IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパスメディカルシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-125980医療用マニピュレータシステム、医療用マニピュレータシステムの制御方法および制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125980
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】医療用マニピュレータシステム、医療用マニピュレータシステムの制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20240911BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A61B1/005 523
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116167
(22)【出願日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】63/450,230
(32)【優先日】2023-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 達矢
(72)【発明者】
【氏名】岸 宏亮
(72)【発明者】
【氏名】神戸 秀
(72)【発明者】
【氏名】山中 紀明
(72)【発明者】
【氏名】柳川 涼太
(72)【発明者】
【氏名】澤田 将太
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040BA21
2H040CA11
2H040DA03
2H040DA12
2H040DA14
2H040DA15
2H040DA19
2H040DA21
2H040DA41
2H040DA56
2H040DA57
2H040GA02
2H040GA11
4C161HH33
4C161HH47
4C161HH55
(57)【要約】
【課題】操作性を向上させた医療用マニピュレータシステム、医療用マニピュレータシステムの制御方法および制御装置を提供する。
【解決手段】医療用マニピュレータシステムは、湾曲部を有する医療用マニピュレータと、湾曲部を曲げるアクチュエータと、湾曲部を曲げる湾曲操作が入力され、原点から離れる第一方向と原点に戻る第二方向とを移動可能な入力子を有し、入力子における原点からの移動量を検出可能な操作装置と、湾曲操作に基づいてアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、制御装置は、入力子が原点に位置するときに湾曲部がとるべき基準湾曲量に対する湾曲部の湾曲量の変位を算出し、アクチュエータの駆動量に基づいて算出された湾曲量の変位である第一湾曲量と、入力子の移動量に基づいて算出された湾曲量の変位である第二湾曲量との差が無くなるように算出した入力子の移動量に対する第二湾曲量の比率に基づいてアクチュエータを駆動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲可能な湾曲部を有する医療用マニピュレータと、
前記湾曲部を曲げるアクチュエータと、
前記湾曲部を曲げる湾曲操作が入力され、原点から離れる第一方向と前記原点に戻る第二方向とを移動可能な入力子を有し、前記入力子における前記原点からの移動量を検出可能な操作装置と、
前記操作装置と通信可能に接続され、前記湾曲操作に基づいて前記アクチュエータを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記入力子が前記原点に位置するときに前記湾曲部がとるべき基準湾曲量に対する前記湾曲部の湾曲量の変位を算出し、前記アクチュエータの駆動量に基づいて算出された前記湾曲量の変位である第一湾曲量と、前記入力子の前記移動量に基づいて算出された前記湾曲量の変位である第二湾曲量と、を比較し、
前記第一湾曲量と前記第二湾曲量との差が無くなるように前記入力子の前記移動量に対する前記第二湾曲量の比率を算出し、
前記比率に基づいて前記アクチュエータを駆動させる、
医療用マニピュレータシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第一湾曲量の絶対値が前記第二湾曲量の絶対値より小さい場合、
前記入力子が前記第一方向に移動したとき、前記比率を増大させ、
前記入力子が前記第二方向に移動したとき、前記比率を減少させ、
前記第一湾曲量の絶対値が前記第二湾曲量の絶対値より大きい場合、
前記入力子が前記第一方向に移動したとき、前記比率を減少させ、
前記入力子が前記第二方向に移動したとき、前記比率を増大させる、
請求項1に記載の医療用マニピュレータシステム。
【請求項3】
前記操作装置は、
前記入力子を前記第二方向に付勢する弾性部材をさらに備え、前記入力子は、前記原点の近傍の範囲である受動制御範囲よりも前記第一方向側に位置するとき、前記弾性部材に付勢されて前記受動制御範囲内に移動し、
前記制御装置は、
前記入力子が移動しているとき又は前記入力子が前記受動制御範囲外で停止されているとき、前記入力子の位置に基づいて前記アクチュエータを制御し、
前記入力子が前記受動制御範囲内で停止しているとき、前記医療用マニピュレータに加わった外力に基づいて前記アクチュエータを制御する、
請求項2に記載の医療用マニピュレータシステム。
【請求項4】
前記入力子は、前記第一方向および前記第二方向に回転可能であり、
前記受動制御範囲は、前記原点から±45°から±90°の範囲である、
請求項3に記載の医療用マニピュレータシステム。
【請求項5】
前記医療用マニピュレータは、前記湾曲部の先端に撮像装置を備える、
請求項4に記載の医療用マニピュレータシステム。
【請求項6】
前記入力子は、レバー、ノブまたはダイヤルである、
請求項5に記載の医療用マニピュレータシステム。
【請求項7】
前記弾性部材は、ゴムまたはバネである、
請求項6に記載の医療用マニピュレータシステム。
【請求項8】
医療用マニピュレータの湾曲動作を制御する方法であって、
操作装置が有する入力子が原点に位置するときに前記医療用マニピュレータの湾曲部がとるべき基準湾曲量に対する前記湾曲部の湾曲量の変位に対して、前記湾曲部を曲げるアクチュエータの駆動量に基づいて算出された前記湾曲量の変位である第一湾曲量と、前記入力子における前記原点からの移動量に基づいて算出された前記湾曲量の変位である第二湾曲量と、を比較し、
前記第一湾曲量と前記第二湾曲量との差が無くなるように算出された前記入力子の前記移動量に対する前記第二湾曲量の比率に基づいて前記医療用マニピュレータを制御する、
医療用マニピュレータシステムの制御方法。
【請求項9】
前記第一湾曲量の絶対値が前記第二湾曲量の絶対値より小さい場合、
前記入力子が前記原点から離れる第一方向に移動したとき、前記比率を増大させ、
前記入力子が前記原点に戻る第二方向に移動したとき、前記比率を減少させ、
前記第一湾曲量の絶対値が前記第二湾曲量の絶対値より大きい場合、
前記入力子が前記第一方向に移動したとき、前記比率を減少させ、
前記入力子が前記第二方向に移動したとき、前記比率を増大させる、
請求項8に記載の医療用マニピュレータシステムの制御方法。
【請求項10】
前記入力子が移動しているとき又は前記入力子が前記原点の近傍の範囲である受動制御範囲の範囲外で停止されているとき、前記入力子の位置に基づいて前記医療用マニピュレータを制御し、
前記入力子が前記受動制御範囲の範囲内で停止しているとき、前記医療用マニピュレータに加わった外力に基づいて前記医療用マニピュレータを制御する、
請求項9に記載の医療用マニピュレータシステムの制御方法。
【請求項11】
医療用マニピュレータの湾曲動作を制御する制御装置であって、
操作装置が有する入力子が原点に位置するときに前記医療用マニピュレータの湾曲部がとるべき基準角度に対する前記湾曲部の湾曲量の変位に対して、前記湾曲部を曲げるアクチュエータの駆動量に基づいて算出された前記湾曲量の変位である第一湾曲量と、前記入力子における前記原点からの移動量に基づいて算出された前記湾曲量の変位である第二湾曲量と、を比較し、
前記第一湾曲量と前記第二湾曲量との差が無くなるように前記入力子の前記移動量に対する前記第二湾曲量の比率を算出し、
前記比率に基づいて前記医療用マニピュレータを制御する、
制御装置。
【請求項12】
前記第一湾曲量の絶対値が前記第二湾曲量の絶対値より小さい場合、
前記入力子が前記原点から離れる第一方向に移動したとき、前記比率を増大させ、
前記入力子が前記原点に戻る第二方向に移動したとき、前記比率を減少させ、
前記第一湾曲量の絶対値が前記第二湾曲量の絶対値より大きい場合、
前記入力子が前記第一方向に移動したとき、前記比率を減少させ、
前記入力子が前記第二方向に移動したとき、前記比率を増大させる、
請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記入力子が移動しているとき又は前記入力子が前記原点の近傍の範囲である受動制御範囲の範囲外で停止されているとき、前記入力子の位置に基づいて前記医療用マニピュレータを制御し、
前記入力子が前記受動制御範囲の範囲内で停止しているとき、前記医療用マニピュレータに加わった外力に基づいて前記医療用マニピュレータを制御する、
請求項12に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用マニピュレータシステム、医療用マニピュレータシステムの制御方法および制御装置に関する。
本願は、2023年3月6日に米国に出願された米国仮特許出願第63/450,230号に基づいて優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、消化管などの管腔器官内の観察や処置に用いる医療用マニピュレータシステムが使用されている。医療用マニピュレータシステムは、管腔器官内に挿入される挿入部等が電動により湾曲駆動可能である。使用者は、体外に配置された操作部から挿入部等の湾曲動作を制御できる。
【0003】
例えば特許文献1には、電動で駆動される湾曲部に対して外力が加えられたとき、湾曲部が外力に対して受動的に湾曲するフリー状態と、外力が加えられても湾曲部の形状を維持する短絡状態とを切り替える制御を行う内視鏡が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-27466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、操作部から入力された湾曲操作によって制御装置がモータ等を駆動して湾曲部を制御する医療用マニピュレータシステムの場合、湾曲部に外力が加わって湾曲したとき、操作部の入力子が湾曲部の動きに追従せず、操作部に入力された湾曲操作に基づく湾曲量と実際の湾曲量とが異なり、操作性が低下してしまう可能性がある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、操作性を向上させた医療用マニピュレータシステム、医療用マニピュレータシステムの制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に係る医療用マニピュレータシステムは、湾曲可能な湾曲部を有する医療用マニピュレータと、前記湾曲部を曲げるアクチュエータと、前記湾曲部を曲げる湾曲操作が入力され、原点から離れる第一方向と前記原点に戻る第二方向とを移動可能な入力子を有し、前記入力子における前記原点からの移動量を検出可能な操作装置と、前記操作装置と通信可能に接続され、前記湾曲操作に基づいて前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記入力子が前記原点に位置するときに前記湾曲部がとるべき基準湾曲量に対する前記湾曲部の湾曲量の変位を算出し、前記アクチュエータの駆動量に基づいて算出された前記湾曲量の変位である第一湾曲量と、前記入力子の前記移動量に基づいて算出された前記湾曲量の変位である第二湾曲量と、を比較し、前記第一湾曲量と前記第二湾曲量との差が無くなるように前記入力子の前記移動量に対する前記第二湾曲量の比率を算出し、前記比率に基づいて前記アクチュエータを駆動させる。
【発明の効果】
【0008】
操作性を向上させた医療用マニピュレータシステム、医療用マニピュレータシステムの制御方法および制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る医療用マニピュレータシステムの全体図である。
図2】術者によって使用される同医療用マニピュレータシステムの内視鏡と操作装置を示す図である。
図3】同内視鏡の挿入部を示す図である。
図4】同挿入部の湾曲部の一部を断面図として示す図である。
図5図4に示す領域Eにおける同湾曲部の節輪の拡大図である。
図6図4および図5のC1-C1線に沿う同湾曲部の断面図である。
図7】同医療用マニピュレータシステムの駆動装置に装着前の第一着脱部を示す図である。
図8】同駆動装置に装着前の上下湾曲ワイヤ着脱部を示す図である。
図9】同駆動装置に装着された同上下湾曲ワイヤ着脱部を示す図である。
図10】同駆動装置の機能ブロック図である。
図11】同医療用マニピュレータシステムの操作装置の斜視図である。
図12】背面から見た同操作装置の斜視図である。
図13】同操作装置の側面図である。
図14】同操作装置における第一アングルノブを示す正面図である。
図15】湾曲した同湾曲部を示す図である。
図16】同医療用マニピュレータシステムの映像制御装置の機能ブロック図である。
図17】同駆動装置における同医療用マニピュレータシステムの制御を示すフローチャートである。
図18】大腸内に挿入された同挿入部を示す図である。
図19】同操作装置の変形例の斜視図である。
図20】第二実施形態に係る医療用マニピュレータシステムの操作装置の斜視図である。
図21】同操作装置の第一アングルノブおよび第二アングルノブの断面図である。
図22】同第一アングルノブの一部を示す斜視図である。
図23】同第一アングルノブの第一上カバーを示す斜視図である。
図24】同第一アングルノブの一部を示す正面図である。
図25】同医療用マニピュレータシステムにおける駆動装置の機能ブロック図である。
図26】同駆動装置における同医療用マニピュレータシステムの制御を示すフローチャートである。
図27】同第一アングルノブの回転動作を示す正面図である。
図28】第二実施形態に係る医療用マニピュレータシステムの操作装置および連結部の変形例の斜視図である。
図29】同変形例の斜視図である。
図30】同変形例の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る電動内視鏡システム1000について、図1から図19を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電動内視鏡システム1000の全体図である。電動内視鏡システム1000は、医療用マニピュレータシステムの一例である。医療用マニピュレータは、体内に挿入される電動駆動の内視鏡、カテーテル、処置具、エンドルミナルデバイス等を含む。
【0011】
[電動内視鏡システム1000]
電動内視鏡システム1000は、手術台Tに横たわる患者Pの体内を観察および処置する医療システムである。電動内視鏡システム1000は、内視鏡100と、駆動装置200と、操作装置300と、処置具400と、映像制御装置500と、表示装置900と、を備える。
【0012】
内視鏡100は、患者Pの管腔内に挿入して患部を観察および処置する装置であり、医療用マニピュレータの一例である。内視鏡100は、駆動装置200と着脱自在である。内視鏡100の内部には内部経路101が形成されている。以降の説明において、内視鏡100において、患者Pの管腔内に挿入される側を「先端側(遠位側)A1」、駆動装置200に装着される側を「基端側(近位側)A2」という。
【0013】
駆動装置200は、内視鏡100および操作装置300と着脱自在に接続される。駆動装置200は、操作装置300に入力された操作に基づき、内蔵するモータを駆動して内視鏡100を電動駆動する。また、駆動装置200は、操作装置300に入力された操作に基づき、内蔵するポンプ等を駆動して内視鏡100に送気吸引を実施させる。
【0014】
操作装置300は、操作ケーブル301を経由して駆動装置200と着脱自在に接続される。操作装置300は、有線通信ではなく無線通信により駆動装置200と通信可能であってもよい。術者Sは、操作装置300を操作することにより、内視鏡100を電動駆動できる。
【0015】
処置具400は、内視鏡100の内部経路101を挿通して患者Pの管腔内に挿入して患部を処置する装置である。図1においては、処置具400は、鉗子口126から内視鏡100の内部経路101に挿入されている。
【0016】
映像制御装置500は、内視鏡100と着脱自在に接続されており、内視鏡100から撮像画像を取得する。映像制御装置500は、内視鏡100から取得した撮像画像や操作者に対する情報提供を目的とするGUI画像やCG画像を表示装置900に表示させる。
【0017】
駆動装置200と映像制御装置500とは、電動内視鏡システム1000を制御する制御装置600を構成する。制御装置600は、ビデオプリンタなどの周辺機器をさらに備えてもよい。駆動装置200と映像制御装置500とは、一体の装置であってもよい。
【0018】
表示装置900は、LCDなどの画像を表示可能な装置である。表示装置900は、表示ケーブル901を経由して映像制御装置500に接続されている。
【0019】
図2は、術者Sによって使用される内視鏡100と操作装置300を示す図である。
術者Sは、例えば、表示装置900に表示された撮像画像を観察しながら、患者Pの肛門から管腔内に挿入させた内視鏡100を右手Rで操作しながら、操作装置300を左手Lで操作する。内視鏡100と操作装置300とが分離しているため、術者Sは内視鏡100と操作装置300とを互いに影響を受けることなく独立して操作できる。
【0020】
[内視鏡100]
内視鏡100は、図1に示すように、挿入部110と、連結部120と、体外軟性部140と、着脱部150と、湾曲ワイヤ160(図6参照)と、内蔵物170(図6参照)と、を備える。挿入部110と、連結部120と、体外軟性部140と、着脱部150と、は先端側A1から順に接続されている。
【0021】
図3は、内視鏡100の挿入部110を示す図である。
内視鏡100の内部には、挿入部110の先端から着脱部150の基端まで内視鏡100の長手方向Aに沿って延びる内部経路101が形成されている。湾曲ワイヤ160および内蔵物170は、内部経路101に挿入されている。
【0022】
内蔵物170は、チャンネルチューブ171と、送気吸引チューブ172(図10参照)と、撮像ケーブル173と、ライトガイド174と、を有する。
【0023】
[挿入部110]
挿入部110は、管腔内に挿入可能な細長な長尺部材である。挿入部110は、先端部111と、湾曲部112と、体内軟性部119と、を有する。先端部111と、湾曲部112と、体内軟性部119と、は先端側A1から順に接続されている。
【0024】
先端部111は、図3に示すように、開口部111aと、照明部111bと、撮像部111cと、を有する。開口部111aは、チャンネルチューブ171と連通する開口である。図3に示すように、チャンネルチューブ171を挿通する処置具400の先端に設けられた把持鉗子などの処置部410が開口部111aから突没する。
【0025】
照明部111bは、照明光を導光するライトガイド174と接続されており、撮像対象を照明する照明光を出射する。撮像部111cは、CMOS等の撮像素子を備えており、撮像対象を撮像する撮像装置である。撮像信号は、撮像ケーブル173を経由して映像制御装置500に送られる。
【0026】
図4は、湾曲部112の一部を断面図として示す図である。
湾曲部112は、複数の節輪(湾曲駒ともいう)115と、複数の節輪115の先端に連結された先端部116と、アウターシース118(図3参照)と、を有する。複数の節輪115および先端部116は、アウターシース118の内部において長手方向Aに連結されている。なお、湾曲部112が有する節輪115の形状および数は、図4に示す節輪115の形状および数に限定されない。
【0027】
図5は、図4に示す領域Eにおける節輪115の拡大図である。
節輪115は、金属で形成された短筒状の部材である。複数の節輪115は、隣り合う節輪115の内部空間が連続する空間となるように連結されている。
【0028】
節輪115は、先端側A1の第一節輪115aと、基端側A2の第二節輪115bと、を有する。第一節輪115aと第二節輪115bとは、第一回動ピン115pによって、長手方向Aに対して垂直な上下方向(「UD方向」ともいう)に回動可能に連結されている。
【0029】
また、第一節輪115aと第二節輪115bとは、第二回動ピン115qによって、長手方向AおよびUD方向に対して垂直な左右方向(「LR方向」ともいう)に回動可能に連結されている。
【0030】
第一節輪115aと第二節輪115bとが第一回動ピン115pおよび第二回動ピン115qによって交互に連結されており、湾曲部112は所望の方向に湾曲自在である。
【0031】
図6は、図4および図5のC1-C1線に沿う湾曲部112の断面図である。
第二節輪115bの内周面には、上ワイヤガイド115uと、下ワイヤガイド115dと、が形成されている。上ワイヤガイド115uと下ワイヤガイド115dとは、長手方向Aの中心軸Oを挟んでUD方向の両側に配置されている。第一節輪115aの内周面には、左ワイヤガイド115lと、右ワイヤガイド115rと、が形成されている。左ワイヤガイド115lと右ワイヤガイド115rとは、長手方向Aの中心軸Oを挟んでLR方向の両側に配置されている。
【0032】
上ワイヤガイド115uと、下ワイヤガイド115dと、左ワイヤガイド115lと、右ワイヤガイド115rとには、湾曲ワイヤ160が挿通する貫通孔が長手方向Aに沿って形成されている。
【0033】
湾曲ワイヤ160は、湾曲部112を曲げるワイヤである。湾曲ワイヤ160は、内部経路101を通って着脱部150まで延びている。湾曲ワイヤ160は、図4および図6に示すように、上湾曲ワイヤ161uと、下湾曲ワイヤ161dと、左湾曲ワイヤ161lと、右湾曲ワイヤ161rと、4本のワイヤシース161sと、を有する。
【0034】
上湾曲ワイヤ161uと、下湾曲ワイヤ161dと、左湾曲ワイヤ161lと、右湾曲ワイヤ161rとは、図4に示すように、それぞれワイヤシース161sを挿通している。ワイヤシース161sの先端は、湾曲部112の基端の節輪115に取り付けられている。ワイヤシース161sは、着脱部150まで延びている。
【0035】
上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dは、湾曲部112をUD方向に曲げるワイヤである。上湾曲ワイヤ161uは、上ワイヤガイド115uを挿通している。下湾曲ワイヤ161dは、下ワイヤガイド115dを挿通している。
【0036】
上湾曲ワイヤ161uと下湾曲ワイヤ161dの先端は、図4に示すように、湾曲部112の先端の先端部116に固定されている。先端部116に固定された上湾曲ワイヤ161uと下湾曲ワイヤ161dの先端は、長手方向Aの中心軸Oを挟んでUD方向の両側に配置されている。
【0037】
左湾曲ワイヤ161lおよび右湾曲ワイヤ161rは、湾曲部112をLR方向に曲げるワイヤである。左湾曲ワイヤ161lは、左ワイヤガイド115lを挿通している。右湾曲ワイヤ161rは、右ワイヤガイド115rを挿通している。
【0038】
左湾曲ワイヤ161lと右湾曲ワイヤ161rの先端は、図4に示すように、湾曲部112の先端部116に固定されている。先端部116に固定された左湾曲ワイヤ161lと右湾曲ワイヤ161rの先端は、長手方向Aの中心軸Oを挟んでLR方向の両側に配置されている。
【0039】
湾曲部112は、湾曲ワイヤ160(上湾曲ワイヤ161u,下湾曲ワイヤ161d,左湾曲ワイヤ161l,右湾曲ワイヤ161r)をそれぞれ牽引または弛緩することによって、所望の方向に湾曲自在である。
【0040】
図6に示すように、湾曲部112の内部に形成された内部経路101には、湾曲ワイヤ160と、チャンネルチューブ171と、撮像ケーブル173と、ライトガイド174とが挿通している。
【0041】
体内軟性部119は、長尺で可撓性を有する管状部材である。体内軟性部119に形成された内部経路101には、湾曲ワイヤ160と、チャンネルチューブ171と、撮像ケーブル173と、ライトガイド174とが挿通している。
【0042】
[連結部120]
連結部120は、図1に示すように、挿入部110の体内軟性部119と体外軟性部140とを連結する部材である。連結部120は、処置具400を挿入する挿入口である鉗子口126を備える。
【0043】
[体外軟性部140]
体外軟性部140は、長尺な管状部材である。体外軟性部140の内部に形成された内部経路101には、湾曲ワイヤ160と、撮像ケーブル173と、ライトガイド174と、送気吸引チューブ172(図10参照)とが挿通している。
【0044】
[着脱部150]
着脱部150は、図1に示すように、駆動装置200に装着される第一着脱部1501と、映像制御装置500に装着される第二着脱部1502と、を備える。なお、第一着脱部1501と第二着脱部1502とは、一体の着脱部であってもよい。
【0045】
体外軟性部140の内部に形成された内部経路101は、第一着脱部1501と第二着脱部1502に分岐する。湾曲ワイヤ160および送気吸引チューブ172は、第一着脱部1501を挿通する。撮像ケーブル173およびライトガイド174は、第二着脱部1502を挿通する。
【0046】
図7は、駆動装置200に装着前の第一着脱部1501を示す図である。
第一着脱部1501は、上下湾曲ワイヤ着脱部151と、左右湾曲ワイヤ着脱部152と、を有する。
【0047】
上下湾曲ワイヤ着脱部151は、湾曲部112をUD方向に曲げるワイヤ(上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161d)を駆動装置200に着脱自在に連結する機構である。
【0048】
左右湾曲ワイヤ着脱部152は、湾曲部112をLR方向に曲げるワイヤ(左湾曲ワイヤ161lおよび右湾曲ワイヤ161r)を駆動装置200に着脱自在に連結する機構である。
【0049】
左右湾曲ワイヤ着脱部152は、上下湾曲ワイヤ着脱部151と同等の構造であるため、図示および説明を省略する。
【0050】
図8は、駆動装置200に装着前の上下湾曲ワイヤ着脱部151を示す図である。図9は、駆動装置200に装着された上下湾曲ワイヤ着脱部151を示す図である。上下湾曲ワイヤ着脱部151は、支持部材155と、回転ドラム156と、張力センサ159と、を有する。
【0051】
支持部材155は、回転ドラム156を支持する。支持部材155は、上下湾曲ワイヤ着脱部151の基端側に露出する着脱検知用ドグ155aと、複数のベンドプーリ155pと、を有する。
【0052】
ベンドプーリ155pは、体外軟性部140を挿通する上湾曲ワイヤ161uの搬送方向を変更して、上湾曲ワイヤ161uを回転ドラム156まで案内する。また、ベンドプーリ155pは、体外軟性部140を挿通する下湾曲ワイヤ161dの搬送方向を変更して、下湾曲ワイヤ161dを回転ドラム156まで案内する。
【0053】
回転ドラム156は、長手方向Aに沿って延びるドラム回転軸156rを中心に回動可能に支持部材155に支持されている。回転ドラム156は、巻取プーリ156aと、カップリング部156cと、を有する。
【0054】
巻取プーリ156aは、ドラム回転軸156rを中心に回動することにより上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dを牽引または送出する。先端側A1から基端側A2に向かって見て巻取プーリ156aが時計回りに回転することにより、上湾曲ワイヤ161uは巻取プーリ156aに巻き付けられて牽引され、下湾曲ワイヤ161dは巻取プーリ156aから送り出される。逆に、巻取プーリ156aが反時計回りに回転することにより、上湾曲ワイヤ161uは巻取プーリ156aから送り出され、下湾曲ワイヤ161dは巻取プーリ156aに巻き付けられて牽引される。この構成によって、上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dの進退量が多くても、牽引された部分はコンパクトに格納されて場所を取らない。
【0055】
上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dは、巻取プーリ156aに巻き付けられる部分が他の部分と比較して径が太い。そのため、上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dが、巻取プーリ156aと支持部材155との間に挟み込まることを好適に防止できる。また、上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dの牽引または弛緩に伴う伸びを好適に防止できる。
【0056】
上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dは、挿入部110を通過する部分のワイヤの径よりも、体外軟性部140を通過する部分のワイヤの径が太くてもよい。これによって、体内に挿入される挿入部110を細くすることができる。また、体外を通過する部分のワイヤの径を太くすることによって、上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dの伸びが抑えられて、湾曲部112に対する湾曲操作における制御性が向上する。
【0057】
カップリング部156cは、ドラム回転軸156rを中心に回動する円板部材である。カップリング部156cは、巻取プーリ156aの基端に固定されており、巻取プーリ156aと一体に回動する。カップリング部156cは、上下湾曲ワイヤ着脱部151の基端側A2に露出している。カップリング部156cの基端側A2の面には、二個の嵌合凸部156dが形成されている。二個の嵌合凸部156dは、ドラム回転軸156rを挟んで両側に形成されている。
【0058】
張力センサ159は、上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dの張力を検出する。張力センサ159の検出結果は、駆動コントローラ260によって取得される。
【0059】
[駆動装置200]
図10は、駆動装置200の機能ブロック図である。
駆動装置200は、アダプタ210と、操作受信部220と、送気吸引駆動部230と、ワイヤ駆動部(アクチュエータ)250と、駆動コントローラ260と、を備える。
【0060】
アダプタ210は、図7に示すように、第一アダプタ211と、第二アダプタ212と、を有する。第一アダプタ211は、操作ケーブル301が着脱可能に接続されるアダプタである。第二アダプタ212は、内視鏡100の第一着脱部1501が着脱可能に接続されるアダプタである。
【0061】
操作受信部220は、操作ケーブル301を経由して操作装置300から操作入力を受信する。操作装置300と駆動装置200とが有線通信ではなく無線通信により通信を行う場合、操作受信部220は公知の無線受信用モジュールを有する。
【0062】
送気吸引駆動部230は、内視鏡100の内部経路101に挿入された送気吸引チューブ172と接続される。送気吸引駆動部230は、ポンプ等を備えており、送気吸引チューブ172に空気を送気する。また、送気吸引駆動部230は、送気吸引チューブ172から空気を吸引する。
【0063】
ワイヤ駆動部(アクチュエータ)250は、上下湾曲ワイヤ着脱部151および左右湾曲ワイヤ着脱部152とカップリングして湾曲ワイヤ160を駆動する。
【0064】
ワイヤ駆動部250は、図7に示すように、上下湾曲ワイヤ駆動部(第一アクチュエータ)251と、左右湾曲ワイヤ駆動部(第二アクチュエータ)252と、を有する。
【0065】
上下湾曲ワイヤ駆動部251は、上下湾曲ワイヤ着脱部151とカップリングして、湾曲部112をUD方向に曲げるワイヤ(上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161d)を駆動する機構である。
【0066】
左右湾曲ワイヤ駆動部252は、左右湾曲ワイヤ着脱部152とカップリングして、湾曲部112をLR方向に曲げるワイヤ(左湾曲ワイヤ161lおよび右湾曲ワイヤ161r)を駆動する機構である。
【0067】
左右湾曲ワイヤ駆動部252は、上下湾曲ワイヤ駆動部251と同等の構造であるため、図示および説明を省略する。
【0068】
上下湾曲ワイヤ駆動部251は、図8に示すように、支持部材255と、湾曲ワイヤ駆動部256と、着脱センサ259と、を有する。
【0069】
湾曲ワイヤ駆動部256は、上下湾曲ワイヤ着脱部151の回転ドラム156とカップリングして、上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161dを駆動する。湾曲ワイヤ駆動部256は、シャフト256aと、モータ部256bと、被カップリング部256cと、トルクセンサ256eと、弾性部材256sと、を有する。
【0070】
シャフト256aは、シャフト回転軸256rを中心に回動可能かつ長手方向Aに進退可能に支持部材255に支持されている。内視鏡100の第一着脱部1501が駆動装置200に装着されたとき、シャフト回転軸256rは、ドラム回転軸156rと一致する。
【0071】
モータ部256bは、DCモータなどのモータと、モータを駆動するモータドライバと、モータエンコーダと、を有する。モータは、シャフト256aを、シャフト回転軸256rを中心に回転させる。モータドライバは、駆動コントローラ260によって制御される。
【0072】
被カップリング部256cは、シャフト回転軸256rを中心に回動する円板部材である。被カップリング部256cは、シャフト256aの先端に固定されており、シャフト256aと一体に回動する。図8に示すように、被カップリング部256cは、上下湾曲ワイヤ駆動部251の先端側A1に露出している。被カップリング部256cの先端側A1の面には、二個の嵌合凹部256dが形成されている。二個の嵌合凹部256dは、シャフト回転軸256rを挟んで両側に形成されている。
【0073】
図9に示すように、嵌合凸部156dと嵌合凹部256dとが嵌合して、カップリング部156cと被カップリング部256cとがカップリングする。その結果、モータ部256bによるシャフト256aの回転が回転ドラム156に伝達される。先端側A1から基端側A2に向かって見てシャフト256aが時計回りに回転することにより、上湾曲ワイヤ161uは牽引され、下湾曲ワイヤ161dは送り出される。逆に、シャフト256aが反時計回りに回転することにより、上湾曲ワイヤ161uは送出され、下湾曲ワイヤ161dは牽引される。
【0074】
トルクセンサ256eは、シャフト256aのシャフト回転軸256rを中心とした回転トルクを検出する。トルクセンサ256eの検出結果は、駆動コントローラ260によって取得される。
【0075】
弾性部材256sは、例えば圧縮バネであり、先端部が被カップリング部256c、基端部が支持部材255に接触している。弾性部材256sは、被カップリング部256cを先端側A1に付勢する。図9に示すように、カップリング部156cが脱着されると、被カップリング部256cは、シャフト256aとともに基端側A2に移動する。
【0076】
着脱センサ259は、図9に示すように、着脱検知用ドグ155aとの係合および非係合を検出することにより、上下湾曲ワイヤ着脱部151における上下湾曲ワイヤ駆動部251への着脱を検出する。着脱センサ259の検出結果は、駆動コントローラ260によって取得される。
【0077】
駆動コントローラ260は、駆動装置200の全体を制御する。駆動コントローラ260は、操作受信部220が受信した操作入力を取得する。駆動コントローラ260は、取得した操作入力に基づいて、送気吸引駆動部230およびワイヤ駆動部250を制御する。
【0078】
駆動コントローラ260は、プロセッサ261と、メモリ262と、プログラムおよびデータを記憶可能な記憶部263と、入出力制御部264と、を備えたプログラム実行可能なコンピュータである。駆動コントローラ260の機能は、プログラムをプロセッサが実行することにより実現される。駆動コントローラ260の少なくとも一部の機能は、専用の論理回路によって実現されていてもよい。
【0079】
駆動コントローラ260は、複数の湾曲ワイヤ160を駆動する複数のモータを高精度に制御するため、高い演算性能を備えていることが望ましい。
【0080】
なお、駆動コントローラ260は、プロセッサ261、メモリ262、記憶部263、および入出力制御部264以外の構成をさらに有してもよい。例えば、駆動コントローラ260は、画像処理や画像認識処理の一部もしくは全部を行う画像演算部をさらに有してもよい。画像演算部をさらに有することで、駆動コントローラ260は、特定の画像処理や画像認識処理を高速に実行できる。画像演算部は通信回線で接続される別体のハードウェア装置に搭載されていてもよい。
【0081】
[操作装置300]
図11は、操作装置300の斜視図である。図12は、背面311から見た操作装置300の斜視図である。図13は、操作装置300の側面図である。
操作装置300は、内視鏡100を駆動するための操作が入力される装置である。入力された操作入力は、操作ケーブル301を経由して駆動装置200に送信される。
【0082】
操作装置300は、操作部本体310と、第一アングルノブ320と、第二アングルノブ330と、送気ボタン350と、吸引ボタン351と、各種ボタン352と、を備える。
【0083】
操作部本体310は、術者Sが左手Lで保持可能な略円筒形状に形成されている。図12に示すように、操作部本体310には、術者Sの左手Lの掌を沿わせることができる背面311が形成されている。操作部本体310の長手方向の端部には、操作ケーブル301が接続されている。
【0084】
第一アングルノブ320および第二アングルノブ330は、湾曲部112を曲げる湾曲操作が入力される入力子である。
【0085】
第一アングルノブ320および第二アングルノブ330は、操作部本体310に回動自在に取り付けられている。第一アングルノブ320および第二アングルノブ330は、背面311と反対側の正面312に取り付けられている。第一アングルノブ320と第二アングルノブ330とは、同じ回転軸300rを中心に回転方向Mに回転する。
【0086】
第一アングルノブ320および第二アングルノブ330は、第一アングルノブ320および第二アングルノブ330に入力された回転操作における回転角度や回転数等を検出するエンコーダ(不図示)を有する。エンコーダの検出結果は、駆動装置200に送信される。
【0087】
以降の説明において、第一アングルノブ320および第二アングルノブ330の回転軸300rの方向を「前後方向」と定義し、操作部本体310に対して第一アングルノブ320および第二アングルノブ330が取り付けられた向きを「前方FR」と定義する。その反対向きを「後方RR」と定義する。また、操作部本体310の長手方向を「上下方向」と定義し、操作部本体310に対して操作ケーブル301が取り付けられた向きを「下方LWR」と定義する。その反対向きを「上方UPR」と定義する。後方RRに向かって右向きを「右方RH」と定義する。その反対向きを「左方LH」と定義する。右方RHまたは左方LHに向かう方向を「左右方向」と定義する。
【0088】
本実施形態において、第一アングルノブ320および第二アングルノブ330の回転軸300rの方向(前後方向)は、操作部本体310の背面311に対して略垂直な方向である。
【0089】
送気ボタン350は、操作部本体310の上方UPRに取り付けられており、図12に示すように左手Lの人差し指や中指によって操作される。送気ボタン350が押し込まれると、内視鏡100の先端部111の開口部111aから送気が実施される。送気ボタン350の操作は、駆動装置200に送信される。ここで、送気ボタン350は、内視鏡100の先端部111から水等の液体を送水するための操作を受け付けてもよい。送気ボタン350が送水機能を有するとき、例えば、送気ボタン350(送気送水ボタン)が押し込まれると、内視鏡100の先端部111の開口部111aから送水が実施される。このとき、例えば、駆動装置200がポンプ等を備える送水駆動部(不図示)を有し、送気ボタン350の操作が送水駆動部に送信されることで内視鏡100の先端部111から送水が実施される。
【0090】
送気ボタン350を操作することで開口部111aから送水が実施される場合、例えば、内視鏡100は、上述の送水駆動部に接続されて送水駆動部から水等の液体が流入する送水チューブ(不図示)を備える。また、このとき、送気吸引チューブ172は、送気および送水を実施可能な送気送水チューブとして機能してもよい。この場合、駆動装置200における送気吸引駆動部230は、送気を行う送気駆動部と、吸引を行う吸引駆動部とに分かれているのが望ましい。
【0091】
例えば、上述の送気送水チューブは、挿入部110よりも基端側A2において、送水チューブと、送気チューブとに分岐している。送水駆動部から送水チューブを経由して送気送水チューブへ水等の液体が流入し、上述の送気駆動部から送気チューブを経由して送気送水チューブへ空気が送気される。
【0092】
このとき、チャンネルチューブ171が吸引を実施可能な吸引チューブとして機能してもよい。この場合、吸引チューブ(チャンネルチューブ171)は、上述の吸引駆動部に接続され、吸引駆動部が駆動されると、吸引チューブを経由して開口部111aから吸引が実施される。また、挿入部110よりも基端側A2において、チャンネルチューブ171は、処置具400の挿入口である鉗子口126に接続される部分と、吸引駆動部に接続される部分とに分岐している。
【0093】
すなわち、送気と吸引とを実施するチューブは、一本のチューブ(送気吸引チューブ172)に限定されない。上述の送気チューブによって送気が実施され、チャンネルチューブ171(吸引チューブ)によって吸気が実施されてもよい。また、内視鏡100は、挿入部110よりも基端側A2において、送水を実施する送水チューブを有していてもよく、挿入部110において、送気チューブと送水チューブとが合流して送気および送水を実施可能な送気送水チューブを有していてもよい。
【0094】
吸引ボタン351は、操作部本体310の上方UPRに取り付けられており、図12に示すように左手Lの人差し指や中指によって操作される。吸引ボタン351が押し込まれると、内視鏡100の先端部111の開口部111aから吸引が実施される。吸引ボタン351の操作は、駆動装置200に送信される。なお、開口部111aから実施される吸引は、送気および吸引を実施可能な送気吸引チューブ172によって実施されてもよいし、送気と吸引とが異なるチューブによって実施される場合、上述のようにチャンネルチューブ171(吸引チューブ)によって実施されてもよい。
【0095】
各種ボタン352は、操作部本体310の上方UPRに取り付けられており、図12に示すように左手Lの親指によって操作される。各種ボタン352には、任意の機能を割り当てることができる。例えば、各種ボタン352が押し込まれると、湾曲部112が外力に対して受動的に湾曲するアングルフリー制御に切り替えるようにしてもよい。また、各種ボタン352に割り当てる機能が無く、各種ボタン352が不要な場合、操作装置300は各種ボタン352を備えなくてもよい。
【0096】
駆動装置200の駆動コントローラ260は、操作装置300が送信した操作入力を取得して、送気吸引駆動部230およびワイヤ駆動部250を制御する。
【0097】
駆動コントローラ260は、第一アングルノブ320に入力された回転操作に基づいて、上下湾曲ワイヤ駆動部251を制御して、湾曲部112をUD方向に曲げるワイヤ(上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161d)を駆動する。また、駆動コントローラ260は、第二アングルノブ330に入力された回転操作に基づいて、左右湾曲ワイヤ駆動部252を制御して、湾曲部112をLR方向に曲げるワイヤ(左湾曲ワイヤ161lおよび右湾曲ワイヤ161r)を駆動する。
【0098】
図14は、前方FRから見た第一アングルノブ320の正面図である。図14に示すように、第一アングルノブ320は、原点OPと第一アングルノブ320における基準点L1とが位置合わせされた位置を初期位置とする。第一アングルノブ320は、回転軸300rを回転中心として回転可能であり、基準点L1が原点OPから離れる方向(第一方向M1)と、基準点L1が原点OPへ戻る方向(第二方向M2)とに回転されることで湾曲操作が入力される。
【0099】
図15は、湾曲した湾曲部112を示す図である。湾曲部112の湾曲量とは、例えば湾曲した湾曲部の湾曲角度、湾曲した湾曲部の湾曲の曲率、湾曲部の湾曲のための動力を入力するワイヤの牽引量や弛緩量、湾曲部の湾曲のための駆動力を生じる駆動部(モーター、アクチュエータ等)の制御量をいう。以下の説明では、湾曲部112の湾曲量が、湾曲部112の湾曲角度である場合について説明する。図15に示す湾曲角度φは、湾曲部112における基準角度(基準湾曲量)からの角度変位量(湾曲量の変位)を示す。ここで、基準角度とは、第一アングルノブ320が原点OP(初期位置)に位置するときに湾曲部112がとるべき角度を示す。本実施形態における基準角度は、湾曲部112が曲がっておらず直線形状を有するときの角度を示す。
【0100】
湾曲部112は、第一アングルノブ320を図14に示す+θ方向に回転することで、図15に示す+φ方向に湾曲する。湾曲部112は、第一アングルノブ320を図14に示す-θ方向に回転することで、図15に示す-φ方向に湾曲する。
【0101】
第二アングルノブ330は、第一アングルノブ320と同様に、回転軸300rを回転中心として原点OPから離れる方向(第一方向M1)と、原点OPへ戻る方向(第二方向M2)とに回転されることで湾曲操作が入力される。本実施形態において、第二アングルノブ330は、原点OPと第二アングルノブ330における基準点(不図示)が位置合わせされた位置を初期位置とする。第一アングルノブ320における原点と、第二アングルノブ330における原点とは同一の位置でなくてもよい。
【0102】
操作装置300において、湾曲部112を曲げる湾曲操作が入力される入力子は、レバー、ノブまたはダイヤルでもよい。例えば、入力子は、レバー式のノブや、スライド式のノブでもよい。操作装置300は、操作装置300の入力子の形態に合わせたセンサ(例えばエンコーダ)を有し、操作装置300の入力子(例えば第一アングルノブ320および第二アングルノブ330)の原点OPからの移動量(例えば回転角度)および移動方向を検出して駆動装置200に送信する。
【0103】
操作装置300の上方UPRを内視鏡100の長手方向Aの先端側A1と対応付けた場合、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330の回転方向と、内視鏡100の先端の湾曲部112の湾曲方向は一致する。そのため、術者Sにとって直感的な対応関係となっており、操作性がよい。
【0104】
操作装置300は、内視鏡100の湾曲部112を駆動する駆動機構を備えていなため、小型で軽量である。また、第一アングルノブ320、第二アングルノブ330、送気ボタン350、吸引ボタン351、および各種ボタン352は、術者Sが左手Lのみで十分に操作できる位置に配置されている。そのため、術者Sは、図2に示すように、左手Lのみで操作装置300を握って操作しやすい。
【0105】
[映像制御装置500]
図16は、映像制御装置500の機能ブロック図である。
映像制御装置500は、電動内視鏡システム1000を制御する。映像制御装置500は、第三アダプタ510と、撮像処理部520と、光源部530と、メインコントローラ560と、を備える。
【0106】
第三アダプタ510は、内視鏡100の第二着脱部1502が着脱可能に接続されるアダプタである。
【0107】
撮像処理部520は、撮像ケーブル173を経由して先端部111の撮像部111cから取得された撮像信号を撮像画像に変換する。
【0108】
光源部530は、撮像対象に照射される照明光を発生させる。光源部530が発生させた照明光は、ライトガイド174を経由して先端部111の照明部111bに導かれる。
【0109】
メインコントローラ560は、プロセッサ561と、メモリ562と、プログラムおよびデータを記憶可能な記憶部563と、入出力制御部564と、を備えたプログラム実行可能なコンピュータである。メインコントローラ560の機能はプログラムをプロセッサ561が実行することにより実現される。メインコントローラ560の少なくとも一部の機能は、専用の論理回路によって実現されていてもよい。
【0110】
メインコントローラ560は、プロセッサ561と、プログラムを読み込み可能なメモリ562と、記憶部563と、入出力制御部564と、を有する。
【0111】
記憶部563は、上述したプログラムや必要なデータを記憶する不揮発性の記録媒体である。記憶部563は、例えばROMやハードディスク等で構成される。記憶部563に記録されたプログラムは、メモリ562に読み込まれ、プロセッサ561によって実行される。
【0112】
入出力制御部564は、撮像処理部520、光源部530、駆動装置200、表示装置900、入力装置(不図示)、およびネットワーク機器(不図示)と接続されている。入出力制御部564は、プロセッサ561の制御に基づき、接続される機器に対するデータの送受信や制御信号の送受信を実施する。
【0113】
メインコントローラ560は、撮像処理部520が取得した撮像画像に対して画像処理を実施できる。メインコントローラ560は、術者Sに対する情報提供を目的とするGUI画像やCG画像を生成できる。メインコントローラ560は、撮像画像やGUI画像やCG画像を表示装置900に表示させることができる。
【0114】
メインコントローラ560は、一体となったハードウェア装置に限られない。例えば、メインコントローラ560は、一部が別体のハードウェア装置として分離した上で、分離したハードウェア装置を通信回線で接続することで構成してもよい。例えば、メインコントローラ560は、分離された記憶部563を通信回線で接続するクラウドシステムであってもよい。
【0115】
メインコントローラ560は、図16に示すプロセッサ561、メモリ562、記憶部563、および入出力制御部564以外の構成をさらに有してもよい。例えば、メインコントローラ560は、プロセッサ561が行っていた画像処理や画像認識処理の一部もしくは全部を行う画像演算部をさらに有してもよい。画像演算部をさらに有することで、メインコントローラ560は、特定の画像処理や画像認識処理を高速に実行できる。画像演算部は通信回線で接続される別体のハードウェア装置に搭載されていてもよい。
【0116】
[電動内視鏡システム1000の動作]
次に、本実施形態の電動内視鏡システム1000の動作について説明する。具体的には、大腸内の管壁に形成された患部を電動内視鏡システム1000を用いて観察および処置する手技について説明する。
【0117】
以降の説明において、図17に示す制御装置600の駆動コントローラ260の制御フローチャートに沿って説明を行う。制御装置600が起動されると、駆動コントローラ260は初期化を実施する(ステップS100)。次に、駆動コントローラ260(主としてプロセッサ261)はステップS110を実行する。
【0118】
図18は、大腸内に挿入された挿入部110を示す図である。
術者Sは、内視鏡100の挿入部110を患者Pの肛門から大腸内に挿入する。術者Sは、表示装置900に表示された撮像画像を観察しながら、体内軟性部119を右手Rで操作しながら、挿入部110を移動させて、先端部111を患部に近付ける。また、術者Sは、操作装置300を左手Lで操作して、湾曲部112に対する湾曲操作を入力する。
【0119】
<ステップS110>
駆動コントローラ260は、受信した湾曲操作に基づいて湾曲部112に対する湾曲制御を実行し、ワイヤ駆動部(アクチュエータ)250を制御して湾曲ワイヤ160を曲げる。
【0120】
以降の説明において、第一アングルノブ320に湾曲操作が入力されたときの駆動コントローラ260における制御を説明する。駆動コントローラ260は、第二アングルノブ330に入力された湾曲操作に対しても同様の制御を行う。
【0121】
駆動コントローラ260は、ステップS110において、湾曲部112における基準角度からの角度変位量を取得する。
【0122】
駆動コントローラ260は、モータエンコーダが検出したモータ部256bの回転角度(駆動量)に基づいて算出された第一角度φ(第一湾曲量)を取得する。第一角度φの取得手段はこれに限られず、駆動コントローラ260は、例えば、湾曲部112におけるアウターシース118に配置されたひずみセンサが検出したひずみに基づいて算出された角度を取得してもよい。
【0123】
また、駆動コントローラ260は、ステップS110において、第一アングルノブ320の回転角度θ(移動量)に基づいて算出された湾曲部112における基準角度からの角度変位量である第二角度φref(第二湾曲量)を取得する。
【0124】
第二角度φrefは、式1に示すように、操作装置300が有するエンコーダが検出した第一アングルノブ320の回転角度θと、変換係数knobとに基づいて駆動コントローラ260のプロセッサ261によって算出される。変換係数knobは、電動内視鏡システム1000の構成等によって任意の値を適宜設定できる。
【0125】
【数1】
【0126】
駆動コントローラ260は、次にステップS120を実行する。
【0127】
<ステップS120>
駆動コントローラ260は、ステップS120において、ステップS110で取得した第一角度φと第二角度φrefとを比較する。ステップS110で取得した第一角度φと第二角度φrefとが異なる角度である場合、駆動コントローラ260は、次にステップS130を実行する。
【0128】
<ステップS130>
ステップS120で比較した第一角度φと第二角度φrefとが異なる角度である場合、湾曲部112における湾曲角度において、実際の湾曲角度と、術者Sが把握している湾曲角度とが異なる可能性がある。ここで、実際の湾曲角度とは、モータ部256bの回転角度に基づいて算出された第一角度φを示す。
【0129】
例えば、湾曲部112が外力に対して受動的に湾曲するアングルフリー制御を行った場合、操作装置300は湾曲部112を駆動する駆動機構を備えていないため、第一アングルノブ320は、外力によって湾曲する湾曲部112の湾曲動作に追従しない。そのため、操作装置300に湾曲操作が入力されたとき、実際の湾曲角度と操作装置300が示す湾曲角度とが異なり、電動内視鏡システム1000の操作性が低下する可能性がある。
【0130】
駆動コントローラ260は、第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率を増大又は減少させることで第一角度φと第二角度φrefとの差が無くなるようにワイヤ駆動部250を制御する。第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率の算出については後述する。
【0131】
<ステップS131>
駆動コントローラ260は、ステップS130において、まず、ステップS131を実行する。駆動コントローラ260は、ステップS131において、sign(φref-φ)と、sign(Δθ)とを比較する。
【0132】
ここで、sign(x)は、変数xの符号(正負)に応じた数を返す符号関数である。xが正数のとき、sign(x)は1を返す。xが0のとき、sign(x)は0を返す。xが負数のとき、sign(x)は-1を返す。
【0133】
また、Δθは、湾曲操作によって入力された第一アングルノブ320の角度変位量を示す。すなわち、駆動コントローラ260は、ステップS131において、第二角度φrefから第一角度φを引いた値の正負と、第一アングルノブ320の角度変位量の正負とを比較する。
【0134】
sign(φref-φ)とsign(Δθ)とが等しいとき、駆動コントローラ260は、ステップS132を実行する。
【0135】
<ステップS132>
駆動コントローラ260は、ステップS132において、第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率(補正ゲインs)を式2により取得する。
【0136】
【数2】
【0137】
ここで、kは、記憶部263に予め記憶された補正係数である。駆動コントローラ260のプロセッサ261は、記憶部263から補正係数kを取得し、式2により比率を算出する。また、abs(y)は変数yの絶対値を示す。
【0138】
第一角度φの絶対値が第二角度φrefの絶対値より小さく、かつ、第一アングルノブ320が原点OPから離れる方向(第一方向M1)に回転したとき、sign(φref-φ)とsign(Δθ)とは等しくなる。
【0139】
この場合、湾曲部112の実際の湾曲角度(第一角度φ)は、操作装置300が示す湾曲角度(第二角度φref)よりも基準角度に近い。そのため、湾曲角度が基準角度からより離れるように術者Sが第一アングルノブ320を第一方向M1に回転させても、湾曲部112は、術者Sが想定した湾曲角度まで曲がらない。このとき、駆動コントローラ260は、式2を用いて第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率を増大させる。比率を増大させることで、第一角度φと第二角度φrefとの差が無くなるように湾曲部112を湾曲させることができる。
【0140】
また、第一角度φの絶対値が第二角度φrefの絶対値より大きく、かつ、第一アングルノブ320が原点OPに戻る方向(第二方向M2)に回転したとき、sign(φref-φ)とsign(Δθ)とは等しくなる。
【0141】
この場合、湾曲部112の実際の湾曲角度(第一角度φ)は、操作装置300が示す湾曲角度(第二角度φref)よりも基準角度から離れている。そのため、湾曲角度が基準角度に近付くように術者Sが第一アングルノブ320を第二方向M2に回転させても、湾曲部112は、術者Sが想定した湾曲角度まで戻らない。このとき、駆動コントローラ260は、式2を用いて第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率を増大させる。比率を増大させることで、第一角度φと第二角度φrefとの差が無くなるように湾曲部112を湾曲させることができる。
【0142】
次に、ステップS131において、sign(φref-φ)とsign(Δθ)とが異なる場合について説明する。駆動コントローラ260は、ステップS131においてsign(φref-φ)とsign(Δθ)とが異なるとき、ステップS133を実行する。
【0143】
<ステップS133>
駆動コントローラ260は、ステップS133において、第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率(補正ゲインs)を式3により取得する。
【0144】
【数3】
【0145】
第一角度φの絶対値が第二角度φrefの絶対値より小さく、かつ、第一アングルノブ320が原点OPに戻る方向(第二方向M2)に回転したとき、sign(φref-φ)とsign(Δθ)とは異なる。
【0146】
この場合、湾曲部112の実際の湾曲角度(第一角度φ)は、操作装置300が示す湾曲角度(第二角度φref)よりも基準角度に近い。そのため、湾曲角度が基準角度に近付くように術者Sが第一アングルノブ320を第二方向M2に回転させたとき、湾曲部112は、術者Sが想定した湾曲角度よりも基準角度に近い角度まで戻ってしまう。このとき、駆動コントローラ260は、式3を用いて第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率を減少させる。比率を減少させることで、第一角度φと第二角度φrefとの差が無くなるように湾曲部112を湾曲させることができる。
【0147】
また、第一角度φの絶対値が第二角度φrefの絶対値より大きく、かつ、第一アングルノブ320が原点OPから離れる方向(第一方向M1)に回転したとき、sign(φref-φ)とsign(Δθ)とは異なる。
【0148】
この場合、湾曲部112の実際の湾曲角度(第一角度φ)は、操作装置300が示す湾曲角度(第二角度φref)よりも基準角度から離れている。そのため、湾曲角度が基準角度からより離れるように術者Sが第一アングルノブ320を第一方向M1に回転させたとき、湾曲部112は、術者Sが想定した湾曲角度よりも基準角度から離れた角度まで曲がってしまう。このとき、駆動コントローラ260は、式3を用いて第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率を減少させる。比率を減少させることで、第一角度φと第二角度φrefとの差が無くなるように湾曲部112を湾曲させることができる。
【0149】
なお、ステップS130の処理において、第一角度φと第二角度φrefとの正負が異なる組合せは除外される。
【0150】
<ステップS140>
ステップS130で比率(補正ゲインs)を算出した後、駆動コントローラ260は、算出した比率に基づいてワイヤ駆動部250(アクチュエータ)を駆動させる(ステップS140)。次に、駆動コントローラ260は、ステップS150を実行する。
【0151】
<ステップS150>
駆動コントローラ260は、ステップS150において、第一アングルノブ320に湾曲操作が入力されていないとき、ステップS160に移行して制御を終了する。第一アングルノブ320に湾曲操作が入力されているとき、ステップS110に戻り、制御を継続する。
【0152】
ステップS120において第一角度φと第二角度φrefとが異なるときの制御フローについて説明したが、ステップS120において第一角度φと第二角度φrefとが等しいとき、駆動コントローラ260は、ステップS140を実行し、第一アングルノブ320の回転角度θに基づいてワイヤ駆動部250(アクチュエータ)を駆動させる。このとき、駆動コントローラ260は、回転角度θに対する第二角度φrefの比率において、記憶部263に予め記憶された比率を用いてワイヤ駆動部250を駆動させてもよい。
【0153】
なお、駆動コントローラ260は、第一アングルノブ320が回転限界まで回転したときに、湾曲部112を最大湾曲角度まで湾曲させるようにワイヤ駆動部250を制御してもよい。
【0154】
ここで、第一アングルノブ320の回転限界とは、第一アングルノブ320が、突き当て構造等によりその角度までしか回転できない位置(角度)を示す。例えば、図14に示す第一アングルノブ320において、第一アングルノブ320は、第一アングルノブ320の回転角度を規制する突き当て構造を有する。第一アングルノブ320が、突き当て構造によって規制されて回転角度θが150°の位置までしか回転できないとき、回転角度θが150°の位置を第一アングルノブ320の回転限界とする。
【0155】
また、湾曲部112の最大湾曲角度とは、湾曲部112が湾曲可能な最大の角度であり、例えば、予め設定された任意の角度である。湾曲部112の最大湾曲角度は、例えば、第一アングルノブ320を回転限界まで回転させたとき、湾曲部112がとるべき角度である。また、湾曲部112の材質や構造等によって最大湾曲角度を設定してもよい。
【0156】
術者Sは、第一アングルノブ320を回転限界まで回転させ、回転限界の位置で第一アングルノブ320を静止させる。駆動コントローラ260は、第一アングルノブ320が回転限界に位置するとき、最大湾曲角度に曲がるまで、湾曲部112を湾曲させ続けるようにワイヤ駆動部250を制御する。湾曲部112は、最大湾曲角度まで曲がり、湾曲動作を停止する。
【0157】
例えば、第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率(補正ゲインs)が1よりも小さい場合、第一アングルノブ320を回転限界まで回転させても、湾曲部112は最大湾曲角度よりも小さい角度までしか湾曲しない。
【0158】
第一アングルノブ320が回転限界まで回転したとき、最大湾曲角度に曲がるまで湾曲部112を湾曲させ続けるようにワイヤ駆動部250を制御することで、第一アングルノブ320の回転角度θに対する第二角度φrefの比率(補正ゲインs)が1よりも小さい場合であっても、湾曲部112を最大湾曲角度まで曲げることができ、操作性を向上できる。
【0159】
本実施形態に係る電動内視鏡システム1000によれば、ワイヤ駆動部250の駆動量に基づいて算出された湾曲部112の角度変位量である第一角度φと、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330の移動量(Δθ)に基づいて算出された湾曲部112の角度変位量である第二角度φrefとが異なるとき、第一角度φと第二角度φrefとの差が無くなるようにワイヤ駆動部250を制御できる。その結果、操作性を向上させた電動内視鏡システム1000を提供することができる。
【0160】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0161】
(変形例1-1)
上記実施形態において、術者Sは内視鏡100を右手Rで操作しながら、操作装置300を左手Lで操作する。しかしながら、電動内視鏡システム1000の使用態様はこれに限定されない。術者Sは、内視鏡100を左手Lで操作しながら、操作装置300を右手Rで操作してもよい。この場合、操作装置300は右手Rで操作しやすいものに最適化されたものとなる。
【0162】
(変形例1-2)
上記実施形態において、内視鏡100は、湾曲する湾曲部112を有する。しかしながら、内視鏡100の態様はこれに限定されない。内視鏡100は、第一湾曲部と第二湾曲部とが二段階に湾曲する湾曲機能(多段湾曲機能)を有していてもよい。この場合、操作装置は、第一湾曲部又は第二湾曲部の湾曲操作を切り替える切り替えスイッチを有していてもよい。また、駆動装置は、第一湾曲部および第二湾曲部に対して、アクチュエータの駆動量に基づいて算出された各湾曲部の角度変位量と、第一アングルノブ又は第二アングルノブの角度に基づいて算出された各湾曲部の角度変位量との差が無くなるようにアクチュエータを制御してもよい。
【0163】
(変形例1-3)
上記実施形態において、操作ケーブル301は操作部本体310の長手方向の端部に取り付けられている。しかしながら、操作部本体310における操作ケーブル301の接続位置はこれに限定されない。図19は、操作装置300の変形例である操作装置300Aの斜視図である。操作装置300Aは、操作部本体310Aと、第一アングルノブ320と、第二アングルノブ330と、送気ボタン350と、吸引ボタン351と、各種ボタン352と、を備える。
【0164】
操作部本体310Aは、上記実施形態の操作装置300の操作部本体310と比較して、操作ケーブル301が接続される位置が異なっている。操作部本体310Aは、操作ケーブル301が接続される操作ケーブル接続部313を有する。
【0165】
操作ケーブル接続部313は、操作部本体310Aの上方UPRであって、各種ボタン352の近傍に設けられている。操作ケーブル接続部313は、操作部本体310Aの背面311から左方LHに延出している。操作ケーブル接続部313は、操作部本体310Aの左方LHの側面から左方LHに延出していてもよい。
【0166】
操作ケーブル接続部313は、従来の軟性内視鏡の操作部におけるユニバーサルケーブルが接続される位置と同等の位置に設けられている。そのため、術者Sは、従来の軟性内視鏡の操作部と同様に、左手Lの親指と人差し指とで操作ケーブル接続部313を挟み込むことにより、操作装置300Aを安定して保持できる。
【0167】
操作装置300Aが無線通信により駆動装置200と通信し、操作装置300Aに操作ケーブル301が接続されなくてもよい。通信の無線化により、左手Lはより自由に操作装置300Aを保持できる。なお、通信が無線化された場合であっても、左手Lの親指と人差し指の間に操作装置300Aをひっかけて保持しやすくするために、操作ケーブル301が接続されていない操作ケーブル接続部313が操作部本体310Aに設けられていてもよい。術者Sは、左手Lの親指と人差し指とで操作ケーブル接続部313を挟み込むことにより、操作装置300Aを安定して保持できる。
【0168】
(変形例1-4)
上記実施形態において、電動内視鏡システム1000は、スマートシューター(登録商標)などの公知の内視鏡装着器具をさらに備えてもよい。内視鏡装着器具を用いることによって、術者Sは右手Rで挿入部110を保持したままで処置具400の進退操作を行うことができる。
【0169】
(変形例1-5)
上記実施形態において、電動内視鏡システム1000によれば、ワイヤ駆動部250の駆動量に基づいて算出された湾曲部112の角度変位量である第一角度φ(第一湾曲量)と、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330の移動量(Δθ)に基づいて算出された湾曲部112の角度変位量である第二角度φref(第二湾曲量)とが異なるとき、第一角度φと第二角度φrefとの差が無くなるようにワイヤ駆動部250を制御できる。しかしながら、ワイヤ駆動部250の制御のために用いるパラメータは角度に限られない。例えば、電動内視鏡システム1000は、ワイヤ駆動部250の駆動量を第一駆動量(第一湾曲量)とし、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330の移動量(Δθ)に基づいて算出されたワイヤ駆動部250の駆動量である第二駆動量(第二湾曲量)とが異なるとき、第一湾曲量と第二湾曲量との差が無くなるようにワイヤ駆動部250を制御できる。また、電動内視鏡システム1000は、湾曲ワイヤ160の変位量(牽引量や弛緩量)を第一ワイヤ変位量(第一湾曲量)とし、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330の移動量(Δθ)に基づいて算出された湾曲ワイヤ160の変位量である第二ワイヤ変位量(第二湾曲量)とが異なるとき、第一ワイヤ変位量と第二ワイヤ変位量との差が無くなるようにワイヤ駆動部250を制御できる。これらに限られず、湾曲部112の湾曲形状の変化を特定できるパラメータであれば、第一湾曲量や第二湾曲量として採用することができる。
【0170】
(変形例1-6)
上記実施形態において、電動内視鏡システム1000は、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330に入力された操作に対する湾曲部112の応答性を調整するための機能をさらに備えていてもよい。
【0171】
例えば、術者Sが第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330を回転させてから、湾曲部112が湾曲し始めるまでに遅れが生じることがある。特に、湾曲部112の湾曲角度φが反転するときや、湾曲部112が直線形状に近いとき、遅れが生じることがある。ここで、湾曲角度φの反転とは、直前に湾曲した方向から反対方向に湾曲し、湾曲する向きが切り替わることを示す。上述の応答性は、この遅れの程度を示す。例えば、湾曲部112が直線形状に近く湾曲ワイヤ160に弛みが生じているとき、術者Sが第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330を回転させてから、湾曲部112が湾曲し始めるまでに遅れが生じる。また、湾曲部112が湾曲している状態において、湾曲後に直線形状に戻るときや、直線形状に戻りきる前に再度湾曲させるときなど、湾曲角度φが反転する際のヒステリシスによって湾曲部112の動作に遅れが生じる。
【0172】
例えば、操作装置は、応答性を調整するためのスイッチ(応答性調整スイッチ)を備える。上記実施形態の操作装置300が備える各種ボタン352を応答性調整スイッチとしてもよい。例えば、術者Sが操作装置300の各種ボタン352を押すことで、電動内視鏡システム1000は、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330に入力された操作に対する湾曲部112の応答性を調整するための制御を行う。
【0173】
駆動コントローラ260は、応答性調整スイッチに操作が入力されると、制御パラメータを変更し、応答性を変更する。応答性を変更するための制御パラメータとして、例えば、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330の移動量(回転量)に対する湾曲ワイヤ160の牽引量の割合が挙げられる。
【0174】
応答性調整スイッチを操作して応答性を調整することで、術者Sは、任意の応答性に設定した状態で電動内視鏡システム1000を操作することができ、操作性が向上する。応答性は、応答性調整スイッチに入力された操作に基づいて速く調整されてもよいし、遅く調整されてもよい。
【0175】
例えば、操作装置が、応答性調整スイッチとしてレバー式又はスライド式のノブを備え、ノブの操作方向によって、応答性を速く又は遅く調整できるようにしてもよい。また、操作装置は、複数の応答性調整スイッチを備え、応答性を速く調整する応答性調整スイッチと、応答性を遅く調整する応答性調整スイッチと、を備えていてもよい。
【0176】
また、応答性の調整は、駆動コントローラ260が自動で行う調整と、術者Sが応答性調整スイッチに入力した操作に基づいて駆動コントローラ260が行う調整と、を組み合わせて行ってもよい。例えば、応答性の調整において、大まかな(粗い)調整は自動で行い、微調整は術者Sが応答性調整スイッチを操作することで行われるようにしてもよい。
【0177】
例えば、応答性を調整するために駆動コントローラ260が自動で推定した制御パラメータに対して、術者Sが応答性調整スイッチに入力した操作に応じてオフセットを載せて制御してもよい。
【0178】
操作装置が応答性調整スイッチを備えることで、術者Sは、第一アングルノブ320又は第二アングルノブ330に入力された操作に対する湾曲部112の応答性を任意の程度(速め又は遅め等)に調整できるため、操作性を向上できる。
【0179】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る電動内視鏡システム1000Bについて、図20から図27を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0180】
[電動内視鏡システム1000B]
電動内視鏡システム1000Bは、図1に示すように、内視鏡100と、駆動装置200Bと、操作装置300Bと、処置具400と、映像制御装置500と、表示装置900と、を備える。駆動装置200Bと映像制御装置500とは、電動内視鏡システム1000Bを制御する制御装置600Bを構成する。
【0181】
[操作装置300B]
図20は、操作装置300Bの斜視図である。操作装置300Bは、操作部本体310と、第一アングルノブ320Bと、第二アングルノブ330Bと、送気ボタン350と、吸引ボタン351と、各種ボタン352と、を備える。
【0182】
第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bは、第一実施形態の第一アングルノブ320および第二アングルノブ330と同様に、操作部本体310に対して回動自在に正面312に取り付けられ、湾曲部112を曲げる湾曲操作が入力される入力子である。第一アングルノブ320Bと第二アングルノブ330Bとは、同じ回転軸300rを中心に回転方向Mに回転する。
【0183】
第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bは、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bに入力された回転操作における回転角度や回転数等を検出するエンコーダ(不図示)を有する。エンコーダの検出結果は、駆動装置200Bに送信される。
【0184】
図21は、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bの断面図である。図22は、第一アングルノブ320Bの一部を示す斜視図である。図23は、第一アングルノブ320Bの第一上カバー321の裏面を示す斜視図である。
【0185】
以降の説明において、図21に示すように、回転軸300rと垂直な方向を「径方向RD」と定義し、回転軸300rから離れる向きを「外側OU」、回転軸300rに近付く向きを「内側IN」と定義する。
【0186】
第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bは、回転軸300rを回転中心として原点OPから離れる方向(第一方向M1)に回転したとき、原点OPに戻る方向(第二方向M2)に付勢する弾性部材(第一弾性部材326および第二弾性部材336)を有する。
【0187】
第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bは、ノブ固定部312aを介して操作装置300の正面312に取り付けられている。第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bは、ノブ固定部312aを介さずに正面312に直接取り付けられてもよいが、ノブ固定部312aを介することで、構成部品の交換を行う際などに、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bを操作装置300から容易に取り外すことができる。
【0188】
第一アングルノブ320Bは、第一上カバー321と、第一下カバー322と、第一ノブ軸323と、第一Oリング324と、第一バネベース325と、第一弾性部材326と、固定軸327と、第三Oリング328と、を備える。
【0189】
第一上カバー321は、回転軸300rを中心軸とする略円筒形状であり、術者Sが左手Lで操作する際に触れる第一アングルノブ320Bの外形を形成している。図21および図23に示すように、第一上カバー321は、後方RRに開口した略円筒状の凹形状を有する。この凹形状に、第一バネベース325および第一弾性部材326が収納されている。
【0190】
第一下カバー322は、回転軸300rを中心とする略円板状であり、回転軸300rを中心とする略円形状の開孔を有する。第一下カバー322は、第一上カバー321の後方RRに取り付けられ、第一上カバー321に形成された凹形状における後方RRの開口において、径方向RDにおける外側OUの一部を覆っている。
【0191】
第一ノブ軸323は、第一アングルノブ320Bが回転軸300rを回転中心として回転するための回転軸部分である。第一ノブ軸323は、回転軸300rを中心軸とする略円筒形状であり、外周面に取り付けられた第一Oリング324を介してノブ固定部312aに接続されている。第一Oリング324とノブ固定部312aとは、径方向RDに接触している。第一ノブ軸323は、ノブ固定部312aに対して第一Oリング324を摺動させ、回転軸300rを回転中心としてノブ固定部312aに対して回転可能である。
【0192】
第一上カバー321の後方RRの端部と第一ノブ軸323の前方FRの端部とが接続されているため、第一上カバー321および第一下カバー322は、第一ノブ軸323とともに回転軸300rを回転中心としてノブ固定部312aに対して回転方向Mに回転可能である。
【0193】
第一バネベース325は、回転軸300rを中心軸とする略円筒形状であり、第一上カバー321に形成された凹形状における後方RRの開口において、径方向RDにおける内側INの一部を覆っている。第一バネベース325は、ノブ固定部312aに接続されている。第一バネベース325は、ノブ固定部312aから前方FRに突き出た規制ピン(不図示)によって回転方向Mの回転動作を規制されているため、ノブ固定部312aに対して回転方向Mに回転しない。
【0194】
第一バネベース325は、図22に示すように、前方FRに突き出た第一規制部325aおよび第二規制部325bを有する。第一規制部325aは、第一バネベース325の上方UPRの端部に設けられている。第二規制部325bは、第一バネベース325の下方LWRの端部に設けられている。
【0195】
第一弾性部材326は、図22に示すように、第一バネベース325の前方FRに設けられたバネ部材(ねじりコイルばね)である。第一弾性部材326は、回転軸300rを中心に巻かれたコイル部分の両端において、上方UPRに延出した第一腕部326aおよび第二腕部326bを有する。第一腕部326aと第二腕部326bとは、第一バネベース325の第一規制部325aを第一アングルノブ320Bの回転方向Mに挟んで配置されている。そのため、第一弾性部材326は、第一規制部325aによって回転方向Mの回転動作が規制され、第一バネベース325に対して回転しない。
【0196】
第一アングルノブ320Bに湾曲操作が入力されたとき、第一上カバー321、第一下カバー322、第一ノブ軸323および第一Oリング324は、回転軸300rを回転中心としてノブ固定部312aに対して回転方向Mに回転する。一方、第一バネベース325および第一弾性部材326は回転しない。
【0197】
ここで、図23に示すように、第一上カバー321の凹形状における上方UPRには、径方向RDに延びる第一当接部321aが設けられている。また、図24に示すように、第一アングルノブ320Bにおいて、第一上カバー321の第一当接部321aは、第一バネベース325における第一規制部325aの上方UPRに配置される。そのため、第一上カバー321の第一当接部321aは、回転方向Mにおいて、第一弾性部材326の第一腕部326aおよび第二腕部326bに挟まれて配置されている。
【0198】
本実施形態において、第一当接部321aが図24に示す位置(回転軸300rの上方UPRの直上)に位置するときの第一アングルノブ320Bは、原点OPと第一アングルノブ320Bにおける基準点L1とが位置合わせされた初期位置に位置する。
【0199】
第一アングルノブ320Bが原点OPから離れる方向(第一方向M1)に回転するとき、第一当接部321aは、第一弾性部材326の第一腕部326a又は第二腕部326bと回転方向Mに接触する。第一腕部326a又は第二腕部326bが第一当接部321aによって第一方向M1に押されると、第一弾性部材326のコイル部分が変形し、第一腕部326a又は第二腕部326bは、第一当接部321aとともに第一方向M1に移動する。
【0200】
このとき、第一当接部321aは、第一弾性部材326のコイル部分が有する弾性によって原点OPに戻る方向(第二方向M2)に付勢される。そのため、術者Sが左手Lで第一アングルノブ320Bを第一方向M1に回転させ、左手Lを第一アングルノブ320Bから離したとき、第一アングルノブ320Bは、第一弾性部材326によって付勢されて第二方向M2に回転する。
【0201】
第一弾性部材326が第一アングルノブ320Bを第二方向M2に付勢する力(弾性力)は、第一弾性部材326の材質や形状を変更することで適宜調整できるが、付勢する力が強いと、第一アングルノブ320Bを第一方向M1に回転させるために必要な力も大きくなる。そのため、第一弾性部材326が第一アングルノブ320Bを第二方向M2に付勢する力は、第一アングルノブ320Bにおける基準点L1が原点OPに戻るほど強くなく、付勢された第一アングルノブ320Bが原点OPの近傍で停止する程度であるのが望ましい。
【0202】
第一アングルノブ320Bが原点OPから約180°回転すると、第一腕部326a又は第二腕部326bが第二規制部325bと回転方向Mに接触するため、第一アングルノブ320Bはそれ以上回転しない。そのため、第一弾性部材326の変形量を抑制でき、第一弾性部材326が破損するのを防止できる。
【0203】
固定軸327は、回転軸300rを中心軸とする略円筒状である。固定軸327は、図21に示すように、第一上カバー321および第一ノブ軸323の内側INに配置されている。固定軸327の後方RRの端部は、ノブ固定部312aに接続されている(不図示)。固定軸327は、ねじ等によりノブ固定部312aに固定されているため、ノブ固定部312aに対して回転方向Mに回転しない。
【0204】
第三Oリング328は、固定軸327の外周面に取り付けられ、第一ノブ軸323と径方向RDに接触している。第一アングルノブ320Bが回転したとき、第一ノブ軸323の内周面と第三Oリング328とが摺動して第一ノブ軸323が回転する。
【0205】
第二アングルノブ330Bは、第二上カバー331と、第二下カバー332と、第二ノブ軸333と、第二Oリング334と、第二バネベース335と、第二弾性部材336と、を備える。第二アングルノブ330Bは、基本的に第一アングルノブ320Bの構成部品と同様の機能を有する部品で構成されている。
【0206】
第二上カバー331は、回転軸300rを中心軸とする略円筒形状であり、術者Sが左手Lで操作する際に触れる第二アングルノブ330Bの外形を形成している。図21に示すように、第二上カバー331は、後方RRに開口した略円筒状の凹形状を有する。この凹形状に、第二バネベース335および第二弾性部材336が収納されている。
【0207】
第二下カバー332は、回転軸300rを中心とする略円板状であり、回転軸300rを中心とする略円形状の開孔を有する。第二下カバー332は、第二上カバー331の後方RRに取り付けられ、第二上カバー331に形成された凹形状における後方RRの開口において、径方向RDにおける外側OUの一部を覆っている。
【0208】
第二ノブ軸333は、第二アングルノブ330Bが回転軸300rを回転中心として回転するための回転軸部分である。第二ノブ軸333は、回転軸300rを中心軸とする略円柱形状であり、固定軸327の内側INに配置されている。第二ノブ軸333は、外周面に取り付けられた第二Oリング334を介して固定軸327に接続されている。第二Oリング334と固定軸327とは、径方向RDに接触している。第二ノブ軸333は、固定軸327に対して第二Oリング334を摺動させ、回転軸300rを回転中心として固定軸327に対して回転可能である。
【0209】
第二上カバー331は、第二ノブ軸333に接続され、第二ノブ軸333とともに回転軸300rを回転中心として回転可能である。そのため、第一上カバー321および第一下カバー322は、第一ノブ軸323とともに回転軸300rを回転中心として固定軸327に対して回転方向Mに回転可能である。
【0210】
第二バネベース335は、回転軸300rを中心軸とする略円筒形状であり、第二上カバー331に形成された凹形状における後方RRの開口において、径方向RDにおける内側INの一部を覆っている。第二バネベース335は、固定軸327に接続され、固定軸327に対して回転方向Mに回転しない。
【0211】
第二バネベース335は、第一バネベース325と同様に、前方FRに突き出た第三規制部(不図示)および第四規制部(不図示)を有する。第三規制部は、第二バネベース335の上方UPRの端部に設けられている。第四規制部は、第二バネベース335の下方LWRの端部に設けられている。
【0212】
第二弾性部材336は、第二バネベース335の前方FRに設けられたバネ部材(ねじりコイルばね)である。第二弾性部材336は、第一弾性部材326と同様に、回転軸300rを中心に巻かれたコイル部分の両端において、上方UPRに延出した第三腕部(不図示)および第四腕部(不図示)を有する。第三腕部と第四腕部とは、第二バネベース335の第三規制部を第二アングルノブ330Bの回転方向Mに挟んで配置されている。そのため、第二弾性部材336は、第三規制部によって回転方向Mの回転動作が規制され、第二バネベース335に対して回転しない。
【0213】
第二アングルノブ330Bに湾曲操作が入力されたとき、第二上カバー331、第二下カバー332、第二ノブ軸333および第二Oリング334は、回転軸300rを回転中心として固定軸327に対して回転方向Mに回転する。一方、第二バネベース335および第二弾性部材336は回転しない。
【0214】
第一上カバー321と同様に、第二上カバー331の凹形状における上方UPRには、径方向RDに延びる第二当接部(不図示)が設けられている。また、第二アングルノブ330Bにおいて、第二上カバー331の第二当接部は、第二バネベース335における第三規制部の上方UPRに配置される。そのため、第二上カバー331の第二当接部は、回転方向Mにおいて、第二弾性部材336の第三腕部および第四腕部に挟まれて配置されている。
【0215】
本実施形態において、第一アングルノブ320Bと同様に、第二上カバー331の第二当接部が回転軸300rの上方UPRにおける直上に位置するとき、第二アングルノブ330Bは、原点OPと第二アングルノブ330Bにおける基準点(不図示)とが位置合わせされた初期位置に位置する。
【0216】
第一アングルノブ320Bと同様に、第二アングルノブ330Bが原点OPから離れる方向(第一方向M1)に回転するとき、第二当接部は、第二弾性部材336の第三腕部又は第四腕部と回転方向Mに接触する。第三腕部又は第四腕部が第二当接部によって第一方向M1に押されると、第二弾性部材336のコイル部分が変形し、第三腕部又は第四腕部は、第二当接部とともに第一方向M1に移動する。
【0217】
このとき、第二当接部は、第二弾性部材336のコイル部分が有する弾性によって原点OPに戻る方向(第二方向M2)に付勢される。そのため、術者Sが左手Lで第二アングルノブ330Bを第一方向M1に回転させ、左手Lを第二アングルノブ330Bから離したとき、第二アングルノブ330Bは、第二弾性部材336によって付勢されて第二方向M2に回転する。
【0218】
第二弾性部材336が第二アングルノブ330Bを第二方向M2に付勢する力(弾性力)は、第二弾性部材336の材質や形状を変更することで適宜調整できるが、付勢する力が強いと、第二アングルノブ330Bを第一方向M1に回転させるために必要な力も大きくなる。そのため、第二弾性部材336が第二アングルノブ330Bを第二方向M2に付勢する力は、第二アングルノブ330Bが原点OPに戻るほど強くなく、付勢された第二アングルノブ330Bが原点OPの近傍で停止する程度であるのが望ましい。
【0219】
第一アングルノブ320Bと同様に、第二アングルノブ330Bが原点OPから約180°回転すると、第三腕部又は第四腕部が第四規制部と回転方向Mに接触するため、第二アングルノブ330Bはそれ以上回転しない。そのため、第二弾性部材336の変形量を抑制でき、第二弾性部材336が破損するのを防止できる。
【0220】
第二アングルノブ330Bの第二ノブ軸333は、図21に示すように、第一アングルノブ320Bの固定軸327の内側INに配置されている。そのため、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bの回転動作は互いに伝わらず、術者Sが第一アングルノブ320B又は第二アングルノブ330Bを回転させたとき、術者Sが回転させたアングルノブのみが回転し、術者Sが操作していないアングルノブは回転しない。その結果、術者Sが意図しない湾曲操作が操作装置300Bに入力されるのを防ぐことができる。
【0221】
従来の軟性内視鏡は、術者が操作部のアングルノブから手を離し、アングルノブに湾曲操作が入力されていないとき、アウターシースを形成するゴムなどによって、湾曲した湾曲部を直線状態に戻そうとする復元力が作用する。また、アングルノブは、復元力により直線状態に戻ろうとする湾曲部の動作に追従して、原点へ戻る方向へ回転する。
【0222】
第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bが弾性部材(第一弾性部材326および第二弾性部材336)を有することで、術者Sが第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bから手を離しているとき、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bは弾性部材によって付勢されて原点OPへ戻る方向(第二方向M2)に回転する。その結果、電動内視鏡システム1000Bは、従来の軟性内視鏡と近い操作性を術者Sに提供することができる。
【0223】
[駆動装置200B]
図25は、駆動装置200Bの機能ブロック図である。
駆動装置200Bは、アダプタ210と、操作受信部220と、送気吸引駆動部230と、ワイヤ駆動部250と、駆動コントローラ260Bと、を備える。
【0224】
駆動コントローラ260Bは、第一実施形態の駆動コントローラ260と同様の構成であり、ワイヤ駆動部250の制御方法が駆動コントローラ260と異なる。
【0225】
[電動内視鏡システム1000Bの動作]
次に、本実施形態の電動内視鏡システム1000Bの動作について説明する。具体的には、大腸内の管壁に形成された患部を電動内視鏡システム1000Bを用いて観察および処置する手技について説明する。
【0226】
図26は、電動内視鏡システム1000Bにおける駆動コントローラ260Bの制御フローチャートである。駆動コントローラ260Bの制御フローチャートは、図17に示す第一実施形態の駆動コントローラ260における制御フローチャートに対して、ステップS170~S210をさらに有する。
【0227】
以降の説明において、図26に示す制御装置600Bの駆動コントローラ260Bの制御フローチャートに沿って説明を行う。制御装置600Bが起動されると、駆動コントローラ260Bは初期化を実施する(ステップS100)。次に、駆動コントローラ260B(主としてプロセッサ261)はステップS170を実行する。
【0228】
<ステップS170>
以降の説明において、第一アングルノブ320Bに湾曲操作が入力されたときの駆動コントローラ260Bにおける制御を説明する。駆動コントローラ260Bは、第二アングルノブ330Bに入力された湾曲操作に対しても同様の制御を行う。
【0229】
駆動コントローラ260Bは、ステップS170において、操作装置300Bが有するエンコーダの検出結果を取得する。このとき、エンコーダから取得した第一アングルノブ320Bの回転角度、回転方向等の情報から、第一アングルノブ320Bが静止又は回転のどちらの状態であるかを取得する。
【0230】
第一アングルノブ320Bに湾曲操作が入力され、第一方向M1又は第二方向M2に回転しているとき、第一アングルノブ320Bは回転状態である。また、第一方向M1に回転した第一アングルノブ320Bが第一弾性部材326に付勢されて第二方向M2に回転しているとき、第一アングルノブ320Bは回転状態である。
【0231】
第一アングルノブ320Bに湾曲操作が入力されず、第一アングルノブ320Bにおける基準点L1が原点OPの近傍で停止しているとき、第一アングルノブ320Bは停止状態である。また、第一アングルノブ320Bに湾曲操作が入力された後、第一アングルノブ320Bが術者Sの左手L等によって一定の角度で停止されているとき、第一アングルノブ320Bは停止状態である。
【0232】
駆動コントローラ260Bは、ステップS170において、第一アングルノブ320Bが回転状態であるとき、ステップS110に移行する。ステップS110以降の制御ステップは、第一実施形態において図17を用いて説明した制御ステップと同様のため説明を省略する。
【0233】
駆動コントローラ260Bは、ステップS170において、第一アングルノブ320Bが停止状態であるとき、ステップS180に移行する。
【0234】
<ステップS180>
駆動コントローラ260Bは、ステップS180において、アングルロックモードの設定状態を取得する。ここで、アングルロックモードとは、第一アングルノブ320B又は第二アングルノブ330Bの位置(角度)に基づいてワイヤ駆動部250を制御する制御モード(アングルロック制御)を示す。一方、アングルロック制御でない制御モードとして、アングルフリー制御がある。アングルフリー制御のとき、湾曲部112は、湾曲部112に加わった外力に対して受動的に湾曲する。
【0235】
本実施形態において、駆動コントローラ260Bは、各種ボタン352が押し込まれることで、アングルロック制御とアングルフリー制御とを切り替える。そうすることで、術者Sは、患部を観察又は処置しているとき、容易にアングルロック制御とアングルフリー制御とを切り替えることができる。また、駆動装置200B又は映像制御装置500に接続された入力装置等によってアングルロック制御とアングルフリー制御との切り替え指示が入力されてもよい。
【0236】
駆動コントローラ260Bは、アングルロックモードに設定されているとき、ステップS190に移行する。
【0237】
<ステップS190>
駆動コントローラ260Bは、ステップS190において、第一アングルノブ320Bの回転角度に基づいてワイヤ駆動部250を制御する。このとき、第一アングルノブ320Bは停止しているため、駆動コントローラ260Bは、第一アングルノブ320Bの回転角度に基づいた湾曲部112における湾曲角度を維持するようにワイヤ駆動部250を制御する。
【0238】
駆動コントローラ260Bは、ステップS190を実行した後、ステップS150を実行する。駆動コントローラ260Bは、ステップS150において、ワイヤ駆動部250の制御を継続する場合はステップS170に戻り、ワイヤ駆動部250の制御を継続する。電動内視鏡システム1000Bによる観察又は処置が完了しているとき、駆動コントローラ260BはステップS160に移行し、図26に示す処理を終了する。
【0239】
<ステップS200>
駆動コントローラ260Bは、ステップS180において、アングルロックモードに設定されていないとき、ステップS200を実行する。
図27は、第一アングルノブ320Bの回転方向Mにおける回転動作を示す正面図である。
【0240】
駆動コントローラ260Bは、ステップS200において、図27に示す第一アングルノブ320Bの回転角度θの絶対値と角度θfreeの絶対値とを比較する。回転角度θは、第一アングルノブ320Bにおける原点OPからの回転角度である。
【0241】
ここで、±θfreeの範囲を受動制御範囲Fと称する。受動制御範囲Fは、第一アングルノブ320B又は第二アングルノブ330Bにおける原点OPの近傍の範囲(角度)である。また、受動制御範囲Fの範囲外まで回転した第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bは、第一弾性部材326および第二弾性部材336によって付勢されて受動制御範囲Fの範囲内まで戻る。
【0242】
回転角度θの絶対値が角度θfreeの絶対値よりも大きいとき、回転角度θは、受動制御範囲Fの範囲外である。このとき、駆動コントローラ260Bは、ステップS190を実行し、アングルロック制御を実行する。
【0243】
回転角度θの絶対値が角度θfreeの絶対値よりも小さいとき、回転角度θは、受動制御範囲Fの範囲内である。このとき、駆動コントローラ260Bは、ステップS210を実行する。
【0244】
<ステップS210>
駆動コントローラ260Bは、ステップS210において、アングルフリー制御を実行する。駆動コントローラ260Bがアングルフリー制御を実行しているとき、湾曲部112は、湾曲部112に加わった外力に受動的に湾曲する。
【0245】
アングルフリー制御の制御方法として、例えば、一対の湾曲ワイヤ160(上湾曲ワイヤ161uおよび下湾曲ワイヤ161d又は左湾曲ワイヤ161lおよび右湾曲ワイヤ161r)の張力差が無くなるように制御する張力制御がある。また、ワイヤ駆動部250の駆動力が湾曲ワイヤ160に伝達されないようにする機構を備え、駆動力が伝達される状態と、伝達されない状態とを切り替えることでアングルフリー制御を実現してもよい。
【0246】
従来の軟性内視鏡における操作部のアングルノブは、術者がアングルノブから手を離し、アングルノブに湾曲操作が入力されていないとき、アウターシースを形成するゴムなどによる復元力によって直線状態に戻ろうとする湾曲部の動作に追従して原点の近傍に戻る。さらに、術者がアングルノブから手を離しているときに湾曲部に外力が加わると、湾曲部は加わった外力に対して受動的に湾曲する。
【0247】
アングルノブ(第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330B)の回転角度θが受動制御範囲Fの範囲内で停止しているときにアングルフリー制御に切り替えることで、術者Sがアングルノブから手を離し、弾性部材(第一弾性部材326および第二弾性部材336)によって付勢されたアングルノブが原点OPの近傍に戻って停止しているとき、湾曲部112は、湾曲部112に加わった外力に対して受動的に湾曲する。そのため、電動内視鏡システム1000Bは、従来の軟性内視鏡と近い操作性を術者Sに提供することができる。
【0248】
受動制御範囲Fには、任意の角度を適宜設定でき、±90°または±60°でもよく、操作性の観点から、±45°程度であるのが望ましい。また、第一アングルノブ320Bにおける受動制御範囲Fと、第二アングルノブ330Bにおける受動制御範囲Fとは、異なる角度であってもよい。
【0249】
駆動コントローラ260Bは、ステップS210を実行した後、ステップS150を実行する。駆動コントローラ260Bは、ステップS150において、ワイヤ駆動部250の制御を継続する場合はステップS170に戻り、ワイヤ駆動部250の制御を継続する。電動内視鏡システム1000Bによる観察又は処置が完了しているとき、駆動コントローラ260BはステップS160に移行し、図26に示す処理を終了する。
【0250】
本実施形態に係る電動内視鏡システム1000Bによれば、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bは、第一弾性部材326および第二弾性部材336によって原点OPに戻る方向(第二方向M2)に付勢され、受動制御範囲Fの範囲外まで回転しているときは、受動制御範囲Fの範囲内まで戻る。また、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bが回転状態であるとき又は受動制御範囲Fの範囲外で停止いているときは回転角度θに基づいてワイヤ駆動部250を制御し、受動制御範囲Fの範囲内で停止しているとき、湾曲部112は、湾曲部112に加わった外力に対して受動的に湾曲する。その結果、操作性を向上させた電動内視鏡システム1000Bを提供することができる。
【0251】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の各実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0252】
(変形例2-1)
上記実施形態において、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bを付勢する第一弾性部材326および第二弾性部材336はねじりコイルばねであるが、第一弾性部材および第二弾性部材の態様はこれに限定されない。第一弾性部材および第二弾性部材は、ゴム材等の弾性部材であってもよい。
【0253】
また、ロータリーダンパー等のダンパーを使用して、第一弾性部材および第二弾性部材が第一アングルノブおよび第二アングルノブを付勢する力を調整してもよい。
【0254】
また、第一弾性部材および第二弾性部材には、ぜんまいバネを採用してもよい。第一弾性部材および第二弾性部材にぜんまいバネを使用することで、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bを第一方向M1に回転させるのに必要なトルクを軽くでき、さらに、回転に必要なトルクをほぼ一定にできる。また、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bを第一方向M1に回転させた後、術者Sが指(例えば親指)の力を緩めると第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bが第二方向M2に戻るため、操作性を向上できる。
【0255】
(変形例2-2)
上記実施形態において、操作装置300Bが有するエンコーダによって、第一アングルノブ320Bおよび第二アングルノブ330Bの回転角度θを検出しているが、操作装置の態様はこれに限定されない。操作装置は、ポテンショメータ等のエンコーダ以外のセンサによって第一アングルノブおよび第二アングルノブの回転角度を検出してもよい。
【0256】
また、絶対角度ではなく相対角度を検出するセンサ(例えば、インクリメンタル型のエンコーダ)によってアングルノブ(第一アングルノブおよび第二アングルノブ)の回転角度を検出する場合、電動内視鏡システムの使用を開始する際にアングルノブを原点(初期位置)に合わせ、湾曲ワイヤの張力の初期化を行うことで正確な回転角度を検出できる。
【0257】
その場合、アングルノブと操作部本体とが位置合わせのための目印(例えば、基準点L1等)を有することで容易に位置合わせを行うことができる。また、原点に位置するアングルノブの回転動作をある程度規制する突起形状をアングルノブおよび操作部本体に設けることで位置合わせを行ってもよいし、非接触でアングルノブの位置を検出できる光センサ等によって位置合わせを行ってもよい。
【0258】
(変形例2-3)
上記実施形態において、操作装置300Bは、内視鏡100と分離して設けられているが、操作装置の態様はこれに限定されない。操作装置は、内視鏡の連結部と接続されていてもよい。
【0259】
図28は、変形例2-3に係る操作装置300Cおよび連結部120Cを示す斜視図である。図29は、図28とは異なる方向から見たときの操作装置300Cおよび連結部120Cを示す斜視図である。また、図30は、操作装置300Cおよび連結部120Cの分解斜視図である。
【0260】
図28および図29に示すように、操作装置300Cと連結部120Cとは、接続されて一体になっている。また、図30に示すように、操作装置300Cは、連結部120Cに着脱可能に接続される。
【0261】
操作装置300Cは、操作部本体310Cと、第一アングルノブ320Bと、第二アングルノブ330Bと、送気ボタン350と、吸引ボタン351と、第一各種ボタン352aと、第二各種ボタン352bと、第三各種ボタン352cと、第四各種ボタン352dと、第五各種ボタン352eと、を備える。
【0262】
操作部本体310Cは、操作ケーブル301が着脱自在に接続される操作ケーブル接続部313Cを有する。また、操作部本体310Cの下方LWRには、略U字形状の断面形状が上下方向に延びるカバー部314Cが形成されている。
【0263】
操作装置300Cは、操作ケーブル接続部313Cに接続された操作ケーブル301を経由して駆動装置200Bと着脱自在に接続される。図30に示す操作装置300Cは、操作ケーブル接続部313Cから操作ケーブル301が外された状態の操作装置300Cである。
【0264】
操作ケーブル接続部313Cは、操作ケーブル301が操作部本体310Cに着脱可能に接続されるアダプタである。操作ケーブル301の一方の端部は、操作ケーブル接続部313Cに接続され、他方の端部は駆動装置200Bに接続されている。
【0265】
カバー部314Cは、操作部本体310Cの下方LWRに設けられ、左方LHに開口を有する略U字形状の部位である。カバー部314Cは、第一アングルノブ320Bの下方LWRの端部よりも僅かに下方LWRに位置する部分から、操作装置300Cの下方LWRの端部まで延びている。
【0266】
第一各種ボタン352a、第二各種ボタン352b、第三各種ボタン352c、第四各種ボタン352dおよび第五各種ボタン352eは、任意の機能を割り当てることができるボタン(スイッチ)である。第一各種ボタン352aおよび第二各種ボタン352bは、操作部本体310Cの右方RHに設けられている。第三各種ボタン352c、第四各種ボタン352dおよび第五各種ボタン352eは、操作部本体310Cの左方LHに設けられている。また、送気ボタン350および吸引ボタン351は、操作部本体310Cの右方RHに設けられている。
【0267】
連結部120Cは、体内軟性部119と体外軟性部140とを連結する部材である。連結部120Cは、処置具400を挿入する挿入口である鉗子口126を備える。また、図30に示すように、連結部本体127Cは、略L字形状をしている。そのため、体内軟性部119と体外軟性部140とは、略直角に連結されている。
【0268】
体内軟性部119は、連結部120Cの下方LWRの端部に接続されている。また、体外軟性部140は、左方LHに延びるように連結部120Cの上方UPRに接続されている。
【0269】
ここで、図28および図29に示すように、操作部本体310Cに接続された操作ケーブル301と、連結部本体127Cに接続された体外軟性部140は、どちらも左方LHに延びている。そのため、図28および図29に示すように、結束部材360Cによって操作ケーブル301と体外軟性部140とを結束することで、術者Sが操作装置300Cを操作する際、操作ケーブル301又は体外軟性部140に阻害されるのを抑制できる。
結束部材360Cは、例えば、ゴム等で形成された紐状の部材である。
【0270】
連結部本体127Cの略直角に曲がった部位の近傍には、被把持部128Cが形成されている。被把持部128Cは、図28に示すように、体外軟性部140が接続された部位の近傍に形成されている。
【0271】
連結部120Cと接続された操作装置300Cにおいて、術者Sは、後方RRの面に左手Lの掌を沿わせ、左手Lの親指で第一アングルノブ320B又は第二アングルノブ330Bを操作する。その際、術者Sは、略直角に曲がった連結部120Cにおいて、親指の付け根および人差し指の付け根で被把持部128Cを支持して操作する。そのため、術者Sは、従来の軟性内視鏡と近い操作性(ホールド感)で操作装置300Cを操作することができる。また、被把持部128Cを設けることで、連結部120Cに挿通している湾曲ワイヤ160の曲げ半径を大きくすることができる。
【0272】
変形例2-3に係る操作装置300Cおよび連結部120Cを用いることで、操作装置300C、操作ケーブル301および連結部120Cが接続した状態(図28および図29)と、操作装置300C、操作ケーブル301および連結部120Cがそれぞれ分離した状態(図30)と、を容易に切り替えることができる。
【0273】
各実施形態におけるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0274】
1000、1000B 電動内視鏡システム、医療用マニピュレータシステム
100 内視鏡、医療用マニピュレータ
110 挿入部
112 湾曲部
200、200B 駆動装置
250 ワイヤ駆動部(アクチュエータ)
300、300A、300B、300C 操作装置
320、320B 第一アングルノブ(アングルノブ、入力子)
326 第一弾性部材(弾性部材)
330、330B 第二アングルノブ(アングルノブ、入力子)
336 第二弾性部材(弾性部材)
400 処置具
500 映像制御装置
600、600B 制御装置
900 表示装置
φ 第一角度(第一湾曲量)
φref 第二角度(第二湾曲量)
θ アングルノブの回転角度(移動量)
M アングルノブの回転方向
M1 第一方向
M2 第二方向
F 受動制御範囲
OP アングルノブの原点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30