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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126077
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 11/22 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B60T11/22 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034226
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 亮
(72)【発明者】
【氏名】平田 晃久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基允
【テーマコード(参考)】
3D047
【Fターム(参考)】
3D047BB41
3D047CC23
3D047JJ09
(57)【要約】
【課題】マスタシリンダの車両前後方向寸法を短尺化してリザーバタンクがマスタシリンダの車両前端よりも張り出した場合であっても、リザーバタンクを支持すること。
【解決手段】マスタシリンダ12の車両上方側に取り付けられるリザーバタンク14と、マスタシリンダ12の車両前方端面13に設けられるガイド部材16とを備え、リザーバタンク14は、マスタシリンダ12よりも車両前方側に張り出した張出部30を有し、ガイド部材16は、マスタシリンダ12に固定される固定部32と、この固定部32から車両前方側に延出して張出部30と車両上下方向で重畳する延出部34とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のダッシュパネルに取り付けられるマスタシリンダと、
前記マスタシリンダの車両上方側に取り付けられるリザーバタンクと、
前記マスタシリンダの車両前方端部に設けられるガイド部材と、
を備え、
前記リザーバタンクは、前記マスタシリンダよりも車両前方側に張り出した張出部を有し、
前記ガイド部材は、前記マスタシリンダに固定される固定部と、前記固定部から車両前方側に延出して前記張出部と車両上下方向で重畳する延出部とを有することを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ブレーキ装置において、
前記固定部は、前記マスタシリンダの車両前方端面に固定され、
前記ガイド部材は、前記固定部に連続し車幅方向内側に指向する当接面を有し、
前記延出部は、前記当接面の少なくとも一部よりも車幅方向外側に配置されることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用ブレーキ装置において、
前記延出部の少なくとも一部は、前記固定部よりも車幅方向外側に配置されることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項2記載の車両用ブレーキ装置において、
前記延出部は、車両前方に向かうにつれて車幅方向内側の領域が先細り形状となるテーパ部を有することを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項2記載の車両用ブレーキ装置において、
前記ガイド部材は、前記固定部から屈曲部を介して連続する前記当接面と、前記当接面の車幅方向外側に配置された補強部とを有し、
前記補強部は、前記当接面と車幅方向において重畳する補強面と、前記補強面から前記マスタシリンダの車両前方端面に向かって突出する突出部とを有することを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項2記載の車両用ブレーキ装置において、
前記固定部は、固定部材を挿通するための固定孔と、前記固定孔に連続し該固定孔から車幅方向外側に向けて開口するスリットとを有することを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタシリンダと、マスタシリンダの車両上方に取り付けられるリザーバタンクとを備えた車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、マスタシリンダの車両前端領域と、エンジンに設けられたガイド部材(機械的強制案内手段)とにより、車両衝突時にマスタシリンダを時計回り方向に傾倒させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3386765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のマスタシリンダの車両前後方向寸法の短尺化に伴い、マスタシリンダに搭載されたリザーバタンクがマスタシリンダの車両前端よりも車両前方に張り出すことが考えられる。
【0005】
また、リザーバタンクのエア抜きを遂行する際、リザーバタンクのキャップに治具を搭載して真空引きを行うが、その際、治具により車両下方に向けた荷重が付与される。そこで、マスタシリンダの車両前後方向寸法を短尺化してリザーバタンクがマスタシリンダの車両前端よりも張り出した場合、車両下方向の荷重に対してリザーバタンクを支持することが困難となる。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、マスタシリンダの車両前後方向寸法を短尺化してリザーバタンクがマスタシリンダの車両前端よりも張り出した場合であっても、リザーバタンクを支持することが可能な車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両のダッシュパネルに取り付けられるマスタシリンダと、前記マスタシリンダの車両上方側に取り付けられるリザーバタンクと、前記マスタシリンダの車両前方端部に設けられるガイド部材と、を備え、前記リザーバタンクは、前記マスタシリンダよりも車両前方側に張り出した張出部を有し、前記ガイド部材は、前記マスタシリンダに固定される固定部と、前記固定部から車両前方側に延出して前記張出部と車両上下方向で重畳する延出部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、マスタシリンダの車両前後方向寸法を短尺化してリザーバタンクがマスタシリンダの車両前端よりも張り出した場合であっても、リザーバタンクを支持することが可能な車両用ブレーキ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ装置の構造を示す斜視図である。
図2図1に示す車両用ブレーキ装置を車両前方側から見た部分拡大斜視図である。
図3図2の矢印A方向から見た矢視図である。
図4図1に示す車両用ブレーキ装置を車両前方の斜め方向から見た斜視図である。
図5】固定部及び延出部を示す拡大斜視図である。
図6】ガイド部材の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、「前後」は、車両前後方向、「左右」は、車幅方向(左右方向)、「上下」は、車両上下方向(鉛直上下方向)を、それぞれ示している。
【0011】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ装置10は、マスタシリンダ12と、リザーバタンク14と、ガイド部材16とを備えて構成されている。
【0012】
このマスタシリンダ12は、シリンダ本体20と、図示しないピストンと、図示しないピストンロッドとから構成されている。マスタシリンダ12の車両後方端部は、ロアダッシュパネル18に取り付けられている。シリンダ本体20は、軸方向に沿った両端が閉塞された筒状を呈している。ピストンは、シリンダ本体20内に収装され、シリンダ本体20の軸方向に沿って往復動作するものである。ピストンロッドは、ピストンに連結されて該ピストンと一体的に往復動作するものである。
【0013】
図1に示されるように、ロアダッシュパネル18は、図示しないエンジンやモータ等のパワーユニットが配置されるパワープラントルームと、車室とを区画するものである。マスタシリンダ12の車両後方端部には、図示しないプッシュロッドを介してブレーキペダル(図示せず)が連結されている。
【0014】
リザーバタンク14は、取付片22を介して、マスタシリンダ12の車両上方側に取り付けられている。このリザーバタンク14は、タンク本体24と、筒状突出部26と、キャップ28とを備えて構成されている。タンク本体24は、例えば、樹脂製であり、内部にブレーキフルードが貯留されている。筒状突出部26は、タンク本体24の車両前端に位置し車両上方に向かって突出するように設けられている。キャップ28は、筒状突出部26の上端に設けられた図示しない開口部を着脱自在に開閉するように設けられている。
【0015】
また、リザーバタンク14は、マスタシリンダ12の車両前方端面13よりも車両前方側に張り出した張出部30を有する。この張出部30は、マスタシリンダ12の車両前方端面13よりも車両前方側に張り出したタンク本体24の一部と、このタンク本体24の一部に連続する筒状突出部26とによって構成されている。
【0016】
図1に示されるように、ガイド部材16は、リザーバタンク14の下方側に位置し、マスタシリンダ12の車両前方端面13に設けられている。図6に示されるように、このガイド部材16は、固定部32と、延出部34と、第1屈曲部(屈曲部)36と、当接部38と、第2屈曲部40と、補強部42とを有する。なお、ガイド部材16は、前面衝突(オフセット衝突を含む)時にエンジン等のパワーユニットを当接部38に当接させてマスタシリンダ12を車幅方向外側に変位させるように案内する機能を営む。
【0017】
固定部32は、マスタシリンダ12の車両前方端面13と略平行に延在する平坦面を有する平板部からなり、ねじ部材(固定部材)44を介して、マスタシリンダ12の車両前方端面13に固定されている(図1参照)。また、図5に示されるように、固定部32は、ねじ部材(固定部材)44を挿通するための固定孔46と、この固定孔46に連続し該固定孔46から車幅方向外側に向けて開口するスリット48とを有する。
【0018】
延出部34は、底面視して略三角形状を呈し(図4図6参照)、固定部32から車両前方側に延出してリザーバタンク14の張出部30と車両上下方向で重畳するように構成されている(図1参照)。換言すると、延出部34は、固定部32の上端から車両前方に向かって屈曲し、リザーバタンク14の下端に沿って車両前方側に所定長だけ延出するように設けられている。なお、本実施形態では、延出部34が、リザーバタンク14の下端と非接触状態に設けられているが、これに限定されるものではなく、接触状態であってもよい。
【0019】
また、延出部34は、底面視して、車両前方に向かうにつれて車幅方向内側の領域が先細り形状となるテーパ部50を有する。図3に示されるように、このテーパ部50は、車幅方向外側において車両前後方向に延出する延出部34と、車幅方向外側から車幅方向内側に向けて立ち下がるように傾斜する延出部34とによって構成されている。換言すると、延出部34の車幅方向内側の縁部(テーパ部50)は、車両前方に向かうほど車幅方向外側に位置するように傾斜している。
【0020】
固定部32の下端には、車両前方に向かって屈曲する第1屈曲部36が設けられている(図4図6参照)。第1屈曲部36の車両前方端には、マスタシリンダ12の車両前方端面13に対し、車幅方向外側から車幅方向内側に向かうように傾斜する当接部38(図2図4参照)が連続して設けられている。
【0021】
当接部38は、第1屈曲部36を介して固定部32に連続し、車幅方向内側に指向して傾斜する当接面52を有している(図2参照)。延出部34は、この当接面52の少なくとも一部よりも車幅方向外側に配置されている(図2の破線参照)。また、延出部34の少なくとも一部は、固定部32よりも車幅方向外側に配置されている(図2参照)。
【0022】
当接部38の下端には、車両後方側(マスタシリンダ12の車両前方端面13)に向かって屈曲する第2屈曲部40が設けられている(図6参照)。
【0023】
補強部42は、当接部38(当接面52の裏側の面)に溶接されて一体的に接合され(例えば、スポット溶接等)、当接面52の車幅方向外側に配置されている。この補強部42は、当接面52と車幅方向及び車両前後方向において重畳する補強面54(図6参照)と、補強面54から屈曲した後、マスタシリンダ12の車両前方端面13に沿って車幅方向外側に向かって突出する突出部56(図2参照)とを有する。補強部42は、ガイド部材16の固定部32、延出部34、第1屈曲部36、当接部38、及び、第2屈曲部40と別体で構成されている。さらに、補強部42は、車両前方の斜め方向から見て略L字状に屈曲して構成されている(図6参照)。
【0024】
本実施形態に係る車両用ブレーキ装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0025】
本実施形態では、マスタシリンダ12の車両前方端面13に設けられるガイド部材16を備えている。本実施形態において、リザーバタンク14は、マスタシリンダ12よりも車両前方側に張り出した張出部30を有している。このガイド部材16は、マスタシリンダ12に固定される固定部32と、この固定部32から車両前方側に延出して張出部30と車両上下方向で重畳する延出部34とを有している。
【0026】
本実施形態では、マスタシリンダ12の軸方向寸法を短尺化してリザーバタンク14を車両前方側に張り出した場合であっても、ガイド部材16の延出部34により張出部30の下方を好適に支持することができる。この結果、本実施形態では、例えば、マスタシリンダ12の張出部30に対して車両下方に変位するような荷重が入力された場合であっても、ガイド部材16の延出部34により張出部30を支えることで、リザーバタンク14の変形を防止しその耐久性を向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態において、固定部32は、マスタシリンダ12の車両前方端面13に固定されている。ガイド部材16は、固定部32に連続し車幅方向内側に指向する当接面52を有している。また、ガイド部材16の延出部34は、この当接面52の少なくとも一部よりも車幅方向外側に配置されている。
【0028】
本実施形態では、ガイド部材16の延出部34が当接面52の少なくとも一部よりも車幅方向外側に配置されているため(図2の破線参照)、前突荷重(オフセット荷重を含む)の入力時、ガイド部材16の当接面52に対してエンジン等のパワーユニットが衝突する際に延出部34が干渉することを好適に回避することができる。この結果、本実施形態では、前突荷重の入力時におけるリザーバタンク14の変形を防止しその耐久性を向上させることができる。
【0029】
さらに、本実施形態において、ガイド部材16の延出部34の少なくとも一部は、固定部32よりも車幅方向外側に配置されている。
【0030】
本実施形態では、ガイド部材16の延出部34の少なくとも一部が、固定部32よりも車幅方向外側に配置されていることで、前突荷重の入力時、ガイド部材16の当接面52に対してエンジン等のパワーユニットが衝突する際に延出部34が干渉することを好適に回避することができる。この結果、本実施形態では、前突荷重の入力時におけるリザーバタンク14の変形を防止しその耐久性を向上させることができる。
【0031】
さらにまた、本実施形態において、延出部34は、車両前方に向かうにつれて車幅方向内側の領域が先細り形状となるテーパ部50を有している。
【0032】
これにより、本実施形態では、張出部30に対する延出部34の接触面積を確実に確保して、リザーバタンク14の変形に対する耐久性をより一層向上させることができる。さらに、本実施形態では、前突荷重の入力時、ガイド部材16の当接面52に対してエンジン等のパワーユニットが衝突する際に延出部34が干渉することを好適に回避することができる。
【0033】
さらにまた、本実施形態において、ガイド部材16は、固定部32から第1屈曲部36を介して連続する当接部38の当接面52と、この当接面52の車幅方向外側に配置された補強部42とを有している。この補強部42は、当接面52と主として車幅方向において重畳する補強面54と、この補強面54からマスタシリンダ12の車両前方端面13に向かって突出する突出部56とを有している。
【0034】
本実施形態では、補強部42に補強面54と突出部56とを設けることで、リザーバタンク14の変形に対する耐久性をより一層向上させることができる。また、前突荷重の入力時、ガイド部材16の当接面52に対してエンジン等のパワーユニットが当接した際、当接面52を介して入力された荷重を第1屈曲部36と突出部56とによってマスタシリンダ12に伝達することができる。これにより、本実施形態では、前突荷重の入力時、マスタシリンダ12を車幅方向外側に向けてより確実に変位(変形)させることができる。
【0035】
さらにまた、本実施形態において、固定部32は、ねじ部材(固定部材)44を挿通するための固定孔46と、この固定孔46に連続し該固定孔46から車幅方向外側に向けて開口するスリット48とを有している。
【0036】
本実施形態では、固定部32において、ねじ部材44を取り付けるための固定孔46及びスリット48を有しているため、マスタシリンダ12の車両前方端面13に予め締結されたねじ部材44に対し、後からガイド部材16を簡便に組み付けることができる。この結果、本実施形態では、車両用ブレーキ装置10の組付作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 車両用ブレーキ装置
12 マスタシリンダ
13 (マスタシリンダの)車両前方端面
14 リザーバタンク
16 ガイド部材
18 ロアダッシュパネル(ダッシュパネル)
30 張出部
32 固定部
34 延出部
36 第1屈曲部(屈曲部)
42 補強部
44 ねじ部材(固定部材)
46 固定孔
48 スリット
50 テーパ部
52 当接面
54 補強面
56 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6