IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図1
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図2
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図3
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図4
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図5
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図6
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図7
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図8
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図9
  • 特開-電磁比例制御弁駆動用の制御装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126043
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電磁比例制御弁駆動用の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/18 20060101AFI20240912BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20240912BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01F7/18 B
H01F7/16 R
F16K31/06 320A
F16K31/06 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034173
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根原 理仁
(72)【発明者】
【氏名】北川 明弘
【テーマコード(参考)】
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3H106DA08
3H106DC18
3H106EE14
3H106FB32
3H106KK03
3H106KK17
5E048AB02
(57)【要約】
【課題】ソレノイドバルブの制御性を向上させることができる制御装置を提供する。
【解決手段】フライバック電流をコイル101に還流させるための第1還流素子20と、オン時にフライバック電流をコイル101に還流可能な第2還流素子30と、フライバック電流の還流経路を、第1還流素子20を通る第1還流経路I1と、第2還流素子30を通る第2還流経路I2とに切換制御可能なコントローラ50と、を備え、第1還流素子20は、第2還流素子30よりもフライバック電流の減衰速度が速い素子であり、コントローラ50は、ソレノイドバルブ100の要求出力に応じた指示電流が第1所定電流未満のときには、第1還流経路I1を選択する一方で、指示電流が第1所定電流以上のときには、第2還流経路I2を選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに供給する電流に比例した弁開度で作動流体の圧力を制御する電磁比例制御弁を駆動させる電磁比例制御弁の制御装置であって、
前記コイルに接続され、オン時に該コイルに電流を流す駆動素子と、
前記駆動素子に、前記コイルに供給すべき目標電流を示す信号を出力するプリドライバと、
前記コイルに並列に接続され、前記駆動素子のオフ時に前記コイルから放出されるフライバック電流を該コイルに還流させるための第1還流素子と、
前記コイル及び前記第1還流素子に並列に接続され、オンオフ制御可能であり、オン時に前記フライバック電流を該コイルに還流可能な第2還流素子と、
前記第2還流素子のオンオフを制御することで、前記フライバック電流の還流経路を、前記第1還流素子を通る第1還流経路と、前記第2還流素子を通る第2還流経路とに切換制御可能な経路制御装置と、を備え、
前記第1還流素子は、前記第2還流素子と比較して、前記フライバック電流の減衰速度が速い素子であり、
前記目標電流は、前記電磁比例制御弁の要求出力に基づく指示電流と該指示電流に応じた振幅のディザ電流とに基づいて設定されており、
前記経路制御装置は、前記指示電流が第1所定電流未満のときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする一方で、前記指示電流が前記第1所定電流以上のときには、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにすることを特徴とする電磁比例制御弁の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁比例制御弁の制御装置において、
前記経路制御装置は、前記第1所定電流以上の前記指示電流に対する前記ディザ電流の振幅を大きくする必要があるときには、前記指示電流が前記第1所定電流よりも大きいときであっても、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにすることを特徴とする電磁比例制御弁の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁比例制御弁の制御装置において、
前記作動流体の圧力を検出する圧力検出部を更に備え、
前記プリドライバ回路は、前記指示電流が前記第1所定電流以上のときに、前記圧力検出部が検出した検出圧力と前記指示電流との間にヒステリシスが生じたときには、該ヒステリシスを小さくすべく前記指示電流に対する前記ディザ電流の振幅を大きくし、
前記経路制御装置は、前記指示電流が前記第1所定電流以上であっても、前記圧力検出部が検出した検出圧力と前記指示電流との間にヒステリシスが生じたときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにすることを特徴とする電磁比例制御弁の制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の電磁比例制御弁の制御装置において、
前記第1還流素子の周辺温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記経路制御装置は、前記温度検出部が検出した検出温度が所定温度以上であるときには、前記指示電流が前記第1所定電流未満であったとしても、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにすることを特徴とする電磁比例制御弁の制御装置。
【請求項5】
コイルに供給する電流に比例した弁開度で作動流体の圧力を制御する電磁比例制御弁を駆動させる電磁比例制御弁の制御装置であって、
前記コイルに接続され、オン時に該コイルに電流を流す駆動素子と、
前記駆動素子に、前記コイルに供給すべき目標電流を示す信号を出力するプリドライバ回路と、
前記プリドライバ回路からの信号に基づいて、前記駆動素子からコイルに供給される電流を検出する電流検出部と、
前記コイルに並列に接続され、前記駆動素子のオフ時に前記コイルから放出されるフライバック電流を該コイルに還流させるための第1還流素子と、
前記コイル及び前記第1還流素子に並列に接続され、オンオフ制御可能であり、オン時に前記フライバック電流を該コイルに還流可能な第2還流素子と、
前記第2還流素子のオンオフを制御することで、前記フライバック電流の還流経路を、前記第1還流素子を通る第1還流経路と、前記第2還流素子を通る第2還流経路とに切換制御可能な経路制御装置と、を備え、
前記第1還流素子は、前記第2還流素子と比較して、前記フライバック電流の減衰速度が速い素子であり、
前記目標電流は、前記電磁比例制御弁の要求出力に基づく指示電流と該指示電流に応じた振幅のディザ電流とに基づいて設定されており、
前記経路制御装置は、前記電流検出部が検出した電流値に基づいて、前記第1還流経路及び前記第2還流経路の一方を選択することを特徴とする電磁比例制御弁の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電磁比例制御弁の制御装置において、
前記経路制御装置は、前記電流検出部が検出した電流の平均である平均電流が所定電流未満のときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする一方で、前記平均電流が前記所定値以上のときには、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにすることを特徴とする電磁比例制御弁の制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電磁比例制御弁の制御装置において、
前記経路制御装置は、前記電流検出部が検出した実際の電流における前記ディザ電流の振幅が所定幅未満のときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする一方で、前記ディザ電流の振幅が前記所定幅以上のときには、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにすることを特徴とする電磁比例制御弁の制御装置。
【請求項8】
コイルに供給する電流に比例した弁開度で作動流体の圧力を制御する電磁比例制御弁を駆動させる駆動回路における電磁比例制御弁の制御方法であって、
前記駆動回路は、
前記コイルに接続され、オン時に該コイルに電流を流す駆動素子と、
前記駆動素子に、前記コイルに供給すべき目標電流を示す信号を出力するプリドライバ回路と、
前記コイルに並列に接続され、前記駆動素子のオフ時に前記コイルから放出されるフライバック電流を該コイルに還流させるための第1還流素子と、
前記コイル及び前記第1還流素子に並列に接続され、オンオフ制御可能であり、オン時に前記フライバック電流を該コイルに還流可能な第2還流素子と、
を備え、
前記第1還流素子は、前記第2還流素子と比較して、前記フライバック電流の減衰速度が速い素子であり、
前記目標電流は、前記電磁比例制御弁の要求出力に基づく指示電流と該指示電流に応じた振幅のディザ電流とに基づいて設定されており、
前記指示電流が第1所定電流未満のときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする一方で、前記指示電流が前記第1所定電流以上のときには、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにすることを特徴とする電磁比例制御弁の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、電磁比例制御弁駆動用の制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コイルに供給する電流に比例した弁開度で作動流体の圧力を制御する電磁比例制御弁が知られている。電磁比例制御弁は、機械的な摩擦抵抗等の影響により、供給される電流と出力する圧力との間にヒステリシスが生じることが知られている。このヒステリシスを解消するために、電磁比例制御弁に微量振動を与えるためのディザ電流を電磁比例制御弁に供給することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、比例電磁弁の作動コイルをパルス幅変調電流の積算量によりデジタル制御するとき、出力段回路に前記作動コイルと並列に抵抗を付加し、電流オフ時の電流減少速度を速くして作動ヒステリシスを消去するディザ波形に対応する電流の追随を安定化した比例電磁弁の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-184972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コイルの特性上、コイルに供給する電流が小さいときには、ディザ電流の振幅(以下、ディザ振幅という)を大きく出来ないという問題がある。
【0006】
すなわち、図10の上図に示すように、電磁比例制御弁のコイルに供給する目標電流は、指示電流と該指示電流に応じて設定されたディザ電流とを合わせた電流波形になる。指示電流は、目標電流の1周期分の平均値に相当し、ディザ振幅は、該平均値からの波形の山または谷までの幅に相当する。駆動素子を作動させるプリドライバは、この目標電流の波形に基づいて、駆動素子をオンオフするPWM信号を生成する。
【0007】
PWM信号に基づいて駆動素子がオンオフすると、RL負荷駆動波形が連続して形成される。このRL負荷駆動波形の集合が電磁比例制御弁のコイルに実際に流れる電流となる。電流が上昇する期間は、RL負荷駆動波形の立ち上がり部分が寄与する一方で、電流が減少する期間は、RL負荷駆動波形の立ち下がり部分が寄与する。RL負荷駆動波形の立ち下がり部分は、フライバック電流が減衰する部分に相当するところ、図10の下図に示すように指示電流が小さい第2電流のときには、指示電流が大きい第1電流のときと比較して減衰速度が遅くなる。一方で、ディザ電流の周期(図中のディザ周期)は、電磁比例制御弁に与える微量振動に応じて決まっている。このため、指示電流が小さいときに、決まった周期で電流を十分に減少させるには、ディザ振幅を小さくする他なくなってしまう。
【0008】
しかしながら、ディザ振幅が小さい場合、電磁比例制御弁に与える微量振動が不十分になって、ヒステリシスが十分に解消しないおそれがある。
【0009】
これに対して、特許文献1のように、電磁比例制御弁のコイルと並列に抵抗を配置して、フライバック電流を積極的に消費させることが考えられる。しかしながら、特許文献1の構成では、コイルに供給する電流が比較的大きく、十分なディザ振幅のディザ電流とすることができる場合にも、損失が大きくなってしまって、駆動素子等が設けられたチップや基板の発熱が促されてしまう。駆動素子が発熱するとオン抵抗が上昇するため、目標電流と電磁比例制御弁に供給される電流との間にずれが生じるおそれがある。
【0010】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電磁比例制御弁の制御性を向上させることができる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様では、コイルに供給する電流に比例した弁開度で作動流体の圧力を制御する電磁比例制御弁を駆動させる電磁比例制御弁の制御装置を対象として、前記コイルに接続され、オン時に該コイルに電流を流す駆動素子と、前記駆動素子に、前記コイルに供給すべき目標電流を示す信号を出力するプリドライバと、前記コイルに並列に接続され、前記駆動素子のオフ時に前記コイルから放出されるフライバック電流を該コイルに還流させるための第1還流素子と、前記コイル及び前記第1還流素子に並列に接続され、オンオフ制御可能であり、オン時に前記フライバック電流を該コイルに還流可能な第2還流素子と、前記第2還流素子のオンオフを制御することで、前記フライバック電流の還流経路を、前記第1還流素子を通る第1還流経路と、前記第2還流素子を通る第2還流経路とに切換制御可能な経路制御装置と、を備え、前記第1還流素子は、前記第2還流素子と比較して、前記フライバック電流の減衰速度が速い素子であり、前記目標電流は、前記電磁比例制御弁の要求出力に基づく指示電流と該指示電流に応じた振幅のディザ電流とに基づいて設定されており、前記経路制御装置は、前記指示電流が第1所定電流未満のときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする一方で、前記指示電流が前記第1所定電流以上のときには、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにする、という構成とした。
【0012】
この構成によると、指示電流が第1所定電流未満のときには、フライバック電流の減衰速度が速い第1還流素子を通過させるため、目標電流におけるディザ電流の振幅(以下、ディザ振幅という)を大きくしたとしても、該目標電流の波形を実現させることができる。これにより、ディザ電流の自由度が向上される。一方で、指示電流が第1所定電流以上のときには、フライバック電流の減衰速度が相対的に遅い第2還流素子を通過させることで、適切な速度でもってフライバック電流を減衰させることができる。これにより、チップや基板の発熱を抑制することができる。
【0013】
したがって、ディザ電流の自由度が高くなることで、電磁比例制御弁の出力と指示電流との間のヒステリシスを解消しやすくなり、チップや基板の発熱が抑制されることで、目標電流と電磁比例制御弁に供給される電流との間にずれが生じにくくなる。このことから、電磁比例制御弁の制御性を向上させることができる。
【0014】
ここに開示された技術の第2の態様では、前記第1の態様において、前記経路制御装置は、前記所定電流以上の前記指示電流に対する前記ディザ電流の振幅を大きくする必要があるときには、前記指示電流が前記第1所定電流よりも大きいときであっても、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする。
【0015】
特に、ここに開示された技術の第3の態様では、前記第2の態様において、前記作動流体の圧力を検出する圧力検出部を更に備え、前記プリドライバ回路は、前記指示電流が前記第1所定電流以上のときに、前記圧力検出部が検出した検出圧力と前記指示電流との間にヒステリシスが生じたときには、該ヒステリシスを小さくすべく前記指示電流に対する前記ディザ電流の振幅を大きくし、前記経路制御装置は、前記指示電流が前記第1所定電流以上であっても、前記圧力検出部が検出した検出圧力と前記指示電流との間にヒステリシスが生じたときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする。
【0016】
すなわち、検出圧力と指示電流との間にヒステリシスが生じるようになったときには、ディザ振幅を大きくして、電磁比例制御弁に与える微量振動を大きくする必要がある。このためには、フライバック電流の減衰速度を上げる必要があるが、本開示の技術では、フライバック電流が第1還流経路を通るようにすることで、フライバック電流の減衰速度を上げることができる。したがって、電磁比例制御弁の制御性をより向上させることができる。
【0017】
ここに開示された技術の第4の態様では、前記第1~3の態様のいずれか1つにおいて、前記第1還流素子の周辺温度を検出する温度検出部を検出する温度検出部を更に備え、前記経路制御装置は、前記温度検出部が検出した検出温度が所定温度以上であるときには、前記指示電流が前記第1所定電流未満であったとしても、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにする。
【0018】
この構成によると、第1還流素子の周辺温度が高いときには、フライバック電流の減衰が相対的に緩い第2還流経路を通すことで、第1還流素子の発熱が促進されるのを抑制することができる。これにより、電磁比例制御弁の制御性をより向上させることができる。
【0019】
ここに開示された技術の第5の態様では、コイルに供給する電流に比例した弁開度で作動流体の圧力を制御する電磁比例制御弁を駆動させる電磁比例制御弁の制御装置を対象として、前記コイルに接続され、オン時に該コイルに電流を流す駆動素子と、前記駆動素子に、前記コイルに供給すべき目標電流を示す信号を出力するプリドライバ回路と、前記プリドライバ回路からの信号に基づいて、前記駆動素子からコイルに供給される電流を検出する電流検出部と、前記コイルに並列に接続され、前記駆動素子のオフ時に前記コイルから放出されるフライバック電流を該コイルに還流させるための第1還流素子と、前記コイル及び前記第1還流素子に並列に接続され、オンオフ制御可能であり、オン時に前記フライバック電流を該コイルに還流可能な第2還流素子と、前記第2還流素子のオンオフを制御することで、前記フライバック電流の還流経路を、前記第1還流素子を通る第1還流経路と、前記第2還流素子を通る第2還流経路とに切換制御可能な経路制御装置と、を備え、前記第1還流素子は、前記第2還流素子と比較して、前記フライバック電流の減衰速度が速い素子であり、前記目標電流は、前記電磁比例制御弁の要求出力に基づく指示電流と該指示電流に応じた振幅のディザ電流とに基づいて設定されており、前記経路制御装置は、前記電流検出部が検出した電流値に基づいて、前記第1還流経路及び前記第2還流経路の一方を選択する、構成とした。
【0020】
この構成によると、コイルに実際に供給される電流値に基づいて、フライバック電流の還流経路を選択することで、適切なディザ振幅を実現させることができる。これにより、電磁比例制御弁の制御性を向上させることができる。
【0021】
ここに開示された技術の第6の態様では、前記第5の態様において、前記経路制御装置は、前記電流検出部が検出した電流の平均である平均電流が所定電流未満のときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする一方で、前記平均電流が前記所定値以上のときには、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにする。
【0022】
この構成によると、駆動素子の特性や温度の影響によって、目標電流と実際にコイルに供給される電流との間にずれがあったとしても、適切なディザ振幅を実現させることができる。これにより、電磁比例制御弁の制御性を向上させることができる。
【0023】
ここに開示された技術の第7の態様では、前記第5の態様において、前記経路制御装置は、前記電流検出部が検出した実際の電流における前記ディザ電流の振幅が所定幅未満のときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする一方で、前記ディザ電流の振幅が前記所定幅以上のときには、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにする。
【0024】
この構成によると、駆動素子の特性や温度の影響によって、実際のディザ振幅が目標とするディザ振幅よりも小さかったときには、第1還流経路を選択して、目標とするディザ振幅に近づけることができる。これにより、電磁比例制御弁の制御性を向上させることができる。
【0025】
ここに開示された技術は、電磁比例制御弁の制御方法をも対象とする。具体的には、コイルに供給する電流に比例した弁開度で作動流体の圧力を制御する電磁比例制御弁を駆動させる駆動回路における電磁比例制御弁の制御方法を対象として、前記駆動回路は、前記コイルに接続され、オン時に該コイルに電流を流す駆動素子と、前記駆動素子に、前記コイルに供給すべき目標電流を示す信号を出力するプリドライバ回路と、前記コイルに並列に接続され、前記駆動素子のオフ時に前記コイルから放出されるフライバック電流を該コイルに還流させるための第1還流素子と、前記コイル及び前記第1還流素子に並列に接続され、オンオフ制御可能であり、オン時に前記フライバック電流を該コイルに還流可能な第2還流素子と、を備え、前記第1還流素子は、前記第2還流素子と比較して、前記フライバック電流の減衰速度が速い素子であり、前記目標電流は、前記電磁比例制御弁の要求出力に基づく指示電流と該指示電流に応じた振幅のディザ電流とに基づいて設定されており、前記指示電流が所定電流未満のときには、前記第2還流素子をオフして、前記フライバック電流が前記第1還流経路を通るようにする一方で、前記指示電流が前記所定電流以上のときには、前記第2還流素子をオンして、前記フライバック電流が前記第2還流経路を通るようにする、ものとした。
【0026】
この構成でも、指示電流が小さいときのディザ電流の自由度を高くすることができ、電磁比例制御弁の出力と指示電流との間のヒステリシスを解消しやすくなる。また、指示電流が比較的大きいときにはチップや基板の発熱を適切に抑制することができ、目標電流と電磁比例制御弁に供給される電流との間にずれが生じにくくなる。このことから、電磁比例制御弁の制御性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、電磁比例制御弁の制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、例示的な実施形態1に係る電磁比例制御弁駆動用の制御装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図2図2は、目標電流の電流波形とそれを実現させるためのPWM信号とを例示する図である。
図3図3は、第1還流経路の損失と第2還流経路の損失とを示すグラフである。
図4図4は、第1還流経路のRL負荷駆動波形と第2還流経路のRL負荷駆動波形とを示すグラフである。
図5図5は、ディザ電流を含む目標電流の波形を示すグラフである。
図6図6は、制御装置により還流経路を選択するフローチャートである。
図7図7は、変形例に係る電磁比例制御弁駆動用の制御装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図8図8は、実施形態2に係る電磁比例制御弁駆動用の制御装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図9図9は、実施形態2に係る制御装置により還流経路を選択するフローチャートである。
図10図10は、指示電流によってディザ波形の振幅が異なる理由を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は、電磁比例制御弁であるソレノイドバルブ100の制御装置1の構成を概略的に示す。このソレノイドバルブ100は、例えば、自動車の自動変速機において油圧を調整するための制御弁である。ソレノイドバルブ100は、コイル101を有している。ソレノイドバルブ100自体の構成は公知であるため、詳細な説明は省略するが、ソレノイドバルブ100は、コイル101に電流が供給されたときに、コイル101から発生する磁力により鉄心を移動させることで、弁開度を調整して油圧を調整する。このとき、コイル101に供給される電流と発生する磁力とはほぼ比例するため、ソレノイドバルブ100により調整される油圧は、コイル101に供給される電流に比例して変化する。
【0031】
制御装置1は、ソレノイドバルブ100のコイル101に直列に接続された駆動素子10を備える。駆動素子10は、例えばMOSFETであって、オン時にコイル101に電流を供給する。
【0032】
制御装置1は、駆動素子10に制御信号を出力するコントローラ50を有する。コントローラ50は、CPU、ROM、RAM、及びA/D変換器等を備えている。
【0033】
コントローラ50は、コイル101に供給すべき目標電流の電流波形(以下、単に目標波形という)を設定するとともに、該電流波形が実現されるように、駆動素子10をオンオフ制御する。具体的には、コントローラ50は、目標波形に基づいて、駆動素子10をオンオフ制御するためのPWM信号を生成し、該PWM信号により駆動素子10を作動させる。コントローラ50は、プリドライバとして機能する。このような機能は、コントローラ50にプログラムとして記憶されている。コントローラ50のCPUは、当該プログラムを読み込むことでプリドライバとしての機能を発揮する。
【0034】
制御装置1は、ソレノイドバルブ100のコイル101に並列に接続された第1還流素子20及び第2還流素子30を有する。第1還流素子20及び第2還流素子30は、それぞれ、駆動素子10のオフ時にコイル101から放出されるフライバック電流をコイル101に還流させるための素子である。
【0035】
図1に示すように、本実施形態1では、第1還流素子20はダイオードで構成されている。第1還流素子20は、p型半導体とn型半導体とのpn接合によって形成された一般的なダイオードであって、できる限り順電圧が高いものが採用される。第1還流素子20は、グラウンドから電流経路11に向かう方向が順方向となるように配置されている。第1還流素子20として、ファストリカバリーダイオードやショットキーバリアダイオードを用いることもできる。
【0036】
本実施形態1では、第2還流素子30は、オンオフ制御可能な素子であって、ここでは特にトランジスタで構成されている。第2還流素子30は、バイポーラトランジスタ、FET、IGBTなどを用いることができる。第2還流素子30は、駆動素子10のオフ時において、オン状態のときには、フライバック電流をコイル101に還流させることができる一方、オフ状態のときには、フライバック電流をコイル101に還流させることができないように構成されている。詳しくは後述するが、第2還流素子30は、第1還流素子20と比較して、損失が小さく、フライバック電流の減衰速度が遅い素子である。また、第1還流素子20を第2還流素子30とは別に設けかつ第2還流素子30としてFETを採用する場合には、フライバック電流がFETの寄生ダイオードを通るのを抑制するために、他のダイオードやFETを直列に更に配置する必要がある。以下では、第2還流素子30がトランジスタであるとして説明する。
【0037】
コントローラ50は、第2還流素子30をオンオフ制御することにより、前記フライバック電流の還流経路を、第1還流素子20を通る第1還流経路I1と、第2還流素子30を通る第2還流経路I2との間で切り換えるように構成されている。具体的には、コントローラ50は、第1還流経路I1を選択するときには、第2還流素子30をオフする一方で、第2還流経路I2を選択するときには、第2還流素子30をオンする。コントローラ50は、経路制御装置として機能する。このような機能は、コントローラ50にプログラムとして記憶されている。コントローラ50のCPUは、当該プログラムを読み込むことで経路選択装置としての機能を発揮する。
【0038】
本実施形態1において、少なくとも駆動素子10、第1還流素子20、及び第2還流素子30は、1つのチップ40に搭載されている。また、チップ40とコントローラ50とは、1つの基板に搭載されている。
【0039】
ソレノイドバルブ100の下流には、ソレノイドバルブ100により調整された油圧を検出する油圧検出装置70が設けられている。油圧検出装置70は、例えば歪みゲージ圧力センサや薄膜式圧力センサ等で構成されている。油圧検出装置70により検出された検出油圧は、コントローラ50に入力される。
【0040】
チップ40には、チップ40の温度、特に第1還流素子20の周辺温度を検出する温度検出装置80が設けられている。温度検出装置80は、例えばダイオードを用いた温度センサや熱電対で構成されている。温度検出装置80により検出された検出温度は、コントローラ50に入力される。
【0041】
ここで、ソレノイドバルブ100では、ソレノイドバルブ100のケースと前記鉄心との間の摩擦抵抗などにより、電流と油圧との間にヒステリシスが生じることが知られている。また、このヒステリシスを解消するには、前記鉄心に微量振動を与えることが有効であることが知られている。このため、本実施形態1においても、前記鉄心に微量振動を与えるためのディザ電流を供給するようにしている。
【0042】
図2は、目標波形とそれに対応したPWM信号とを示す。図2の下図に示すように、目標波形は、ソレノイドバルブ100の要求出力に応じた指示電流とディザ電流とからなる三角波のような形状になる。ディザ電流は、PWM信号の周期の数倍の長さに設定されたディザ周期と、指示電流と該ディザ周期とに応じて設定されたディザ振幅とで特定される。指示電流は、目標波形の1周期分の平均値に相当する。ディザ振幅は、指示電流から山又は谷までの幅に相当する。コントローラ50は、指示電流に相当する平均電流値と、ディザ振幅及びディザ周期を設定することで、目標波形を設定する。
【0043】
PWM信号は、目標波形が右上がりの部分ではオン時間が長く、目標波形が右下がりの部分ではオフ時間が長くなるように設定される。PWM信号により駆動素子10がオンすると、ソレノイドバルブ100のコイル101に電流が流れる。このとき、コイル101に流れる電流は、RL負荷駆動波形に従って増加する。また、駆動素子10がオンの状態からオフすると、コイル101に発生する逆起電力によりフライバック電流が発生する。前述したように、フライバック電流は第1還流経路I1又は第2還流経路I2を通ることで消費されて減衰する。PWM信号によって、駆動素子10のオンオフを繰り返すことで、コイル101に流れる電流の増加と減衰とが繰り返されることで、コイル101に流れる電流の波形が目標波形のようになる。
【0044】
電流と油圧との間にヒステリシスを適切に解消するためには、実現可能なディザ振幅の範囲が出来る限り広い方が好ましい。しかしながら、従来は、指示電流が小さいときには、フライバック電流の減衰速度が遅く、特に目標波形の右下がり部分の傾きを大きくできない。このため、比較的大きなディザ振幅を形成することが困難であり(図10参照)、実現可能なディザ振幅の範囲が狭くなっていた。フライバック電流の還流経路に抵抗を入れて減衰速度を速くする試みがされていたが、この場合、ディザ振幅を大きくすることができる大きさの指示電流の場合にも減衰速度が早くなってしまい、不要な損失が発生する結果、チップ40の発熱が促されてしまう。
【0045】
そこで、本実施形態1では、コントローラ50が、指示電流に応じて第1還流経路I1と第2還流経路I2とを選択するようにした。具体的には、コントローラ50は、指示電流が所定電流未満のときには、第2還流素子30をオフして、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにする一方で、指示電流が所定電流以上のときには、第2還流素子30をオンして、フライバック電流が第2還流経路I2を通るようにする。
【0046】
図3には、第1還流素子20を通った場合の損失(消費電力)と、第2還流素子30を通った場合の損失とを示す。縦軸は損失であり、横軸はフライバック電流の平均値である。損失は、フライバック電流の減衰速度に影響し、損失が大きいほどフライバック電流の減衰速度が速い。第1還流素子20は、ダイオードで構成されているため、損失W1は式1のようになる。
【0047】
W1 = Vf × I ・・・(式1)
この式において、Vfは、第1還流素子20の順電圧であり、Iはフライバック電流の平均値である。
【0048】
一方で、第2還流素子30は、トランジスタで構成されているため、損失W2は式2のようになる。
【0049】
W2 = Ron × I ・・・(式2)
この式において、Ronは、第2還流素子30のオン抵抗であり、Iはフライバック電流の平均値である。
【0050】
このように、第1還流素子20の損失は、電流に対して線形比例する一方で、第2還流素子30の損失は、電流に対して2乗に比例する。このため、図3に示すように、特に、指示電流が小さく、フライバック電流が小さい領域では、第1還流素子20の損失の方が第2還流素子30の損失よりも大きくなる。この損失の違いにより、図4に示すように、第1還流経路I1(実線で示す)が選択されると、第2還流経路I2が選択されたときと比較して、駆動素子10がオフになった後のフライバック電流の減衰速度が速くなる。これにより、指示電流が小さいときであっても、短い時間でフライバック電流を十分に減衰させることができる。この結果、指示電流が小さいときであっても、目標波形の傾きを大きくできるようになって、ディザ振幅を大きくすることができる。
【0051】
図3に破線で示すディザ生成必要損失は、電流と油圧とのヒステリシスをなくすのに必要なディザ振幅を得るために必要な損失である。第1還流素子20又は第2還流素子30に求められる損失は、ソレノイド100のコイル101等の寄生抵抗で損失する分を除いた分である。(式2)の場合と同様に、寄生抵抗による損失はフライバック電流の2乗に比例するため、フライバック電流が小さいほど該寄生抵抗による損失が小さくなる。このため、フライバック電流が小さいほど第1還流素子20又は第2還流素子30に求められる損失は大きくなる。本実施形態1では、コントローラ50は、第2還流素子30の損失がディザ生成必要損失を下回る範囲で、第1還流素子20を通る第1還流経路I1を選択するようにしている。つまり、前記第1所定電流は、所望のディザ振幅を実現するための損失が、第2還流素子30の損失を上回る指示電流である。
【0052】
したがって、コントローラ50が、第1還流経路I1と第2還流経路I2とを切り換えることで、図5に示すように、指示電流が所定電流未満の第2電流のときには、第1還流経路I1が選択されて、従来の目標波形(2点鎖線で示す)よりも大きなディザ振幅の目標波形を実現させることができる一方、指示電流が所定電流よりも大きい第1電流のときには、第2還流経路I2が選択されて、不要な損失を発生させることなく、適切に目標波形を実現させることができる。これにより、電流と油圧とのヒステリシスを適切に解消できるとともに、チップ40の発熱を抑制することができる。この結果、ソレノイドバルブ100の制御性を向上させることができる。
【0053】
本実施形態1では、コントローラ50は、第1所定電流以上の前記指示電流に対するディザ振幅を大きくする必要があるときには、指示電流が第1所定電流よりも大きいときであっても、第2還流素子30をオフして、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにする。具体的には、コントローラ50は、油圧検出装置70により検出された検出油圧と指示電流との間にヒステリシスが生じているときには、指示電流が第1所定電流よりも大きいときであっても、第2還流素子30をオフして、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにする。
【0054】
すなわち、ソレノイドバルブ100の経年劣化等により、前記摩擦抵抗の大きさが変化すると、ヒステリシスが発生するおそれがある。そこで、本実施形態1では、コントローラ50は、油圧検出装置70により検出された検出油圧と指示電流との間にヒステリシスが生じているか否かを診断する。コントローラ50は、例えば、検出油圧を縦軸、指示電流を横軸とするグラフを作成して、検出油圧と指示電流との間にヒステリシスが生じているか否かを診断する。
【0055】
そして、コントローラ50は、ヒステリシスが生じているときには、ヒステリシスを小さくすべく指示電流に対するディザ振幅を大きくする。また、コントローラ50は、ヒステリシスが生じているときには、指示電流が前記所定電流よりも大きいときであっても、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにする。前述したように、第1還流経路I1を選択すれば、フライバック電流の減衰速度を早くすることができるため、指示電流に対するディザ振幅を大きくしたとしても、当該ディザ振幅の目標波形を実現させることができる。ディザ振幅を大きくして、ソレノイドバルブ100に与える微量振動を大きくすると、前記摩擦抵抗の影響が軽減されるため、ヒステリシスを小さくする効果が期待される。
【0056】
尚、図4に示すように、指示電流が非常に大きいときには、ディザ振幅の大きさは、RL負荷駆動波形の立ち下がりよりも、立ち上がりによって決まる。このため、前述したヒステリシスに基づく制御は、指示電流が、RL負荷駆動波形の立ち下がり速度が立ち上がり速度以下の範囲である、第2所定電流値未満の範囲で有効である。第2所定電流は、第2還流経路I2を選択したときに、RL負荷駆動波形の立ち下がり速度と立ち上がり速度とが同じになる大きさの電流である。特に、第1還流経路I1を選択しかつデューティー比が0のときに、立ち下がりの傾きを所望の傾きにできる電流である。
【0057】
本実施形態1では、コントローラ50は、チップ40の温度についても参照して、第1還流経路I1と第2還流経路I2とを切り換える。具体的には、コントローラ50は、検出温度が所定温度以上のときには、指示電流が第1所定電流未満であったとしても、フライバック電流が第2還流経路I2を通るように、第2還流素子30をオンにする。
【0058】
第1還流素子20及び第2還流素子30による損失は発熱の原因となる。そのため、チップ40の温度が高いときには、出来る限り損失が小さい還流素子を通過させることが好ましい。そこで、コントローラ50は、フライバック電流が、損失が相対的に小さい第2還流経路I2を通るようにする。これにより、チップ40の発熱を抑制することができる。これにより、ソレノイドバルブ100の制御性をより向上させることができる。
【0059】
次に、コントローラ50により還流経路を切り換える際の処理動作について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0060】
まず、ステップS101において、コントローラ50は、温度検出装置80の検出温度が所定温度未満であるか否かを判定する。コントローラ50は、検出温度が所定温度未満であるYESのときには、ステップS103に進む。一方で、コントローラ50は、検出温度が所定温度以上であるNOのときには、ステップS102に進む。
【0061】
前記ステップS102では、コントローラ50は、第2還流経路I2を選択して、駆動素子10がオフのときには、第2還流素子30をオンするようにする。コントローラ50は、ステップS102の後はリターンする。
【0062】
前記ステップS103では、コントローラ50は、指示電流が第1所定電流未満であるか否かを判定する。コントローラ50は、指示電流が第1所定電流未満であるYESのときには、ステップS107に進む。一方で、コントローラ50は、指示電流が第1所定電流以上であるNOのときには、ステップS104に進む。
【0063】
前記ステップS104では、コントローラ50は、第2還流経路I2を選択して、駆動素子10がオフのときには、第2還流素子30をオンするようにする。
【0064】
次のステップS105では、コントローラ50は、油圧検出装置70の検出油圧に基づいて、指示電流と検出油圧との間にヒステリシスが生じているか否かを判定する。コントローラ50は、ヒステリシスが生じているYESのときには、ステップS106に進む。一方で、コントローラ50は、ヒステリシスが生じていないNOのときには、リターンする。
【0065】
前記ステップS106では、コントローラ50は、指示電流が第2所定電流以上であるか否かを判定する。コントローラ50は、指示電流が第2所定電流以上であるYESのときにはリターンする。一方で、コントローラ50は、指示電流が第2所定電流未満であるNOのときには前記ステップS107に進む。
【0066】
前記ステップS107では、コントローラ50は、第1還流経路I1を選択して、駆動素子10がオフのときには、第2還流素子30をオフするようにする。ステップS107の後はリターンする。
【0067】
したがって、本実施形態1によると、ソレノイドバルブ100のコイル101に接続され、オン時に該コイル101に電流を流す駆動素子10と、駆動素子10に、前記コイルに供給すべき目標電流を示す信号を出力するプリドライバ(コントローラ50)と、コイル101に並列に接続され、駆動素子10のオフ時にコイル101から放出されるフライバック電流をコイル101に還流させるための第1還流素子20と、コイル101及び第1還流素子20に並列に接続され、オンオフ制御可能であり、オン時にフライバック電流をコイル101に還流可能な第2還流素子30と、第2還流素子30のオンオフを制御することで、フライバック電流の還流経路を、第1還流素子20を通る第1還流経路I1と、第2還流素子30を通る第2還流経路I2とに切換制御可能な経路制御装置(コントローラ50)と、を備え、第1還流素子20は、第2還流素子30と比較して、フライバック電流の減衰速度が速い素子であり、目標電流は、ソレノイドバルブ100の要求出力に基づく指示電流と指示電流に応じたディザ振幅のディザ電流とに基づいて設定されており、経路制御装置は、指示電流が第1所定電流未満のときには、第2還流素子30をオフして、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにする一方で、指示電流が第1所定電流以上のときには、第2還流素子30をオンして、フライバック電流が第2還流経路I2を通るようにする。これにより、指示電流が第1所定電流未満のときに目標波形におけるディザ振幅を大きくしたとしても、目標波形を実現させることができる。これにより、ディザ電流の自由度が向上される。一方で、指示電流が第1所定電流以上のときには、適切な速度でもってフライバック電流を減衰させることができる。これにより、チップ40の発熱を抑制することができる。
【0068】
したがって、ディザ電流の自由度が高くなることで、ソレノイドバルブ100の出力と指示電流との間のヒステリシスを解消しやすくなるとともに、チップ40の発熱が抑制されることで、目標電流とソレノイドバルブ100に供給される電流との間にずれが生じにくくなる。このことから、ソレノイドバルブ100の制御性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態1では、油圧を検出する油圧検出装置70を更に備え、コントローラ50は、指示電流が第1所定電流以上のときに、油圧検出装置70が検出した検出圧力と指示電流との間にヒステリシスが生じたときには、該ヒステリシスを小さくすべく指示電流に対するディザ振幅を大きくし、コントローラ50はまた、指示電流が第1所定電流以上であっても、油圧検出装置70が検出した検出圧力と指示電流との間にヒステリシスが生じたときには、第2還流素子30をオフして、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにする。これにより、検出圧力と指示電流との間にヒステリシスが生じるようになったときには、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにすることで、フライバック電流の減衰速度を上げることができる。これにより、ディザ振幅を大きくして、電磁比例制御弁に与える微量振動を大きくして、ヒステリシスを低減させることができる。したがって、ソレノイドバルブ100の制御性をより向上させることができる。
【0070】
特に、本実施形態1では、コントローラ50は、指示電流が、第1指示電流以上でかつ、RL負荷駆動波形の立ち下がり速度と立ち上がり速度とが同じになる大きさの電流である第2所定電流未満であるときに、検出圧力と指示電流との間にヒステリシスが生じたときには、第2還流素子30をオフして、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにする。これにより、ディザ振幅を確実に大きくすることができ、ソレノイドバルブ100の制御性をより向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態1では、駆動素子10、第1還流素子20、及び第2還流素子30は同一のチップ40に形成されており、チップ40の温度を検出する温度検出装置80を更に備え、コントローラ50は、温度検出装置80が検出した検出温度が所定温度以上であるときには、指示電流が第1所定電流未満であったとしても、第2還流素子30をオンして、フライバック電流が第2還流経路I2を通るようにする。これにより、チップ40の温度が高いときには、フライバック電流の減衰が相対的に緩い第2還流経路I2を通すことで、チップ40の発熱が促進されるのを抑制することができる。これにより、ソレノイドバルブ100の制御性をより向上させることができる。
【0072】
図7は、変形例に係る制御装置301の構成を示す。この構成では、第1還流素子と第2還流素子とが、1つのMOSFET320によって形成されている。すなわち、第1還流素子はMOSFET320の寄生ダイオードを利用する構成となっている。この構成であっても、第1還流素子を通る第1還流経路I1と、第2還流素子を通る第2還流経路I2とを切り換え可能であるため、指示電流に応じて適切な還流経路を選択することができる。
【0073】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施形態2では、駆動素子10とソレノイドバルブ100との間の電流経路11に、電流検出部260が設けられている点で、前記実施形態1とは異なる。電流検出部260は、コントローラ250からのPWM信号に基づいて、駆動素子10からコイル101に供給される電流を検出する。電流検出部260は、例えば電流センス抵抗を含み、電流センス抵抗に生じた電圧に基づいて、駆動素子10からコイル101に供給される電流を検出する。
【0075】
電流経路11を流れる電流を検出することで、実際にコイル101に供給される電流の波形を検出することができる。ここで検出される電流波形の1周期分の平均値(以下、平均電流値という)は、指示電流に相当する。
【0076】
図10は、実施形態2に係る制御装置のコントローラ250により還流経路を切り換える際の処理動作を示すフローチャートである。
【0077】
まず、ステップS201において、コントローラ250は、温度検出装置80の検出温度が所定温度未満であるか否かを判定する。コントローラ250は、検出温度が所定温度未満であるYESのときには、ステップS203に進む。一方で、コントローラ250は、検出温度が所定温度以上であるNOのときには、ステップS202に進む。
【0078】
前記ステップS202では、コントローラ250は、第2還流経路I2を選択して、駆動素子10がオフのときには、第2還流素子30をオンするようにする。コントローラ250は、ステップS202の後はリターンする。
【0079】
前記ステップS203では、コントローラ250は、電流経路11を流れる電流の平均電流が第1所定電流未満であるか否かを判定する。コントローラ250は、平均電流が第1所定電流未満であるYESのときには、ステップS207に進む。一方で、コントローラ250は、平均電流が第1所定電流以上であるNOのときには、ステップS204に進む。
【0080】
前記ステップS204では、コントローラ250は、第2還流経路I2を選択して、駆動素子10がオフのときには、第2還流素子30をオンするようにする。
【0081】
次のステップS205では、コントローラ250は、油圧検出装置70の検出油圧に基づいて、指示電流と検出油圧との間にヒステリシスが生じているか否かを判定する。コントローラ250は、ヒステリシスが生じているYESのときには、ステップS206に進む。一方で、コントローラ250は、ヒステリシスが生じていないNOのときには、リターンする。
【0082】
前記ステップS206では、コントローラ250は、平均電流が第2所定電流以上であるか否かを判定する。コントローラ250は、平均電流が第2所定電流以上であるYESのときにはリターンする。一方で、コントローラ250は、平均電流が第2所定電流未満であるNOのときには前記ステップS207に進む。
【0083】
前記ステップS207では、コントローラ250は、第1還流経路I1を選択して、駆動素子10がオフのときには、第2還流素子30をオフするようにする。ステップS207の後はリターンする。
【0084】
この構成でも、指示電流が小さいときに目標波形におけるディザ振幅を大きくしたとしても、目標波形を実現させることができる。これにより、ディザ電流の自由度が向上される。一方で、指示電流が比較的大きいときには、適切な速度でもってフライバック電流を減衰させることができる。これにより、チップ40の発熱を抑制することができる。
【0085】
また、この構成では、実際にコイル101に供給される電流に基づいて還流経路を切り換えるため、駆動素子10の特性や温度の影響によって、目標波形と実際にコイルに供給される電流の波形との間にずれがあったとしても、コイルに実際に供給される電流に基づいて、フライバック電流の還流経路を選択することができる。これにより、所望のディザ振幅を精度良く実現させることができるため、ソレノイドバルブ100の制御性を向上させることができる。
【0086】
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0087】
例えば、前記実施形態1及び2では、第1還流素子20としてダイオードを選択していた。これに限らず、第1還流素子20として抵抗を用いてもよい。この場合、抵抗の大きさは、第2還流素子30のオン抵抗よりも大きくかつ駆動素子10からコイル101に流れる電流を低下させ難い大きさにする必要がある。また、抵抗とダイオードとを組み合わせて第1還流素子20としてもよい。
【0088】
前記実施形態1及び2では、第1所定電流は、所望のディザ振幅を実現するための損失が、第2還流素子30の損失を上回る指示電流であった。これに限らず、第1所定電流は、第1還流素子20の損失が最大許容損失に到達する電流であってもよい。この場合、コントローラ50は、基本的には第1還流経路I1を選択し、第1還流素子20の損失が最大許容損失に到達するときには、第2還流経路I2を選択して、第2還流素子30をオンする。
【0089】
前記実施形態2では、電流検出部260が検出した電流経路11を流れる電流の平均電流に基づいて、還流経路を選択していた。これに限らず、電流検出部260が検出した電流経路11を流れる電流のディザ電流の振幅に基づいて、還流経路を選択するようにしてもよい。具体的には、ディザ電流が所定幅未満のときには、第2還流素子30をオフして、フライバック電流が第1還流経路I1を通るようにする一方で、ディザ電流の振幅が所定幅以上のときには、第2還流素子30をオンして、フライバック電流が第2還流経路I2を通るようにしてもよい。
【0090】
また、前記実施形態1及び2では、コントローラ50,250が、プリドライバと経路制御装置とを担っていたが、これらを独立してそれぞれ設けてもよい。この場合、プリドライバと経路制御装置とを通信可能な構成とする必要がある。
【0091】
また、前記実施形態1及び2では、駆動素子10、第1還流素子20、及び第2還流素子30は、1つのチップ40に搭載されていた。これに限らず、第1還流素子20をチップ40外に外付けする構成であってもよい。この場合、温度検出装置80は、チップ40の温度ではなく、第1還流素子20の周辺温度を測定する。
【0092】
また、前記実施形態1及び2では、温度検出装置80は、チップ40の温度を検出していた。これに限らず、第1還流素子20の周辺温度を測定するものであればよく、例えば、チップ40とコントローラ50,250が搭載された基板の温度を検出する構成でもよい。この場合、コントローラ50,250は、基板の温度に基づいて還流経路を切り換える可能な構成となる。
【0093】
また、前記実施形態1及び2では、ハイサイド側に駆動用の回路を配置する場合について説明した。これに限らず、ローサイド側に駆動用の回路を配置する場合についても同様の構成を採用することができる。
【0094】
また、前記実施形態1及び2では、油圧検出装置70や温度検出装置80が設けられていたが、これらは必須ではなく設けなくてもよい。
【0095】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
ここに開示された技術は、コイルに供給する電流に比例した弁開度で作動流体の圧力を制御する電磁比例制御弁を駆動させる電磁比例制御弁の制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0097】
10 駆動素子
20 第1還流素子
30 第2還流素子
40 チップ
70 油圧検出装置
80 温度検出装置
100 ソレノイドバルブ(電磁比例制御弁)
101 コイル
250 コントローラ
260 電流検出部
I1 第1還流経路
I2 第2還流経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10