(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126039
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/26 20060101AFI20240912BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240912BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L21/26 T
H01L21/02 Z
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034160
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 智宏
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
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5F131KA14
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5F131KB54
5F131KB55
(57)【要約】
【課題】基板の搬送を迅速に調整することができる熱処理装置および熱処理方法を提供する。
【解決手段】処理チャンバー内にてハロゲンランプからの光照射によって半導体ウェハーに予備加熱を行ってからフラッシュランプからのフラッシュ光照射による加熱処理を行う。処理チャンバーにおける半導体ウェハーに対する加熱処理が終了する時刻t6よりも一定時間tpだけ前の時刻t5に制御部が計画部に事前予告信号を発信する。計画部は、事前予告信号を受信した時点で搬送ロボットが行っている搬送動作の次工程が処理チャンバーからの半導体ウェハーの搬出となるように搬送の再計画を実行する。半導体ウェハーの加熱処理の都度、計画部が搬送の再計画を実行することになるため、半導体ウェハーの搬送を自動で迅速に調整することが可能となる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容する処理チャンバーと、
前記処理チャンバーに収容された基板に光を照射するランプと、
前記処理チャンバーにおける加熱処理の前後の処理を行う複数の付随処理部と、
前記処理チャンバーおよび前記複数の付随処理部に対して基板の搬送を行う搬送ロボットと、
前記熱処理装置に設けられた機構を制御する制御部と、
予め登録された前記処理チャンバーおよび前記複数の付随処理部における処理時間に基づいて搬送計画を作成する計画部と、
前記計画部によって作成された前記搬送計画に従って基板の搬送および処理を実行するように前記制御部に対して指示を行う実行指示部と、
を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記制御部は、前記処理チャンバーにおける加熱処理が終了する時刻よりも一定時間前に前記計画部に予告信号を発信し、
前記計画部は、前記制御部から前記予告信号を受信したときに、前記処理チャンバーにおける加熱処理が終了した時点で前記搬送ロボットが前記処理チャンバーから基板を搬出できるように搬送の再計画を実行することを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記計画部は、前記予告信号を受信した時点で前記搬送ロボットが行っている搬送動作の次に前記処理チャンバーからの基板搬出となるように再計画を実行することを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の熱処理装置において、
前記一定時間は、前記搬送ロボットの旋回動作に要する時間と前記搬送ロボットが前記複数の付随処理部に基板を搬入出するのに要する時間とを加算した値であることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記計画部は、前記搬送ロボットによる加熱処理前の基板の搬送と加熱処理後の基板の搬送とが競合したときには、加熱処理前の基板の搬送を優先して搬送計画を作成することを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記複数の付随処理部は、冷却部、傷検知部および膜厚測定部を含むことを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
処理チャンバーに収容された基板にランプから光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法であって、
制御部の制御下にて、前記処理チャンバーおよび前記処理チャンバーにおける加熱処理の前後の処理を行う複数の付随処理部に対して搬送ロボットが基板を搬送する搬送工程と、
予め登録された前記処理チャンバーおよび前記複数の付随処理部における処理時間に基づいて計画部が搬送計画を作成する計画作成工程と、
前記計画作成工程にて作成された前記搬送計画に従って基板の搬送および処理を実行するように前記制御部に対して指示を行う実行指示工程と、
を備えることを特徴とする熱処理方法。
【請求項8】
請求項7記載の熱処理方法において、
前記制御部は、前記処理チャンバーにおける加熱処理が終了する時刻よりも一定時間前に前記計画部に予告信号を発信し、
前記計画部は、前記制御部から前記予告信号を受信したときに、前記処理チャンバーにおける加熱処理が終了した時点で前記搬送ロボットが前記処理チャンバーから基板を搬出できるように搬送の再計画を実行することを特徴とする熱処理方法。
【請求項9】
請求項8記載の熱処理方法において、
前記計画部は、前記予告信号を受信した時点で前記搬送ロボットが行っている搬送動作の次に前記処理チャンバーからの基板搬出となるように再計画を実行することを特徴とする熱処理方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9記載の熱処理方法において、
前記一定時間は、前記搬送ロボットの旋回動作に要する時間と前記搬送ロボットが前記複数の付随処理部に基板を搬出入するのに要する時間とを加算した値であることを特徴とする熱処理方法。
【請求項11】
請求項7記載の熱処理方法において、
前記計画作成工程では、前記搬送ロボットによる加熱処理前の基板の搬送と加熱処理後の基板の搬送とが競合したときには、加熱処理前の基板の搬送を優先して搬送計画を作成することを特徴とする熱処理方法。
【請求項12】
請求項7記載の熱処理方法において、
前記複数の付随処理部は、冷却部、傷検知部および膜厚測定部を含むことを特徴とする熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理チャンバーに収容された基板にランプから光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置および熱処理方法に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体ウェハー、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
特許文献1には、処理チャンバー内に収容した半導体ウェハーにハロゲンランプから光照射を行って予備加熱した後に、当該半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射する熱処理装置が開示されている。また、特許文献1には、先行する加熱処理済みの半導体ウェハーを搬送ロボットの一方のハンドによって処理チャンバーから取り出すとともに、もう一方のハンドで未処理の半導体ウェハーを処理チャンバー内に搬入してウェハー交換を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱処理装置においては、処理チャンバーの温度状態を均一に保つために、ウェハー交換を行って絶えず処理チャンバー内に半導体ウェハーが存在している状況を実現することが望まれる。ウェハー交換を確実に行うためには、先行する半導体ウェハーの処理が終了した時点で搬送ロボットが後続の半導体ウェハーを保持して処理チャンバー前で待機している必要がある。このため、従来は、一連の半導体ウェハーの処理フローにおいて、処理チャンバーでの処理が律速段階となるようにレシピの処理時間を人手で調整していた。すなわち、キャリアから取り出された半導体ウェハーが処理チャンバーに搬送されるまでに要する時間よりも処理チャンバーでの処理時間が長くなるように調整されていた。具体的には、例えば、加熱処理前のアライメント処理の時間を短くしたり、処理チャンバー内におけるフラッシュ光照射後の待機時間を長くしたりしていた。これにより、ウェハー交換を確実に行うことができ、その結果チャンバー内には常に半導体ウェハーが存在することとなって、チャンバー内温度を安定化することが可能となる。
【0008】
しかし、人手による調整は、加熱処理を含む各種処理の実測の処理時間を基にして行っていたところ、環境によって処理時間が安定しないこともあり、長時間を要することになっていた。このため、半導体ウェハーの搬送を自動で迅速に調整することが求められている。
【0009】
また、レシピで処理時間を調整したとしても、処理チャンバーにおける実際の加熱処理に要する時間は変動することがあった。これは、半導体ウェハーの予備加熱には放射温度計の測定値に基づいてハロゲンランプのフィードバック制御を行っているのであるが、処理チャンバーの状態に起因した外乱光によって放射温度計の測定が影響を受けると、正確な温調制御が行えなくなることによるものである。処理チャンバーにおける加熱処理の時間が短くなった場合には、処理チャンバーでの先行する半導体ウェハーの処理が終了した時点で後続の半導体ウェハーの搬入が可能となっていないことがあり、ウェハー交換が行えないケースが生じる。
【0010】
ウェハー交換が行えないと、先行する半導体ウェハーが加熱処理終了後も高温の処理チャンバー内にて必要以上に長時間待機することとなり、その半導体ウェハーの処理結果に影響を与えるおそれがある。例えば、半導体ウェハーに必要以上の熱量が与えられた結果、半導体ウェハーに注入された不純物が必要以上に深く拡散するおそれがある。
【0011】
また、ウェハー交換を行うことなく、先行する半導体ウェハーの処理チャンバーからの搬出のみを行った場合には、処理チャンバー内に半導体ウェハーが存在しない時間帯が生じる。処理チャンバー内に半導体ウェハーが存在しないときには、ハロゲンランプおよびフラッシュランプによる加熱も行われないため、半導体ウェハーが存在しない時間が長くなるほど、処理チャンバーの温度は低下する。そうすると、ロットの構成する複数の半導体ウェハーのそれぞれごとに処理チャンバーの温度が異なることとなり、それら複数の半導体ウェハー間での処理結果が不均一になるという問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板の搬送を迅速に調整することができる熱処理装置および熱処理方法を提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、本発明は、加熱処理後の基板を処理チャンバー内に待機させることなく搬出することができる熱処理技術を提供することを第2の目的とする。
【0014】
また、本発明は、処理チャンバーにおける基板交換を確実に行うことができる熱処理技術を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記第1の目的を達成するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容する処理チャンバーと、前記処理チャンバーに収容された基板に光を照射するランプと、前記処理チャンバーにおける加熱処理の前後の処理を行う複数の付随処理部と、前記処理チャンバーおよび前記複数の付随処理部に対して基板の搬送を行う搬送ロボットと、前記熱処理装置に設けられた機構を制御する制御部と、予め登録された前記処理チャンバーおよび前記複数の付随処理部における処理時間に基づいて搬送計画を作成する計画部と、前記計画部によって作成された前記搬送計画に従って基板の搬送および処理を実行するように前記制御部に対して指示を行う実行指示部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、第2の目的を達成するため、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記制御部は、前記処理チャンバーにおける加熱処理が終了する時刻よりも一定時間前に前記計画部に予告信号を発信し、前記計画部は、前記制御部から前記予告信号を受信したときに、前記処理チャンバーにおける加熱処理が終了した時点で前記搬送ロボットが前記処理チャンバーから基板を搬出できるように搬送の再計画を実行することを特徴とする。
【0017】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記計画部は、前記予告信号を受信した時点で前記搬送ロボットが行っている搬送動作の次に前記処理チャンバーからの基板搬出となるように再計画を実行することを特徴とする。
【0018】
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る熱処理装置において、前記一定時間は、前記搬送ロボットの旋回動作に要する時間と前記搬送ロボットが前記複数の付随処理部に基板を搬入出するのに要する時間とを加算した値であることを特徴とする。
【0019】
また、第3の目的を達成するため、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記計画部は、前記搬送ロボットによる加熱処理前の基板の搬送と加熱処理後の基板の搬送とが競合したときには、加熱処理前の基板の搬送を優先して搬送計画を作成することを特徴とする。
【0020】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記複数の付随処理部は、冷却部、傷検知部および膜厚測定部を含むことを特徴とする。
【0021】
また、第1の目的を達成するため、請求項7の発明は、処理チャンバーに収容された基板にランプから光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法において、制御部の制御下にて、前記処理チャンバーおよび前記処理チャンバーにおける加熱処理の前後の処理を行う複数の付随処理部に対して搬送ロボットが基板を搬送する搬送工程と、予め登録された前記処理チャンバーおよび前記複数の付随処理部における処理時間に基づいて計画部が搬送計画を作成する計画作成工程と、前記計画作成工程にて作成された前記搬送計画に従って基板の搬送および処理を実行するように前記制御部に対して指示を行う実行指示工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
また、第2の目的を達成するため、請求項8の発明は、請求項7の発明に係る熱処理方法において、前記制御部は、前記処理チャンバーにおける加熱処理が終了する時刻よりも一定時間前に前記計画部に予告信号を発信し、前記計画部は、前記制御部から前記予告信号を受信したときに、前記処理チャンバーにおける加熱処理が終了した時点で前記搬送ロボットが前記処理チャンバーから基板を搬出できるように搬送の再計画を実行することを特徴とする。
【0023】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る熱処理方法において、前記計画部は、前記予告信号を受信した時点で前記搬送ロボットが行っている搬送動作の次に前記処理チャンバーからの基板搬出となるように再計画を実行することを特徴とする。
【0024】
また、請求項10の発明は、請求項8または請求項9の発明に係る熱処理方法において、前記一定時間は、前記搬送ロボットの旋回動作に要する時間と前記搬送ロボットが前記複数の付随処理部に基板を搬出入するのに要する時間とを加算した値であることを特徴とする。
【0025】
また、第3の目的を達成するため、請求項11の発明は、請求項7から請求項10のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記計画作成工程では、前記搬送ロボットによる加熱処理前の基板の搬送と加熱処理後の基板の搬送とが競合したときには、加熱処理前の基板の搬送を優先して搬送計画を作成することを特徴とする。
【0026】
また、請求項12の発明は、請求項7から請求項11のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記複数の付随処理部は、冷却部、傷検知部および膜厚測定部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1から請求項6の発明によれば、熱処理装置に設けられた機構を制御する制御部と、予め登録された処理チャンバーおよび複数の付随処理部における処理時間に基づいて搬送計画を作成する計画部と、計画部によって作成された搬送計画に従って基板の搬送および処理を実行するように制御部に対して指示を行う実行指示部と、を備えるため、基板の搬送を迅速に調整することができる。
【0028】
特に、請求項2の発明によれば、制御部は、処理チャンバーにおける加熱処理が終了する時刻よりも一定時間前に計画部に予告信号を発信し、計画部は、予告信号を受信したときに、処理チャンバーにおける加熱処理が終了した時点で搬送ロボットが処理チャンバーから基板を搬出できるように搬送の再計画を実行するため、加熱処理後の基板を処理チャンバー内に待機させることなく搬出することができる。
【0029】
特に、請求項5の発明によれば、計画部は、搬送ロボットによる加熱処理前の基板の搬送と加熱処理後の基板の搬送とが競合したときには、加熱処理前の基板の搬送を優先して搬送計画を作成するため、先行する基板の加熱処理が終了したときには、後続の基板が搬送ロボットに到達しており、処理チャンバーにおける基板交換を確実に行うことができる。
【0030】
請求項7から請求項12の発明によれば、予め登録された処理チャンバーおよび複数の付随処理部における処理時間に基づいて計画部が搬送計画を作成し、作成された搬送計画に従って基板の搬送および処理を実行するように制御部に対して指示を行うため、基板の搬送を迅速に調整することができる。
【0031】
特に、請求項8の発明によれば、制御部は、処理チャンバーにおける加熱処理が終了する時刻よりも一定時間前に計画部に予告信号を発信し、計画部は、制御部から予告信号を受信したときに、処理チャンバーにおける加熱処理が終了した時点で搬送ロボットが処理チャンバーから基板を搬出できるように搬送の再計画を実行するため、加熱処理後の基板を処理チャンバー内に待機させることなく搬出することができる。
【0032】
特に、請求項11の発明によれば、搬送ロボットによる加熱処理前の基板の搬送と加熱処理後の基板の搬送とが競合したときには、加熱処理前の基板の搬送を優先して搬送計画を作成するため、先行する基板の加熱処理が終了したときには、後続の基板が搬送ロボットに到達しており、処理チャンバーにおける基板交換を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る熱処理装置を示す平面図である。
【
図8】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図9】制御部、計画部および実行指示部の構成を示すブロック図である。
【
図10】第1実施形態における半導体ウェハーの搬送制御の手順を示すフローチャートである。
【
図11】熱処理部での加熱処理時における半導体ウェハーの温度変化を示す図である。
【
図12】往路の半導体ウェハーの優先搬送を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0035】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置100を示す平面図である。熱処理装置100は基板として円板形状の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、
図1および
図2には、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を付している。
【0036】
熱処理装置100は、未処理の半導体ウェハーWを外部から装置内に搬入するとともに処理済みの半導体ウェハーWを装置外に搬出するためのインデクサ部110、未処理の半導体ウェハーWの位置決めを行うアライメント部230、半導体ウェハーWの反りを計測する反り計測部290、加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却処理を行う2つの冷却部130,140、半導体ウェハーWの裏面における傷の有無を検知する傷検知部300、半導体ウェハーWに形成された薄膜の膜厚を測定する膜厚測定部400、および、半導体ウェハーWにフラッシュ加熱処理を施す熱処理部160を備える。また、熱処理装置100は、冷却部130,140、傷検知部300、膜厚測定部400および熱処理部160に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う搬送ロボット150を備える。さらに、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3、熱処理装置100における半導体ウェハーWの搬送計画を作成する計画部37、および、搬送計画に従った指示を制御部3に対して行う実行指示部39を備える。
【0037】
インデクサ部110は、熱処理装置100の端部に配置される。インデクサ部110は、3つロードポート111および受渡ロボット120を備える。3つのロードポート111は、熱処理装置100の端部にてY軸方向に沿って並んで配置される。各ロードポート111には1個のキャリアCが載置可能である。よって、インデクサ部110には最大3つのキャリアCが載置される。未処理の半導体ウェハーWを収容したキャリアCは無人搬送車(AGV、OHT)等によって搬送されてロードポート111に載置される。また、処理済みの半導体ウェハーWを収容したキャリアCも無人搬送車によってロードポート111から持ち去られる。なお、3つのロードポート111のうちの1つにはダミーウェハーを収容したダミーキャリアが載置されても良い。
【0038】
また、ロードポート111においては、受渡ロボット120がキャリアCに対して任意の半導体ウェハーWの出し入れを行うことができるように、キャリアCが昇降移動可能に構成されている。なお、キャリアCの形態としては、半導体ウェハーWを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した半導体ウェハーWを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0039】
受渡ロボット120は、Y軸方向に沿ったスライド移動、Z軸周りでの旋回動作、およびZ軸方向に沿った昇降動作が可能に構成されている。また、受渡ロボット120は、それぞれが半導体ウェハーWを保持可能な2つの移載ハンド121a,121bを備える。これらの移載ハンド121a,121bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、それぞれ独立して同一水平方向に直線的に進退移動可能とされている。これにより、受渡ロボット120は、任意のロードポート111に載置されたキャリアCに対して半導体ウェハーWの出し入れを行うとともに、アライメント部230および反り計測部290に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う。受渡ロボット120によるキャリアCに対する半導体ウェハーWの出し入れは、移載ハンド121a(または移載ハンド121b)の進退移動、および、キャリアCの昇降移動により行われる。また、受渡ロボット120とアライメント部230または反り計測部290との半導体ウェハーWの受け渡しは、移載ハンド121a(または移載ハンド121b)の進退移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
【0040】
アライメント部230および反り計測部290は、インデクサ部110と搬送チャンバー170との間に挟み込まれて双方を接続するように設置されている。アライメント部230は、半導体ウェハーWを水平面内で回転させてフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。アライメント部230は、アルミニウム合金製の筐体であるアライメントチャンバー231の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に支持して回転させる機構、および、半導体ウェハーWの周縁部に形成されたノッチやオリフラ等を光学的に検出する機構などを設けて構成される。
【0041】
アライメントチャンバー231とインデクサ部110との連結部分にはゲートバルブ232が設けられる。アライメントチャンバー231とインデクサ部110とを連通する開口部はゲートバルブ232によって開閉可能とされている。一方、アライメントチャンバー231と搬送チャンバー170との連結部分にはゲートバルブ233が設けられる。アライメントチャンバー231と搬送チャンバー170とを連通する開口部はゲートバルブ233によって開閉可能とされている。すなわち、アライメントチャンバー231とインデクサ部110とはゲートバルブ232を介して接続され、アライメントチャンバー231と搬送チャンバー170とはゲートバルブ233を介して接続されている。
【0042】
インデクサ部110とアライメントチャンバー231との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ232が開放される。また、アライメントチャンバー231と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ233が開放される。ゲートバルブ232およびゲートバルブ233が閉鎖されているときには、アライメントチャンバー231の内部が密閉空間となる。
【0043】
アライメント部230では、インデクサ部110の受渡ロボット120から受け取った半導体ウェハーWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで半導体ウェハーWを回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの向きを調整する。向き調整の終了した半導体ウェハーWは搬送ロボット150によってアライメント部230から取り出される。
【0044】
反り計測部290は、加熱処理後の半導体ウェハーWの反りを計測する処理部である。反り計測部290は、アルミニウム合金製の筐体である反り計測チャンバー291の内部に、半導体ウェハーWを保持する機構、および、半導体ウェハーWの反りを光学的に検出する機構などを設けて構成される。
【0045】
反り計測チャンバー291とインデクサ部110との連結部分にはゲートバルブ292が設けられる。反り計測チャンバー291とインデクサ部110とを連通する開口部はゲートバルブ292によって開閉可能とされている。一方、反り計測チャンバー291と搬送チャンバー170との連結部分にはゲートバルブ293が設けられる。反り計測チャンバー291と搬送チャンバー170とを連通する開口部はゲートバルブ293によって開閉可能とされている。すなわち、反り計測チャンバー291とインデクサ部110とはゲートバルブ292を介して接続され、反り計測チャンバー291と搬送チャンバー170とはゲートバルブ293を介して接続されている。
【0046】
インデクサ部110と反り計測チャンバー291との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ292が開放される。また、反り計測チャンバー291と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ293が開放される。ゲートバルブ292およびゲートバルブ293が閉鎖されているときには、反り計測チャンバー291の内部が密閉空間となる。
【0047】
反り計測部290は、搬送ロボット150から受け取った加熱処理後の半導体ウェハーWに生じているウェハー反りを光学的に計測する。反りの計測が終了した半導体ウェハーWは、インデクサ部110の受渡ロボット120によって反り計測部290から取り出される。
【0048】
搬送ロボット150は搬送チャンバー170内に収容されている。搬送チャンバー170の周囲には、アライメントチャンバー231、反り計測チャンバー291、冷却部130のクールチャンバー131、冷却部140のクールチャンバー141、傷検知部300の傷検知チャンバー301、膜厚測定部400の膜厚測定チャンバー401、および、熱処理部160の処理チャンバー6が連結されている。
【0049】
搬送チャンバー170に設けられた搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸(Z軸)を中心に矢印150Rにて示すように旋回可能とされる。搬送ロボット150は、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151a,151bが設けられている。これらの搬送ハンド151a,151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によりそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することにより、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送ハンド151a,151bを昇降移動させる。
【0050】
搬送ロボット150がアライメントチャンバー231、反り計測チャンバー291、クールチャンバー131,141、傷検知チャンバー301、膜厚測定チャンバー401または熱処理部160の処理チャンバー6を受け渡し相手として半導体ウェハーWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送ハンド151a,151bが受け渡し相手と対向するように旋回する。その後(または旋回している間に)、搬送ロボット150が搬送ハンド151a,151bを昇降移動させていずれかの搬送ハンドを受け渡し相手の開口と同じ高さに位置させる。そして、搬送ロボット150が搬送ハンド151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウェハーWの受け渡しを行う。
【0051】
熱処理装置100の主要部である熱処理部160は、予備加熱を行った半導体ウェハーWにキセノンフラッシュランプFLから閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う基板処理部である。搬送チャンバー170と熱処理部160の処理チャンバー6との間にはゲートバルブ185が設けられている。熱処理部160の処理チャンバー6と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際にはゲートバルブ185が開放される。熱処理部160の詳細な構成についてはさらに後述する。
【0052】
2つの冷却部130,140は、概ね同様の構成を備える。冷却部130,140はそれぞれ、アルミニウム合金製の筐体であるクールチャンバー131,141の内部に、金属製の冷却プレートと、その上面に載置された石英板とを備える(いずれも図示省略)。当該冷却プレートは、ペルチェ素子または恒温水循環によって常温(約23℃)に温調されている。熱処理部160にてフラッシュ加熱処理が施された半導体ウェハーWは、クールチャンバー131またはクールチャンバー141に搬入されて当該石英板に載置されて冷却される。
【0053】
クールチャンバー131およびクールチャンバー141のそれぞれと搬送チャンバー170との連結部分にはゲートバルブ132,142が設けられる。クールチャンバー131と搬送チャンバー170とを連通する開口部はゲートバルブ132によって開閉可能とされている。一方、クールチャンバー141と搬送チャンバー170とを連通する開口部はゲートバルブ142によって開閉可能とされている。すなわち、クールチャンバー131と搬送チャンバー170とはゲートバルブ132を介して接続され、クールチャンバー141と搬送チャンバー170とはゲートバルブ142を介して接続されている。
【0054】
冷却部130のクールチャンバー131と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ132が開放される。また、冷却部140のクールチャンバー141と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ142が開放される。ゲートバルブ132,142が閉鎖されると、クールチャンバー131,141の内部が密閉空間となる。
【0055】
傷検知部300は、半導体ウェハーWの裏面における傷の有無を検知する。なお、半導体ウェハーWの主面のうちパターン形成がなされて処理対象となるのが表面であり、その表面の反対側の面が裏面である。傷検知部300は、アルミニウム合金製の筐体である傷検知チャンバー301の内部に、半導体ウェハーWの裏面を撮像する撮像部および取得された画像データに対して所定の画像処理を行うことによって傷の有無を判定する判定部などを備えて構成される。
【0056】
傷検知チャンバー301と搬送チャンバー170との連結部分にはゲートバルブ302が設けられている。傷検知チャンバー301と搬送チャンバー170とを連結する開口部はゲートバルブ302によって開閉可能とされている。すなわち、傷検知チャンバー301と搬送チャンバー170とはゲートバルブ302を介して接続されている。傷検知部300の傷検知チャンバー301と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際にはゲートバルブ302が開放される。ゲートバルブ302が閉鎖されると、傷検知チャンバー301の内部が密閉空間となる。
【0057】
膜厚測定部400は、例えば分光エリプソメトリーの分析手法を用いて半導体ウェハーWに形成された薄膜の膜厚を測定する。膜厚測定部400は、アルミニウム合金製の筐体である膜厚測定チャンバー401の内部に、半導体ウェハーWを支持する載置台および光学ユニットなどを備えて構成される。分光エリプソメーターの光学ユニットは、載置台に支持された半導体ウェハーWの表面に光を入射するとともに、当該表面で反射された反射光を受光する。光学ユニットは、その反射光の偏光の変化量を波長毎に測定し、得られた測定データに基づいて半導体ウェハーWの表面に形成されている薄膜の膜厚を求める。なお、膜厚測定部400は、上記の分光エリプソメーターに限定されるものではなく、光干渉型の膜厚測定器であっても良い。
【0058】
膜厚測定チャンバー401と搬送チャンバー170との連結部分にはゲートバルブ402が設けられている。膜厚測定チャンバー401と搬送チャンバー170とを連通する開口部はゲートバルブ402によって開閉可能とされている。すなわち、膜厚測定チャンバー401と搬送チャンバー170とはゲートバルブ402を介して接続されている。膜厚測定部400の膜厚測定チャンバー401と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際にはゲートバルブ402が開放される。ゲートバルブ402が閉鎖されると、膜厚測定チャンバー401の内部が密閉空間となる。
【0059】
熱処理装置100は、搬送チャンバー170の周囲に複数のチャンバーを配置したいわゆるクラスターツール構造を有する。搬送ロボット150および受渡ロボット120によって半導体ウェハーWをキャリアCから熱処理部160等の各処理部にまで搬送する搬送機構が構成される。搬送ロボット150は、冷却部130,140、傷検知部300、膜厚測定部400および熱処理部160の中心に位置してそれら各処理部に半導体ウェハーWを搬送するセンターロボットでもある。搬送ロボット150と受渡ロボット120との半導体ウェハーWの受け渡しはアライメント部230および反り計測部290を介して行われる。具体的には、受渡ロボット120がアライメントチャンバー231に渡した未処理の半導体ウェハーWを搬送ロボット150が受け取るとともに、搬送ロボット150が反り計測チャンバー291に渡した処理後の半導体ウェハーWを受渡ロボット120が受け取る。すなわち、アライメントチャンバー231は半導体ウェハーWの往路でのパスとして機能し、反り計測チャンバー291は半導体ウェハーWの復路でのパスとして機能する。熱処理部160は熱処理装置100の主要部であり、冷却部130,140、傷検知部300、膜厚測定部400、アライメント部230および反り計測部290は、熱処理装部160における半導体ウェハーWの加熱処理の前後にその加熱処理に付随する処理を行う付随処理部である。
【0060】
次に、熱処理部160の構成について説明する。
図2は、熱処理部160の構成を示す縦断面図である。熱処理部160は、半導体ウェハーWを収容して加熱処理を行う処理チャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュランプハウス5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲンランプハウス4と、を備える。処理チャンバー6の上側にフラッシュランプハウス5が設けられるとともに、下側にハロゲンランプハウス4が設けられている。また、熱処理部160は、処理チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と搬送ロボット150との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。
【0061】
処理チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。処理チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を処理チャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、処理チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲンランプHLからの光を処理チャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0062】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。処理チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0063】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、処理チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、処理チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0064】
また、チャンバー側部61には、処理チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖すると処理チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0065】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aおよび貫通孔61bが穿設されている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を上部放射温度計25の赤外線センサー29に導くための円筒状の孔である。一方、貫通孔61bは、半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を下部放射温度計20の赤外線センサー24に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aおよび貫通孔61bは、それらの貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、下部放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0066】
また、処理チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81は処理チャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)、酸素(O2)、オゾン(O3)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)等の反応性ガスを用いることができる(本実施形態では、窒素)。
【0067】
一方、処理チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86は処理チャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気機構190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、処理チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気機構190は、熱処理装置100に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置100が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0068】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気機構190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介して処理チャンバー6内の気体が排気される。
【0069】
図3は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0070】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、処理チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図2参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0071】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図4は、サセプタ74の平面図である。また、
図5は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0072】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0073】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0074】
図3に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71が処理チャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7が処理チャンバー6に装着される。保持部7が処理チャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0075】
処理チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、処理チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0076】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0077】
また、
図3および
図4に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、下部放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、下部放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61bに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0078】
図6は、移載機構10の平面図である。また、
図7は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図6の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図6の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。移載動作位置はサセプタ74の下方であり、退避位置はサセプタ74よりも外方である。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0079】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図3,4参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気が処理チャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0080】
図2に示すように、処理チャンバー6には、上部放射温度計25および下部放射温度計20の2つの放射温度計(本実施形態ではパイロメーター)が設けられている。上部放射温度計25は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め上方に設置され、その半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を受光して上面の温度を測定する。上部放射温度計25の赤外線センサー29は、フラッシュ光が照射された瞬間の半導体ウェハーWの上面の急激な温度変化に対応できるように、InSb(インジウムアンチモン)の光学素子を備えている。一方、下部放射温度計20は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め下方に設けられ、その半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を受光して下面の温度を測定する。
【0081】
処理チャンバー6の上方に設けられたフラッシュランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュランプハウス5が処理チャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLは処理チャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0082】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0083】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0084】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0085】
処理チャンバー6の下方に設けられたハロゲンランプハウス4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。複数のハロゲンランプHLは処理チャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。
【0086】
図8は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0087】
また、
図8に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲンランプHLからの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0088】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0089】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0090】
また、ハロゲンランプハウス4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図2)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0091】
図9は、制御部3、計画部37および実行指示部39の構成を示すブロック図である。制御部3、計画部37および実行指示部39のハードウェアとしての構成はいずれも一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部34(例えば、磁気ディスクまたはSSD)を備えている。計画部37および実行指示部39も制御部3と同様の構成を有する。なお、
図1においては、制御部3、計画部37および実行指示部39をインデクサ部110内に示しているが、これに限定されるものではなく、制御部3、計画部37および実行指示部39は熱処理装置100内の任意の位置に配置することができる。
【0092】
制御部3は、熱処理装置100に設けられた各種機構を制御する。すなわち、制御部3には、搬送ロボット150等の熱処理装置100に設けられた各種機構が電気的に接続されており、これらの動作を制御して熱処理装置100における処理を進行させる。
【0093】
計画部37は、予め登録された熱処理部160の処理チャンバー6および複数の付随処理部(冷却部130,140、傷検知部300、膜厚測定部400、アライメント部230および反り計測部290)における処理時間に基づいて熱処理装置100における半導体ウェハーWの搬送計画(搬送スケジュール)を作成する。計画部37は、作成した搬送計画を実行指示部39に引き渡す。
【0094】
実行指示部39は、計画部37によって作成された搬送計画に従って半導体ウェハーWの搬送および処理を実行するように制御部3に対して指示を行う。すなわち、本実施形態の熱処理装置100においては、予め作成された搬送計画に従って半導体ウェハーWの搬送が実行されるのである。
【0095】
上記の構成以外にも熱処理部160は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲンランプハウス4、フラッシュランプハウス5および処理チャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、処理チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲンランプハウス4およびフラッシュランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュランプハウス5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0096】
また、クールチャンバー131,141、傷検知チャンバー301、膜厚測定チャンバー401、アライメントチャンバー231、反り計測チャンバー291および搬送チャンバー170のそれぞれに対しては図示省略の不活性ガス供給機構から窒素が供給されるとともに排気機構によって排気が行われる。これにより、各チャンバー内は低酸素濃度雰囲気に維持されている。
【0097】
次に、本発明に係る熱処理装置100の処理動作について説明する。まず、製品となる1枚の半導体ウェハー(プロダクトウェハー)Wに対する典型的な処理動作について説明する。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置100の各動作機構を制御することにより進行する。
【0098】
まず、シリコンの未処理の半導体ウェハーWがキャリアCに複数枚収容された状態でインデクサ部110の3つのロードポート111のいずれかに載置される。そして、受渡ロボット120が当該キャリアCから未処理の半導体ウェハーWを取り出す。受渡ロボット120は、キャリアCから取り出した半導体ウェハーWをアライメント部230のアライメントチャンバー231に搬入する。アライメント部230は、アライメントチャンバー231に搬入された半導体ウェハーWをその中心部を回転中心として水平面内にて鉛直方向軸まわりで回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの向きを調整する。
【0099】
次に、搬送ロボット150がアライメントチャンバー231から搬送チャンバー170に半導体ウェハーWを搬出する。そして、搬送ロボット150が半導体ウェハーWを傷検知部300の傷検知チャンバー301に搬入する。傷検知部300では、傷検知チャンバー301に搬入された半導体ウェハーWの裏面を撮像し、得られた画像データを解析して傷の有無を検出する。なお、傷が検出された半導体ウェハーWについては、熱処理部160にてフラッシュ光を照射したときに割れるおそれがあるため、その半導体ウェハーWをキャリアCに戻すようにしても良い。
【0100】
次に、搬送ロボット150が傷検知チャンバー301から半導体ウェハーWを搬出して膜厚測定部400の膜厚測定チャンバー401に搬入する。膜厚測定部400は、膜厚測定チャンバー401に搬入された半導体ウェハーWの表面に形成されている薄膜の膜厚を測定する。このときには、膜厚測定部400は、熱処理部160にて熱処理が行われる前の半導体ウェハーWの膜厚測定を行うこととなる。
【0101】
処理前の膜厚測定が終了した後、搬送ロボット150が膜厚測定チャンバー401から半導体ウェハーWを搬出して熱処理部160の処理チャンバー6に搬入する。熱処理部160では、半導体ウェハーWの加熱処理が行われる。
【0102】
処理チャンバー6への半導体ウェハーWの搬入に先立って、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されて処理チャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86から処理チャンバー6内の気体が排気される。これにより、処理チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からも処理チャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。
【0103】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150により搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWが処理チャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボット150は、未処理の半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151a(または搬送ハンド151b)を保持部7の直上位置まで進出させて停止させる。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0104】
未処理の半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボット150が搬送ハンド151aを熱処理空間65から退出させ、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、処理対象となる表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0105】
半導体ウェハーWが処理チャンバー6に搬入されてサセプタ74に保持された後、40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0106】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が下部放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を下部放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、下部放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。
【0107】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、下部放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0108】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲンランプハウス4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0109】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接に処理チャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてから処理チャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0110】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に処理温度T2まで上昇した後、急速に下降する。
【0111】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は下部放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、下部放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された処理後の半導体ウェハーWが搬送ロボット150の搬送ハンド151b(または搬送ハンド151a)により搬出される。具体的には、搬送ロボット150は、搬送ハンド151bをリフトピン12によって突き上げられた半導体ウェハーWの直下位置にまで進出させて停止させる。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、フラッシュ加熱後の半導体ウェハーWが搬送ハンド151bに渡されて載置される。その後、搬送ロボット150が搬送ハンド151bを処理チャンバー6から退出させて熱処理後の半導体ウェハーWを搬送チャンバー170に搬出する。
【0112】
次に、搬送ロボット150が熱処理後の半導体ウェハーWを冷却部130のクールチャンバー131に搬入する。冷却部130は、熱処理直後の比較的高温の半導体ウェハーWを常温近傍にまで冷却する。なお、半導体ウェハーWの冷却処理は冷却部140のクールチャンバー141にて行うようにしても良い。
【0113】
冷却処理が終了した後、搬送ロボット150がクールチャンバー131から冷却後の半導体ウェハーWを搬出して膜厚測定チャンバー401に搬入する。膜厚測定部400は、膜厚測定チャンバー401に搬入された半導体ウェハーWの表面に形成されている薄膜の膜厚を測定する。このときには、膜厚測定部400は、熱処理部160にて熱処理が行われた後の半導体ウェハーWの膜厚測定を行うこととなる。熱処理部160にてフラッシュ加熱処理により成膜処理が行われる場合には、処理後に測定された膜厚から処理前に測定された膜厚を減ずることにより、成膜された薄膜の膜厚を算定することができる。
【0114】
処理後の膜厚測定が終了した後、搬送ロボット150が膜厚測定チャンバー401から搬送チャンバー170に半導体ウェハーWを搬出する。そして、搬送ロボット150が半導体ウェハーWを反り計測部290の反り計測チャンバー291に搬入する。反り計測部290は、加熱処理後の半導体ウェハーWに生じている反りを計測する。
【0115】
ウェハー反りの計測が終了した後、受渡ロボット120が反り計測チャンバー291から半導体ウェハーWを取り出す。そして、受渡ロボット120は、反り計測チャンバー291から取り出した半導体ウェハーWを元のキャリアCに格納する。以上のようにして1枚の半導体ウェハーWの熱処理が完了する。
【0116】
既述したように、搬送ロボット150は、例えば一方の搬送ハンド151bによって先行する加熱処理済みの半導体ウェハーWを処理チャンバー6から搬出するとともに、他方の搬送ハンド151aによって後続の未処理の半導体ウェハーWを処理チャンバー6に搬入してウェハー交換を行うことが望ましい。しかし、処理チャンバー6にて先行する半導体ウェハーWの処理が終了した時点で後続の半導体ウェハーWが搬送ロボット150にまで到達していないとウェハー交換が行えないことになる。特に、本実施形態の熱処理装置100は、搬送チャンバー170の周囲に複数のチャンバーを配置したクラスターツール構造を有しており、搬送対象部からの要求(搬出要求または搬入要求)が発生したのに応じて搬送ロボット150が搬送動作を行う(いわゆるイベントドリブン方式)と上記のような事態が生じやすい。このため、第1実施形態においては、以下のようにして半導体ウェハーWの搬送制御を行っている。
【0117】
図10は、第1実施形態における半導体ウェハーWの搬送制御の手順を示すフローチャートである。まず、計画部37が1つのロットを構成する複数の半導体ウェハーWについての搬送計画を作成する(ステップS1)。1つのロットは例えば25枚の半導体ウェハーWにて構成され、典型的には1つのキャリアCに収納されている。計画部37が搬送計画を作成するタイミングは、例えば処理対象となるロットを収納したキャリアCがロードポート111に載置されて、そのロットに含まれる複数の半導体ウェハーWにレシピが割り当てられた時点とすれば良い。レシピとは、半導体ウェハーWに対する熱処理の処理手順および処理条件を規定したものである。レシピは、予め種々のパターンが作成されて例えば制御部3の記憶部34に格納されている(
図9)。
【0118】
計画部37は、予め登録された熱処理部160の処理チャンバー6および複数の付随処理部(冷却部130,140、傷検知部300、膜厚測定部400、アライメント部230および反り計測部290)における処理時間に基づいてロットに含まれる1組の複数の半導体ウェハーについての搬送計画を作成する。計画部37は、例えばそれら複数の半導体ウェハーWに割り当てられているレシピに記述されている処理時間に基づいて搬送計画を作成する。レシピには、処理チャンバー6および複数の付随処理部におけるそれぞれの処理時間も規定されている。
【0119】
計画部37によって作成された搬送計画は実行指示部39に引き渡される。実行指示部39は、計画部37によって作成された搬送計画に従って半導体ウェハーWの搬送および処理を実行するように制御部3に対して実行指示を行う(ステップS2)。制御部3は、実行指示部39からの実行指示に基づいて、上記搬送計画に沿った半導体ウェハーWの搬送を開始する(ステップS3)。1枚の半導体ウェハーWについての搬送フロー自体は上述した通りのものである。
【0120】
ロットの最初の半導体ウェハーWが熱処理部160の処理チャンバー6に搬入されてその最初の半導体ウェハーWに対する加熱処理が開始される(ステップS4)。熱処理部160における半導体ウェハーWの加熱処理の手順も上述した通りのものである。
図11は、熱処理部160での加熱処理時における半導体ウェハーWの温度変化を示す図である。なお、
図11に示すのは厳密には半導体ウェハーWの表面温度の変化である。
【0121】
時刻t1にハロゲンランプHLが点灯して予備加熱が開始され、時刻t3に半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達する。その後、時刻t4にフラッシュランプFLからフラッシュ光が照射されて半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に処理温度T2にまで昇温する。その後、ハロゲンランプHLも消灯して半導体ウェハーWの温度は急速に降温して時刻t6に半導体ウェハーWの加熱処理が終了する。ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからの光照射によって処理チャンバー6内も加熱されているため、半導体ウェハーWの加熱処理が終了する時刻t6でも処理チャンバー6は相応に高温である。
【0122】
予備加熱を開始する時刻t1から時刻t2まで、すなわち予備加熱の初期段階は、時間管理を行っていない非時間管理フェーズである。時刻t1から時刻t2までは、下部放射温度計20による半導体ウェハーWの温度測定値に基づいて制御部3がハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御している期間であり、下部放射温度計20への外乱の影響によって測定値が安定せずにハロゲンランプHLの出力も不安定となって時間が変動することがある。すなわち、時刻t1から時刻t2までの時間は不定である。
【0123】
一方、時刻t2以降は、時間によって管理される時間管理フェーズに移行する。この時間管理フェーズでは、例えばフラッシュランプFLの発光タイミング等が時間によって管理されており、時刻t2からフラッシュ光照射が行われる時刻t4までの時間、および、時刻t2から半導体ウェハーWの加熱処理が終了する時刻t6までの時間は一定(例えば40秒)である。
【0124】
従って、時刻t2を経過した時点で制御部3は、半導体ウェハーWの加熱処理が終了する時刻t6を特定することができる。そして、制御部3は、処理チャンバー6における半導体ウェハーWの加熱処理が終了する時刻t6よりも一定時間tpだけ前の時刻t5に計画部37に事前予告信号を発信する。
【0125】
計画部37は、制御部3からの事前予告信号を受信するまでは待機している(ステップS5)。なお、計画部37が待機している間も制御部3の制御下にて半導体ウェハーWの加熱処理は進行している。そして、計画部37は、制御部3からの事前予告信号を受信した時刻t5に搬送の再計画を実行する(ステップS6)。計画部37は、処理チャンバー6における半導体ウェハーWの加熱処理が終了する時刻t6の時点で搬送ロボット150が処理チャンバー6から半導体ウェハーWを搬出できるように搬送の再計画を実行する。具体的には、計画部37は、制御部3からの事前予告信号を受信した時点(時刻t5)で搬送ロボット150が行っている搬送動作の次工程が処理チャンバー6からの半導体ウェハーWの搬出となるように再計画を実行する。
【0126】
例えば、処理チャンバー6にて先行する半導体ウェハーW1(以下、「先行ウェハーW1」)の加熱処理を行っているときに、膜厚測定部400にて後続の半導体ウェハーW2(以下、「後続ウェハーW2」)の膜厚測定が終了したとする。搬送ロボット150は、当初の搬送計画に沿って膜厚測定部400の膜厚測定チャンバー401から後続ウェハーW2を搬出する動作を行う。その搬出動作を行っているときに制御部3が事前予告信号を発信したとすると、計画部37が事前予告信号を受信した時点で搬送ロボット150が行っている搬送動作は膜厚測定部400からの後続ウェハーW2の搬出動作となる。計画部37は、当初の搬送計画では膜厚測定部400からの搬出動作の次が例えば冷却部130からの搬出動作であったとしても、その冷却部130からの搬出を待機させて膜厚測定部400からの搬出動作の次に処理チャンバー6からの先行ウェハーW1の搬出動作となるように搬送の再計画を行うのである。
【0127】
計画部37が作成した搬送の再計画は実行指示部39に引き渡され、実行指示部39はその再計画に従って制御部3に対して実行指示を行う(ステップS7)。制御部3は、実行指示部39からの実行指示に基づいて、再計画に沿った半導体ウェハーWの搬送を搬送ロボット150に実行させる(ステップS8)。上記の再計画の例では、膜厚測定部400からの後続ウェハーW2の搬出動作の次に処理チャンバー6からの先行ウェハーW1の搬出動作となるように搬送ロボット150が動作を行う。
【0128】
また、処理チャンバー6における半導体ウェハーWの加熱処理が終了する時刻t6と事前予告信号を発信する時刻t5との時間差である一定時間tpは、搬送ロボット150が旋回動作に要する時間と搬送ロボット150が処理チャンバー6以外の付随処理部に半導体ウェハーWを搬入出するのに要する時間とを加算した値とされている。例えば、搬送ロボット150が旋回動作に要する時間が3秒であり、搬送ロボット150がいずれかの付随処理部に半導体ウェハーWを搬入出するのに要する時間が6秒であれば、一定時間tpは9秒となる。一定時間tpは、装置パラメータとして例えば制御部3の記憶部34に格納されている。
【0129】
処理チャンバー6において先行ウェハーW1の加熱処理が終了する時刻t6よりも上記の一定時間tpだけ前の時刻t5に制御部3が事前予告信号を発信して計画部37が再計画を実行することにより、時刻t6には搬送ロボット150は確実に膜厚測定部400からの後続ウェハーW2の搬出動作を完了して処理チャンバー6に対する半導体ウェハーWの搬入出を行うことが可能となる。すなわち、処理チャンバー6における先行ウェハーW1の加熱処理が終了する時刻t6には、確実に搬送ロボット150が処理チャンバー6から先行ウェハーW1を搬出することができる。また、搬送ロボット150は、時刻t6に、処理チャンバー6から加熱処理が終了した先行ウェハーW1を搬出するとともに、処理チャンバー6に後続ウェハーW2を搬入するウェハー交換を行うこともできる。
【0130】
その後、ロットの全ての半導体ウェハーWに対する処理が終了していない場合には、ステップS9からステップS4に戻る。ロットの2枚目以降の半導体ウェハーWについても、事前予告信号が発信されると計画部37が搬送の再計画を実行し、その再計画に沿って半導体ウェハーWが搬送される。すなわち、ロットの全ての半導体ウェハーWに対する処理が終了するまでステップS4からステップS9までの工程を繰り返し実行する。
【0131】
なお、予め想定される時刻に計画部37が事前予告信号を受信しない場合は、搬送ロボット150は処理チャンバー6からの先行ウェハーW1の搬出を行うことなく、後続ウェハーW2を保持した状態で待機している。このような場合は、ハロゲンランプHLによる先行ウェハーW1の予備加熱に予定以上の長時間を要したケースが考えられる。搬送ロボット150が後続ウェハーW2を保持した状態で待機していたとしても、先行ウェハーW1の加熱処理が終了した時点で先行ウェハーW1を処理チャンバー6から搬出することは可能である。また、加熱処理前の未処理の後続ウェハーW2を待機させても問題は無い。
【0132】
第1実施形態においては、処理チャンバー6における半導体ウェハーWに対する加熱処理が終了する時刻t6よりも一定時間tpだけ前の時刻t5に制御部3が計画部37に事前予告信号を発信している。一定時間tpは、搬送ロボット150が旋回動作に要する時間と搬送ロボット150が処理チャンバー6以外の付随処理部に半導体ウェハーWを搬入出するのに要する時間とを加算した値である。そして、計画部37は、事前予告信号を受信した時点(時刻t5)で搬送ロボット150が行っている搬送動作の次工程が処理チャンバー6からの半導体ウェハーWの搬出となるように搬送の再計画を実行する。
【0133】
半導体ウェハーWの加熱処理の都度、計画部37が搬送の再計画を実行することになるため、半導体ウェハーWの搬送を自動で迅速に調整することが可能となる。
【0134】
また、第1実施形態のようにすれば、半導体ウェハーWに対する加熱処理が終了した時点で確実に搬送ロボット150によって処理チャンバー6から当該半導体ウェハーWを搬出することができる。その結果、加熱処理の終了した半導体ウェハーWを高温の処理チャンバー6内で必要以上に長時間待機させることなく搬出することができ、半導体ウェハーWに過剰の熱量を与えて処理結果に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0135】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置100および熱処理部160の構成は第1実施形態と同じである。また、第2実施形態における1枚の半導体ウェハーWに対する加熱処理の手順も第1実施形態と同じである。さらに、第2実施形態における半導体ウェハーWの搬送制御の手順も概ね第1実施形態と同じである(
図10)。
【0136】
第2実施形態においては、計画部37が複数の半導体ウェハーWについての搬送計画を作成する際に(
図10のステップS1)、往路の半導体ウェハーWを優先して搬送する計画を作成する。往路の半導体ウェハーWとは、熱処理部160による加熱処理前の半導体ウェハーWであり、ロードポート111から処理チャンバー6に向けて搬送されている半導体ウェハーWである。一方、復路の半導体ウェハーWとは、熱処理部160による加熱処理後の半導体ウェハーWであり、処理チャンバー6からロードポート111に向けて搬送されている半導体ウェハーWである。
【0137】
図12は、往路の半導体ウェハーWの優先搬送を模式的に説明する図である。ある時刻t10において、加熱処理前の往路の半導体ウェハーWo(以下、「往路ウェハーWo」)が傷検知部300の傷検知チャンバー301に収容され、当該往路ウェハーWoの傷の有無が検出されている。それと同時刻には、熱処理部160での加熱処理が終了した復路の半導体ウェハーWr(以下、「復路ウェハーWr」)が冷却部130のクールチャンバー131に搬入されて冷却されている。そして、時刻t11には、傷検知部300における往路ウェハーWoの傷検出処理が終了するとともに、冷却部130における復路ウェハーWrの冷却処理も終了している。すなわち、時刻t11には、傷検知部300からの往路ウェハーWoの搬出、および、冷却部130からの復路ウェハーWrの搬出がともに可能となっている。
【0138】
傷検知部300からの往路ウェハーWoの搬出、および、冷却部130からの復路ウェハーWrの搬出はともに搬送ロボット150によって行われるものであるが、搬送ロボット150は同時に2つの付随処理部に対して搬送動作を行うことはできない。よって、時刻t11の時点では、搬送ロボット150による往路ウェハーWoの搬送と復路ウェハーWrの搬送とが競合することとなる。
【0139】
第2実施形態においては、計画部37は、搬送ロボット150による往路ウェハーWoの搬送と復路ウェハーWrの搬送とが競合するときには、加熱処理前の往路の半導体ウェハーWの搬送を優先するように搬送計画を作成する。すなわち、時刻t11には、搬送ロボット150は復路ウェハーWrよりも先に往路ウェハーWoを傷検知部300から搬出する。
【0140】
その後、時刻t12に、搬送ロボット150は往路ウェハーWoを次工程である膜厚測定部400に搬入する。このときに、冷却部130からの復路ウェハーWrの搬出が可能となり、搬送ロボット150は復路ウェハーWrを冷却部130から搬出する。要するに、往路ウェハーWoの搬送を優先した結果、復路ウェハーWrは冷却処理が終了した後の時刻t11から時刻t12までの間(
図12のハッチング部分)、冷却部130にて待機することとなる。
【0141】
計画部37は、以上のような往路の半導体ウェハーWoを優先して搬送する搬送計画を作成する。作成された搬送計画は実行指示部39に引き渡され、実行指示部39はその搬送計画に従って制御部3に対して実行指示を行う。制御部3は、実行指示部39からの実行指示に基づいて、当該搬送計画に沿った半導体ウェハーWの搬送を搬送ロボット150に実行させる。
【0142】
第2実施形態においては、搬送ロボット150による加熱処理前の半導体ウェハーWの搬送と加熱処理後の半導体ウェハーWの搬送とが競合したときには、加熱処理前の半導体ウェハーWの搬送を優先するように計画部37が搬送計画を作成している。これにより、ロードポート111から搬送ロボット150に至るまでの往路の半導体ウェハーWの搬送に要する時間が長時間化することが抑制され、処理チャンバー6にて先行する半導体ウェハーWの加熱処理が終了したときには、必ず後続の半導体ウェハーWが搬送ロボット150に到達することとなる。その結果、処理チャンバー6において先行の半導体ウェハーWと後続の半導体ウェハーWとのウェハー交換を確実に行うことができ、処理チャンバー6内には常に半導体ウェハーWが存在することとなり、処理チャンバー6内の温度は低下することなく安定温度に維持されることとなる。従って、ロットの構成する複数の後続ウェハーの全てについて処理チャンバー6内の温度は一定となり、それら複数の後続ウェハー間での処理結果は均一なものとなる。なお、往路の半導体ウェハーWの搬送を優先した結果として復路の半導体ウェハーWの搬送が長時間化することはある。しかし、例えば
図12の例において、復路の半導体ウェハーWは冷却部130にて予定よりも長時間待機することとなるが、冷却時間が長時間化したとしてもその復路の半導体ウェハーWの処理結果には影響を与えない。
【0143】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態と第2実施形態とを共に実施するようにしても良い。すなわち、計画部37は、往路の半導体ウェハーWを優先して搬送する計画を作成するとともに、事前予告信号を受信したときに搬送の再計画を実行するようにしても良い。
【0144】
また、上記実施形態においては、制御部3、計画部37および実行指示部39の3つのコンピュータが個別に熱処理装置100に設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば制御部3内にソフトウェアによって計画部37および実行指示部39が機能的に実現されていても良い。或いは、計画部37および実行指示部39は、複数の熱処理装置100を管理するホストコンピュータに設けられていても良い。
【0145】
また、上記実施形態においては、一定時間tpを搬送ロボット150が旋回動作に要する時間と搬送ロボット150が付随処理部に半導体ウェハーWを搬入出するのに要する時間とを加算した値としていたが、これに限定されるものではない。一定時間tpは、処理チャンバー6における半導体ウェハーWの加熱処理が終了した時点にて搬送ロボット150が処理チャンバー6から処理後の半導体ウェハーWを搬出可能な態勢となることができる時間以上であれば良い。
【0146】
また、上記実施形態においては、熱処理部160における熱処理の前後で膜厚測定を行っていたが、これは必須のものではなく、熱処理前の膜厚測定は行わなくても良い。この場合、傷検知部300にて傷の有無を検出された半導体ウェハーWは直接に熱処理部160の処理チャンバー6に搬送される。
【0147】
また、上記実施形態においては、フラッシュランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲンランプハウス4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0148】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)またはLEDランプを連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0149】
3 制御部
4 ハロゲンランプハウス
5 フラッシュランプハウス
6 処理チャンバー
7 保持部
10 移載機構
37 計画部
39 実行指示部
65 熱処理空間
74 サセプタ
100 熱処理装置
110 インデクサ部
111 ロードポート
120 受渡ロボット
130,140 冷却部
150 搬送ロボット
160 熱処理部
170 搬送チャンバー
230 アライメント部
290 反り計測部
300 傷検知部
400 膜厚測定部
C キャリア
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー