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特開2024-125922熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125922
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20240911BHJP
   C08L 51/08 20060101ALI20240911BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C08F265/06
C08L51/08
C08L67/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034061
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】593227925
【氏名又は名称】カネカ ベルギー ナムローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】KANEKA BELGIUM N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジャック エシュリマン
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー サネン
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲朗
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BN122
4J002CF001
4J002CF031
4J002CF041
4J002CF051
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF081
4J002GA00
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J026AA45
4J026BA27
4J026BA30
4J026BB02
4J026BB03
4J026BB04
4J026BB06
4J026DA03
4J026DA07
4J026DB03
4J026DB08
4J026DB13
4J026FA03
4J026FA04
4J026GA01
4J026GA09
(57)【要約】
【課題】熱可塑性ポリエステル樹脂に対して配合されることにより熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度を向上させ得る、重合体粒子からなる改質剤を提供すること。
【解決手段】重合体粒子からなる、熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤であって、重合体粒子は、特定の構成を有する第一コア層、第二コア層、第一シェル層および第二シェル層を含む、熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体粒子からなる、熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤であって、
前記重合体粒子は、第一コア層、前記第一コア層の外側に形成された第二コア層、前記第二コア層の外側に形成された第一シェル層、および前記第一シェル層の外側に形成された第二シェル層、を含むコアシェル構造を有し、
前記第一コア層は、炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単位、及び、多官能性単量体単位を含む架橋重合体Cを含み、
前記第二コア層は、アクリル酸エステル単位、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位、及び、多官能性単量体単位を含む架橋重合体Cを含み、
前記第一シェル層は、該第一シェル層100重量%中、アクリル酸エステル単位を60重量%~100重量%含み、
前記第二シェル層は、該第二シェル層100重量%中、メタクリル酸エステル単位を60重量%~100重量%含む、熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
【請求項2】
前記第一シェル層は、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
【請求項3】
前記重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、1.0×10個/1粒子~8.0×10個/1粒子である、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
【請求項4】
前記重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、2.5×10個/1粒子~4.5×10個/1粒子である、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
【請求項5】
前記重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、5.0×10個/1粒子~9.0×10個/1粒子である、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
【請求項6】
前記第二シェル層は、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まない、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
【請求項7】
前記第一シェル層及び/又は第二シェル層は、多官能性単量体単位を含まない、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
【請求項8】
前記重合体粒子における前記第一コア層、前記第二コア層、前記第一シェル層および前記第二シェル層の含有割合は、該重合体粒子100重量%中、それぞれ、60重量%~90重量%、2重量%~30重量%、2重量%~15重量%および3重量%~15重量%である、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
【請求項9】
熱可塑性ポリエステル樹脂と、請求項1~8の何れか1項に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤とを含有し、
前記熱可塑性ポリエステル樹脂と前記熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤との合計100重量%中、前記熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤を2重量%~40重量%含む、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤、及び、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改善する技術として、ゴム質からなるコアをシェルで被覆したコアシェル型ポリマー粒子を熱可塑性樹脂に配合する方法が知られている。
【0003】
熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂である場合、一般にポリエステル樹脂とコアシェル型ポリマー粒子とは相溶性が低いため、ポリエステル樹脂中でコアシェル型ポリマー粒子が十分に分散しない場合がある。その結果、ポリエステル樹脂において、コアシェル型ポリマー粒子の配合による衝撃強度の向上が必ずしも十分ではなかった。
【0004】
従来、コアシェル型ポリマー粒子として特許文献1の技術が知られており、ポリエステル樹脂に対して配合されるコアシェル型ポリマー粒子として特許文献2および3の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-191614号公報特開2021-155520号公報
【特許文献2】国際公開特許公報WO2013/157569号
【特許文献3】特開2021-155520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような従来技術は、従来技術の開発当時の技術水準における一般的なコアシェル型ポリマー粒子からすれば、改善されたものであった。しかしながら、市場におけるポリエステル樹脂の成形体に対する耐衝撃性の改良効果に関する関心は高い。上述のような従来技術は、ポリエステル樹脂の成形体に対する耐衝撃性の改良効果の観点において、さらなる改善の余地があった。
【0007】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、熱可塑性ポリエステル樹脂に対して配合されることにより熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度を向上させ得る、新規の重合体粒子からなる改質剤、及び、該改質剤を含む新規の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、本発明者らは、特定の構成単位の組成を有するコア層とシェル層とを有する重合体粒子であれば、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
〔1〕重合体粒子からなる、熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤であって、前記重合体粒子は、第一コア層、前記第一コア層の外側に形成された第二コア層、前記第二コア層の外側に形成された第一シェル層、および前記第一シェル層の外側に形成された第二シェル層、を含むコアシェル構造を有し、前記第一コア層は、炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単位、及び、多官能性単量体単位を含む架橋重合体Cを含み、前記第二コア層は、アクリル酸エステル単位、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位、及び、多官能性単量体単位を含む架橋重合体Cを含み、前記第一シェル層は、該第一シェル層100重量%中、アクリル酸エステル単位を60重量%~100重量%含み、前記第二シェル層は、該第二シェル層100重量%中、メタクリル酸エステル単位を60重量%~100重量%含む、熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
〔2〕前記第一シェル層は、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位をさらに含む、〔1〕に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
〔3〕前記重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、1.0×10個/1粒子~8.0×10個/1粒子である、〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
〔4〕前記重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、2.5×10個/1粒子~4.5×10個/1粒子である、〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
〔5〕前記重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、5.0×10個/1粒子~9.0×10個/1粒子である、〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
〔6〕前記第二シェル層は、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まない、〔1〕~〔5〕の何れか1つに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
〔7〕前記第一シェル層及び/又は第二シェル層は、多官能性単量体単位を含まない、〔1〕~〔6〕の何れか1つに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
〔8〕前記重合体粒子における前記第一コア層、前記第二コア層、前記第一シェル層および前記第二シェル層の含有割合は、該重合体粒子100重量%中、それぞれ、60重量%~90重量%、2重量%~30重量%、2重量%~15重量%および3重量%~15重量%である、〔1〕~〔7〕の何れか1つに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤。
〔9〕熱可塑性ポリエステル樹脂と、〔1〕~〔8〕の何れか1つに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤とを含有し、前記熱可塑性ポリエステル樹脂と前記熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤との合計100重量%中、前記熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤を2重量%~40重量%含む、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
〔10〕〔9〕に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、熱可塑性ポリエステル樹脂に対して配合されることにより熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度を向上させ得る、新規の重合体粒子からなる改質剤、及び、該改質剤を含む新規の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0011】
本明細書において、「X単量体に由来する構成単位」を「X単量体単位」または「X単位」と称する場合がある。
【0012】
〔熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤〕
本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤は、グラフト共重合体である重合体粒子から構成される。本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤は、重合体粒子を含む、ともいえる。該重合体粒子は、少なくとも、第一コア層、該第一コア層の外側に形成された第二コア層、該第二コア層の外側に形成された第一シェル層、および該第一シェル層の外側に形成された第二シェル層、を含むコアシェル構造を有する。前記第一コア層は、炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単位、及び、多官能性単量体単位を含む架橋重合体Cを含む。前記第二コア層は、アクリル酸エステル単位、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位、及び、多官能性単量体単位を含む架橋重合体Cを含む。前記第一シェル層は、該第一シェル層100重量%中、アクリル酸エステル単位を60重量%~100重量%含む。前記第二シェル層は、該第二シェル層100重量%中、メタクリル酸エステル単位を60重量%~100重量%含む。
【0013】
本明細書において、「熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤」を、単に「改質剤」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤」を「本改質剤」と称する場合がある。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリルおよび/またはアクリルを意図する。例えば、「(メタ)アクリル系単量体単位」は、メタクリル系単量体単位および/またはアクリル系単量体単位、を意図する。同様に、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意図する。
【0014】
本改質剤は、前記構成を有するため、熱可塑性ポリエステル樹脂に対して該改質剤を配合することにより、衝撃強度に優れる(換言すれば、耐衝撃性に優れる)熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体を提供できるという利点を有する。
【0015】
(第一コア層及び第二コア層)
第一コア層は、重合体粒子の製造において最初に形成される層であり得る。すなわち、第一コア層は、重合体粒子の最内部に位置する粒子状の層であり得る。
【0016】
第二コア層は、第一コア層の外側に形成された層である。第二コア層は、第一コア層の外側を被覆し得る。が、第一コア層の全表面を被覆するものではなく、第一コア層の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。第二コア層を構成する重合体の少なくとも一部は、第一コア層を構成する重合体にグラフト重合していることが好ましい。
【0017】
第一コア層及び第二コア層は、いずれも、アクリル系ゴムを含み得る。具体的に、第一コア層は、炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単位、及び、多官能性単量体単位を含む架橋重合体Cを含む。第二コア層は、アクリル酸エステル単位、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位、及び、多官能性単量体単位を含む架橋重合体Cを含む。第一コア層は、架橋重合体C以外の重合体(例えば、多官能性単量体単位を含まない重合体)を、さらに含んでいてもよい。第二コア層は、架橋重合体C以外の重合体(例えば、多官能性単量体単位を含まない重合体)を、さらに含んでいてもよい。
【0018】
前記アクリル酸エステル単位の由来となるアクリル酸エステル単量体としては特に限定されないが、例えば、アルキル基を含むアクリル酸エステル、芳香環含有アクリル酸エステルおよびアルコキシ基を含むアクリル酸エステルなどが挙げられる。アルキル基を含むアクリル酸エステルにおいて、アルキル基はヒドロキシ基などの反応性官能基を有していてもよい。アルキル基を含むアクリル酸エステルとしては、(a)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニルなどのアルキルアクリレート、および(b)2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート、などが挙げられる。芳香環含有アクリル酸エステルとしては、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルなどが挙げられる。アルコキシ基を含むアクリル酸エステルとしては、メトキシアクリレートおよびエトキシアクリレートなどが挙げられる。
【0019】
工業的に入手しやすいという利点があることから、第二コア層は、上述したアクリル酸エステル単量体のなかでもアルキル基を含むアクリル酸エステルからなる群から選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含むことが好ましく、アクリル酸ブチル単位を含むことが特に好ましい。
【0020】
上述したアクリル酸エステル単量体の中で、炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸オクチル、などが挙げられる。得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有することから、第一コア層は、炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単位の中でも、アクリル酸2-エチルヘキシル単位を含むことが好ましい。
【0021】
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体としては特に限定されないが、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルアルキルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアルキルメタクリレートが挙げられる。工業的に入手しやすいことから、これらエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体のなかでも、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートからなる群から選択される1種以上が好ましく、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。
【0022】
本明細書において、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体は、アクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体には包含されないものとする。
【0023】
前記多官能性単量体は、コア層において、架橋剤として機能し得る。前記多官能性単量体としては特に限定されないが、アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレート等のアリルアルキル(メタ)アクリレート類;アリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート類;ジアリルフタレート;トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート;ジビニルベンゼン;等が挙げられる。工業的に入手しやすいことから、これら多官能性単量体のなかでも、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートおよびジビニルベンゼンからなる群から選択される1種以上が好ましく、アリルメタクリレートが特に好ましい。
【0024】
本明細書において、多官能性単量体は、アクリル酸エステル単量体およびメタクリル酸エステル単量体には包含されないものとする。
【0025】
第一コア層では、炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単位及び多官能性単量体単位に加えて、炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単量体及び多官能性単量体を除く他の単量体に由来する構成単位をさらに含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単量体及び多官能性単量体を除く他の単量体としては特に限定されないが、炭素数が1~4であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単量体および炭素数が10以上であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単量体;エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体;後述するようなメタクリル酸エステル単量体;スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン等のアルケン類;等が挙げられる。
【0026】
重合体粒子の粒子径が安定しやすいという利点を有することから、第一コア層は、アクリル酸ブチル単位をさらに含むことが好ましい。換言すれば、第一コア層は、アクリル酸2-エチルヘキシル単位およびアクリル酸ブチル単位の両単位を含むことが、特に好ましい。
【0027】
第一コア層において、第一コア層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量%中における炭素数が5~9であるアルキル基を含むアクリル酸エステル単位の含有量は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上が特に好ましい。前記含有量が50重量%以上である場合、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有する。前記含有量の上限値は特に限定されず、100重量%であってもよい。
【0028】
前記架橋重合体Cは、実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まないことが好ましい。具体的には、架橋重合体Cにおいて、架橋重合体Cを構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量%中におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量の下限値は特に限定されず、0重量%であってもよい。架橋重合体Cが実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まない場合、コア層のガラス転移温度(Tg)が高くなりすぎないため、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有する。
【0029】
第一コア層は、実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まないことが好ましい。具体的には、第一コア層において、第一コア層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量%中におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量の下限値は特に限定されず、0重量%であってもよい。第一コア層が実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まないか、または第一コア層におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が上述した範囲内である場合、コア層のガラス転移温度(Tg)が高くなりすぎないため、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有する。
【0030】
第一コア層において、第一コア層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量部に対する多官能性単量体単位の含有量は、0.01重量部~10.00重量部が好ましく、0.05重量部~5.00重量部がより好ましく、0.10重量部~3.00重量部がさらに好ましい。前記含有量が0.01重量部以上である場合、第一コア層がシェル層とのグラフト点を確保できるため、重合体粒子の造粒性が良好となる利点、および熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中での改質剤の分散性が良好となる利点を有する。前記含有量が10.00重量部以下である場合、コア層の弾性率が高くなりすぎないため、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有する。
【0031】
第一コア層において、第一コア層100重量%中における架橋重合体Cの含有量は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが特に好ましい。換言すれば、第一コア層は、架橋重合体Cのみから構成されることが特に好ましい。第一コア層に含まれる架橋重合体Cの含有量が上述した範囲内である場合、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有する。
【0032】
第二コア層では、アクリル酸エステル単位、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位及び多官能性単量体単位に加えて、アクリル酸エステル単量体、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体及び多官能性単量体を除く他の単量体に由来する構成単位をさらに含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。アクリル酸エステル単量体、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体及び多官能性単量体を除く他の単量体としては特に限定されないが、後述するようなメタクリル酸エステル単量体;スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン等のアルケン類;等が挙げられる。
【0033】
第二コア層において、第二コア層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量%中におけるアクリル酸エステル単位の含有量は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。前記含有量が50重量%以上である場合、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有する。前記含有量の上限値は、99重量%以下であることが好ましく、96重量%以下であることがより好ましく、90重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量が99重量%以下である場合、コア層の弾性率が高くなりすぎないため、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有する。
【0034】
第二コア層において、第二コア層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量%中におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、1.0重量%以上であることが好ましく、2.0重量%以上がより好ましく、5.0重量%以上がより好ましく、7.0重量%以上がさらに好ましく、9.5重量%以上が特に好ましい。前記含有量が1.0重量%以上である場合、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中での改質剤の分散性が良好となるという利点を有する。前記含有量の上限値は、50.0重量%以下であることが好ましく、30.0重量%以下であることがより好ましく、20.0重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量が50.0重量%以下である場合、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の樹脂の流動性が悪化しないという利点を有する。
【0035】
第二コア層に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、前記重合体粒子100重量%中、0.1重量%以上であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましく、0.4重量%以上であることがさらに好ましく、0.5重量%以上であることが特に好ましい。第二コア層に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が重合体粒子100重量%中0.1重量%以上である場合、得られる改質剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果をより高めることができるという利点を有する。第二コア層に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、前記重合体粒子100重量%中、2.0重量%以下であることが好ましく、1.5重量%以下であることがより好ましく、1.3重量%以下であることがより好ましく、1.1重量%以下であることがさらに好ましく、1.0重量%以下であることが特に好ましい。第二コア層に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が重合体粒子100重量%中2.0重量%以下である場合、改質剤を熱可塑性ポリエステル樹脂に配合した際、樹脂組成物中で改質剤を構成する重合体粒子が凝集する虞がなく、改質剤による成形体の衝撃強度の向上効果を十分に享受できるという利点を有する。
【0036】
第二コア層において、第二コア層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量部に対する多官能性単量体単位の含有量は、0.01重量部~10.00重量部が好ましく、0.05重量部~5.00重量部がより好ましく、0.10重量部~3.00重量部がさらに好ましい。前記含有量が0.01重量部以上である場合、第二コア層がシェル層とのグラフト点を確保できるため、重合体粒子の造粒性が良好となる利点、および熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中での改質剤の分散性が良好となる利点を有するという利点を有する。前記含有量が10.00重量部以下である場合、コア層の弾性率が高くなりすぎないため、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が低温衝撃強度の高い成形体を提供できるという利点を有する。
【0037】
第二コア層において、第二コア層100重量%中における架橋重合体Cの含有量は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが特に好ましい。換言すれば、第二コア層は、架橋重合体Cのみから構成されることが特に好ましい。第二コア層に含まれる架橋重合体Cの含有量が上述した範囲内である場合、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の溶融粘度と、当該樹脂組成物から得られる成形体の衝撃強度とのバランスが良好となる(優れた溶融粘度と優れた衝撃強度とを両立できる)という利点を有する。
【0038】
コア層は、第一コア層及び第二コア層に加えて、第一コア層及び第二コア層以外の層(例えば、第三コア層)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第三コア層以降の層は、第一コア層と第二コア層との間に形成される層であることが好ましい。より具体的に、第一コア層は、第二コア層及び第三コア層以降の層よりも前に形成されることが好ましく、重合体粒子の製造において最初に形成される層であることが好ましい。換言すれば、第一コア層は、重合体粒子の最内部に位置する粒子状の層であることが好ましい。当該構成によると、重合体粒子の粒子径が安定しやすいという利点を有する。また、第二コア層は、第一コア層及び第三コア層以降の層よりも後に形成されることが好ましく、コア層の製造において、最後に形成される層であることが好ましい。換言すれば、第二コア層は、コア層における最外層であることが好ましい。当該構成によると、得られる改質剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果をより高めることができるという利点を有する。
【0039】
(第一シェル層及び第二シェル層)
第一シェル層は、第二コア層の外側に形成された層である。第一シェル層は、第一コア層及び/又は第二コア層の外側を被覆し得、特に第二コア層の外側を被覆し得る。第一シェル層は、第一コア層及び第二コア層を含むコア層の全表面を被覆している必要はなく、前記コア層の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。第一シェル層を構成する重合体の少なくとも一部は、第一コア層を構成する重合体(例えば、架橋重合体C)及び/又は第二コア層を構成する重合体(例えば、架橋重合体C)にグラフト重合(グラフト結合)していることが好ましい。また、第一シェル層を構成する重合体の一部は、第一コア層を構成する重合体又は第二コア層を構成する重合体のいずれにもグラフト重合(グラフト結合)しておらず、フリーポリマーとして存在していてもよい。本明細書では、そのようなフリーポリマーも、前記重合体粒子に含まれる。
【0040】
第一シェル層は、アクリル系重合体を含み得る。具体的に、第一シェル層は、該第一シェル層100重量%中、アクリル酸エステル単位を60重量%~100重量%含む。当該構成によると、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の溶融粘度と、当該樹脂組成物から得られる成形体の衝撃強度とのバランスが良好となる(優れた溶融粘度と優れた衝撃強度とを両立できる)という利点を有する。当該利点をより享受できることから、第一シェル層におけるアクリル酸エステル単位の含有量は、第一シェル層100重量%中、60重量%~99重量%が好ましく、70重量%~97重量%がより好ましく、75重量%~95重量%がさらに好ましい。
【0041】
第一シェル層では、アクリル酸エステル単位に加えて、アクリル酸エステル単位を除く他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第一シェル層において、アクリル酸エステル単位を除く他の単量体としては特に限定されないが、メタクリル酸エステル単量体;エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体;多官能性単量体単位;スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン等のアルケン類;等が挙げられる。
【0042】
第二シェル層は、第一シェル層の外側に形成された層である。第二シェル層は、第一コア層、第二コア層及び/または第一シェル層の外側を被覆し得、特に第一シェル層の外側を被覆し得る。第二シェル層は、第一コア層及び第二コア層を含むコア層並びに第一シェル層の全表面を被覆している必要はなく、前記コア層及び第一シェル層の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。第二シェル層を構成する重合体の少なくとも一部は、第一コア層を構成する重合体(例えば、架橋重合体C)、第二コア層を構成する重合体(例えば、架橋重合体C)及び/又は第一シェル層を構成する重合体にグラフト重合(グラフト結合)していることが好ましい。また、第二シェル層を構成する重合体の一部は、第一コア層を構成する重合体、第二コア層を構成する重合体又は第一シェル層を構成する重合体のいずれにもグラフト重合(グラフト結合)しておらず、フリーポリマーとして存在していてもよい。本明細書では、そのようなフリーポリマーも、前記重合体粒子に含まれる。
【0043】
第二シェル層は、メタクリル系重合体を含み得る。具体的に、第二シェル層は、該第二シェル層100重量%中、メタクリル酸エステル単位を60重量%~100重量%含む。当該構成によると、重合体粒子を含むラテックスから重合体粒子の粉末を得る粉末化工程で重合体粒子が粗粒化しにくいため、得られた重合体粒子が熱可塑性ポリエステル樹脂中で均一に分散しやすいという利点を有する。また、前記構成によると、重合体粒子を含むラテックスの機械的安定性が良好になるという利点も有する。という利点を有する。該利点をより享受できることから、第二シェル層におけるメタクリル酸エステル単位の含有量は、該第二シェル層100重量%中、70重量%~100重量%が好ましく、80重量%~100重量%がより好ましく、90重量%~100重量%がさらに好ましく、95重量%~100重量%が特に好ましく、100重量%が最も好ましい。第二シェル層は、メタクリル酸エステル単位のみで構成されていることが最も好ましい。
【0044】
第二シェル層では、メタクリル酸エステル単位、に加えて、メタクリル酸エステル単位を除く他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第二シェル層において、メタクリル酸エステル単位を除く他の単量体としては特に限定されないが、アクリル酸エステル単量体;エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体;多官能性単量体単位;スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン等のアルケン類;等が挙げられる。
【0045】
第一シェル層及び第二シェル層において、前記アクリル酸エステル単位の由来となるアクリル酸エステル単量体としては特に限定されない。アクリル酸エステル単量体の具体例については、前記(第一コア層及び第二コア層)の項で説明したものと同じであるため、当該記載を援用し、ここでは説明を省略する。工業的に入手しやすいという利点を有することから、第一シェル層及び第二シェル層では、上述したアクリル酸エステル単量体のなかでも、アクリル酸アルキルエステルからなる群から選択される1種以上が好ましく、アクリル酸ブチルが特に好ましい。
【0046】
前記メタクリル酸エステル単位の由来となるメタクリル酸エステル単量体としては特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニルなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸ベンジルなどの芳香環含有メタクリル酸エステル;2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキルメタクリレート;アルコキシアルキルメタクリレート;等が挙げられる。工業的に入手しやすいという利点、および、シェル層のTgを高めることができるため、シェル層と熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性が高いという利点を有することから、第一シェル層及び第二シェル層では、これらメタクリル酸エステル単量体のなかでも、メタクリル酸アルキルエステルからなる群から選択される1種以上が好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0047】
第一シェル層は、エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位をさらに含むことが好ましい。当該構成によると、改質剤が、衝撃強度により優れる、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体を提供できるという利点を有する。かかる利点をより享受できるため、第一シェル層において、第一シェル層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量%中におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、0.3重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、0.7重量%以上がさらに好ましく、1.0重量%以上が特に好ましい。第一シェル層におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量の上限値は、特に限定されない。得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の流動性が良好となることから、第一シェル層において、第一シェル層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量%中におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、20重量%以下が特に好ましい。
【0048】
第一シェル層において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体としては特に限定されない。エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体の具体例については、前記(第一コア層及び第二コア層)の項で説明したものと同じであるため、当該記載を援用し、ここでは説明を省略する。工業的に入手しやすいという利点を有することから、第一シェル層では、上述したエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体のなかでも、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートからなる群から選択される1種以上が好ましく、グリシジルメタクリレートがより好ましい。
【0049】
第一シェル層に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、前記重合体粒子100重量%中、0.01重量%以上であることが好ましく、0.03重量%以上であることがより好ましく、0.04重量%以上であることがより好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、0.08重量%以上であることがより好ましく、0.10重量%以上であることがより好ましく、0.20重量%以上であることがより好ましく、0.30重量%以上であることがより好ましく、0.40重量%以上であることがより好ましく、0.50重量%以上であることがさらに好ましい。第一シェル層に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が重合体粒子100重量%中0.01重量%以上である場合、得られる改質剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果をより高めることができるという利点を有する。第一シェル層に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、前記重合体粒子100重量%中、2.00重量%以下であることが好ましく、1.50重量%以下であることがより好ましく、1.30重量%以下であることがより好ましく、1.10重量%以下であることがより好ましく、1.00重量%以下であることがより好ましく、0.80重量%以下であることがより好ましく、0.60重量%以下であることがより好ましく、0.50重量%以下であることがさらに好ましい。第一シェル層に含まれるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が重合体粒子100重量%中2.0重量%以下である場合、改質剤を熱可塑性ポリエステル樹脂に配合した際、樹脂組成物中で改質剤を構成する重合体粒子が凝集する虞がなく、改質剤による成形体の衝撃強度の向上効果を十分に享受できるという利点を有する。
【0050】
第二シェル層は、実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まないことが好ましい。具体的には、第二シェル層において、第二シェル層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量%中におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量の下限値は特に限定されず、0重量%であってもよい。第二シェル層が実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まないか、または第二シェル層におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が上述した範囲内である場合、得られる改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の流動性を悪化させる虞がないという利点を有する。
【0051】
第一シェル層は、実質的に多官能性単量体単位を含まないことが好ましい。換言すれば、第一シェル層は、実質的に非架橋であることが好ましい。具体的には、前記第一シェル層において、該第一シェル層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量部に対する多官能性単量体単位の含有量は、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量の下限値は特に限定されず、0重量%であってもよい。前記第一シェル層が実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まないか、または前記第一シェル層におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が上述した範囲内である場合、得られる改質剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果をより高めることができるという利点を有する。
【0052】
第二シェル層は、実質的に多官能性単量体単位を含まないことが好ましい。換言すれば、第二シェル層は、実質的に非架橋であることが好ましい。具体的には、前記第二シェル層において、該第二シェル層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量部に対する多官能性単量体単位の含有量は、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量の下限値は特に限定されず、0重量%であってもよい。前記第二シェル層が実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まないか、または前記第二シェル層におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が上述した範囲内である場合、重合体粒子の造粒性が良好となるという利点を有する。
【0053】
シェル層は、実質的に多官能性単量体単位を含まないことが好ましい。換言すれば、シェル層は、実質的に非架橋であることが好ましい。具体的には、前記シェル層において、該シェル層を構成する全構成単位のうち多官能性単量体単位を除く構成単位の総量100重量部に対する多官能性単量体単位の含有量は、1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。前記含有量の下限値は特に限定されず、0重量%であってもよい。前記シェル層が実質的にエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位を含まないか、または前記シェル層におけるエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体単位の含有量が上述した範囲内である場合、重合体粒子の造粒性が良好となるという利点を有する。
【0054】
シェル層は、第一シェル層及び第二シェル層に加えて、第一シェル層及び第二シェル層以外の層(例えば、第三シェル層)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第三シェル層以降の層は、第一シェル層と第二シェル層との間に形成される層であることが好ましい。より具体的に、第一シェル層は、第二シェル層及び第三シェル層以降の層よりも前に形成されることが好ましく、シェル層の製造において、最初に形成される層(コア層の形成後に、最初に形成される層)であることが好ましい。換言すれば、第一シェル層は、シェル層における最内層であることが好ましい。当該構成によると、得られる改質剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果をより高めることができるという利点を有する。また、第二シェル層は、第一シェル層及び第三シェル層以降の層よりも後に形成されることが好ましく、シェル層の製造において、最後に形成される層であることが好ましい。換言すれば、第二シェル層は、シェル層における最外層であることが好ましい。当該構成によると、重合体粒子の造粒性が良好となるという利点を有する。
【0055】
前記重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、1.0×10個/1粒子~8.0×10個/1粒子であることが好ましい。重合体粒子中のエポキシ基の含有量が、該重合体粒子1粒子中、1.0×10個/1粒子以上である場合、得られる改質剤は、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果をより高めることができるという利点を有する。改質剤による成形体の衝撃強度の向上効果をさらに享受できることから、重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、2.0×10個/1粒子以上がより好ましく、2.5×10個/1粒子以上がより好ましく、4.0×10個/1粒子以上がより好ましく、5.0×10個/1粒子以上がより好ましく、6.0×10個/1粒子以上がより好ましく、6.5×10個/1粒子以上が特に好ましい。重合体粒子中のエポキシ基の含有量が、該重合体粒子1粒子中、8.0×10個/1粒子以下である場合、改質剤を熱可塑性ポリエステル樹脂に配合した際、樹脂組成物中で改質剤を構成する重合体粒子が凝集する虞がなく、改質剤による成形体の衝撃強度の向上効果を十分に享受できるという利点を有する。樹脂組成物中で改質剤を構成する重合体粒子が凝集する虞がより低減され得ることから、重合体粒子が含むエポキシ基は、該重合体粒子1粒子中、6.0×10個/1粒子以下がより好ましく、5.0×10個/1粒子以下がより好ましく、4.5×10個/1粒子以下であることがより好ましく、3.0×10個/1粒子以下であることがより好ましく、2.0×10個/1粒子以下であることがより好ましく、1.0×10個/1粒子以下であることがより好ましく、9.0×10個/1粒子以下であることがより好ましく、7.5×10個/1粒子以下であることがより好ましく、5.0×10個/1粒子以下であることがさらに好ましく、2.5×10個/1粒子以下であることが特に好ましい。重合体粒子が含むエポキシ基は、例えば、{1(g)×[(エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体の重量部数/100)/エポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体の分子量]×アボガドロ定数}/{1(cm)/[(4/3)×π×(重合体微粒子の体積平均粒子径(cm)/2)^3]}の方法で算出できる。なお、重合体微粒子の体積平均粒子径は、動的光散乱式粒子径分布測定装置で測定できる。
【0056】
(各層の含有量)
前記重合体粒子に含まれる各層の含有量は特に限定されない。熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果により優れることから、重合体粒子100重量%中における前記第一コア層、前記第二コア層、前記第一シェル層および前記第二シェル層の含有割合は、それぞれ、60重量%~90重量%、2重量%~30重量%、2重量%~15重量%および3重量%~15重量%であることが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果にさらに優れることから、重合体微粒子100重量%中における第一コア層の含有量は、65重量%~85重量%であることがより好ましく、70重量%~80重量%であることがさらに好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果にさらに優れることから、重合体微粒子100重量%中における第二コア層の含有量は、3重量%~20重量%であることがより好ましく、4重量%~15重量%であることがさらに好ましく、5重量%~10重量%であることが特に好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果にさらに優れることから、重合体微粒子100重量%中における第一シェル層の含有量は、3重量%~13重量%であることが好ましく、4重量%~10重量%であることがより好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度の向上効果にさらに優れることから、重合体微粒子100重量%中における第二シェル層の含有量は、4重量%~13重量%であることが好ましく、5重量%~10重量%であることがより好ましい。
【0057】
(重合体粒子の製造方法)
前記重合体粒子の製造方法としては、常法によることができ、特に限定されない。例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれかを採用することができる。前記重合体粒子の製造方法としては、乳化重合、すなわち乳化グラフト重合が好ましい。乳化グラフト重合では、具体的には、まず、乳化重合によって、第一コア層にあたる重合体粒子のラテックスを製造し、該ラテックスに、第二コア層、第一シェル層もしくは第二シェル層の単量体成分、及び必要に応じて重合開始剤等を順次添加して該単量体成分を順次重合すればよい。
【0058】
前記重合体粒子の製造方法の好ましい態様としては、次の(1)~(4)を順に行う方法が挙げられる:(1)第一コア層にあたる重合体粒子のラテックスを乳化重合によって製造する;(2)第二コア層の単量体成分及び必要に応じて重合開始剤等を第一コア層にあたる重合体粒子のラテックスに添加し、第一コア層にあたる重合体粒子の存在下、第二コア層の単量体成分を重合する;(3)第一シェル層の単量体成分及び必要に応じて重合開始剤等を、第一コア層及び第二コア層を含む重合体粒子のラテックスに添加し、第一コア層及び第二コア層を含む重合体粒子の存在下、第一シェル層の単量体成分を重合する;(4)第二シェル層の単量体成分及び必要に応じて重合開始剤等を、第一コア層、第二コア層及び第一シェル層を含む重合体粒子のラテックスに添加し、第一コア層、第二コア層及び第一シェル層を含む重合体粒子の存在下、第二シェル層の単量体成分を重合する。
【0059】
乳化重合において用いることができる乳化剤(分散剤)としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを使用可能である。また、乳化重合では、ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などの分散剤を使用してもよい。
【0060】
前記アニオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ラウリン酸カリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸カリウムジエタノールアミン塩、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、混合脂肪酸ソーダ石けん、半硬化牛脂脂肪酸ソーダ石けん、ヒマシ油カリ石けんなどの脂肪酸石鹸;ドデシル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;アルキルリン酸カリウム塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩;ポリカルボン酸型高分子アニオン;アシル(牛脂)メチルタウリン酸ナトリウム;アシル(ヤシ)メチルタウリン酸ナトリウム;ココイルイセチオン酸ナトリウム;α-スルホ脂肪酸エステルナトリウム塩;アミドエーテルスルホン酸ナトリウム;オレイルザルコシン;ラウロイルザルコシンナトリウム;ロジン酸石けん;等。
【0061】
前記非イオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルあるいはポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル類;ポリエチレングルコールモノラウレート、ポリエチレングルコールモノステアレート、ポリエチレングルコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類;オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー;等。
【0062】
前記カチオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテート、テトラデシルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩;等。
【0063】
前記両性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルラウリルベタインなどのアルキルベタイン;ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム;アミドベタイン;イミダゾリン;ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなど。
【0064】
これらの乳化剤(分散剤)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤の使用量を調節することによって、重合体粒子の平均粒子径を制御することができる。
【0065】
前記重合体粒子の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、重合体粒子の製造には、熱分解型開始剤を用いることができる。前記熱分解型開始剤としては、例えば、(a)2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、並びに(b)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物、などの公知の開始剤を挙げることができる。前記有機過酸化物としては、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、およびt-ヘキシルパーオキサイドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0066】
重合体粒子の製造には、レドックス型開始剤を使用することもできる。前記レドックス型開始剤は、(a)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物と、(b)硫酸鉄(II)などの遷移金属塩、及び/又は、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤を併用した開始剤である。さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などを併用してもよい。
【0067】
レドックス型開始剤を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定することができるようになる。そのため、レドックス型開始剤を用いることが好ましい。レドックス型開始剤の中でも、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、およびt-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物を過酸化物として使用したレドックス型開始剤が好ましい。前記開始剤の使用量は、公知の範囲内で適宜選択できる。レドックス型開始剤を用いる場合、前記還元剤、遷移金属塩およびキレート剤などの使用量は、公知の範囲で適宜選択できる。
【0068】
前記重合体粒子の製造において、ラジカル重合性二重結合を2つ以上有する単量体(例えば、多官能性単量体)を重合するに際しては、公知の連鎖移動剤を公知の使用量の範囲で用いることができる。
【0069】
前記重合体粒子の製造において、上述した成分に加えて界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の種類及び使用量も公知の範囲内で適宜選択できる。
【0070】
乳化重合時に使用される溶媒としては、乳化重合を安定に進行させるものであればよく、例えば、水等を好適に使用することができる。
【0071】
乳化重合時の温度は、乳化剤が溶媒に均一に溶解する限り、特に限定されない。重合終了時の重合転化率を向上させることができることから、乳化重合時の温度は、例えば、40~75℃であり、45℃~70℃が好ましく、49℃~65℃がより好ましい。
【0072】
乳化重合によって前記重合体粒子を製造した場合(以下、場合Aとも称する。)について説明する。場合Aにおいて、例えば、該重合体粒子のラテックスと、(i)塩酸等の酸、及び/又は(ii)塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、酢酸カルシウム等の二価以上の金属塩と、を混合することにより、ラテックス中の前記重合体粒子を凝集(凝固)させることができる。次いで、得られた重合体粒子の凝集体について、公知の方法に従って、熱処理、脱水、洗浄および乾燥などの各操作を行うことにより、該重合体粒子を水性媒体(ラテックス)から分離することができる。得られた重合体粒子は、水及び/又は有機溶剤によって洗浄することが好ましい。
【0073】
また、場合Aにおいて、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、及び/又はアセトン等の水溶性有機溶剤を前記重合体粒子のラテックスに添加することにより、ラテックス中の該重合体粒子を析出させることができる。次いで、遠心分離、濾過等により、析出させた重合体粒子を溶剤から分離した後、重合体粒子を乾燥することにより、重合体粒子を単離することもできる。場合Aにおいて、重合体粒子を単離する別の方法としては、前記重合体粒子のラテックスに、メチルエチルケトン等の若干の水溶性を有する有機溶剤を加えて、ラテックス中の重合体粒子を有機溶剤層に抽出し、次いで有機溶剤層を分離した後、分離した有機溶剤層を水などと混合して重合体粒子を析出させる方法等も挙げられる。
【0074】
また、場合Aにおいて、前記重合体粒子のラテックスを噴霧乾燥法により直接粉体化することもできる。得られた粉体は、水及び/又は有機溶剤によって洗浄することが好ましい。または、得られた粉体に、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウムなどを、好ましくは水溶液などの溶液として添加し、必要に応じて再乾燥することにより、上記洗浄と同様の効果を得ることができる。
【0075】
〔熱可塑性ポリエステル樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂と、前記〔熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤〕の項に記載の本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤と、を含有する。本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、前記熱可塑性ポリエステル樹脂と前記熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤との合計100重量%中、前記熱可塑性ポリエステル樹脂用改質剤を2重量%~40重量%含む。
【0076】
本明細書において、「熱可塑性ポリエステル樹脂組成物」を、単に「樹脂組成物」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物」を「本樹脂組成物」と称する場合がある。
【0077】
本樹脂組成物は、前記構成を有するため、衝撃強度に優れる(換言すれば、耐衝撃性に優れる)成形体を提供できるという利点を有する。換言すれば、本改質剤を熱可塑性ポリエステル樹脂に配合することにより、熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度を向上させることができる。
【0078】
(改質剤の配合量)
本発明の一実施形態において、樹脂組成物中の改質剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは、熱可塑性ポリエステル樹脂と改質剤との合計100重量%中、2重量%~40重量%である。当該構成によると、熱可塑性ポリエステル樹脂特有の物性を保持しつつ、改質剤の配合による成形体の衝撃強度の向上効果を得ることができる。改質剤の配合により、ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度をより向上させることができることから、樹脂組成物中の改質剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂と改質剤との合計100重量%中、3重量%以上がより好ましく、4重量%以上がさらに好ましく、5重量%以上が特に好ましい。改質剤の配合によっても、熱可塑性ポリエステル樹脂特有の物性をより保持することができることから、樹脂組成物中の改質剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂と改質剤との合計100重量%中、30重量%以下がより好ましく、28重量%以下がより好ましく、25重量%以下が特に好ましい。
【0079】
(熱可塑性ポリエステル樹脂)
前記熱可塑性ポリエステル樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエステル/ポリエーテル等が挙げられる。成形加工性及び/又は機械的特性の観点から、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート及びポリエステル/ポリエーテルからなる群から選択される1種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートがより好ましい。
【0080】
(他の樹脂)
本樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有しなくともよいし、含有してもよい。熱可塑性ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、環状ポリオレフィン等が挙げられる。本樹脂組成物中における熱可塑性ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂の含有量としては特に限定されないが、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して0重量部~100重量部が好ましく、0重量部~50重量部がより好ましく、0重量部~30重量部がさらに好ましく、0重量部~10重量部であることが特に好ましい。
【0081】
(他の添加剤)
本樹脂組成物は、一般的な熱可塑性樹脂組成物に配合され得る添加剤を適宜含有することができる。そのような添加剤としては特に限定されないが、例えば、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、強化材、充填材、酸化防止剤、顔料、染料、導電性付与剤、加水分解抑制剤、増粘剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、離型剤、相溶化剤、熱安定剤等が挙げられる。
【0082】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、一般的な熱可塑性樹脂組成物の製造方法を適用することができる。例えば、(1)ヘンシェルミキサー及び/又はタンブラーミキサーなどを利用して各原料(例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、改質剤、及び必要に応じて他の樹脂、及び必要に応じて他の添加剤)を混合した後、(2)得られた混合物を溶融混錬することにより、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。当該溶融混練には、単軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ミキシングロールなどの混練機を利用することができる。このような溶融混錬によって、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなるペレットを製造することができる。
【0083】
〔成形体〕
本発明の一実施形態に係る成形体は、前記〔熱可塑性ポリエステル樹脂組成物〕の項に記載の本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形体である。本発明の一実施形態に係る成形体は、前記〔熱可塑性ポリエステル樹脂組成物〕の項に記載の本発明の一実施形態に係る熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形体、ともいえる。
【0084】
本発明の一実施形態に係る成形体は、前記構成を有するため、衝撃強度に優れる(換言すれば、耐衝撃性に優れる)という利点を有する。
【0085】
本発明の一実施形態に係る成形体は、本樹脂組成物を所定の形状に成形することで得ることができる。成形方法としては特に限定されず、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法、回転成形法、プレス成形法等を利用することができる。
【0086】
〔用途〕
本改質剤、本樹脂組成物および本発明の一実施形態に係る成形体は、(a)シリンダヘッドカバー、エンジンカバー、インテークマニホールド、ラジエータータンク、オイルパン、アクセルペダル、キャニスター、燃料チューブ、エアブレーキ用チューブ、排ガス用チューブ、水素インジェクタ、ダクト、工業用ファスナー、ドアミラーステイ等の自動車用途;(b)コイルボビン、コネクタ、ギア、ソケット、スイッチ、電気毛布被覆線材、光ファイバーケーブル被覆材、電動工具、電線結束材等の電気及び電子用途;(c)油圧及び空圧用コネクタ並びにチューブ、ベアリング、カバー及びハウジング、軸受、耐圧ホース、結束バンド等の機械用途;(d)カーテンレール部品、アルミサッシのコーナー、戸車、手すり、カーテンローラー、ドア取っ手等の建材用途;(e)スポーツシューズソール、スキー及びスノーボード用品、リール、ダイビングシュノーケル等のスポーツ及びレジャー用途;(f)シュリンク包装用フィルム、食品包装用フィルム、アルコール飲料びん、農薬ボトル等の包装資材及び容器用途;(g)歯ブラシ、椅子の足及び肘掛け、くし、ナイフ及びフォーク等の日用品用途;(h)医療用カテーテル及びパイプ、医療用パック、縫合糸等の医療用途;等が挙げられるが、特に限定されない。
【実施例0087】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
(重合転化率)
各実施例又は比較例で得られた重合体粒子ラテックスの一部を採取・精秤し、それを熱風乾燥器中で120℃、1時間乾燥し、その乾燥後の重量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の精秤結果の比率をラテックス中の固形成分比率として求めた。最後に、この固形成分比率を用いて、下記式により重合転化率を算出した。
重合転化率=(仕込み原料総重量×固形成分比率-モノマー以外の原料総重量)/仕込みモノマー重量×100(%)
(体積平均粒子径)
重合体粒子のラテックスを試料として、マイクロトラック・ベル社製のナノトラックUPA(動的光散乱式粒子径分布測定装置)を用いて粒径の体積基準の累積粒度分布を得た。得られた累積粒度分布において、体積の累積が50%となるところの粒径を重合体微粒子の体積平均粒子径とした。
【0089】
<重合体粒子の製造方法>
以下、重合体粒子1(粒子1)の製造方法を示す。粒子2~16の重合体粒子は、多官能性単量体を除く単量体組成を表1または3に記載の通りに変更した以外は、下記と同じ方法で製造した。ただし、粒子3の製造では、ドデシル硫酸ナトリウムに替えて、ホスファノールRD 510YのNaOHケン化物を使用した。
【0090】
各粒子の製造における多官能性単量体の使用量について説明する。粒子1、7、8および12~16の第一コア層ではアリルメタクリレート0.40重量部を用いており、粒子2~6の第一コア層ではアリルメタクリレート0.42重量部を用いており、粒子9および10の第一コア層ではアリルメタクリレート0.36重量部を用いており、粒子11の第一コア層ではアリルメタクリレート0.32重量部を用いている。また、粒子1~16の第二コア層ではアリルメタクリレート0.05重量部を用いている。
【0091】
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、及び、単量体と乳化剤の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水114重量部、炭酸ナトリウム0.05重量部、及び、ドデシル硫酸ナトリウム0.0945重量部をエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00576重量部、硫酸第一鉄0.00144重量部、及び、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.05重量部を仕込んだ。窒素気流中で攪拌しながら35℃に昇温した。次に、ブチルアクリレート(以下、BAとする)73.54重量部、2-エチルヘキシルアクリレート(以下、2EHAとする)7.50重量部、アリルメタクリレート0.40重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.028重量部、及び、ドデシル硫酸ナトリウム0.87重量部の混合物を160分かけて添加し、途中モノマー混合物追加70分後から65℃に昇温した。モノマー混合物追加直後から50℃に降温した。以上により、第一コア層を形成した。
【0092】
直後に、BA4.50重量部、メタクリル酸グリシジル(以下、GMAとする)0.50重量部、アリルメタクリレート0.05重量部、及び、クメンハイドロパーオキサイド0.00572重量部の混合物を10分間かけて添加した。添加終了15分後、クメンハイドロパーオキサイド0.0286重量部を添加した。以上により、第二コア層を形成した。
【0093】
更に30分後、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.05重量部を仕込んだ後に、BA8.11重量部、GMA0.05重量部、及び、クメンハイドロパーオキサイド0.04重量部の混合物を30分間かけて添加した。添加終了15分後、クメンハイドロパーオキサイド0.026重量部を添加し、20分間攪拌した。以上により、第一シェル層を形成した。
【0094】
直後にドデシル硫酸ナトリウム0.2重量部を添加し、メチルメタクリレート(以下、MMAとする)6.00重量部、および過硫酸カリウムを0.012重量部を一括添加し、さらに15分後過硫酸カリウムを0.012重量部添加し、30分後攪拌し、第二シェル層を形成した。以上によって、重合体粒子1(粒子1)を含むラテックスを得た。重合転化率は100%であった。
【0095】
(重合体粒子の白色樹脂粉末の取得)
脱イオン水500重量部、25重量%濃度の塩化カルシウム水溶液4.0重量部を攪拌した後、重合体粒子ラテックスを投入し、凝固ラテックス粒子を含むスラリーを得た。その後、得られたスラリーを80℃まで昇温し、脱水、乾燥させることにより、重合体粒子の白色樹脂粉末を得た。
【0096】
(実施例1~13および比較例1~4(熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の製造))
表2または4に記載の組成に従い、熱可塑性ポリエステル樹脂と、各重合体粒子の白色樹脂粉末と、必要に応じて添加剤と、を混合して熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて、下記の方法で試験片を作成し、得られた試験片について、下記条件に従って、Izod衝撃強度、及び、MFRを測定した。それらの結果を表2および4に示す。なお、「IFR168」はBASF社製のIRGAFOS168であり、「IRG1010」はBASF社製のIRGANOX1010である。また、粒子17は株式会社カネカ社製IM140Pであり、GMA単位を含まないアクリル系のコアシェル構造を有する粒子である。
【0097】
(試験片(成形体)作製条件)
(a)ポリブチレンテレフタレート樹脂(実施例1~4および比較例1~3では、三菱エンプラ社製ノバデュラン5010。実施例5~13および比較例4では、Lanxess社製PocanB1505。):90重量部
(b)各実施例又は比較例で得られた重合体粒子の白色樹脂粉末:10重量部
前記(a)と(b)を混合し、二軸押出機(テクノベル社製TKZ25)を用い、C2/C3/C4/C5/C6/C7/ADAPTER/DIE=220/225/230/235/240/245/250/250℃、スクリュー回転数200rpmの条件でペレット化を行った。
【0098】
このペレットを真空乾燥機にて120℃で5時間乾燥し、水分量を十分減らした後、射出成形機(ファナック社製FANUC AUTOSHOT-MODEL 100B)にて、ノズル温度260℃、シリンダー温度はノズルに近い側から250℃、240℃、230℃、金型温度80℃の条件で、試験片を作製した。なお、このようにして得られた試験片は、樹脂組成物の成形体ともいえる。したがい、実施例1~13の試験片は、本発明の一実施形態に係る成形体ともいえる。
【0099】
(Izod強度測定条件)
前述した方法で作製した幅4.0mm、厚さ1/8インチ、vノッチ付きの試験片について、絶乾状態にて、JIS K 7110規格に準拠する方法によって、23℃、0℃または-30℃でのIzod衝撃強度(kJ/m)を測定した。
【0100】
(MFR)
前記ペレットを、真空乾燥機にて120℃で5時間乾燥させた後、ISO1133-1に準じ、測定温度250℃、荷重2.16kgの条件にてMFR値(g/10分)を測定した。結果を表2に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の一実施形態は、熱可塑性ポリエステル樹脂に対して配合されることにより熱可塑性ポリエステル樹脂の成形体の衝撃強度を向上させ得る、重合体粒子からなる改質剤、及び、該改質剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態は、自動車用途、電気及び電子用途、機械用途、建材用途、スポーツ及びレジャー用途、包装資材及び容器用途、日用品用途並びに医療用途と多岐にわたり好適に利用できる。