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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125939
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】光電変換素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20240911BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240911BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034083
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】若宮 淳志
(72)【発明者】
【氏名】中村 智也
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】三木 真湖
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251FA04
5F251FA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、特性を向上させつつ、ペロブスカイト層の表面が比較的平らな光電変換素子やその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の電極、正孔輸送層、光電変換層、ペロブスカイト含有膜、電子輸送層、及び第2の電極をこの順で積層した光電変換素子であって、光電変換層は3次元ペロブスカイト化合物を含み、ペロブスカイト含有膜は、2次元ペロブスカイト化合物を含む、光電変換素子。特に、3次元ペロブスカイト化合物、及び2次元ペロブスカイト化合物は、スズを含むペロブスカイト化合物である光電変換素子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、正孔輸送層、光電変換層、ペロブスカイト含有膜、電子輸送層、及び第2の電極をこの順で積層した光電変換素子であって、
前記光電変換層は3次元ペロブスカイト化合物を含み、
前記ペロブスカイト含有膜は、2次元ペロブスカイト化合物を含む、
光電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記3次元ペロブスカイト化合物、及び前記2次元ペロブスカイト化合物は、スズを含むペロブスカイト化合物である、
光電変換素子。
【請求項3】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記3次元ペロブスカイト化合物は、
α1 β1 γ1で示される化合物であり、
は、Cl、Br、及びIのいずれか1種又は2種以上であり、
は、Snであるか、Sn及びPbであり、
は、N,N-ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドである、
光電変換素子。
【請求項4】
請求項3に記載の光電変換素子であって、
前記2次元ペロブスカイト化合物は、
α2 β2 γ2で示される化合物であり、
は、Cl、Br、及びIのいずれか1種又は2種以上であり、
は、Snであるか、Sn及びPbであり、
は、R-NHで示される(Rは、直鎖又は分鎖のC~Cアルキル基、直鎖又は分鎖のC~Cアルキル基で置換されてもよいC~Cアリール基、又はC~C12アラルキル基を示す。)、
光電変換素子。
【請求項5】
請求項4に記載の光電変換素子であって、
前記光電変換層は、前記ペロブスカイト含有膜と接する面にボイドがない光電変換層である
光電変換素子。
【請求項6】
請求項5に記載の光電変換素子であって、
前記ペロブスカイト含有膜が、
-NHで示される化合物を含む、
光電変換素子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の光電変換素子であって、
前記光電変換素子が太陽電池である光電変換素子。
【請求項8】
3次元ペロブスカイト化合物を含む溶液を用いて光電変換層を得る光電変換層取得工程と、
前記光電変換層取得工程で得られた光電変換層に2次元ペロブスカイト化合物の前駆体の飽和溶液を塗布し、前記ペロブスカイト含有膜を得るペロブスカイト含有膜取得工程と、
を含む、光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記光電変換素子が、
第1の電極、正孔輸送層、光電変換層、ペロブスカイト含有膜、電子輸送層、及び第2の電極をこの順で積層した光電変換素子である光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記光電変換素子が太陽電池である光電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及びその製造方法に関する。より詳しく説明すると、本発明は、ペロブスカイト層の表面が比較的平らな光電変換素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-162922号公報には、ペロブスカイト型の太陽電池が記載されている。ペロブスカイト型の太陽電池(特にSn系ペロブスカイト太陽電池)の特性を向上させるため、パッシベーション層を形成しようとすると、表面にボイド(穴)が形成されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-162922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特性を向上させつつ、ペロブスカイト層の表面が比較的平らな光電変換素子やその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基本的には、3次元ペロブスカイト化合物を含む光電変換層に対して、2次元ペロブスカイト化合物を含むペロブスカイト含有膜を形成することで、光電変換層(ペロブスカイト層)の表面にボイドが発生せず、表面が比較的平らな電変換素子を得ることができるという知見に基づく。この発明は、Sn系ペロブスカイト層を有する光電変換素子において特に有効である。
【0006】
第1の発明は、光電変換素子に関する。
この光電変換素子は、第1の電極、正孔輸送層、光電変換層、ペロブスカイト含有膜、電子輸送層、及び第2の電極をこの順で積層した光電変換素子である。
そして、光電変換層は、3次元ペロブスカイト化合物を含む。ペロブスカイト含有膜は、2次元ペロブスカイト化合物を含む。
【0007】
3次元ペロブスカイト化合物、及び2次元ペロブスカイト化合物のいずれか又は両方は、スズを含むペロブスカイト化合物であるものが好ましい。特に、3次元ペロブスカイト化合物は、スズを含むペロブスカイト化合物であるものが好ましい。
【0008】
3次元ペロブスカイト化合物の好ましいものは、
α1 β1 γ1で示される化合物であり、
は、Cl、Br、及びIのいずれか1種又は2種以上であり、
は、Snであるか、Sn及びPbであり、
は、N,N-ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドである。
【0009】
2次元ペロブスカイト化合物の好ましいものは、
α2 β2 γ2で示される化合物であり、
は、Cl、Br、及びIのいずれか1種又は2種以上であり、
は、Snであるか、Sn及びPbであり、
は、R-NHで示される(Rは、直鎖又は分鎖のC~Cアルキル基、直鎖又は分鎖のC~Cアルキル基で置換されてもよいC~Cアリール基、又はC~C12アラルキル基を示す。)。この場合、 ペロブスカイト含有膜が、R-NHで示される化合物を含むものが好ましい。R-NHで示される化合物の例は、2-フェニルエチルアミン、n-ブチルアミン、及びアニリンである。
【0010】
光電変換素子の好ましいものは、光電変換層は、ペロブスカイト含有膜と接する面にボイドがない光電変換層である。
【0011】
光電変換素子の例は、太陽電池である。
【0012】
第2の発明は、光電変換素子の製造方法に関する。
この光電変換素子の製造方法は、光電変換層取得工程と、ペロブスカイト含有膜取得工程とを含む。
光電変換層取得工程は、3次元ペロブスカイト化合物を含む溶液を用いて光電変換層を得るための工程である。
ペロブスカイト含有膜取得工程は、光電変換層取得工程で得られた光電変換層に2次元ペロブスカイト化合物の前駆体の飽和溶液を塗布し、ペロブスカイト含有膜を得るための工程である。この方法において、光電変換素子は、上記したいずれかのものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特性を向上させつつ、ペロブスカイト層の表面が比較的平らな光電変換素子やその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の光電変換素子における構成例を示す概念図である。
図2図2は、実施例1における光電変換層の図面に代わるSEM画像である。
図3図3は、実施例2における光電変換層の図面に代わるSEM画像である。
図4図4は、比較例1における光電変換層の図面に代わるSEM画像である。
図5図5は、比較例2における光電変換層の図面に代わるSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0016】
図1に、本発明の光電変換素子の構成の一例を示す。なお、図1は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。図示のとおり、本発明の光電変換素子1の例は、ペロブスカイト太陽電池であり、逆構造を示すものである。この例では、光電変換素子1は、支持体11、第1の電極12、正孔輸送層13、光電変換層14、電子輸送層15、及び第2の電極16を有し、光電変換層14と電子輸送層15との間に、ペロブスカイト含有膜17を有する。
【0017】
[支持体11]
支持体11は、特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換素子に使用可能な基板を適宜用いてもよい。前記基板としては、例えば、ガラス、プラスチック板、プラスチック膜、無機結晶体等が挙げられる。また、これらの基板表面の一部又は全部の上に,金属膜,半導体膜,導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も、支持体11として好適に用いることができる。支持体11の大きさ、厚み等も特に限定されず、例えば、一般的な太陽電池等の光電変換素子と同様又はそれに準じてもよい。
【0018】
[第1の電極12]
第1の電極12は、例えば、正孔輸送層13を支持するとともに、光電変換層14から正孔を取り出す機能を有する層である。また、第1の電極12は、例えば、カソード(正極)として働く層である。
【0019】
第1の電極12は、例えば、支持体11上に直接形成してもよい。第1の電極12は、例えば、導電体から形成された透明電極であってもよい。前記透明電極はとしては、特に限定されないが、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜、不純物ドープの酸化インジウム(In)膜、不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜、フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜、これらの二種以上を積層して形成された積層膜、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、チタン、クロム、ニッケル、及びコバルトなどが挙げられる。これらは単独でも2種類以上の混合であっても、また、単層でも積層であっても構わない。また、これらの膜は、例えば拡散防止層として機能するものであってもよい。第1の電極12の厚みは特に制限されないが、例えば、シート抵抗が5~15Ω/□(単位面積当たり)となるように調整することが好ましい。第1の電極12の形成方法は特に限定されないが、例えば、形成する材料に応じ、公知の成膜方法により得ることができる。また、第1の電極12の形状も特に限定されないが、例えば、膜状であっても、メッシュ状のような格子状に形成されていても構わない。支持体11上に第1の電極12を形成する方法は特に限定されないが、例えば、公知の方法でもよく、例えば、真空蒸着やスパッタリング等の真空製膜が好ましい。また第1の電極12はパターニングされたものを用いてもよい。パターニング方法としては、という二限定されないが、例えば、レーザーやエッチング液に浸す方法、真空製膜時にマスクを用いてパターニングする方法等が挙げられ、本発明においては何れの方法であっても構わない。また、第1の電極12は、電気的抵抗値を下げる目的で、金属配線などを併用してもよい。前記金属配線(金属リード線)の材質としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。前記金属リード線は、例えば、蒸着、スパッタリング、圧着などで第1の基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設ける、あるいはITOやFTOの上に設けることにより併用することが可能である。
【0020】
[正孔輸送層13]
正孔輸送層13は、電荷を輸送する機能を有する層であり、導電体、半導体、有機正孔輸送材料等を用いることができる。前記有機正孔輸送材料は、光電変換層14から正孔を受け取り、正孔を輸送する正孔輸送材料として機能する。前記導電体及び前記半導体としては、無機正孔輸送材料あるいは前記有機正孔輸送材料が用いられる。前記無機正孔輸送材料としては、例えば、CuI、CuInSe、CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP、NiO、CiO、FeO、Bi、MoO、CrO等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、1価銅を含む半導体が好ましく、NiO、CuIあるいはCuSCNがより好ましい。前記有機正孔輸送材料としては、例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも、より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から、トリフェニルアミン誘導体、フルオレン誘導体等が好ましく、PTAA、Spiro-OMeTADなどがより好ましい。
【0021】
更に、前記有機正孔輸送材料は、正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として、例えば、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、亜鉛ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、ナトリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、リチウムノナフルオロ-N-[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド、カリウムノナフルオロ-N-[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド、ノナフルオロ-N-[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミド、リチウムN,N-ヘキサフルオロ-1,3-ジスルホニルイミド、ナトリウムN,N-ヘキサフルオロ-1,3-ジスルホニルイミド、トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀、NOSbF、SbCl、SbF、トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド]等の酸化剤を含むこともできる。また、正孔輸送層15、25中には、例えば、tert-ブチルピリジン(TBP)、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含めることもできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は、例えば、従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層13の膜厚は、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、例えば、1~500nmが好ましく、2~300nmがより好ましい。正孔輸送層13を成膜する方法は、例えば、乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、有機正孔輸送材料を含む溶液を、乾燥雰囲気下、ペロブスカイト層(光吸収層)上に塗布(スピンコート等)し、30~180℃、特に100~150℃で加熱することが好ましい。
【0022】
また、正孔輸送層13としては、例えば、単分子層を形成する正孔輸送化合物(以下、「単分子正孔輸送化合物」とも言う。)を用いることも可能である。前記単分子正孔輸送化合物としては、例えば、逆型構造において、透明電極であるITO等と化学結合するアンカーを有することが望ましい。前記アンカーとしては、例えば、ホスホン酸基(-P=O(OH))、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、ボロン酸基(-B(OH)2)、トリハロゲン化シリル基(-SiX、ただしXはハロゲン原子)、又はトリアルコキシシリル基(-Si(OR)、ただしRはアルキル基)等を挙げることができる。これらの中で特に、ホスホン酸基、トリハロゲン化シリル基、トリアルコキシシリル基が好ましい。
【0023】
前記単分子正孔輸送材料を用いた正孔輸送層13の形成方法は特に限定されないが、例えば、前記単分子正孔輸送化合物を第1の電極12に吸着させて単分子層を形成させることにより、正孔輸送層13を形成することができる。前記単分子正孔輸送化合物を第1の電極12に吸着させて単分子層を形成させる方法は、特に限定されないが、例えば、前記単分子正孔輸送化合物を溶媒に溶解し、第1の電極12と接触させ結合させればよい。前記単分子正孔輸送化合物と第1の電極12との結合は、特に限定されず、物理的な結合であっても化学的な結合であっても構わない。前記結合の種類も特に限定されず、例えば、水素結合、エステル結合、キレート結合などの何れであっても構わない。前記単分子正孔輸送化合物を溶解させるための前記溶媒も、特に限定されず、例えば、水及び有機溶媒の一方でもよいし、両方でもよい。前記溶媒としては、より具体的には、水、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、チオフェンなどのヘテロ環類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジエチルスルホン、スルホランなどのスルホン類、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族化合物類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどのフッ素系溶媒を挙げることができ、単独で用いても2種類以上の混合で用いても構わない。
【0024】
前記単分子正孔輸送化合物を第1の電極12に吸着させて単分子層を形成させる具体的な方法は、特に限定されないが、例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコ-ト法、バーコート法など既知の方法を挙げることができる。吸着する際の温度は、特に限定されないが、-20℃~100℃が好ましく、0℃~50℃がより好ましい。吸着する時間も特に限定されないが、例えば、1秒~48時間が好ましく、10秒~1時間がより好ましい。また、前記吸着処理後は、例えば、洗浄を行ってもよいし、行わなくてもよい。前記洗浄の方法も特に限定されないが、例えば、公知の方法を適宜用いてもよい。また、前記吸着処理後、又は前記洗浄後には、加熱処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。前記加熱処理の温度は、50℃~150℃が好ましく、70℃~120℃がより好ましい。加熱処理時間は1秒~48時間が好ましく、10秒~1時間がより好ましい。また、この加熱処理は、例えば、大気下で行なってもよいし、真空中で行なってもよい。
【0025】
前記単分子正孔輸送化合物を第1の電極12に吸着させる際には、共吸着剤を併用してもよい。前記共吸着剤は、前記単分子正孔輸送化合物だけでは電極表面を完全に被覆できない場合や、前記単分子正孔輸送化合物同士の相互作用を阻害する目的で添加することができる。その共吸着剤の具体例としては、n-ブチルホスホン酸、n-ヘキシルホスホン酸、n-デシルホスホン酸、n-オクタデシルホスホン酸、2-エチルヘキシルホスホン酸、メトキシメチルホスホン酸、3-アクリロイルオキシプロピルホスホン酸、11-ヒドロキシウンデシルホスホン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロホスホン酸、3-アミノプロピルホスホン酸、4-ホスホノブチル酸などのホスホン酸化合物、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、ノナン酸、フルオロ酢酸、α-クロロプロピオン酸、グリオキシル酸、ケノデオキシコール酸などを挙げることができ、これらは単独で用いても2種類以上の混合で用いても構わない。
【0026】
前記共吸着剤を第1の電極12に吸着させる方法は、特に限定されないが、前記単分子正孔輸送化合物と同様に、溶媒に溶解してから吸着させる方法が好ましい。前記溶媒も特に限定されないが、例えば、前記単分子正孔輸送化合物について例示した前述の溶媒と同様でもよい。また、前記共吸着剤は、前記単分子正孔輸送化合物を一度基板に吸着した後に、前記共吸着剤を溶解した溶媒に第1の電極12を浸漬して吸着させてもよいし、前記単分子正孔輸送化合物と一緒に有機溶媒に混合して溶解したものを用いてもよい。
【0027】
[光電変換層14]
光電変換層14は、特に限定されず、一般的な太陽電池等の光電変換素子に用いられる光電変換層と同様でもよい。光電変換層14は、3次元ペロブスカイト化合物を含む。前記3次元ペロブスカイト化合物は、下記化学式(I)で表される化合物であってもよい。
α1 β1 γ1...(I)
3次元ペロブスカイト化合物は、例えば、ダブルペロブスカイト型化合物のように3次元の結晶構造を有するペロブスカイト化合物である。3次元ペロブスカイト化合物は、例えば、特許7217213号公報に記載されているように、公知である。3次元ペロブスカイト化合物である、3次元有機無機ペロブスカイトは、有機カチオンと2価の金属イオンとハロゲンイオンからなるイオン化合物であり、これらのイオンがペロブスカイト(灰チタン石)と同じ結晶構造(ペロブスカイト型構造)を形成するように規則的に配置した構造を有する。
【0028】
前記化学式(I)において、Xはハロゲンイオン、Yは金属イオン、Zはアミノ基を有する有機化合物又はアルカリ金属イオンを表す。α1、β1及びγ1は、3次元ペロブスカイト化合物の組成比である。α1:β1:γ1の比率の例は3:1:1である。α:β:γの比率は、例えば、3:1.05:0.95のように、必ずしも整数である必要はない。また、0.5γ1≦α1≦5γ1が好ましく、2γ1≦α1≦4γ1が好ましく、2.5γ1≦α1≦3.5γ1でもよい。0.3γ1≦β1≦3γ1が好ましく、0.5γ1≦β1≦2γ1が好ましく、0.5γ1≦β1≦1.5γ1でもよい。
としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。Xの例は、Cl、Br、及びIのいずれか1種又は2種以上である。
としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に鉛この中でも、特に鉛とスズの併用が好ましい。また、ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。ペロブスカイト層は、アルカリ金属を含有してもよい。ペロブスカイト層がアルカリ金属を少なくとも含有すると、出力が高くなる点で有利である。アルカリ金属としては、例えば、セシウム、ルビジウム、カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、セシウムが好ましい。Yの好ましい例は、Snであるか、Sn及びPbである。
Sn系ペロブスカイト層は、ペロブスカイト層の溶解性が高い。このため、Sn系ペロブスカイト層を有する光電変換素子の特性を向上させようとすると、ペロブスカイト層が侵食され、ペロブスカイト層に穴が開いてしまう(ボイドが形成される)という問題がある。このため、本発明は、YがSnであるか、少なくともYとしてSnを含むものに好ましく用いることができる。
としては、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオン(アミノ基を有する有機化合物)や、有機に限らず、セシウム、カリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属イオンが挙げられる。アルキルアミン化合物イオンやアルカリ金属イオンは、それぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、有機(アルキルアミン化合物イオン)と無機(アルカリ金属イオン)とを併用することもでき、例えば、セシウムイオンとホルムアミジンを併用してもよい。Zの好ましい例は、N,N-ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドである。
【0029】
ペロブスカイト層の表面が比較的平らであることが好ましい。例えば、光電変換層は、ペロブスカイト含有膜と接する面にボイドがないものが好ましい。具体的に説明すると、ボイドとは、周囲より窪んだ穴であり、穴の深さは、ペロブスカイト層の膜厚以下であり、穴の深さの例は、膜厚の1/20以上10/10以下であり、1/10以上10/10以下でもよいし、1/9以上8/9以下でもよいし、1/8以上7/8以下でもよい。ボイドの有無は、SEM写真等により確認できるし、また得られた光電変換素子の特性を測定することにより確認できる。また、ボイドが連続して膜厚全体を貫通する貫通孔が存在しない方が好ましい。
【0030】
光電変換層14は、前述のとおり、ペロブスカイト化合物から形成されたペロブスカイト層であってもよい。このようなペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
【0031】
また、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。他には、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。更に、メチルアミンなどが充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法等も挙げられる。更に、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が特に好ましい。これらの溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。上述の貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法として、使用される貧溶媒としては、n-ヘキサン、n-オクタンなどの炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、クロロフロロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンなどのフッ素系溶媒を挙げることができる。
3次元ペロブスカイト化合物を含む溶液を用いて光電変換層(3次元ペロブスカイト化合物を含むか又は3次元ペロブスカイト化合物からなるペロブスカイト層を有する光電変換層)を得ることができる。
【0032】
光電輸送層14(例えば光吸収層であり、例えばペロブスカイト層)の厚みは、特に限定されないが、欠陥や剥離による性能劣化をより抑制する観点から、50~1200nmが好ましく、200~800nmがより好ましい。
【0033】
[ペロブスカイト含有膜17]
本発明では、3次元ペロブスカイト化合物からなる層の上に、2次元ペロブスカイト化合物を含む膜を形成する。2次元ペロブスカイトも3次元ペロブスカイトと同様に一般式(II)にて表すことができる。
α2 β2 γ2...(II)
例えば、特許第6714412号公報には、2次元ペロブスカイト形成用材料が記載されている。このように2次元ペロブスカイト化合物は公知である。2次元ペロブスカイト化合物は、2次元の結晶構造を有するペロブスカイト化合物である。2次元ペロブスカイト化合物は、例えば、ペロブスカイト型構造の八面体部分に相当する無機骨格が2次元配列してなる無機層と、配向した有機カチオンからなる有機層とが交互に積層した層状構造を有する。
【0034】
前記化学式(II)において、Xはハロゲンイオン、Yは金属イオン、Zはアミノ基を有する有機化合物又はアルカリ金属イオンを表す。α2、β2及びγ2は、2次元ペロブスカイト化合物の組成比である。前記化学式(II)において、α:β:γの比率の例は4:2:1である。α:β:γの比率は、例えば、4:1.8:1.2のように、必ずしも整数である必要はない。また、0.5γ2≦α2≦8γ2が好ましく、1γ2≦α2≦6γ2が好ましく、3γ2≦α2≦5γ2でもよい。0.5γ2≦β2≦5γ2が好ましく、γ2≦β2≦4γ2が好ましく、1.5γ2≦β2≦2γ2でもよい。
は、Xと同様である。Yは、Yと同様である。
は、R-Aで示されるものが好ましく、より好ましくは、R-NHで示されるものである。
ここで、Rは、直鎖又は分鎖のC~Cアルキル基、直鎖又は分鎖のC~Cアルキル基で置換されてもよいC~Cアリール基、又はC~C12アラルキル基を示す。
の具体例としては、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ドデシル基、2-エチルヘキシル基などの炭素数4以上のアルキル基、フェニル基、4-メトキシフェニル基、3-クロロフェニル基、1-ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-チオフェンメチル基、3-チオフェンメメチル基などのアラルキル基、2-フリル期、2-ピリジル基などのヘテロ環を表す。
Aは、アンモニウムカチオンを表す。また、2次元ペロブスカイト化合物の形成方法は3次元ペロブスカイト化合物の形成方法と同じものを利用することができる。
【0035】
光電変換層に2次元ペロブスカイト化合物の前駆体の飽和溶液を塗布し、ペロブスカイト含有膜を得ることが好ましい。この工程では、溶媒として、光電変換層を作成する際に用いられる溶媒を適宜用いればよい。この膜は、パッシベーション層として機能してもよい。
【0036】
[電子輸送層15]
電子輸送層15に用いられる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。前記半導体材料としては、特に制限はないが、広く公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体、有機n型半導体などを挙げることができ、その中でも金属酸化物半導体が最も適している。
前記化合物半導体としては、特に限定されないが、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。
有機n型半導体としては、特に限定されないが、例えば、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボキシジイミド化合物、ナフタレンジイミド-ビチオフェン共重合体、ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン重合体、C60、C70、PCBM([6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル)などのフレーラン化合物、カルボニルブリッジ-ビチアゾール化合物、ALq3(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム)、トリフェニレンビピリジル化合物、シロール化合物、オキサジアゾール化合物などを挙げることができる。本発明においては、電子輸送層15に用いられる前述の材料の中でも、特に有機n型半導体が好ましい。また、これら半導体材料の結晶型に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でも構わない。また、電子輸送層15の膜厚としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm~1000nmが好ましく、10nm~700nmがより好ましい。
【0037】
電子輸送層15の形成方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。真空製膜法としては、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。湿式製膜法としては、電子輸送材料を溶解した溶媒を塗布して形成する方法や、酸化物半導体の場合、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0038】
[第2の電極16]
第2の電極16(例えば裏面電極であってもよい)は、電子輸送層を介して光電変換層14から電子を取り出す機能を有する層である。また、第2の電極16は、例えば、アノード(負極)として働く層である。
【0039】
第2の電極16は、電子輸送層(電子注入層とも言う)15上に直接形成してもよい。また、第2の電極16の材質は、特に限定されず、例えば、第1の電極12と同様の材質を用いることができる。第2の電極16としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電極16の材質としては、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
【0040】
前記金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられ、前記炭素化合物としては、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。前記導電性金属酸化物としては、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。前記導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
【0041】
第2の電極16の形成に用いられる材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用(混合)あるいは積層してもよい。第2の電極16は、用いられる材料の種類や正孔輸送層13の種類により、適宜電子輸送層15上に塗布、ラミネート、真空蒸着、CVD、貼り合わせなどの方法を用いることにより形成可能である。
【0042】
また、本発明の光電変換素子においては、第1の電極12及び第2の電極16の少なくとも一方は実質的に透明であることが好ましい。本発明の光電変換素子を使用する際には、電極を透明にして、入射光を電極側から入射させることが好ましい。この場合、裏面電極(透明電極と反対側の電極であり、例えば、前記第2の電極)には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、金属薄膜などが好ましく用いられる。また、入射光側の電極に反射防止層を設けることも有効な手段である。
【0043】
さらに、本発明の光電変換素子の構成は、図1の構成に限定されない。例えば、支持体11が、図1とは逆側(図1で第2の電極16の上側)に配置されており、支持体11上に、第2の電極16、電子輸送層15、光電変換層14、正孔輸送層13、及び第1の電極12が、前記順序で積層されていてもよい。また、例えば、前述のとおり、支持体11、第1の電極12、正孔輸送層13、光電変換層14、電子輸送層15、及び第2の電極16の各層間に、他の構成要素が存在していてもよいし存在していなくてもよい。また、第1の電極12が透明電極で第2の電極16が裏面電極である例について説明したが、本発明の光電変換素子はこれに限定されない。例えば、本発明の光電変換素子において、逆に、第1の電極が裏面電極で第2の電極が透明電極であってもよい。
【0044】
[封止]
本発明の光電変換素子(例えば太陽電池)は、水や酸素からデバイス(本発明の光電変換素子)を守るために封止することが好ましい。封止の構造は特に限定されないが、例えば、一般的な光電変換素子(例えば太陽電池)と同様でもよく、具体的には、例えば、本発明の光電変換素子の外周部のみに封止材を塗布してガラスやフィルムで覆ってもよく、本発明の光電変換素子の全面に封止材を塗布してガラスやフィルムで覆ってもよく、本発明の光電変換素子の全面に封止材を塗布したのみでもよい。
【0045】
封止部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例
えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を用い、硬化させることが好ましいが、硬化していなくても、一部だけが硬化していても構わない。
【0046】
前記エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられ、これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられ、これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。また、エポキシ樹脂には、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。既に市販されているエポキシ樹脂組成物を、本発明において使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物もあり、本発明において特に有効に使用できる。市販されているエポキシ樹脂組成物としては、例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(株式会社スリーボンド製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学産業株式会社製)、WB90US(P)、WB90US-HV(モレスコ社製)等が挙げられる。
【0047】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているものを有効に使用できる。市販されているアクリル樹脂組成物としては、例えば、TB3035B、TB3035C(株式会社スリーボンド製)等が挙げられる。
【0048】
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系、その他の硬化剤などが挙げられる。アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられ、酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。その他の硬化剤としては、イミダゾール類、ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0049】
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。添加剤として充填材を含有することにより、水分や酸素の浸入を抑制し、更には硬化時の体積収縮の低減、硬化時あるいは加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御などの効果を得ることができる。そのため、添加剤として充填材を含むことは、様々な環境で安定した出力を維持する上で非常に有効である。
【0050】
また、光電変換素子の出力特性やその耐久性に関しては、侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時あるいは加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境で保存する際にも有効である。
【0051】
前記充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性あるいは不定形のシリカ、タルクなどのケイ酸塩鉱物、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材などが挙げられる。これらの中でも、特にハイドロタルサイトが好ましい。また、これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0052】
前記充填材の平均一次粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。前記充填材の平均一次粒径が上記の好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性が向上し、封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
【0053】
前記充填材の含有量としては、封止部材全体(100質量部)に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。前記充填材の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0054】
前記ギャップ剤は、ギャップ制御剤あるいはスペーサー剤とも称される。添加剤としてギャップ材を含むことにより、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1の基板又は第1の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第2の基板を載せて封止を行う場合、封止部材がギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
【0055】
前記ギャップ剤としては、特に限定されないが、例えば、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものが好ましく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ギャップ剤としては、エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子などが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ギャップ剤の粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0056】
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、熱や光を用いて重合を開始させる重合開始剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物であり、2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としては、ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0057】
前記光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。また、重合開始剤として、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0058】
前記重合開始剤の添加量としては、特に限定されず、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体(100質量部)に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記の好ましい範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0059】
前記乾燥剤(吸湿剤とも称される)は、水分を物理的あるいは化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高め、アウトガスの影響を低減できる。前記乾燥剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0060】
前記硬化促進剤(硬化触媒とも称される)は、硬化速度を速める材料であり、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。前記硬化促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミンあるいは三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンあるいはホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0061】
前記カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上の併用であってもよい。
【0062】
本発明においては、例えば、シート状接着剤を用いることができる。シート状接着剤とは、例えば、シート上に予め樹脂層を形成したもので、シートにはガラスやガスバリア性の高いフィルム等を用いることができる。また、封止樹脂のみでシートを形成していてもよい。シート状接着剤を、封止フィルム上に貼り付けることも可能である。封止フィルム上に、中空部を設けた構造にしてからデバイスと貼り合せることも可能である。
【0063】
前記封止フィルムを用いて封止する場合、光電変換デバイスを挟むように支持体と対向して配置される。封止フィルムの基材としては、その形状、構造、大きさ、種類については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。封止フィルムは、基材の表面に水分や酸素の通過を防ぐバリア層を形成しており、基材の一方の面だけでも両面に形成されていてもよい。
【0064】
前記バリア層は、例えば、金属酸化物、金属、高分子と金属アルコキシドより形成された混合物などを主成分とする材質で構成されていてもよい。前記金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミニウム、などを挙げることができ、前記高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロースなどを挙げることができ、前記金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0065】
前記バリア層は、例えば、透明であっても不透明であっても構わない。また、バリア層は上記材料からの組合せによる単層であっても、複数の積層構造であっても構わない。バリア層の形成方法は、既知の方法を用いることができ、スパッタ法などの真空製膜、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの塗布方法を使用することができる。
【0066】
[配線]
本発明の光電変換素子(例えば太陽電池)は、光によって発生した電流を効率的に取り出すため、電極、及び裏面電極にリード線(配線)を接続することが好ましい。リード線は、例えば、前記第1の電極及び前記第2の電極と、はんだ、銀ペースト、グラファイトのような導電性材料を用いて接続される。導電性材料は単独でも2種以上の混合または積層構造で用いても構わない。また、リード線を取り付けた部位は、物理的な保護の観点から、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂で覆っても構わない。
【0067】
リード線は、電気回路における電源や電子部品などを電気的に接続するための電線の総称であり、例えば、ビニール線、エナメル線などを挙げることができる。
【0068】
[アプリケーション]
本発明の光電変換素子の用途及び使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な光電変換素子(例えば一般的な太陽電池)と同様の用途に広く用いることができる。本発明の光電変換素子(例えば太陽電池)は、例えば、発生した電流を制御する回路基盤等と組み合わせることにより電源装置へ応用することができる。電源装置を利用している機器類としては、例えば、電子卓上計算機やソーラー電波腕時計などが挙げられる。また、携帯電話、電子ペーパー、温湿度計等に本発明の太陽電池を電源装置として適用することも可能である。また、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を延ばすための補助電源や、二次電池と組み合わせることによって夜間使用などにも応用可能である。また、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても利用可能である。
【実施例0069】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0070】
[実施例1]
以下のようにして、本発明の光電変換素子を作製した。
【0071】
ITOガラス上にスピンコートを用いてPEDOT:PSS(Heraeus, Clevios P VP. Al 4083)を製膜し、140℃で20分加熱乾燥を行った。次いで、ヨウ化スズ(372.5mg)、ヨウ化ホルムアミジン(172.0mg)、フッ化スズ(15.7mg)をジメチルスルホキシド(DMSO、1.0mL)に溶解し、45℃で30分攪拌した溶液へ、還元剤であるテトラメチルジヒドロピラジン(TM-DHP)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(1.0M)をヨウ化スズに対して1.0mol%になるまで加え、得た溶液を45℃で15分加熱攪拌を行った。この溶液を、先に形成したPEDOT:PSS上にスピンコートを用いて製膜し、65℃で30分、100℃で20分加熱を行い、ペロブスカイト層を形成した。次いで、2次元ペロブスカイトとしてPEASnI(PEA=2-フェニルエチルアミン)の結晶を酢酸エチル(2.7mM)に溶解し、65℃で1時間加熱攪拌を行った。この溶液を、先に形成したペロブスカイト層上にスピンコートを用いて製膜し、70℃、10分加熱を行った。ここまでに作製した光電変換層のSEM画像を図2に示す。次いで、この膜上にC60(フラーレン)とバソクプロイン(BCP、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Agを、それぞれ真空蒸着で20nm、8nm、80nm形成して光電変換素子を作製した。
【0072】
[太陽電池特性の評価]
実施例1で作製した光電変換素子の光電変換特性は、JISC8913:1998のシリコン結晶系太陽電池セルの出力測定方法に準拠した方法で測定した。結果を表1に示す。AM1.5G相当のエアマスフィルターを組み合わせたソーラーシュミレーター(分光計器社製SMO-250III型)に、2次基準Si太陽電池で100mW/cmの光量に調整して測定用光源とし、ペロブスカイト型太陽電池セルの試験サンプル(実施例1で作製した封止デバイス)に光照射をしながら、ソースメーター(KeithleyInstrumentsInc.製、2400型汎用ソースメーター)を使用してI-Vカーブ特性を測定し、I-Vカーブ特性測定から得られた短絡電流(Isc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、そして、短絡電流密度(Jsc)、及び光電変換効率(PCE)を求めた。
また、グローブボックス中でAM1.5G相当のエアマスフィルターを組み合わせたソーラーシミュレーターを100時間連続照射した後、上述と同じようにして光電変換効率を求めた。
【0073】
式1:短絡電流密度(Jsc;mA/cm)=Isc(mA)/有効受光面S(cm
式2:光電変換効率(PCE;%)=Voc(V)×Jsc(mA/cm)×FF×100/100(mW/cm
【0074】
[実施例2]
実施例1における酢酸エチルを2-プロパノールに変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し評価した。結果を表1に示す。また、光電変換層まで作製したSEM画像を図3に示す。
【0075】
[実施例3]
実施例1におけるPEASnIを、PEASnI3.8Br0.2に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し評価した。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例4]
実施例1におけるPEASnIを、BASnI(BA=n-ブチルアミン)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し評価した。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例5]
実施例1におけるPEASnIを、ANSnI(AN=アニリン)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し評価した。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例6]
実施例1における3次元ペロブスカイト層を形成する際のヨウ化ホルムアミジン(172.0mg)を、ヨウ化ホルムアミジン(13.8mg)とヨウ化メチルアミン(3.2mg)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し評価した。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例1]
実施例1のおけるPEASnIを用いずに、溶媒の酢酸エチルのみでペロブスカイト層表面を処理した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し評価した。結果を表1に示す。また、光電変換層まで作製したSEM画像を図4に示す。
【0080】
[比較例2]
実施例1のおけるPEASnIを用いずに、溶媒の2-プロパノールのみでペロブスカイト層表面を処理した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し評価した。結果を表1に示す。また、光電変換層まで作製したSEM画像を図5に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
前記表1より、本発明の光電変換素子は、実施例1~6と比較例1、2の違いから、本発明の光電変換素子は、光電変換層にボイドがなく、高性能な光電変換素子を得ることが明確である。また、図2図4の比較から、そして図3図5の比較から本発明の光電変換層はボイドができていないことが明確である。このボイドが初期の光電変換特性だけでなく、連続照射試験(耐久性試験)における維持率にも大きな影響を与えることが明確である。
【0083】
以上のとおり、本発明の光電変換素子の構成を用いることにより、良好な太陽電池特性を獲得できることが、本実施例により確認された。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上、説明したとおり、本発明によれば、優れた光電変換特性を示す光電変換素子を提供することができる。本発明の光電変換素子は、例えば、太陽電池として有用である。本発明の光電変換素子の用途及び使用方法は特に限定されず、例えば、一般的な光電変換素子(例えば、一般的な太陽電池)と同様の用途及び使用方法で、広範な分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 光電変換素子; 11 支持体; 12 第1の電極; 13 正孔輸送層; 14 光電変換層; 15 電子輸送層; 16 第2の電極; 17 ペロブスカイト含有膜


図1
図2
図3
図4
図5