粒子を真空容器内に収容し、前記真空容器内を真空排気部により真空排気することにより、前記真空容器内の圧力を9.5×10-4~3.7×10-3Paの第1圧力に減圧した後、前記真空容器内が前記真空排気部により真空排気された状態で、前記導電粒子を加熱部により100~180℃の第1温度に加熱したとき、前記導電粒子が加熱されている間の前記真空容器内の圧力は、1.5~3Paである、導電粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置若しくはプラズマディスプレイ装置等の平面表示装置又は駆動回路基板等において、表示パネル上若しくは基板上の端子部と外部接続端子とを接続するために、又は、パネル面若しくは基板面にIC(Integrated Circuit)チップを実装するために、異方性導電接着剤が用いられている。
【0003】
異方性導電接着剤は、ベースとなる接着剤樹脂中に導電粒子(導電性微粒子)が分散されたものであり、電極端子の間に挟まれて厚さ方向に加圧された状態で、導電粒子が電極端子間の電気的接続を実現する。一般には、異方性導電接着剤は、フィルム又はペースト等の状態で、即ち、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film:ACF)又は異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste:ACP)等として、供給されている。ここで、異方性導電フィルムは、異方性導電シートとも称される。また、ベースとなる接着剤樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている。
【0004】
このような異方性導電接着剤に用いられる導電粒子に求められる重要な特性は、導電性が高いことである。そのため、導電粒子として、金属粒子が好ましく、特に銀粒子が好ましい。しかし、銀は高価な物質であり、コスト低減を目標として代替材料が求められている。また銀粒子を含め、金属粒子は密度(比重)が高く、樹脂への分散性に劣るという欠点を有する。そのため、密度(比重)を低減した導電粒子として、樹脂粒子の表面に金属層を有するものが知られている。
【0005】
特開2004-164874号公報(特許文献1)には、導電微粒子において、平均粒径1~100μmの球状の基材微粒子が、0.03~1.0μmの金属層により被覆されており、基材微粒子は、ε-カプロラクタムと、炭素数10~12の非分岐脂肪族炭素鎖を有するラクタムとを共重合した構造のポリアミド樹脂である技術が開示されている。
【0006】
また、特開2006-012709号公報(特許文献2)には、導電性微粒子において、ガラス転移温度が100℃以上300℃以下であって、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であるポリマー(a)からなるポリマー微粒子(A)が導電性金属(B)により被覆されてなる技術が開示されている。
【0007】
また、特開2008-251452号公報(特許文献3)には、導電性微粒子において、熱可塑性樹脂(A)からなる高分子微粒子と、その表面に形成された金属層(D)からなる技術が開示されている。
【0008】
また、特開昭63-190204号公報(特許文献4)には、樹脂微球体の表面にニッケルおよび/またはコバルトからなる導電薄膜層が形成された導電性微球体において、該導電薄膜層にリンを1.5~4重量%の割合で含有する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-164874号公報
【特許文献2】特開2006-012709号公報
【特許文献3】特開2008-251452号公報
【特許文献4】特開昭63-190204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
異方性導電フィルム(異方性導電シート)用の導電粒子としては、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子の表面に導電膜を均一に厚く形成することが望ましい。しかし、従来、このような球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子の表面に導電膜を均一に厚く形成することは困難であった。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、異方性導電フィルム用の導電粒子において、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子の表面に導電膜を均一に厚く形成することができる導電粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明の一態様としての導電粒子の製造方法は、ポリドデカンアミドよりなる基材粒子を用意する(a)工程と、基材粒子の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する第1合金よりなる第1金属層を、バレルスパッタリング法により形成する(b)工程と、を有する。
【0014】
また、他の一態様として、当該導電粒子の製造方法は、(a)工程の後、(b)工程の前に、基材粒子の表面を覆い、且つ、Ni及びBを含有するか又はNi及びPを含有する第2合金よりなる第2金属層を、無電解めっき法により形成する(c)工程を有し、(b)工程では、第2金属層を介して基材粒子の表面を覆う第1金属層を形成してもよい。
【0015】
また、他の一態様として、第1金属層の第1厚さは、第2金属層の第2厚さよりも厚くてもよい。
【0016】
また、他の一態様として、当該導電粒子の製造方法は、(b)工程の前に、アルミナ、ジルコニア又はシリカよりなるメディア粒子を用意する(d)工程を有し、基材粒子の第1平均粒径は、メディア粒子の第2平均粒径よりも小さくてもよい。(b)工程では、第1金属層を、バレルスパッタリング装置を用いたバレルスパッタリング法により形成し、バレルスパッタリング装置は、水平方向に沿った第1軸を中心として揺動可能又は回転可能に設けられた真空容器と、真空容器内を真空排気する真空排気部と、真空容器を第1軸を中心として揺動駆動又は回転駆動する駆動部と、真空容器内に配置され、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する第3合金よりなるターゲットと、ターゲットに電力を供給する電力供給部と、を含んでもよい。(b)工程は、基材粒子及びメディア粒子を、真空容器内に収容する(b1)工程と、(b1)工程の後、真空容器内を真空排気部により真空排気する(b2)工程と、(b2)工程の後、真空容器内が真空排気部により真空排気された状態で、真空容器を駆動部により揺動駆動又は回転駆動し、電力供給部によりターゲットに電力を供給し、電力が供給されているターゲットがスパッタされることにより、真空容器内に収容されている基材粒子の表面を覆う第1金属層を形成し、真空容器内に収容されているメディア粒子の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する第4合金よりなる第3金属層を形成する(b3)工程と、(b3)工程の後、基材粒子をメディア粒子から篩分ける(b4)工程と、を含んでもよい。
【0017】
また、他の一態様として、(b2)工程では、真空容器内を真空排気部により真空排気することにより、真空容器内の圧力を9.5×10-4~3.7×10-3Paの第1圧力に減圧し、(b3)工程では、電力供給部によりターゲットに180~220Wの第1電力を供給し、第1電力が供給されているターゲットがスパッタされることにより、第1金属層を形成し、第3金属層を形成し、(b3)工程にて、第1電力が供給されているターゲットがスパッタされている間の真空容器内の圧力は、1.5~3Paであってもよい。
【0018】
また、他の一態様として、(b3)工程にて、第1電力が供給されているターゲットがスパッタされている間の基材粒子の温度は、100~180℃であってもよい。
【0019】
また、本発明の一態様としての導電粒子は、ポリドデカンアミドよりなる基材粒子と、基材粒子の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する第1合金よりなる第1金属層と、を有する。
【0020】
また、他の一態様として、当該導電粒子は、基材粒子の表面を覆い、且つ、Ni及びBを含有するか又はNi及びPを含有する第2合金よりなる第2金属層を有し、第1金属層は、第2金属層を介して基材粒子の表面を覆っていてもよい。
【0021】
また、他の一態様として、第1金属層の第1厚さは、第2金属層の第2厚さよりも厚くてもよい。
【0022】
また、他の一態様として、導電粒子を真空容器内に収容し、真空容器内を真空排気部により真空排気することにより、真空容器内の圧力を9.5×10-4~3.7×10-3Paの第1圧力に減圧した後、真空容器内が真空排気部により真空排気された状態で、導電粒子を加熱部により100~180℃の第1温度に加熱したとき、導電粒子が加熱されている間の真空容器内の圧力は、1.5~3Paであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様を適用することで、異方性導電フィルム用の導電粒子において、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子の表面に導電膜を均一に厚く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態の導電粒子の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】実施の形態の導電粒子の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図1に示す導電粒子の製造工程中の断面図である。
【
図4】
図1に示す導電粒子の製造工程中の断面図である。
【
図5】
図1に示す導電粒子の製造工程中の断面図である。
【
図6】バレルスパッタリング装置の構成を模式的に示す図である。
【
図7】
図2に示す導電粒子の製造工程中の断面図である。
【
図8】実施例1の導電粒子をSEMにより観察した観察像である。
【
図9】実施例2の導電粒子をSEMにより観察した観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0027】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0028】
更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
【0029】
なお、以下の実施の形態においてA~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0030】
(実施の形態)
<導電粒子>
初めに、本発明の一実施形態である実施の形態の導電粒子について説明する。本実施の形態の導電粒子は、異方性導電フィルム(異方性導電シート)用の導電粒子である。
【0031】
図1は、実施の形態の導電粒子の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す例では、導電粒子1は、基材粒子2と、金属層3と、を有する。基材粒子2は、ポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミド(ナイロン12)よりなる。金属層3は、基材粒子2の表面を覆い、且つ、Ni(ニッケル)、Cu(銅)及びTi(チタン)を含有する合金よりなる。即ち、金属層3は、基材粒子2の表面上に形成されている。
【0032】
ポリドデカンアミド樹脂は、ポリアミド(Polyamide)樹脂、即ちポリアミドの一種である。ポリアミド樹脂とは、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできたポリマーであり、多数のモノマーを含む重合性組成物が重合即ち硬化された重合体である。また、一般に脂肪族骨格を含むポリアミド樹脂をナイロンと総称する。
【0033】
ナイロンは、一般的には、アミド基を有するために吸水性が高い。また、ナイロンは、結晶性が高い樹脂で、絶縁性及び耐薬品性に優れる。また、ナイロンは、アミド基の水素結合により、優れた強靭性、耐衝撃性、柔軟性を示す。
【0034】
また、ポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミドは、ナイロン12とも称される。ナイロン12は、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド樹脂であり、略号はPA12である。融点は176℃であり、ガラス遷移点は50℃、比重は1.02である。ナイロン12は、カプロラクタムを開環重縮合したナイロン6及びナイロン66に比べて、融点、吸水性が低く、耐寒衝撃性に優れている。また、ナイロン12は、ポリアミド樹脂の中では最も低密度(低比重)である。このような、ナイロン12は、球状形状を有する真球状の微粒子が容易に得られ、製造コストが低いこともあり、例えば化粧品として用いられている。
【0035】
金属層3が、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなることにより、基材粒子2の表面上に、導電性、耐食性、密着性及び剛性に優れた金属層3を形成することができる。
【0036】
例えばめっきにより、基材粒子の表面に導電膜としての金属層を均一に厚く形成することは、困難である。そのため、基材粒子の表面に導電膜としての金属層を均一に厚く形成するためには、後述する
図6を用いて説明するように、基材粒子の表面を覆う金属層を、バレルスパッタリング装置を用いたバレルスパッタリング法により形成することが望ましい。
【0037】
しかし、後述する比較例1乃至比較例4において説明するように、基材粒子2が、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、フェノール樹脂又はアクリル樹脂等、ポリアミド樹脂以外の樹脂よりなる場合、基材粒子を真空容器内に収容し、真空容器内が真空排気された状態で、例えば180℃程度の温度まで加熱された場合に、基材粒子の表面からガスが発生するか、又は、基材粒子が溶融することにより、真空容器内の圧力が上昇し、スパッタすることが困難である。
【0038】
一方、基材粒子がポリアミド樹脂よりなる場合、基材粒子を真空容器内に収容し、真空容器内が真空排気された状態で、例えば180℃程度の温度まで加熱された場合に、基材粒子がポリアミド樹脂以外の樹脂よりなる場合に比べて、基材粒子の表面からガスが発生しにくく、且つ、基材粒子が溶融しにくいので、真空容器内の圧力が上昇せず、安定してスパッタすることができる。
【0039】
また、上記特許文献1には、導電微粒子において、平均粒径1~100μmの球状の基材微粒子が、0.03~1.0μmの金属層により被覆されており、基材微粒子は、ε-カプロラクタムと、炭素数10~12の非分岐脂肪族炭素鎖を有するラクタムとを共重合した構造のポリアミド樹脂である技術が開示されている。ここで、ε-カプロラクタムを重合したポリアミド樹脂は、ナイロン6である。
【0040】
しかし、基材粒子が、ナイロン6又はナイロン66等、ポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミド(ナイロン12)以外のポリアミド樹脂よりなる場合、基材粒子がポリドデカンアミド樹脂よりなる場合に比べて、基材粒子を真空容器内に収容し、真空容器内が真空排気された状態で、例えば180℃程度の温度まで加熱された場合に、基材粒子の表面からガスが発生することにより、真空容器内の圧力が上昇し、スパッタすることが困難である。これは、ナイロン6又はナイロン66等の融点がナイロン12の融点よりは高いものの、ナイロン6又はナイロン66等の吸水性がナイロン12の吸水性よりも高く、例えば180℃程度の温度まで加熱された場合に水分の脱離が多いためと考えられる。一方、基材粒子2が、ポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミド(ナイロン12)よりなる場合、基材粒子2を真空容器内に収容し、真空容器内が真空排気された状態で、180℃程度の温度まで加熱された場合に、基材粒子がポリドデカンアミド樹脂以外のポリアミド樹脂よりなる場合に比べて、基材粒子2の表面からガスが発生しにくいので、真空容器内の圧力が上昇せず、安定してスパッタすることができる。
【0041】
また、基材粒子が、ナイロン6又はナイロン66等、ポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミド(ナイロン12)以外のポリアミド樹脂よりなる場合、基材粒子がポリドデカンアミド樹脂よりなる場合に比べて、基材粒子の密度(比重)が大きいため、導電粒子を異方性導電フィルム又は異方性導電接着剤に適用した場合に、重力により導電粒子が偏在すること等により、異方性導電フィルム又は異方性導電接着剤の導電性が低下するおそれがある。
【0042】
一方、基材粒子2がポリドデカンアミド樹脂よりなる場合、基材粒子2の密度(比重)が小さいため、導電粒子1を異方性導電フィルム又は異方性導電接着剤に適用した場合に、重力により導電粒子1が偏在することを防止又は抑制し、異方性導電フィルム又は異方性導電接着剤の導電性を向上させることができる。
【0043】
更に、本実施の形態の導電粒子によれば、基材粒子2がポリドデカンアミド樹脂よりなることにより、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子を低コストで容易に得ることができる。
【0044】
また、基材粒子2の表面を覆う金属層3が、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなることにより、後述する
図6を用いて説明するように、バレルスパッタリング装置を用いたバレルスパッタリング法により、導電膜としての金属層3を、基材粒子2の表面に均一に厚く形成することができる。
【0045】
好適には、基材粒子2の平均粒径は、2~20μmである。基材粒子2の平均粒径が2μm以上の場合、基材粒子2の平均粒径が2μm未満の場合に比べて、基材粒子2の平均粒径が大きいので、基材粒子2を容易に製造することができる。また、基材粒子2の平均粒径が20μm以下の場合、基材粒子2の平均粒径が20μmを超える場合に比べて、基材粒子2の平均粒径が小さいので、基材粒子2の表面に金属層3が形成されてなる導電粒子1を異方性導電フィルム又は異方性導電接着剤に適用した場合に、回路線幅が細い場合でも、電気特性に優れた平面表示装置又は駆動回路基板を容易に製造することができる。
【0046】
また、基材粒子が、ナイロン6又はナイロン66等、ポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミド(ナイロン12)以外のポリアミド樹脂よりなる場合、基材粒子がポリドデカンアミド樹脂よりなる場合に比べて、2~20μmの平均粒径を有する真球状の微粒子が容易に得られない。一方、基材粒子2が、ポリドデカンアミド樹脂よりなる場合、2~20μmの平均粒径を有する真球状の微粒子を容易に得ることができる。
【0047】
好適には、金属層3の厚さは、0.05~1.0μmである。金属層3の厚さが0.05μm以上の場合、金属層3の厚さが0.05μm未満の場合に比べて、金属層3の厚さが厚いので、基材粒子2の表面に金属層3が形成されてなる導電粒子1の導電性を向上させることができる。また、金属層3の厚さが1.0μm以下の場合、金属層3の厚さが1.0μmを超える場合に比べて、基材粒子2の表面に金属層3が形成されてなる導電粒子1の平均粒径が小さいので、基材粒子2の表面に金属層3が形成されてなる導電粒子1を異方性導電フィルム又は異方性導電接着剤に適用した場合に、回路線幅が細い場合でも、電気特性に優れた平面表示装置又は駆動回路基板を容易に製造することができる。
【0048】
好適には、金属層3において、Cuの含有量は15~55重量%であり、Tiの含有量は0.5~10重量%であり、残部はNiである。Cuの含有量が15重量%以上の場合、Cuの含有量が15重量%未満の場合に比べて、Cuの含有量が多いので、金属層3の導電性を向上させることができる。また、Cuの含有量が55重量%以下の場合、Cuの含有量が55重量%を超える場合に比べて、Cuの含有量が少ないので、金属層3の耐食性を向上させることができる。また、Tiの含有量が0.5重量%以上の場合、Tiの含有量が0.5重量%未満の場合に比べて、Tiの含有量が多いので、金属層3の密着性を向上させることができ、Tiの含有量が10重量%以下の場合、Tiの含有量が10重量%を超える場合に比べて、Tiの含有量が少ないので、金属層3の剛性を向上させることができる。
【0049】
また、金属層3は、Tiに加えて、更にCrを含有する合金よりなるものでもよい。このような場合、好適には、金属層3において、Cuの含有量は15~55重量%であり、Tiの含有量とCrの含有量との和は0.5~10重量%であり、残部はNiである。金属層3がCrを含有することにより、金属層3の耐食性を更に向上させることができる。
【0050】
本実施の形態の導電粒子によれば、基材粒子2がポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミド(ナイロン12)よりなることにより、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子2を低コストで容易に得ることができる。また、基材粒子2の表面を覆う金属層3が、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなることにより、後述する
図6を用いて説明するように、基材粒子2の表面に導電膜を均一に厚く形成することができる。
【0051】
図2は、実施の形態の導電粒子の他の例を模式的に示す断面図である。
図2に示す例では、
図1に示した例と異なり、導電粒子1aは、基材粒子2及び金属層3に加えて、基材粒子2の表面を覆い、且つ、Ni及びB(ホウ素)を含有するか又はNi及びP(リン)を含有する合金よりなる金属層4を有し、金属層3は、金属層4を介して基材粒子2の表面を覆っている。即ち、金属層4は、基材粒子2の表面上に形成され、基材粒子2の表面と金属層3との間に介在し、金属層3は、金属層4上に形成されている。
【0052】
図2に示す導電粒子1aでは、
図1に示す導電粒子1が有する効果に加えて、金属層4が、Ni及びBを含有するか又はNi及びPを含有する合金よりなることにより、基材粒子2の表面上に、導電性、耐食性及び密着性に優れた金属層4を形成することができる。また、金属層4が、Ni及びBを含有するか又はNi及びPを含有する合金よりなることにより、例えば熱処理により磁性を有する金属層4を形成することができる。
【0053】
好適には、金属層4における、B又はPの含有量は0.3~10重量%であり、残部はNiである。B又はPの含有量が0.3重量%以上の場合、B又はPの含有量が0.3重量%未満の場合に比べて、ジメチルアミンボランを含有する無電解Ni-Bめっき液又は次亜リン酸水溶液を含有する無電解Ni-Pめっき液を用いることにより金属層4を容易に形成することができる。B又はPの含有量が10重量%以下の場合、B又はPの含有量が10重量%を超える場合に比べて、金属層4の磁性を向上させることができる。これにより、本実施の形態の導電粒子を異方性導電フィルム(異方性導電シート)用の導電粒子として用いる場合において、電極端子の間で導電粒子を厚さ方向に磁場配向させることができるので、電極端子間の電気的接続を良好にすることができる。
【0054】
好適には、金属層3の厚さTH1は、金属層4の厚さTH2よりも厚い。例えば金属層4を無電解めっき法により形成し、金属層3をバレルスパッタリング法により形成する場合、バレルスパッタリング法により金属層3を形成する際の成膜速度が、無電解めっき法により金属層4を形成する際の成膜速度よりも大きいので、金属層3の厚さを、金属層4の厚さよりも容易に厚くすることができ、導電粒子の導電性を容易に向上させることができる。
【0055】
<導電粒子の製造方法>
次に、本実施の形態の導電粒子の製造方法について説明する。
図3乃至
図5は、
図1に示す導電粒子の製造工程中の断面図である。
図3は、基材粒子2を示し、
図4及び
図5は、メディア粒子5を示している。
図6は、バレルスパッタリング装置の構成を模式的に示す図である。
【0056】
図1に示す導電粒子の製造方法では、まず、
図3に示すように、ポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミド(ナイロン12)よりなる基材粒子2を用意する(ステップS1)。また、
図4に示すように、アルミナ、ジルコニア又はシリカよりなるメディア粒子5を用意する(ステップS2)。ここで、「メディア」とは、「媒体」又は「分散媒」を意味し、メディア粒子5は、基材粒子2が分散されたメディア粒子5を撹拌することにより、基材粒子2を効率良く撹拌するためのものである。
【0057】
次に、
図1に示したように、基材粒子2の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなる金属層3を、バレルスパッタリング装置を用いたバレルスパッタリング法により形成する(ステップS3)。即ち、ステップS3では、
図1に示したように、基材粒子2の表面上に、金属層3を形成する。
【0058】
図6に示すように、バレルスパッタリング装置10は、真空容器11と、真空排気部12と、駆動部13と、ターゲット14と、電力供給部15と、を有する。
【0059】
真空容器11は、基材粒子2の表面を金属層3で被覆させる被覆処理を行うためのものである。真空容器11は、水平方向に沿った中心軸CA1を中心とした円筒形状を有し、且つ、例えば直径が200mmである円筒部11aと、円筒部11aの内部に設置され、且つ、中心軸CA1に垂直な断面形状が六角形形状を有するバレル(六角型バレル)11bと、を含む。
【0060】
図6に示す断面は、中心軸CA1に垂直な断面、即ち水平方向に垂直な断面である。なお、
図6に示す例では、中心軸CA1に垂直な断面形状が六角形形状を有するバレル11bが用いられているが、これに限定されるものではなく、中心軸CA1に垂直な断面形状が六角形以外のN角形形状(Nは3以上の整数)即ち多角形形状を有するバレルが用いられることもできる。
【0061】
真空容器11は、水平方向に沿った中心軸CA1を中心として揺動可能又は回転可能に設けられている。具体的には、真空容器11に含まれるバレル11bが揺動可能又は回転可能に設けられている。
【0062】
真空排気部12は、真空容器11内を真空排気する。具体的には、真空排気部12は、ターボ分子ポンプ(TMP)16及びロータリーポンプ(RP)17を含み、円筒部11a内を真空排気する。
【0063】
真空容器11(円筒部11a)には配管18の一端が接続されており、この配管18の他端にはバルブ19の一方側が接続されている。バルブ19の他方側は配管21の一端に接続され、配管21の他端はターボ分子ポンプ(TMP)16の吸気側に接続されている。ターボ分子ポンプ16の排気側は配管22の一端に接続され、配管22の他端はバルブ23の一方側に接続されている。バルブ23の他方側は配管24の一端に接続され、配管24の他端はロータリーポンプ(RP)17に接続されている。また、配管18は配管25の一端に接続され、配管25の他端はバルブ26の一方側に接続されている。バルブ26の他方側は配管27の一端に接続され、配管27の他端は配管24に接続されている。
【0064】
駆動部13は、真空容器11を中心軸CA1を中心として揺動駆動又は回転駆動する。具体的には、駆動部13は、バレル11bを矢印のように中心軸CA1を中心として揺動駆動又は回転駆動するものであり、バレル11b内の基材粒子2を攪拌しながら被覆処理を行うためのものである。
【0065】
ターゲット14は、真空容器11内に配置され、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなる。ターゲット14におけるCuの含有量、Tiの含有量は、金属層3におけるCuの含有量、Tiの含有量と同様とすることができ、残部はNiである。ターゲット14は、バレル11b内に配置され、例えば中心軸CA1の周りの回転角度を自由に変えられるように設けられている。これにより、バレル11bを回転させながら被覆処理を行う時、ターゲット14を、被処理粒子としての基材粒子2及びメディア粒子5と対向するように、基材粒子2及びメディア粒子5が配置されている方向に向けることができ、スパッタ効率を向上させ、成膜速度を向上させることが可能となる。なお、
図5では、便宜上、基材粒子2及びメディア粒子5を同一の粒径を有する被処理粒子として図示している。
【0066】
電力供給部15は、ターゲット14に高周波電力を供給する。具体的には、電力供給部15は、ターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に高周波電力を供給する。電力供給部15は、整合器(図示は省略)に接続され、整合器は、ターゲット保持部(図示は省略)を介して、ターゲット14に接続されている。即ち、バレルスパッタリング装置10は、RFスパッタリング装置である。なお、バレルスパッタリング装置10は、直流スパッタリング装置であってもよく、このような場合、電力供給部15は、高周波電力に代えて直流電力をターゲット14に供給する。
【0067】
また、バレルスパッタリング装置10は、真空容器11(円筒部11a)内を加熱するためのヒータ(加熱部)28を有する。また、バレルスパッタリング装置10は、真空容器11(円筒部11a)内の圧力を測定する圧力計29を有する。また、バレルスパッタリング装置10は、真空容器11(円筒部11a)内にバルブ31を介して窒素ガスを供給する窒素ガス供給機構32と、真空容器11(円筒部11a)内にバルブ33を介してアルゴンガスを供給するアルゴンガス供給機構34と、を有する。
【0068】
次に、バレルスパッタリング装置10を用いたバレルスパッタリング法により、基材粒子2の表面上に金属層3を形成する工程(ステップS3)について説明する。
【0069】
このステップS3では、まず、基材粒子2及びメディア粒子5を、真空容器11(バレル11b)内に収容する(ステップS11)。このステップS11では、ステップS1にて用意した基材粒子2、及び、ステップS2にて用意した、アルミナ、ジルコニア又はシリカよりなるメディア粒子5を、真空容器11(バレル11b)内に収容する。
【0070】
このステップS3では、次に、真空容器11(円筒部11a)内を真空排気部12により真空排気する(ステップS12)。このステップS12では、具体的には、真空排気部12に含まれるターボ分子ポンプ16を用いて円筒部11a内に高真空状態を作り、ヒータ28で六角型バレルを例えば80~100℃の温度まで加熱しながら、円筒部11a内を例えば9.5×10-4~3.7×10-3Paの圧力(到達圧力)に減圧する。
【0071】
このステップS3では、次に、真空容器11(円筒部11a)内が真空排気部12により真空排気された状態で、真空容器11(バレル11b)を駆動部13により揺動駆動又は回転駆動し、電力供給部15によりターゲット14に高周波電力を供給し、高周波電力が供給されているターゲット14がスパッタされる。これにより、
図1に示したように、真空容器11(バレル11b)内に収容されている基材粒子2の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなる金属層3を形成し、
図5に示すように、真空容器11(バレル11b)内に収容されているメディア粒子5の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなる金属層6を形成する(ステップS13)。
【0072】
このステップS13では、具体的には、真空容器11(円筒部11a)内が真空排気部12により真空排気された状態で、アルゴンガス供給機構34又は窒素ガス供給機構32によりアルゴン(Ar)又は窒素(N
2)などの不活性ガスを真空容器11(円筒部11a)内に供給する。この際の真空容器11(円筒部11a)内の圧力は0.2Pa程度である。そして、真空容器11(バレル11b)を駆動部13により例えば30分間、20rpmの回転速度で回転駆動することで、真空容器11(バレル11b)内の基材粒子2及びメディア粒子5を揺動又は回転させ、攪拌する。その際、ターゲット14は基材粒子2及びメディア粒子5と対向するように、基材粒子2及びメディア粒子5が配置されている方向に向けられる。また、電力供給部15によりターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に例えば180~220Wの高周波電力を印加することで、
図1に示したように、基材粒子2の表面に金属層3を形成し、
図5に示すように、メディア粒子5の表面に金属層6を形成する。金属層6におけるCuの含有量、Tiの含有量は、金属層3及びターゲット14におけるCuの含有量、Tiの含有量と同様とすることができ、残部はNiである。
【0073】
このステップS3では、次に、基材粒子2及びメディア粒子5を真空容器11(バレル11b)から取り出した後、基材粒子2をメディア粒子5から篩分ける(ステップS14)。これにより、
図1に示したように、基材粒子2と、基材粒子2の表面上に形成された金属層3と、を有する導電粒子1を得ることができる。
【0074】
本実施の形態の導電粒子の製造方法によれば、バレル11bを揺動又は回転させることで被処理粒子としての基材粒子2及びメディア粒子5を攪拌することができ、更にバレル11bの中心軸CA1に垂直な断面形状を六角形形状とすることにより、基材粒子2及びメディア粒子5を重力により定期的に落下させることができる。このため、攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、基材粒子2の表面を金属層3で被覆し、メディア粒子5の表面を金属層6で被覆する被覆処理を行う際に問題となる、水分又は静電気力による基材粒子2及びメディア粒子5の凝集を防止又は抑制することができる。つまり、揺動又は回転による攪拌と、凝集した基材粒子2及びメディア粒子5の粉砕を同時且つ効果的に行うことができる。従って、被処理粒子としての基材粒子2及びメディア粒子5の粒径が非常に小さい場合でも、基材粒子2の表面を金属層3で均一に被覆し、メディア粒子5の表面を金属層6で均一に被覆することが可能となる。
【0075】
また、後述する実施例1及び実施例2並びに比較例1及び比較例2を用いて説明するように、メディア粒子5がアルミナ、ジルコニア又はシリカよりなる場合、メディア粒子5が例えばポリカーボネート樹脂又はフェノール樹脂等よりなる場合に比べて、メディア粒子5の表面からガスが発生しないので、真空容器11(円筒部11a)内を3.7×10-3Pa以下の圧力(到達圧力)まで減圧することができ、スパッタ中の圧力が3Pa以下であるので、基材粒子2の表面に金属層3をバレルスパッタリング法により容易に形成することができる。
【0076】
好適には、基材粒子2の平均粒径は、メディア粒子5の平均粒径よりも小さい。これにより、メディア粒子5の平均粒径が、基材粒子2の平均粒径よりも大きいので、メディア粒子5同士の凝集を防止又は抑制することができ、且つ、基材粒子2をメディア粒子5から容易に篩分けることができる。
【0077】
なお、上記した導電粒子の製造方法の説明では、ステップS3において、基材粒子2とメディア粒子5とを真空容器11(バレル11b)内に収容し、金属層3及び金属層6をバレルスパッタリング法により形成する例を例示して説明した。しかしながら、真空容器11(バレル11b)内に収容する基材粒子2の重量又は平均粒径によっては、メディア粒子5を収容せず、基材粒子2のみを収容して、金属層3のみをバレルスパッタリング法により形成することもできる。
【0078】
図7は、
図2に示す導電粒子の製造工程中の断面図である。
図7は、基材粒子2を示している。
【0079】
図2に示す導電粒子の製造方法では、
図1に示す導電粒子の製造工程におけるステップS1の工程と同様の工程を行って、
図3に示したように、ポリドデカンアミド樹脂即ちポリドデカンアミド(ナイロン12)よりなる基材粒子を用意した後(ステップS21)、
図7に示すように、基材粒子2の表面を覆い、且つ、Ni及びBを含有するか又はNi及びPを含有する合金よりなる金属層4を、無電解めっき法により形成する(ステップS22)。即ち、ステップS22では、
図7に示すように、基材粒子2の表面上に、金属層4を形成する。
【0080】
具体的には、基材粒子2に、例えばPd触媒を含有する触媒溶液を接触させることにより、基材粒子2の表面にPd触媒を担持させる処理を行う。その後、ジメチルアミンボランを含有する無電解Ni-Bめっき液又は次亜リン酸水溶液を含有する無電解Ni-Pめっき液を加温、撹拌しながら、Pd触媒が担持された基材粒子2を浸漬することにより、基材粒子2の表面上に、N-B合金又はN-P合金よりなる金属層4を、無電解めっき法により形成する。
【0081】
また、
図1に示す導電粒子の製造工程におけるステップS2の工程と同様の工程を行って、
図4に示したように、アルミナ、ジルコニア又はシリカよりなるメディア粒子5を用意する(ステップS23)。
【0082】
次に、
図2に示したように、金属層4を介して基材粒子2の表面を覆い、且つ、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなる金属層3を、バレルスパッタリング装置を用いたバレルスパッタリング法により形成する(ステップS24)。即ち、ステップS24では、
図2に示したように、金属層4上に、金属層3を形成する。
【0083】
このステップS24の工程、即ちバレルスパッタリング装置を用いたバレルスパッタリング法により基材粒子2の表面に金属層3を形成する工程については、
図1に示す導電粒子の製造工程において、
図6を用いて説明したステップS3の工程と同様にすることができる。即ち、ステップS24では、
図1に示す導電粒子の製造工程におけるステップS11乃至ステップS14と同様の工程であるステップS31乃至ステップS34の工程を行う。
【0084】
具体的には、ステップS31では、表面に金属層4が形成された基材粒子2及びメディア粒子5を、真空容器11(バレル11b)内に収容し、ステップS32では、真空容器11(円筒部11a)内を真空排気部12により真空排気する。また、ステップS33では、真空容器11(円筒部11a)内が真空排気部12により真空排気された状態で、真空容器11(バレル11b)を駆動部13により揺動駆動又は回転駆動し、電力供給部15によりターゲット14に電力を供給し、電力が供給されているターゲット14がスパッタされる。これにより、
図2に示したように、真空容器11(バレル11b)内に収容されている基材粒子2の表面を金属層4を介して覆う金属層3を形成し、
図5に示したように、真空容器11(バレル11b)内に収容されているメディア粒子5の表面を覆う金属層6を形成する。また、ステップS34では、基材粒子2をメディア粒子5から篩分ける。これにより、
図2に示したように、基材粒子2と、基材粒子2の表面上に形成された金属層4と、金属層4上に形成された金属層3と、を有する導電粒子1aを得ることができる。
【実施例0085】
以下、実施例に基づいて本実施の形態を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)
実施例1の導電粒子として、実施の形態で
図1を用いて説明した導電粒子1を、以下の作製条件で作製した。
【0087】
また、実施例1の導電粒子の作製条件の一部を、後述する実施例2、比較例1乃至比較例4の導電粒子の作製条件の一部と合わせて、以下の表1に示す。
【0088】
【0089】
表1に示すように、基材粒子2として、ポリドデカンアミド樹脂即ちナイロン12よりなる基材粒子(商品名:SP-500、東レ株式会社製)を用意した。基材粒子2の形状は真球状であり、基材粒子2の平均粒径は5μmであった。
【0090】
また、メディア粒子5として、アルミナよりなるメディア粒子を用意した。メディア粒子5の形状は真球状であり、メディア粒子5の平均粒径は100μmであった。
【0091】
次に、15gの基材粒子2、及び、75gのメディア粒子5を、バレルスパッタリング装置10の真空容器11(バレル11b)内に収容した。真空容器11(バレル11b)内には、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなるターゲット14が配置されていた。ターゲット14として、Niの含有量が62重量%であり、Cuの含有量が35重量%であり、Tiの含有量が3重量%であるものを用いた。
【0092】
次に、真空容器11(円筒部11a)の内部を真空排気部12により真空排気した。ヒータ28で真空容器11(円筒部11a)を90℃の温度に15分間加熱しながら、真空容器11(円筒部11a)内を3.7×10-3Paの圧力(到達圧力)まで減圧した。
【0093】
次に、真空容器11(円筒部11a)内が真空排気部12により真空排気された状態で、アルゴンガス供給機構34によりArガスを24.0sccmの流量で真空容器11(円筒部11a)内に供給し、真空容器11(円筒部11a)内の圧力を0.2Paとした。また、真空容器11(バレル11b)を駆動部13により揺動駆動(バレルスイング若しくはアームスイング)することで、真空容器11(バレル11b)内の基材粒子2及びメディア粒子5を攪拌した。そして、電力供給部15によりターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に200Wの高周波電力を3時間供給することで、バレルスパッタリング法により基材粒子2の表面に0.1μm(目標値)の厚さを有する金属層3を形成し、メディア粒子5の表面に0.1μm(目標値)の厚さを有する金属層6を形成した。
【0094】
バレルスパッタリング法により3時間金属層3を形成している間、最初の1.5時間で真空容器11(円筒部11a)内の圧力は0.2Paから1.5Paに上昇したが、その後更には圧力は上昇しなかった。また、高周波電力が供給されているターゲット14がスパッタされている間の真空容器11(円筒部11a)内の温度は、ベーキングヒーターにより加熱された90℃よりも10℃程度高い100℃程度以上であり、且つ、後述する比較例4にて160℃の融点を有するアクリル樹脂よりなる基材粒子2が溶融したため160℃よりも20℃程度高い180℃程度以下である、と考えられることから、100~180℃と考えられる。
【0095】
次に、325番(粒径46μmに相当)のメッシュを用いて、基材粒子2をメディア粒子5から篩分けることにより、基材粒子2と金属層3とを有する実施例1の導電粒子1が得られた。
【0096】
図8は、実施例1の導電粒子を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)により観察した観察像である。
図8に示すように、真球状の形状を有する5μm程度の平均粒径を有する導電粒子1が観察されることから、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子2の表面に金属層3が均一に形成されたことが分かる。また、肉眼で観察した場合でも、実施例1の導電粒子1の表面は、黒色を帯びており、基材粒子2の表面に金属層3が形成されたことが分かる。また、ターゲット14の比抵抗が5.9×10
-5Ωcmであったことから、金属層3の比抵抗は、6~10×10
-5Ωcmであり、導電性を有すると考えられる。
【0097】
また、詳細な説明は省略するものの、ターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に200Wを超える高周波電力を3時間供給するか、又は、ターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に200Wの高周波電力を3時間を超える時間の間供給することにより、基材粒子2の表面に0.1μmを超える厚さを有する金属層3を容易に形成できることが確認された。そのため、本実施の形態の導電粒子によれば、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子2の表面に導電膜を均一に厚く形成できることが明らかになった。
【0098】
また、詳細な説明は省略するものの、基材粒子2として、ナイロン12よりなる基材粒子に代えて、ナイロン6及びナイロン66等、ポリアミド樹脂のうちポリドデカンアミド樹脂以外の樹脂よりなる基材粒子を用いたこと以外は、実施例1の導電粒子の作製条件と同様の作製条件で、導電粒子を作製した。しかしながら、真空容器11(円筒部11a)内を3.2×10-2Paの圧力(到達圧力)までしか減圧できず、電力供給部15による高周波電力の供給開始とともに3Paを超える圧力まで大幅な圧力上昇が観察され、正常なスパッタが困難と判断し、高周波電力の供給を停止した。
【0099】
(実施例2)
次に、実施例2の導電粒子として、実施の形態で
図2を用いて説明した導電粒子1aを、以下の作製条件で作製した。
【0100】
実施例1と同様に、表1に示すように、基材粒子2として、ポリドデカンアミド即ちナイロン12よりなる基材粒子(商品名:SP-500、東レ株式会社製)を用意した。基材粒子2の形状は真球状であり、基材粒子2の平均粒径は5μmであった。
【0101】
また、実施例1と同様に、メディア粒子5として、アルミナよりなるメディア粒子を用意した。メディア粒子5の形状は真球状であり、メディア粒子5の平均粒径は100μmであった。
【0102】
次に、実施例1とは異なり、基材粒子2の表面を覆い、且つ、Ni及びBを含有する合金よりなる金属層4を、無電解めっき法により形成した。具体的には、基材粒子2に、Pd触媒を含有する触媒溶液を接触させることにより、基材粒子2の表面にPd触媒を担持させる処理を行った。その後、ジメチルアミンボランを含有する無電解Ni-Bめっき液を加温、撹拌しながら、Pd触媒が担持された基材粒子2を浸漬することにより、Ni:B=97:3の重量組成比(重量比)を有するN-B合金よりなる金属層4を無電解めっき法により形成した。即ち、金属層4において、Bの含有量は3重量%であった。表面に金属層4が形成された基材粒子2を肉眼で観察すると、基材粒子2の表面は、黒色を帯びており、金属層4が形成されたことが分かった。
【0103】
なお、次の工程には用いていないが、ジメチルアミンボランを含有する無電解Ni-Bめっき液に代えて、次亜リン酸水溶液を含有する無電解Ni-Pめっき液を用いることにより、Ni:P=95:5の重量組成比(重量比)を有するN-P合金よりなる金属層4を無電解めっき法により形成した。即ち、金属層4において、Pの含有量は5重量%であった。表面に金属層4が形成された基材粒子2を肉眼で観察すると、基材粒子2の表面は、黒色を帯びており、金属層4が形成されたことが分かった。
【0104】
次に、表面にN-B合金よりなる金属層4が形成された6.24gの基材粒子2、及び、50gのメディア粒子を、バレルスパッタリング装置10の真空容器11(バレル11b)内に収容した。真空容器11(バレル11b)内には、Ni、Cu及びTiを含有する合金よりなるターゲット14が配置されていた。ターゲット14として、実施例1と同様に、Niの含有量が62重量%であり、Cuの含有量が35重量%であり、Tiの含有量が3重量%であるものを用いた。
【0105】
次に、真空容器11(円筒部11a)の内部を真空排気部12により真空排気した。ヒータ28で真空容器11(円筒部11a)を90℃の温度に15分間加熱しながら、真空容器11(円筒部11a)内を9.5×10-4Paの圧力(到達圧力)まで減圧した。
【0106】
次に、真空容器11(円筒部11a)内が真空排気部12により真空排気された状態で、アルゴンガス供給機構34によりArガスを24.0sccmの流量で真空容器11(円筒部11a)内に供給し、真空容器11(円筒部11a)内の圧力を0.2Paとした。また、真空容器11(バレル11b)を駆動部13により揺動駆動(バレルスイング若しくはアームスイング)することで、真空容器11(バレル11b)内の基材粒子2及びメディア粒子5を攪拌した。そして、電力供給部15によりターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に200Wの高周波電力を3時間供給することで、バレルスパッタリング法により基材粒子2の表面に金属層4を介して0.1μm(目標値)の厚さを有する金属層3を形成し、メディア粒子5の表面に0.1μm(目標値)の厚さを有する金属層6を形成した。
【0107】
バレルスパッタリング法により3時間金属層3を形成している間、真空容器11(円筒部11a)内の圧力は3Paまで徐々に上昇した。また、高周波電力が供給されているターゲット14がスパッタされている間の真空容器11(円筒部11a)内の温度は、実施例1と同様に、100~180℃と考えられる。
【0108】
次に、325番のメッシュを用いて、基材粒子2をメディア粒子から篩分けることにより、基材粒子2と金属層4と金属層3とを有する実施例2の導電粒子1aが得られた。
【0109】
図9は、実施例2の導電粒子をSEMにより観察した観察像である。
図9に示すように、真球状の形状を有する5μm程度の平均粒径を有する導電粒子1aが観察されることから、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子2の表面に金属層4を介して金属層3が均一に形成されたことが分かる。また、肉眼で観察した場合でも、実施例2の導電粒子1aの表面は、黒色を帯びており、基材粒子2の表面に金属層4を介して金属層3が形成されたことが分かる。また、ターゲット14の比抵抗が5.9×10
-5Ωcmであったことから、金属層3の比抵抗は、6~10×10
-5Ωcmであり、導電性を有すると考えられる。
【0110】
また、詳細な説明は省略するものの、ターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に200Wを超える高周波電力を3時間供給するか、又は、ターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に200Wの高周波電力を3時間を超える時間の間供給することにより、基材粒子2の表面に金属層4を介して0.1μmを超える厚さを有する金属層3を形成できることが確認された。そのため、本実施の形態の導電粒子によれば、球状形状を有し且つ絶縁材料よりなる基材粒子2の表面に導電膜を均一に厚く形成できることが明らかになった。
【0111】
また、詳細な説明は省略するものの、基材粒子2として、ナイロン12よりなる基材粒子に代えて、ナイロン6及びナイロン66等、ポリアミド樹脂のうちポリドデカンアミド樹脂以外の樹脂よりなる基材粒子を用いたこと以外は、実施例2の導電粒子の作製条件と同様の作製条件で、導電粒子を作製した。しかしながら、真空容器11(円筒部11a)内を3.2×10-2Paの圧力(到達圧力)までしか減圧できず、電力供給部15による高周波電力の供給開始とともに3Paを超える圧力まで大幅な圧力上昇が観察され、正常なスパッタが困難と判断し、高周波電力の供給を停止した。
【0112】
(比較例1)
次に、比較例1の導電粒子を作製する試験を行った。
【0113】
表1に示すように、比較例1の導電粒子を作製する試験では、基材粒子として、ポリドデカンアミド即ちナイロン12よりなる基材粒子(商品名:SP-500、東レ株式会社製)を用意した。基材粒子の形状は真球状であり、基材粒子の平均粒径は5μmであった。
【0114】
一方、比較例1では、メディア粒子として、実施例1におけるアルミナに代えて、ポリカーボネート樹脂よりなるメディア粒子を用意した。メディア粒子の形状は真球状であり、基材粒子の平均粒径は40μmであった。
【0115】
次に、20gの基材粒子、及び、50gのメディア粒子を、バレルスパッタリング装置10の真空容器11(バレル11b)内に収容した。真空容器11(バレル11b)内には、実施例1におけるターゲット14の組成と同様の組成を有するターゲット14が配置されていた。次に、真空容器11(円筒部11a)の内部を真空排気部12により真空排気した。ヒータ28で真空容器11(円筒部11a)を90℃の温度に15分間加熱しながら、真空容器11(円筒部11a)内を2.2×10-3Paの圧力(到達圧力)まで減圧した。
【0116】
次に、真空容器11(円筒部11a)内が真空排気部12により真空排気された状態で、アルゴンガス供給機構34によりArガスを24.0sccmの流量で真空容器11(円筒部11a)内に供給し、真空容器11(円筒部11a)内の圧力を0.2Paとした。また、真空容器11(バレル11b)を駆動部13により揺動駆動(バレルスイング若しくはアームスイング)することで、真空容器11(バレル11b)内の基材粒子及びメディア粒子を攪拌した。そして、電力供給部15によりターゲット14と真空容器11(円筒部11a)との間に200Wの高周波電力の供給を開始したところ、供給開始とともに3Paを超える圧力まで周期的な圧力上昇が観察され、正常なスパッタが困難と判断し、高周波電力の供給を停止した。
【0117】
また、詳細な説明は省略するものの、実施例1及び実施例2において、バレルスパッタリング装置10の真空容器11(バレル11b)内にメディア粒子5を収容しない場合、基材粒子2の撹拌が十分でなく、一部の基材粒子2の表面には金属層3を均一に形成することはできるものの、全ての基材粒子2の表面に金属層3を均一に形成することができなかった。
【0118】
また、詳細な説明は省略するものの、実施例1及び実施例2において、メディア粒子5として、アルミナよりなるメディア粒子に代えて、ジルコニア、シリカよりなるメディア粒子を用いた場合にも、実施例1及び実施例2と同様の結果が得られた。即ち、メディア粒子5がアルミナ、ジルコニア又はシリカよりなる場合、メディア粒子5が例えばポリカーボネートよりなる場合及び後述する比較例2を用いて説明するようにフェノール樹脂よりなる場合に比べて、メディア粒子5の表面からガスが発生しない。そのため、真空容器11(円筒部11a)内を3.7×10-3Pa以下の圧力(到達圧力)まで減圧することができ、スパッタ中の圧力が3Pa以下であるので、基材粒子2の表面に金属層3をバレルスパッタリング法により容易に形成することができる。
【0119】
そのため、基材粒子2の表面に金属層3を均一に形成するためには、バレルスパッタリング装置10を用いたバレルスパッタリング法により金属層3を形成し、且つ、メディア粒子5として、アルミナ、ジルコニア又はシリカよりなるメディア粒子を用いることが好ましいことが明らかになった。
【0120】
(比較例2及び比較例3)
次に、比較例2及び比較例3の導電粒子を作製する試験を行った。
【0121】
まず、表1に示すように、比較例2の導電粒子を作製する試験では、基材粒子として、ポリドデカンアミド即ちナイロン12よりなる基材粒子に代えて、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂よりなる基材粒子を用意した。基材粒子の形状は真球状であり、基材粒子2の平均粒径は100μmであった。
【0122】
また、比較例2では、メディア粒子として、実施例1におけるアルミナよりなるメディア粒子に代えて、フェノール樹脂よりなるメディア粒子を用意した。メディア粒子の形状は真球状であり、メディア粒子の平均粒径は5μmであった。
【0123】
次に、50gの基材粒子、及び、50gのメディア粒子を、バレルスパッタリング装置10の真空容器11(バレル11b)内に収容した。真空容器11(バレル11b)内には、実施例1におけるターゲット14の組成と同様の組成を有するターゲット14が配置されていた。次に、真空容器11(円筒部11a)の内部を真空排気部12により真空排気した。ヒータ28で真空容器11(円筒部11a)を90℃の温度に15分間加熱しながら、真空容器11(円筒部11a)内を減圧した。しかしながら、比較例2では、真空容器11(円筒部11a)内を3.2×10-2Paの圧力(到達圧力)までしか減圧できなかった。
【0124】
次に、真空容器11(円筒部11a)内が真空排気部12により真空排気された状態で、アルゴンガス供給機構34によりArガスを24.0sccmの流量で真空容器11(円筒部11a)内に供給し、真空容器11(円筒部11a)内の圧力を0.2Paとした。また、真空容器11(バレル11b)を駆動部13により駆動することで、真空容器11(バレル11b)内の基材粒子及びメディア粒子を攪拌した。そして、電力供給部15によりターゲット14と真空容器11との間に200Wの高周波電力の供給を開始したところ、供給開始とともに3Paを超える圧力まで大幅な圧力上昇が観察され、正常なスパッタが困難と判断し、高周波電力の供給を停止した。
【0125】
また、比較例3の導電粒子を作製する試験では、メディア粒子を用いず、50gの基材粒子のみを、バレルスパッタリング装置10の真空容器11内に収容したこと以外は、比較例2の導電粒子を作製する試験と同様の条件で、比較例3の導電粒子を作製する試験を行った。しかしながら、比較例2と同様に、比較例3でも、真空容器11(円筒部11a)内を3.2×10-2Paの圧力(到達圧力)までしか減圧できず、電力供給部15による高周波電力の供給開始とともに3Paを超える圧力まで大幅な圧力上昇が観察され、正常なスパッタが困難と判断し、高周波電力の供給を停止した。
【0126】
また、詳細な説明は省略するものの、比較例2において、基材粒子として、ポリドデカンアミド即ちナイロン12よりなる基材粒子に代えて、ポリドデカンアミド樹脂即ちナイロン12以外のポリアミド樹脂よりなる基材粒子を用いた場合にも、比較例2と同様の結果が得られた。
【0127】
そのため、基材粒子2の表面に金属層3を均一に厚く形成するためには、バレルスパッタリング装置を用いたバレルスパッタリング法により金属層3を形成し、且つ、基材粒子2として、ポリドデカンアミド樹脂即ちナイロン12よりなる基材粒子2を用いることが好ましいことが明らかになった。
【0128】
上記した実施例1及び実施例2並びに比較例1乃至比較例3によれば、ステップS12又はステップS32において、真空容器11(円筒部11a)内を真空排気部12により真空排気することにより、真空容器11(円筒部11a)内の圧力を9.5×10-4~3.7×10-3Paの圧力(到達圧力)に減圧する場合に、基材粒子2の表面に金属層3をバレルスパッタリング法により均一に厚く形成できることが明らかになった。また、ステップS13又はステップS33において、電力供給部15によりターゲット14に180~220Wの高周波電力を供給し、高周波電力が供給されているターゲット14がスパッタされることにより、金属層3を形成し、金属層6を形成する場合に、基材粒子2の表面に金属層3をバレルスパッタリング法により均一に厚く形成できることが明らかになった。また、ステップS13又はステップS33において、高周波電力が供給されているターゲット14がスパッタされている間の真空容器11(円筒部11a)内の圧力が1.5~3Paである場合に、基材粒子2の表面に金属層3をバレルスパッタリング法により均一に厚く形成できることが明らかになった。
【0129】
また、上記した実施例1及び実施例2並びに比較例1乃至比較例3によれば、高周波電力が供給されているターゲット14がスパッタされている間の基材粒子2の温度が100~180℃である場合に、基材粒子2の表面に金属層3をバレルスパッタリング法により均一に厚く形成できることが明らかになった。
【0130】
また、上記した実施例1及び実施例2並びに比較例1乃至比較例3によれば、本実施の形態の導電粒子の製造方法により作製された導電粒子1又は1aを真空容器11(円筒部11a)内に収容し、真空容器11(円筒部11a)内を真空排気部12により真空排気することにより、真空容器11(円筒部11a)内の圧力を9.5×10-4~3.7×10-3Paの圧力に減圧した後、真空容器11(円筒部11a)内が真空排気部12により真空排気された状態で、導電粒子1又は1aをヒータ(加熱部)28により100~180℃の温度に加熱したとき、導電粒子1又は1aが加熱されている間の真空容器11(円筒部11a)内の圧力は、1.5~3Paであり、このような場合に、導電粒子1又は1aが、基材粒子2の表面に金属層3をバレルスパッタリング法により均一に厚く形成されたものであると確認できることが明らかになった。
【0131】
(比較例4)
次に、比較例4の導電粒子を作製する試験を行った。
【0132】
まず、表1に示すように、比較例4の導電粒子を製造する試験では、基材粒子として、ポリドデカンアミド即ちナイロン12よりなる基材粒子に代えて、アクリル樹脂よりなる基材粒子を用意した。基材粒子の形状は真球状であり、基材粒子の平均粒径は5μmであった。
【0133】
また、比較例4の導電粒子を作製する試験では、メディア粒子を用いず、50gの基材粒子のみを、バレルスパッタリング装置10の真空容器11(バレル11b)内に収容したこと以外は、比較例2の導電粒子の作製条件と同様の作製条件で、比較例4の導電粒子を作製する試験を行った。
【0134】
しかしながら、比較例4でも、比較例2と同様に、真空容器11(円筒部11a)内を3.2×10-2Paの圧力(到達圧力)までしか減圧できず、電力供給部15による高周波電力の供給開始とともに3Paを超える圧力まで大幅な圧力上昇が観察され、正常なスパッタが困難と判断し、高周波電力の供給を停止した。また、比較例4の導電粒子を作製する試験では、基材粒子が溶融した。
【0135】
そのため、高周波電力が供給されているターゲット14がスパッタされている間の真空容器11(円筒部11a)内の温度は、160℃の融点を有するアクリル樹脂よりなる基材粒子2を用いた場合に基材粒子2が溶融したため160℃よりも20℃程度高い180℃程度以下である、と考えられる。
【0136】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0137】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0138】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。