(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126076
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】レゾルバステータ絶縁構造
(51)【国際特許分類】
H02K 24/00 20060101AFI20240912BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02K24/00
G01D5/20 110H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034224
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】原 慎一
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077FF34
2F077PP26
(57)【要約】
【課題】従来のレゾルバステータ構造においては、突出磁極の巻線数を種々変える必要がある場合でも、絶縁厚さは一定であったため、巻線長が長くなるのを抑制できなかった。
【解決手段】レゾルバステータ絶縁構造は、内方に向けて突出するか、又は、外方へ向けて突出する複数の突出磁極1Aを有する輪状ステータ1と、少なくとも突出磁極1Aの外周1Bに設けられた絶縁体6と、絶縁体6の外面1aに少なくとも複数回巻回されたステータ巻線11と、を備え、突出磁極1Aの絶縁体6の絶縁厚さTは、突出磁極1Aのステータ巻線11の巻線数に応じて増減されていることを特徴とする構造であり、また、ステータ巻線11は、2相励磁/2相出力のVRS方式である構造である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内方に向けて突出するか、又は、外方へ向けて突出する複数の突出磁極(1A)を有する輪状ステータ(1)と、少なくとも前記突出磁極(1A)の外周(1B)に設けられた絶縁体(6)と、前記絶縁体(6)の外面(1a)に少なくとも複数回巻回されたステータ巻線(11)と、を備え、
前記突出磁極(1A)の前記絶縁体の絶縁厚さ(T)は、前記突出磁極(1A)の前記ステータ巻線(11)の巻線数に応じて増減されていることを特徴とするレゾルバステータ絶縁構造。
【請求項2】
前記ステータ巻線(11)は、2相励磁/2相出力のVRS方式であることを特徴とする請求項1記載のレゾルバステータ絶縁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバステータ絶縁構造に関し、特に、レゾルバステータの突出磁極の絶縁厚さを各突出磁極の巻線数に応じて増減させることで、外側の巻線ほど巻線長が長くなるのを抑制でき、出力信号の高精度化に寄与するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レゾルバステータの突出磁極を覆うための輪状絶縁カバーの一部の筒部の絶縁厚さは各突出磁極とも均一である。
レゾルバの方式は、励磁1相/励磁2相(VRX方式)、励磁2相/出力1相(VRT方式)、励磁2相/出力2相(VRS方式)があり、特にVRS方式では、各ティースに4相分の巻線をするため、外側に巻かれるほど、マグネットワイヤが長くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレゾルバステータ巻線構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
尚、従来例は、図示していないため周知の構成から見ると、突出磁極の外面には、所定の厚さを有すると共に、第1、第2絶縁体からなる輪状絶縁カバーが、周知の二体又は周知の一体モールドで形成されている。
そのため、レゾルバの励磁又は出力方式が周知のVRS方式の場合では、2種類のVRT信号を足し合わせてVRS信号を生成しているため、2種類のVRT信号がちょうど90°の位相ずれを持ち、同じ特性であることが理想的だが、実際は外側に巻かれるコイルほど巻線抵抗は大きくなり、特性のバランスを取るのが非常に困難であった。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、レゾルバステータの突出磁極の絶縁厚さを各突出磁極の巻線数に応じて増減させることで、外側の巻線ほど巻線長が長くなるのを抑制でき、出力信号の高精度化に寄与するようにしたレゾルバステータ絶縁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるレゾルバステータ絶縁構造は、内方に向けて突出するか、又は、外方へ向けて突出する複数の突出磁極を有する輪状ステータと、少なくとも前記突出磁極の外周に設けられた絶縁体と、前記絶縁体の外面に少なくとも複数回巻回されたステータ巻線と、を備え、前記突出磁極の前記絶縁体の絶縁厚さは、前記突出磁極の前記ステータ巻線の巻線数に応じて増減されていることを特徴とする構造であり、また、前記ステータ巻線は、2相励磁/2相出力のVRS方式である構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるレゾルバステータ絶縁構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、内方に向けて突出するか、又は、外方へ向けて突出する複数の突出磁極を有する輪状ステータと、少なくとも前記突出磁極の外周に設けられた絶縁体と、前記絶縁体の外面に少なくとも複数回巻回されたステータ巻線と、を備え、前記突出磁極の前記絶縁体の絶縁厚さは、前記突出磁極の前記ステータ巻線の巻線数に応じて増減されている構造であり、また、前記ステータ巻線は、2相励磁/2相出力のVRS方式である構造であることにより、レゾルバステータの突出磁極の絶縁厚さを各突出磁極の巻線数に応じて増減させることで、外側のステータ巻線ほど、巻線長が長くなるのを抑制することができる。
特に、2相励磁/2相出力のVRS方式で2つのVRT信号のバランスが取りやすくなるため、レゾルバ出力信号の高精度化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態によるレゾルバの突出磁極と輪状絶縁カバーを示す縦断面図である。
【
図2】(A)は
図1のA-A線に基づく断面で、第1絶縁厚さを示す図、(B)は
図1のA-A線に基づく断面で、第2絶縁厚さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、レゾルバステータの突出磁極の絶縁厚さを各突出磁極の巻線数に応じて増減させることで、外側の巻線ほど巻線長が長くなるのを抑制でき、出力信号の高精度化に寄与することができる。
【実施例0010】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバステータ絶縁構造の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは、周知の輪状をなす輪状ステータであり、前記輪状ステータ1の図面で見て左側のロータ側2には、内側に向けて突出する突出磁極1Aが所定の角度間隔毎に前記輪状ステータ1と一体に形成されている。
【0011】
前記
図1の断面図においては、周知のドーナツ状の輪状ステータ1の形状であるため、
図1の前記輪状ステータ1の反対側3には、前記輪状ステータ1の外周1Bが形成されている。尚、前記輪状ステータ1の各突出磁極1Aは、内方に向けて又は外方に向けて突出する周知のインナーロータ又はアウタロータ型として用いることができる構造である。
前記輪状ステータ1の前記突出磁極1Aには、この表面1AAを覆うため断面凹状をなす絶縁体としての輪状(筒状)絶縁カバー6が設けられている。輪状絶縁カバー6は、第1絶縁体4及び第2絶縁体5を備えている。
前記輪状絶縁カバー6は、前述のように、予め成形された第1、第2絶縁体4、5を用いて、
図1のように前記突出磁極1Aの表面1AAを二体の絶縁体4、5で覆う構造、又は、前記輪状ステータ1を図示しない射出成形機の金型内に中子を介して保持し、樹脂で各絶縁体4、5を一体射出成形して、前記各絶縁体4、5を
図1のように前記突出磁極1Aに一体に成形する構造にすることができる。
【0012】
前記突出磁極1Aの表面1AAには、前述の二体又は一体成形によって形成された絶縁体としての前記輪状絶縁カバー6を設けることができる。
前記輪状絶縁カバー6には、前記突出磁極1Aの表面1AAを一周する筒部10が形成され、この筒部10の絶縁厚さTは、前記突出磁極1Aの表面1AAと前記筒部10のステータ巻線11を巻回して受け、かつ、断面凹字状をなす、巻線受け部12の底面12A(すなわち、外面1a)との間の厚さを示している。
【0013】
図2(A)及び
図2(B)は、
図1のA-A線に基づく断面で、前記突出磁極1Aの前記巻線受け部12における前記ステータ巻線11の巻線数に応じて前記絶縁厚さTが増減される二例について示している。
尚、
図2の(A)及び
図2の(B)共に
図1の断面A-Aに基づくため、前記輪状ステータ1の図面上の大きさも同一寸法に記載されている。
【0014】
図2の(A)の場合は、前記突出磁極1Aの輪状絶縁カバー6の巻線受け部12に巻回するステータ巻線11の巻線数が
図2の(B)のステータ巻線11の巻線数よりも多いため、前記第1絶縁厚さT1を
図2の(B)の第2絶縁厚さT2よりも小さくした結果、長いステータ巻線11を
図1の前記ステータ巻線11の第1外径D1と同一径で巻回することができた。
また、
図2の(B)の場合は、
図2の(A)とは逆の条件となっており、前記巻線受け部12に巻回するステータ巻線11の巻線量が
図2の(A)のステータ巻線11の巻線数より少ないため、前記第2絶縁厚さT2が
図2の(A)の第1絶縁厚さT1よりもT2>T1の関係であるため、
図2の(B)のステータ巻線11の第2外径D2は
図1の前記ステータ巻線11の第1外径D1と同径となる。
【0015】
従って、前述のように、レゾルバの輪状ステータ1の突出磁極1Aの第1、第2絶縁厚さT1、T2を各突出磁極1Aの巻線数に応じて増減させることにより、前記輪状絶縁カバー6の巻線受け部12の外側の巻線ほど巻線長が長くなるのを抑制できる。特に、2相励磁/2相出力の周知のVRS方式で2つのVRT信号(周知の2相励磁/1相出力)のバランスが取りやすくなるため、レゾルバの出力信号の高精度化に寄与することができる。
本発明によるレゾルバステータ絶縁構造は、レゾルバステータの突出磁極の絶縁厚さを各突出磁極の巻線数に応じて増減させることで、外側の巻線ほど巻線長が長くなるのを抑制でき、出力信号の高精度化に寄与することができ、簡単に高精度なレゾルバを得ることができる。