IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東日製作所の特許一覧

<>
  • 特開-トルクレンチ 図1
  • 特開-トルクレンチ 図2
  • 特開-トルクレンチ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126044
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】トルクレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20240912BHJP
   B25B 23/155 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B25B21/00 530D
B25B23/155
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034175
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151690
【氏名又は名称】株式会社東日製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聖司
(72)【発明者】
【氏名】桑村 英憲
(72)【発明者】
【氏名】坂元 一星
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038BC01
3C038BC03
3C038BC04
3C038CA06
(57)【要約】
【課題】 駆動ユニットを介してトルクレンチ本体に不要な外力が作用することを抑制する。
【解決手段】 トルクレンチ(1)は、トルクレンチ本体(10)と、駆動ユニット(20)と、接続ユニット(30)とを有する。トルクレンチ本体(10)は、ラチェット(122)を含むヘッド(12)を備える。駆動ユニット(20)は、駆動源からの駆動力をラチェット(122)に伝達する回転軸(22)を備える。接続ユニット(30)は、駆動ユニット(20)をヘッド(12)に接続する。接続ユニット(30)は、ベアリング(32)及びホルダ(31)を有する。ベアリング(32)は、駆動ユニット(20)の外面に固定される内輪(32a)を備える。ホルダ(31)は、ヘッド(12)に対して着脱可能に取り付けられ、ベアリング(32)の外輪(32b)を保持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラチェットを含むヘッドを備えたトルクレンチ本体と、
駆動源からの駆動力を前記ラチェットに伝達する回転軸を備えた駆動ユニットと、
前記駆動ユニットを前記ヘッドに接続する接続ユニットと、を有し、
前記接続ユニットは、
前記駆動ユニットの外面に固定される内輪を備えたベアリングと、
前記ヘッドに対して着脱可能に取り付けられ、前記ベアリングの外輪を保持するホルダと、を有することを特徴とするトルクレンチ。
【請求項2】
前記ヘッドは、前記回転軸の軸方向に突出して前記ホルダを支持する支持部を有しており、
前記支持部の外周面と前記ホルダの内周面には、互いに係合するネジ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクレンチ。
【請求項3】
前記接続ユニットは、前記駆動ユニットの先端部の外面に着脱可能に取り付けられるナットを有しており、
前記ベアリングの内輪は、前記回転軸の軸方向において、前記駆動ユニットの外面に形成された段差部と前記ナットとによって挟まれて固定されていることを特徴とする請求項2に記載のトルクレンチ。
【請求項4】
前記支持部の内周面は、前記駆動ユニットの先端部及び前記ナットを収容するスペースを形成することを特徴とする請求項3に記載のトルクレンチ。
【請求項5】
前記ベアリングの外輪は、前記回転軸の軸方向において、前記ホルダに形成された爪部と、前記支持部の上端面とによって挟まれて固定されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のトルクレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源により目標トルク値よりも低いトルク値まで締結部材を仮締めした後、手動により目標トルク値まで締結部材を締め付ける半自動式のトルクレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
半自動式のトルクレンチでは、手動式のトルクレンチ本体に駆動ユニットを取り付けており、駆動ユニットは、電動モータやエアモータ等の駆動源と、駆動源の出力を減速する減速機とを備えている。ここで、特許文献1に記載のナットランナ付トルクレンチのように、駆動ユニットがトルクレンチ本体に一体的に固定されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭49-38640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動ユニットがトルクレンチ本体に固定されていると、駆動ユニットによって締結部材を仮締めした後に、トルクレンチ本体を手動で操作して締結部材を締め付けるとき、駆動ユニットを介してトルクレンチ本体に不要な外力が作用してしまうことがある。具体的には、外力が駆動ユニットに作用したとき、この外力が駆動ユニットを介してトルクレンチ本体に伝達されてしまう。この場合には、トルクレンチ本体の手動操作によって締結部材を目標トルク値まで締め付けようとするとき、締付け時のトルク値に悪影響を与えてしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明であるトルクレンチは、トルクレンチ本体と、駆動ユニットと、接続ユニットとを有する。トルクレンチ本体は、ラチェットを含むヘッドを備える。駆動ユニットは、駆動源からの駆動力をラチェットに伝達する回転軸を備える。接続ユニットは、駆動ユニットをヘッドに接続する。接続ユニットは、ベアリング及びホルダを有する。ベアリングは、駆動ユニットの外面に固定される内輪を備える。ホルダは、ヘッドに対して着脱可能に取り付けられ、ベアリングの外輪を保持する。
【0006】
ヘッドには、回転軸の軸方向に突出してホルダを支持する支持部を設けることができる。そして、支持部の外周面とホルダの内周面に、互いに係合するネジ部を形成することができる。
【0007】
接続ユニットには、駆動ユニットの先端部の外面に着脱可能に取り付けられるナットを含めることができる。ここで、回転軸の軸方向において、駆動ユニットの外面に形成された段差部とナットとによって、ベアリングの内輪を挟んで固定することができる。
【0008】
支持部の内周面により、駆動ユニットの先端部及びナットを収容するスペースを形成することができる。回転軸の軸方向において、ホルダに形成された爪部と、支持部の上端面とによって、ベアリングの外輪を挟んで固定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トルクレンチ本体及び駆動ユニットが、ベアリングを含む接続ユニットによって接続されているため、駆動ユニットに作用した外力がトルクレンチ本体に伝達されることを抑制できる。例えば、駆動ユニットによって締結部材の仮締めを行った後、トルクレンチ本体を操作して締結部材を目標トルク値まで締め付けるとき、駆動ユニットに作用した外力がトルクレンチ本体に伝達されて、トルクレンチ本体による締付け時のトルク値に悪影響を与えてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半自動式のトルクレンチの外観図である。
図2】トルクレンチの一部の内部構造を示す拡大図である。
図3】駆動ユニット、接続ユニット及びトルクレンチ本体を分離させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態である半自動式のトルクレンチについて、図1図3を用いて説明する。図1は、トルクレンチの外観図であり、一部の領域については内部構造を示している。図2は、図1に示す内部構造の拡大図であり、図3は、図2に示す内部構造を分離させた状態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、トルクレンチ1は、作業者が手動で操作するトルクレンチ本体10と、電動モータやエアモータなどの駆動源を含む駆動ユニット20と、駆動ユニット20をトルクレンチ本体10に接続するための接続ユニット30とを有する。
【0013】
トルクレンチ本体10は、作業者が握るハンドル11と、ハンドル11の先端に対して回転可能に接続されたヘッド12とを有する。ハンドル11の内部には、締付け時のトルク値が予め設定された目標トルク値に到達したときにトルクの伝達を解除するトグル機構(不図示)が配置されている。
【0014】
トグル機構としては、公知の機構を採用することができる。例えば、目標トルク値を設定するためのトグルバネと、トグルバネの端部に当接するトグルシートと、トグルシート及びヘッド12(後述するヘッド本体121)を連結するリンク機構とによって、トグル機構を構成することができる。締付け時のトルク値が目標トルク値に到達したときには、リンク機構が作動することにより、トグルシートからヘッド12への力の伝達が解除され、作業者は締付けトルク値が目標トルク値に到達したことを把握することができる。
【0015】
図2及び図3に示すように、ヘッド12は、ヘッド本体121及びラチェット122を有する。ヘッド本体121には、ラチェット122を収容する貫通孔121aが形成されており、ラチェット122は、ヘッド本体121により回転可能に保持されている。ラチェット122において、軸周りに延びる外周面にはラチェット歯122aが形成されており、ヘッド本体121の貫通孔121aにはラチェット爪(不図示)が配置されている。ラチェット爪は、バネの付勢力を受けて、ラチェット歯122aに係合する。
【0016】
ヘッド本体121を一方向に回転させると、ラチェット爪がラチェット歯122aに係合した状態が維持され、ラチェット122は、ヘッド本体121と共に一方向に回転する。一方、ヘッド本体121を他方向に回転させると、ラチェット歯122aがバネの付勢力に抗してラチェット爪を押し込んでラチェット爪との係合を解除することにより、ラチェット122に対してヘッド本体121が相対的に回転する。
【0017】
ラチェット122には、ヘッド本体121から下方に突出する角軸部122bが形成されており、角軸部122bにはソケット(不図示)が取り付けられる。ボルトやナット等の締結部材に対してソケットを取り付けた後、ラチェット122を一方向に回転させることにより、締結部材を締め付けることができる。
【0018】
駆動ユニット20の外装を構成するケース21の内部には、駆動源(不図示)が配置されている。駆動源には減速機構(不図示)が接続されており、減速機構(不図示)には回転軸22が接続されている。これにより、駆動源の駆動力が減速機構を介して回転軸22に伝達され、回転軸22を所定の軸回りに回転させることができる。回転軸22の外周面にはベアリング23が固定されており、ベアリング23は、ケース21に対して回転軸22を回転可能に支持する。
【0019】
回転軸22はケース21を貫通し、回転軸22の先端部22aはケース21の先端部21aから突出する。回転軸22の先端部22aは、ラチェット122の上面に形成された凹部122cに挿入され、先端部22a及び凹部122cは、回転軸22の回転方向において互いに係合する。これにより、駆動源からの駆動力によって回転軸22を回転させることにより、ラチェット122を回転させることができる。
【0020】
接続ユニット30は、ホルダ31と、ベアリング32と、ナット33とを有する。ベアリング32は、ホルダ31の内周面とケース21の外周面との間に配置されており、内輪32aと、外輪32bと、内輪32a及び外輪32bの間に配置される複数の転動体32cとを有する。内輪32aはケース21の外周面に対して固定され、外輪32bはホルダ31の内周面に対して固定される。
【0021】
ヘッド本体121の上面には、上方(回転軸22の軸方向)に突出する円筒形状の支持部121bが形成されており、支持部121bは、ホルダ31を支持するために用いられる。支持部121bの外周面には、ネジ部121b1が形成されている。支持部121bの内周面121b2は、ケース21の先端部21aやナット33を収容するためのスペースSを形成する。
【0022】
ホルダ31の内周面には、支持部121bのネジ部121b1と係合するネジ部31aが形成されている。ネジ部121b1及びネジ部31aを互いに係合させることにより、ホルダ31をヘッド本体121(支持部121b)に固定することができる。すなわち、ホルダ31は、ヘッド本体121(支持部121b)に対して着脱可能に取り付けられる。
【0023】
ホルダ31の上端部には、ホルダ31の内径側に突出する爪部31bが形成されており、ホルダ31を支持部121bに固定するとき、支持部121bの上端面121b3と爪部31bとの間にベアリング32の外輪32bが配置される。ここで、ネジ部121b1,31aの係合を介して、ホルダ31を支持部121bに締め付けることにより、回転軸22の軸方向(図3の上下方向)において、支持部121bの上端面121b3と爪部31bとによって外輪32bを挟み込むことができ、外輪32bを固定することができる。
【0024】
ケース21の先端部21aの外周面にはネジ部21bが形成されており、ネジ部21bにはナット33が係合する。すなわち、ナット33は、ケース21の先端部21aに対して着脱可能に取り付けられる。
【0025】
ケース21の外周面には、段差部21cが形成されており、ネジ部21bにナット33を係合させるときには、段差部21c及びナット33の間に、ベアリング32の内輪32aが配置される。ここで、ネジ部21b及びナット33の係合を介して、ナット33をケース21の先端部21aに締め付けることにより、回転軸22の軸方向(図3の上下方向)において、ナット33の上端面と段差部21cとによって内輪32aを挟み込むことができ、内輪32aを固定することができる。
【0026】
本実施形態であるトルクレンチ1を用いて締結部材を締め付けるときには、まず、駆動ユニット20によって回転軸22を回転させることにより、ラチェット122を回転させる。この締付け作業は仮締めであり、目標トルク値よりも低いトルク値まで締結部材が締め付けられる。仮締めを行った後、作業者はトルクレンチ本体10を操作することにより、目標トルク値まで締結部材を締め付けて締付作業を完了する。
【0027】
本実施形態によれば、ヘッド12及び駆動ユニット20は、ベアリング32を含む接続ユニット30を介して接続されているため、回転軸22の軸回りにおいて相対的に回転することができる。これにより、駆動ユニット20に外力が加えられて駆動ユニット20が回転軸22の軸回りの方向に変位しようとするとき、駆動ユニット20だけを変位させることができ、駆動ユニット20の変位がヘッド12に伝達されない。
【0028】
したがって、駆動ユニット20によって締結部材を仮締めした後に、トルクレンチ本体10の操作によって締結部材を締め付けるとき、駆動ユニット20からトルクレンチ本体10(ヘッド12)に不要な外力が作用してしまうことを抑制できる。そして、締結部材の締付けを完了させたときのトルク値に悪影響を与えることを抑制でき、締付け完了時のトルク値を目標トルク値とすることができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、回転軸22の軸回りにホルダ31を回転させることにより、接続ユニット30及び駆動ユニット20をヘッド12(ヘッド本体121の支持部121b)から取り外すことができる。これにより、トルクレンチ本体10から駆動ユニット20を容易に取り外して、駆動ユニット20だけのメンテナンス等を行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
1:トルクレンチ、10:トルクレンチ本体、12:ヘッド、121:ヘッド本体、
121b:支持部、121b1:ネジ部、121b2:内周面、121b3:上端面、
122:ラチェット、20:駆動ユニット、21:ケース、21a:先端部、
21b:ネジ部、21c:段差部、22:回転軸、30:接続ユニット、31:ホルダ、
31b:爪部、32:ベアリング、32a:内輪、32b:外輪、33:ナット
図1
図2
図3