(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126087
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】環式ジアルコール化合物の製造方法および環式ジアルコール化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 319/08 20060101AFI20240912BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20240912BHJP
C08G 64/16 20060101ALI20240912BHJP
C08G 63/64 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C07D319/08
C07B61/00 300
C08G64/16
C08G63/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034243
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】友成 安彦
(72)【発明者】
【氏名】大山 達也
【テーマコード(参考)】
4H039
4J029
【Fターム(参考)】
4H039CA61
4H039CG10
4J029AA08
4J029AA09
4J029AD01
4J029AD10
4J029AE04
4J029BD08
4J029BF25
4J029HA01
4J029HC05A
4J029JC091
4J029JC093
4J029JF031
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱安定性と光学特性とが改善された高純度の新規環式ジアルコール化合物の製造方法および環式ジアルコール化合物を提供する。
【解決手段】少なくとも工程1~工程3を含むことを特徴とする、下記式(1)で示される環式ジアルコール化合物の製造方法。
工程1:2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンと下記式(3)で示されるトリメチロール化合物とを反応溶媒中、固体酸の存在下で反応させる工程;工程2:工程1で得られた反応液を室温まで冷却したのち反応液を水酸化ナトリウム水溶液で中和させる工程;工程3:工程2で得られた溶液中の環式ジアルコール化合物(1)を芳香族炭化水素系溶媒で再結晶させて高純度の環式ジアルコール化合物(1)を得る工程。
(式中、R
1~R
3は炭化水素基を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される環式ジアルコール化合物の製造方法において、少なくとも工程1~工程3を含んでなることを特徴とする環式ジアルコール化合物の製造方法。
工程1:下記式(2)で示される2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンと下記式(3)で示されるトリメチロール化合物とを反応溶媒中、固体酸の存在下で反応させる工程
工程2:工程1で得られた反応液を室温まで冷却したのち反応液を水酸化ナトリウム水溶液で中和させる工程
工程3:工程2で得られた溶液中の環式ジアルコール化合物(1)を芳香族炭化水素系溶媒で再結晶させて高純度の環式ジアルコール化合物(1)を得る工程
【化1】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立に炭化水素基を示す。)
【化2】
【化3】
(式中、R
3は炭化水素基を示す。)
【請求項2】
前記式(1)中のR1およびR2がメチル基またはエチル基である請求項1に記載の環式ジアルコール化合物の製造方法。
【請求項3】
前記式(3)で表される化合物がトリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンである請求項1に記載の環式ジアルコール化合物の製造方法。
【請求項4】
工程1で使用される反応溶媒としてトルエンを用いる請求項1に記載の環式ジアルコール化合物の製造方法。
【請求項5】
5%重量減少温度が300℃以上である下記式(1)で示される環式ジアルコール化合物。
【化4】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立に炭化水素基を示す。)
【請求項6】
前記式(1)中のR1およびR2がメチル基またはエチル基である請求項5に記載の環式ジアルコール化合物。
【請求項7】
前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物に含まれるタングステン元素およびナトリウム元素の含有量が下記式(4)および下記式(5)を満たす請求項5に記載の環式ジアルコール化合物。
0ppm ≦ W ≦ 100ppm (4)
0ppm ≦ Na≦ 50ppm (5)
【請求項8】
前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物に含まれる硫黄元素の含有量が下記式(6)を満たす請求項5に記載の環式ジアルコール化合物。
0ppm ≦ S ≦ 5ppm (6)
【請求項9】
前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物のガスクロマトグラフィー純度が95面積%以上である請求項5に記載の環式ジアルコール化合物。
【請求項10】
ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の原料として用いられる請求項5~9のいずれかに記載の環式ジアルコール化合物。
【請求項11】
請求項5~9のいずれか一項に記載の環式ジアルコール化合物を重合することにより得られるポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環式ジアルコール化合物の製造方法および環式ジアルコール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂の原料として各種の環式ジアルコールが使用されており、工業的に入手できる化合物としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDMと略記されることがある)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(TCDDMと略記されることがある)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールAと呼ばれることがある)、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン(スピログリコールと呼ばれることがある)などが挙げられる。これ以外の化合物も樹脂の用途に応じた様々な環式ジアルコール化合物が開発されている。
【0003】
例えば、光学レンズに用いられるポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、屈折率など樹脂の光学特性の改良を目的として、フルオレン環構造をもつ芳香族ジアルコール化合物を含むジアルコールを用いて製造する方法が報告されており(特許文献1)、それ以外の環式ジアルコールを一定の割合で用い製造する方法も報告されている(特許文献2および特許文献3)。
【0004】
ところが、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂はその用途に応じ多岐にわたって使用されており、その用途に応じた樹脂の物性を満足できる環式ジアルコール化合物の開発が求められている。特に、光学レンズに用いられる場合、近年は光学特性を向上させるために前述した環式ジアルコール以外の新規な環式ジアルコール化合物が必要とされている。近年、ジケトン類とトリメチロール化合物とを酸性触媒下で反応(アセタール化反応)させて得られる環式ジオール化合物が積極的に開発されているものの、光学特性が満足できなかったり、アセタール化反応後の酸触媒が残存したり中和不足により、加水分解を起こし環式ジオール化合物の熱安定性が低くなったりすることがある(特許文献4および特許文献5)。そうすると、特許文献4や特許文献5に記載の製法により得られた環式ジオール化合物を用いてポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂を重合しようとすると重合中に分解が起き重合ができないか、あるいは環式ジオール化合物の分解点を起点に架橋して満足のいくポリマーが得られないことがある。あるいは、重合(高分子量化)ができたとしても洗浄不足により中和塩が残存し、重合したポリマーが黄色く着色したり、白く濁りヘイズが高くなったりする場合もあるため、その製造方法にも未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/142149号
【特許文献2】国際公開第2017/175693号
【特許文献3】国際公開第2022/004239号
【特許文献4】特開2019-14711号公報
【特許文献5】国際公開第2022/091990号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高純度でさらには熱安定性、色相が改善された環式ジアルコール化合物および該環式ジアルコール化合物を高収率で得られる環式ジアルコール化合物の製造方法を提供すること、また、該環式ジアルコール化合物を原料として用いた光学部材のための透明性や色相に優れたポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために検討した結果、特定の製造工程を有することにより、良好な品質を有し、ポリマー原料として優れた環式ジアルコール化合物を製造できることを見出したものである。すなわち、本発明は、以下に示す構成を採用するものである。
【0008】
[1]下記式(1)で示される環式ジアルコール化合物の製造方法において、少なくとも工程1~工程3を含んでなることを特徴とする環式ジアルコール化合物の製造方法。
工程1:下記式(2)で示される2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンと下記式(3)で示されるトリメチロール化合物とを反応溶媒中、固体酸の存在下で反応させる工程
工程2:工程1で得られた反応液を室温まで冷却したのち反応液を水酸化ナトリウム水溶液で中和させる工程
工程3:工程2で得られた溶液中の環式ジアルコール化合物(1)を芳香族炭化水素系溶媒で再結晶させて高純度の環式ジアルコール化合物(1)を得る工程
【0009】
【化1】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立に炭化水素基を示す。)
【0010】
【0011】
【0012】
[2]前記式(1)中のR1およびR2がメチル基またはエチル基である前項[1]に記載の環式ジアルコール化合物の製造方法。
[3]前記式(3)で表される化合物がトリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンである前項[1]または[2]に記載の環式ジアルコール化合物の製造方法。
[4]工程1で使用される反応溶媒としてトルエンを用いる前項[1]~[3]のいずれかに記載の環式ジアルコール化合物の製造方法。
[5]5%重量減少温度が300℃以上である下記式(1)で示される環式ジアルコール化合物。
【0013】
【化4】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立に炭化水素基を示す。)
【0014】
[6]前記式(1)中のR1およびR2がメチル基またはエチル基である前項[5]に記載の環式ジアルコール化合物。
[7]前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物に含まれるタングステン元素およびナトリウム元素の含有量が下記式(4)および下記式(5)を満たす前項[5]または[6]に記載の環式ジアルコール化合物。
0ppm ≦ W ≦ 100ppm (4)
0ppm ≦ Na≦ 50ppm (5)
[8]前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物に含まれる硫黄元素の含有量が下記式(6)を満たす前項[5]~[7]のいずれかに記載の環式ジアルコール化合物。
0ppm ≦ S ≦ 5ppm (6)
[9]前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物のガスクロマトグラフィー純度が95面積%以上である前項[5]~[8]のいずれかに記載の環式ジアルコール化合物。
[10]ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の原料として用いられる前項[5]~[9]のいずれかに記載の環式ジアルコール化合物。
[11]前項[5]~[9]のいずれか一項に記載の環式ジアルコール化合物を重合することにより得られるポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱安定性および色相に優れた高純度の環式ジアルコール化合物を高収率で合成でき、該環式ジアルコール化合物を原料として使用したポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂の色相、透明性や光学特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1で得られた環式ジアルコール化合物の
1H NMRである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要素の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0018】
[環式ジアルコール化合物の製造方法]
本発明の下記式(1)で表される環式ジアルコール化合物の製造方法としては、2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンとトリメチロール化合物とをアセタール化して得ることができる。
【0019】
【化5】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立に炭化水素基を示す。)
【0020】
具体的に、本発明の上記式(1)で表される環式ジアルコール化合物の製造方法としては、少なくとも下記の工程1~3を含んでなる製造方法である。
【0021】
すなわち、下記式(2)で表される2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンと下記式(3)で表されるトリメチロール化合物とを反応溶媒中、固体酸の存在下で反応させる工程1と工程1で得られた反応液を室温まで冷却したのち、反応液を水酸化ナトリウム水溶液で中和させる工程2、さらには工程2で得られた溶液中の環式ジアルコール化合物(1)をトルエンで再結晶させることにより環式ジアルコール化合物(1)が加水分解することなく高収率かつ高純度で得る工程3により製造できる。
【0022】
本発明の製造方法では、固体酸を用いていることから工程1の反応速度が速く短時間で反応が完結することや工程2で固体酸を水酸化ナトリウム水溶液で容易に中和し分離できること、その結果、工程3の芳香族炭化水素系溶媒で再結晶を行っても環式ジアルコール化合物(1)が加水分解することなく高収率で精製した結晶を回収できるため、非常に簡便に効率よく(1)で示される環式ジアルコール化合物を製造できる。
【0023】
さらには、本発明の製造方法により得られた環式ジアルコール化合物(1)は5%重量減少温度が300℃以上であるため、該環式ジアルコール化合物(1)を樹脂の原料として用いた溶融重合でも分解することなく容易に重合させることができる。
【0024】
【0025】
【0026】
上記式(2)で表される2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンの純度は特に限定されないが、90%以上が好ましく、より好ましくは98%以上である。なお、前記式(2)で示すような2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンは、市販品を用いてもよく、あるいは、あらかじめ合成したものを使用してもよい。例えば、2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンを製造する方法としては、非特許文献(Angewandte Chemie,International Edition,2012,Vol.51,12790-12794)に記載の方法を参考にし、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンとイリジウム触媒とを反応溶媒還流下で反応させる方法などが挙げられる。
【0027】
上記式(3)で表される化合物は、前記式(1)においてジアルコールに対応する化合物であり、R3は前記式(1)で表されるR1、R2に対応している。ただし、R3の炭化水素基にはエーテル結合を含まないことが好ましい。
【0028】
以下に式(3)で表されるトリメチロール化合物の代表例を示すが、本発明の前記式(1)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
具体的には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロール-(2,2’-ジメチル)-プロパン、トリメチロールペンタン、トリメチロールイソペンタン、トリメチロールヘキサン、トリメチロールヘプタン、トリメチロールオクタン等が好ましく挙げられる。なかでも、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンがより好ましく、トリメチロールプロパンがさらに好ましい。
【0029】
使用する前記式(3)で表されるトリメチロール化合物の純度は特に限定されないが、95%以上が好ましく、より好ましくは98%以上である。
【0030】
原料として用いる前記式(3)で表されるトリメチル化合物の使用比率は、前記式(2)で表される化合物2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパン1モルに対して好ましくは1.5~5モル、より好ましくは2.0~3.0モル、さらに好ましくは2.1~2.5モルの範囲である。該アルコール類が上記下限未満であると前記式(1)で表される生成物の収率が低くなることがある。また、上記上限を超えると、反応速度は速く収率が高くなるものの該環式ジアルコール化合物の製造コストが上がることがある。
【0031】
工程1の反応で使用する酸としては、陽イオン交換樹脂、ゼオライト、ヘテロポリ酸(例えばリンタングステン酸、リンモリブデン酸など)などの固体酸である。なかでもヘテロポリ酸が好ましく、リン酸またはケイ酸と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも一つの元素の酸素酸イオンとから構成されるヘテロポリ酸がより好ましく、リンタングステン酸、リンモリブデン酸がさらに好ましく、リンタングステン酸が特に好ましい。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
酸の使用量は、通常、前記式(2)のジケトン化合物100重量部に対して、好ましくは0.001~20重量部、より好ましくは0.05~15重量部、さらに好ましくは0.5~10重量部の範囲である。
【0033】
工程1で用いる反応溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(以後、2-プロパノールと記載する)、n-ブタノール等のアルコール類を用いることができる。なかでも、前記式(1)で表される環式ジアルコール化合物の収率の観点から芳香族炭化水素系が好ましく、トルエン(芳香族炭化水素系溶媒)が特に好ましい。2-プロパノール等のアルコール類を反応溶媒として用いた場合、反応温度が低いため副生する水を効率よく除去できず反応率が低下し前記式(1)に示される環式ジアルコール化合物の単離収率が低くなり製造コストが上がることがある。
【0034】
工程1で使用する前記反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物(目的物)の理論収量に対して好ましくは3重量倍以上、より好ましくは4~9重量倍であり、さらに好ましくは5~10重量倍である。反応溶媒の使用量が上記下限未満の場合、反応中に目的物が析出した際に撹拌が困難になる可能性がある。また、反応は溶媒の使用量が上記上限を超える場合、反応速度が遅くかつ使用量に見合う効果がなく容積効率も悪化し該環式ジアルコール化合物の製造コストが上がることもある。
【0035】
工程1の反応温度は使用する原料、溶媒の種類により異なるが、好ましくは100~150℃、より好ましくは100~140℃、さらに好ましくは100~130℃である。反応温温度が上記下限よりも低いと副生する水の脱水効率が悪く反応速度が遅くなり収率が下がることがある。また、上記上限を超えると反応速度は速くなるものの、副生する水によって前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物が反応中に加水分解を引き起こし、収率が低下してしまうことがある。反応はガスクロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。
【0036】
工程1の反応終了後の反応混合物には、通常、生成した前記式(1)で表される環式ジアルコール化合物以外に、未反応の2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパンやトリメチロール化合物、酸、副反応生成物、副生水などが含まれている。そのため、工程2では工程1で生成した前記式(1)で表される環式ジアルコール化合物が加水分解しないよう酸を除去するために塩基を用いた中和処理を行う。
【0037】
工程2で用いる塩基としては、水酸化ナトリウムが使用される。塩基の使用量は、反応で用いた酸触媒に対して、例えば、使用する酸に対して1~10当量の範囲が好ましいが、大過剰量用いることもできる。
【0038】
工程2の後、工程3に示した再結晶操作を行うことにより高純度の環式ジアルコール化合物(1)を得ることができる。再結晶で使用する溶媒はトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒であり、トルエンが特に好ましい。
【0039】
本発明の製造方法により得られる環式ジアルコール化合物(1)の収率は好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。収率が上記上限を下回ると(1)で表される環式ジアルコール化合物が中和不足によって加水分解している可能性が示唆され、さらにはその製造コストが上がり、その結果、該環式ジアルコール化合物を用いて重合したポリカーボネート樹脂やポリエステルカーボネート樹脂のコストがさらに上がってしまうことがある。
【0040】
本発明の製造方法により得られる環式ジアルコール化合物のガスクロマトグラフィー純度は、60~100面積%の広い範囲から選択でき、好ましくは80面積%以上、90面積%以上、95%面積以上、98面積%以上、99面積%以上である。
【0041】
[環式ジアルコール化合物]
本発明の環式ジアルコール化合物は、下記式(1)で表される環式ジアルコール化合物である。
【0042】
【化8】
(式中、R
1またはR
2はそれぞれ独立に炭化水素基を示す。)
【0043】
上記式(1)において、R1およびR2で表される炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基などが例示できる。なかでもアルキル基が特に好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの炭素原子数1-6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1-4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1-3のアルキル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0044】
以下に前記式(1)で表される環式ジアルコール化合物の代表例を示すが、本発明の前記式(1)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
【0045】
【0046】
これらは単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも下記式(1-a)、下記式(1-b)がより好ましく、特に、下記式(1-b)がさらに好ましい。
【0047】
【0048】
【0049】
本発明において前記式(1-b)で示される環式ジアルコール化合物には、下記式(1-b-1)または(1-b-2)に示すような2種の立体異性体が存在すると考えられ、これらは単独でも2種以上の混合物でもよい。これら立体異性体の存在比率は1H NMRのピーク面積百分率を求めることで算出することができる。1H NMRで検出されたピーク面積から算出すると、本発明により得られた前記式(1)で示される環式ジアルコール化合物には2種類の異性体が存在すると考えられ、その存在比率は(1-b-1):(1-b-2)=30:70~50:50あるいは70:30~50:50の範囲であると考えられる。
【0050】
【0051】
本発明の環式ジアルコール化合物の5%重量減少温度は、300℃以上であり、305℃以上が好ましく、310℃以上がより好ましい。環式ジアルコール化合物の5%重量減少温度は、窒素雰囲気下で昇温速度20℃/分での5%重量減少温度である。5%重量減少温度が上記下限以上であるとポリカーボネート樹脂やポリエステルカーボネート樹脂を重合する段階で本発明の環式ジアルコール化合物が分解することなく重合することができる。一方で5%重量減少温度が上記下限よりも低いとポリカーボネート樹脂やポリエステルカーボネート樹脂を重合する段階で本発明の環式ジアルコール化合物が分解して重合できないか、あるいはその分解物を起点に架橋しゲル化してしまう可能性がある。
【0052】
本発明の環式ジアルコール化合物は、タングステン元素の含有量が下記式(4)を満足することが好ましい。
0ppm ≦ W ≦ 100ppm (4)
より好ましくは、下記式(4-1)を満足する。
0.01ppm ≦ W ≦ 95ppm (4-1)
さらに好ましくは、下記式(4-2)を満足する。
0.05ppm ≦ W ≦ 90ppm (4-2)
さらにより好ましくは、下記式(4-3)を満足する。
0.1ppm ≦ W ≦ 85ppm (4-3)
特に好ましくは、下記式(4-4)を満足する。
0.5ppm ≦ W ≦ 80ppm (4-4)
もっとも好ましくは、下記式(4-5)を満足する。
1ppm ≦ W ≦ 75ppm (4-5)
【0053】
上記範囲の上限を超えると、前記式(1)で表される環式ジアルコール化合物が加水分解しやすく5%重量減少温度が下がることがある。タングステン元素の含有量の下限は、0.01ppm以上、0.05ppm以上、0.1ppm以上、0.5ppm以上、1ppm以上であってもよい。
【0054】
本発明の環式ジアルコール化合物は、ナトリウム元素の含有量が下記式(5)を満足することが好ましい。
0ppm ≦ Na ≦ 50ppm (5)
より好ましくは、下記式(5-1)を満足する。
0.01ppm ≦ Na ≦ 45ppm (5-1)
さらに好ましくは、下記式(5-2)を満足する。
0.05ppm ≦ Na ≦ 40ppm (5-2)
さらにより好ましくは、下記式(5-3)を満足する。
0.1ppm ≦ Na ≦ 35ppm (5-3)
特に好ましくは、下記式(5-4)を満足する。
0.5ppm ≦ Na ≦ 30ppm (5-4)
もっとも好ましくは、下記式(5-5)を満足する。
1ppm ≦ Na ≦ 25ppm (5-5)
【0055】
上記範囲の上限を超えると、前記式(1)で表される環式ジアルコール化合物を用いてポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂を重合すると重合速度が速く分子量制御が困難になるばかりでなく、重合した樹脂が濁りヘイズが高くなるため光学用途に適さないことがある。ナトリウム元素の含有量の下限は、0.01ppm以上、0.05ppm以上、0.1ppm以上、0.5ppm以上、1ppm以上であってもよい。
【0056】
本発明の環式ジアルコール化合物は、硫黄元素の含有量が下記式(6)を満足することが好ましい。
0ppm ≦ S ≦ 10ppm (6)
より好ましくは、下記式(6-1)を満足する。
0.01ppm ≦ S ≦ 9ppm (6-1)
さらに好ましくは、下記式(6-2)を満足する。
0.02ppm ≦ S ≦ 8ppm (6-2)
さらにより好ましくは、下記式(6-3)を満足する。
0.03ppm ≦ S ≦ 7ppm (6-3)
特に好ましくは、下記式(6-4)を満足する。
0.05ppm ≦ S ≦ 6ppm (6-4)
もっとも好ましくは、下記式(6-5)を満足する。
0.1ppm ≦ S ≦ 5ppm (6-5)
【0057】
上記範囲の上限を超えると、前記式(1)で表される環式ジアルコール化合物が着色し、それを用いて重合した樹脂が黄色くなり易く光学用途に適さないことがある。硫黄元素の含有量の下限は、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.05ppm以上、0.1ppm以上であってもよい。
【0058】
本発明の環式ジアルコール化合物は、ガスクロマトグラフィーで測定した純度が90面積%以上であることが好ましく、95面積%以上であることがより好ましく、98面積%以上であることがさらに好ましく、99面積%以上であることが特に好ましい。
【0059】
本発明の環式ジアルコール化合物は、色相(APHA)が500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましく、250以下であることが特に好ましく、200以下であることがもっとも好ましい。色相(APHA)は、環式ジアルコール化合物15gをφ25mmの試験管に入れ、10分間窒素を流し窒素雰囲気下にしたのち250℃で20分加熱溶融し、日本電色工業(株)製TZ6000を用いて測定することができる。
【0060】
[環式ジアルコール化合物の特徴および用途]
本発明の環式ジアルコール化合物は、種々の樹脂の原料(モノマー)として利用できる。例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂など)のモノマー、及び熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸エステル)など)のポリオール成分として用いることができる。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂が典型的である。これらの樹脂は特に光学部材のための材料として用いられる。
【0061】
本発明の環式ジアルコール化合物をポリオール成分に用いると、環式骨格を有しているためか、得られる樹脂は高い熱安定性と光学特性とを高いレベルで両立できるという利点を備える。特に本発明の環式ジアルコール化合物は光学部材のためのポリカーボネート樹脂やポリエステルカーボネート樹脂の原料として好ましく用いられる。
【実施例0062】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、各種原料は下記に示すものを使用し、各種測定は以下のように行った。
【0063】
(1)使用原料
2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパン:東京化成工業株式会社製
トリメチロールプロパン:東京化成工業株式会社製
パラトルエンスルホン酸一水和物(PTSA):東京化成工業株式会社製
12タングスト(VI)リン酸n水和物(PW):富士フイルム和光純薬株式会社製
【0064】
(2)1H NMR測定
実施例1<工程3>で得られた環式ジアルコール化合物を下記の装置、溶媒にて測定した。
装置:日本電子社製 JNM-ECA600(600MHz)
溶媒:CDCl3
【0065】
(3)ガスクロマトグラフィー測定(GC/MS)
実施例1<工程3>および比較例1~3<工程3>で得られた環式ジアルコール化合物をアジレント・テクノロジー製シングル四重極GC/MS 5977Bを用い、下記測定条件で測定した。実施例および比較例中、特に断らない限り純度(%)はGC/MSにおける溶媒を除いて補正した面積百分率値である。
(GC)
カラム:DB-1(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)
注入量:1μl
注入法:スプリット比40:1
注入口温度:280℃
オーブン:60℃-10℃/分-280℃(28分)
キャリアガス:He、線速度 36.6cm/s
(MS)
イオン源温度:230℃
イオン化モード:EI 70eV
測定範囲:m/z 33-700
【0066】
(4)5%重量減少温度(Td-5%)
実施例1<工程3>および比較例1~3<工程3>で得られた環式ジアルコール化合物および実施例1<工程4>および比較例3<工程4>で得られた樹脂をTAインスツルメント製の示差熱・熱重量同時測定装置Discovery SDT650により、窒素雰囲気下で、昇温速度20℃/minで測定し、5%重量減少温度を測定した。試料は5mg程度で測定した。
【0067】
(5)色相測定(APHA)
実施例1<工程3>および比較例1~3<工程3>で得られた環式ジアルコール化合物15gをφ25mmの試験管に入れ、10分間窒素を流し窒素雰囲気下にしたのち250℃で20分加熱溶融し、日本電色工業(株)製TZ6000を用いて測定した。
【0068】
(6)ICP-MS測定(W元素量、Na元素量)
実施例1<工程3>および比較例1~3<工程3>で得られた環式ジアルコール化合物を下記の機器および装置にてタングステン元素(W)およびナトリウム元素(Na)の含有量の測定を行った。
使用機器:Agilent Technologies
装置:Agilent5100 ICP-OES
【0069】
(7)燃焼イオンクロマトグラフィー測定(S元素量)
実施例1<工程3>および比較例1~3<工程3>で得られた環式ジアルコール化合物を三菱ケミカル製自動試料燃焼装置AQF-2100およびサーモフィッシャー製イオンクロマトグラフィーシステムDIONEX AQUIONを用い、下記測定条件で、硫黄元素(S)の含有量の測定を行った。尚、検量線作成は、富士フイルム和光純薬製硫酸イオン標準液(SO4
2-:1000)を用い行った。
測定温度:900℃→1000℃
吸収液:過酸化水素入り超純水
カラム:AS-17/AG-17
流速:1ml/min
セル温度:40℃、カラム温度:35℃
【0070】
(8)重合評価(反応性)
工程4では、実施例1<工程3>および比較例1~3<工程3>で得られた環式ジアルコール化合物を用い重合反応を実施した。重合評価は以下の基準で行った。
〇:所定の電力まで到達し、高分子量体が得られる。
×:フェノールの留出や電力上昇が十分に起こらず、高分子量体が得られない。
【0071】
(9)比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlに実施例1<工程4>および比較例3<工程4>で得られた樹脂0.7gを溶解した溶液からオスとワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηsp)=(t-t0)/t0
(t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数)
【0072】
(10)屈折率(nd)
実施例1<工程4>および比較例3<工程4>で得られた樹脂を下記の装置、手法にて測定した。
装置:島津製作所社製 KRP-2000
手法:重合終了後に得られた樹脂の3mm厚試験片を作製し研磨したものを用いた。
【0073】
(11)アッベ数測定
実施例1<工程4>および比較例3<工程4>で得られた樹脂のアッベ数は、波長:486.13nm、587.56nm、656.27nmにおける屈折率から下記式を用いて算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
なお、本発明においては、
nd:波長587.56nmでの屈折率、
nC:波長656.27nmでの屈折率、
nF:波長486.13nmでの屈折率を意味する。
【0074】
(12)ガラス転移温度(Tg)
実施例1<工程4>および比較例3<工程4>で得られた樹脂をTAインスツルメント製の示唆熱・熱重量同時測定装置Discovery SDT650により、昇温速度20℃/minで測定した。試料は5mg程度で測定した。
【0075】
(13)透明性(濁り評価)
実施例1<工程4>および比較例3<工程4>で得られた樹脂1.0g/5mLの濃度でジクロロメタンに溶解させ日本分光製紫外可視近赤外分光光度計V-770を用い透過率を測定し、660nmの透過率が95%以上の場合を濁り無とし、95%未満の場合を濁り有とした。
【0076】
(14)樹脂の色相(b*値)測定
実施例1<工程4>および比較例3<工程4>で得られた樹脂を1.0g/5mLの濃度でジクロロメタンに溶解させ、日本分光製紫外可視近赤外分光光度計V-770でb*値を測定した。
【0077】
[実施例1]
<工程1>
撹拌機、冷却器付水分離器、さらには温度計を備え付けたフラスコに2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパン50g(212ミリモル)、トリメチロールプロパン59g(444ミリモル)、12タングスト(VI)リン酸n水和物0.29g、トルエン200mLを加えたのち、窒素雰囲気下、115℃でトルエンを還流し共沸脱水させながら2時間撹拌し反応を終了させた。
<工程2>
工程1で得られた反応液を室温まで冷却したのち5%水酸化ナトリウム水溶液で中和した。
<工程3>
工程2で析出した白色結晶を濾取し、トルエンで再結晶後、目的である2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパン-ビス(トリメチロールプロパン)アセタール(以下、BOCHPAと略記することがある)の白色固体を収率93%で得た。得られたBOCHPAを
1H NMRにより分析し、目的物であることを確認した(
図1)。得られたBOCHPAを用いて、GC測定、5%重量減少温度測定、色相測定、ICP-MS測定、燃焼イオンクロマトグラフィー測定をし、その結果を表1に示した。
<工程4>
工程3で得たBOCHPAを用いて重合評価を行った。
BOCHPA22.5質量部(80mоl%)、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下、「BCF」と省略することがある)4.5質量部(20mоl%)、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと省略することがある)12.98質量部(101mоl%)、及び触媒として濃度60mmol/Lの濃度で炭酸水素ナトリウムを2.52×10
-4質量部(5.00×10
-3mоl%)、濃度274mmol/Lの濃度でテトラメチルアンモニウムヒドロキシド1.37×10
-3質量部(3.01×10
-2mоl%)を加え、窒素雰囲気下200℃に加熱し溶融させた。その後、5分間かけて減圧度を20kPaに調整した。40℃/hrの昇温速度で250℃まで昇温を行い、重合反応を行った。重合が進行した場合は、フェノールの流出量が70%になった後で40kPa/hrで減圧し、所定の電力に到達するまで重合反応を行った。得られたポリカーボネート樹脂を用いて、共重合比、比粘度、屈折率、アッベ数、Tg、5%重量減少温度測定、ポリマーの濁り有無を評価し、その結果を表2に示した。
【0078】
[比較例1]
実施例1<工程2>の12タングスト(VI)リン酸n水和物を有機酸であるパラトルエンスルホン酸一水和物に変更した以外は実施例1と同様にしてBOCHPAの白色固体を収率81%で得た。得られたBOCHPAを用いて、GC測定、5%重量減少温度測定、色相測定、ICP-MS測定、燃焼イオンクロマトグラフィー測定をした。また、<工程4>では重合評価を実施したが、重合中BOCHPAが分解しポリマーは得られなかった。
【0079】
[比較例2]
比較例1<工程2>の5%水酸化ナトリウム水溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に変更した以外は比較例1と同様にしてBOCHPAの薄黄色固体を収率35%で得た。得られたBOCHPAを用いて、GC測定、5%重量減少温度測定、色相測定、ICP-MS測定、燃焼イオンクロマトグラフィー測定をした。また、<工程4>では重合評価を実施したが、重合中BOCHPAが分解しポリマーは得られなかった。
【0080】
[比較例3]
比較例1<工程2>の5%水酸化ナトリウム水溶液を飽和炭酸ナトリウム水溶液に変更した以外は比較例1と同様にしてBOCHPAの白色固体を収率84%で得た。得られたBOCHPAを用いて、GC測定、5%重量減少温度測定、色相測定、ICP-MS測定、燃焼イオンクロマトグラフィー測定をした。また、<工程4>では重合評価し、得られたポリカーボネート樹脂を用いて、共重合比、比粘度、屈折率、アッベ数、Tg、5%重量減少温度測定、ポリマーの濁り有無、色相測定をし、その結果を表2に示した。
【0081】
【0082】
本発明の環式ジアルコール化合物を原料(モノマー)とする樹脂は、例えば、フイルム、レンズ、プリズム、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、光ファイバー、光学膜、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特にレンズ用途に極めて有用である。