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特開2024-126012風力タービンの振動周波数の決定及び関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126012
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】風力タービンの振動周波数の決定及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20240911BHJP
【FI】
F03D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024024162
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】23382207.1
(32)【優先日】2023-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】アイザック・ピネダ・アモ
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB42
3H178BB56
3H178CC25
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】運転中の風力タービンの振動モードの周波数を決定する方法並びに風力タービンを運転する方法を提供すること。
【解決手段】風力タービンの振動モードの周波数を決定する方法は、風力タービン内の第1の同調質量ダンパの第1の質量体の運動を決定し、決定した第1の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて風力タービンの振動モードの周波数を導出することを含む。風力タービンの運転方法は、上述の方法で風力タービンの振動モードの周波数を決定した後、導出した振動モードの周波数に基づいて回避すべき風力タービンのロータの回転速度の除外領域を決定し、除外領域での風力タービンの運転時間が短縮又は回避されるように風力タービンを運転することを含む。本開示は、同調質量ダンパと、上述の方法を実施するように構成された制御システムとを備える風力タービンも提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンの振動モードの周波数を決定する方法であって、当該方法が、
風力タービン内の第1の同調質量ダンパの第1質量体の運動を決定するステップと、
決定した第1の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて風力タービンの振動モードの周波数を導出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
風力タービンの振動モードが第1のノーマルモードである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
風力タービン内の第2の同調質量ダンパの第2の質量体の運動を決定するステップと、決定した第2の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて風力タービンの振動モードの周波数を導出するステップとをさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の質量体及び第2の質量体が、実質的に直交する2方向に移動するように構成されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
風力タービンの振動モードの周波数を決定することが、風力タービンのアイドリング中又は風力タービンの運転中に行われる、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
風力タービン内の第1の同調質量ダンパの第1の質量体の運動を決定するステップが、風力タービンに対する少なくとも第1の質量体の位置を時間の関数として監視することを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも第1の質量体の位置を監視することが、1以上の標的位置で第1の質量体を検出することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
風力タービンの制御戦略の調整をさらに含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
制御戦略の調整が、風力タービンでの共振を回避するようにピッチ制御戦略を変更することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
風力タービンの運転方法であって、当該方法が、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の風力タービンの振動モードの周波数を決定する方法を含んでいるとともに、さらに、
導出した振動モードの周波数に基づいて回避すべき風力タービンのロータの回転速度の除外領域を決定するステップと、
除外領域での風力タービンの運転時間が短縮又は回避されるように風力タービンを運転するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
風力タービン内の第1の同調質量ダンパの第1質量体の運動の測定が、風力タービンの運転中に行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
風力タービンを所定期間運転した後で第1の質量体の運動に基づいて振動モードの新たな周波数を決定するステップをさらに含んでおり、適宜、新たな周波数に基づいて除外領域を調整するステップをさらに含む、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
新たな周波数に基づいて第1の同調質量ダンパを調整することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
振動モードの周波数に関する履歴データを記憶するステップと、記憶した履歴データに少なくとも部分的に基づいて風力タービンの平均余寿命を推定するステップとをさらに含む、請求項12又は請求項13に記載の方法。。
【請求項15】
第1の質量体を有する同調質量ダンパを備える風力タービンであって、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成された制御システムをさらに備えており、当該風力タービンが、適宜、洋上風力タービン、特に、海底に固定基礎を備える洋上風力タービンである、風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力タービンの振動モードの周波数を推定するための方法及びシステムに関する。また、本開示は、風力タービンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最新式風力タービンは、電力網への電力の供給に常用されている。この種の風力タービンは一般にタワーとタワー上に配置されたロータとを備える。ロータは通例ハブ及び複数のブレードを備えており、ブレードに対する風の影響下で回転するように設定される。この回転は通常ロータシャフトによって発電機に直接(「直接駆動」又は「ギアレス」)又はギアボックスを用いて伝達されるトルクを生成する。こうして、発電機は電力を発生し、電力を電力網に供給することができる。
【0003】
風力タービンは過去数十年で急速に進化し、大型化の傾向がはっきりとみられる。風力タービンで生成される電力はロータの受風面積に比例し、従ってブレードの長さの2乗に比例する。そのため、風力からのエネルギー抽出量を高めて発電量を増大させるために、用いられるタワーの高層化及びブレードの長尺化がなされてきた。長年にわたる大型化のため、風力タービン部品にかかる負荷が大幅に増大しており、特に機械、電気、材料、土木工学などの幅広い分野で新たな課題が生じている。
【0004】
風力タービンの大型化に伴って、風力タービンも細身化している。風力タービンの負荷制御は、疲労による構造破損及び部品の早期引退を避けるために常に重要であるが、これは、定格電力8MW以上、特に10MW以上又は14MW以上の最新式の非常に背の高い風力タービンでは一段と重要になる。
【0005】
風力タービンのタワー構造及び風力タービンの基礎のような風力タービン部品における疲労などに起因する構造破損の起こり易さは、特に、風力タービンに加わる負荷の大きさ及び周波数並びにそれらが地面(陸上又は海底のいずれか)にどのように伝達されるかに関連する。
【0006】
風力タービン部品の早期構造破損を軽減するため、風力タービンの特定の固有振動数を考慮することが知られている。風力タービンが、固有周波数又はその付近の負荷に付されると、共振が起こり、負荷が急激な増加して危険な負荷に至るおそれがある。そのため、運転所外領域(例えば、振動共振によって深刻な構造的損傷を引き起こすおそれがあり、回避又は最小限に抑制すべき回転速度の範囲)を定義することが知られている。
【0007】
固有振動数(及び対応する除外領域)は、一般に、風力タービンの設計段階で計算される。しかし、加速度計などを使用した振動の測定及び固有振動数の導出は、例えば試運転段階でも実施し得る。設置済みの風力タービンでの固有周波数の決定は複雑な作業であり、一般にかなりの計算リソースに依存し、一般に運転中には実施されない。
【0008】
風力タービンの設置場所は陸上(オンショア)に位置していることもあれば、エネルギー生産量を増大させ、環境への影響を低減するため、沖合の洋上(オフショア)に位置していることもある。オフショア位置での風速は、通例、陸上よりも高い。さらに、オフショアでの風速及び風向の方が安定している傾向があり、オフショアサイトは陸上サイトよりもエネルギー生産が高くかつ安定している。
【0009】
負荷制御及び上述の固有周波数に関連して、洋上風力タービンではさらに課題がある。例えば、洋上ウィンドファームでは、一般に陸上よりも土壌が軟弱であり、ウィンドファーム全体で土壌の状態の変動が大きいので、モノパイル又はジャケット及び風力タービン構造が同一の風力タービンであっても固有振動数が異なることがある。海底の深さは必ずしも一定ではないので、モノパイルの長さは異なることとなる。
【0010】
さらに、特に洋上風力タービンの固有周波数は、浮体式風力タービン及び海底固定式風力タービンのいずれにおいても、その耐用年数の間に変化しかねないことが判明している。タワー又はパイル構造或いは浮遊構造体での藻類、甲殻類、フジツボなどの増殖も、固有振動数に影響を与える。固有周波数が変化すると、所定の運転方法では、予想よりも高い負荷を招くおそれがある。高負荷を避けるために、運転除外領域を増大させて定義することもできるが、これは最適でない運転及びそれに対応した年間発電電力量(AEP)の減少につながりかねない。
【0011】
本開示は、上述の短所の幾つかを少なくとも部分的に解決するための方法及び装置を提供する。
【発明の概要】
【0012】
本開示の一態様では、風力タービンの振動モードの周波数を決定する方法を提供する。本方法は、風力タービン内の第1の同調質量ダンパの第1の質量体の運動を決定し、決定した第1の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて風力タービンの振動モードの周波数を導出することを含む。
【0013】
この態様では、本方法では、風力タービンの振動モードの周波数の正確な推定値を簡単かつ信頼性をもって得ることができる。本方法は、陸上又は洋上に設置された風力タービンで実施するのに適しており、風力タービンの動的応答に対する風力タービンの支持構造(例えば、浮体式プラットフォーム又は基礎)の寄与を含めることができる。この態様に係る方法は、運転中であっても、自律的に実行することができ、風力タービンタイプ、フリート又はウィンドファームではなく、個々の風力タービンに関する指標を与えることができる。風力タービンの耐用年数にわたる固有周波数の変動も検出できる。
【0014】
別の態様では、風力タービンを運転する方法について開示する。本方法は、風力タービン内の第1の同調質量ダンパの第1の質量体の運動を決定すること、及び決定した第1の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて風力タービンの振動モードの周波数を導出することを含む。本方法は、さらに、導出した振動モードの周波数に基づいて、回避すべき風力タービンのロータの回転速度の除外領域を決定すること、及び除外領域内での風力タービンの運転時間が短縮又は回避されるように風力タービンを運転することを含む。
【0015】
この別の態様では、風力タービンの運転は、当技術分野で公知の他のアプローチと対比して制御及び最適化し得る。本方法では、風力タービン内の同調質量ダンパの質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて、風力タービンの回転速度除外領域を推定することができる。本方法は、風力タービンを安全かつ効率的に運転ことができ、回転速度除外領域は、たとえ時間経過に伴って変化したとしても、正確に決定される。
【0016】
さらに別の態様では、同調質量ダンパを含む風力タービンを提供する。同調質量ダンパは第1の質量体を有しており、風力タービンは、風力タービン内の同調質量ダンパの第1の質量体の運動を決定し、決定した第1の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて風力タービンの振動モードの周波数を決定するように構成された制御システムをさらに備えている。
【0017】
こうして、風力タービン内の同調質量ダンパは、風力タービンの振動モードの周波数の推定に使用し得ると同時に、風力タービン構造に減衰をもたらす。同調質量ダンパ並びにこれらの方法を風力タービンの運転に使用すると、風力タービンの振動モードの周波数を推定する全体的なコスト及び複雑さが軽減される。
【0018】
本開示を通して、「振動モード」は、振動の特定の状態の一般特性とみなすことができる。風力タービンのような多くの動的システムは、風の影響などによって、幾つかのモードで励起される可能性がある。これらのモードは同時に共存できる。各モードは、一般に、モード場に関連する1以上の周波数で特徴付けられる。例えば、2次元空間で振動する系は単一の周波数(つまり1次元変位)で定義されるが、3次元空間で振動する系は2つの周波数(つまり2次元変位)で定義される。複雑な3次元系は、単一の振動変位で支配的な振動作動を捉えるように単純化できる。
【0019】
本開示を通して、固有振動数は、駆動力の非存在下で系が振動する傾向がある周波数とみなすことができる。固有振動数(eigenfrequency)は「固有振動数(natural frequency)」とも呼ばれる。固有振動数で振動する系の運動パターンはノーマルモードと呼ぶことができる。
【0020】
本開示を通して、同調質量ダンパ(TMD)は、機械的振動を低減するために構造(この場合は風力タービン)に取り付けられた装置であって、構造に対して移動させることができる質量体からなる装置とみなすことができる。通例、質量体は1以上の減衰ばねを介して構造に接続される。その振動周波数は、それが取り付けられた構造(この場合は風力タービン)の共振周波数と同程度に調整でき、格段に軽量ではあるが、物体の最大振幅を低減する。
【0021】
同調質量ダンパ(TMD)という用語は、振り子ダンパ及び転動型ダンパを始めとする様々な種類のTMDを包含する。TMDは、パッシブ、セミアクティブ又はアクティブダンパのいずれであってもよい。パッシブシステムはそれらの減衰特性を変更できない。セミアクティブダンパは、1以上の減衰特性(剛性、ばね定数、重量など)を変化させるために断続的に制御し得る。アクティブダンパは、その減衰特性を適応させるために連続的に制御されるシステムとみなすことができる。
【0022】
本開示技術の実施形態のその他の目的、利点及び特徴については、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなろうし、或いは本技術の実施を通して習得できるものもあろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】風力タービンの一例の概略斜視図。
図2】風力タービンのハブ及びナセルの一例を示す図。
図3】本開示技術の一例に係る同調質量ダンパの概略側面図。
図4】2つの同調質量ダンパを含む例に係る風力タービンタワーの一部の概略図。
図5】本開示技術の一例に係る風力タービンの振動モードの周波数の推定方法の一例のフローチャート。
図6】本開示に係る風力タービンの運転方法の一例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の様々な実施形態について詳細に説明し、その1以上の実施例を図面に示す。各実施例は、本技術を限定するものではなく、例示のためのものである。実際、特許請求の範囲に記載された技術的範囲及び技術的思想を逸脱することなく、本技術に様々な修正及び変更をなし得ることは当業者には明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として例示又は記載された特徴を、別の実施形態と共に用いてさらに別の実施形態とすることができる。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲に属する修正及び変更を包含する。
【0025】
図1は、風力タービン10の一例の斜視図である。この例では、風力タービン10は水平軸風力タービンである。或いは、風力タービン10は、垂直軸風力タービンであってもよい。この例では、風力タービン10は、地表面12の支持システム14から延在するタワー15と、タワー15に取り付けられたナセル16と、ナセル16に結合したロータ18とを含む。ロータ18は、回転可能なハブ20と、ハブ20に結合しかつハブ20から外側に延在する1枚以上のロータブレード22とを含む。この例では、ロータ18は3枚のロータブレード22を有する。別の実施形態では、ロータ18は、3枚未満又は3枚超のロータブレード22を含む。タワー15は、支持システム14とナセル16の間の空洞(図1には図示せず)を画成するための管状鋼から製造し得る。別の実施形態では、タワー15は、任意の適切な高さを有する任意の適切なタイプのタワーである。別の実施形態では、タワーは、コンクリート製部分と管状鋼部分とを含むハイブリッドタワーであってもよい。また、タワーは部分的又は完全な格子タワーであってもよい。
【0026】
ロータブレード22は、ロータ18を回転させて運動エネルギーを風から使用可能な機械的エネルギー、ひいては電気エネルギーへと伝達できるように、ハブ20の周りに離間して配置される。ロータブレード22は、ブレード根元部24を複数の荷重伝達領域26でハブ20に結合することによってハブ20に連結される。荷重伝達領域26は、ハブ荷重伝達領域及びブレード荷重伝達領域(いずれも図1には図示せず)を有していてもよい。ロータブレード22で惹起された荷重は、荷重伝達領域26を介してハブ20に伝達される。
【0027】
幾つかの例では、ロータブレード22は、約15m~約90m以上の範囲の長さを有し得る。ロータブレード22は、本明細書に記載の機能を風力タービン10が発揮し得る任意の適切な長さを有し得る。例えば、ブレード長の非限定的な例として、20m以下、37m、48.7m、50.2m、52.2m又は91m超の長さが挙げられる。風向28からロータブレード22に風が当たると、ロータ18はロータ軸30の周りで回転する。ロータブレード22が回転して遠心力を受けると、ロータブレード22にも様々な力及びモーメントが加わる。そこで、ロータブレード22は、中立又は非撓み位置から撓み位置まで撓む及び/又は回転し得る。
【0028】
さらに、ロータブレード22のピッチ角(すなわち風向に対するロータブレード22の向きを定める角度)は、風ベクトルに対する1以上のロータブレード22の角度位置の調整によって風力タービン10で発生する荷重及び電力を制御するためのピッチシステム32によって変更し得る。ロータブレード22のピッチ軸34が示してある。風力タービン10の運転中、ピッチシステム32は、特にロータブレード(の部分)の迎角が小さくなるようにロータブレード22のピッチ角を変化させることができ、回転速度の低下を促進し、及び/又はロータ18の失速を促進する。
【0029】
この例では、各ロータブレード22のブレードピッチは、風力タービンコントローラ36又はピッチ制御システム80によって個々に制御される。或いは、全てのロータブレード22に対するブレードピッチは、制御システムによって同時に制御してもよい。
【0030】
また、この例では、風向28の変化に伴って、ロータブレード22を風向28に対して位置付けるため、ナセル16のヨー方向をヨー軸38の周りで回転させてもよい。
【0031】
この例では、風力タービンコントローラ36は、ナセル16内に集中化したものとして示してあるが、風力タービンコントローラ36は、風力タービン10全体、支持システム14上、ウィンドファーム内及び/又は遠隔制御センターにおける分散システムとしてもよい。風力タービンコントローラ36は、本明細書に記載の方法及び/又はステップを実行するように構成されたプロセッサ40を含む。さらに、本明細書に記載の他の部品の多くは、プロセッサを含む。
【0032】
本明細書で用いる「プロセッサ」という用語は、当技術分野でコンピュータと呼ばれる集積回路に限定されず、広義に、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路その他のプログラマブル回路をいい、これらの用語は、本明細書で互換的に用いられる。プロセッサ及び/又は制御システムは、メモリ、入力チャネル及び/又は出力チャネルも含むことができる。
【0033】
図2は、風力タービン10の一部の拡大断面図である。この例では、風力タービン10は、ナセル16と、ナセル16に回転可能に結合したロータ18とを含む。さらに具体的には、ロータ18のハブ20は、主軸44、ギアボックス46、高速軸48及びカップリング50によってナセル16内に位置する電動発電機42に回転可能に結合している。この例では、主軸44は、ナセル16の長手軸(図示せず)に対して少なくとも部分的に同軸に配置されている。主軸44の回転はギアボックス46を駆動し、次いでギアボックス46はロータ18及び主軸44の比較的遅い回転運動を高速軸48の比較的速い回転運動に変換することによって高速軸48を駆動する。後者は、カップリング50によって電気エネルギーを生成するための発電機42に接続されている。さらに、400V~1000Vの間の電圧を有する発電機42によって生成された電気エネルギーを中電圧(10~35KV)の電気エネルギーに変換するために、変圧器90及び/又は適切な電子機器、スイッチ、及び/又はインバータがナセル16内に配置されることもある。電気エネルギーは、ナセル16からタワー15へ電力ケーブルを介して伝導される。
【0034】
ギアボックス46、発電機42及び変圧器90は、ナセル16の主支持構造フレームによって支持してもよく、適宜メインフレーム52として具現化される。ギアボックス46は、1以上のトルクアーム103によってメインフレーム52に接続されたギアボックスハウジングを含んでいてもよい。この例では、ナセル16は、主前方支持軸受60及び主後方支持支持軸受62も含む。さらに、発電機42は、特に発電機42の振動がメインフレーム52に導入され、それによって騒音発生源となるのを防止するために、デカップリング支持手段54によってメインフレーム52に取り付けることができる。
【0035】
適宜、メインフレーム52は、ロータ18及びナセル16の部品の重量並びに風及び回転荷重によって生じる全荷重を担持するように構成され、さらに、これらの荷重を風力タービン10のタワー15に導入する。ロータシャフト44、発電機42、ギアボックス46、高速軸48、カップリング50、並びに限定されるものではないが、支持体52、前方支持軸受60及び後方支持軸受62を始めとする関連する締結、支持、及び/又は固定装置は、駆動トレイン64とも呼ばれる。
【0036】
幾つかの例では、風力タービンは、ギアボックス46のない直接駆動風力タービンであってもよい。発電機42は、直接駆動風力タービン内のロータ18と同じ回転数で作動する。従って、それらは一般に、同程度の電力を供給するためのギアボックス46を有する風力タービンで使用される発電機よりもはるかに大きい直径を有する。
【0037】
ナセル16は、風向28に対するロータブレード22の全体的位置を制御するために、ヨー軸38の周りでナセル16、さらにはロータ18を回転させるために使用し得るヨー駆動機構56を含んでいてもよい。
【0038】
ナセル16を風向28に対して適切に位置決めするために、ナセル16は、風向計及び風速計を始めとする1以上の気象測定システム58を含んでいてもよい。気象測定システム58は、風向28及び/又は風速を始めとする情報を風力タービンコントローラ36に供給し得る。この例では、ピッチシステム32は、ピッチアセンブリ66としてハブ20内に少なくとも部分的に配置されている。ピッチアセンブリ66は、1以上のピッチ駆動システム68及び1以上のセンサ70を含む。各ピッチ駆動システム68は、ピッチ軸34に沿ってロータブレード22のピッチ角を変調するため各ロータブレード22(図1に示す)に結合している。図2には、3つのピッチ駆動システム68の1つだけを示す。
【0039】
この例では、ピッチアセンブリ66は、ハブ20に結合した1以上のピッチ軸受72と、ピッチ軸34の周りで各ロータブレード22を回転させるための各ロータブレード22(図1に示す)とを含む。ピッチ駆動システム68は、ピッチ駆動モータ74と、ピッチ駆動ギアボックス76と、ピッチ駆動ピニオン78とを備える。ピッチ駆動モータ74は、ピッチ駆動ギアボックス76に機械的な力を与えるようにピッチ駆動ギアボックス76に結合している。ピッチ駆動ギアボックス76はピッチ駆動ピニオン78に結合しており、ピッチ駆動ギアボックス76によってピッチ駆動ピニオン78が回転する。ピッチ軸受72はピッチ駆動ピニオン78に結合しており、ピッチ駆動ピニオン78の回転によってピッチ軸受72の回転を生じる。
【0040】
ピッチ駆動システム68は、風力タービンコントローラ36から1以上の信号を受信したときにロータブレード22のピッチ角を調整するため、風力タービンコントローラ36に連結している。この例では、ピッチ駆動モータ74は、ピッチアセンブリ66が本明細書に記載の通り機能できるようにする電力及び/又は油圧システムによって駆動される任意の適切なモータである。或いは、ピッチアセンブリ66は、任意の適切な構造、構成、配置並びに/或いは、限定されるものではないが、油圧シリンダ、ばね及び/又はサーボ機構などの部品を含んでいてもよい。ある実施形態では、ピッチ駆動モータ74は、ハブ20の回転慣性及び/又は風力タービン10の部品にエネルギーを供給する備蓄エネルギー源(図示せず)から抽出されるエネルギーによって駆動される。
【0041】
ピッチアセンブリ66は、特定の優先的状況及び/又はロータ18の過速度の場合に、風力タービンコントローラ36からの制御信号に従ってピッチ駆動システム68を制御するための1以上のピッチ制御システム80を含んでいてもよい。この例では、ピッチアセンブリ66は、風力タービンコントローラ36から独立してピッチ駆動システム68を制御するための各ピッチ駆動システム68に通信可能に結合した1以上のピッチ制御システム80を含む。この例では、ピッチ制御システム80は、ピッチ駆動システム68及びセンサ70に結合している。風力タービン10の正常運転中、風力タービンコントローラ36は、ロータブレード22のピッチ角を調整するようにピッチ駆動システム68を制御して得る。
【0042】
一実施形態では、例えば、電池及び電気キャパシタを含む電力発生器84は、ハブ20に又はハブ20内に配置され、センサ70、ピッチ制御システム80及びピッチ駆動システム68に電力源を提供するためこれらの部品に結合される。この例では、電力発生器84は、風力タービン10の運転中にピッチアセンブリ66に継続的な電力源を提供する。別の実施形態では、電力発生器84は、風力タービン10の電力喪失時にだけピッチアセンブリ66に電力を供給する。電力喪失事象としては、電力網の喪失又はディップ、風力タービン10の電気システムの誤作動、及び/又は風力タービンコントローラ36の故障が挙げられる。電力喪失の際に、電力発生器84は、ピッチアセンブリ66が電力喪失事象中も作動できるように、ピッチアセンブリ66に電力を供給するように作動する。
【0043】
この例では、ピッチ駆動システム68、センサ70、ピッチ制御システム80、ケーブル及び電力発生器84は、各々、ハブ20の内面88によって画成されるキャビティ86内に配置される。別の実施形態では、これらの部品は、ハブ20の外側屋根面に対して配置され、外側屋根面に直接的又は間接的に結合し得る。
【0044】
図3は、同調質量ダンパ100の一例(この場合は転動型ダンパ)の側面図を示す。特に、図3は、風力タービン10の振動モードの周波数を推定するために使用し得る同調質量ダンパ100を示す。同調質量ダンパ100は、静止構造又はガイド120に移動可能に接続された第1の質量体100を備える。第1の質量体110は、静止構造120に対して1以上の方向に移動するように構成される。静止構造又はガイド120は、例えばナセルの前後方向又は横方向と整列するように配置し得る。
【0045】
さらに、この例の同調質量ダンパ100は、第1の質量体110と静止構造120の間の相対位置を監視するように構成された1以上のセンサ130を備えていてもよい。加えて、センサ130は、時間の関数としての第1の質量体110と静止構造120の間の相対位置に少なくとも部分的に基づいて風力タービン10の振動モードの周波数を推定するように構成された処理ユニットと通信するように構成してもよい。
【0046】
図3に示す例では、静止構造120は、湾曲したガイド要素を備えるが、他の例では、静止構造120は、実質的に直線状のガイド要素を備えていてもよい。また、幾つかの例では、静止構造120は、風力タービン10に接続されるように構成された支持体であってもよく、そこから質量体110を懸架してもよい。
【0047】
同じく図3に示すように、センサ130は、特に、誘導センサ、静電容量センサ、光センサ、磁気センサ又は超音波センサのような近接センサであってもよい。センサ130は接触センサ、圧力センサその他のものであってもよい。なお、センサ130は静止構造に結合した状態で図示してあるが、センサを質量体内に設置して、少なくとも静止構造内の標的位置に対する質量体の相対運動を識別することも可能である。
【0048】
図3は、同調質量ダンパ100がストッパ140などの保安機能を備えていてもよいことも示す。これらの部品は緩衝材として機能し、最大振幅を超えたときに質量体の振動を減衰させる。加えて、他の装置では、保安機能は、質量体の速度を制限するためのブレーキを含んでいてもよい。ブレーキは、油圧式、空気圧式又は磁気式などとすることができる。
【0049】
風力タービンの振動モードの周波数を決定する方法は、風力タービン内の第1の同調質量ダンパ100の第1の質量体110の運動を決定することを含む。本方法は、決定した第1の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて風力タービンの振動モードの周波数を導出することをさらに含む。
【0050】
同調質量ダンパの質量体は、風力タービンの固有振動数で振動する傾向がある。質量体の振動の周波数は、振動中の質量体の速度から導出し得る。こうして、風力タービンの第1ノーマルモードの周波数を導出することができる。
【0051】
幾つかの例では、質量体の速度は、風力タービンに対する少なくとも第1の質量体の位置を時間の関数として監視することによって決定し得る。適宜、少なくとも第1の質量体の位置は、1以上の標的位置で第1の質量体を検出することを含む。特にこの例では、質量体の位置は、近接センサ130で決定し得る。タイムスタンプを毎回作成してして保存してもよく、質量体は近接センサによって登録される。これらのタイムスタンプから、振動の周期を決定及び/又は振動中の質量体の速度を決定し得る。これらは、風力タービンの固有振動数の導出に使用し得る。
【0052】
幾つかの例では、風力タービンの振動モードの周波数の決定は、風力タービンのアイドリング中又は風力タービンの運転中に実施し得る。
【0053】
幾つかの例では、方法は、風力タービン内の第2の同調質量ダンパの第2の質量体の運動を決定すること、及び決定した第2の質量体の運動に基づいて風力タービンの振動モードの周波数を導出することをさらに含んでいてもよい。
【0054】
幾つかの例では、第1の質量体及び第2の質量体は、実質的に垂直方向に移動するように構成し得る。
【0055】
図4の例では、第1及び第2の同調質量ダンパ100は第1及び第2の質量体110,112を備えており、それぞれ第1及び第2の静止構造120,122に移動可能に接続されている。第1の質量体110は、主方向Aに移動するように構成され、第2の質量体112は、Aに実質的に直交する主方向Bに移動するように構成されている。
【0056】
図4は、風力タービンタワーの内部の概略を示す。他の例では、同調質量ダンパは、風力タービンのナセル内に配置してもよい。
【0057】
別の態様では、上述の同調質量ダンパを備える風力タービンを提供する。風力タービンは、陸上風力タービンであってもよいし、洋上風力タービンであってもよい。本願で開示する洋上風力タービンは、例えば基礎の状態を推定するために、風力タービンの振動モードの周波数を推定するように構成し得る。例えば、上述の同調質量ダンパを備えた洋上風力タービンは、システムの動的応答の変化を識別するために、第1の振動モード(又は他のモード)の周波数の推定を繰り返してもよい。そうすることによって、例えば土壌の劣化による風力タービンと土壌の結合の変化の証拠が得られることがある。システムの動的応答が時間経過に伴って変化しかねない別の理由として、構造の劣化並びに藻類及びフジツボの増殖などがある。そこで、本願で開示する同調質量ダンパを備える風力タービンは、風力タービンの運転中の構造的異常の識別に資するが、これは、直接検査が冗長で複雑な洋上風力タービンでは顕著な問題となる。さらに、経時的に推定プロセスを繰り返すことによって、時間依存性の(つまり振動モードの変遷に基づく)運転除外領域の定義も可能となる。この点については、方法700に関してさらに詳しく説明する。
【0058】
幾つかの例では、風力タービンは、固定基礎を備える洋上風力タービンであってもよい。固定基礎には、モノパイル基礎、トリポッド基礎、ジャケット基礎、サクションバケット基礎、重力基礎などがある。
【0059】
他の例では、洋上風力タービンは浮体式風力タービンであってもよく、振動モードの周波数の推定は、浮体式構造の動的応答を含んでいてもよい。
【0060】
本開示の別の態様では、方法600について開示する。方法600は、風力タービンの振動モードの周波数の推定に適している。方法600の一例の概略を図5に示す。
【0061】
方法600は、ブロック610で、第1の同調質量ダンパの質量体の運動を決定することを含む。本方法は、ブロック620で、同調質量ダンパの第1の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて、風力タービン10の振動モードの周波数を決定することをさらに含む。
【0062】
そこで、方法600は、周波数推定の実施に際して、複雑な測定の使用、高い計算条件又は人間の介入を必要としない。こうして、風力タービンのアイドリング中又は風力タービン運転中に自律的に実行される好適な方法が得られる。
【0063】
また、幾つかの例では、方法600における第1の質量体110は、2方向に移動するように構成されている。例えば、第1の質量体100は、実質的に鉛直面での振り子運動を表すように構成し得る。他の例では、第1の質量体110は、例えば懸架質量体のように、3方向に移動するように構成し得る。
【0064】
幾つかの例では、振動モードの周波数の推定は、第1の質量体110の運動及び第2の質量体112の運動に少なくとも部分的に基づく。さらに、場合によっては、第1及び第2の質量体110,112は、実質的に直交する2方向に移動するように構成してもよい。例えば、第1の方向Aを風力タービンの前後方向とし、第2の方向Bを風力タービンの左右方向としてもよい。
【0065】
幾つかの例では、方法600のブロック610は、風力タービンのアイドリング中又は風力タービンの運転中に実施し得る。こうして、発電を中断せずに、振動モードの周波数の正確な推定値が得られる。実際、振動モードの周波数が経時的にどのように変化するかを監視するため、風力タービンの運転中に方法600を繰り返してもよい。
【0066】
幾つかの例では、方法600のブロック610は、風力タービン10に対する少なくとも第1の質量体110の位置を時間の関数として監視することを含んでいてもよい。これは、例えば、ある標的位置で少なくとも第1の質量体を検出することによって実施し得る。風力タービン10の振動の周波数を推定するために、1回目の横断から2回目の横断までの時間間隔を用いることができる。場合によっては、第1の質量体110を近接センサ130で検出してもよい。同調質量ダンパ100に関連して既に説明したセンサ130のいずれも、この目的の使用し得る。
【0067】
幾つかの例では、方法600は、ブロック630で、風力タービンの制御戦略を調整することをさらに含んでいてもよい。風力タービンの制御戦略の調整は、風力タービンでの共振を回避するためのピッチ制御戦略の変更を含んでいてもよい。風力タービンの振動、特に共振を低減するために、集合的又は個別ピッチ制御を使用し得る。風力タービンの振動周波数が変化した場合、それに応じてピッチ制御を変更してもよく、異なる条件下(異なるロータ速度又は風速など)で振動の低減を目的としたピッチ制御を作動させてもよい。
【0068】
他の例では、制御戦略の調整は、回転速度除外領域を変更して、以下で説明するような回転速度除外領域を回避することを含んでいてもよい。
【0069】
別の態様では、風力タービンの運転方法700を提供する。方法700の概略流れ図を図6に示す。方法700は、ブロック710で、同調質量ダンパの質量体の運動を決定すること、及びブロック720で、第1の質量体の運動に少なくとも部分的に基づいて風力タービンの振動モード(特に固有モード)の周波数を決定することを含む。本方法は、ブロック730で、導出した振動モードの周波数に基づいて回避すべき風力タービンのロータの回転速度の除外領域を決定することをさらに含んでいてもよい。さらに、方法700は、ブロック740で、回転速度の除外領域内での風力タービンの運転時間が短縮又は回避されるように、風力タービンを運転することを含む。
【0070】
さらに、方法700は、風力タービンのアイドリング中又は風力タービンの運転中に繰り返して、推定周波数の変遷を監視してもよい。こうして、ある期間運転した後で、第1の質量体の運動に基づいて、振動モードの新たな周波数を決定し得る。方法は、次いで、新たな周波数に基づいて除外領域を調整することをさらに含んでいてもよい。
【0071】
こうして、個々の風力タービンに対して除外領域を決定し得る。これらの除外領域は信頼性をもって決定することができ、風力タービンの運転で除外領域を回避できるが、年間発電電力量に過度に影響を与えないように、比較的狭くすることができる。
【0072】
幾つかの例では、風力タービン10の運転702は、風力タービン回転速度除外領域を横切って風力タービン回転速度を急上昇又は急下降させることを含んでいてもよい。これによって構造的共振のリスクが軽減し、かかる回転速度での運転に伴う高負荷のリスクが軽減される。その他の例では、除外領域を避けて風力タービンを運転することは、設定値低下の場合に除外領域を回避することを含んでいてもよい。
【0073】
幾つかの例では、方法700は、振動モードの推定周波数に関する履歴データを記憶することをさらに含んでいてもよい。さらに、方法700は、記憶データに少なくとも部分的に基づいて風力タービン10の平均余寿命を推定することを含んでいてもよい。記憶データは、風力タービンの振動モードの周波数の推定に使用した或いは使用することができた任意のデータを含むことができる。例えば、記憶データは、風力タービンに対する第1の質量体の運動の履歴データを含んでいてもよい。さらに、その他の変数、例えば風速、風の乱れ、海況などを記憶してもよい。
【0074】
幾つかの例では、固有周波数のシフトが検出されたら、風力タービン内の1以上の同調質量ダンパを調整してもよい。同調質量ダンパの目的は、本来は風力タービンの振動を抑制及び減衰させることである。同調質量ダンパの調整は、同調質量ダンパの質量体を変更すること並びに/或いは減衰係数又は例えば質量体と風力タービンとの接続の柔軟性を変更することを含んでいてもよい。アクティブ又はセミアクティブTMDを用いる場合、TMDの調整はリモートで行うことができる。
【0075】
なお、同調質量ダンパ100のあらゆる特徴を、風力タービンの振動モードの周波数の推定並びに風力タービンの運転に適した方法600,700に含めることができ、その逆も同様である。
【0076】
風力タービンの振動モードの周波数を決定する方法は、固有振動数の顕著なシフトが生じた場合に風力タービンでの構造的損傷を決定することを含んでいてもよい。
【0077】
本明細書では、本発明を好ましい実施形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と非本質的な差しかない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。当業者であれば、本願に記載した様々な実施形態の様々な態様並びにかかる各態様について公知の他の均等物を適宜組み合わせて、本願の原則に則した追加の実施形態及び技術を構成することができる。図面に関する符号が特許請求の範囲に括弧書きで記載されている場合、そうした符号は、特許請求の範囲の記載を理解し易くするためのものにすぎず、特許請求の範囲に記載された技術的範囲を限定するものと解すべきではない。
【符号の説明】
【0078】
10 風力タービン
16 ナセル
20 ハブ
22 ロータブレード
100 同調質量ダンパ
110 第1の質量体
112 第2の質量体
120 静止構造
130 センサ
140 ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】