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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126038
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】傾斜管内壁安全幕設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20240912BHJP
   C21B 7/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E04G21/32 A
C21B7/00 304
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034159
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】相部 岳暁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】田後 宏記
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大悟
(57)【要約】
【課題】傾斜管の内壁に安全幕を容易に設置できる傾斜管内壁安全幕設置方法を提供する。
【解決手段】連続した筒状の安全シート21と、安全シート21の連続方向に延びかつ安全シート21にスライド自在に挿通された複数の保持ロープ22と、を準備しておき、安全シート21から引き出された保持ロープ22の下端側を傾斜管10内に投入し、互いに交差しない状態で保持ロープ22を吊り下げ、保持ロープ22の下端を傾斜管10の径方向に拡げて下側係合部15に係合させ、傾斜管10内に吊り下げられた保持ロープ22に沿って安全シート21を傾斜管10内へ導入し、保持ロープ22の上端を互いに径方向に拡げて上側係合部14に係合させ、保持ロープ22を牽引して下側係合部15と上側係合部14との間の保持ロープ22を緊張させ、保持ロープ22とともに安全シート21を傾斜管10の径方向に拡げる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した筒状の安全シートと、前記安全シートの連続方向に延びかつ前記安全シートにスライド自在に挿通された複数の保持ロープと、を準備するとともに、施工対象の傾斜管の下部に周方向に配列された複数の下側係合部と、前記傾斜管の上部に周方向に配列された複数の上側係合部と、を形成しておき、
前記安全シートから引き出された前記保持ロープの下端側を前記傾斜管の内部に投入し、互いに交差しない状態で前記保持ロープを吊り下げ、前記保持ロープの下端を前記傾斜管の径方向に拡げて前記下側係合部に係合させ、
前記傾斜管の内部に吊り下げられた前記保持ロープに沿って前記安全シートを前記傾斜管の内部へ導入し、
前記保持ロープの上端を互いに径方向に拡げて前記上側係合部に係合させ、前記保持ロープを牽引して前記下側係合部と前記上側係合部との間の前記保持ロープを緊張させ、前記保持ロープとともに前記安全シートを前記傾斜管の径方向に拡げることを特徴とする傾斜管内壁安全幕設置方法。
【請求項2】
請求項1に記載した傾斜管内壁安全幕設置方法において、
前記安全シートおよび前記保持ロープを集約して投下パックを形成しておき、前記投下パックの状態で前記保持ロープが前記安全シートに対してスライド自在であり、かつ前記投下パックから前記保持ロープの上端側および下端側が引き出し可能としておくことを特徴とする傾斜管内壁安全幕設置方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した傾斜管内壁安全幕設置方法において、
前記安全シートは、前記保持ロープと交差方向の折り目で交互に折りたたんでおくことを特徴とする傾斜管内壁安全幕設置方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載した傾斜管内壁安全幕設置方法において、
前記保持ロープを吊り下げる前に、前記傾斜管の下側となる内壁に沿って表面が平滑な底面シートを設置しておくことを特徴とする傾斜管内壁安全幕設置方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載した傾斜管内壁安全幕設置方法において、
前記保持ロープを吊り下げる前に、前記傾斜管の上部に水平な作業用デッキを設置することを特徴とする傾斜管内壁安全幕設置方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載した傾斜管内壁安全幕設置方法において、
前記保持ロープは、4本以上であることを特徴とする傾斜管内壁安全幕設置方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載した傾斜管内壁安全幕設置方法において、
前記傾斜管は、内壁に耐火物のライニングが施工されていることを特徴とする傾斜管内壁安全幕設置方法。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載した傾斜管内壁安全幕設置方法において、
前記傾斜管の傾斜角度は、水平に対して30度以上75度以下であることを特徴とする傾斜管内壁安全幕設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜管内壁安全幕設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉改修工事において、高炉の内部には、内容物や残銑、ステーブ、耐火物等があり、それらを解体し、撤去するために内部に入る際には、作業者を保護するために、炉体の内壁を覆う安全幕が設置される。
安全幕の設置にあたっては、高炉の上部開口から安全幕を吊り下げ、炉体の内壁に沿わせることが行われている(特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1では、高炉の上部開口から吊り下げられた複数のワイヤに金網を支持して安全幕を形成しており、ワイヤの中間の複数箇所を別のワイヤで炉体に引き寄せることで、金網を炉体内壁に近接した状態としている。
特許文献2では、筒状に形成された安全ネットに縦方向のワイヤを挿通して安全幕を形成し、安全ネットの上部開口を高炉の上部開口に止着し、縦方向のワイヤの中間の複数箇所を固定用ボルトで炉体に引き寄せることで、安全ネットを炉体内壁に近接した状態としている。
【0004】
高炉の上部開口から安全幕を吊り下げるのではなく、炉内に配置された環状の膨張部材にシート状またはネット状の落下防止部材を吊り下げることも行われている(特許文献3参照)。
特許文献3では、炉体の中間部分に複数の膨張部材を設置し、膨張部材を膨張させて拡径させることで、安全幕としての落下防止部材を炉体内壁に近接させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-312908号公報
【特許文献2】実開昭57-143246号公報
【特許文献3】特開2021-138988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1,2では、それぞれ安全幕の中間部の複数箇所を炉体内壁に向けて引き寄せることで、安全幕を内壁に近接させていた。このため、炉体の内外からの作業が複数箇所にわたり、作業の繁雑さが避けられなかった。
前述した特許文献3では、膨張部材の膨張により安全幕の中間部を炉体内壁に押し付けることが可能であり、特許文献1,2のような作業の煩雑さは抑制できるものの、構造的な複雑化および器材コストの上昇が避けられなかった。
さらに、前述した特許文献1~3のいずれも、垂直に延びる炉体への適用を前提としており、例えば内壁に耐火物が施工された配管、なかでも傾斜した配管への適用は難しかった。
すなわち、傾斜管の内部に安全幕を導入した場合、傾斜管の下側になる内壁に安全幕が載置された状態となり、傾斜の上側になる内壁から大きく離れ、この状態が傾斜管の全長にわたって連続することになる。特許文献1,2によれば、ワイヤや固定用ボルトで炉外側から引き寄せることで安全幕を炉体内壁に近接させるが、傾斜管の上側では炉体内壁から大きく離れており、引き寄せ作業の困難性が高くなる。その結果、傾斜管において特許文献1,2の適用は困難であった。
また、特許文献3によれば、膨張部材を有する安全幕を吊り降ろす必要があり、傾斜管への適用は困難であった。
【0007】
本発明の目的は、傾斜管の内壁に安全幕を容易に設置できる傾斜管内壁安全幕設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法は、連続した筒状の安全シートと、前記安全シートの連続方向に延びかつ前記安全シートにスライド自在に挿通された複数の保持ロープと、を準備するとともに、施工対象の傾斜管の下部に周方向に配列された複数の下側係合部と、前記傾斜管の上部に周方向に配列された複数の上側係合部と、を形成しておき、前記安全シートから引き出された前記保持ロープの下端側を前記傾斜管の内部に投入し、互いに交差しない状態で前記保持ロープを吊り下げ、前記保持ロープの下端を前記傾斜管の径方向に拡げて前記下側係合部に係合させ、前記傾斜管の内部に吊り下げられた前記保持ロープに沿って前記安全シートを前記傾斜管の内部へ導入し、前記保持ロープの上端を互いに径方向に拡げて前記上側係合部に係合させ、前記保持ロープを牽引して前記下側係合部と前記上側係合部との間の前記保持ロープを緊張させ、前記保持ロープとともに前記安全シートを前記傾斜管の径方向に拡げることを特徴とする。
【0009】
安全シートとしては、複数のシートを筒状に連結してものが利用でき、シート素材としては市販の防炎ネットなどの通気性を有する合成樹脂繊維製のネットが好ましい。傾斜管の内部への安全シートの導入を円滑にできるように、安全シートの下端部に錘を追加してもよい。
保持ロープとしては、安全シートにスライド自在に挿通可能で、一定以上の張力を負担でき、かつ可撓性を有する線状部材が利用でき、金属製のワイヤ、強化樹脂製のロープ、あるいは多数のリンクを線状に連結したチェーンなどであってもよい。傾斜管の内部への保持ロープの導入を円滑にできるように、保持ロープの下端部に錘を追加してもよい。
安全シートには筒状の連続方向に所定間隔で環状の挿通具を設置しておき、この挿通具に保持ロープを順次挿通してスライド自在とすることが好ましい。挿通具としてはリング状の金具やU字金具などが利用でき、いわゆるカラビナを利用してもよい。保持ロープは筒状の安全シートの内側を通すことが好ましく、内側を通す場合には複数の挿通具は削減ないし省略することもできる。
保持ロープの緊張にあたっては、手動または電動式のウインチを用いることができる。例えば、傾斜管の内部に吊り下げられた保持ロープの上端側を上部係合部から引き延ばしてウインチに接続することができる。
保持ロープを係合させる複数の下側係合部および複数の上側係合部としては、傾斜管の表裏を貫通するノズルから保持ロープを外部に引き出して係止する構成や、傾斜管の内壁に形成した係合部に保持ロープを係合させる構成が利用できる。傾斜管の外部に保持ロープを引き出す構成であれば、保持ロープに対する操作を傾斜管の外部から行える。傾斜管の内部で保持ロープを係合する場合でも、傾斜管の内部に作業用デッキ等を設置してその外周部に係合部を形成すれば、デッキ上で保持ロープに対する操作を行える。
【0010】
このような本発明では、複数の保持ロープを緊張させることで、安全シートが径方向に拡張され、その内部に作業用空間が形成される。複数の保持ロープは、上端および下端を傾斜管に周方向に配列された上部係合部および下部係合部の間に張られ、重力により傾斜管の底面側(傾斜管内で下側)に載置される安全シートを、保持ロープで天井側へと持ち上げることができ、傾斜管であっても内部の作業用空間を確実に形成できる。
【0011】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法において、前記安全シートおよび前記保持ロープを集約して投下パックを形成しておき、前記投下パックの状態で前記保持ロープが前記安全シートに対してスライド自在であり、かつ前記投下パックから前記保持ロープの上端側および下端側が引き出し可能としておくことが好ましい。
【0012】
安全シートおよび保持ロープを集約するとは、安全シートおよび保持ロープを併せて、または個々に、折りたたむ、束ねる、あるいは丸める、巻き取るなどにより、全体の寸法を縮小しつつ後に再び展開が容易な状態とすることをいう。集約した安全シートは袋等に収容するかベルト等で締結することで投下パックとして一括しておく。投下パックに用いる袋等としては、いわゆるフレコンバッグ(合成樹脂繊維製のフレキシブルコンテナバッグ)が好適である。安全シートの上端には紐等の止着部材を設けておくことが好ましい。
このような本発明では、安全シートおよび保持ロープを集約して投下パックとして一括しておくため、現場への搬入および現場での取り扱いを容易にできる。
【0013】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法において、前記安全シートは、前記保持ロープと交差方向の折り目で交互に折りたたんでおくことが好ましい。
このような本発明では、安全シートが折りたたまれた状態でその一端側から引き出すことで、安全シートが伸長した状態へと容易に展開できる。このため、安全シートを傾斜管内へ導入する際には、先に吊り下げておいた保持ロープに沿って落下させることで、安全シートが自動的に展開し、所期の導入状態とすることができる。
【0014】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法において、前記保持ロープを吊り下げる前に、前記傾斜管の下側となる内壁に沿って表面が平滑な底面シートを設置しておくことが好ましい。
このような本発明では、傾斜管内に安全シートを導入する際に、底面シートの平滑な表面で安全シートを滑らせて降下させることができ、作業を円滑に行うことができる。
【0015】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法において、前記保持ロープを吊り下げる前に、前記傾斜管の上部に水平な作業用デッキを設置することが好ましい。
このような本発明では、保持ロープの吊り下げ、安全シートの導入、保持ロープの緊張などを安定した上部作業用デッキ上で実施できる。
なお、上部作業用デッキとは別に、傾斜管の下部に水平な作業用デッキを設置してもよく、安全シートの内側に作業用空間が形成されたのち、下部作業用デッキから安全シート内へ延びる短管足場や階段状足場あるいは作業用梯子を設置することもできる。
【0016】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法において、前記保持ロープは4本以上であることが好ましい。
このような本発明では、保持ロープを緊張させることで、4本以上の保持ロープが傾斜管の径方向に拡がり、安全シートの内部に断面が矩形(4角形)ないしそれ以上の多角形の空間が形成され、これを作業用空間として利用できる。
ここで、保持ロープの数を増やすことで、筒状の安全シートを多角形化して安全シートを傾斜管の内壁に近づけることができるが、設置の手間も増えることになる。従って、安全シートにおける保持ロープの間隔としては、2m程度が好ましい。
【0017】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法において、前記傾斜管は、内壁に耐火物のライニングが施工されていることが好ましい。
傾斜管の内壁として耐火物のライニングが施工される場合がある。このような場合、傾斜管内での作業中にライニングが脱落する可能性があり、このような状況に対して本発明の安全幕が有効である。
【0018】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法において、前記傾斜管の傾斜角度は、水平に対して30度以上75度以下であることが好ましい。
本発明では、傾斜角度(傾斜管の中心軸線の角度)が水平に対して30度未満の傾斜管では重力を利用した保持ロープおよび安全シートの導入が十分でなく、また、傾斜角度が水平に対して75度を超える傾斜管では軸線が垂直な従来方法でも安全膜の設置が可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法によれば、傾斜管の内壁に安全幕を容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態が適用される傾斜管を示す側面図。
図2】前記実施形態の安全幕が設置された傾斜管を示す断面図。
図3】前記実施形態の安全幕を示す斜視図。
図4】前記実施形態の安全シートを示す斜視図。
図5】前記実施形態の保持ロープを示す斜視図。
図6】前記実施形態の安全シートの折りたたみ状態を示す模式図。
図7】前記実施形態の投下パックを示す模式図。
図8】前記実施形態の上部作業用デッキを示す平面図。
図9】前記実施形態の下部作業用デッキを示す平面図。
図10】前記実施形態の作業工程を示すフローチャート。
図11】前記実施形態の底面シート設置作業を示す模式図。
図12】前記実施形態の保持ロープ設置作業を示す模式図。
図13】前記実施形態の保持ロープ下端の止着作業を示す模式図。
図14】前記実施形態の安全シートの引き出し作業を示す模式図。
図15】前記実施形態の安全シートの伸長状態を示す模式図。
図16】前記実施形態の安全シートの拡張作業を示す模式図。
図17】前記実施形態の安全シートの伸長状態を示す断面図。
図18】前記実施形態の安全シートの拡張状態を示す断面図。
図19】本発明の変形例の安全シートの拡張状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、高炉の炉頂ガス抜きダクト(アップテイク)の傾斜管に本発明の傾斜管内壁安全幕設置方法を適用した例である。
図1において、高炉1の炉頂部2には、装入装置3および炉頂ガス抜きダクト4が接続されている。炉頂ガス抜きダクト4は、炉頂部2から引き出され、装入装置3に沿って上方へ導かれ、装入装置3の上方で合流され、地上の炉頂ガス処理装置(図示省略)へと導かれている。
【0022】
炉頂ガス抜きダクト4のうち、装入装置3に沿った部分および合流部より上の部分は垂直な配管であるが、各々の間には管路の軸線が傾斜した傾斜管10が用いられている。
傾斜管10の中心軸線の傾斜角度は、水平面に対して30度以上75度以下が好ましく、本実施形態では約60度とされている。
【0023】
炉頂ガス抜きダクト4には、炉頂部2からの高温の炉頂ガスが通されるため、管路の内壁には耐火物のライニングが施工されている。
高炉改修工事においては、これら耐火物の損傷状況を確認し、損傷部の補修が必要である。これら確認作業を行うには、管路の内部に人が入って、下方から足場を仮設していく必要があるが、耐火物の脱落の危険性から、管炉内に安全幕の設置が望まれていた。しかし、炉頂ガス抜きダクト4には、途中に傾斜管10があり、従来は傾斜管10に安全幕を設置できていなかった。本実施形態では、本発明に基づく傾斜管内壁安全幕設置方法により傾斜管10に安全幕が設置される。
【0024】
図2には、傾斜管10の内部に安全幕20を設置した状態が示されている。
安全幕20の設置作業を行うために、傾斜管10の上部には水平な上部作業用デッキ11が設置され、傾斜管10の下部には水平な下部作業用デッキ12が設置される。傾斜管10の下部には、下部作業用デッキ12の上面に沿った周方向の4箇所に、それぞれ筒状のノズル13が形成される。上部作業用デッキ11の外周部には、周方向の4箇所に上側係合部14が形成される。ノズル13の傾斜管10内側の開口により、下側係合部15が形成される。
上部作業用デッキ11、下部作業用デッキ12、およびノズル13の具体的構成については、後ほど図8および図9を参照して詳述する。
傾斜管10の底面側には、安全幕20の設置に先立って底面シート16が敷かれる。底面シート16は、表面が平滑なシート素材で形成され、安全幕20の設置の際の滑走性能を高めることができる。
【0025】
安全幕20は、傾斜管10の軸線に沿って、傾斜管10の内部の上部作業用デッキ11からノズル13まで傾斜管10の範囲に設置される。
安全幕20は、連続した筒状の安全シート21に、安全シート21の連続方向に延びかつ安全シート21にスライド自在に挿通された4本の保持ロープ22を装着したものである。4本の保持ロープ22は、それぞれ上側係合部14と下側係合部15との間に張り渡され、所定の張力を付与されることで傾斜管10の径方向に拡がり、傾斜管10の内壁に近接した状態に保持される。安全シート21は、4本の保持ロープ22が所定の張力で張られることで、4本の保持ロープ22を頂点とする断面矩形の筒状に形成される。
安全幕20の具体的構成については、後ほど図3から図7の各図を用いて詳述する。
【0026】
張力を付与された安全シート21および4本の保持ロープ22により、傾斜管10の内部に安全幕20が形成され、その内部には矩形断面の作業用空間17が形成される。作業用空間17においては、傾斜管10の内壁からの落下物などが安全幕20で遮断される。従って、安全幕20により作業用空間17で作業する作業者の安全が確保される。
作業用空間17には、必要に応じて下部作業用デッキ12から傾斜管10の下面側に沿って上方へ延びる作業用梯子18が設置される。
【0027】
図3には、安全幕20の具体的構成が示されている。
前述した通り、安全幕20は、連続した筒状の安全シート21と、安全シート21の連続方向に延びかつ安全シート21にスライド自在に挿通された4本の保持ロープ22と、を有する。
【0028】
図4に示すように、筒状の安全シート21は、複数のシート211を連結具212で連結して所定の広さとしたうえ、筒状に丸めたものが利用できる。なお、シート211の長さが設置する部位の長さに対して、十分な長さを有していれば、連結具212は、不要である。シート211の素材としては市販の防炎ネットなどの通気性を有する合成樹脂繊維製のネットが利用できる。
シート211を丸める前に、シート211の内側に保持ロープ22の挿通具213を装着しておく。挿通具213としては、リング状の金具やU字金具などが利用でき、いわゆるカラビナを利用してもよい。
筒状の安全シート21の上端には、設置時に安全シート21の上端を止着するための紐状の止着具214が接続されている。
【0029】
図5に示すように、筒状の安全シート21には4本の保持ロープ22が挿通される。
保持ロープ22としては、一定以上の張力を負担でき、かつ可撓性を有する線状部材が利用でき、金属製のワイヤ、強化樹脂製のロープ、あるいは多数のリンクを線状に連結したチェーンなどであってもよい。
保持ロープ22は、筒状の安全シート21の一端側の開口から内側へ通され、安全シート21に装着されている挿通具213に順次挿通され、安全シート21の他端側の開口から引き出されることで安全シート21に装着される。
以上により、図3に示したように、保持ロープ22は筒状の安全シート21の連続方向に沿って設置され、かつ安全シート21に対してその連続方向にスライド自在とされる。
【0030】
図6に示すように、安全幕20は、安全シート21および保持ロープ22を集約したうえ、図7に示すように、袋231に格納して投下パック23を形成しておく。
安全シート21は、保持ロープ22と交差方向の折り目で交互に折りたたんでおく。保持ロープ22は、折りたたんだ安全シート21の上端側または下端側で巻きとっておく。折りたたんだ安全シート21および巻きとった保持ロープ22は、袋231に格納しておく。投下パック23に用いる袋231としては、いわゆるフレコンバッグ(合成樹脂繊維製のフレキシブルコンテナバッグ)が用いられる。
投下パック23においては、保持ロープ22が折りたたまれた安全シート21に対してスライド自在であり、かつ投下パック23から保持ロープ22の上端側および下端側が引き出し可能としておく。また、安全シート21の上端に接続された止着具214は投下パック23から外部に引き出しておく。
【0031】
図8には、上部作業用デッキ11の具体的構成が示されている。
上部作業用デッキ11は、傾斜した傾斜管10の水平断面形状に対応する楕円形の外周形状を有する鋼製の板材110で構成される。上部作業用デッキ11の中央部には矩形の開口部111が形成され、開口部111の四辺の中央から径方向外向きにスリット112が形成されている。スリット112の径方向外側端の内側辺縁により上側係合部14が形成される。上側係合部14の近傍にはローラ113が設置されている。隣接する他のスリット112の上側係合部14の近傍には手動式または電動式のウインチ114が設置されている。
【0032】
これらのスリット112、ローラ113、ウインチ114は、安全幕20に設置される4本の保持ロープ22に対応して4系統とされている。
保持ロープ22は、各々の上端を対応するウインチ114に接続された状態で、開口部111から上部作業用デッキ11の下方へ吊り下げることができる。吊り下げられた保持ロープ22の途中部分を開口部111からスリット112内へと挿入し、上側係合部14まで引き寄せたうえでローラ113に巻き付けることで、保持ロープ22は上側係合部14に摺動自在に係合した状態とされる。
【0033】
図9には、下部作業用デッキ12の具体的構成が示されている。
下部作業用デッキ12は、傾斜した傾斜管10の水平断面形状に対応する楕円形の外周形状を有する鋼製の板材120で構成される。
前述した通り、傾斜管10の下部には、下部作業用デッキ12の上面に沿った周方向の4箇所に、それぞれ筒状のノズル13が形成されており、その傾斜管10内側の開口により下側係合部15が形成されている。
上部作業用デッキ11の下方へ吊り下げられた保持ロープ22は、各々の下端を下側係合部15からノズル13に導入され、傾斜管10の外側でノズル13の端部などに固定される。これにより、保持ロープ22の下端部は、下側係合部15に係合した状態で止着される。
【0034】
以上、本実施形態における傾斜管10および安全幕20の構成について説明した。次に、本実施形態で傾斜管10の内部に安全幕20を設置する作業における具体的な手順について説明する。
【0035】
図10において、本実施形態では、傾斜管10の内部に安全幕20を設置ために、準備工程S1、保持ロープ設置工程S2、安全シート設置工程S3を順次実行する。
準備工程S1では、上部作業用デッキ11、下部作業用デッキ12、ノズル13を設置し(作業S11)、上部作業用デッキ11上に投下パック23を搬入し、底面シート16を設置しておく(作業S12)。
保持ロープ設置工程S2では、保持ロープ22の上端をウインチ114に接続し(作業S21)、保持ロープ22の下部を引き出して開口部111から投下し(作業S22)、下部作業用デッキ12に達した保持ロープ22の下端をノズル13に止着するとともに、保持ロープ22の下端近傍を下側係合部15に係合させる(作業S23)。
【0036】
安全シート設置工程S3では、安全シート21の上端を上部作業用デッキ11に止着し(作業S31)、投下パック23を開口部111から投下することによって、安全シート21は、投下パック23の上方から順次引き出されるようにし(作業S32)、保持ロープ22を上側係合部14に係合させたうえ、ウインチ114で牽引する(作業S33)。
保持ロープ22の牽引に伴って、緊張した保持ロープ22で安全シート21の四隅を拡張させ、内部に断面矩形の作業用空間17を形成する(作業S34)。作業用空間17が得られたら、内部に作業用梯子18を設置する(作業S35)。
【0037】
図11から図16の各図により、前述した作業S11~S35の具体的な作業状況について説明する。
図11において、作業S11では、作業員が傾斜管10の外部において、デッキ等の設置に必要な資材を準備する。そして、傾斜管10の上部の開口部101より管内に上部作業用デッキ11を設置し、傾斜管10の下部の開口部102より管内に下部作業用デッキ12を設置する。これら作業用デッキの設置方法は、例えば設置する傾斜管10の下端に少なくとも4ケ所の貫通可能な配置に開口を設け、その開口から鋼材等を挿入し、貫通させ、開口部101、102から手前より順次足場板を布設していくことで設置できる。併せて傾斜管10の外部からノズル13を設置しておく。
作業S12では、上部作業用デッキ11に投下パック23など安全幕20となる資材を搬入するとともに、傾斜管10の底面側に底面シート16を敷いておく。底面シート16は、ロールに巻かれたシートを上部作業用デッキ11から投下することで、傾斜管10の底面側に沿って拡げることができる。
【0038】
作業S21では、上部作業用デッキ11で投下パック23から保持ロープ22の上部を引き出し、上端を対応するウインチ114(図8参照)に接続しておく。
作業S22では、投下パック23から保持ロープ22の下部を引き出し、開口部111から下方へ投下する。
図12に示すように、投下された保持ロープ22は、重力により傾斜管10の底面側に偏るが、当該側には表面が平滑な底面シート16が敷かれているので、下部作業用デッキ12まで滑らかに落下する。
【0039】
作業S23では、保持ロープ22の下端が下部作業用デッキ12に達したのち、保持ロープ22の下端をノズル13に止着する。
図13に示すように、作業者が傾斜管10の外部からノズル13を通して保持ロープ22の下端を引き寄せ、ノズル13の外部で保持ロープ22の下端を固定する。
作業S31では、安全シート21の上端を上部作業用デッキ11に止着するために、投下パック23から止着具214を引き出し、それぞれ上部作業用デッキ11の突起や孔などに結束しておく。
【0040】
作業S32では、投下パック23を開口部111から投下し、上端が止着された安全シート21を投下パック23の上側から引き出してゆく。
図14に示すように、投下パック23は、開口部111から投下されたのち、保持ロープ22に沿って底面シート16の表面を滑落してゆく。保持ロープ22は、投下パック23に収容された安全シート21に対してスライド自在であるため、投下パック23の落下を妨げない。
投下パック23に収容されている安全シート21は、上端が上部作業用デッキ11に止着されているため、投下パック23の滑落に伴って、折りたたまれた安全シート21の上端側が投下パック23から引き出され、上部作業用デッキ11と投下パック23との間に展開されてゆく。
【0041】
図15に示すように、投下パック23が傾斜管10の下端まで落下すると、折りたたまれていた安全シート21は完全に展開され、1本の筒状とされる。筒状の安全シート21の内側には保持ロープ22が挿通されている。この状態では、筒状の安全シート21もその内側の保持ロープ22も、開口部111の大きさ程度の細く束になった状態である。
【0042】
作業S33では、開口部111から傾斜管10内へ吊り降ろされている4本の保持ロープ22を、それぞれ対応するスリット112(図8参照)へと導入し、端部の上側係合部14に係合させたうえ、ウインチ114で牽引してゆく。
作業S34では、保持ロープ22の牽引により、緊張した保持ロープ22で安全シート21の四隅を拡張させ、内部に断面矩形の作業用空間17を形成する。
図16に示すように、保持ロープ22の上部および下部は、それぞれ上側係合部14および下側係合部15により傾斜管10の内壁近傍に維持されている。このため、保持ロープ22は緊張により上側係合部14と下側係合部15との間で直線状に張られ、安全シート21は上部から下部まで全長にわたって四隅を拡張され、断面矩形の筒状とされる。
【0043】
図17において、保持ロープ22を緊張させる前は、安全シート21および保持ロープ22は細くまとまった状態で底面シート16上に載置される。保持ロープ22は、中間部が安全シート21に挿通されて底面シート16側に偏っているが、上下端はそれぞれ上側係合部14および下側係合部15へ引き出されている。
【0044】
図18において、保持ロープ22を緊張させることで、保持ロープ22は、各々が係合されている上側係合部14および下側係合部15つまり傾斜管10の内壁に向けて引き寄せられる。
保持ロープ22のうち、傾斜管10の底面側にある上側係合部14および下側係合部15に係合された一対は、互いに側方へ移動して安全シート21の底面側を幅方向に拡張させる。
保持ロープ22のうち、傾斜管10の天井側にある上側係合部14および下側係合部15に係合された一対は、互いに側方へ移動しつつ上方へ引き上げられ、安全シート21の天井側を幅方向に拡張させるとともに傾斜管10の天井側へと引き上げる。
その結果、安全シート21は、4本の保持ロープ22でそれぞれ四隅を傾斜管10の径方向に拡張され、保持ロープ22が十分張られた状態では四隅を傾斜管10の内壁に近接した位置に保持され、これにより断面矩形の作業用空間17を有する安全幕20が傾斜管10内に設置される。
【0045】
作業S35では、傾斜管10内に設置された断面矩形の安全幕20の内部に、作業用梯子18を設置する。作業用梯子18には、下部作業用デッキ12から作業者が登って傾斜管10内での作業を行うことができる。
なお、安全幕20の内部には、作業用梯子18に代えて、もしくは作業用梯子18に加えて、短管を縦横に組んで短管足場を形成してもよく、点検や補修時の作業性を向上できる。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態では、連続した筒状の安全シート21と、安全シート21の連続方向に延びかつ安全シート21にスライド自在に挿通された複数の保持ロープ22と、を準備するとともに、施工対象の傾斜管10の下部に周方向に配列された複数の下側係合部15と、傾斜管10の上部に周方向に配列された複数の上側係合部14と、を形成しておき、安全シート21から引き出された保持ロープ22の下端側を傾斜管10内に投入し、互いに交差しない状態で保持ロープ22を吊り下げ、保持ロープ22の下端を傾斜管10の径方向に拡げて下側係合部15に係合させ、傾斜管10内に吊り下げられた保持ロープ22に沿って安全シート21を傾斜管10内へ導入し、保持ロープ22の上端を互いに径方向に拡げて上側係合部14に係合させ、保持ロープ22を牽引して下側係合部15と上側係合部14との間の保持ロープ22を緊張させ、保持ロープ22とともに安全シート21を傾斜管10の径方向に拡げるようにして安全幕20を設置した。
つまり、複数の保持ロープ22を緊張させることで、安全シート21が径方向に拡張され、その内部に作業用空間17が形成できる。
この際、複数の保持ロープ22は、上端および下端を傾斜管10に周方向に配列された上側係合部14および下側係合部15の間に張られ、重力により傾斜管10の底面側(傾斜管10内で下側)に載置される安全シート21を、保持ロープ22で天井側へと持ち上げることができ、軸線が傾斜した傾斜管10であってもその内部に作業用空間17を形成するための安全幕20を確実に設置できる。
【0047】
本実施形態では、安全シート21および保持ロープ22を集約して投下パック23を形成しておき、投下パック23の状態で保持ロープ22が安全シート21に対してスライド自在であり、かつ投下パック23から保持ロープ22の上端側および下端側が引き出し可能としておいた。
このため、安全シート21および保持ロープ22を集約して投下パック23として一括しておくことができ、現場への搬入および現場での取り扱いを容易にできる。
【0048】
本実施形態では、安全シート21を、保持ロープ22と交差方向の折り目で交互に折りたたんでおくようにした。
このため、折りたたまれた状態の安全シート21からその一端側を引き出すことで、安全シート21が伸長した状態へと容易に展開できる。このため、安全シート21を傾斜管10内へ導入する際には、先に吊り下げておいた保持ロープ22に沿って落下させることで、安全シート21が自動的に展開し、安全幕20としての所期の導入状態とすることができる。
【0049】
本実施形態では、保持ロープ22を吊り下げる前に、傾斜管10の下側となる内壁に沿って表面が平滑な底面シート16を設置しておいた。
このため、傾斜管10内に安全シート21を導入する際に、底面シート16の表面で安全シート21(集約した投下パック23)を滑らせて降下させることができ、作業を円滑に行うことができる。
【0050】
本実施形態では、保持ロープ22を吊り下げる前に、傾斜管10に水平な上部作業用デッキ11および下部作業用デッキ12を設置した。
このため、保持ロープ22の吊り下げ、安全シート21の導入、保持ロープ22の緊張などを安定した上部作業用デッキ11上で実施できる。また、安全シート21の内側に作業用空間17が形成されたのち、下部作業用デッキ12から安全シート21内へ延びる階段状足場あるいは作業用梯子18を設置することができる。
【0051】
本実施形態では、保持ロープ22は4本とした。
このため、4本の保持ロープ22を緊張させることで、4本の保持ロープ22が傾斜管10の径方向に拡がり、安全シート21の内部に断面矩形の作業用空間17を形成することができる。
ここで、保持ロープ22の数を増やすことで、筒状の安全シート21を多角形化して傾斜管10の内壁に近づけることができるが、本数が増えた分設置の手間も増えることになる。従って、安全シート21における保持ロープ22の間隔が約2mごとに設置するのが妥当である。
【0052】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、筒状の安全シート21の内側に4本の保持ロープ22を配置したが、保持ロープ22は安全シート21の外側に配置してもよい。
【0053】
前記実施形態では、図18に示したように、保持ロープ22は筒状の安全シート21の内側において挿通具213に順次挿通されており、保持ロープ22を緊張させた際に安全シート21の四隅が径方向に拡げられ、これにより安全シート21が断面矩形に拡張されていた。
図19に示す他の実施形態では、筒状の安全シート21およびこれに装着されたカラビナなどの挿通具213は前述した実施形態と同様であるが、保持ロープ22は安全シート21の外側において挿通具213に順次挿通されている。
このような実施形態においても、保持ロープ22を緊張させることで、挿通具213を介して引き寄せられることで安全シート21の四隅が径方向に拡げられ、これにより安全シート21を断面矩形に拡張することができる。
【0054】
前記実施形態では、予め安全シート21と保持ロープ22を集約して投下パック23としてまとめておき、これを投下することで安全シート21を伸長させたが、投下パック23を用いずに安全シート21を配置してもよい。
例えば、伸長状態の安全シート21を上部作業用デッキ11の開口部111から下方へ徐々に送り込み、先に吊り下げておいた保持ロープ22に沿って下降させてゆくことで、上側係合部14と下側係合部15との間に筒状の安全シート21を配置してもよい。
また、下部作業用デッキ12に搬入した安全シート21の上端を、上部作業用デッキ11から他のロープなどで吊り上げることで、保持ロープ22に沿って安全シート21を徐々に伸長させてもよい。
傾斜管10の内部への安全シート21あるいは保持ロープ22の導入を円滑にできるように、安全シート21あるいは保持ロープ22の下端部に錘を追加してもよい。
【0055】
前記実施形態では、安全シート21を集約する際に、保持ロープ22と交差方向の折り目で交互に折りたたんでおくとしたが、他の方向、例えば保持ロープ22に対して斜めの折り目で折りたたんでもよく、あるいは安全シート21を巻きとっておいてもよい。安全シート21を巻きとる場合、例えば安全シート21の上端を中心にロール状とすることで、上端側からの引き出しを容易に行うことができる。
【0056】
前記実施形態では、保持ロープ22を吊り下げる前に、傾斜管10の下側となる内壁に沿って表面が平滑な底面シート16を設置しておいたが、設置にあたっては長尺の底面シート16をロールに巻いておき上部作業用デッキ11から投下するほか、所定長さの底面シート16を継ぎ合わせて降下させてもよく、あるいは底面シート16は省略してもよい。
【0057】
前記実施形態では、傾斜管10内に上部作業用デッキ11および下部作業用デッキ12を設置したが、安全シート21および保持ロープ22の吊り下げは主に上部作業用デッキ11で行うので、その後作業用梯子18を設置する際に不要であれば下部作業用デッキ12は省略してもよい。一方、安全シート21および保持ロープ22の吊り下げは、上側の開口部101から投入することもできるため、上部作業用デッキ11も省略可能である。ただし、作業性を考慮すると、傾斜管10内に上部作業用デッキ11を設置することが好ましい。
【0058】
前記実施形態では、上側係合部14として上部作業用デッキ11に形成されたスリット112の端部を用いたが、スリット112に代えて上部作業用デッキ11の外周近傍に上下連通する貫通孔を形成してもよく、上部作業用デッキ11の下面に保持ロープ22を挿通可能なフックなどを設置してもよい。さらに、傾斜管10の上部に内外連通する貫通孔を形成して上側係合部14としてもよく、この貫通孔にノズル13を接続してもよく、要するに保持ロープ22が傾斜管10の内壁近傍に保持されるように係合できればよい。
【0059】
前記実施形態では、下側係合部15として傾斜管10に形成されたノズル13の端部を用いたが、ノズル13に代えて傾斜管10に形成された内外連通する貫通孔を形成してもよい。さらに、下部作業用デッキ12の外周近傍に上下連通する貫通孔を形成してもよく、下部作業用デッキ12の上面に保持ロープ22を挿通可能なフックなどを設置してもよく、要するに保持ロープ22が傾斜管10の内壁近傍に保持されるように係合できればよい。
【0060】
前記実施形態では、上部作業用デッキ11に設置したウインチ114を用いて保持ロープ22の上端を牽引したが、下部作業用デッキ12にウインチ114を設置して保持ロープ22の下端を牽引してもよい。
さらに、傾斜管10の内部に設置したウインチ114に限らず、傾斜管10を内外連通する貫通孔やノズル13から保持ロープ22の下端あるいは上端を傾斜管10の外部へ引き出し、引き出された保持ロープ22を傾斜管10の外部に設置されたウインチで牽引してもよい。この場合、傾斜管10の外部に引き出された保持ロープ22はどの方向に牽引しても、傾斜管10の内部の保持ロープ22は上側係合部14または下側係合部15に向けて牽引されることになる。従って、外部のウインチの設置位置については制約がなく、1台のウインチで4本の保持ロープ22を牽引することもできる。
【0061】
前記実施形態では、保持ロープ22を4本としたが、5本以上であってもよい。
前記実施形態では、内壁に耐火物のライニングが施工されている傾斜管10に安全幕20を設置したが、耐火物のライニングをもたない他の傾斜管に適用してもよい。傾斜管10としては、高炉1の炉頂ガス抜きダクト4(アップテイク)の傾斜管10に限らず、他の部位の傾斜管に適用してもよい。
前記実施形態では、傾斜管10の軸線の傾きは水平面に対して約60度としたが、30度以上75度以下であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は傾斜管内壁安全幕設置方法に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1…高炉、2…炉頂部、3…装入装置、4…炉頂ガス抜きダクト、10…傾斜管、101,102…開口部、11…上部作業用デッキ、110…板材、111…開口部、112…スリット、113…ローラ、114…ウインチ、12…下部作業用デッキ、120…板材、13…ノズル、14…上側係合部、15…下側係合部、16…底面シート、17…作業用空間、18…作業用梯子、20…安全幕、21…安全シート、211…シート、212…連結具、213…挿通具、214…止着具、22…保持ロープ、23…投下パック、231…袋、S1…準備工程、S2…保持ロープ設置工程、S3…安全シート設置工程、S11~S35…作業。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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