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特開2024-125991エチレン系共重合体組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125991
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】エチレン系共重合体組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20240911BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240911BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20240911BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20240911BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240911BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240911BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240911BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/36
C08K5/103
B32B27/12
B32B27/00 104
B32B27/20 Z
B32B27/32 Z
C08L23/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191152
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2023033418
(32)【優先日】2023-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 慎介
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和輝
(72)【発明者】
【氏名】杉江 太一
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA20
4F100AA20A
4F100AA25
4F100AA37
4F100AH02A
4F100AH06A
4F100AK48
4F100AK75
4F100AK75A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02A
4F100DG01
4F100DG01B
4F100DG12
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ67A
4F100GB07
4F100GB48
4F100GB51
4F100JA07A
4F100JJ03
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK07A
4F100JK08
4F100JK12
4F100JL11
4F100YY00A
4J002BB15W
4J002BB17X
4J002DJ016
4J002EH077
4J002EX078
4J002FD016
4J002FD157
4J002FD208
4J002GF00
4J002GM01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、他の素材、例えば、繊維材料を含む層との接着強度(剥離強度)に優れるエチレン系共重合体組成物、および積層体を得ることにある。
【解決手段】本発明は、下記の(1)~(4)の成分を含むことを特徴とするエチレン系共重合体組成物、および積層体に係る。
(1)特定の要件を満たすエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)。
(2)トランスポリオクテニレン(M)。
(3)シリカ(S)。
(4)2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)~(4)の成分を含むことを特徴とするエチレン系共重合体組成物。
(1)下記(i)~(v)の要件を満たすエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)。
(2)トランスポリオクテニレン(M)。
(3)シリカ(S)。
(4)2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)。
(i)エチレン/プロピレンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦80 … 式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) … 式(3)
【請求項2】
前記エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)を構成する非共役ポリエンが5ービニルー2ーノルボルネン(VNB)を含む、請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項3】
2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)が、エチレングリコールジメタクリレートを含む、請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項4】
エチレン系共重合体組成物が、さらに架橋剤として有機過酸化物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項5】
エチレン系共重合体組成物が、さらにシランカップリング剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項6】
前記シランカップリング剤がアミノ基を有する、請求項5に記載のエチレン系共重合体組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接していることを特徴とする積層体。
【請求項8】
エチレン系共重合体組成物が架橋してなる、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
上記層[II]の繊維材料がRFL処理された繊維を含む、請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
上記層[II]の繊維材料が帆布である、請求項7に記載の積層体。
【請求項11】
請求項7に記載の積層体を有してなる工業用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋可能なエチレン系共重合体組成物、当該組成物を用いた繊維材料を含む層との積層体、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
EPDMなどのエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、一般に、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れており、自動車用工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建築用材、ゴム引き布などに用いられている。
【0003】
従来のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、ニトリルゴム、クロロプレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンなどの極性ゴムに比べて、合成繊維との接着性が劣るという欠点がある。この欠点を解決する方法として、クロロスルホン化コポリマーの接着溶液を用いることで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体と合成繊維の接着性改良が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら今日、ノンハロゲン化などの環境問題が問われるなかにあっては、このようなハロゲン化による極性を利用した接着技術は最適とは言い難い。また従来の接着方法としては、合成繊維をレゾルシンホルムアルデヒドラテックス処理(RFL処理)した後、ゴムに埋め込み架橋して接着させる方法が知られている。さらに詳しくはRFL処理に際し、イソシアネートやイソシアヌール酸誘導体を用いる方法が知られている。しかしながら、これらの方法をゴムとしてエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いる場合に応用しても十分な接着を得るのは困難である。
【0005】
また、耐圧縮永久歪み性を改良するために、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体に、トランスポリオクテニレンゴムを配合してなる亜鉛華が配合される硫黄加硫系のエチレンプロピレンゴム配合物とすることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭42-23632号公報
【特許文献2】特許第2528033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、他の素材、例えば、繊維材料を含む層との接着強度(剥離強度)に優れるエチレン系共重合体組成物、および積層体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の項[1]~[11]に係る。
[1]
下記の(1)~(4)の成分を含むことを特徴とするエチレン系共重合体組成物。
(1)下記(i)~(v)の要件を満たすエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)。
(2)トランスポリオクテニレン(M)。
(3)シリカ(S)。
(4)2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)。
(i)エチレン/プロピレンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦80 … 式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*(ω=0.1)/η*(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6 … 式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) … 式(3)
【0009】
[2]
前記エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)を構成する非共役ポリエンが5ービニルー2ーノルボルネン(VNB)を含む、項[1]に記載のエチレン系共重合体組成物。
【0010】
[3]
2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)が、エチレングリコールジメタクリレートを含む、項[1]または[2]に記載のエチレン系共重合体組成物。
【0011】
[4]
エチレン系共重合体組成物が、さらに架橋剤として有機過酸化物を含むことを特徴とする、項[1]~[3]のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
【0012】
[5]
エチレン系共重合体組成物が、さらにシランカップリング剤を含むことを特徴とする、項[1]~[4]のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物。
[6]
前記シランカップリング剤がアミノ基を有する、項[5]に記載のエチレン系共重合体組成物。
[7]
項[1]~[6]のいずれかに記載のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接していることを特徴とする積層体。
【0013】
[8]
エチレン系共重合体組成物が架橋してなる、項[7]に記載の積層体。
[9]
上記層[II]の繊維材料がRFL処理された繊維を含む、項[7]または[8]に記載の積層体。
【0014】
[10]
上記層[II]の繊維材料が帆布である、項[7]から[9]のいずれかに記載の積層体。
[11]
項[7]~[10]のいずれかに記載の積層体を有してなる工業用ベルト。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、他の素材、例えば、繊維材料を含む層との接着強度(剥離強度)に優れるので、自動車用ホース、送水用ホース、ガス用ホース;伝動ベルト、搬送用ベルトなどの工業用ベルトなどの積層体として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)》
本発明のエチレン系共重合体組成物に含まれる成分(1)であるエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)〔以下、「共重合体(L)」と略記する場合がある。〕は、エチレン、プロピレンと、非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有する共重合体であって、下記要件(i)~(v)を満たす。
(i)エチレン/プロピレンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が0.07質量%~10質量%である。
(iii)共重合体(L)の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率(質量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の質量分率/100/(C)の分子量≦80 … 式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(Pa・sec)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6・・・式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【0017】
〈要件(i)〉
要件(i)は、本発明に係わる共重合体(L)中のエチレン/プロピレンのモル比が40/60~99.9/0.1を満たすことを特定するものであり、このモル比は好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22を満たすことが望ましい。このような共重合体(L)は、架橋して得られる成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
なお、共重合体(L)中のエチレン量(エチレンに由来する構成単位の含量)およびプロピレンに由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0018】
〈要件(ii)〉
要件(ii)は、本発明に係わる共重合体(L)中において、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率が、共重合体(L)100質量%中(すなわち全構成単位の質量分率の合計100質量%中)、0.07~10質量%の範囲であることを特定するものである。この非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率は、好ましくは0.1~8.0質量%、より好ましくは0.5~5.0質量%であることが望ましい。
【0019】
本発明に係る共重合体(L)が、要件(ii)を満たすと、本発明のエチレン系共重合組成物から得られる成形体が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましく、架橋した場合には、早い架橋速度を示すため好ましい。
なお、共重合体(L)中の非共役ポリエン(C)量(非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0020】
〈要件(iii)〉
要件(iii)は、本発明に係る共重合体(L)において、共重合体(L)の重量平均分子量(Mw)と、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率:質量%)と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、次の関係式(1)を満たすことを特定するものである。
4.5≦Mw×(C)の質量分率/100/(C)の分子量≦80・・・式(1)
【0021】
本発明に係る共重合体(L)が、要件(iii)を満たす場合、VNBなどの非共役ポリエン(C)に由来する構造単位の含有量が適切であって、十分な架橋性能を示すとともに、本発明のエチレン系共重合体組成物を用いて成形体を製造した場合には、架橋速度に優れ、架橋後の成形体が優れた機械特性を示すものとなるため好ましい。
【0022】
本発明に係る共重合体(L)は、より好ましくは、下記関係式(1')を満たすことが望ましい。
4.5≦Mw×(C)の質量分率/100/(C)の分子量≦75・・・式(1')
なお、共重合体(L)の重量平均分子量(Mw)は、3D―GPCで測定される数値を意味する。
【0023】
本発明に係る共重合体(L)は、「Mw×(C)の質量分率/100/(C)の分子量」が前記式(1)あるいは(1')を満たす場合には架橋程度が適切となり、これを用いることにより機械的物性と耐熱老化性とにバランスよく優れた成形体を製造することができる。「Mw×(C)の質量分率/100/(C)の分子量」が少なすぎる場合には、架橋する際に架橋性が不足して架橋速度が遅くなることなることがあり、また多すぎる場合には過度に架橋を生じて得られる成形体の機械的物性が悪化する場合がある。
【0024】
〈要件(iv)〉
要件(iv)は、本発明に係る共重合体(L)の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(Pa・sec)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率:質量%)とが、下記式(2)を満たすことを特定するものである。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6・・・式(2)
【0025】
ここで、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)との比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本発明に係る共重合体(L)は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(2)を満たすことができると考えられる。本発明において、P値は、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%、周波数を変えた条件で測定を行って求めた、0.1rad/sでの複素粘度と、100rad/sでの複素粘度とから、比(η*比)を求めたものである。
【0026】
本発明に係る共重合体(L)は、好ましくは、下記式(2')を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×5.7・・・式(2')
なお、極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値を意味する。
【0027】
〈要件(v)〉
要件(v)は、共重合体(L)の、3D-GPCを用いて得られた1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たすことを特定するものである。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
上記式(3)により、共重合体(L)の単位炭素数当たりの長鎖分岐含量の上限値が特定される。
【0028】
このような共重合体(L)は、含まれる長鎖分岐の割合が少なく、架橋を行う場合の硬化特性に優れるとともに、これを用いて得られる成形体が耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0029】
本発明に係る共重合体(L)は、好ましくは、下記式(3')を満たす。
LCB1000C≦1-0.071×Ln(Mw)・・・式(3')
ここで、Mwと1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、3D-GPCを用いて構造解析法により求めることができる。本明細書においては、具体的には、次のようにして求めた。
【0030】
3D-高温GPC装置PL-GPC220型(Polymer Laboratories社製)を用い、絶対分子量分布を求め、同時に粘度計で極限粘度を求めた。主な測定条件は以下の通り。
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型(Polymer Laboratories社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.5mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
絶対分子量の決定に必要なdn/dc値は標準ポリスチレン(分子量190000)のdn/dc値0.053と単位注入質量あたりの示差屈折率計の応答強度より、試料ごとに決定した。
粘度計より得られた極限粘度と光散乱光度計より得られた絶対分子量の関係より溶出成分毎の長鎖分岐パラメーターg'iを式(v-1)から算出した。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、[η]=KMv;v=0.725の関係式を適用した。
また、g'として各平均値を下記式(v-2)、(v-3)、(v-4)から算出した。なお、短鎖分岐のみを有すると仮定したTrendlineは試料ごとに決定した。
【0033】
【数2】
【0034】
更にg'wを用いて、分子鎖あたりの分岐点数BrNo、炭素1000個あたりの長鎖分岐数LCB1000C、単位分子量あたりの分岐度λを算出した。BrNo算出はZimm-Stockmayerの式(v-5)、また、LCB1000Cとλの算出は式(v-6)、(v-7)を用いた。gは慣性半径Rgから求められる長鎖分岐パラメーターであり、極限粘度から求められるg'との間に次の単純な相関付けが行われている。式中のεは分子の形に応じて種々の値が提案されている。ここではε=1(すなわちg'=g)と仮定して計算を行った。
【0035】
【数3】
【0036】
λ=BrNo/M …(V-6)
LCB1000C=λ×14000 …(V-7)
*式(V-7)中、14000はメチレン(CH2)単位で1000個分の分子量を表す。
【0037】
本発明に係わる共重合体(L)を構成する非共役ポリエン(C)は、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0038】
これら非共役ポリエン(C)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を含むことで得られる共重合体(L)の架橋速度がより速いので、好ましい。
共重合体(L)は、それぞれ、少なくとも1種以上のバイオマス由来モノマー(エチレン、プロピレン、非共役ポリエン)を含んでいてもよい。
【0039】
本発明に係る共重合体(L)は、前記要件(i)~(v)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下にエチレン、プロピレン、および非共役ポリエン(C)を、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下に共重合して得られたものであることがより好ましい。
【0040】
本発明に係る共重合体(L)は、具体的には、例えば、国際公開第2015/122495号パンフレット記載のメタロセン触媒に記載の方法を採用することにより製造することができる。
【0041】
《トランスポリオクテニレン(M)》
本発明のエチレン系共重合体組成物および本発明の積層体の層[I]を形成するエチレン系共重合体組成物を構成する成分(2)であるトランスポリオクテニレン(M)は、トランス構造を有するオクテニレンの重合体であって、主としてトランス二重結合を持つシクロオクテンのメタテーシスポリマーである。
【0042】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、トランスポリオクテニレン(M)を含むことにより、繊維材料との相溶性の改良による粘着性向上と繊維材料との接着性の向上を図れる。
本発明に係るトランスポリオクテニレン(M)は、エボニック社(Evonik Industries)からVESTENAMERの商品名で製造、販売されている。
【0043】
《シリカ(S)》
本発明のエチレン系共重合体組成物および本発明の積層体の層[I]を形成するエチレン系共重合体組成物を構成する成分(3)であるシリカ(S)は、通常、比表面積が5~200m2/g、好ましくは5~190m2/g、さらに好ましくは5~180m2/gの範囲にある。
本発明のエチレン系共重合体組成物は、シリカ(S)が水酸基を有しているために、組成物自体の粘着性、および繊維材料との粘着性・接着性を向上させると考えられる。
【0044】
《2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)》
本発明のエチレン系共重合体組成物および本発明の積層体の層[I]を形成するエチレン系共重合体組成物を構成する成分(4)である2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)〔以下、「架橋助剤(K)」と略記する場合がある。〕は、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;ジビニルベンゼン等のビニル系架橋助剤が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル系架橋助剤が好ましく、エチレングリコールジメタクリレートがより好ましい。
【0045】
《シランカップリング剤》
本発明のエチレン系共重合体組成物、さらには、本発明の積層体の層[I]を形成するエチレン系共重合体組成物は、シランカップリング剤を含有することが望ましい。
これにより、エチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]との間の接着性(剥離強度)が向上する。さらに粘着性(タック)にも優れる積層体が得られる。
【0046】
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクロイル基、ビニル基、メルカプト基、ハロゲン基、イミノ基、イソシアネート基あるいはウレイド基いずれか1つ以上の置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤のケイ素原子に結合する加水分解性基としては、2個以上の酸素原子を有してもよいアルコキシ基、アルキルカルボキシル基、ハロゲン基などが挙げられる。
具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、などのエポキシ基を有するシランカップリング剤;
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートなどのビニル基を有するシランカップリング剤;
γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基を有するシランカップリング剤;
γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシランなどのハロゲンを有するシランカップリング剤;
γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するシランカップリング剤;
γ-(ウレイドプロピル)トリメトキシシラン、γ-(ウレイドプロピル)トリエトキシシランなどのウレイド基を有するシランカップリング剤;
ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサン、p-スチリルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0047】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-[2-[3-(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、トリメトキシ[2-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル]シラン、ジアミノメチルメチルジエトキシシラン、メチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、アセトアミドプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
また、アミノ基を含む他のシランカップリング剤としては、例えば、N,N-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ピペラジニルプロピルメチルジメトキシシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、2,2-ジメトキシ-1,6-ジアザ-2-シラシクロオクタン、3,5-ジアミノ-N-(4-(メトキシジメチルシリル)フェニル)ベンズアミド、3,5-ジアミノ-N-(4-(トリエトキシシリル)フェニル)ベンズアミド、5-(エトキシジメチルシリル)ベンゼン-1,3-ジアミンN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、などが挙げられる。
【0049】
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせ
て用いてもよい。
シランカップリング剤の共重合体組成物への配合量は、共重合体(L)100質量部に対して、通常は0.1~10質量部、好ましくは0.3~5質量部、より好ましくは0.4~3質量部、好ましくは0.5~2質量部である。
【0050】
これらのシランカップリング剤の中でも、アミノ基を有するシランカップリング剤が好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤を用いることにより、繊維材料を含む層との接着強度(剥離強度)に加えて、粘着性(タック)にも優れたエチレン系共重合体組成物を得ることができる。
【0051】
<エチレン系共重合体組成物>
本発明のエチレン系共重合体組成物は、および本発明の積層体の層[I]を形成するエチレン系共重合体組成物は、成分(1)である上記エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)、成分(2)である上記トランスポリオクテニレン(M)、成分(3)である上記シリカ(S)、および成分(4)である上記架橋助剤(K)を含む組成物であり、好ましくは上記共重合体(L):100質量部当たり、トランスポリオクテニレン(M)を0.5~50質量部、より好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは2~10質量部で含み、シリカ(S)を0.5~80質量部、より好ましくは0.5~60質量部、さらに好ましくは0.5~40質量部で含み、架橋助剤(K)を0.1~10質量部、より好ましくは0.2~7質量部、さらに好ましくは0.5~4質量部の範囲で含む。
【0052】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)に加え、上記成分を含むので、他材料、例えば工業用ベルトのような繊維材料を含む層、好ましくは架橋してなるエチレン系共重合体組成物は繊維材料を含む層との接着強度に優れる。
【0053】
本発明のエチレン系共重合体組成物は、上記共重合体(L)などの成分に加え、所望の目的に応じて他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。他の成分としては、例えば、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、フィラー、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤などから選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また。それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
〈架橋剤、他の架橋助剤、加硫促進剤および加硫助剤〉
架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄系化合物、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等の、ゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらのうちでは、有機過酸化物、硫黄系化合物(以下「加硫剤」ともいう)が好適である。
【0055】
有機過酸化物(J)としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
【0056】
架橋剤として、有機過酸化物(J)を用いる場合、共重合体組成物中のその配合量は、共重合体(L)100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部である、さらに好ましくは0.5~10質量部である。有機過酸化物(J)の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体表面へのブルームなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示すので好適である。
【0057】
上記2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)に加え、併用してもよい他の架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)が挙げられる。
これら他の架橋助剤は、一種でも二種以上を上記2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤(K)と併用してもよい。
【0058】
硫黄系化合物(加硫剤)としては、例えば、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレンが挙げられる。
【0059】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、共重合体組成物中のその配合量は、共重合体(L)100質量部に対して、通常は0.1~10質量部、好ましくは0.2~7.0質量部、さらに好ましくは0.3~5.0質量部である。硫黄系化合物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームがなく、エチレン系共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0060】
加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、サンセラーM(商品名;三新化学工業社製))、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、ノクセラーMDB-P(商品名;大内新興化学工業社製))、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド(例えば、サンセラーDM(商品名;三新化学工業社製))などのチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンおよびジオルソトリルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;アセトアルデヒド・アニリン縮合物およびブチルアルデヒド・アニリン縮合物などのアルデヒドアミン系加硫促進剤;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS(商品名;三新化学工業社製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT(商品名;三新化学工業社製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET(商品名;三新化学工業社製))、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT(商品名;三新化学工業社製))およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA(商品名;三新化学工業社製))などのチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、サンセラーPZ、サンセラーBZおよびサンセラーEZ(商品名;三新化学工業社製))およびジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系加硫促進剤;エチレンチオ尿素(例えば、サンセラーBUR(商品名;三新化学工業社製)、サンセラー22-C(商品名;三新化学工業社製))、N,N'-ジエチルチオ尿素およびN,N'-ジブチルチオ尿素などのチオウレア系加硫促進剤;ジブチルキサトゲン酸亜鉛などのザンテート系加硫促進剤が挙げられる。
【0061】
加硫促進剤を用いる場合、共重合体組成物中のこれらの加硫促進剤の配合量は、共重合体(L)100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫助剤を併用することができる。
【0062】
加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)が挙げられる。
加硫助剤を用いる場合、エチレン系共重合体組成物中の加硫助剤の配合量は、共重合体(L)100質量部に対して、通常1~20質量部である。
【0063】
〈フィラー〉
本発明のエチレン系共重合体組成物を構成するフィラーは、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤であり、通常、カーボンブラック、無機補強剤と呼称されている無機物である。
【0064】
本発明に係わるフィラーとしては、具体的には、旭#55G、旭#60UG(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(V、SO、116、3、6、9、SP、TA等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したのもの、および、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が挙げられる。
【0065】
これらフィラーは、単独でも、二種以上の混合物であってもよい。
本発明に係わるフィラーとしては、好ましくは、カーボンブラック、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が用いられる。
【0066】
本発明の共重合体組成物がフィラーを含む場合は、共重合体(L)100質量部に対し、通常、0.5~300質量部、好ましくは、0.5~250質量部の範囲で配合すればよい。
【0067】
〈軟化剤〉
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれてもよい軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのうちでは、石油系軟化剤、炭化水素系合成潤滑油が好ましく、プロセスオイル、液状エチレン・プロピレン共重合体が特に好ましい。
【0068】
《液状エチレン・プロピレン共重合体》
本発明に係わる軟化剤として特に好ましい液状エチレン・プロピレン共重合体としては、40℃での動的粘度で1~80000mm2/sであるものが好適である。
【0069】
40℃での動粘度が1mm2/s未満のエチレン・プロピレン共重合体は、揮発しやすい低分子量成分が多いため得られるエチレン系共重合体組成物の耐熱性が悪化する虞がある。一方、80000mm2/sを越えると、高分子量成分が多くなり粘性が不十分となる虞があり、得られるコンベアベルト用共重合体組成物の粘着性の改良効果が少なくなる虞がある。
【0070】
上記液状エチレン・プロピレン共重合体は、共重合体(A)との相溶性に優れるので、液状エチレン・プロピレン共重合体を含む共重合体組成物は粘着性がよい。
エチレン系共重合体組成物が軟化剤を含有する場合には、軟化剤の配合量は、共重合体(L)100質量部に対して、一般に2~100質量部、好ましくは10~100質量部である。
【0071】
〈老化防止剤(安定剤)〉
本発明のエチレン系共重合体組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、これから形成されるシールパッキンの寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などがある。
【0072】
老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p―フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
【0073】
エチレン系共重合体組成物が老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の配合量は、共重合体(L)100質量部に対して、通常は0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部である。老化防止剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害の発生を抑制することができる。
【0074】
〈加工助剤〉
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0075】
共重合体組成物が加工助剤を含有する場合は、共重合体(L)100質量部に対して、通常1~3質量部の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
前記加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0076】
〈活性剤〉
活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0077】
共重合体組成物が活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、共重合体(L)100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0078】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接している積層体である。《エチレン系共重合体組成物からなる層[I]》
本発明の積層体を構成するエチレン系共重合体組成物からなる層[I]は、好ましくは上記エチレン系共重合体組成物を架橋してなる層である。《繊維材料を含む層[II]》
本発明の積層体を構成する繊維材料を含む層[II]は、層の少なくとも一部に繊維材料を含む。
【0079】
〈繊維材料〉
本発明に係る層[II]を形成する繊維材料は、種々公知の繊維材料、例えば、綿、木材セルロース繊維等の天然繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、レーヨン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、フッ素系ポリマー等の合成樹脂からなる繊維の有機質繊維材料、ガラス繊維、PAN系カーボン繊維、ピッチ系カーボン繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ホウ酸アルミ繊維、チタン酸カリウム・ウィスカなどの無機質繊維材料等が例示される。
【0080】
これら繊維材料は長繊維(フィラメント)であっても短繊維(ステープル)であってもよい。また、繊維材料は、コード糸、紡績糸、織布、編み物、帆布、不織布などであってもよい。
【0081】
上記ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10のような脂肪族ポリアミド;ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(6T)、或いはこれらの単位を含む共重合ポリアミドのような半芳香族ポリアミド;ポリベンズアミド、ポリpフェニレンテレフタラミド、ポリmフェニレンイソフタラミドのような全芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0082】
また、これら繊維材料は繊維材料同士、あるいは上記エチレン系共重合体組成物からなる層[I]との接着性等を改良するために、RFL処理などの公知の方法で表面処理していてもよい。
【0083】
〈RFL処理〉
RFL処理は、繊維材料のレゾルシン・ホルマリン・ラテックスを含有する処理液(RFL液)を用いて繊維材料を接着処理するものであるが、このRFL液は、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物とゴムラテックスとを混合したものである。ゴムラテックスとしては、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体(VP)、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、水素添加NBR(H-NBR)、クロロスルホン化エチレン(CSM)、天然ゴムなどを用いることができ、これらは一種を単独で用いる他に、二種以上をブレンドして用いることもできる。
【0084】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体を製造するには、種々公知の積層体の製造方法を採用し得る。例えば、予め、公知の方法で製造(成形)した未架橋のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]とを貼り合わせる方法、貼り合わせた後、エチレン系共重合体組成物からなる層[I]を架橋する方法、架橋したエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]とを貼り合わせる方法、あるいは、繊維材料を含む層[II]上にエチレン系共重合体組成物からなる層[I]を押出被覆する方法、押出被覆した後、エチレン系共重合体組成物からなる層[I]を架橋する方法などを採り得る。
上記エチレン系共重合体組成物からなる層[I]は、種々公知の製造方法を採用し得る。
【0085】
上記エチレン系共重合体組成物は、種々公知の混練、混合装置、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)、ロールなどを用い、上記共重合体(L)、上記トランスポリオクテニレン(M)、上記シリカ(S)、および上記架橋助剤(K)、さらに架橋剤、および必要に応じてフィラー、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などの添加剤、とを混練することにより得られる。
【0086】
混練して得られた未架橋のエチレン系共重合体組成物は、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機など種々の成形法より、意図する形状に成形した後に架橋してエチレン系共重合体組成物からなる層[I]を形成して繊維材料を含む層[II]と積層(貼り合わせ)してもよいし、未架橋のエチレン系共重合体組成物を上記方法で意図する形状に成形した後に維材料を含む層[II]と積層(貼り合わせ)して架橋してもよい。
【0087】
エチレン系共重合体組成物からなる層[I]を架橋する方法としては、架橋剤を使用して加熱する方法、または光、γ線、電子線照射による方法のどちらを採用してもよい。
また、架橋する際には、金型を用いてもよいし、また金型を用いないで架橋を実施してもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常連続的に実施される。架橋槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0088】
《積層体の用途》
本発明のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と、繊維材料を含む層[II]とが接している積層体は、自動車用ホース、送水用ホース、ガス用ホース;伝動ベルト、搬送用ベルトなどの工業用ベルト;エスカレーター手すりに好適に用いられる。
【0089】
上記自動車用ホースとしては、たとえばブレーキホース、ラジエターホース、ヒーターホース、エアークリーナーホースなどが挙げられる。
上記伝動ベルトとしては、たとえばVベルト、平ベルト、歯付きベルトなどが挙げられる。上記搬送用ベルトとしては、たとえば軽搬送用ベルト、円筒形ベルト、ラフトップベルト、フランジ付き搬送用ベルト、U型ガイド付き搬送用ベルト、Vガイド付き搬送用ベルトなどが挙げられる。
【実施例0090】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0091】
実施例および比較例では、下記の共重合体を用いた。
(1)エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)
[エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)の組成]
エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)の、各構造単位のモル比、および質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体(L)として、製造例1で得たエチレン・プロピレン・VNB共重合体〔共重合体(L-1)〕を用いた。
【0092】
[製造例1]
容積300リットルの重合反応器に、ライン1より脱水精製したヘキサン溶媒を58.3L/hr、ライン2よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を4.5mmol/hr、(C65)3CB(C65)4を0.150mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.030mmol/hrで連続的に供給した。同時に前記重合反応器内に、エチレンを6.6kg/hr、プロピレンを9.3kg/hr、水素を18リットル/hr、VNBを340g/hrで、各々別ラインより連続供給し、重合温度87℃、全圧1.6MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で共重合を行なった。
【0093】
前記重合反応器で生成したエチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、流量88.0リットル/hrで連続的に排出して温度170℃に昇温(圧力は4.1MPaGに上昇)して相分離器に供給した。このとき、排出ラインには重合禁止剤であるエタノールを、前記重合反応器から抜き出した液体成分中のTiBAに対して0.1mol倍の量で連続的に導入した。
【0094】
前記相分離器において、エチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、大部分のエチレン・プロピレン・VNB共重合体を含む濃厚相(下相部)と少量のポリマーを含む希薄相(上相部)とに分離した。
【0095】
分離された濃厚相を85.4リットル/hrで熱交換器Kに導き、さらにホッパー内に導いて、ここで溶媒を蒸発分離し、エチレン・プロピレン・VNB共重合体を7.8kg/hrの量で得た。
【0096】
得られた共重合体(L-1)のモル比(エチレン単位/プロピレン単位)は70/30であり、VNB単位の含有割合は1.5質量%であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.8dL/gであった。なお、得られた共重合体(A)の分子量分布は二峰性を示し、GPC測定によって得られるチャートが2つ以上のピークを示し、最も分子量が小さい側に現れるピークの面積が、全体のピーク面積の5%であった。
【0097】
得られた共重合体(L-1)のMw×(C)の重量分率/100/(C)は、59.5、P/([η]2.9)は4.7、(C)の重量分率×6は9.0、LCB1000Cは0.04、1-0.07×Ln(Mw)は0.08であった。
【0098】
(2)エチレン・1-ブテン・ENB共重合体(F)
本発明の比較例で用いたエチレン・1-ブテン・ENB共重合体(F-1)を以下に示す。国際公開第2015/122415号の[合成例C1]の記載に準じて、下記の物性を有するエチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)共重合体を得た。以下、これを「共重合体(F-1)」と記載する。
【0099】
共重合体(F-1)の構成および物性は、以下のとおりである。
エチレンに由来する構造単位:67.7モル%
1-ブテンに由来する構造単位:30.0モル%
ENBに由来する構造単位:2.3モル%
ムーニー粘度ML(1+4)100℃:30
ムーニー粘度ML(1+4)125℃:22
B値:1.3
【0100】
[共重合体(F-1)の物性]
〈エチレンに由来する構造単位、α-オレフィンに由来する構造単位、および非共役ポリエンに由来する構造単位のモル量〉
前記モル量は、1H-NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。測定条件の詳細は、国際公開第2015/122415号に記載されている。
【0101】
〈ムーニー粘度〉
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃、125℃)は、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
【0102】
〈B値〉
o-ジクロロベンゼン-d4/ベンゼン-d6(4/1[v/v])を測定溶媒とし、測定温度120℃にて、13C-NMRスペクトル(100MHz、日本電子製ECX400P)を測定し、下記式(i)に基づき算出した。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・・(i)
【0103】
ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A1]、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]、および非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A1]-炭素数4~20のα-オレフィン[A2]ダイアッド連鎖分率を示す。
【0104】
(3)エチレン・プロピレン・ENB共重合体(F―2)
エチレン・プロピレン・ENB共重合体として、下記のエチレン・プロピレン・ENB共重合体〔共重合体(F―2)〕を用いた。
【0105】
商品名 三井EPT 4045M:ムーニー粘度ML(1+4)100℃=45、エチレン含量=45重量%、ジエン(ENB)含量=7.6重量%、Mw×(C)の質量分率/100/(C)は96.1であった。
【0106】
[トランスポリオクテニレン(M)]
実施例および比較例では、トランスポリオクテニレン(M)として、以下のオクテニレン重合体(M-1):エボニック社(Evonik Industries)の商品名:VESTENAMER 8012を用いた。
【0107】
[シリカ(N)]
実施例および比較例では、シリカ(N)として、以下のシリカ(N-1):エボニック社(Evonik Industries)の商品名:ULTRASIL VN2を用いた。
【0108】
[有機過酸化物(J)]
実施例および比較例では、有機過酸化物(J)として、以下の有機過酸化物(J-1):ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ(株)製、商品名 三井DCP-40C)を用いた。
【0109】
[架橋助剤(K)]
実施例および比較例では、架橋助剤(K)として、以下の架橋助剤(K―1):エチレングリコールジメタクリレート(三新化学工業(株)製、商品名 サンエステル EG)を用いた。
【0110】
《エチレン系共重合体組成物(非架橋物)の物性》
〈粘着性の測定〉
未架橋のエチレン系共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]との粘着性は、プローブタック試験により行った。
レスカ社製タッキング試験機(TAC-II)を用いて行った。直径5mmφのステンレス製円柱状プローブを試験体に接触させ、剥離するときに生じる粘着強度(gf)を測定した。プローブの試験体への接触速度を120mm/分、加圧力を50gf、加圧時間を20秒、剥離速度を120mm/分、温度を50℃とした。
【0111】
《架橋したエチレン系共重合体組成物の物性》
〈引裂き強度〉
JIS K6252に準拠し、架橋後の厚さ:2mmのシートを用い、切込みなしアングル形ダンベル試験片で、測定環境温度:23℃、引張速度:500mm/min.で測定した。
【0112】
[耐熱老化性]
シートを、JIS K 6257に従い、180℃で72時間(hrs)および168 時間(hrs)の各時間保持する熱老化試験を行った。熱老化試験後のシートの硬度、引張破断点応力(MPa)、引張破断点伸び(%)を、前記[硬度(Durometer-A)]の項目、前記[モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び]の項目と同様の方法で測定した。
【0113】
《架橋したエチレン系共重合体組成物の物性》
〈デュロメーターA硬度〉
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状架橋物6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0114】
〈引張破断点応力、引張破断点伸び〉
シートの引張破断点応力、引張破断点伸びを以下の方法で測定した。
シートを打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0115】
〈剥離強度〉
架橋した共重合体組成物からなる層[I]と繊維材料を含む層[II]との剥離強度(接着強度)は、以下の方法で行った。
【0116】
厚さ3mmの未架橋シートを、RFL処理をしたナイロン繊維の織布[綾羽工業(株)製]の上に置いて、200トンプレス成形機を用いて170℃で15分間加圧し未架橋シートを架橋し積層体を得た。当該積層体から幅25mmの試験片を打ち抜き、50mm/分の引張速度でT剥離試験を行った。剥離試験は3回行い、その平均値を剥離強度とした。
【0117】
[実施例1]
共重合体(L-1)を30秒素練りし、素練りした共重合体(L-1)100質量部に、他の架橋助剤として酸化亜鉛(ZnO#1)を5質量部、滑剤としてステアリン酸を1質量部、老化防止剤としてテトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン(H-1)〔商品名 Irganox 1010 BASFジャパン株式会社製〕を2質量部、2-メルカプトベンゾイミダゾール(H-2)(商品名 サンダントMB 三新化学工業(株)社製)を4質量部、カーボンブラック(G-1)〔旭カーボン(株)製、商品名 旭#70〕を40質量部、シリカ(N-1)〔エボニック社製、商品名ULTRASIL VN2〕を10質量部、軟化剤〔商品名 ダイアナプロセスオイルPW-380 出光興産(株)製〕を10質量部、およびオクテニレン重合体(M-1)としてエボニック社(Evonik Industries)の商品名:VESTENAMER 8012を5質量部とを容量1.7リットルのバンバリーミキサー[(株)神戸製鋼所製]で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し配合物(配合-1)を得た。この混練は充填率70%で行なった。
【0118】
次に、この配合物177質量部を、8インチロ-ル(前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、架橋剤(J-1)として、ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ(株)製、商品名三井DCP-40C)を3.4質量部、および、架橋助剤(K―1)として、エチレングリコールジメタクリレート(三新化学工業(株)製、商品名 サンエステル EG)を2質量部加えて10分間混練して配合物を得た後、夫々、試験片に応じて、シート状に分出し、厚さ2mm、および、3mmの未架橋シートを調製した。
【0119】
得られた厚さ2mmの未架橋シートを、100トンプレス成形機を用いて170℃で15分間加圧し、架橋シートを作製した。得られた架橋シートの物性を上記記載の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0120】
〔実施例2〕
実施例1で用いた共重合体組成物に替えて、架橋助剤(K-1)サンエステル EGを4質量部とした共重合体組成物を用いる以外は、実施例1に記載の方法で、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得、上記記載の方法で物性等を評価した。
【0121】
〔比較例1〕
実施例1で用いた共重合体組成物に替えて、架橋助剤(K-1)を配合しない共重合体組成物を用いる以外は、実施例1に記載の方法で、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得、上記記載の方法で物性等を評価した。
【0122】
〔比較例2〕
実施例1で用いた共重合体組成物に替えて、実施例1で用いた軟化剤〔PW-380(I-1)〕に替えて、PS-430(I-2)を35質量部、液状エチレン・プロピレン共重合体(100℃動粘度:2000mm2/s)(I-3)を15質量部用い、カーボンブラックを80部、DCPー40C(J-1)を6.8質量部用い、シリカ(N-1)、および、オクテニレン重合体(M-1)を用いない共重合体組成物を用いる以外は実施例1に記載の方法で、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得、上記記載の方法で物性等を評価した。
【0123】
〔比較例3〕
実施例1で用いた共重合体組成物に替えて、共重合体(L-1)に替えて、共重合体(F-1)を用い、カーボンブラックを50質量部とし、シリカ(N-1)、および、架橋助剤(K-1)を用いない共重合体組成物を用いる以外は実施例1に記載の方法で、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得、上記記載の方法で物性等を評価した。
【0124】
〔比較例4〕
実施例1で用いた共重合体組成物に替えて、実施例1で用いた共重合体(L-1)に替えて、共重合体(F―2)を用い、且つ配合剤(添加剤)の種類および配合量を表1に示す配合剤および配合量に替えたる共重合体組成物を用いる以外は実施例1に記載の方法で、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得、上記記載の方法で物性等を評価した。
【0125】
さらに、以下を評価した。
・得られた未架橋の共重合体組成物の「粘着性」、
・得られた積層体の「引き裂き強度」、
・得られた積層体の架橋後の「耐熱老化性」
これらの結果を表1に示す。
【0126】
〔実施例3、実施例4〕
実施例1で用いた共重合体組成物に加えて、さらに、下記のシランカップリング剤を1質量部配合する以外は、実施例1に記載の方法で、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得、上記に記載の方法で物性等を評価した。
シランカップリング剤1
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン
信越化学工業株式会社製 KBM-603
シランカップリング剤2
p-スチリルトリメトキシシラン
信越化学工業株式会社製 KBM-1403
【0127】
〔比較例5〕
比較例3で用いた共重合体組成物において、オクテニレン重合体(M-1)5質量部を
用いない以外は、比較例3と同様の方法で、未架橋の共重合体組成物、架橋して共重合体組成物および積層体を得て、上記に記載の方法で物性等を評価した。
【0128】
【表1】