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特開2024-125934充電状態検出システム、リーダライタ、及び充電状態検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125934
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】充電状態検出システム、リーダライタ、及び充電状態検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240911BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20240911BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240911BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240911BHJP
【FI】
H02J7/00 X
H02J7/00 301D
H02J50/20
H02J50/80
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034078
(22)【出願日】2023-03-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」のうち「同期・多数接続信号処理を可能とするバックスキャッタ通信技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条第1項の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】523081720
【氏名又は名称】アライゾンジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝直
(72)【発明者】
【氏名】三次 仁
(72)【発明者】
【氏名】徳増 理
【テーマコード(参考)】
5G503
5K012
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503BB03
5G503DA04
5G503EA05
5G503GB09
5K012AC08
5K012AC10
5K012AE13
(57)【要約】
【課題】端末が備える蓄電素子の充電状態を低消費電力で検出する。
【解決手段】充電状態検出システム100は、リーダライタ10及び端末20を備える。端末20は、アンテナ21のインピーダンスを変更することにより、電力を受信しながら無線の電波に対する反射波にデータをのせて連続的に送信する無線部22と、無線部22が電力から取り出した直流電力を入力とし、直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて蓄電素子30に出力する充電制御部29と、を備える。リーダライタ10は、無線部22に対して無線を介して電力を供給する給電部12と、無線部22からデータがのせられた反射波を受信する受信部14と、受信部14が受信した反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した受信信号の変動から蓄電素子30の充電状態を検出する制御部15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線を介して電力を受信するアンテナのインピーダンスを変更することにより、前記電力を受信しながら前記無線の電波に対する反射波にデータをのせて連続的に送信する無線部と、
前記無線部が前記電力から取り出した直流電力を入力とし、当該直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて充電可能な蓄電素子に出力する充電制御部と、
を備えた端末と、
前記無線部に対して前記無線を介して前記電力を供給する給電部と、
前記無線部から前記データがのせられた前記反射波を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した前記受信信号の変動から前記蓄電素子の充電状態を検出する制御部と、
を備えたリーダライタと、
を含む充電状態検出システム。
【請求項2】
前記受信信号の前記変動は、受信信号強度又は受信信号強度の時間微分を用いて計測される
請求項1に記載の充電状態検出システム。
【請求項3】
前記受信信号の前記変動は、受信信号位相又は受信信号位相の時間微分を用いて計測される
請求項1に記載の充電状態検出システム。
【請求項4】
前記受信信号の前記変動は、受信信号強度、受信信号強度の時間微分、受信信号位相、及び受信信号位相の時間微分の2つ以上の組み合わせを用いて計測される
請求項1に記載の充電状態検出システム。
【請求項5】
無線を介して電力を受信するアンテナのインピーダンスを変更することにより、前記電力を受信しながら前記無線の電波に対する反射波にデータをのせて連続的に送信する無線部と、
前記無線部が前記電力から取り出した直流電力を入力とし、当該直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて充電可能な蓄電素子に出力する充電制御部と、
を備えた端末と通信可能に接続されるリーダライタであって、
前記無線部に対して前記無線を介して前記電力を供給する給電部と、
前記無線部から前記データがのせられた前記反射波を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した前記受信信号の変動から前記蓄電素子の充電状態を検出する制御部と、
を備えたリーダライタ。
【請求項6】
リーダライタの給電部が、端末の無線部に対して無線を介して電力を供給し、
前記端末の充電制御部が、前記無線部が前記電力から取り出した直流電力を入力とし、当該直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて充電可能な蓄電素子に出力し、
前記端末の前記無線部が、前記無線を介して前記電力を受信するアンテナのインピーダンスを変更することにより、前記電力を受信しながら前記無線の電波に対する反射波にデータをのせて連続的に送信し、
前記リーダライタの受信部が、前記無線部から前記データがのせられた前記反射波を受信し、
前記リーダライタの制御部が、前記受信部が受信した前記反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した前記受信信号の変動から前記蓄電素子の充電状態を検出する、
充電状態検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電状態検出システム、リーダライタ、及び充電状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線を利用したデータセンシングシステムは、図8に示すように、上位装置、リーダライタ、及び端末を含んで構成される。リーダライタは、端末への電力供給、コマンド送信を行い、端末からのデータ受信を行う。端末は、センサを有し、リーダライタから電力供給を受けて動作し、リーダライタからのコマンドを解釈しセンサからデータを読み出し、読み出したデータをリーダライタに送信する。上位装置は、リーダライタと接続され、システム全体を制御する。
【0003】
無線電力伝送による電力のみで端末のセンサを動作させる場合、受電電力より低消費電力のセンサを選定し使用する必要があり、またフェージング等の無線環境の変動により受電電力の変化があってもセンサが動作する十分な電力を安定して確保する必要がある。
【0004】
このため、受電電力より大きい電力を必要とするセンサを利用したい場合や、無線環境変動に対応したい場合には、端末に蓄電素子を搭載する場合がある。この場合、予め蓄電素子に充電を行った後にセンサを動作させデータセンシングを行うことで、様々なセンサを利用することや、安定したセンシング動作を実現できるようになる。
【0005】
端末に搭載されている蓄電素子の満充電を検出する方式には、例えば、特許文献1、2、3に開示されているように、充電電流と蓄電素子の端子電圧を計測し、無負荷電圧を校正しながら計測する方法や、更に充電サイクルを学習する方法等がある。蓄電素子の充放電を制御し、充電容量を計測する専用コントローラIC(Integrated Circuit)が開発されており、この専用コントローラICを用いることで充電状態をデジタルデータとして得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-257685号公報
【特許文献2】特開2008-261669号公報
【特許文献3】特開2012-132724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、蓄電素子の充放電制御及び充電容量計測を行う専用コントローラICは、蓄電素子の状態を知るために、充電電流や端子電圧を定期的に測定して、どの程度の電力が貯まったかを推定することが行われている。無線電力伝送によるデータセンシングを行う場合には、端末の蓄電素子に十分に充電ができているかをリーダライタに伝達して、上位装置がセンシング動作の開始のタイミングを決定する必要がある。
【0008】
例えば、複数の端末を用いてセンシングを実施する場合には、すべての目的の端末が十分に充電されていることを確認する必要がある。このため、これらの専用コントローラICから充電情報を取得し、端末からリーダライタへのデジタルデータの中にこれらの充電情報をのせる必要がある。充電情報をのせたデジタル情報として通知することは可能であるが、専用コントローラICの消費電力が問題となる。
【0009】
本開示は、以上の点に鑑みてなされたものであり、端末が備える蓄電素子の充電状態を低消費電力で検出することができる充電状態検出システム、リーダライタ、及び充電状態検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様に係る充電状態検出システムは、無線を介して電力を受信するアンテナのインピーダンスを変更することにより、前記電力を受信しながら前記無線の電波に対する反射波にデータをのせて連続的に送信する無線部と、前記無線部が前記電力から取り出した直流電力を入力とし、当該直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて充電可能な蓄電素子に出力する充電制御部と、を備えた端末と、前記無線部に対して前記無線を介して前記電力を供給する給電部と、前記無線部から前記データがのせられた前記反射波を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した前記受信信号の変動から前記蓄電素子の充電状態を検出する制御部と、を備えたリーダライタと、を含む。
【0011】
第2態様に係る充電状態検出システムは、第1態様に係る充電状態検出システムにおいて、前記受信信号の前記変動が、受信信号強度又は受信信号強度の時間微分を用いて計測される。
【0012】
第3態様に係る充電状態検出システムは、第1態様に係る充電状態検出システムにおいて、前記受信信号の前記変動が、受信信号位相又は受信信号位相の時間微分を用いて計測される。
【0013】
第4態様に係る充電状態検出システムは、第1態様に係る充電状態検出システムにおいて、前記受信信号の前記変動が、受信信号強度、受信信号強度の時間微分、受信信号位相、及び受信信号位相の時間微分の2つ以上の組み合わせを用いて計測される。
【0014】
第5態様に係るリーダライタは、無線を介して電力を受信するアンテナのインピーダンスを変更することにより、前記電力を受信しながら前記無線の電波に対する反射波にデータをのせて連続的に送信する無線部と、前記無線部が前記電力から取り出した直流電力を入力とし、当該直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて充電可能な蓄電素子に出力する充電制御部と、を備えた端末と通信可能に接続されるリーダライタであって、前記無線部に対して前記無線を介して前記電力を供給する給電部と、前記無線部から前記データがのせられた前記反射波を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した前記受信信号の変動から前記蓄電素子の充電状態を検出する制御部と、を備える。
【0015】
第6態様に係る充電状態検出方法は、リーダライタの給電部が、端末の無線部に対して無線を介して電力を供給し、前記端末の充電制御部が、前記無線部が前記電力から取り出した直流電力を入力とし、当該直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて充電可能な蓄電素子に出力し、前記端末の前記無線部が、前記無線を介して前記電力を受信するアンテナのインピーダンスを変更することにより、前記電力を受信しながら前記無線の電波に対する反射波にデータをのせて連続的に送信し、前記リーダライタの受信部が、前記無線部から前記データがのせられた前記反射波を受信し、前記リーダライタの制御部が、前記受信部が受信した前記反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した前記受信信号の変動から前記蓄電素子の充電状態を検出する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、端末が備える蓄電素子の充電状態を低消費電力で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る充電状態検出システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るリーダライタから端末への給電特性の一例を示すグラフである。
図3】実施形態に係る充電制御部によるMPPTの基本動作の一例を示す波形図である。
図4】(A)は、MPPTの充電中における無線部の動作電圧の一例を示す波形図である。(B)は、MPPTの充電完了時における無線部の動作電圧の一例を示す波形図である。
図5】(A)は、MPPTの充電中における無線部の動作電圧の一例を示す波形図である。(B)は、リーダライタの受信信号から得られる計測パラメータの一例を示す波形図である。
図6】充電中から満充電に移行した際に実際に取得したRSSI及び位相の一例を示す波形図である。
図7】実施形態に係る充電状態検出システムによる充電状態検出処理の一例を示すフローチャートである。
図8】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示の技術と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0019】
図1は、本実施形態に係る充電状態検出システム100の構成の一例を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る充電状態検出システム100は、リーダライタ10と、端末20とを、備えている。なお、リーダライタ10は、上述の図8に示す上位装置と通信可能に接続されている。
【0021】
リーダライタ10は、アンテナ11、給電部12、送信部13、受信部14、及び制御部15を備えている。一方、端末20は、アンテナ21、無線部22、充電制御部29、蓄電素子30、及びセンサ31を備えている。
【0022】
まず、リーダライタ10が備える各部の構成について説明する。アンテナ11は、端末20と無線通信を行うためのアンテナである。給電部12は、端末20の無線部22に対して無線を介して電力を供給する。送信部13は、端末20の無線部22に対して無線を介してコマンドを送信する送信回路である。受信部14は、端末20の無線部22からデータがのせられた反射波を受信する受信回路である。
【0023】
制御部15は、給電部12、送信部13、及び受信部14の各々と接続され、これら給電部12、送信部13、及び受信部14の各々の動作を制御する。制御部15は、受信部14が受信した反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した受信信号の変動から蓄電素子30の充電状態を検出する。
【0024】
次に、端末20が備える各部の構成について説明する。アンテナ21は、リーダライタ10と無線通信を行うためのアンテナである。無線部22は、例えば、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)として構成され、アンテナ21、充電制御部29、及びセンサ31の各々と接続される。無線部22は、アンテナ21のインピーダンスを変更することにより、リーダライタ10から電力を受信しながら無線の電波に対する反射波にデータをのせてリーダライタ10に対して連続的に送信する。
【0025】
充電制御部29は、例えば、パワーハーベスタと呼ばれる専用ICとして構成され、蓄電素子30及びセンサ31と接続される。充電制御部29は、無線部22が電力から取り出した直流電力を入力とし、直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて蓄電素子30に出力する。蓄電素子30は、充電可能な素子であり、充電制御部29により充電が制御される。センサ31は、各種のセンシングを行うためのセンサであり、充電制御部29から供給される直流電力により動作する。センサ31は、リーダライタ10からのセンシング開始のコマンドに応じて、センシングを開始し、取得したセンサデータを無線部22に送る。
【0026】
具体的には、無線部22は、スイッチ23、電力抽出部24、受信部25、送信部26、無線制御部27、及びメモリ28を備えている。スイッチ23は、アンテナ21のインピーダンスを変更するためのスイッチである。つまり、スイッチ23は、アンテナ21の整合状態を切り替えるためのスイッチであり、端末20から送信する電波の反射率を変え、変調によりデータをのせた反射波をリーダライタ10に返す。電力抽出部24は、アンテナ21を介して受信した電力から直流電力を取り出し、取り出した直流電力を、無線部22の動作電圧とするだけでなく、充電制御部29の動作電圧として充電制御部29に供給する。
【0027】
受信部25は、アンテナ21を介してリーダライタ10からのコマンドを受信する受信回路である。送信部26は、端末20のデータをリーダライタ10に送信する送信回路である。メモリ28には、端末20のデータの一例として、端末20の固有情報である端末ID(Identification)が記憶されている。送信部26は、端末ID等及びセンサ31から得たセンサデータをリーダライタ10からの要求に応じて送信する。無線制御部27は、電力抽出部24、受信部25、送信部26、及びメモリ28の各々と接続され、これら電力抽出部24、受信部25、送信部26、及びメモリ28の各々の動作を制御する。
【0028】
ここで、リーダライタ10と端末20との間では、バックスキャッタ(後方散乱)通信が行われる。バックスキャッタ通信とは、電波の反射を用いる通信方式である。つまり、質問器であるリーダライタ10が送信した電波を受けた端末20が、これを反射するときにデータをのせる(変調する)ことで、端末20からリーダライタ10へのデータ送信を可能とする。反射波を変調するだけ、すなわち、端末20が自ら電波を発していないため、端末20を省電力化することができる。
【0029】
また、端末20の充電に関する動作状態には、大きく分けて、充電実行(蓄電素子30への充電を実行する)、充電停止(蓄電素子30への充電を停止する)という2つの状態がある。以下、これら2つの状態を充電実行状態、充電停止状態という。端末20がリーダライタ10から受信した電力を蓄電素子30に効率的に充電するには、例えば、MPPT(Maximum Power Point Tracking:最大電力点追従制御)と呼ばれる方式が一般的に使用され、充電制御部29としてパワーハーベスタと呼ばれる専用ICが使用される。MPPTは、一定時間毎に短時間充電を停止し、ほぼ無負荷としたときの最大電圧を計測し、計測した最大電圧に適切な係数(無線給電の場合は0.7以上0.9以下が最大電力点となる)を乗じた電圧で充電を行うものである。このため、充電制御部29の充電状態は、充電中では短時間充電を停止し最大電圧を計測する無負荷に近い状態(充電停止状態)と、実際に蓄電素子30に充電している状態(充電実行状態)とが繰り返される。一方、充電が完了する(満充電になる)と、これらの状態変化が発生しなくなる。つまり、充電制御部29の充電状態は充電中と満充電とで異なる。
【0030】
図2は、本実施形態に係るリーダライタ10から端末20への給電特性の一例を示すグラフである。図2において、横軸は電圧[V]を示し、縦軸は電流[μA]及び電力[μW]を示す。図2の例では、リーダライタ10のアンテナ11と端末20との距離を10cmとした場合の無線部22に給電される電力P及び電流Iの特性を示している。
【0031】
図2に示す給電特性は、リーダライタ10のアンテナ11と端末20との距離に依存し、充電及びセンサ動作で消費する電流に応じて電圧が変動する。リーダライタ10のアンテナ11との距離が変わると、グラフの傾向は同じであるが、電圧及び電流が変化する。充電制御部29により蓄電素子30を最も効率よく充電するために、上記MPPTでは、X部の最大電力を利用する。
【0032】
図3は、本実施形態に係る充電制御部29によるMPPTの基本動作の一例を示す波形図である。図3において、横軸は時間[s]を示し、縦軸は電圧[V]を示す。
【0033】
(RFオン)では、リーダライタ10から端末20の無線部22への電力供給が開始されたことを示す。
【0034】
(S1)では、充電制御部29が蓄電素子30を充電していない充電停止状態であることを示す。充電停止状態とは、短時間(例えば、300ms)充電を停止し、無負荷最大電圧V1を計測する状態、あるいは、充電完了(満充電)を検出し、充電を行わない状態である。
【0035】
(S2)では、充電制御部29が蓄電素子30を充電している充電実行状態であることを示す。充電実行状態とは、無負荷最大電圧V1の約80%の電圧を充電電圧V2として充電を行っている状態である。この場合の充電周期T1は、例えば、19sである。
【0036】
つまり、端末20の蓄電素子30を充電する際は、リーダライタ10から無線によって電力を送信し、端末20のアンテナ21で受信した電力から無線部22が直流電力を抽出し、抽出した直流電力を端末20内の各部に供給する。充電制御部29は、無線部22から供給される直流電力により蓄電素子30を充電する。
【0037】
充電制御部29は、無線部22から供給される電力で効率よく充電を行うため、図3に示すように、充電停止状態では無線部22から供給される無負荷最大電圧V1を計測し(S1)、充電実行状態では最適な充電条件で蓄電素子30の充電を行う(S2)。これらの充電停止状態と充電実行状態を定期的に繰り返し、蓄電素子30が満充電に至るまで継続する。満充電になると充電実行状態の期間がほぼ0になり、充電を行わない状態である充電停止状態の期間が増える。
【0038】
無線部22が抽出した直流電力は、無線部自身の動作電圧となると共に、充電制御部29の動作電圧となる。つまり、無線部22と充電制御部29とは同じ電圧で動作する。このため、無線部22の動作電圧は、充電制御部29の充電状態に応じて変動し、端末20が送信する、データを含む反射波にも反映される。
【0039】
本実施形態においては、端末20の充電制御部29の充電状態の変化、つまり、充電制御部29の動作電圧の変化に応じて、無線部22の動作電圧が変化することを利用する。つまり、無線部22の動作電圧の変化は、端末20が送信する、データを含む反射波にも反映されるため、リーダライタ10が、端末20から受信した反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測し、計測した受信信号の変動から蓄電素子30の充電状態を検出することが可能となる。つまり、端末20により蓄電素子30の充電情報を取得する必要がないため、端末20での消費電力を低減することができる。
【0040】
図4(A)は、MPPTの充電中における無線部22の動作電圧V11の一例を示す波形図である。図4(B)は、MPPTの充電完了時における無線部22の動作電圧V12の一例を示す波形図である。
【0041】
上述したように、無線部22の動作電圧は、充電制御部29の充電状態に応じて変動する。具体的には、MPPTの充電中における無線部22の動作電圧V11は、図4(A)に示すように、短時間充電を停止する充電停止状態と充電を行う充電実行状態が定期的に繰り返される。一方、MPPTの充電完了(満充電)時における無線部22の動作電圧V12は、図4(B)に示すように、これらの状態変化が発生しなくなる。つまり、無線部22の動作電圧の波形は、充電中と充電完了(満充電)時とで異なる。無線部22の動作電圧の変動は、リーダライタ10が端末20から受信する受信信号にも反映される。
【0042】
本実施形態に係る充電状態検出システム100は、リーダライタ10から定期的に端末20と無線通信を行い、リーダライタ10において、端末20からの受信信号(反射波)の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測することにより、充電制御部29の動作状態を検出することが可能となる。つまり、端末20の消費電力を低減しつつ、蓄電素子30の満充電を精度良く検出することができる。
【0043】
また、リーダライタ10により蓄電素子30の満充電を検出することができるため、端末20に充電容量計測用のハードウェアを追加する必要がなく、センサ31の使用時間、蓄電素子30の充電時間を計測することにより、蓄電素子30の残容量を推定することができる。
【0044】
次に、図5及び図6を参照して、端末20から得られる受信信号の位相及び振幅の変動を計測する方法の具体例について説明する。
【0045】
リーダライタ10の制御部15は、受信信号の変動を、例えば、受信信号強度又は受信信号強度の時間微分を用いて計測する。具体的には、受信信号強度には、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)が用いられる。RSSIは、電波の強さ、つまり、電波の振幅の大きさを示す値である。また、受信信号の変動は、受信信号位相又は受信信号位相の時間微分を用いて計測してもよい。また、受信信号の変動は、受信信号強度、受信信号強度の時間微分、受信信号位相、及び受信信号位相の時間微分の2つ以上の組み合わせを用いて計測してもよい。
【0046】
図5(A)は、MPPTの充電中における無線部22の動作電圧V11の一例を示す波形図である。図5(B)は、リーダライタ10の受信信号から得られる計測パラメータの一例を示す波形図である。なお、図5(B)に示す計測パラメータの波形は、図5(A)に示す動作電圧V11のZ部に対応する波形である。
【0047】
図5(A)及び図5(B)に示すように、端末20の無線部22の動作電圧V11の状態がリーダライタ10の計測パラメータによって観測可能となる。計測パラメータには、例えば、受信信号に関するRSSI、位相、オフセット電圧、送信ビットレート等が含まれる。
【0048】
図6は、充電中から満充電に移行した際に実際に取得したRSSI及び位相の一例を示す波形図である。図6において、上側がRSSIの波形を示し、下側が位相の波形を示す。
【0049】
図6に示すように、端末20の蓄電素子30が充電中から満充電に移行すると、リーダライタ10で計測されるRSSI及び位相の各々の波形が変化していることが分かる。この波形の変化は、例えば、充電中における充電停止状態のデューティ比と、満充電時における充電停止状態のデューティ比との変化として表すことができる。充電停止状態のデューティ比は、満充電時の方が充電中よりも高くなる。デューティ比の変化は、例えば、閾値を用いて判定することができる。この閾値には、例えば、実験又は過去の知見に基づき適切な値が設定される。なお、充電実行状態のデューティ比を用いてよい。
【0050】
リーダライタ10の制御部15は、端末20の蓄電素子30が充電中であるか、満充電であるかを判定し、判定結果を上位装置(図8参照)に通知する。無線電力伝送によるデータセンシングを行う場合には、端末20の蓄電素子30に十分に充電ができているかをリーダライタ10に伝達して、上位装置がセンシング動作の開始のタイミングを決定する。
【0051】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る充電状態検出システム100の作用について説明する。
【0052】
図7は、本実施形態に係る充電状態検出システム100による充電状態検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
まず、図7のステップS101では、リーダライタ10が、端末20に対して、無線を介して電力を供給する。
【0054】
ステップS102では、端末20が、リーダライタ10から送信された電力を受信し、受信した電力から直流電力を取り出す。
【0055】
ステップS103では、端末20が、ステップS102で取り出した直流電力の電圧及び電流の少なくとも一方を変化させて充電可能な蓄電素子30に出力し、蓄電素子30の充電を開始する。なお、蓄電素子30の充電には、例えば、電力供給とともに自動的に充電開始するケースと、リーダライタ10からのコマンドに応じて充電を開始するケースと、がある。
【0056】
ステップS104では、端末20が、アンテナ21のインピーダンスを変更し、アンテナ21の整合状態を切り替え、リーダライタ10から電力を受信しながら無線の電波に対する反射波にデータをのせてリーダライタ10に対して連続的に送信する。
【0057】
ステップS105では、リーダライタ10が、端末20から、データがのせられた反射波を受信する。
【0058】
ステップS106では、リーダライタ10が、一例として、図6に示すように、端末20からの反射波が表す受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動を計測する。
【0059】
ステップS107では、リーダライタ10が、ステップS106で計測した受信信号の位相及び振幅の少なくとも一方の変動に基づいて、蓄電素子30の充電状態(充電中又は満充電)を検出し、検出結果を上位装置(図8参照)に送信し、本充電状態検出処理を終了する、あるいは、必要に応じて、ステップS104に戻り処理を繰り返す。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、端末に新たなハードウェアを搭載することなく、端末の充電制御部が動作するレベルの低い消費電力(例えば10μW程度)で充電状態を検出することができる。
【0061】
また、リーダライタにより、バックスキャッタ(後方散乱)通信の受信信号強度、受信信号位相等を用いて端末が備える蓄電素子の充電状態を把握することができる。このため、データ通信に充電状態を示す情報をのせる必要がなく、リーダライタで端末の動作状態を監視することができる。これにより、端末毎にセンサの使用時間、蓄電素子の充電時間を計測することにより、蓄電素子の残容量の推定を行うことができる。
【0062】
その他、上記実施形態で説明した充電状態検出システム及びリーダライタの構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 リーダライタ
11、21 アンテナ
12 給電部
13、26 送信部
14、25 受信部
15 制御部
20 端末
22 無線部
23 スイッチ
24 電力抽出部
27 無線制御部
28 メモリ
29 充電制御部
30 蓄電素子
31 センサ
100 充電状態検出システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8