(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125949
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、及び通信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/06 20090101AFI20240911BHJP
H04W 4/40 20180101ALI20240911BHJP
H04W 28/06 20090101ALI20240911BHJP
H04B 1/3822 20150101ALI20240911BHJP
【FI】
H04W24/06
H04W4/40
H04W28/06
H04B1/3822
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034102
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】230120499
【弁護士】
【氏名又は名称】藤江 和典
(74)【代理人】
【識別番号】100201385
【弁理士】
【氏名又は名称】中安 桂子
(72)【発明者】
【氏名】吉住 修
【テーマコード(参考)】
5K011
5K067
【Fターム(参考)】
5K011BA04
5K011JA01
5K011LA03
5K067AA13
5K067EE02
5K067EE10
5K067LL11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部装置が通信装置の正確な可用帯域を推定できるように、移動体に搭載される通信装置が可用帯域の推定に用いるデータを送信する通信装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】自動車をはじめとする移動体に搭載され、移動体の外部に位置する外部装置と通信ネットワークを介して無線通信を行う通信装置100は、データを取得するデータ取得部と、通信ネットワークの通信環境の変化を検出するとともに、検出結果に応じて、外部装置が前記通信ネットワークの可用帯域の推定に用いる推定用データとしてデータを送信することを指示する指示部と、指示部からの指示に基づいて推定用データを送信する送信部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、前記移動体の外部に位置する外部装置と通信ネットワークを介して無線通信を行う通信装置であって、
データを取得するデータ取得部(101)と、
前記通信ネットワークの通信環境の変化を検出するとともに、検出結果に応じて、前記外部装置が前記通信ネットワークの可用帯域の推定に用いる推定用データとして前記データを送信することを指示する指示部(103)と、
前記指示部からの指示に基づいて前記データを送信する送信部(104)と、
を備える、通信装置(100)。
【請求項2】
前記外部装置は、前記推定用データを分割した複数の推定用パケットを用いて前記可用帯域を推定する装置であり、
当該通信装置はさらに、前記データ取得部が取得した前記データを複数のパケットに分割する分割部(102)を備え、
前記指示部は、前記推定用データとして、前記複数のパケットに分割された前記データを送信することを指示し、
前記送信部は、前記複数のパケットを所定の間隔で前記外部装置に送信する、
請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記指示部は、当該通信装置が接続される基地局の切り替えを検出した場合に前記データを送信することを指示する、
請求項1又は2記載の通信装置。
【請求項4】
前記指示部は、前記通信ネットワークの通信品質の変化量が閾値以上であることを検出した場合に前記データを送信することを指示する、
請求項1又は2記載の通信装置。
【請求項5】
当該通信装置はさらに、前記外部装置から、前記可用帯域の推定に必要な前記推定用データのデータ量を示す推定用データ量情報を受信する受信部(105)を備え、
前記分割部は、前記データ取得部が取得した前記データから前記推定用データ量情報が示すデータ量を有する部分データを取り出し、取り出した前記部分データを前記複数のパケットに分割する、
請求項2記載の通信装置。
【請求項6】
前記データは、前記移動体である車両の状態を示す車両データであり、
当該通信装置はさらに、前記データ取得部が取得した前記車両データの第1のデータ量が前記推定用データ量情報が示す第2のデータ量よりも少ない場合に、前記第1のデータ量と前記第2のデータ量の差分のデータ量を有するダミーデータを前記車両データに付加する、ダミーデータ付加部(106)を備え、
前記分割部は、前記ダミーデータが付加された前記車両データを前記複数のパケットに分割する、
請求項5記載の通信装置。
【請求項7】
前記受信部はさらに、前記外部装置から、前記可用帯域の推定に必要な前記推定用パケットのデータ量を示す推定用パケットデータ量情報を受信し、
前記分割部は、前記部分データを、前記推定用パケットデータ量情報が示すデータ量をそれぞれ有する前記複数のパケットに分割する、
請求項5記載の通信装置。
【請求項8】
当該通信装置はさらに、前記外部装置から、第1のデータ量を有する前記推定用データを分割した第1の個数の前記推定用パケットを用いて前記可用帯域を推定できたか否かを示す推定成否情報を受信する受信部(105)を備え、
前記推定成否情報が前記可用帯域を推定できなかったことを示している場合に、前記指示部は、前記第1のデータ量を有する前記データを前記第1の個数より多い第2の個数のパケットに分割することを、前記分割部に指示する、
請求項2記載の通信装置。
【請求項9】
前記推定成否情報が前記可用帯域を推定できなかったことを示している場合に、前記指示部はさらに、前記所定の間隔を短くすることを前記送信部に指示する、
請求項8記載の通信装置。
【請求項10】
前記推定成否情報が前記可用帯域を推定できなかったことを示している場合であって、前記第1の個数の前記推定用パケットそれぞれのデータ量が所定の最小パケットデータ量である場合に、
前記指示部は、前記データ取得部が取得した前記データから、前記第1のデータ量より多い第2のデータ量の部分データを取り出し、取り出した前記部分データを前記第1の個数のパケットに分割することを、前記分割部に指示する、
請求項8記載の通信装置。
【請求項11】
前記受信部は、前記推定成否情報に加えて、前記外部装置が推定した前記可用帯域を示す推定帯域情報を受信し、
前記推定成否情報が前記可用帯域を推定できなかったことを示している場合であって、前記推定帯域情報が0の値を示している場合に、
前記指示部は、前記データ取得部が取得した前記データから、前記第1のデータ量より多い第2のデータ量の部分データを取り出し、取り出した前記部分データを前記第1の個数のパケットに分割することを、前記分割部に指示する、
請求項8記載の通信装置。
【請求項12】
前記データは、前記移動体である車両の状態を示す車両データであり、
当該通信装置はさらに、前記データ取得部が取得した前記車両データのデータ量である第3のデータ量が前記第2のデータ量よりも少ない場合に、前記第3のデータ量と前記第2のデータ量の差分のデータ量を有するダミーデータを前記車両データに付加する、ダミーデータ付加部(106)を備え、
前記分割部は、前記ダミーデータが付加された前記車両データを分割する、
請求項10又は11記載の通信装置。
【請求項13】
前記推定成否情報が前記可用帯域を推定できたことを示している場合に、前記指示部は、前記データ取得部が取得した前記データから、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の部分データを取り出し、取り出した前記部分データを前記第1の個数の前記複数のパケットに分割することを前記分割部に指示する、
請求項8記載の通信装置。
【請求項14】
前記推定成否情報が前記可用帯域を推定できたことを示している場合に、前記指示部は、前記データを、前記第1の個数より少ない第3の個数のパケットに分割することを前記分割部に指示する、
請求項8記載の通信装置。
【請求項15】
移動体に搭載され、前記移動体の外部に位置する外部装置と通信ネットワークを介して無線通信を行う通信装置で実行される通信方法であって、
データを取得し(S101)、
前記通信ネットワークの通信環境の変化を検出するとともに、検出結果に応じて、前記外部装置が前記通信ネットワークの可用帯域の推定に用いる推定用データとして前記データを送信することを指示し(S104)、
指示に基づいて前記データを送信する(S105)、
通信方法。
【請求項16】
移動体に搭載され、前記移動体の外部に位置する外部装置と通信ネットワークを介して無線通信を行う通信装置で実行可能な通信プログラムであって、
データを取得し(S101)、
前記通信ネットワークの通信環境の変化を検出するとともに、検出結果に応じて、前記外部装置が前記通信ネットワークの可用帯域の推定に用いる推定用データとして前記データを送信することを指示し(S104)、
指示に基づいて前記データを送信する(S105)、
通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、自動車をはじめとする移動体に搭載された通信装置であって、可用帯域を推定するサーバ装置と通信を行う通信装置、並びに、当該通信装置で実行される通信方法方法及び通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワークで利用可能な帯域が、無線通信の通信品質に影響を与えることが知られている。そのため、快適な通信品質を確保して通信を行うためには、通信ネットワークで利用可能な帯域、すなわち、可用帯域を把握して管理することが重要である。そのため、従来、可用帯域を推定するための様々な技術が提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、サイズの異なるテストパケットを用いることにより、少量のテストパケットで可用帯域を推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者は詳細な検討の結果、以下の課題を見出した。
従来の手法は、一定のデータ量を有するテストパケットを定期的に送信して可用帯域を推定するものである。自動車に搭載された通信装置では、自動車の移動に伴って、通信装置が接続されるセルは随時変化する。そのため、自動車に搭載された通信装置において従来の手法を採用した場合、テストパケットを送信する間に自動車が、接続中のセルから隣接するセルへと移動することが起こりうる。ところが、隣接するセルの境界領域では、セルの混雑状況や周波数変更の影響によって可用帯域が大きく変化する。そのため、従来のように、テストパケットを定期的に送信して可用帯域を推定する手法を採用した場合、セルの境界領域では正確な可用帯域を推定できないおそれがある。
【0006】
また、広い帯域を推定するためには、狭い帯域を推定する場合と比較して、より多くデータが必要となることが知られている。ところが、一定のデータ量を有するテストパケットを送信する手法では、帯域推定を行うのに十分なデータ量を有するパケットを送信できない、あるいは、帯域推定を行うには多すぎるデータ量を有するパケットを送信してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、移動体に搭載される通信装置の可用帯域を正確に推定することができるように、帯域推定に用いられるデータを適宜送信することが可能な通信装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様による通信装置(100)は、移動体に搭載され、前記移動体の外部に位置する外部装置と通信ネットワークを介して無線通信を行う通信装置であって、データを取得するデータ取得部(101)と、前記通信ネットワークの通信環境の変化を検出するとともに、検出結果に応じて、前記外部装置が前記通信ネットワークの可用帯域の推定に用いる推定用データとして前記データを送信することを指示する指示部(103)と、前記指示部からの指示に基づいて前記データを送信する送信部(104)と、を備える。
【0009】
本開示の他の一態様による通信装置(100)は、移動体に搭載され、前記移動体の外部に位置する外部装置と通信ネットワークを介して無線通信を行う通信装置であって、前記外部装置は、推定用データを分割した複数の推定用パケットを用いて前記通信ネットワークの可用帯域を推定する装置であり、当該通信装置は、データを取得するデータ取得部(101)と、前記外部装置から、所定のデータ量を有する前記推定用データを分割した第1の個数の前記推定用パケットを用いて前記可用帯域を推定できたか否かを示す推定成否情報を受信する受信部(105)と、前記推定成否情報が前記可用帯域を推定できなかったことを示している場合に、前記所定のデータ量を有する前記データを、前記第1の個数より多い第2の個数のパケットに分割することを指示する指示部(103)と、前記指示部からの指示に基づいて、前記データ取得部が取得した前記データを、前記第2の個数のパケットに分割する分割部(102)と、前記第2の個数の前記パケットを所定の間隔で前記外部装置に送信する送信部(104)と、を備える。
【0010】
なお、特許請求の範囲、及び本項に記載した発明の構成要件に付した括弧内の番号は、本発明と後述の実施形態との対応関係を示すものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0011】
上述のような構成により、本開示の通信装置等によれば、通信装置がセルの境界領域に位置する場合であっても、可用帯域を正確に推定することが可能となる。さらに、本開示の通信装置等によれば、外部装置の帯域推定状態に応じて、帯域推定に必要なデータを適切に送信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】各実施形態の通信装置の配置及び関係する機器との関係を説明する説明図
【
図2】各実施形態の通信装置の構成例を説明する説明図
【
図3】外部装置による可用帯域の算出方法を説明する図
【
図4】実施形態1の通信装置の動作を説明するフローチャート
【
図5】実施形態1の変形例の通信装置の動作を説明するフローチャート
【
図6】実施形態2の通信装置の動作を説明するフローチャート
【
図7】実施形態2の通信装置の動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
なお、本発明とは、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された発明を意味するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。また、少なくともかぎ括弧内の語句は、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された語句を意味し、同じく以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
特許請求の範囲の従属項に記載の構成及び方法は、特許請求の範囲の独立項に記載の発明において任意の構成及び方法である。従属項に記載の構成及び方法に対応する実施形態の構成及び方法、並びに特許請求の範囲に記載がなく実施形態のみに記載の構成及び方法は、本発明において任意の構成及び方法である。特許請求の範囲の記載が実施形態の記載よりも広い場合における実施形態に記載の構成及び方法も、本発明の構成及び方法の例示であるという意味で、本発明において任意の構成及び方法である。いずれの場合も、特許請求の範囲の独立項に記載することで、本発明の必須の構成及び方法となる。
【0016】
実施形態に記載した効果は、本発明の例示としての実施形態の構成を有する場合の効果であり、必ずしも本発明が有する効果ではない。
【0017】
複数の実施形態がある場合、各実施形態に開示の構成は各実施形態のみで閉じるものではなく、実施形態をまたいで組み合わせることが可能である。例えば一の実施形態に開示の構成を、他の実施形態に組み合わせてもよい。また、複数の実施形態それぞれに開示の構成を集めて組み合わせてもよい。
【0018】
発明が解決しようとする課題に記載した課題は公知の課題ではなく、本発明者が独自に知見したものであり、本発明の構成及び方法と共に発明の進歩性を肯定する事実である。
【0019】
1.各実施形態の前提となる構成
(1)通信装置の配置、及び関係する機器との関係
図1は、各実施形態の通信装置100、及び関係する機器との関係を説明する図である。
図1に示すように、通信装置100は「移動体」である車両に「搭載」される。
【0020】
ここで、「移動体」とは、移動可能な物体をいい、移動速度は任意である。また移動体が停止している場合も当然含む。例えば、自動車、自動二輪車、自転車、及びこれらに搭載される物を含み、またこれらに限らない。
「搭載」されるとは、移動体に直接固定されている場合の他、移動体に固定されていないが移動体と共に移動する場合も含む。例えば、移動体である車両に乗った人が所持している場合、移動体に載置された積荷に搭載されている場合、が挙げられる。
【0021】
通信装置100は、通信装置100とともに車両に搭載された電子制御装置10(以下、ECU:Electronic Control Unit)に接続されている。ECU10は、例えば車両の動作や走行を制御するECUである。
【0022】
通信装置100はさらに、車両の外部に位置する外部装置20と通信ネットワークを介して無線通信を行う。外部装置20は車両の外部に設けられた任意の装置であり、通信ネットワークの可用帯域を推定する。外部装置20は、例えば、遠隔地から車両のセキュリティを管理するSOC(Security Operation Center)や、車両に関するデータを収集するデータセンタに設けられるサーバ装置が挙げられる。
【0023】
図1において、通信装置100と外部装置20とは、例えば、IEEE802.11(Wi-Fi(登録商標))、IEEE802.16(WiMAX(登録商標))、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、HSPA(High Speed Packet Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution Advanced)、4G、5G等の無線通信方式を用いた通信ネットワークを介して接続されている。この他、無線通信方式と有線通信方式とを組み合わせた回線であってもよい。例えば、通信装置100とセルラーシステムにおける基地局装置との間は4G等の無線通信方式で、基地局装置と外部装置20との間は通信事業者の基幹回線やインターネット等の有線通信方式で、それぞれ接続されてもよい。基幹回線とインターネットとの接点にはゲートウェイ装置を設けてもよい。
【0024】
(2)通信装置100の構成
次に、
図2を参照して、通信装置100の構成を説明する。なお、通信装置100の各構成について、それぞれの実施形態に特有の機能については各実施形態において詳細に説明する。また、
図2に示す構成のうち、各実施形態で使用されない構成は、当該実施形態の通信装置100において必ずしも必須の構成ではない。
【0025】
図2は、通信装置100の構成例を示すブロック図である。通信装置100は、データ取得部101、分割部102、指示部103、送信部104、受信部105、及びダミーデータ付加部106を備える。
【0026】
データ取得部101は、外部装置20に送信するためのデータを取得する。データ取得部101は例えば、ECU10から、車両の状態を示す車両データを取得する。車両データは例えば、車両の走行、操舵、速度といった車両の動作の状態を示すものはもちろん、車両に搭載された装置の状態、例えば、車両に搭載されたECU10や通信装置100の状態を示すものであってもよい。ECU10や通信装置100の状態を示す車両データとして、例えば、これらの装置の故障診断(Diagnostic)の結果を示す、いわゆるダイアグデータが挙げられる。
【0027】
以下の実施形態では、データ取得部101が取得するデータが車両データである場合を説明しているが、データ取得部101が取得するデータは車両データに限定されるものではない。例えば、通信装置100が車両以外の移動体に搭載されている場合には、データ取得部101は車両データ以外のデータを取得するものである。
【0028】
また、データ取得部101は、車両データに代えて、外部装置20が帯域推定を行うための専用データを取得してもよい。ただし、後述するとおり、データ取得部101が取得するデータは、可用帯域を推定するための推定用データとして外部装置20に送信される。そのため、帯域推定を行うためだけに使用される専用データではなく、外部装置20に送信することが元々予定されている車両データを取得して推定用データとすることで、通信装置100の通信量を抑制することが望ましい。
【0029】
分割部102は、データ取得部101が取得した車両データの全て又は一部を取り出して、複数のパケットに分割する。
【0030】
指示部103は、後述する送信部104に対して、外部装置20が通信ネットワークの可用帯域の推定に用いる推定用データとして、車両データを送信することを指示する。例えば、指示部103は、過去に車両データを推定用データとして外部装置20に送信してから一定時間が経過した場合に、送信部104に対して次の車両データを推定用データとして送信することを指示する。ここで、指示部103は、推定用データとして、複数のパケットに分割された車両データを送信することを指示してもよい。
【0031】
後述する実施形態1では、指示部103はさらに、一定時間が経過したタイミングとは異なるタイミングで、送信部104に対して車両データを送信するタイミングを指示する。また、後述する実施形態2では、指示部103はさらに、分割部102に対し、分割すべき車両データのデータ量などを指示する。指示部103が、分割部102及び送信部104に対して指示する内容については、各実施形態で詳述する。
【0032】
送信部104は、指示部103からの指示に基づいて、車両データを外部装置20に送信する。分割部102が車両データを複数のパケットに分割している場合には、複数のパケットを所定の間隔で送信することで車両データを送信する。例えば、分割部102が車両データを8個のパケットに分割している場合、送信部104は8個のパケットを所定の間隔で外部装置20に順次送信する。
【0033】
受信部105は、外部装置20から送信された情報を受信する。受信部105は例えば、外部装置20が推定した可用帯域を示す推定帯域情報を受信する。
【0034】
通信装置100は、受信部105が受信した推定帯域情報を用いて、ECU10が取得する種々のデータ、例えば、車載カメラによって撮影された映像を送信する際の送信レートを制御したり、あるいは、自動車が将来的に同じ地域を走行する際の走行計画を検討することができる。
【0035】
ダミーデータ付加部106は、必要に応じてダミーデータを生成し、データ取得部101が取得した車両データに付加する。
【0036】
上述したとおり、通信装置100は、一定の時間間隔で、車両データを推定用データとして外部装置20に送信することを前提としているが、この時間間隔は、常に一定の時間間隔であってもよく、あるいは、可変の時間間隔であってもよい。例えば、車両データを送信する時間間隔は、車両の移動速度に応じて変化させてもよい。車両の位置に応じて、通信ネットワークの可用帯域は異なる可能性がある。そのため、車両が高速で移動している場合、低速で移動している場合と比較して、可用帯域の変化は大きい。そこで、車両の移動速度が速いほど、車両データを推定用データとして送信する時間間隔を短くしてもよい。
【0037】
また、外部装置20からの指示に基づいて、車両データを推定用データとして送信する時間間隔を設定してもよい。例えば、外部装置20が、過去の実績により、車両が位置するエリアにおける可用帯域の測定が十分にできている場合には、車両データを送信する時間間隔を長くするように、通信装置100に指示をする。反対に、外部装置20が、車両が位置するエリアにおける可用帯域の測定が十分にできていない場合には、車両データを送信する時間間隔を短くするように、通信装置100に指示をする。そして、指示部103は、外部装置20が指示する時間間隔で、車両データを推定用データとして送信するように指示を行う。
【0038】
あるいは、外部装置20が、通信装置100又は車両に搭載された他の通信装置(図示せず)から送信された車両データ以外のデータを用いて可用帯域を推定できている場合には、車両データを推定用データとして送信する時間間隔を長くしてもよい。
【0039】
また、車両データがダイアグデータの場合であって、特に緊急性を要するものである場合、例えば、致命的なエラーやサイバー攻撃に関するものである場合には、即時に車両データを推定用データとして送信してもよい。
【0040】
(3)外部装置20による可用帯域の推定
外部装置20は、通信装置100が使用する通信ネットワークの可用帯域を推定する装置である。外部装置20は、通信装置100から受信した推定用データを用いて、通信ネットワークの可用帯域を推定する。推定用データは、当該推定用データを分割した複数の推定用パケットであってもよい。複数の推定用パケットを用いて可用帯域を推定する手法は、パケットトレイン方式とも称される。ここでは、
図3を参照して、パケットトレイン方式による可用帯域の推定方法を説明する。
【0041】
図3は、通信装置100から、推定用データとして送信される複数のパケットと、外部装置20が受信する複数の推定用パケットを示す図である。
図3に示すとおり、推定用データは、複数の推定用パケットをまとめたものである。
図3は、外部装置20が、8個の推定用パケットに分割された推定用データを用いて可用帯域を算出する例を示している。
【0042】
外部装置20は、通信装置100から推定用パケットを受信すると、以下の数式(1)を用いて可用帯域を算出する。
【0043】
【0044】
ここで、数1のパケットデータ量は、複数の推定用パケットそれぞれのデータ量であり、受信間隔は推定用パケットを受信した間隔(t1、t2等)である。
図3の例では、外部装置20は、8個の推定用パケットについて、数1を用いて可用帯域を推定する。そして、8個の推定用パケットに対する算出結果に基づいて、可用帯域を導出する。例えば、8個の推定用パケットに対する算出結果の平均値又は中央値を通信ネットワークの可用帯域として算出する。
【0045】
外部装置20は、上述した方法を用いて可用帯域を算出すると、可用帯域の算出結果を通信装置100に通知する。
【0046】
2.第1の実施形態
(1)通信装置100の各構成の機能
本実施形態では、通信装置100の通信環境の変化に応じて、外部装置20に帯域推定用のデータを送信する構成を説明する。まず、通信装置100の各構成について、本実施形態に特有の機能を説明する。
【0047】
本実施形態では、指示部103は、通信ネットワークの「通信環境」の変化を「検出」するとともに、検出結果に応じて、分割部102によって複数のパケットに分割された車両データを、外部装置20が通信ネットワークの可用帯域の推定に用いる推定用データとして送信することを送信部104に指示する。
【0048】
ここで、「通信環境」とは、例えば、外部装置との通信に使用される基地局や通信装置が属する通信セルの特徴、属性、又は切り替えの他、電波強度(RSRP:Reference Signal Received Power)、電波品質(Reference Signal Received Quality)、SN比(RSSNR:Reference Signal Signal to Noise Ratio)、又は信号強度(Received Signal Strength Indicator)等が挙げられる。
「検出」するとは、指示部自身が検出機能を有することによって通信環境の変化を検出する場合はもちろん、通信環境の変化を示す情報を取得することによって検出する場合も含む。
【0049】
例えば、通信環境の変化の検出結果が、通信装置100が接続される基地局の切り替えである場合に、指示部103は車両データを推定用データとして送信することを送信部104に指示する。
【0050】
通信装置100が接続される基地局によって、通信ネットワークの可用帯域は異なる。そのため、通信装置100が接続される基地局が切り替わる際、外部装置20による可用帯域の推定結果は大きく変動する可能性がある。そのため、例えば、通信装置100が5分間隔で車両データを推定用データとして送信する場合、この5分の間に通信装置100が接続される基地局が切り替わると、直近で推定された可用帯域(すなわち、切り替え前の基地局での可用帯域)と、実際の可用帯域(すなわち、切り替え後の基地局での可用帯域)とが大きく異なる場合がある。
【0051】
そこで、本実施形態では、通信装置100が接続される基地局の切り替えを検出したタイミングで、外部装置20が可用帯域の推定に用いる推定用データを送信する。これにより、外部装置20は、通信装置100が使用する最新の通信ネットワークの可用帯域を推定することが可能となる。
【0052】
あるいは、通信環境の変化の検出結果が、通信ネットワークの通信品質の「変化量」が閾値「以上」である場合に、指示部103は車両データを推定用データとして送信することを送信部104に指示する。
【0053】
ここで、「変化量」とは、変化の割合はもちろん、変化する前後の値の差分であってもよい。
「以上」とは、比較対象と同じ値を含む場合及び含まない場合の両方が含まれる。
【0054】
例えば、電波強度であるRSRPや、受信品質であるRSRQといった指標で表される通信ネットワークの通信品質が急激に変化した場合、この変化に伴って可用帯域も変化する可能性がある。そこで、指示部103は、通信装置100の通信品質が急激な変化を検出したタイミングで、車両データを推定用データとして送信することを送信部104に指示する。
【0055】
なお、通信品質の急激な変化とは、通信品質が急激に劣化した場合、及び通信品質が急激に向上した場合のいずれも含む。
【0056】
ここで、指示部103は、自身が通信ネットワークの通信環境の変化を検出する機能を有していてもよい。例えば、指示部103は、通信装置100の無線環境取得部(図示せず)が取得した基地局情報を取得して、基地局情報を用いて通信装置100が接続される基地局の切り替えを検出する。あるいは、通信装置100又はECU10に設けられた通信環境の変化を検出する構成から通信環境の変化を通知する情報を取得することにより、通信環境の変化を検出してもよい。例えば、通信装置100又はECU10に設けられた検出部(図示せず)が基地局の切り替えを検出し、指示部103は、検出部から基地局の切り替えを通知する情報を取得する。
【0057】
(2)通信装置100の動作
次に、
図4を参照して、本実施形態の通信装置100の動作を説明する。
図4は、通信装置100で実行される通信方法を示すだけでなく、通信装置100で実行可能な通信プログラムの処理手順を示すものでもある。そして、これらの処理は、
図4に示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。後述する他の実施形態及び変形例に関する図面においても同様である。
【0058】
データ取得部101は、車両データを取得する(S101)。
分割部102は、S101で取得した車両データを複数のパケットに分割する(S102)。
ここで、送信部104が直前に車両データを推定用データとして外部装置20に送信してから一定時間が経過している場合(S103:Y)、指示部103は複数のパケットに分割した車両データを推定用データとして外部装置20に送信することを指示する(S104)。
そして、送信部104は、指示部103からの指示に基づいて、推定用データを外部装置20に送信する(S105)。S105で送信する推定用データは、S102において複数のパケットに分割されているため、S105では複数のパケットを順次、外部装置20に送信する。
【0059】
これに対し、S103で一定時間が経過していない場合(S103:N)、指示部103は通信ネットワークの通信環境の変化を検出したかどうかを判定する(S106)。
ここで、通信環境の変化を検出している場合(S106:Y)、指示部103はさらに、通信環境の変化の検出結果が所定の検出結果であるかどうかを判定する(S107)。ここで、所定の検出結果とは、例えば、通信装置100が接続されている基地局の切り替えや、通信品質の急激な変化である。
そして、検出結果が所定の検出結果である場合、指示部103は、S102で複数のパケットに分割された車両データを推定用データとして外部装置20に送信することを指示する(S104)。
そして、送信部104は、推定用データを外部装置20に送信する(S105)。
【0060】
(3)小括
本実施形態によれば、通信装置100は、通信環境の変化の検出結果に応じて、外部装置20が可用帯域を推定するのに必要なデータを外部装置20に送信することができる。これにより、通信装置100の通信環境の変化に伴って可用帯域が変化する状況にあっても、外部装置20は、通信装置100が使用する通信ネットワークの可用帯域を正確に推定することが可能となる。
【0061】
3.第1の実施形態の変形例
外部装置20が推定用データを用いて可用帯域を推定できるかどうかは、推定用データのデータ量に依存する。具体的には、推定用データのデータ量が大きいほど、より広い帯域を推定することができる。言い換えれば、広い帯域を推定するためには、より多くの推定用データのデータ量が必要となり、狭い帯域を推定するためには、推定用データのデータ量はそれほど必要とはならない。つまり、可用帯域を正しく推定するためには、適切なデータ量の推定用データが必要となる。
【0062】
そこで、本変形例では、外部装置20からの指示に基づいて、外部装置20に送信する推定用データのデータ量を適宜設定する構成を説明する。
【0063】
(1)通信装置100の構成
本変形例の受信部105は、外部装置20から推定用データ量情報を受信する。推定用データ量情報は、外部装置20が可用帯域を推定するのに必要な推定用データのデータ量を示している。
【0064】
受信部105はさらに、推定用データ量情報に加えて、推定用データを分割したパケットのデータ量を示す推定用パケットデータ量情報、及び/又は通信装置100が推定用パケットを送信する間隔を示す送信間隔情報を受信してもよい。
【0065】
本変形例の分割部102は、データ取得部101が取得した車両データから、推定用データ量情報が示すデータ量を有するデータを取り出す。ここで、分割部102が車両データから取り出したデータを部分データと称する。分割部102はさらに、車両データから取り出した部分データを複数のパケットに分割する。
【0066】
ここで、データ取得部101が取得した車両データのデータ量X(「第1のデータ量」に相当)が、推定用データ量情報が示すデータ量Y(「第2のデータ量」に相当)よりも少ないことがある。このような場合には、ダミーデータ付加部106が、車両データのデータ量Xと、推定用データ量情報が示すデータ量Yとの差分のデータ量を有するダミーデータを生成し、生成したダミーデータを車両データに付加する。そして、分割部102は、ダミーデータが付加された車両データを複数のパケットに分割する。
【0067】
車両データは、推定用データとして使用されない場合であっても、車両の状態を把握するためにサーバ装置等に送信される予定のデータである。そのため、このような車両データを帯域の推定用データとして活用することで、帯域推定専用のデータを生成して送信する場合よりも、全体の通信量を抑制することが可能となる。ところが、帯域推定をするために十分な車両データが取得されていないこともあるため、そのような場合に限り、不足しているデータ量分のデータのみ、ダミーデータ、すなわち、帯域推定の専用データを用いる。
【0068】
なお、受信部105が、推定用データ量情報に加えて推定用パケットデータ量情報を受信している場合には、分割部102は、部分データを、推定用パケットデータ量情報が示すデータ量をそれぞれ有する複数のパケットに分割する。
【0069】
また、受信部105が、推定用データ量情報に加えて送信間隔情報を受信している場合には、送信部104は、送信間隔情報が示す送信間隔となるように複数のパケットを送信する。
【0070】
(2)通信装置100の動作
図5は、本変形例の通信装置100の動作を説明する図である。
図4と同じ処理は、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0071】
受信部105は、外部装置20から、推定用データ量情報を受信する(S111)。
データ取得部101は車両データを取得する(S101)。
ここで、S101でデータ取得部101が取得した車両データのデータ量Xが、推定用データ量情報が示すデータ量Yよりも少ない場合(S112:Y)、ダミーデータ付加部106は、車両データのデータ量Xと、推定用データ量情報が示すデータ量Yとの差分のデータ量を有するダミーデータを生成して、車両データに付加する(S113)。
そして、分割部102は、ダミーデータが付加された車両データを複数のパケットに分割する(S102)。
【0072】
(3)小括
本変形例では、受信部105は、外部装置20から推定用データ量情報を予め受信しておくことで、外部装置20が可用帯域を推定するのに必要なデータ量を有する車両データを推定用データとして外部装置20に送信することができる。そのため、推定用データを受信した外部装置20では、適切な可用帯域の推定を行うことが可能となる。
【0073】
4.第2の実施形態
本実施形態では、外部装置20が推定用データを用いて可用帯域を推定できたか否かに応じて、通信装置100が、データを分割して得られるパケットの数等を制御する構成を説明する。
【0074】
ここで、本実施形態は、外部装置20が、通信装置100から送信された推定用データを用いて、少なくとも1度は可用帯域の推定を行っていることを前提としている。したがって、本実施形態は、第1の実施形態によって車両データが送信された後の処理として適用することができる。あるいは、所定の時間間隔で車両データが送信された後の処理として適用されてもよい。
【0075】
(1)通信装置100の構成
以下の説明では、通信装置100が、外部装置20に対して、所定のデータ量(以下、データ量Z0とする)を有する車両データをm個のパケットに分割し、推定用データとして既に送信していることを前提として説明する。
【0076】
本実施形態の受信部105は、外部装置20から、外部装置20が可用帯域を推定できたか否かを示す「推定成否情報」を受信する。
【0077】
ここで、「推定成否情報」とは、可用帯域の推定値を算出することが可能であったか否かを示すものはもちろん、信頼性がある可用帯域の推定値を算出することができたか否かを示すものであってもよい。例えば、可用帯域の推定値を算出することが可能であった場合でも、推定値の信頼性が低い場合は、推定成否情報は推定ができなかったことを示してもよい。
【0078】
受信部105はさらに、推定成否情報に加えて、外部装置20が推定した可用帯域の値を示す推定帯域情報を受信する。ここで、推定成否情報が、外部装置20が可用帯域を推定できなかったことを示している場合であっても、推定帯域情報の値は0であるとは限らない。例えば、可用帯域が実際には50Mbsであるにも関わらず、例えば、推定用データのデータ量が不足しているために、外部装置20が50Mbpsの帯域を推定することができず、30Mbsとの帯域を推定することがある。このような場合、受信部105は、30Mbpsを示す推定帯域情報とともに、推定ができなかったことを示す推定成否情報を受信する。
【0079】
受信部105が受信した推定成否情報が、外部装置20が可用帯域を推定できなかったことを示している場合、指示部103は、データ量Z0を有する車両データを、m個(「第1の個数」に相当)より多いn個(「第2の個数」に相当)のパケットに分割することを、分割部102に指示する。nの値は例えば、mに1以上の任意の整数を加算して得られる値や、mに任意の値を乗算して得られる値に設定される。
【0080】
第1の実施形態の変形例で上述したように、広い帯域を推定するためには、より多くの推定用データのデータ量が必要となる。ところが、推定用データのデータ量を増加させると、通信装置100の通信量が増加してしまうため、推定用データのデータ量を増加させずに、より広い帯域を推定できるようにすることが望ましい。そこで、本実施形態では、推定用データのデータ量は増加させずに所定のデータ量を維持したまま、パケットの数を増加させる。これにより、外部装置20が可用帯域の推定に利用することができるパケットの数が増加し、ひいては、より広い帯域の推定が可能となる。
【0081】
なお、データ量Z0を維持した状態でパケットの個数を増やすと、それぞれのパケットのデータ量は減少することになる。ところが、数式1に示す通り、それぞれのパケットのデータ量が減少すると、測定可能な帯域も小さくなる。そこで、指示部103はさらに、パケットを送信する所定の間隔を、m個のパケットを送信した間隔よりも短くすることを送信部104に指示してもよい。
【0082】
上述したとおり、推定成否情報が、外部装置20が可用帯域を推定できなかったことを示している場合、指示部103はパケットの個数をm個からn個に増やす指示をするが、パケットの個数が増加すると、それぞれのパケットのデータ量は減少することになる。ところが、パケットのデータ量が所定のデータ量以下になると、基地局が、通信装置100から送信された複数のパケットを結合して、結合した複数のパケットを外部装置20に転送する処理を行うことがある。このような場合、外部装置20では、可用帯域を推定することができず、その結果、可用帯域の推定値が0になることがある。
【0083】
そこで、m個に分割されたパケットそれぞれのデータ量が「所定の」最小パケットデータ量である場合には、指示部103は、m個より少ないn個のパケットに分割することを分割部102に指示しない。代わりに、指示部103は、分割部102に対し、データ取得部101が取得した車両データから、データ量Z0(「第1のデータ量」に相当)より多いデータ量Z1(「第2のデータ量」に相当)の部分データを取り出して、データ量Z1を有する車両データをm個のパケットに分割することを指示する。これにより、パケットのデータ量が小さくなりすぎることで、基地局において複数のパケットが結合されるのを防ぐことができる。
【0084】
ここで「所定の」とは、常に一定の場合の他、条件に応じて一意に定まる場合も含む。
【0085】
最小パケットデータ量の値は、通信装置100の製造メーカや、通信装置100が搭載される車両の製造メーカによって、通信装置100に予め保存されていてもよい。あるいは、通信装置100は、外部装置20等から、過去の推定実績に基づいて導出された最小パケットデータ量に関する情報を受信してもよい。
【0086】
あるいは、指示部103は、外部装置20から受信した推定帯域情報に基づいて、基地局が複数のパケットを結合して外部装置20に転送したことを検出してもよい。例えば、受信部105が受信した推定成否情報が可用帯域を推定できなかったことを示しており、且つ、帯域推定情報が0の値を示している場合に、指示部103は、基地局が複数のパケットを結合して外部装置20に転送したことを検出することができる。あるいは、帯域推定情報が0以外の値(例えば、30Mbps)であった後に、パケットの数を増加させた結果、次の帯域推定情報が0の値になった場合に、基地局で複数のパケットが結合されたことを検出してもよい。
【0087】
この場合、指示部103は、分割部102に対し、データ取得部101が取得した車両データから、データ量Z0(「第1のデータ量」に相当)より多いデータ量Z1(「第2のデータ量」に相当)の部分データを取り出して、データ量Z1を有する車両データをm個のパケットに分割することを指示する。これにより、パケットのデータ量が小さくなりすぎることで、基地局において複数のパケットが結合されるのを防ぐことができる。
【0088】
ここで、上述した例では、車両データのデータ量を、データ量Z0からデータ量Z1に増加させている。ところが、データ取得部101が取得した車両データのデータ量Xがデータ量Z1に満たないことがある。このような場合、ダミーデータ付加部106は、データ取得部101が取得した車両のデータ量X(「第3のデータ量」に相当)と、データ量Z1の差分のデータ量を有するダミーデータを生成し、生成したダミーデータを車両データに付加する。そして、分割部102では、ダミーデータが付加された車両データを複数のパケットに分割する。
【0089】
上述したとおり、本実施形態では、パケットの数を増加することで、外部装置20がより広い帯域を推定できるようにしている。しかしながら、データ量を所定のデータ量に維持した状態で分割することができるパケットの数には限りがある。そのため、パケットそれぞれのデータ量が最小パケットデータ量になるまでパケットの数を増加させても、外部装置20が可用帯域の推定を行うことができない場合に限り、推定用データのデータ量を増加させる。
【0090】
なお、ダミーデータ付加部106がダミーデータを車両データに付加するのは、データ量がZ0からZ1に増加する場合に限定されない。例えば、データ量がZ0に維持される場合であっても、データ取得部101が取得した車両データのデータ量Xがデータ量Z0に満たない場合には、ダミーデータ付加部106はダミーデータを生成して車両データに付加する。車両データのデータ量がZ0から減少される場合も同様である。
【0091】
次に、受信部105が受信した推定成否情報が、外部装置20が可用帯域を推定できたことを示している場合を説明する。
【0092】
受信部105が受信した推定成否情報が、外部装置が可用帯域を推定できたことを示している場合、指示部103は、分割部102に対し、データ取得部101が取得した車両データから、データ量Z0(「第1のデータ量」に相当)より少ないデータ量Z2(「第2のデータ量」に相当)の車両データ(「部分データ」に相当)を取り出し、取り出した車両データを複数のパケットに分割することを指示する。
【0093】
外部装置20が可用帯域を推定できている場合、通信装置100は、可用帯域を推定するのに必要なデータ量以上のデータを外部装置20に送信している可能性がある。そこで、外部装置20が可用帯域を推定できている場合には、推定用データのデータ量を減少させることにより、通信装置100の通信量を抑制する。
【0094】
あるいは、指示部103は、分割部102に対し、車両データを、m個(「第1の個数」に相当)より少ないl個(「第3の個数」に相当)のパケットに分割することを指示してもよい。
【0095】
上述したように、パケットの数が増加することにより、外部装置20はより広い帯域を推定することが可能となる。ところが、各パケットには、IPアドレス等の宛先情報を含むヘッダを付与する必要があるため、パケットの個数が多くなるほど送信されるヘッダも多くなり、通信効率が低下する。さらに、パケットの個数が多くなると送信部104が行う送信処理の回数は増加し、ひいては通信装置100の処理負荷も増加する。そのため、送信部104の送信処理の回数は少ない方が望ましい。そこで、外部装置20が可用帯域を推定できている場合には、パケットの個数を減少させることにより、送信処理の回数を抑制する。
【0096】
別の例では、推定成否情報が可用帯域を推定できたことを示している場合、指示部103は、推定用データとして送信される車両データのデータ量及びパケットの個数を減少させることを分割部102に対して指示してもよい。あるいは、指示部103は、まず初めに、推定用データとして送信される車両データのデータ量をより少ないデータ量とすることを分割部102に対して指示し、車両データのデータ量が所定の最小データ量になった場合には、次いで、パケットの個数を少なくすることを分割部102に対して指示してもよい。
【0097】
また、本実施形態では、推定成否情報が可用帯域を推定できたことを示している場合に、ただちにデータ量又はパケットの個数を減少させることを指示する構成を例に挙げて説明している。しかしながら、可用帯域を推定できたことを示している推定成否情報を、所定の回数以上、連続して受信した場合に限り、データ量及び/又はパケットの個数を減少させることを指示してもよい。
【0098】
(2)通信装置100の動作
次に、
図6を参照して、本実施形態の通信装置100の動作を説明する。また、
図6に示す通信装置100の動作は、所定のデータ量Z
0を有する車両データをm個のパケットに分割し、推定用データとして既に送信していることを前提として説明する。したがって、
図4又は
図5に示す一連の処理の後に、
図6に示す処理が行われてもよい。
【0099】
受信部105は、外部装置20から、推定成否情報を受信する(S201)。
S201で受信した推定成否情報が、外部装置20が可用帯域を推定できなかったことを示している場合(S202:N)、指示部103は、過去に外部装置20に送信したm個のパケットそれぞれのデータ量が、最小パケットデータ量であるかどうかを判定する(S203)。
【0100】
ここで、m個のパケットそれぞれのデータ量が最小パケットデータ量ではない場合(S203:N)、指示部103は、分割部102に対し、データ量Z
0の車両データを、m個より多いn個のパケットに分割することを指示する(S204)。
指示部103はさらに、送信部104に対し、それぞれのパケットの送信間隔を短くすることを指示する(S205)。
データ取得部101は、車両データを取得する(S206)。
ここで、S206でデータ取得部101が取得した車両データのデータ量Xが、データ量Z
0(
図6では、データ量Zと示す)よりも少ない場合(S207:Y)、ダミーデータ付加部106は、車両データのデータ量Xと、データ量Z
0との差分のデータ量を有するダミーデータを生成して、車両データに付加する(S208)。
分割部102は、指示部103からの指示に基づいて、S206で取得した車両データをn個のパケットに分割する(S209)。
送信部104は、S209で分割されたm個のパケットを過去の送信間隔よりも短い送信間隔で送信する(S210)。
【0101】
また、S203において、m個のパケットそれぞれのデータ量が最小パケットデータ量である場合(S203:Y)には、指示部103は、分割部102に対し、車両データのデータ量を、データ量Z
0よりも多いデータ量Z
1とすることを指示する(S211)。
データ取得部101は、車両データを取得する(S206)。
ここで、S206でデータ取得部101が取得した車両データのデータ量Xが、データ量Z
1(
図6では、データ量Zと示す)よりも少ない場合(S207:Y)、ダミーデータ付加部106は、車両データのデータ量Xと、データ量Z
1との差分のデータ量を有するダミーデータを生成して、車両データに付加する(S208)。
分割部102は、S206で取得した車両データをm個のパケットに分割する(S209)。
送信部104は、S209で分割されたm個のパケットを送信する(S210)。
【0102】
なお、
図6では、S203において、m個のパケットそれぞれのデータ量が最小パケットデータ量であるか否かを判定しているが、最小パケットデータ量であるか否かの判定処理に代えて、S201で推定可否情報とともに受信した推定帯域情報が0の値を示しているか否かを判定してもよい。
【0103】
次に、
図6のS202において、推定成否情報が、外部装置20が可用帯域を推定できたことを示している場合を、
図7を参照して説明する。
【0104】
S201で受信した推定成否情報が、外部装置20が可用帯域を推定できたことを示している場合(S202:Y)、指示部103は、車両データのデータ量を、データ量Z
0より少ないデータ量Z
2とすることを分割部102に指示する(S221)。
指示部103はさらに、分割部102に対し、車両データを、m個より少ないl個のパケットに分割することを指示する(S222)。
図6に戻り、データ取得部101は、車両データを取得する(S206)。
ここで、S206でデータ取得部101が取得した車両データのデータ量Xが、データ量Z
2(
図6では、データ量Zと示す)よりも少ない場合(S207:Y)、ダミーデータ付加部106は、車両データのデータ量Xと、データ量Z
2との差分のデータ量を有するダミーデータを生成して、車両データに付加する(S208)。
分割部102は、S206で取得した車両データをl個のパケットに分割する(S209)。
送信部104は、S209で分割されたl個のパケットを送信する(S210)。
【0105】
なお、
図7では、推定成否情報が可用帯域を推定できたことを示している場合に、車両のデータ量(S221)及びパケットの個数(S222)の両方の変更を指示する場合を例に挙げて説明している。しかしながら、S221及びS222のいずれか一方の処理のみが実行されてもよい。
【0106】
図6に示す一連の処理は、外部装置20から推定可否情報を受信する度に繰り返し実行される。例えば、
図6のS204に示す処理によって、パケットの数がm個(例えば、8個)からn個(9個)に増加する指示がされ、9個のパケットが推定用データとして外部装置20に送信された場合、外部装置20は9個の推定用パケットに分割された推定用データを用いて可用帯域の推定を行い、その結果を示す推定成否情報を通信装置100に送信する。そして、この推定成否情報が可用帯域を推定できなかったことを示している場合には、さらにパケットの数を、m個である9個からさらに増加させる指示がされることになる。
【0107】
(3)小括
以上、本実施形態によれば、外部装置20による可用帯域の推定成否に応じて、推定用データを分割するパケットの個数、データ量を制御する。これにより、外部装置20が可用帯域を推定するのに適切な推定用データ及び推定用パケットを送信することが可能となる。
【0108】
5.その他の発明
第2の実施形態は、第1の実施形態によって推定用データが送信されることを前提として説明した。しかしながら、第2の実施形態による通信装置100は、過去に推定用データが送信されていればよく、必ずしも第1の実施形態を前提とするものでなくともよい。第1の実施形態を前提としない場合、第2の実施形態に記載の発明は、以下の通信装置100の発明として把握することができる。
【0109】
移動体に搭載され、前記移動体の外部に位置する外部装置と通信ネットワークを介して無線通信を行う通信装置であって、
前記外部装置は、推定用データを分割した複数の推定用パケットを用いて前記通信ネットワークの可用帯域を推定する装置であり、
当該通信装置は、
データを取得するデータ取得部(101)と、
前記外部装置から、所定のデータ量を有する前記推定用データを分割した第1の個数の前記推定用パケットを用いて前記可用帯域を推定できたか否かを示す推定成否情報を受信する受信部(105)と、
前記推定成否情報が前記可用帯域を推定できなかったことを示している場合に、前記所定のデータ量を有する前記データを、前記第1の個数より多い第2の個数のパケットに分割することを指示する指示部(103)と、
前記指示部からの指示に基づいて、前記データ取得部が取得した前記データを、前記第2の個数のパケットに分割する分割部(102)と、
前記第2の個数の前記パケットを所定の間隔で前記外部装置に送信する送信部(104)と、
を備える、通信装置(100)。
【0110】
6.総括
以上、本発明の各実施形態における通信装置等の特徴について説明した。
【0111】
各実施形態で使用した用語は例示であるので、同義の用語、あるいは同義の機能を含む用語に置き換えてもよい。
【0112】
実施形態の説明に用いたブロック図は、装置の構成を機能毎に分類及び整理したものである。それぞれの機能を示すブロックは、ハードウェア又はソフトウェアの任意の組み合わせで実現される。また、機能を示したものであることから、かかるブロック図は方法の発明、及び当該方法を実現するプログラムの発明の開示としても把握できるものである。
【0113】
各実施形態に記載した処理、フロー、及び方法として把握できる機能ブロック、については、一のステップでその前段の他のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0114】
各実施形態、及び特許請求の範囲で使用する、第1、第2、乃至、第N(Nは整数)、の用語は、同種の2以上の構成や方法を区別するために使用しており、順序や優劣を限定するものではない。
【0115】
また、本発明の通信装置の形態の例として、以下のものが挙げられる。
部品の形態として、半導体素子、電子回路、モジュール、マイクロコンピュータが挙げられる。
半完成品の形態として、電子制御装置(ECU(Electric Control Unit))、システムボードが挙げられる。
完成品の形態として、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、サーバが挙げられる。
その他、通信機能を有するデバイス等を含み、例えばビデオカメラ、スチルカメラ、カーナビゲーションシステムが挙げられる。
【0116】
また、通信装置に、アンテナや通信用インターフェースなど、必要な機能を追加してもよい。
【0117】
本発明は、各実施形態で説明した構成及び機能を有する専用のハードウェアで実現できるだけでなく、メモリやハードディスク等の記録媒体に記録した本発明を実現するためのプログラム、及びこれを実行可能な専用又は汎用CPU及びメモリ等を有する汎用のハードウェアとの組み合わせとしても実現できる。
【0118】
専用や汎用のハードウェアの非遷移的実体的記録媒体(例えば、外部記憶装置(ハードディスク、USBメモリ、CD/BD等)、又は内部記憶装置(RAM、ROM等))に格納されるプログラムは、記録媒体を介して、あるいは記録媒体を介さずにサーバから通信回線を経由して、専用又は汎用のハードウェアに提供することもできる。これにより、プログラムのアップグレードを通じて常に最新の機能を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の通信装置は、主として自動車に搭載された通信装置を対象としているが、自動車に搭載されない任意の移動体に搭載される通信装置を対象としてもよい。
【符号の説明】
【0120】
100 通信装置、101 データ取得部、102 分割部、103 指示部、104 送信部、105 受信部、106 ダミーデータ付与部