(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126050
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステム、作業機械、及び作業機械を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240912BHJP
H02P 29/02 20160101ALI20240912BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240912BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240912BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240912BHJP
【FI】
E02F9/20 C
H02P29/02
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034181
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 真
【テーマコード(参考)】
2D003
5H125
5H501
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB07
2D003BA05
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB07
2D003FA02
5H125AA12
5H125AC12
5H125BA00
5H125EE08
5H125EE27
5H125EE41
5H501AA20
5H501CC04
5H501GG03
5H501HB07
5H501JJ03
5H501LL01
5H501LL60
(57)【要約】
【課題】蓄電装置の蓄電残量が低くなった場合、さらに電力消費の低減を図ること。
【解決手段】蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、電動モータによって駆動するメイン油圧ポンプとを備え、メイン油圧ポンプから供給される作動油によって駆動する作業機械を制御するためのシステムであって、コントローラを備える。コントローラは、蓄電装置の蓄電残量を検出し、検出した蓄電装置の蓄電残量に基づいて、電動モータの回転数を所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、前記電動モータによって駆動する油圧ポンプとを備え、前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動する作業機械を制御するためのシステムであって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、
前記蓄電装置の蓄電残量を検出し、
検出した前記蓄電装置の蓄電残量に基づいて、前記電動モータの回転数を所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御する、
システム。
【請求項2】
前記作業機械を操作するための操作装置を備え、
前記コントローラは、
検出した前記蓄電装置の蓄電残量に基づいて、判定時間を決定し、
前記操作装置から操作指令を取得し、
取得した前記操作指令に基づいて、前記操作装置の無操作状態が前記判定時間継続したか否かを判定し、
前記操作装置の無操作状態が前記判定時間継続したと判定した場合、前記電動モータの回転数を前記所定のアイドル回転数へ減速させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、
第1判定時間と、前記第1判定時間よりも短い第2判定時間とを記憶するメモリを含み、
前記検出した前記蓄電装置の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、前記第1判定時間を選択し、
前記検出した前記蓄電装置の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、前記第2判定時間を選択する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、前記電動モータによって駆動する油圧ポンプとを備え、前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動する作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械を操作するための操作装置と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記蓄電装置の蓄電残量を検出し、
検出した前記蓄電装置の蓄電残量に基づいて、前記電動モータの回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを決定し、
前記操作装置からの操作指令に基づいて、前記操作装置が操作されたか否かを判定し、
前記操作装置が操作されたと判定した場合、決定した前記速さで前記電動モータの回転数を前記所定のアイドル回転数から前記目標回転数へ復帰させる、
システム。
【請求項5】
前記コントローラは、
検出した前記蓄電装置の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、検出した前記蓄電装置の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合よりも、前記所定のアイドル回転数から前記目標回転数へ復帰させる速さが遅くなるように制御する、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記蓄電装置の蓄電残量を検出し、
検出した前記蓄電装置の蓄電残量に基づいて、前記電動モータの回転数を所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御する、
作業機械。
【請求項7】
蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、
操作装置と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記蓄電装置の蓄電残量を検出し、
検出した前記蓄電装置の蓄電残量に基づいて、前記電動モータの回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを決定し、
前記操作装置からの操作指令に基づいて、前記操作装置が操作されたか否かを判定し、
前記操作装置が操作されたと判定した場合、決定した前記速さで前記電動モータの回転数を前記所定のアイドル回転数から前記目標回転数へ復帰させる、
作業機械。
【請求項8】
蓄電装置からの電力によって駆動する作業機械を制御するための方法であって、
前記蓄電装置の蓄電残量を検出することと、
検出した前記蓄電装置の蓄電残量に基づいて、前記蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータの回転数を所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御することと、
を含む、方法。
【請求項9】
蓄電装置からの電力によって駆動する作業機械を制御するための方法であって、
前記蓄電装置の蓄電残量を検出することと、
検出した前記蓄電装置の蓄電残量に基づいて、前記蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータの回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを決定することと、
前記作業機械を操作するための操作装置から操作指令を取得することと、
前記操作装置からの操作指令に基づいて、前記操作装置が操作されたか否かを判定することと、
前記操作装置が操作されたと判定した場合、決定した前記速さで前記電動モータの回転数を前記所定のアイドル回転数から前記目標回転数へ復帰させることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械を制御するためのシステム、作業機械、及び作業機械を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式油圧ショベルにおいて、電動モータの電力消費の低減を図るために、操作手段の操作位置が中立位置にある場合は、ローアイドル回転数となるように、電動モータの電圧を制御するオートアイドル制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、操作手段の操作位置が中立位置にある場合に、ローアイドル回転数となるように、電動モータの電圧を制御することにより、バッテリの電力消費を抑えることが可能である。ところが、特許文献1は、バッテリの蓄電残量に関わらない制御であるため、蓄電装置の蓄電残量が少なくなった場合には、さらに電力消費の低減を図ることが望ましい。
【0005】
本開示は、蓄電装置の蓄電残量が少なくなった場合に、さらに電力消費の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る作業機械を制御するためのシステムは、蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、電動モータによって駆動する油圧ポンプとを備え、油圧ポンプから供給される作動油によって駆動する作業機械を制御するためのシステムであって、コントローラを備える。コントローラは、蓄電装置の蓄電残量を検出する。コントローラは、検出した蓄電装置の蓄電残量に基づいて、電動モータの回転数を所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御する。
【0007】
本開示に係る作業機械を制御するためのシステムは、蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、電動モータによって駆動する油圧ポンプとを備え、油圧ポンプから供給される作動油によって駆動する作業機械を制御するためのシステムであって、作業機械を操作するための操作装置と、コントローラと、を備える。コントローラは、蓄電装置の蓄電残量を検出する。コントローラは、検出した蓄電装置の蓄電残量に基づいて、電動モータの回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを決定する。コントローラは、操作装置からの操作指令に基づいて、操作装置が操作されたか否かを判定する。コントローラは、操作装置が操作されたと判定した場合、決定した速さで電動モータの回転数をアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる。
【0008】
本開示に係る作業機械は、蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、コントローラと、を備える。コントローラは、蓄電装置の蓄電残量を検出する。コントローラは、検出した蓄電装置の蓄電残量に基づいて、電動モータの回転数を所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御する。
【0009】
本開示に係る作業機械は、蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータと、操作装置と、コントローラと、を備える。コントローラは、蓄電装置の蓄電残量を検出する。コントローラは、検出した蓄電装置の蓄電残量に基づいて、電動モータの回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを決定する。コントローラは、操作装置からの操作指令に基づいて、操作装置が操作されたか否かを判定する。コントローラは、操作装置が操作されたと判定した場合、決定した速さで電動モータの回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる。
【0010】
本開示に係る作業機械を制御するための方法は、蓄電装置からの電力によって駆動する作業機械を制御するための方法であって、蓄電装置の蓄電残量を検出することと、検出した蓄電装置の蓄電残量に基づいて、蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータの回転数を所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御することと、を含む。
【0011】
本開示に係る作業機械を制御するための方法は、蓄電装置からの電力によって駆動する作業機械を制御するための方法であって、蓄電装置の蓄電残量を検出することと、検出した蓄電装置の蓄電残量に基づいて、蓄電装置からの電力によって駆動する電動モータの回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを決定することと、作業機械を操作するための操作装置から操作指令を取得することと、操作装置からの操作指令に基づいて、操作装置が操作されたか否かを判定することと、操作装置が操作されたと判定した場合、決定した速さで電動モータの回転数をアイドル回転数から目標回転数へ復帰させることと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、蓄電装置の蓄電残量が低くなった場合、さらに電力消費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る作業機械の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る作業機械の制御に関する構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る、蓄電装置の蓄電残量が所定の閾値まで低下していないときのオートアイドル制御の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る、蓄電装置の蓄電残量が所定の閾値まで低下したときのオートアイドル制御の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る作業機械を制御するための方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る、蓄電装置の蓄電残量が所定の閾値まで低下していないときのオートアイドル制御の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る、蓄電装置の蓄電残量が所定の閾値まで低下したときのオートアイドル制御の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、作業機械の制御に関する構成の変形例を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、作業機械の制御に関する構成の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0015】
実施形態においては、作業機械の一例として、蓄電装置であるバッテリを動力源とする電気駆動式の油圧ショベルについて説明するが、本開示は、油圧ショベル以外に、フォークリフト、ホイールローダ、ブルドーザ、ダンプトラック等の他の作業機械にも適用可能である。
【0016】
[第1実施形態]
<作業機械>
図1は、第1実施形態に係る作業機械の構成を概略的に示す斜視図である。
図1に示されるように、実施形態における作業機械100は、例えば油圧ショベルである。
【0017】
作業機械100は、走行体102と、旋回体103と、作業機105とを備えている。走行体102は、走行モータ17と、履帯171とを有している。履帯171は、右履帯171Rと左履帯171Lとを有している。作業機械100は、履帯171の回転により走行可能である。なお、作業機械100は、履帯171の代わりにタイヤを有していてもよい。
【0018】
旋回体103は、走行体102に旋回可能に支持されている。作業機105は、旋回体103に回動可能に連結される。作業機105は、ブーム105Aと、アーム105Bと、バケット105Cとを有する。作業機105は、後述するシリンダ18により駆動される。旋回体103は、運転室112を有している。運転室112内には、操作装置5と、回転数設定装置7とを有する。作業機械100は、システム1を備える。
【0019】
<システム>
図2は、第1実施形態に係る作業機械の制御に関する構成を概略的に示す図である。システム1は、蓄電装置2からの電力によって駆動する作業機械100を制御するためのシステムである。システム1は、少なくとも1つ以上のプロセッサで構成されるコントローラ9を備える。
【0020】
図2に示すように、システム1は、蓄電装置2と、インバータ3と、電動機である電動モータ4と、操作装置5と、回転数設定装置7と、コントローラ9とを備える。システム1は、さらに、メイン油圧ポンプ12と、パイロット油圧ポンプ13と、油圧制御バルブ15と、旋回モータ16と、走行モータ17と、シリンダ18とを備える。実施形態において、旋回モータ16、走行モータ17、及びシリンダ18は、メイン油圧ポンプ12から供給される作動油によって駆動する油圧アクチュエータであるが、これに限られない。例えば、旋回モータ16、走行モータ17、及びシリンダ18のいずれかは、蓄電装置2からの電力によって駆動する電動式アクチュエータであってもよい。
【0021】
作業機械100は、旋回モータ16によって、旋回体103が旋回する。作業機械100は、走行モータ17によって、履帯171を回転駆動させることにより走行する。作業機械100は、シリンダ18によって、作業機105が作動する。実施形態において、作業機械100は、右履帯171R及び左履帯171Lを回転駆動させるために、右走行モータ17Rと左走行モータ17Lとを備える。
【0022】
蓄電装置2は、作業機械100が駆動する電力を供給する。蓄電装置2は、蓄電残量を示す充電状態(SOC:State Of Charge)データをコントローラ9へ出力する。
【0023】
インバータ3は、蓄電装置2からの電力を電動モータ4へ供給する。インバータ3は、コントローラ9からのモータ制御指令に基づいて、電動モータ4へ電力を供給する。インバータ3は、コントローラ9からのモータ制御指令に基づいて、電動モータ4を制御する。
【0024】
電動モータ4は、蓄電装置2からの電力によって駆動する。電動モータ4は、作業機械100の動力源である。電動モータ4は、作業機械100を駆動させるための動力を供給する。電動モータ4は、メイン油圧ポンプ12及びパイロット油圧ポンプ13等を駆動する。電動モータ4は、メイン油圧ポンプ12及びパイロット油圧ポンプ13等に動力を出力する。
【0025】
操作装置5は、作業機械100を操作するためのオペレータ入力装置である。操作装置5は、例えば、作業機操作レバー51と、走行操作ペダル52とを備えている。
【0026】
作業機操作レバー51は、作業機105を制御するための作業機操作装置である。作業機操作レバー51は、例えば、ブーム105A、アーム105B、バケット105Cのそれぞれを制御するためにオペレータによって操作される。オペレータは、作業機操作レバー51を操作することによって、ブーム105A、アーム105B、バケット105Cを駆動するシリンダ18の動作速度を制御する。作業機操作レバー51は、図示しないレバー操作量センサを含む。レバー操作量センサは、例えば、操作量に応じて変化するパイロット圧を検出するパイロット圧センサなどである。レバー操作量センサは、作業機操作レバー51の操作量を示す操作指令をコントローラ9へ出力する。
【0027】
図2においては、作業機操作レバー51として記載しているが、操作レバーの数は限定されない。作業機操作レバー51は、ブーム105A、アーム105B、バケット105Cのそれぞれに対応付けられた操作レバーを有していてもよい。また、作業機操作レバー51は、走行体102に対する旋回体103の旋回操作に対応付けられていてもよい。作業機操作レバー51は、ブーム105Aの操作、アーム105Bの操作、バケット105Cの操作、及び旋回体103の旋回操作うちいずれか2つの組み合わせを、1本の操作レバーで共用してもよい。
【0028】
走行操作ペダル52は、作業機械100の走行を制御するための走行操作装置である。走行操作ペダル52は、例えば、作業機械100の走行速度を制御するためにオペレータによって操作される。オペレータは、走行操作ペダル52を操作することによって、走行モータ17の回転速度を制御する。走行操作ペダル52は、図示しないペダル操作量センサを含む。ペダル操作量センサは、例えば、ポテンショメータなどで構成されている。ペダル操作量センサは、走行操作ペダル52の操作量を示す操作指令をコントローラ9へ出力する。
【0029】
回転数設定装置7は、電動モータ4の目標回転数を設定するための操作装置である。回転数設定装置7は、オペレータによって操作される。回転数設定装置7は、例えば、ダイヤル式のスイッチである。回転数設定装置7は、電動モータ4の目標回転数を示す操作指令をコントローラ9へ出力する。
【0030】
メイン油圧ポンプ12は、作業機105を動作させるための作動油を供給する。メイン油圧ポンプ12は、電動モータ4によって駆動されて作動油を吐出する。メイン油圧ポンプ12は、例えば、斜板の傾転角によって吐出容量が変化する可変容量型の油圧ポンプである。メイン油圧ポンプ12は、斜板の傾転角を制御するための斜板駆動装置11を有する。斜板駆動装置11は、コントローラ9からの制御指令に基づいて、メイン油圧ポンプ12から吐出される作動油の流量を制御する。斜板駆動装置11は、メイン油圧ポンプ12の斜板の傾転角を制御する。斜板駆動装置11は、例えば、比例ソレノイド弁であり、コントローラ9からの通電電流に基づいて、メイン油圧ポンプ12の斜板の傾転角を制御する。メイン油圧ポンプ12から吐出された作動油は、油圧回路を介して旋回モータ16、走行モータ17、及びシリンダ18へ供給される。
【0031】
パイロット油圧ポンプ13は、操作装置5に作動油を供給する。
【0032】
油圧制御バルブ15は、流量方向制御弁である。油圧制御バルブ15は、操作装置5の各操作レバーの操作方向に応じて図示しないスプールを移動させ、各油圧アクチュエータへの作動油の流量及び流れ方向を制御する。油圧制御バルブ15は、操作装置5の操作量に応じた作動油を、旋回モータ16、走行モータ17及びシリンダ18等の油圧アクチュエータに供給する。
【0033】
旋回モータ16は、旋回体103を旋回させるための駆動力を生じさせる旋回用のモータである。旋回モータ16は、メイン油圧ポンプ12から吐出された作動油によって駆動される。
【0034】
走行モータ17は、履帯171を回転させるための駆動力を生じさせる走行用のモータである。走行モータ17は、メイン油圧ポンプ12から吐出された作動油によって駆動される。走行モータ17は、メイン油圧ポンプ12からの作動油の吐出方向に応じて回転速度および回転方向が変更される。
【0035】
シリンダ18は、作業機105を駆動するためのシリンダである。シリンダ18は、メイン油圧ポンプ12から吐出された作動油によって駆動される。シリンダ18は、例えば、ブームシリンダ126A、アームシリンダ126B、バケットシリンダ126Cである。
【0036】
コントローラ9は、少なくとも1つ以上のプロセッサとメモリ91とを含む。コントローラ9は、作業機械100を制御するための処理を行う。メモリ91は、作業機械100を制御するためのデータ及びプログラムを記憶している。コントローラ9は、蓄電装置2と、インバータ3と、斜板駆動装置11と、操作装置5と、回転数設定装置7とのそれぞれと電気的に接続される。
【0037】
メモリ91は、操作装置5が操作されていない状態(無操作状態)が継続された時間の閾値である判定時間を記憶する。実施形態では、メモリ91は、第1判定時間と、第1判定時間よりも短い第2判定時間とを記憶する。第1判定時間は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合の判定時間である。第2判定時間は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合の判定時間である。
【0038】
メモリ91は、後述するオートアイドル制御が解除された場合における、電動モータ4の回転数を目標回転数へ復帰させる速さを記憶する。実施形態では、メモリ91は、第1復帰速度と、第1復帰速度より遅い第2復帰速度とを記憶する。第1復帰速度は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合の復帰速度である。第2復帰速度は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合の復帰速度である。
【0039】
コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量を検出する。コントローラ9は、蓄電装置2から蓄電装置2の蓄電残量を示す充電状態データを取得する。
【0040】
コントローラ9は、操作装置5から操作指令を取得する。より詳しくは、コントローラ9は、作業機操作レバー51から作業機操作指令を取得する。コントローラ9は、走行操作ペダル52から走行操作指令を取得する。
【0041】
コントローラ9は、操作装置5からの操作指令に応じてインバータ3を制御することにより、電動モータ4の回転数を制御する。コントローラ9は、例えば、電動モータ4の回転数の目標値やゲインを調整して、電動モータ4へ供給するモータ電流を制御することにより、電動モータ4の回転数を制御する。
【0042】
コントローラ9は、操作装置5からの操作指令に応じて、メイン油圧ポンプ12の斜板の傾転角を制御する制御指令を斜板駆動装置11に出力することにより、メイン油圧ポンプ12を制御する。言い換えると、コントローラ9は、操作装置5からの操作指令に応じて斜板駆動装置11を制御することにより、メイン油圧ポンプ12から吐出される作動油の流量や、吸収トルクを制御する。
【0043】
コントローラ9は、操作装置5からの操作指令に基づいて、操作装置5が操作されているか否かを判定する。コントローラ9は、例えば、操作装置5の操作量が所定の閾値より小さい場合、操作装置5が操作されていない状態(無操作状態)であると判定する。
【0044】
コントローラ9は、操作装置5の無操作状態が継続された場合、電動モータ4の回転数を目標回転数から所定のアイドル回転数へ減速させる制御(オートアイドル制御)を行う。なお、実施形態においては、オートアイドル制御により電動モータ4の回転数が所定のアイドル回転数に減速されている状態を、オートアイドル状態と呼ぶ。なお、オートアイドル制御を有効にするか否かは、オペレータの操作によって設定可能であってもよい。
【0045】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、電動モータ4の回転数を目標回転数から所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御する。コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、判定時間を決定する。コントローラ9は、操作装置5からの操作指令に基づいて、操作装置5の無操作状態が判定時間継続したか否かを判定する。コントローラ9は、操作装置5の無操作状態が判定時間継続したと判定した場合、オートアイドル制御を開始する。
【0046】
実施形態では、コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、メモリ91に記憶されている第1判定時間を選択する。コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、メモリ91に記憶されている第2判定時間を選択する。なお、オペレータの操作によりオートアイドル制御を無効に設定されている場合において、コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、オートアイドル制御を有効にして、第2判定時間を選択してもよい。
【0047】
また、コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、第2判定時間を選択するとともに、オペレータに報知してもよい。コントローラ9は、例えば、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であること、充電が推奨されること、または、無操作状態が第2判定時間以上継続した場合にオートアイドル状態となることをオペレータが認識できる報知を行う。オペレータへの報知は、コントローラ9からの制御指令に基づいて、例えば、図示しないモニタに表示したり、図示しないスピーカから音声を出力したり、図示しない警告灯を点灯させたりして行う。
【0048】
また、コントローラ9は、オートアイドル状態において、操作装置5からの操作指令に基づいて、操作装置5が操作されたか否かを判定する。コントローラ9は、操作装置5が操作されたと判定した場合、オートアイドル制御を解除し、電動モータ4の回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる。
【0049】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、電動モータ4の回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを制御する。コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合よりも、電動モータ4の回転数の復帰が遅くなるように制御する。
【0050】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、復帰速度を決定する。実施形態では、コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、メモリ91に記憶されている第1復帰速度を選択する。コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、メモリ91に記憶されている第2復帰速度を選択する。
【0051】
図3は、第1実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。コントローラ9は、コンピュータシステムを含む。コントローラ9は、作業機械を制御する指令信号を出力する。
【0052】
図3に示すように、コントローラ9は、プロセッサ1001と、メインメモリ1002と、ストレージ1003と、インタフェース1004とを有する。プロセッサ1001は、コンピュータプログラムを実行することによって、作業機械100の動作を演算処理する。プロセッサ1001は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)である。メインメモリ1002は、例えば、不揮発性メモリ又は揮発性メモリである。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)が例示される。揮発性メモリとして、RAM(Random Access Memory)である。ストレージ1003は、一時的でない有形の記憶媒体である。ストレージ1003は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、及び半導体メモリ等である。ストレージ1003は、コントローラ9のバスに直接接続された内部メディアでもよいし、インタフェース1004又は通信回線を介してコントローラ9に接続される外部メディアでもよい。ストレージ1003は、作業機械100を制御するためのコンピュータプログラムを記憶する。なお、コントローラ9は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。
【0053】
図4は、第1実施形態に係る、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下していないときのオートアイドル制御の一例を示す図である。
図4(a)は、操作装置5の操作状態を示す。
図4(b)は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下していない状態、言い換えると、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きい状態における、モータ制御指令と、電動モータ4の回転数との関係を示す。
図4(a)に示すように、時間0から時間T1までの間、操作装置5は操作状態である。時間T1から時間T2までの間、操作装置5は無操作状態である。時間T2以降、操作装置5は操作状態である。
【0054】
コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定した場合、第1判定時間T11及び第1復帰速度を選択する。
【0055】
操作装置5の無操作状態が時間T1から第1判定時間T11まで継続された場合、
図4(b)に示すように、コントローラ9は、電動モータ4の回転数を目標回転数r1からアイドル回転数r2に減速させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0056】
時間T2において、操作装置5が操作された場合、コントローラ9は、選択した第1復帰速度に基づいて、電動モータ4の回転数をアイドル回転数r2から目標回転数r1へ復帰させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
図4(b)に示す例では、コントローラ9は、時間T13において電動モータ4の回転数を目標回転数r1へ復帰させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0057】
図5は、第1実施形態に係る、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下したときのオートアイドル制御の一例を示す図である。
図5(a)は、操作装置5の操作状態を示す。
図5(b)は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下している状態、言い換えると、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下である状態における、モータ制御指令と、電動モータ4の回転数との関係を示す。
図5(a)に示すように、時間0から時間T1までの間、操作装置5は操作状態である。時間T1から時間T2までの間、操作装置5は無操作状態である。時間T2以降、操作装置5は操作状態である。
【0058】
コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定した場合、第2判定時間T21及び第2復帰速度を選択する。
【0059】
操作装置5の無操作状態が時間T1から第2判定時間T21(T21<T11)まで継続された場合、
図5(b)に示すように、コントローラ9は、電動モータ4の回転数を目標回転数r1からアイドル回転数r2に減速させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0060】
時間T2において、操作装置5が操作された場合、コントローラ9は、選択した第2復帰速度に基づいて、電動モータ4の回転数をアイドル回転数r2から目標回転数r1へ復帰させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
図5(b)に示す例では、コントローラ9は、時間T23(T13<T23)において電動モータ4の回転数を目標回転数r1へ復帰させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0061】
<制御方法>
図6を用いて、作業機械を制御するための方法について説明する。
図6は、第1実施形態に係る作業機械を制御するための方法の一例を示すフローチャートである。コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量を検出する(ステップST11)。
【0062】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御を開始するか否かの判定に用いられる判定時間を決定する(ステップST12)。より詳しくは、コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定した場合、第1判定時間を選択する。コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定した場合、第2判定時間を選択する。
【0063】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御が解除された場合における、電動モータ4の回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる復帰速度を決定する(ステップST13)。より詳しくは、コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、第1復帰速度を選択する。コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、第2復帰速度を選択する。
【0064】
コントローラ9は、操作装置5からの操作指令に基づいて、操作装置5が操作されているか否かを判定する(ステップST14)。コントローラ9は、操作装置5が操作されていると判定した場合(ステップST14でYes)、処理を終了する。コントローラ9は、操作装置5が操作されていないと判定した場合(ステップST14でNo)、ステップST15に進む。
【0065】
コントローラ9は、ステップST12で決定した判定時間と、操作装置5からの操作指令とに基づいて、操作装置5の無操作状態が判定時間以上継続したか否かを判定する(ステップST15)。コントローラ9は、操作装置5の無操作状態が判定時間以上継続したと判定した場合(ステップST15でYes)、ステップST16へ進む。コントローラ9は、操作装置5の無操作状態が判定時間以上継続していないと判定した場合(ステップST15でNo)、処理を終了する。
【0066】
操作装置5の無操作状態が判定時間以上継続したと判定した場合(ステップST15でYes)、コントローラ9は、オートアイドル制御を実行する(ステップST16)。
【0067】
コントローラ9は、操作装置5からの操作指令に基づいて、操作装置5が操作されたか否かを判定する(ステップST17)。コントローラ9は、操作装置5が操作されたと判定した場合(ステップST17でYes)、ステップST18へ進む。コントローラ9は、操作装置5が操作されていないと判定した場合(ステップST17でNo)、ステップST16の処理を再度実行する。
【0068】
操作装置5が操作されたと判定した場合(ステップST17でYes)、コントローラ9は、オートアイドル制御を解除する(ステップST18)。コントローラ9は、ステップST12で決定した復帰速度に基づいて、電動モータ4の回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる。
【0069】
<効果>
以上説明したように、実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御を開始するか否かの判定に用いられる判定時間を決定する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、電動モータ4の回転数を目標回転数から所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御することができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、さらに電力消費の低減を図ることができる。
【0070】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、第1判定時間を選択し、蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、第1判定時間よりも短い第2判定時間を選択する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、電動モータ4の回転数を目標回転数から所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを早くすることができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下したときに、オートアイドル制御を高い頻度で発生させることにより、オペレータに充電を促すことができる。
【0071】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御が解除された場合における、電動モータ4の回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを決定する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、電動モータ4の回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを制御することができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、さらに電力消費の低減を図ることができる。
【0072】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、第1復帰速度を選択し、蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、第1復帰速度よりも遅い第2復帰速度を選択する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、電動モータ4の回転数の復帰を遅くすることができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下したときに、電動モータ4の回転数の復帰を遅くすることにより、オペレータに充電を促すことができる。
【0073】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下した場合、油圧アクチュエータの動作速度、電動モータ4の回転速度、最大出力を低下させず、オペレータに充電を促すことができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、油圧アクチュエータの動作速度、電動モータ4の回転速度、最大出力を低下させないので、蓄電装置2の蓄電残量が低下していないときと同様の作業を継続することができる。
【0074】
[第2実施形態]
図7、
図8を用いて、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、コントローラ9における処理が、第1実施形態と異なる。第1実施形態と同様の構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。以下の実施形態でも同様である。
【0075】
メモリ91は、操作装置5が無操作状態となった際に、電動モータ4の回転数を待機回転数へ減速させる速さを記憶する。実施形態では、メモリ91は、第1減速速度と、第1減速速度より速い第2減速速度とを記憶する。第1減速速度は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合の減速速度である。第2減速速度は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合の減速速度である。
【0076】
メモリ91は、オートアイドル制御を行う際のアイドル回転数を記憶する。実施形態では、メモリ91は、第1アイドル回転数と、第1アイドル回転数より低い第2アイドル回転数とを記憶する。第1アイドル回転数は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合のアイドル回転数である。第2アイドル回転数は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合のアイドル回転数である。
【0077】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、操作装置5が無操作状態となった際に、電動モータ4の回転数を目標回転数から待機回転数へ減速させる速さを制御する。コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合よりも、電動モータ4の回転数を速く減速させるように制御する。
【0078】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、減速速度を決定する。実施形態では、コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、メモリ91に記憶されている第1減速速度を選択する。コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、メモリ91に記憶されている第2減速速度を選択する。
【0079】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御を行う際のアイドル回転数を制御する。コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合よりもアイドル回転数が低くなるように制御する。
【0080】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、アイドル回転数を決定する。実施形態では、コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、メモリ91に記憶されている第1アイドル回転数を選択する。コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、メモリ91に記憶されている第2アイドル回転数を選択する。
【0081】
図7は、第2実施形態に係る、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下していないときのオートアイドル制御の一例を示す図である。
図7(a)は、操作装置5の操作状態を示す。
図7(b)は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下していない状態、言い換えると、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きい状態における、モータ制御指令と、電動モータ4の回転数との関係を示す。
図7(a)に示すように、時間0から時間T1までの間、操作装置5は操作状態である。時間T1から時間T2までの間、操作装置5は無操作状態である。時間T2以降、操作装置5は操作状態である。
【0082】
コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定した場合、第1減速速度、第1判定時間T11、第1アイドル回転数r4、及び第1復帰速度を選択する。
【0083】
図7(a)に示すように、操作装置5が時間T1で無操作状態になると、コントローラ9は、選択した第1減速速度に基づいて、
図7(b)に示すように、電動モータ4の回転数を目標回転数r1から待機回転数r3に減速させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
図7(b)に示す例では、コントローラ9は、時間T31において電動モータ4の回転数を待機回転数r3に減速させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0084】
その後、操作装置5の無操作状態が第1判定時間T11まで継続された場合、
図7(b)に示すように、コントローラ9は、電動モータ4の回転数を待機回転数r3から第1アイドル回転数r4に減速させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0085】
時間T2において、操作装置5が操作された場合、コントローラ9は、選択した第1復帰速度に基づいて、電動モータ4の回転数を第1アイドル回転数r4から目標回転数r1へ復帰させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
図7(b)に示す例では、コントローラ9は、時間T13において電動モータ4の回転数を目標回転数r1へ復帰させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0086】
図8は、第2実施形態に係る、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下したときのオートアイドル制御の一例を示す図である。
図8(a)は、操作装置5の操作状態を示す。
図8(b)は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値まで低下している状態、言い換えると、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下である状態における、モータ制御指令と、電動モータ4の回転数との関係を示す。
図8(a)に示すように、時間0から時間T1までの間、操作装置5は操作状態である。時間T1から時間T2までの間、操作装置5は無操作状態である。時間T2以降、操作装置5は操作状態である。
【0087】
コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値以下であると判定した場合、第2減速速度、第2判定時間T21、第2アイドル回転数r5、及び第2復帰速度を選択する。
【0088】
図8(a)に示すように、操作装置5が時間T1で無操作状態になると、コントローラ9は、選択した第2減速速度に基づいて、
図8(b)に示すように、電動モータ4の回転数を目標回転数r1から待機回転数r3に減速させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
図8(b)に示す例では、コントローラ9は、時間T41(T41<T31)において電動モータ4の回転数を待機回転数r3に減速させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0089】
その後、操作装置5の無操作状態が第2判定時間T21(T21<T11)まで継続された場合、
図8(b)に示すように、コントローラ9は、電動モータ4の回転数を待機回転数r3から第2アイドル回転数r5(r5<r4)に減速させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0090】
時間T2において、操作装置5が操作された場合、コントローラ9は、選択した第2復帰速度に基づいて、電動モータ4の回転数を第2アイドル回転数r5から目標回転数r1へ復帰させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
図8(b)に示す例では、コントローラ9は、時間T23(T13<T23)において電動モータ4の回転数を目標回転数r1へ復帰させるモータ制御指令をインバータ3へ出力する。
【0091】
<効果>
以上説明したように、実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、操作装置5が無操作状態となった際に、電動モータ4の回転数を目標回転数から待機回転数へ減速させる速さを決定する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、電動モータ4の回転数を目標回転数から待機回転数へ減速させる速さを制御することができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、さらに電力消費の低減を図ることができる。
【0092】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、第1減速速度を選択し、蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、第1減速速度より速い第2減速速度を選択する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、電動モータ4の回転数を目標回転数から待機回転数へ速く減速させることができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下したときに、オートアイドル制御を高い頻度で発生させることにより、オペレータに充電を促すことができる。
【0093】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御を開始するか否かの判定に用いられる判定時間を決定する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、電動モータ4の回転数を目標回転数から所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを制御することができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、さらに電力消費の低減を図ることができる。
【0094】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、第1判定時間を選択し、蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、第1判定時間よりも短い第2判定時間を選択する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、電動モータ4の回転数を目標回転数から所定のアイドル回転数へ減速させるタイミングを早くすることができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下したときに、オートアイドル制御を高い頻度で発生させることにより、オペレータに充電を促すことができる。
【0095】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御を行う際のアイドル回転数を決定する。実施形態によれば、検出した蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御を行う際のアイドル回転数を制御することができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、さらに電力消費の低減を図ることができる。
【0096】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、第1アイドル回転数を選択し、蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、第1アイドル回転数より低い第2アイドル回転数を選択する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、アイドル回転数を低くすることができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下したときに、アイドル回転数を低くさせることにより、オペレータに充電を促すことができる。
【0097】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、オートアイドル制御が解除された場合における、電動モータ4の回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを決定する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、電動モータ4の回転数を所定のアイドル回転数から目標回転数へ復帰させる速さを制御することができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、さらに電力消費の低減を図ることができる。
【0098】
実施形態は、蓄電装置2の蓄電残量が所定の閾値より大きいと判定された場合、第1復帰速度を選択し、蓄電残量が所定の閾値以下であると判定された場合、第1復帰速度よりも遅い第2復帰速度を選択する。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下した場合、電動モータ4の回転数の復帰を遅くすることができる。実施形態によれば、蓄電装置2の蓄電残量が低下したときに、電動モータ4の回転数の復帰を遅くすることにより、オペレータに充電を促すことができる。
【0099】
上述の第2実施形態では、コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、減速速度、判定時間、アイドル回転数、及び復帰速度を制御することとしたが、全てを制御しなくてもよい。コントローラ9は、蓄電装置2の蓄電残量に基づいて、少なくともいずれか1つを制御すればよい。
【0100】
[変形例1]
図9は、作業機械の制御に関する構成の変形例を概略的に示す図である。
図9に示す例では、パイロット制御バルブ19を備える点と、操作装置5が電気式操作装置である点で、第1実施形態と異なる。コントローラ9は、第1実施形態と同様の機能を有する。
【0101】
パイロット制御バルブ19は、油圧制御バルブ15を制御する。
【0102】
作業機操作レバー51は、電気式操作レバーである。作業機操作レバー51は、作業機操作レバー51の操作量を示す操作指令をコントローラ9へ出力する。
【0103】
走行操作ペダル52は、電気式操作ペダルである。走行操作ペダル52は、走行操作ペダル52の操作量を示す操作指令をコントローラ9へ出力する。
【0104】
[変形例2]
図10は、作業機械の制御に関する構成の変形例を概略的に示す図である。
図10に示す例では、走行モータ17が電動モータである点と、走行操作ペダル52が電気式操作ペダルである点で、第1実施形態と異なる。
【0105】
走行モータ17は、蓄電装置2からの電力によって駆動する。
【0106】
走行操作ペダル52は、電気式操作ペダルである。走行操作ペダル52は、走行操作ペダル52の操作量を示す操作指令をコントローラ9へ出力する。
【0107】
コントローラ9は、検出した蓄電装置2の蓄電残量によらず、走行操作ペダル52の操作指令に応じて走行モータ17を制御してもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…システム、2…蓄電装置、3…インバータ、4…電動モータ(電動機)、5…操作装置、7…回転数設定装置、9…コントローラ、11…斜板駆動装置、12…メイン油圧ポンプ、13…パイロット油圧ポンプ、15…油圧制御バルブ、16…旋回モータ(油圧アクチュエータ)、17…走行モータ(油圧アクチュエータ)、18…シリンダ(油圧アクチュエータ)、51…作業機操作レバー、52…走行操作ペダル、91…メモリ、100…作業機械、102…走行体、103…旋回体、105…作業機、105A…ブーム、105B…アーム、105C…バケット、106…運転席、109…表示装置、110…支持アーム、111…支柱、112…運転室、126…作業機シリンダ、126A…ブームシリンダ、126B…アームシリンダ、126C…バケットシリンダ。