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特開2024-126051表示パネル支持装置及び表示パネル施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126051
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】表示パネル支持装置及び表示パネル施工方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 7/18 20060101AFI20240912BHJP
   A47F 5/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G09F7/18 D
A47F5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034182
(22)【出願日】2023-03-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 京王百貨店新宿店における施工,令和4年9月
(71)【出願人】
【識別番号】503185921
【氏名又は名称】株式会社タテイシ広美社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】立石 良典
【テーマコード(参考)】
3B118
【Fターム(参考)】
3B118AA06
3B118BA01
3B118CA05
3B118DA12
3B118EA04
(57)【要約】
【課題】
窓板や表示パネルのメンテナンスを容易に行うことができる状態で窓板の近くに表示パネルを支持することができる表示パネル支持装置を提供する。
【解決手段】
窓板50の一面側で大型の表示パネル60を支持するための表示パネル支持装置10を、表示パネル60を吊り下げるために表示パネル60に取り付けられる吊下部材12と、吊下部材12を、窓板50に接近した接近位置と、窓板50から離反した退避位置との間で移動可能な状態で吊り下げ支持する上側支持部材14とを備えたものとした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓板の一面側で大型の表示パネルを支持するための表示パネル支持装置であって、
表示パネルを吊り下げるために表示パネルに取り付けられる吊下部材と、
吊下部材を、窓板に接近した接近位置と、窓板から離反した退避位置との間で移動可能な状態で吊り下げ支持する上側支持部材と
を備えたことを特徴とする表示パネル支持装置
【請求項2】
上側支持部材が、表示パネルよりも上側で、窓板に対して略垂直な方向に延びる上側レールとされ、
吊下部材に、上側レールに沿って走行する上側ローラが設けられた
請求項1記載の表示パネル支持装置。
【請求項3】
床面に載置して立設される立設フレームを備え、
上側支持部材が立設フレームの上部に取り付けられた
請求項2記載の表示パネル支持装置。
【請求項4】
表示パネルの下部を、窓板に接近した接近位置と、窓板から離反した退避位置との間で移動可能な状態で支持する下側支持部材を備えた請求項3記載の表示パネル支持装置。
【請求項5】
下側支持部材が、表示パネルよりも下側で、窓板に対して略垂直な方向に延びる下側レールとされ、
下側レールに沿って走行する下側ローラが、表示パネルの下部に取り付けられた
請求項4記載の表示パネル支持装置。
【請求項6】
上側レール及び上側ローラ、並びに、下側レール及び下側ローラが、それぞれ左右一対に設けられた請求項5記載の表示パネル支持装置。
【請求項7】
請求項1~6いずれか記載の表示パネル支持装置に表示パネルを支持させた可動式表示装置。
【請求項8】
請求項1~6いずれか記載の表示パネル支持装置を用いて窓板の一面側に表示パネルを施工する表示パネル施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓板の一面側で大型の表示パネルを支持するための表示パネル支持装置と、これを用いて窓板の一面側に表示パネルを施工する表示パネル施工方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
百貨店等の店舗のショーウインドウには、その店舗が取り扱っている商品が展示される。近年では、商品そのものではなく、LEDビジョン等の表示パネルをショーウインドウに設置することも行われるようになっている(例えば、特許文献1の段落0012,0026及び非特許文献1を参照。)。これにより、展示用の商品そのものを用意しなくても、表示パネルに表示される静止画や動画で商品の広告を行うことができる。また、表示パネルには、静止画だけでなく、動画を表示することもできるため、動的でより効果的な広告を行うことも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-061060号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社クラウドポイント、「デジタルサイネージ事例 結婚式場ショーウィンドウにLEDビジョン」、[online]、[令和5年3月1日検索]、インターネット<URL:https://www.cloudpoint.co.jp/case/case-180719/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ショーウインドウに表示パネルを設置する場合、図1(a)に示すように、窓板から遠い位置に表示パネルを設置すると、表示パネルを視認できない死角が大きくなる。また、窓板への風景の映り込みが目立ちやすくなるため、死角ではない場所からでも表示パネルの表示内容を視認しにくくなる。このため、表示パネルによる商品の広告効果が低減してしまう。これに対し、図1(b)に示すように、窓板に近い位置に表示パネルを設置すると、死角を小さくすることができる。また、窓板への風景の映り込みが目立ちにくくなるため、表示パネルの表示内容を視認しやすくなる。表示パネルによる広告効果を考えると、表示パネルは、できるだけ窓板の近くに配置することが好ましい。
【0006】
しかし、表示パネルを窓板の近くに配置すると、別の問題が生じる。すなわち、窓板の内面(表示パネルを向く側の面)が汚れた場合に、表示パネルが邪魔になって窓板の内面を掃除しにくくなる。また、表示パネルの表示画面を掃除をする必要がある場合や、表示パネルの表示素子(LED等)を交換する必要がある場合には、窓板が邪魔になってそれらの作業を行いにくくなる。このように、表示パネルを窓板の近くに配置すると、窓板や表示パネルのメンテナンスをを行いにくくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、窓板や表示パネルのメンテナンスを容易に行うことができる状態で窓板の近くに表示パネルを支持することができる表示パネル支持装置を提供するものである。また、この表示パネル支持装置に表示パネルを支持させた可動式表示装置を提供することも本発明の目的である。さらに、この表示パネル支持装置を用いて窓板の一面側に表示パネルを施工する表示パネル施工方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
窓板の一面側で大型の表示パネルを支持するための表示パネル支持装置であって、
表示パネルを吊り下げるために表示パネルに取り付けられる吊下部材と、
吊下部材を、窓板に接近した接近位置と、窓板から離反した退避位置との間で移動可能な状態で吊り下げ支持する上側支持部材と
を備えたことを特徴とする表示パネル支持装置
を提供することによって解決される。
ここで、「表示パネルに取り付けられる吊下部材」とは、吊下部材が表示パネルに対して直接的に取り付けられる場合だけでなく、吊下部材が表示パネルに対して間接的に(表示パネルに固定された他の部材を介して)取り付けられる場合も含まれる。
【0009】
本発明の表示パネル支持装置では、上側支持部材に対し、吊下部材を、窓板に接近した接近位置と、窓板から離反した退避位置との間で移動させることができるようになっている。このため、吊下部材に吊り下げられた表示パネルも、窓板に接近した接近位置と、窓板から離反した退避位置との間で移動させることができる。このため、表示パネルで商品を広告する際には、表示パネルを接近位置に移動させることによって、高い広告効果を得ることが可能となるし、窓板や表示パネルのメンテナンス(窓板や表示パネルの表示画面の掃除や、表示パネルの表示素子の交換等)を行う際には、表示パネルを退避位置に移動させることによって、窓板や表示パネルが邪魔になることなく、それらのメンテナンスの作業を容易に行うことが可能となる。また、表示パネルを上側から吊り下げる構造を採用しているため、表示パネル支持装置の床面における設置面積を小さくすることができる。このため、上記のメンテナンスの作業をより行いやすくなる。加えて、表示パネルを支持すべき高さが変わっても、吊下部材の長さを調節する等の簡単な作業で対応することも可能になる。
【0010】
本発明の表示パネル支持装置において、上側支持部材や吊下部材の具体的な構造は、特に限定されないが、上側支持部材を、表示パネルよりも上側で、窓板に対して略垂直な方向に延びる上側レールとし、吊下部材に、上側レールに沿って走行する上側ローラを設けることが好ましい。これにより、吊下部材を接近位置と退避位置との間でスムーズに移動させる(大きな抵抗力を感じない状態で移動させる)ことが可能になる。また、吊下部材の移動時(表示パネルの移動時)の騒音の発生を抑えることも可能になる。
【0011】
本発明の表示パネル支持装置においては、床面に載置して立設される立設フレームを設け、上側支持部材を立設フレームの上部に取り付けることも好ましい。これにより、立設フレームを床面における所定の場所に設置するだけで、表示パネルを施工することが可能になる。すなわち、店舗の床や天井や壁に穴(ボルト穴や釘穴等)をあける等、建物に変更を施さなくても、表示パネルを施工することができる。加えて、立設フレームは、複数本の棒状材を組み合わせたフレーム状を為している。このため、立設フレームを立設しても、棒状材の間に手を入れたり、棒状材の間に人が立ったりといったことが可能である。したがって、立設フレームは、上述したメンテナンス(窓板や表示パネルの表示画面の掃除や、表示パネルの表示素子の交換等)を含む各種作業の邪魔になりにくい。
【0012】
本発明の表示パネル支持装置においては、表示パネルの下部を、窓板に接近した接近位置と、窓板から離反した退避位置との間で移動可能な状態で支持する下側支持部材を設けることも好ましい。というのも、表示パネルを上側から吊り下げただけでは、表示パネルが揺れる等、表示パネルの姿勢が安定しにくくなるおそれがある。地震が発生したときには、地震で揺れる表示パネルの下端部が窓板に当たって、窓板が破損するおそれもある。この点、上記の下側支持部材を設けることによって、表示パネルが揺れにくくして、表示パネルの姿勢を安定させることができる。
【0013】
この場合(下側支持部材を設ける場合)には、下側支持部材を、表示パネルよりも下側で、窓板に対して略垂直な方向に延びる下側レールとし、下側レールに沿って走行する下側ローラを、表示パネルの下部に取り付けることが好ましい。これにより、表示パネルを、下側支持部材に対して、接近位置と退避位置との間でスムーズに移動させることができる。また、表示パネルの移動時の騒音の発生を抑えることも可能になる。
【0014】
上記の上側レール及び上側ローラや、下側レール及び下側ローラは、それぞれ上下に1箇所ずつ設けてもよいが、この場合には、表示パネルの左右(表示パネルの幅方向一側と幅方向他側)のバランスを保ちにくくなる。表示パネルが左右に傾くと、上側レールと上側ローラとの接触摩擦や、下側レールと下側ローラとの接触摩擦が大きくなり、表示パネルを移動させる際の抵抗が大きくなるおそれもある。このため、上側レール及び上側ローラ、並びに、下側レール及び下側ローラは、それぞれを左右一対に設けることが好ましい。これにより、表示パネルの左右をバランスよく支持し、表示パネルを左右に傾きにくくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、窓板や表示パネルのメンテナンスを容易に行うことができる状態で窓板の近くに表示パネルを支持することができる表示パネル支持装置を提供することが可能になる。また、この表示パネル支持装置に表示パネルを支持させた可動式表示装置を提供することも可能になる。さらに、この表示パネル支持装置を用いて窓板の一面側に表示パネルを施工する表示パネル施工方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】窓板から表示パネルまでの距離と死角との関係を説明する図である。
図2】表示パネル支持装置を用いて窓板の内側に表示パネルを設置した状態を示した側面図である。
図3】表示パネル支持装置に支持された表示パネルを接近位置に移動させた状態を示した一部破断斜視図である。
図4】表示パネル支持装置に支持された表示パネルを退避位置に移動させた状態を示した一部破断斜視図である。
図5】表示パネル支持装置に表示パネルを組み付けている様子を示した斜視図である。
図6】表示パネル支持装置に表示パネルを組み付けた状態を示した斜視図である。
図7】表示パネル支持装置における上側支持部材の周辺を拡大して示した一部破断斜視図である。
図8】表示パネル支持装置における下側支持部材の周辺を拡大して示した一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の表示パネル支持装置の実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態であり、本発明の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の表示パネル支持装置には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0018】
1.表示パネル支持装置の概要
まず、表示パネル支持装置の概要について説明する。図2は、表示パネル支持装置10を用いて窓板50の内側に表示パネル60を設置した状態を示した側面図である。本発明の表示パネル支持装置10は、図2に示すように、窓板50の一面側(同図に示した例では屋内側)で大型の表示パネル60を支持するために用いられる。百貨店等の店舗のショーウインドウでは、窓板50の内側(屋内側)に表示パネル60を設置し、窓板50の外側(屋外側)の通行人等に対し、表示パネル60に表示される静止画や動画で商品の広告を行うことが行われているところ、本発明の表示パネル支持装置10は、そのような目的で表示パネル60を設置する場合に好適に用いることができる。以下においては、ショーウインドウに表示パネル60を設置する場合を例に挙げて、本発明の表示パネル支持装置10を説明する。
【0019】
既に述べたように、ショーウインドウに表示パネル60を設置する場合には、窓板50から遠い位置に表示パネル60を設置すると、表示パネル60を視認できない死角が大きくなる(図1(a)を参照。)。また、窓板50への風景の映り込みが目立ちやすくなるため、死角ではない場所からでも表示パネル60の表示内容を視認しにくくなる。このため、表示パネル60による商品の広告効果が低減してしまう。これに対し、窓板50に近い位置に表示パネル60を設置すると、死角を小さくする(図1(b)を参照。)とともに、窓板50への風景の映り込みを目立ちにくくして、表示パネル60による広告効果を高めることができるものの、窓板50の内面(屋内側の面)を清掃する際に表示パネル60が邪魔になったり、表示パネル60の表示面を清掃する際に窓板50が邪魔になったり等、窓板50や表示パネル60のメンテナンスをを行いにくくなるという問題が生じる。
【0020】
この点、本発明の表示パネル支持装置10を用いて表示パネル60を設置すると、図2に示すように、表示パネル60を、窓板50に接近した接近位置Pと、窓板50から離反した退避位置Pとの間で移動させることができるようになる。このため、表示パネル60で商品を広告する際には、図3に示すように、表示パネル60を接近位置に移動させ、表示パネル60が優れた広告効果を発揮できるようにする一方、窓板50や表示パネル60のメンテナンスを行う際には、図4に示すように、表示パネル60を退避位置に移動させ、それらのメンテナンスの作業を容易に行うことが可能となっている。図3は、表示パネル支持装置10に支持された表示パネル60を接近位置に移動させた状態を示した一部破断斜視図である。図4は、表示パネル支持装置10に支持された表示パネル60を退避位置に移動させた状態を示した一部破断斜視図である。
【0021】
表示パネル支持装置10に支持する表示パネル60の種類は、画像(静止画又は動画)を表示できるのであれば、特に限定されない。表示パネル60としては、液晶表示パネルや、有機EL表示パネルのほか、複数の光源を二次元的に配置した表示パネルが例示される。本実施形態においては、フルカラーの発光ダイオードを二次元的に配置したLED表示パネルを、表示パネル60として表示パネル支持装置10に支持するようにしている。表示パネル60は、大型のものとされる。というのも、表示パネル60が小型であると、表示パネル60の移動が容易であり、表示パネル支持装置10を用いる意義がなくなるからである。このため、表示パネル支持装置10に支持する表示パネル60の寸法は、通常、縦長(高さ)又は横長(横幅)のうち、少なくとも一方又は両方が100cm以上とされる。表示パネル支持装置10は、縦長と横長の少なくとも一方又は両方が150cm以上の表示パネル60を支持するものとして好ましく、縦長と横長の少なくとも一方又は両方が200cm以上の表示パネル60を支持するものとして好ましい。表示パネル60の寸法に、特に上限はないが、通常、縦長及び横長で、500~1000cm程度までである。
【0022】
2.表示パネル支持装置の構造
続いて、表示パネル支持装置10の構造について説明する。図5は、表示パネル支持装置10に表示パネル60を組み付けている様子を示した斜視図である。図6は、表示パネル支持装置10に表示パネル60を組み付けた状態を示した斜視図である。本実施形態の表示パネル支持装置10は、図5及び図6に示すように、表示パネル60のウラ側(屋内側)に配された表示パネル固定部11と、表示パネル固定部11の上縁に設けられた左右一対の吊下部材12と、床面に載置して立設される立設フレーム13と、吊下部材12を支持するための上側支持部材14と、表示パネル60を下側から支持するための下側支持部材15とを備えている。これらの部材のうち、立設フレーム13、上側支持部材14及び下側支持部材15は、表示パネル支持装置10の設置面(床面)に対して動かない不動ユニットを構成する。一方、表示パネル固定部11及び吊下部材12は、表示パネル支持装置10の設置面(床面)に対して相対的に移動可能な可動ユニットを構成する。
【0023】
以下、表示パネル固定部11、吊下部材12、立設フレーム13、上側支持部材14及び下側支持部材15について、順に詳しく説明する。
【0024】
2.1 表示パネル固定部
表示パネル固定部11は、表示パネル60に固定する部材となっている。表示パネル固定部11は、表示パネル60における、その表示面(網掛けハッチングで示した面)の視認性を阻害しない箇所(表示パネル60のウラ面や周縁部等)に固定される。本実施形態において、表示パネル固定部11は、複数本の縦フレームと複数本の横フレームとを格子状に組んだ形態を有しており、その表示パネル固定部11を、表示パネル60のウラ面に宛がった状態で固定するようにしている。表示パネル固定部11の寸法(縦長及び横長)は、表示パネル60の縦長及び横長と異なっていてもよいが、本実施形態においては、表示パネル60の縦長及び横長と略同じにしている。このため、表示パネル固定部11で、表示パネル60のウラ面の略全体をバランスよく支持できるようになっている。ただし、表示パネル60のウラ面側には、通常、各種の部品が取り付けられていたり、各種のケーブルが配線されていたりするところ、表示パネル60のウラ面全体が表示パネル固定部11で覆われていると、部品やケーブルの交換等のメンテナンス作業を行いにくくなる。この点、上記のように、縦フレームと横フレームとを格子状に組んだものを表示パネル固定部11として用いることによって、縦フレームや横フレームの隙間(格子の目に該当する部分)から、上記のメンテナンス作業を行うことが可能となっている。表示パネル固定部11の下部には、左右一対の下側ローラ16が設けられている。この下側ローラ16については、後で説明する。
【0025】
2.3 吊下部材
吊下部材12は、上側支持部材14の下側に表示パネル60を吊り下げるための部材となっている。本実施形態においては、上述したように、表示パネル60のウラ面に表示パネル固定部11を固定するところ、吊下部材12は、この表示パネル固定部11に取り付けられており、表示パネル固定部11を吊り下げることで、表示パネル60を吊り下げるようになっている。既に述べたように、表示パネル60は、大型であり、重量があるため、吊下部材12による吊下力(引張力)が表示パネル60に局所的に掛かると、表示パネル60が破損するおそれがあるところ、表示パネル固定部11を介して表示パネル60を吊り下げることで、吊下部材12による吊下力が、表示パネル60に局所的に掛からないようにすることが可能になる。
【0026】
吊下部材12は、表示パネル固定部11の下段部(下部)や中段部に取り付けることもできるが、通常、表示パネル固定部11の上段部(上部)に設けられる。本実施形態においては、表示パネル固定部11の上縁を形成する横フレーム(本段落において、「最上部の横フレーム」という。)に、吊下部材12を設けている。表示パネル固定部11に設ける吊下部材12の個数は、特に限定されず、1個であってもよいが、複数個であることが好ましい。本実施形態においては、最上部の横フレームにおける一端寄りの部分と、同横フレームにおける他端寄りの部分との計2箇所に、吊下部材12を設けている。このように、吊下部材12を左右一対で設けることによって、表示パネル固定部11を左右に傾きにくい状態でバランスよく吊り下げることが可能になる。
【0027】
吊下部材12の具体的な形態は、特に限定されない。吊下部材12の各部分を機能的に区分すれば、吊下部材12は、後掲する図7に示すように、上側支持部材14に沿って前後方向(窓板50に対して垂直な部分)に走行する上側走行部12aと、表示パネル固定部11に取り付ける下側取付部12bと、上側走行部12aと下側取付部12bとを連結する連結部12cとで構成される。本実施形態において、連結部12cは、ボルトの軸部となっており、下側取付部12bは、そのボルトの軸部12cの下端側に設けられたネジ軸となっている。このボルトのネジ軸12bを、表示パネル固定部11に螺合すること、又は、表示パネル固定部11に設けた貫通孔に挿通し、その逆側からナットを螺合することによって、吊下部材12を表示パネル固定部11に固定することができる。その螺合の深さを変えれば、吊下部材12による吊下高さを調節することもできる。上側走行部12aは、上記のボルトの上端部に取り付けられた上側ローラ12aとなっている。この上側ローラ12aが上側支持部材14に案内されながら前後方向に走行することによって、吊下部材12が前後方向に移動し、それに吊り下げられた表示パネル固定部11及び表示パネル60も前後方向に移動する。この上側ローラ12aについては、後の「2.5 上側支持部材」の項目で詳しく説明する。
【0028】
2.4 立設フレーム
立設フレーム13は、図5及び図6に示すように、床面(本実施形態においては、ショーウインドウ内の床面)から立設するように、その床面に載置するためのものとなっている。立設フレーム13の底部には、高さ調節可能な複数本の脚部を設けている。これにより、床面が傾斜している場合や、床面に不陸がある場合でも、立設フレーム13を真っ直ぐに(鉛直方向に対して傾斜しない状態で)設置することができる。この立設フレーム13は、床面に載置しただけで、床面に対して動かない状態とすることができる。このため、建物の床や天井や壁に穴(ボルト穴や釘穴等)をあける等、建物に変更を施さなくても、表示パネル支持装置10を施工することができる。ただし、依頼主の要望(地震発生時でも立設フレーム13が絶対に倒れないようにしたいという要望等)があった場合や、現場の状況が許す(立設フレーム13の設置個所の近くに強固な建物構造部がある)場合には、連結固定具70(図2を参照。)を用いて立設フレーム13を建物(同図の例では壁)に固定することも可能である。
【0029】
本実施形態において、立設フレーム13は、図5に示すように、上下方向に延びる本体部13aと、本体部13aの上部に設けられた上側支持部材取付部13bと、本体部13aの下部に設けられた下側支持部材取付部13cとを備えている。上側支持部材取付部13bは、上側支持部材14を取り付けるための部分であり、下側支持部材取付部13cは、下側支持部材15を取り付けるための部分である。上側支持部材取付部13bは、本体部13aの上部から前方(ショーウインドウの窓板50を向く向き。以下同じ。)に突出する軒状に形成しており、下側支持部材取付部13cは、本体部13aの下部から前方に突出するデッキ状に形成している。
【0030】
以上のように、立設フレーム13は、本体部13aと、上側支持部材取付部13bと、下側支持部材取付部13cとで構成されるところ、この立設フレーム13は、複数本の縦フレームと横フレームとを矢倉状に組み上げることで形成している。立設フレーム13の前方には、表示パネル60が配されるところ、立設フレーム13をそのような構造とすることで、立設フレーム13の縦フレームや横フレームの間に、身体(手や足等)を入れることが可能である。このため、表示パネル60を表示パネル支持装置10から取り外さなくても、表示パネル60のウラ面に人がアクセスすることができため、表示パネル60のウラ面の部品を交換する等、表示パネル60のウラ面のメンテナンスを行うことが可能となる。
【0031】
2.5 上側支持部材
上側支持部材14は、吊下部材12を、窓板50に接近した接近位置と、窓板50から離反した退避位置との間で移動可能な状態で支持するものとなっている。本実施形態においては、既に述べたように、吊下部材12を左右一対で設けたため、それを支持する上側支持部材14も、左右一対で設けている。
【0032】
上側支持部材14は、吊下部材12を前後方向に移動可能な状態で案内支持できるのであれば、その形態を特に限定されない。本実施形態においては、前後方向(窓板50に対して垂直な方向)に延びるレール(上側レール)を、上側支持部材14として用いている。図7に、表示パネル支持装置10における上側レール14の周辺を拡大して示した一部破断斜視図を示す。上側レール14は、図7に示すように、上面部14aと、上面部14aの左縁及び側縁から下向きに延びる左右一対の側面部14bと、側面部14bの下縁から上側レール14の内側に向かって突出する左右一対の水平突出部14cとで構成されている。水平突出部14cは、上側レール14の長手方向(前後方向)に延びる帯状に形成されており、水平突出部14cの間には、上側レール14の長手方向(前後方向)に沿ったスリット14dが形成されている。この上側レール14は、立設フレーム13における上側支持部材取付部13bに取り付けられている。
【0033】
既に述べたように、本実施形態においては、図7に示すように、吊下部材12にボルト(連結部12c)を用いているところ、スリット14dは、このボルト(連結部12c)を挿通する部分となっている。また、吊下部材12の上部(上側走行部)には、上側ローラ12aが設けられているところ、水平突出部14cは、この上側ローラ12aを走行させる部分となっている。水平突出部14cの先端縁には、起立部14eが設けられており、水平突出部14cの上面を走行する上側ローラ12aが、その水平突出部14cから脱落しないようにしている。1つの上側走行部は、1個の上側ローラ12aで構成してもよいが、本実施形態においては、複数個の上側ローラ12aで構成している。具体的には、1つの上側走行部を、4個の上側ローラ12a(左前、右前、左後及び右後のローラ)で構成している。このように、左右一対及び前後一対で上側ローラ12aを設けることによって、上側ローラ12aが上側レール14に沿って安定して走行しやすくなる。上側レール14の前端部は、上側レール14を走行している上側ローラ12aが前方に飛び出ないように塞がれており、上側レール14の後端部も、上側レール14を走行している上側ローラ12aが後方に飛び出ないように塞がれている。上側レール14における所定の位置から上側ローラ12aが動かないようにするために、上側ローラ12aの転動を規制するストッパを設けることもできる。
【0034】
2.6 下側支持部材
下側支持部材15は、表示パネル60の下部を、窓板50に接近した接近位置P図2)と、窓板50から離反した退避位置P図2)との間で移動可能な状態で支持するものとなっている。本実施形態において、下側支持部材15は、図6に示すように、表示パネル60そのものではなく、下側ローラ16を支持するようになっている。下側ローラ16は、表示パネル固定部11の下部に取り付けられている。この下側支持部材15によって、表示パネル60の揺れや傾きを抑えることが可能になる。また、吊下部材12や上側レール14に掛かる荷重(表示パネル60等の重量)を下側支持部材15に分散することで、吊下部材12や上側レール14の耐久性を高めることも可能になる。
【0035】
下側支持部材15は、上記の機能を発揮できるのであれば、その形態を特に限定されない。本実施形態においては、前後方向(窓板50に対して垂直な方向)に延びるレール(下側レール)を、下側支持部材15として用いている。図8に、表示パネル支持装置10における下側レール15の周辺を拡大して示した一部破断斜視図を示す。下側レール15は、図8に示すように、底面部15aと、底面部15aの左縁及び側縁から上向きに起立した左右一対の側面部15bとで構成された溝型の部材となっている。下側ローラ16は、下側レール15の底面部15aを前後方向に走行する。底面部15aを走行する下側ローラ16は、側面部15bによって、底面部15aから脱落しないようになっている。下側レール15の前端部は、下側レール15を走行している下側ローラ16が前方に飛び出ないように塞がれており、下側レール15の後端部も、下側レール15を走行している下側ローラ16が後方に飛び出ないように塞がれている。下側レール15における所定の位置から下側ローラ16が動かないようにするために、下側ローラ16の転動を規制するストッパを設けることもできる。
【0036】
下側レール15の底面部15aは、立設フレーム13における下側支持部材取付部13cに取り付けられている。下側レール15は、下側支持部材取付部13cに対して1箇所にのみ設けてもよいが、本実施形態においては、複数箇所に設けている。具体的には、図5に示すように、立設フレーム13の左寄りの箇所と、右寄りの箇所とに左右一対で設けている。下側ローラ16も、下側レール15に対応する位置に左右一対で設けている。これにより、表示パネル60を下側支持部材15で、左右のバランスよく支持することが可能となっている。
【0037】
3.その他
以上のように、表示パネル支持装置10は、表示パネル60を前後方向に移動できるものとなっているところ、表示パネル支持装置10による表示パネル60の前後方向での移動幅(接近位置から退避位置までの距離。以下同じ。)をどの程度確保するかは、特に限定されない。しかし、表示パネル60の前後方向での移動幅が小さすぎると、表示パネル60を退避位置に移動させても、窓板50と表示パネル60との間に十分なスペースができず、窓板50や表示パネル60のメンテナンス作業を行いにくくなるおそれがある。このため、表示パネル60の前後方向での移動幅は、20cm以上とすることが好ましい。表示パネル60の前後方向での移動幅は、30cm以上とすることがより好ましく、40cm以上とすることがさらに好ましい。ただし、表示パネル60の前後方向での移動幅を大きくしすぎても、表示パネル支持装置10が大型になるだけで、メンテナンス上のメリットはあまりない。このため、表示パネル60の前後方向での移動幅は、150cm以下とすることが好ましい。表示パネル60の前後方向での移動幅は、120cm以下とすることがより好ましく、100cm以下とすることがさらに好ましい。
【0038】
また、以上で述べた表示パネル支持装置10では、表示パネル60又は表示パネル固定部11の所定箇所を手で押すこと、又は、引っ張ることによって、表示パネル60を前後方向に移動させることができるようになっている。この点、表示パネル60を手動で操作するのではなく、電動で操作することも可能である。例えば、上側ローラ12aや下側ローラ16を電気モータで駆動することや、表示パネル固定部11に連結したワイヤを電動ウインチで巻き上げることによって、表示パネル60を電動で操作することが可能になる。この場合には、上記の電気モータや電動ウインチの正回転、逆回転及び停止を指示するためのコントローラが、表示パネル支持装置10に設けられる。
【符号の説明】
【0039】
10 表示パネル支持装置
11 表示パネル固定部
12 吊下部材
12a 上側ローラ(上側走行部)
12b ボルトのネジ軸(下側取付部)
12c ボルトの軸部(連結部)
13 立設フレーム
13a 本体部
13b 上側支持部材取付部
13c 下側支持部材取付部
14 上側レール(上側支持部材)
14a 上面部
14b 側面部
14c 水平突出部
14d スリット
14e 起立部
15 下側レール(下側支持部材)
15a 底面部
15b 側面部
16 下側ローラ
50 窓板
60 表示パネル
70 連結固定部
接近位置
退避位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8