(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126086
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】移動ロボットに搭載されるペイロード
(51)【国際特許分類】
G05D 3/00 20060101AFI20240912BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20240912BHJP
【FI】
G05D3/00 Z
G05D1/02 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034242
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】園木 匠
(72)【発明者】
【氏名】山口 瞳
【テーマコード(参考)】
5H301
5H303
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H303AA12
5H303AA20
5H303BB03
5H303BB14
(57)【要約】
【課題】移動ロボットを工事現場等での巡回業務に利用可能に拡張するペイロードを提供する。
【解決手段】ペイロード100は、移動ロボット200に搭載されるペイロードであって、周辺環境を計測または撮影する電子機器110と、移動ロボット200に対する電子機器110の位置と向きを変更する姿勢調整機構120と、姿勢調整機構120を制御する制御部140と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ロボットに搭載されるペイロードであって、
周辺環境を計測または撮影する電子機器と、
前記移動ロボットに対する前記電子機器の位置と向きを変更する姿勢調整機構と、
前記姿勢調整機構を制御する制御部と、を備える
ことを特徴とするペイロード。
【請求項2】
請求項1に記載のペイロードにおいて、
前記姿勢調整機構は、前記電子機器を衝撃から保護する保護部材を備え、
前記制御部は、
前記移動ロボットの移動中に前記電子機器が前記保護部材に収容される第1の位置に維持されるように、前記姿勢調整機構を制御し、
前記電子機器の計測または撮影中に前記電子機器が前記第1の位置とは異なる位置に位置付けられるように、前記姿勢調整機構を制御する
ことを特徴とするペイロード。
【請求項3】
請求項2に記載のペイロードにおいて、
前記姿勢調整機構は、水平な回転軸を有する、前記電子機器が固定された保持部材であって、回動範囲の一端において前記電子機器を前記第1の位置に位置付ける保持部材を備え、
前記制御部は、前記保持部材が前記回転軸周りに回動するように、前記姿勢調整機構を制御する
ことを特徴とするペイロード。
【請求項4】
請求項3に記載のペイロードにおいて、
前記保護部材は、前記回転軸周りに回動する前記保持部材の軌跡上が開放された、前記回転軸方向からの衝撃と前記移動ロボットからの衝撃を吸収する、バスケット形状を有する
ことを特徴とするペイロード。
【請求項5】
請求項4に記載のペイロードにおいて、
前記保護部材は、少なくとも3層構造を有し、
前記3層構造は、前記第1の位置の前記電子機器に近い層から順に、
第1層と
前記第1層よりも硬い第2層と、
前記第1層よりも硬い、前記第2層とは硬さの異なる第3層と、を備える
ことを特徴とするペイロード。
【請求項6】
請求項4に記載のペイロードにおいて、
前記保護部材は、前記第1の位置に位置付けられた前記電子機器の高さ以上の深さを有する
ことを特徴とするペイロード。
【請求項7】
請求項3に記載のペイロードにおいて、
前記姿勢調整機構は、さらに、
前記回転軸を回転自在に支持する支持部材と、
前記支持部材が固定された回転ステージと、を備え、
前記制御部は、前記回転軸の向きを変更するように、前記姿勢調整機構を制御する
ことを特徴とするペイロード。
【請求項8】
請求項3に記載のペイロードにおいて、
前記保持部材は、前記回転軸から前記電子機器までの距離を可変する伸縮構造を有し、
前記制御部は、前記距離を変更するように、前記姿勢調整機構を制御する
ことを特徴とするペイロード。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のペイロードにおいて、
前記電子機器は、3Dスキャナである
ことを特徴とするペイロード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、移動ロボットに搭載されるペイロードに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場における省力化、省人化、生産性向上を実現する手段として、安全管理、進捗管理、品質管理等のために行われる巡回業務への移動ロボットの活用が期待されている。これに関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、移動体に搭載した測量装置で三次元点群データを取得する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人間が建築現場で行う巡回作業では、姿勢を変えて隙間や障害物の裏側などを覗き込む動作がしばしば必要となる。このような動作を移動ロボットの通常の移動機能だけで再現することは一般に困難である。このため、移動ロボットに積載されるペイロードには、覗き込む動作などを再現するために、計測や撮影に用いる電子機器の姿勢を変更する機能が求められる。
【0005】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、移動ロボットを工事現場等での巡回業務に利用可能に拡張するペイロードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るペイロードは、移動ロボットに搭載されるペイロードであって、周辺環境を計測または撮影する電子機器と、前記移動ロボットに対する前記電子機器の位置と向きを変更する姿勢調整機構と、前記姿勢調整機構を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様によれば、移動ロボットを工事現場等での巡回業務に利用可能に拡張するペイロードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るシステムの構成を例示した図である。
【
図2】第1の実施形態に係る巡回装置の構成を例示した図である。
【
図3】第1の実施形態に係る巡回装置の斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る巡回装置の背面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る巡回装置の側面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る巡回装置の平面図である。
【
図7】計測中の第1の実施形態に係る巡回装置の斜視図である。
【
図8】計測中の第1の実施形態に係る巡回装置の平面図である。
【
図9】移動中の第1の実施形態に係る巡回装置の斜視図である。
【
図10】移動中の第1の実施形態に係る巡回装置の背面図である。
【
図11】移動中の第1の実施形態に係る巡回装置の側面図である。
【
図12】第1の実施形態に係る巡回装置の保護部材の構造を示す図である。
【
図13】第1の実施形態に係る巡回装置の姿勢調整機構の変形例を示す図である。
【
図14】第1の実施形態に係る巡回装置の姿勢調整機構の変形例を示す別の図である。
【
図15】第2の実施形態に係る巡回装置の斜視図である。
【
図16】第2の実施形態に係る巡回装置の背面図である。
【
図17】第2の実施形態に係る巡回装置の側面図である。
【
図18】第2の実施形態に係る巡回装置の平面図である。
【
図19】計測中の第2の実施形態に係る巡回装置の斜視図である。
【
図20】計測中の第2の実施形態に係る巡回装置の斜視図である。
【
図21】計測中の第2の実施形態に係る巡回装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るシステムの構成を例示した図である。
図2は、本実施形態に係るシステムに含まれる巡回装置の構成を例示した図である。
図1に示すシステム1は、
図2に示す巡回装置10を活用して巡回業務を行うシステムである。
図1及び
図2を参照しながら、システム1の構成について説明する。
【0010】
以下では、巡回業務が安全管理や進捗管理などを目的として工事現場で行われる場合を例に説明するが、巡回業務が行われる場所は、工事現場に限らない。例えば、屋外施設や屋内施設の警備等の目的で行われる巡回業務に適用してもよい。
【0011】
システム1は、
図1に示すように、巡回装置10と、ユーザ端末20とを含んでいる。巡回装置10とユーザ端末20は、インターネットなどのネットワーク30を介して通信可能に接続されている。装置間の通信は、図示しない他の装置を介在して行われてもよい。ここで、通信は、無線通信であってもよく、有線通信であってもよい。また、無線通信と有線通信の組み合わせであってもよい。
【0012】
ユーザ端末20は、巡回装置10へ指示を送信する装置であり、特に限定しないが、例えば、工事現場の敷地内に設置される現場事務所や、工事現場から離れたオフィスなどに置かれたコンピュータである。ユーザ端末20は、モバイル端末であってもよく、例えば、タブレット端末や、巡回装置10を遠隔操作する専用のコントローラであってもよい。ユーザ端末20から巡回装置10へ指示を送信することで、巡回装置10は、工事現場の敷地内において巡回業務を実施する。
【0013】
また、ユーザ端末20は、巡回装置10から情報を受信する装置でもある。ユーザ端末20は、巡回装置10が巡回業務で得た情報を巡回装置10から受信する。巡回業務で得た情報は、例えば、巡回中に撮影された映像情報であってもよく、巡回中に計測された計測情報であってもよい。
【0014】
巡回装置10は、工事現場内を移動して巡回業務を実施する装置であり、移動ロボット200と、移動ロボット200に搭載されるペイロード100を含んでいる。巡回装置10は、さらに、図示しないバッテリーを備え、バッテリーからの電力で動作するように構成されている。
【0015】
移動ロボット200は、特に限定しないが、段差等の多い工事現場内を自在に移動可能な自律歩行型の多足歩行ロボットであることが望ましい。移動ロボット200としては、例えば、Boston Dynamics社の四足歩行ロボットSpot(登録商標)などが利用できる。ただし、移動ロボット200は、多足歩行型のロボットに限らず、車輪型、クローラ型などその他の方式のロボットであってもよい。また、移動ロボット200は、自律型の移動ロボットに限らず、ユーザ端末20からの指示に従って移動する移動ロボットであってもよい。
【0016】
ペイロード100は、移動ロボット200に積載されることで、巡回装置10に必要な各種機能を追加する装置である。ペイロード100は、
図2に示すように、電子機器110と、姿勢調整機構120と、電動機130と、制御部140と、通信部151と、移動ロボットインタフェース152を備えている。
【0017】
電子機器110は、周辺環境を計測または撮影する電子機器である。電子機器110は、例えば、3DスキャナやLiDARなどの計測装置、広角撮影可能な360度カメラなどの撮影装置である。
【0018】
姿勢調整機構120は、移動ロボット200に対する電子機器110の位置と向きを変更する機構である。姿勢調整機構120は、位置と向きを変更できればよく、具体的な機構については特に限定しない。なお、位置と向きは別々の機構により変更されてもよく、同じ機構により変更されてもよい。
【0019】
電動機130は、例えば、モータであり、上述したバッテリーから供給される電気エネルギーを回転運動に変換する駆動源である。電動機130の回転運動(動力)が変換機構を介して姿勢調整機構120へ伝達されることで、姿勢調整機構120が運動して電子機器110の位置と向きを変更する。
【0020】
制御部140は、ペイロード100の各部の動作を制御する。制御部140は、電子機器110を制御して、計測動作や撮影動作を制御してもよい。制御部140は、電動機130を介して姿勢調整機構120を制御して、電子機器110の位置と向きを制御してもよい。また、制御部140は、通信部151を制御して、外部機器との通信を制御してもよい。
【0021】
通信部151は、外部装置と通信する。通信部151は、例えば、ネットワーク30経由でユーザ端末20と通信する。通信部151は、ユーザ端末20からの指示を受信してもよく、ユーザ端末20へ情報を送信してもよい。移動ロボットインタフェース152は、ペイロード100と移動ロボット200の間でデータをやり取りする。
【0022】
以上のように構成されたシステム1では、ペイロード100が姿勢調整機構120を備えることで、巡回装置10は移動ロボット200に対する電子機器110の位置と向きを変更可能である。従って、システム1では、人間が行う覗き込む動作などを巡回装置10で再現可能であり、巡回装置10は、移動ロボット200の移動だけでは困難な隙間や障害物の裏側の計測や撮影を行うことができる。即ち、巡回装置10に設けられたペイロード100は、移動ロボット200を工事現場等での巡回業務に利用可能に拡張することが可能であり、巡回装置10によれば、従来のロボットでは困難であった巡回業務を行うことができる。
【0023】
図3は、巡回装置10の斜視図である。
図4は、巡回装置10の背面図である。
図5は、巡回装置10の側面図である。
図6は、巡回装置10の平面図である。以下、
図3から
図6を参照しながら、巡回装置10の構成について具体的に説明する。
【0024】
巡回装置10は、
図3から
図5に示すように、四足歩行型の移動ロボット200と、移動ロボット200上に搭載されたペイロード100と、を備えている。移動ロボット200は、
図5に示すように、四本の脚が接続された柱状の本体部上面が平坦に構成されていて、ペイロード100はこの平坦な上面に搭載されている。
【0025】
ペイロード100は、周辺環境を計測する3Dスキャナ111と、移動ロボット200に対する3Dスキャナ111の位置と向きを変更する姿勢調整機構120と、電動機130(
図6参照)を含んでいる。さらに、ペイロード100は、
図2に示す制御部140、通信部151、移動ロボットインタフェース152を含んでいる。
【0026】
3Dスキャナ111は、3Dスキャナ111の周辺を広い範囲にわたりレーザーでスキャンすることにより、周辺環境の点群データを取得して周辺環境を計測する電子機器である。3Dスキャナ111としては、例えば、Leica社のBLK360 G2などを利用することができる。BLK360 G2は、レーザースキャンデータ(点群データ)と360°画像データの二種類を取得することができる。即ち、3Dスキャナ111は、レーザスキャン(計測)と撮影の両方に対応してもよい。
【0027】
姿勢調整機構120は、3Dスキャナ111が固定された保持部材121と、支持部材122と、保護部材123を含んでいる。保持部材121が有する回転軸121aは、支持部材122に回転自在に支持されている。
【0028】
回転軸121aの向きは、
図5に示すように、水平である。より具体的には、四足歩行型の移動ロボット200の進行方向と直交する左右方向に平行である。従って、保持部材121が回転軸121a周りに回動することで、3Dスキャナ111が移動ロボット200の進行方向を沿って回転軸121a周りに回転移動し、その結果、移動ロボット200に対する3Dスキャナ111の位置と向きが変化する。
【0029】
保持部材121の回動運動は、
図6に示す電動機130からの動力の伝達を制御することで制御することが可能である。このように、ペイロード100では、制御部140は、電動機130の動作を制御することで、保持部材121が回転軸121a周りに回動するよう姿勢調整機構120の動作を制御することが可能であり、これにより、3Dスキャナ111の位置と向きを調整することができる。
【0030】
保護部材123は、電子機器である3Dスキャナ111を衝撃から保護する部材であり、
図5に示すように、回転軸121a及び支持部材122に対して移動ロボット200の後方に設けられている。より詳細には、保護部材123は、
図3等に示すように、回転軸121a周りに回動する保持部材121の軌跡上が開放されたバスケット形状を有していて、回転軸方向からの衝撃と移動ロボット200からの衝撃を吸収するように構成されている。
【0031】
図7は、計測中の巡回装置10の斜視図である。
図8は、計測中の巡回装置10の平面図である。
図9は、移動中の巡回装置10の斜視図である。
図10は、移動中の巡回装置10の背面図である。
図11は、移動中の巡回装置10の側面図である。
図12は、巡回装置10の保護部材123の構造を示す図である。以下、
図7から
図12を参照しながら、巡回装置10の計測中と移動中の姿勢の違いについて具体的に説明する。
【0032】
計測時には、計測対象の位置や障害物の有無によって、巡回装置10は、様々な姿勢をとりうる。例えば、鉄筋コンクリートを作る場合を例に説明する。鉄筋コンクリートは、鉄筋が組まれた木枠で囲まれた領域内にコンクリートを流し込んで固めることで作成される。コンクリート面から鉄筋までの最小距離(かぶりという)は短すぎても長すぎても望ましくなく、短すぎると鉄筋が酸化する虞があり、長すぎると鉄筋によって得られる様々な効果を低くなってしまう。このため、コンクリートを流し込む前段階で、コンクリート面となる木枠内側表面と鉄筋までの最小距離を計測し、計測された距離が予め決められた範囲内に収まっているかどうか確認する作業が行われる。このため、巡回装置10が行う巡回業務でも、このような木枠から鉄筋までの最小距離を計測することが求められる。
【0033】
しかしながら、木枠の内側表面と鉄筋までの距離を巡回装置10が計測しようとした場合、巡回装置10が木枠に十分に近づいても、木枠自身が障害物となって距離を計測できないことがある。このような場合には、木枠の手前まで移動ロボット200で移動した巡回装置10は、
図7及び
図8に示すように、姿勢調整機構120を制御して、3Dスキャナ111を移動ロボット200よりも前方まで移動させて木枠の内側を覗き込む姿勢をとればよい。これにより、木枠から鉄筋までの距離を木枠に視界を遮られることなく計測することができる。
【0034】
一方、巡回業務における移動中は、計測中に比べて衝突や転倒のリスクが格段に高くなる。このため、計測中とは異なり、巡回装置10は、転倒等しても3Dスキャナ111が大きな衝撃が受けないような姿勢をとることが望ましい。
【0035】
そこで、巡回装置10は、
図9から
図11に示すように、3Dスキャナ111が保護部材123に収容される姿勢をとる。具体的には、巡回装置10では、制御部140が姿勢調整機構120を制御することで、保持部材121を回動範囲の一端まで回動し、その一端において3Dスキャナ111を保護部材123に収容される位置(第1の位置と記す。)に位置付ける。第1の位置では、3Dスキャナ111は、
図12に示すように、円筒形状の側面を鉛直下方に向けた状態で、保護部材123の凹部底面上に横たわっている。
【0036】
凹部を形成する保護部材123は、
図12に示すように、3層構造を有している。3Dスキャナ111に近い層から順に、第1層123aと、第1層123aよりも硬い第2層123bと、第1層123aよりも硬く、第2層123bとは硬さの異なる第3層123cを含んでいる。最も柔らかい第1層は、例えばゲル層である。第2層は、例えば熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)などの比較的柔らかいプラスチックからなり、ハニカム構造を有してもよい。第3層は、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)などの比較的硬いプラスチックからなる。なお、第2層が比較的柔らかいプラスチックで、第3層が比較的高いプラスチックでもよい。また、保護部材123は、少なくとも3層構造を有していればよく、4層以上を有してもよい。
【0037】
図12に示すように、移動ロボット200の移動中に、最も柔らかい第1層に3Dスキャナ111の広い面を接触させた状態とすることで、3Dスキャナ111に加わる力が分散し特定部分に大きな力が加わることを回避することができる。また、移動中に振動等が発生した場合であっても、第1層が変形して力を吸収することで3Dスキャナ111へ加わる衝撃を最小限に抑えることができる。
【0038】
さらに、保護部材123は、
図10及び
図11に示すように、第1の位置に位置付けられた3Dスキャナ111の高さ以上の深さを有している。これにより、移動中に3Dスキャナ111が保護部材123から上方へ突出することがない。このため、例えば移動中に転倒して巡回装置10が逆さまになった場合であっても、保護部材123が地面を受けとめることができるため、3Dスキャナ111が地面に直接ぶつかって大きな衝撃を受けてしまうことを防止することができる。
【0039】
以上のように、巡回装置10は計測中と移動中で姿勢を異ならせる。具体的には、制御部140は、移動ロボット200の移動中に3Dスキャナ111が保護部材123に収容される第1の位置に維持されるように、姿勢調整機構120を制御する。一方で、3Dスキャナ111の計測(または撮影)中には、制御部140は、3Dスキャナ111が第1の位置とは異なる位置に位置付けられるように、姿勢調整機構120を制御する。これにより、転倒や衝突に対して3Dスキャナ111を保護部材123で安全に保護するとともに、計測(または撮影)時に保護部材123が計測(または撮影)の障害となることを回避することができる。従って、巡回装置10にペイロード100を用いることで、転倒や衝突の危険を伴う工事現場等での巡回業務を巡回装置10によって安全かつ適切に実施することができる。
【0040】
上述した姿勢調整機構120では、ピッチングに対応する回転を3Dスキャナ111に加えることで、3Dスキャナ111の位置及び向きを変更する例を示したが、3Dスキャナ111には、ローリングやヨーイングに対応する回転を加えてもよく、姿勢調整機構120は、それに対応する機構を備えてもよい。
【0041】
図13及び
図14は、姿勢調整機構120の変形例を示す図であり、
図13及び
図14に示す姿勢調整機構120aは、姿勢調整機構120の構成(保持部材121、支持部材122、保護部材123)に加えて、保護部材123が固定された回転ステージ124を含んでいる。制御部140は、回転ステージ124を回転させて回転軸121aの向きを変更するように、姿勢調整機構120aを制御してもよい。
【0042】
姿勢調整機構120aを備えるペイロードによれば、ピッチングに対応する回転に加えてヨーイングに対応する回転を3Dスキャナ111に加えて、3Dスキャナ111の位置及び向きを変更することができる。これにより、3Dスキャナ111の位置及び向きをさらに自由に調整することが可能であり、計測対象や状況に応じた姿勢をとることができる。
【0043】
(第2の実施形態)
図15は、巡回装置11の斜視図である。
図16は、巡回装置11の背面図である。
図17は、巡回装置11の側面図である。
図18は、巡回装置11の平面図である。以下、
図15から
図18を参照しながら、巡回装置11の構成について具体的に説明する。なお、本実施形態に係るシステムは、巡回装置10の代わりに巡回装置11を備える点がシステム1とは異なっている。
【0044】
巡回装置11は、四足歩行型の移動ロボット200と、移動ロボット200上に搭載されたペイロード100aと、を備えている。移動ロボット200は、第1の実施形態と同様であり、巡回装置11は、ペイロード100の代わりにペイロード100aを備えている点が、巡回装置10とは異なっている。
【0045】
ペイロード100aは、ペイロード100と同様に、移動ロボット200の本体部上面に搭載されている。ペイロード100aは、3Dスキャナ111と、移動ロボット200に対する3Dスキャナ111の位置と向きを変更する姿勢調整機構160を備えている。ペイロード100aは、さらに、図示しない電動機130と、制御部140と、通信部151と、移動ロボットインタフェース152を備えている。
【0046】
姿勢調整機構160は、3Dスキャナ111が固定された保持部材161と、支持部材162を含んでいる。支持部材162は、保持部材161の一端を支持して、図示しない回転軸周りに保持部材161を回動させる。制御部140が保持部材161を回動させることで、3Dスキャナ111が移動ロボット200の進行方向を沿って回転移動し、その結果、移動ロボット200に対する3Dスキャナ111の位置と向きが変化する。このように、ペイロード100aでは、制御部140は、保持部材161が回動するよう姿勢調整機構160の動作を制御することが可能であり、これにより、3Dスキャナ111の位置と向きを調整することができる。
【0047】
保持部材161は、筒部161aと伸縮構造161bを有している。伸縮構造161bは、回転軸から3Dスキャナ111までの距離を可変する構造であり、制御部140によって制御される。即ち、制御部140は、伸縮構造161bが可変する回転軸から3Dスキャナ111までの距離を変更するように、姿勢調整機構160を制御することで、3Dスキャナ111の位置を調整する。
【0048】
図19から
図21は、計測中の巡回装置11の斜視図である。以下、
図19から
図21を参照しながら、巡回装置11の計測中の姿勢について具体的に説明する。
【0049】
上述したように巡回業務では様々な対象の計測や撮影が行われるため、巡回装置11は、様々な姿勢をとりうる。ここでは、第1の実施形態と同様に木枠から鉄筋までの最小距離を計測する場合と、地上から見えづらい高所部分を検査する場合を例にして、計測時の姿勢について説明する。
【0050】
まず、木枠から鉄筋までの最小距離を計測する場合であれば、木枠の手前まで移動ロボット200で移動した巡回装置11は、
図19に示すように、姿勢調整機構160を制御して、3Dスキャナ111を移動ロボット200よりも前方まで移動させて木枠の内側を覗き込む姿勢をとればよい。また、木枠までの距離に応じて、
図20に示すように、伸縮構造161bを伸ばして3Dスキャナ111の位置を調整してもよい。これにより、木枠に視界を遮られることなく木枠と鉄筋の距離を計測することができる。
【0051】
また、高所部分を検査する場合であれば、検査対象の下まで移動ロボット200で移動した巡回装置11は、
図21に示すように、姿勢調整機構160を制御して、3Dスキャナ111を立てた状態のままで伸縮構造161bを伸ばして、高所部分付近まで3Dスキャナ111を近づければよい。これにより、地上からは確認できない高所部分を計測して必要な情報を得ることができる。
【0052】
実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各種実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態が実施され得ることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。
【0053】
例えば、上述した第2の実施形態では、姿勢調整機構160が保護部材を有しない例を示したが、移動時に3Dスキャナ111を収容する保護部材が設けられてもよい。また、上述した第1の実施形態では、姿勢調整機構120が伸縮構造を有しない例を示したが、例えば保持部材121が伸縮構造を有してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 システム
10、11 巡回装置
20 ユーザ端末
30 ネットワーク
100、100a ペイロード
110 電子機器
111 3Dスキャナ
120、120a、160 姿勢調整機構
121、161 保持部材
121a 回転軸
122、162 支持部材
123 保護部材
123a 第1層
123b 第2層
123c 第3層
124 回転ステージ
130 電動機
140 制御部
151 通信部
152 移動ロボットインタフェース
161a 筒部
161b 伸縮構造
200 移動ロボット